説明

セラミックス焼結体、セラミックス焼結体の製造方法、金属蒸着用発熱体

本発明は、溶融金属に対する耐食性が改善されたセラミックス焼結体、その製造に適用できるセラミックス焼結体の製造方法、及び長寿命化を達成できる金属蒸着用発熱体を提供することを課題とする。本発明は、窒化硼素、二硼化チタン、カルシウム化合物及び窒化チタンを含有してなる相対密度が92%以上のセラミックス焼結体であり、カルシウム化合物がCaO換算として0.05〜0.8質量%、窒化チタンに由来する(200)面のX線回折によるピーク強度が、BNの(002)面のピーク強度に対して0.06〜0.15であることを特徴とするセラミックス焼結体に関する。また、該セラミックス焼結体の製造に適用できるセラミックス焼結体の製造方法、及び該セラミックス焼結体で構成された金属蒸着用発熱体も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、セラミックス焼結体、セラミックス焼結体の製造方法、金属蒸着用発熱体に関する。
【背景技術】
従来、金属蒸着用発熱体としては、例えば窒化硼素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、二硼化チタン(TiB)を主成分とするセラミックス焼結体の上面にキャビティを形成させたボート形状(以下、「ボート」という。)が知られており(特許文献1)、その市販品の一例として電気化学工業社製商品名「BNコンポジットEC」がある。キャビティのない形状もある。これの使用方法は、ボートの両端をクランプで電極につなぎ電圧を印加することによってそれを発熱させ、キャビティに入れられたアルミニウム線材等の金属を溶融・蒸発させ蒸着膜を得た後冷却される。
このようなボートにあっては、溶融金属がボートを腐食してボートの有効断面及び電気抵抗を変動させ、十分な蒸着速度が取れなくなる。たとえば、溶融金属がアルミニウムである場合には、次の反応式で腐食が起こる。
Al(s)+TiB(s)→Al(l)+TiB(l)
13Al(s)+12BN(s)→AlB12(s)+12AlN(s)
また、腐食はキャビティ部で局所的に起こることが多いので、すなわち溶融アルミニウムの濡れ拡がりがキャビティ中心部に局在化するので、被蒸着物の膜厚分布が十分に取れなくなり、ボートの寿命となる。ボート寿命を延ばすためには、ボートの相対密度を95%以上にすればよいが(特許文献2)、それには圧力100〜300MPaという高圧が必要となるので設備費が嵩み、また生産性も劣る。一方、ボート中のBNの結晶配向に異方性が生じないようにホットプレス焼結体からの切り出し方法を工夫することの提案もある(特許文献3)。しかしながら、これらの改良にも関わらず、アルミニウム蒸着中の高温下では上記反応が徐々に進行し、長寿命化にはまだまだ改善の余地があった。
【特許文献1】特公昭53−20256号公報
【特許文献2】特開昭60−21866号公報
【特許文献3】特公平5−66906号公報
【発明の開示】
従来技術に関わる上記問題点を鑑み、本発明者らは更に検討した結果、特定の低結晶性BN粉末を含む混合原料粉末を用い、それを結晶化させながら焼成すると、得られたセラミックス焼結体の粒界相には窒化チタンが存在し、従来のように腐食の進行が速まる非晶質でかつ酸素量の多い粒界相とは異なるものになることを見いだし、本発明を完成させたものである。一般的に、セラミックス材料の殆どは数μm〜数十μmの粒子が焼結によって結合した、多結晶と呼ばれる形態を有しており、粒界相は粒子と粒子の間に原料粉末の不純物が濃縮されている部分であることが多い。
すなわち、本発明は、窒化硼素、二硼化チタン、カルシウム化合物及び窒化チタンを含有してなる相対密度が92%以上のセラミックス焼結体であり、カルシウム化合物の含有率がCaO換算として0.05〜0.8質量%、窒化チタンに由来する(200)面のX線回折によるピーク強度が、BNの(002)面のピーク強度に対して0.06〜0.15であることを特徴とするセラミックス焼結体に関する。この場合において、窒化チタンの一部又は全部が粒界相に存在していることが好ましい。また、窒化アルミニウムを更に含有していることが好ましい。さらには、セラミックス焼結体に含まれる窒化硼素結晶のC軸格子定数が6.675Å以下、セラミックス焼結体の酸素量が1〜2質量%の条件を同時に満たしていることが特に好ましい。
また、本発明は、上記セラミックス焼結体で構成されてなることを特徴とする金属蒸着用発熱体に関する。
さらに、本発明は、二硼化チタン粉末と窒化硼素粉末とカルシウム系焼結助剤とを含み、必要に応じて窒化アルミニウム粉末を含有してなる混合原料粉末を、非酸化性雰囲気中、温度1800〜2100℃で焼結する方法であって、上記窒化硼素粉末が、窒化硼素結晶のC軸格子定数が6.690Å以下、累積平均径が4〜20μm、BET比表面積が25〜70m/g、酸素量が1.0〜2.5質量%の窒化硼素粉末であり、上記混合原料粉末中のカルシウム系焼結助剤の含有率がCaO換算として0.09〜0.8質量%であることを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法である。この場合において、カルシウム系焼結助剤が、CaO、Ca(OH)及びCaCOから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
本発明によれば、溶融金属に対する耐食性が改善されたセラミックス焼結体と、その製造に適用できるセラミックス焼結体の製造方法が提供される。また、長寿命化を達成できる金属蒸着用発熱体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明のセラミックス焼結体を構成する主成分は、窒化硼素と二硼化チタンである。これによって、セラミックス焼結体を絶縁性かつ導電性とすることができ、例えば金属蒸着用発熱体等の用途に適したものとなる。この場合、窒化硼素は絶縁材として機能するので、その最大50質量%までを同じ絶縁材である窒化アルミニウムで置き換えることができ、それによって通電特性が改善され、また低コスト化が可能となる。主成分の構成比率の一例を示すと、窒化硼素40〜55質量%、二硼化チタン45〜60質量%、窒化アルミニウム0〜20質量%である。これらの主成分は、セラミックス焼結体中、95質量%以上の含有率であることが好ましい。
一方、本発明のセラミックス焼結体を構成する上記主成分以外の成分は、カルシウム化合物と窒化チタンである。カルシウム化合物は、セラミックス焼結体の相対密度を92%以上にするために必要な成分であり、その含有率はCaO換算として0.05〜0.8質量%である。0.05質量%より少ないと、相対密度を92%以上にすることが困難となり、0.8質量%より多いと、相対密度を92%以上にすることができるが、セラミックスの焼結中に治具等と焼き付きを起こす恐れがある。相対密度92%以上の要件は、セラミックス焼結体の耐食性を十分なものとするために必要である。
窒化チタンは、セラミックス焼結体に耐食性を付与させる成分であり、少なくともその一部を粒界相に存在させることが耐食性の改善の観点から好ましい。粒界相におけるTiNの存在は、その断面研磨部のEPMA(X線マイクロアナライザー)による元素分布状態と粉末X線回折法とを併用することによって確認することができる。窒化チタンの含有率は、TiNに由来する(200)面のX線回折によるピーク強度が、BNの(002)面のピーク強度に対して0.06〜0.15の割合とする。すなわち、X線ピーク強度比(TiN(200)面/BN(002)面)が、0.06〜0.15の割合とする。この比率が0.06よりも小さいと耐食性の改善効果が不十分であり、0.15よりも多いとセラミックス焼結体が硬くなりすぎて加工性が悪化する。
TiNを少なくとも粒界相に存在させることによって、セラミックス焼結体の耐食性が改善される理由については、TiNの溶融金属に対する親和性が他の粒界相の構成成分(B、TiO、Al)よりも小さいことで説明される。すなわち、溶融金属がAlである場合を例にとって説明すると、Al−X(X=粒界構成成分)の生成時の自由エネルギーGを熱力学的にAlが濡れ拡がる温度1000℃で求めると、Al−Bが−56.1kJ/mol、Al−TiOが−83.7kJ/molであるのに対し、Al−TiNは−12.2kJ/molとなり、TiNはAlとの親和性が小さく耐食性が向上する。
本発明のセラミックス焼結体においては、その酸素量が1〜2質量%、及び、焼結体に含まれる窒化硼素結晶のC軸格子定数が6.675Å以下という条件を同時に満たすことによって、耐食性が更に改善される。すなわち、C軸格子定数が6.675Åよりも大きくなると結晶性の低い、結晶歪みの大きなBNとなるので溶融金属による腐食を受けやすくなる。更に言えば、結晶性の低いBN粒子は固溶酸素や積層欠陥等を多く含有し、このような粒子内の構造欠陥が溶融金属による腐食の起点となる。C軸格子定数の下限には制限がなく、理論値の6.662Åまで可能であり、結晶性が高いほど腐食に強く好ましい。
また、セラミックス焼結体の酸素量が1〜2質量%であることの好ましい理由を説明すると、本発明のセラミックス焼結体にあっては、酸素は主に粒界である、BN(AlN)とTiB粒子の隙間に存在することがわかっており、一般的にその融点はBN、AlN及びTiBに比べて低い。酸素量が2質量%をこえると、低融点な粒界相は、ボート等セラミックス焼結体の使用温度において液相を形成し、溶融金属等との反応が起こりやすくなり、耐食性が損なわれる。また、酸素量が1質量%未満ではBN(AlN)とTiBの粒子間結合力が不十分となり、耐食性が損なわれる。
本発明のセラミックス焼結体の製造方法は、本発明のセラミックス焼結体を製造するのに適合するものである。以下、これについて説明する。
本発明で使用される混合原料粉末は、二硼化チタン粉末(以下、「TiB粉末」ともいう。)と窒化硼素粉末(以下、「BN粉末」ともいう。)とカルシウム系焼結助剤とを含み、必要に応じて窒化アルミニウム粉末(以下、「AlN粉末」ともいう。)を含有してなるものである。焼結前後において成分の構成比率は殆ど変化しないので、各粉末の混合割合は、上記したセラミックス焼結体の構成比率と同じにすることができる。このような混合原料粉末は、従来も使用されているが、本発明で重要なことは、特定の低結晶性BN粉末を用い、特定量のカルシウム系焼結助剤の存在下、低結晶性BN粉末を結晶化させながら焼結することである。
本発明で使用されるBN粉末は、窒化硼素結晶のC軸格子定数が6.690Å以下、累積平均径が4〜20μm、BET比表面積が25〜70m/g、酸素量が1.0〜2.5質量%のものである。尚、本発明で引用している「累積平均径」とは、個数換算累積率50%の粒子径(D50)を意味する。
市販のBN粉末には、低結晶性のものから高結晶性のものまで幅広くあるが、これまで好適であるとされた高結晶性BN粉末を用いたのでは、耐食性の改善効果には限度があることがわかった。そこで、本発明では、酸素量が1.0〜2.5質量%かつC軸格子定数が6.690Å以下である、低酸素かつ低結晶性のBN粉末を用いることによって、従来の高結晶性BN粉末を用いた耐食性のレベルを凌ぐことができ、更にBN粉末の粒度を、累積平均径が4〜20μm、BET比表面積が25〜70m/gとすることによって、この効果が助長される。
すなわち、上記の低酸素かつ低結晶性のBN粉末を含む混合原料粉末を、特定量のカルシウム系焼結助剤の存在下、特定条件で焼結すると、得られたセラミックス焼結体の粒界相はTiNを主相としたものとなる、すなわちセラミックス焼結体の上記X線ピーク強度比(TiN(200)面/BN(002)面)が0.06〜0.15となり、耐食性が改善されることを突き止めた。TiN相生成のメカニズムについては定かではないが、焼結過程でTiB粒子の表面酸化層であるTiOとBN粉末の表面に存在するBとが反応して液相を形成し、この液相中にBN粒子が溶解して再析出すると同時に、TiOが窒化を受けてTiNが生成したものと考えている。
本発明において、BN粉末のC軸格子定数が6.690Åをこえると、得られたセラミックス焼結体には低結晶性BNが残存し耐食性は向上しない。累積平均径が4μm未満では酸素量を2.5質量%以下に制御することが困難となる。累積平均径が20μmをこえるか、又はBET比表面積が25m/g未満では、相対密度が92%以上のセラミックス焼結体を製造することができない。BET比表面積が70m/gをこえると、焼結前の成形体密度が小さくなり、これまた相対密度が92%以上のセラミックス焼結体を製造することができない。BN粉末の酸素量が1.0質量%未満では焼結に必要な酸素量が不足し、また2.5質量%をこえると粒界相に酸素が過剰に析出し耐食性が不十分となる。
本発明で使用されるBN粉末は、例えば硼砂と尿素の混合物をアンモニア雰囲気中で800℃以上に加熱する方法、硼酸又は酸化硼素と燐酸カルシウムの混合物をアンモニウム、ジシアンジアミド等の含窒素化合物を1300℃以上に加熱する方法などによって製造することができる。いずれのBN粉末にあっても、酸素量1.0〜2.5質量%の制御は、窒素、アルゴン等の非酸化性ガス雰囲気下、温度1100〜1300℃で3〜5時間の加熱処理をして行われる。加熱処理温度が1300℃をこえると、BN粉末のC軸格子定数が6.690Åよりも小さくなり、高結晶性BN粉末となる。なお、加熱処理後に0.1〜1%の硝酸等の希酸で洗浄しておくことは好ましい。
カルシウム系焼結助剤の混合原料粉末中の含有率が、CaO換算として0.09質量%未満では、低結晶性BN粉末を結晶化させつつ焼結することが困難となり、また0.8質量%をこえると、粒界相への残留が増加し、耐食性が不十分となる。カルシウム系焼結助剤としては、各種カルシウムの酸化物の他に、例えばCaCN、硝酸カルシウム等の窒化物や、例えばα−Ca(PO、Ca(POO等のように、加熱によってカルシウム酸化物に変化する物質が用いられるが、好ましくはCaO、Ca(OH)、CaCOである。カルシウム系焼結助剤の平均粒子径は0.8μm以下、特に0.5μm以下であることが好ましい。
TiB粉末、AlN粉末としては、Ti粉末又はAl粉末を直接窒化反応又は直接硼化反応させて製造されたもの、TiO粉末又はAlの粉末を還元窒化反応又は還元硼化反応させて製造されたものなどが使用され、平均粒子径は5〜25μmであることが好ましい。これらは市販品で十分である。
混合原料粉末は、好ましくは造粒されてから、非酸化性雰囲気中、温度1800〜2100℃で焼結される。たとえば、一軸加圧又は冷間等方圧加圧した後、温度1800〜2100℃で常圧焼結するか、又は0.8MPa以下のガス雰囲気下で常圧焼結する。更には、1800〜2100℃、1〜100MPaのホットプレス又は熱間等方圧プレスで焼結することもできる。焼結温度が1800℃よりも低いと焼結不足となり、また2100℃をこえると、相対密度を92%以上のセラミックス焼結体を製造することができない。非酸化性雰囲気としては、例えば窒素、アルゴン、炭酸ガス、アンモニア等の雰囲気が用いられる。
なお、焼結は、黒鉛製容器、窒化硼素製容器、窒化硼素で内張した容器に収納し、非酸化性雰囲気中で行うことが望ましい。ホットプレス法では、黒鉛又は窒化硼素製スリーブ、窒化硼素で内張したスリーブを用いて焼結する。
本発明のセラミックス焼結体から、本発明の金属蒸着用発熱体、例えばボートを製作するには、常法により適宜形状に加工する。その寸法の一例を示せば、縦130〜150mm×幅25〜35mm×高さ8〜12mmの短冊状であり、ボートにあってはその上面中央部にキャビティ(縦90mm〜120mm×幅20〜32mm×深さ0.5〜2.0)が形成される。加工は、機械加工、レーザー加工等によって行われる。
【実施例】
[実施例1〜10 比較例1〜7]
TiB粉末(平均粒子径12μm、純度99.9質量%以上)、AlN粉末(平均粒子径10μm、純度98.5質量%)、CaO粉末(平均粒子径0.5μm、純度99.9質量%以上)、及び表1に示される各種のBN粉末を表1に示す割合で混合して種々の混合原料粉末を調整した。ここで、各種BN粉末は、硼砂と尿素の混合物をアンモニア雰囲気中で加熱して得られたBN粉末を、窒素雰囲気下、1100〜1300℃、3〜5時間の熱処理条件を種々変更し熱処理を行うことにより製造した。これを黒鉛ダイスに充填し、窒素雰囲気中、表2に示す条件でホットプレスを行ってセラミックス焼結体(直径200mm×高さ20mmの円柱形)を製造した。
このセラミックス焼結体から、直方角柱体(長さ150mm×幅30mm×厚み10mm)を切り出し、その表面の中央部にキャビティ(幅26mm×深さ1mm×長さ120mm)を機械加工により形成しボートを製作した。ボートの(1)耐食性と(2)寿命を以下に従って測定した。
(1)耐食性:ボートの端部をクランプで電極につなぎキャビティ中央部の温度が1500℃となるように印加電圧を設定した。真空度2×10−2Paの真空中、直径1.5mmのアルミニウムワイヤーを6.5g/分の一定速度で40分間、キャビティに供給しながら蒸着を行った後室温まで冷却することを1サイクルとし、繰り返し行った。毎回、サンプルを取り出してキャビティ部で最も浸食された深さをレーザー変位計(機器:キーエンス社製「LT−9000」を用いて測定し、ボートが40分間で浸食される速度を求めた。浸食速度が小さいほど耐食性の良好なセラミックス焼結体と言える。
(2)ボート寿命:上記耐食性試験の条件に基づき、ボート上方200mmの位置で樹脂フイルム上に蒸着を行うサイクルを繰り返し、1サイクルあたりでのアルミニウム蒸着膜の厚みが2000Å以下になったときのサイクル数を求め、ボートの寿命とした。
また、セラミックス焼結体の相対密度、BNのC軸格子定数、酸素量、カルシウム化合物量、粒界相、及び上記X線ピーク強度比(TiN(200)面/BN(002)面)を以下に従って測定した。それらの結果を表2に示す。
(3)相対密度:実測密度と理論密度から算出した。実測密度は、一般的には、得られる測定値の正確さおよび再現性の観点からアルキメデス法に従い測定される。理論密度は、配合する原料の嵩比重と配合比によって求められる値を示す。
(4)C軸格子定数:粉末X線回折法(機器:理学社製「RAD−B」)により、40kV、100mAの条件で試料を2θで10°〜70°の範囲で測定し、リートベルト法によりBN結晶のC軸格子定数を計算して求めた。焼結体を粉末に破砕する一般的な方法は、瑪瑙乳鉢で数回破砕し、その小片を乳鉢で擦り合せて微細化する。更に、その微粉を200メッシュ程度の篩いに通すと粉末X線回折法に適した試料を準備することができる。
(5)酸素量:酸窒素分析装置(昇温分析法)(機器:LECO社製「TC−436」)により測定した。
(6)カルシウム化合物量:誘導結合プラズマ発光分析装置(日本ジャーレルアッシュ製「ICP−AES,MODEL ICAP−1000S」)を用いて定量した。
(7)粒界相:粒界相におけるTiNの存在は、ボートを直径5mmの断面形状に加工し、その断面研磨部をEPMA(X線マイクロアナライザー)により元素分布状態を測定し、更に粉末X線回折法により粒界相を同定した。
(8)X線ピーク強度比(TiN(200)面/BN(002)面):上記粉末X線回折結果から求めた。


表1、2に示されるように、本発明のセラミックス焼結体は浸食速度が6μm/min以下に抑えられていることから耐食性が大幅に改善されており、またそれを用いて製作されたボートは、15サイクル以上の長寿命であることがわかる。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2003年12月11日出願の日本特許出願(特願2003−413533)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
本発明のセラミックス焼結体は、例えばボート等の金属蒸着用発熱体として、また本発明の金属蒸着用発熱体は、例えばアルミニウム、銅、銀、亜鉛等の金属をフィルム、セラミックス等の基材に蒸着する際の治具として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化硼素、二硼化チタン、カルシウム化合物及び窒化チタンを含有してなる相対密度が92%以上のセラミックス焼結体であり、カルシウム化合物の含有率がCaO換算として0.05〜0.8質量%であり、窒化チタンに由来する(200)面のX線回折によるピーク強度が、BNの(002)面のピーク強度に対して0.06〜0.15であるセラミックス焼結体。
【請求項2】
窒化チタンの一部又は全部が、粒界相に存在している請求項1記載のセラミックス焼結体。
【請求項3】
窒化アルミニウムを更に含有してなる請求項1又は2記載のセラミックス焼結体。
【請求項4】
セラミックス焼結体に含まれる窒化硼素結晶のC軸格子定数が6.675Å以下であり、セラミックス焼結体の酸素量が1〜2質量%である請求項1、2又は3記載のセラミックス焼結体。
【請求項5】
窒化硼素と二硼化チタンの合計含有率が95質量%以上である請求項1記載のセラミックス焼結体。
【請求項6】
窒化硼素、二硼化チタンおよび窒化アルミニウムの合計含有率が95質量%以上である請求項3記載のセラミックス焼結体。
【請求項7】
請求項1〜6記載のいずれかのセラミックス焼結体で構成されてなることを特徴とする金属蒸着用発熱体。
【請求項8】
二硼化チタン粉末と窒化硼素粉末とカルシウム系焼結助剤とを含み、必要に応じて窒化アルミニウム粉末を含有してなる混合原料粉末を、非酸化性雰囲気中、温度1800〜2100℃で焼結する方法であって、上記窒化硼素粉末が、窒化硼素結晶のC軸格子定数が6.690Å以下、累積平均径が4〜20μm、BET比表面積が25〜70m/g、酸素量が1.0〜2.5質量%の窒化硼素粉末であり、上記混合原料粉末中のカルシウム系焼結助剤の含有率がCaO換算として0.09〜0.8質量%であるセラミックス焼結体の製造方法。
【請求項9】
カルシウム系焼結助剤が、CaO、Ca(OH)及びCaCOから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項8記載のセラミックス焼結体の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/056496
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516254(P2005−516254)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018862
【国際出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】