セラミックス薄板体
【課題】 変形し難いセラミックスシートを含む焼成された薄板体を提供すること。
【解決手段】 この薄板体10は、5μm以上且つ100μm以下の均一の厚さを有する少なくともセラミックスシートを含む焼成により形成された薄板体である。薄板体10は、薄板体10の一つの平面Pから突出した凸状部11を複数備えるとともに平面Pから陥没した凹状部12を複数備えている。これにより、薄板体10を薄板体10の所定の支持箇所で支持するとともに薄板体10に対し支持箇所以外の荷重印加箇所に平面Pに直交する方向の荷重を加えたときの撓み量は、凸状部11及び凹状部12を備えることなく平坦である薄板体の撓み量よりも小さくなる。即ち、変形し難い薄板体10が提供される。
【解決手段】 この薄板体10は、5μm以上且つ100μm以下の均一の厚さを有する少なくともセラミックスシートを含む焼成により形成された薄板体である。薄板体10は、薄板体10の一つの平面Pから突出した凸状部11を複数備えるとともに平面Pから陥没した凹状部12を複数備えている。これにより、薄板体10を薄板体10の所定の支持箇所で支持するとともに薄板体10に対し支持箇所以外の荷重印加箇所に平面Pに直交する方向の荷重を加えたときの撓み量は、凸状部11及び凹状部12を備えることなく平坦である薄板体の撓み量よりも小さくなる。即ち、変形し難い薄板体10が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックススシートを含む焼成された薄板体であって、その厚さが5μm以上且つ100μm以下で均一である薄板体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミックスシートを含む焼成された薄板体は、例えば、センサ、アクチュエータ及び固体酸化物形燃料電池(SOFC)の単セル等の種々の装置に用いられて来ている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2004−342584号公報
【発明の開示】
【0003】
このような装置に用いられる薄板体は、装置を小型化する等の目的を達成するために、極めて薄い。従って、薄板体は、装置に組み込む作業を行う際、或いは、装置に組み込んだ後、外力を受けて変形して種々の問題を発生する。例えば、そのような薄板体がSOFCの単セルとして使用される場合、その薄板体と対向する部分に形成される燃料流路又は空気流路は極めて狭いので、変形した薄板体がこれらの流路を閉じてしまうという問題が発生する可能性がある。また、薄板体が流路を閉じない程度に変形した場合であっても、空気や燃料等の流体が流路を流れる際の圧損が薄板体の変形によって増大するという問題が発生する。従って、本発明の目的の一つは、外力に対して変形し難い焼成された薄板体を提供することにある。更に、本発明の目的の他の一つは、焼成された薄板体が積層体である場合、各層間の熱膨張率差による内部応力に対しても変形し難い薄板体を提供することにある。
【0004】
上記目的を達成するための本発明による薄板体は、少なくともセラミックスシートを含み、且つ、焼成されることによって形成された薄板体である。
更に、この薄板体は、
その厚さが5μm以上且つ100μm以下の均一の厚さであり、
前記薄板体の一つの平面から突出した凸状部を複数備えるとともに同平面から陥没した凹状部を複数備え、
前記薄板体を同薄板体の所定の支持箇所で支持するとともに同薄板体に対し同支持箇所以外の荷重印加箇所に前記平面に直交する方向であって所定の大きさの荷重を加えたときの撓み量が、前記薄板体が前記凸状部及び前記凹状部を備えることなく平坦であると仮定した場合に同仮定した薄板体を前記支持箇所で支持するとともに同仮定した薄板体に対し前記荷重印加箇所に前記平面に直交する方向であって前記所定の大きさの荷重を加えたときの撓み量よりも小さい薄板体である。
【0005】
発明者は、その厚さが5μm以上且つ100μm以下の均一の厚さを有する「セラミックスシートを含む焼成された薄板体」に凸状部及び凹状部を複数備えさせることに成功した。更に、発明者は、このような凸状部及び凹状部を複数有する薄板体は、凸状部及び凹状部を有さない従来の薄板体(材質及び厚さ等の他の条件は本発明の薄板体と同一の条件からなる薄板体)より、所定の荷重に対する撓み量が小さくなることを見出した。即ち、本発明によれば、外力に対して変形し難い薄板体が提供される。
【0006】
この薄板体において、前記複数の凸状部のうちの少なくとも一つの凸状部は同凸状部の最高点に位置する頂部が前記平面に沿う方向に連続的に伸びるように形成され、且つ、前記複数の凹状部のうちの少なくとも一つの凹状部は同凹状部の最低点に位置する底部が前記平面に沿う方向に連続的に伸びるように形成されていることが好ましい。
【0007】
このように、凸状部が「薄板体の平面に沿う所定の方向に長手方向を有する山脈状」であり、凹状部が「薄板体の平面に沿う所定の方向に長手方向を有する溝状」であれば、外力に対して一層変形し難い「セラミックスシートを含む焼成された薄板体」が提供され得る。なお、薄板体の一面側から見た凸状部及び凹状部は、同薄板体の他面側から見ればそれぞれ凹状部及び凸状部である。また、この山脈状の凸状部及び/又は溝状の凹状部は、薄板体上部から見た形状(薄板体の平面視における形状)が直線的であっても良いし、曲線的であっても良い。
【0008】
更に、このような薄板体は、
前記凸状部の最高点に位置する頂部の前記平面からの距離を前記複数の凸状部について単純平均した頂部距離平均値と、前記凹状部の最低点に位置する底部の前記平面からの距離を前記複数の凹状部について単純平均した底部距離平均値と、の和である頂部底部間距離平均値が20μm以上且つ400μm以下であることが好ましい。
【0009】
検討によれば、頂部底部間距離平均値が20μm以上になると、薄板体に同じ撓み量を発生させるのに必要な外力が大きくなることが判明した(図10を参照。)。つまり、頂部底部間距離平均値が20μm以上になると、外力に対して薄板体が極めて変形し難くなることが判明した。一方、頂部底部間距離平均値が400μm以上となると、薄板体の表面に形成された凹状部及び凸状部の曲率が大きくなることに起因して焼成体である薄板体にマイクロクラックが発生する場合があることが判明した。マイクロクラックが生じると、薄板体の強度は極端に低下する。以上のことから、頂部底部間距離平均値は、20μm以上且つ400μm以下であることが好ましい。
【0010】
更に、この場合、前記薄板体は、前記複数の凸状部のうちの一つの凸状部と同一つの凸状部に隣接した前記複数の凹状部うちの一つの凹状部とからなるとともに同一つの凸状部の頂部と同一つの凹状部の底部との前記平面に沿う方向の距離(以下、「頂部底部平面方向距離」と称呼する。)が0.05mm以上且つ1.00mm以下である少なくとも一組の凸状部及び凹状部を含んでいることが望ましい。
【0011】
検討によれば、頂部底部平面方向距離が1.00mm以下となると、薄板体に同じ撓み量を発生させるのに必要な外力が大きくなることが判明した(図11を参照。)。つまり、頂部底部平面方向距離が1.00mm以下となると、外力に対して薄板体が極めて変形し難くなることが判明した。一方、頂部底部平面方向距離が50μm未満であって凸状部と凹状部とが極めて近接した状況になると、焼成体である薄板体にマイクロクラックが発生する場合があることが判明した。マイクロクラックが生じると、薄板体の強度は極端に低下する。以上のことから、頂部底部平面方向距離は、0.05mm(50μm)以上且つ1.00mm(1000μm)以下であることが好ましい。
【0012】
このような薄板体は、セラミックスシート単体から構成されていてもよく、セラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体であってもよい。
【0013】
特に、薄板体がセラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体である場合、その薄板体は外力に対し変形し難いばかりでなく、内部応力が発生しても変形し難いという効果を奏しうる。即ち、前記積層体の薄板体が高温の環境下にて保持されるとき、或いは、そのような薄板体に対し温度差が付与される環境下(例えば片面を加熱するなどの環境下)にてその薄板体が使用されるとき、各層での熱膨張差に伴う内部応力が発生する。しかし、本発明による薄板体は、凹状部及び凸状部を備えるので、そのような内部応力が発生しても変形し難いという効果を奏することができる。
【0014】
前記薄板体がセラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体からなる場合、その薄板体は、前記セラミックスシートが固体電解質ジルコニアであり、同固体電解質ジルコニアの一面に燃料極が形成され、同固体電解質ジルコニアの他面に空気極が形成されてなる薄板体であってもよい。これによれば、外力に対して変形し難いSOFC用の単セルが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示した本発明の実施形態に係る薄板体10は、セラミックスの一種であるジルコニアからなっている。薄板体10は、平面視において長方形(正方形を含む。)である。薄板体10の幅(一辺の長さ)a及び奥行き(他の辺の長さ)bは、5mm以上且つ300mm以下である。
【0016】
薄板体10の厚さtは、全体に渡って均一であり、5μm以上且つ100μm以下(例えば、30μm)である。薄板体10の厚さtが5μmより薄くなると、その薄板体10を形成するための均一なセラミックスグリーンシートを成形することが困難になるからであり、また焼成収縮時にセッターとの引っかかりによりワレが発生してしまうからである。また、薄板体10の厚さtを100μm以下としたのは、薄板体10の厚さtが100μmより厚くなると、薄板体10自身の剛性が増大してしまうので、後述する凸状部11と凹状部12(波状のしわ)を設けることによってもたらされる撓みを抑制する顕著な効果が得られないからである。
【0017】
薄板体10は、図1及び薄板体10の部分拡大斜視図である図2に示したように、薄板体10の一つの平面(例えば、表面及び裏面のうちの何れかの面)Pから突出した凸状部11と、その平面Pから陥没した凹状部12と、をそれぞれ複数、平面P上において分布上の偏りが略ないように(略均一に)備えている。それらの凸状部11と凹状部12は、畝、波形のしわ及びリブと称呼することもできる。
【0018】
図2に示したように、複数の凸状部11のうちの少なくとも一つの凸状部は、その一つの凸状部の最高点に位置する頂部11a(図5を参照。)が平面Pに沿う方向に所定の距離だけ(連続的に)伸びるように形成されている。即ち、少なくとも一つの凸状部は、「薄板体10の平面Pに沿う所定の方向に長手方向を有する山脈状」である。同様に、複数の凹状部12のうちの少なくとも一つの凹状部は、その凹状部の最低点に位置する底部12a(図5を参照。)が平面Pに沿う方向(平面Pと平行な方向)に連続的に伸びるように形成されている。即ち、少なくとも一つの凹状部は、「薄板体10の平面Pに沿う所定の方向に長手方向を有する溝状」である。
【0019】
凸状部11は、図3に示したように、円錐台形状を有していてもよい。同様に、凹状部12は、図4に示したように、円錐台形状を有していてもよい。
【0020】
図5に示した頂部11aの平面Pからの距離h1を複数の(総ての)凸状部11について単純平均した頂部距離平均値と、図5に示した底部12aの平面Pからの距離h2を複数の(総ての)凹状部12について単純平均した底部距離平均値と、の和である頂部底部間距離平均値は、20μm以上且つ400μm以下である。
【0021】
また、薄板体10は、複数の凸状部のうちの一つの凸状部と同一つの凸状部に隣接した複数の凹状部うちの一つの凹状部とからなるとともに同一つの凸状部の頂部11aと同一つの凹状部の底部12aとの平面Pに沿う方向の距離(w/2)が0.05mm以上且つ1.00mm以下である少なくとも一組の凸状部及び凹状部を含んでいる。
【0022】
ここで、薄板体10が凸状部11及び凹状部12を備えることにより、どのように変形し難くなるかについて検討した。
【0023】
この検討のため、図6及び図7に示したように、薄板体10の左右方向両端の近傍部位を距離Lを隔てて支持し(即ち、梁の長さをLとし)、その薄板体10に対して、薄板体10の平面Pに直交する方向の荷重Fを加える。荷重Fを加える点(荷重印加箇所)は、薄板体10の中央(2箇所の支持部位のそれぞれから距離L/2の位置、且つ、奥行き方向の手前又は後方の辺から距離b/2の位置)である。この薄板体10のサンプルにおいて、距離Lは40mm、距離bは30mm、厚みtは30μmである。また、薄板体10の材質はジルコニアである。
【0024】
いま、薄板体10に凸状部11及び凹状部12が存在しないと仮定し、図8に示したように、荷重Fを加えた位置における平面Pに直交する向き(荷重Fの向き)の撓み量をyとすると、撓み量yは材料力学上、下記(1)式のように表される。なお、以下において、凸状部11及び凹状部12を備えない薄板体を仮想薄板体と称呼する。
【数1】
【0025】
ここで、断面2次モーメントIは(2)式のように表される。
【数2】
【0026】
従って、(2)式を(1)式に代入することにより、撓み量yは下記(3)式のように表される。
【数3】
【0027】
この(3)式から、荷重F、ヤング率E(ジルコニアの場合、E=200GPa)が一定であると仮定すると、撓み量yは、梁の長さLの3乗に比例し、奥行きの長さbに反比例し、且つ、薄板体の厚さtの3乗に反比例することが理解される。そこで、梁の長さLと奥行きの長さbを一定とすると、撓み量yは厚さtの3乗に反比例する。従って、撓み量yと厚さtとの関係は、図9の破線の曲線C1により表される。
【0028】
これに対し、上述した凸状部11及び凹状部12を備える薄板体10においては、荷重F、ヤング率E、梁の長さL及び奥行きの長さb等が仮想薄板体と同じであっても、撓み量yと厚さtとの関係は、図9の実線の曲線C2により表したように変化する。即ち、凸状部11及び凹状部12を備える薄板体10の撓み量yは、厚さtが薄板体10と同じである仮想薄板体の撓み量yよりも小さくなる。
【0029】
例えば、仮想薄板体を1mm撓ませる(y=1mm)のに必要な荷重Fを実測したところ、5.1g重であった。
【0030】
これに対し、凸状部11及び凹状部12を備える薄板体10を1mm撓ませる(y=1mm)のに必要な荷重Fを実測したところ、78.3g重であった。即ち、薄板体10を所定量だけ撓ませるのに必要な荷重は、仮想薄板体を同所定量だけ撓ませるのに必要な荷重よりも非常に大きい値となっていた。
【0031】
また、前述した頂部底部間距離平均値と「セラミックス薄板体を1mm撓ませるのに必要な荷重」との関係を調査し、その結果を図10に示した。図10から、頂部底部間距離平均値が20μm以上になると、急激に前記荷重が大きくなることがわかる。一方、頂部底部間距離平均値が400μm以上となると、薄板体の表面に形成された凹状部及び凸状部の曲率が大きくなることに起因して焼成体である薄板体にマイクロクラックが発生するため、極端に強度の弱い薄板体が発生した。以上のことから、頂部底部間距離平均値は、20μm以上且つ400μm以下であることが好ましい。
【0032】
更に、前述した「一つの凸状部の頂部11aと同一つの凹状部の底部12aとの平面Pに沿う方向の距離(w/2)」(即ち、頂部底部平面方向距離)と「セラミックス薄板体を1mm撓ませるのに必要な荷重」との関係を調査し、その結果を図11に示した。図11から、頂部底部平面方向距離が1000μm(1.00mm)以下となると、前記荷重が急激に大きくなることがわかる。従って、頂部底部平面方向距離を1000μm(1mm)以下とすると、変形に強い薄板体10を得ることができる。一方、頂部底部平面方向距離が50μm未満であって凸状部11と凹状部12とが極めて近接した状況になると、焼成体である薄板体にマイクロクラックが発生するため、極端に強度の弱い薄板体が発生した。以上のことから、頂部底部平面方向距離は、50μm以上且つ1mm以下であることが好ましい。
【0033】
次に、薄板体10の製造方法について説明する。
(第1製法例)
第1製法例においては、先ず、図12の(A)に示したように、セラミックスのグリーンシート10Aと、押し型20とを準備する。押し型20の上面には、凸状部11及び凹状部12を形成するための起伏が形成されている。次いで、グリーンシート10Aを押し型20の上面に対して押圧する。この結果、図12の(B)に示したように、グリーンシートの一面側に凸状部11及び凹状部12となる起伏が形成される。そして、このグリーンシート10Aを所定の焼成条件(例えば、1400℃、1時間)にて焼成する。この結果、図1に示した凸状部11及び凹状部12を有する薄板体10が形成される。
【0034】
(第2製法例)
第2製法例においては、図13の(A)に示したように、セラミックスのグリーンシート10Aと、焼成用セッター30とを準備する。この焼成用セッターの上面には、研削、研磨及びブラスト処理等のうちの適当な手法により、凸状部11及び凹状部12を形成するための起伏が形成されている。次に、図13の(B)に示したように、グリーンシート10Aを焼成用セッター30の上面に対して押圧しながら、このグリーンシート10Aを所定の焼成条件(例えば、1400℃、1時間)にて焼成する。この結果、図1に示した凸状部11及び凹状部12を有する薄板体10が形成される。
【0035】
(第3製法例)
第3製法例においては、図14の(A)に示したように、セラミックスのグリーンシート10Aを準備し、そのグリーンシート10Aの両端の片面側(或いは、グリーンシート10Aの周辺部)に焼成前セラミックス小片10Bを印刷により成形する。焼成前セラミックス小片10Bは、グリーンシート10Aと同種のセラミックスからなる。
【0036】
次に、グリーンシート10A及び焼成前セラミックス小片10Bを所定の焼成条件(例えば、1400℃、1時間)にて焼成する。この結果、グリーンシート10Aと焼成前セラミックス小片10Bとの収縮差によって、図14の(B)に示したように、グリーンシート10Aが反りを有する薄板体10Cとなる。なお、グリーンシート10Aとセラミックス小片10Bとの焼成収縮差は、例えば粒子径が異なる材料を使用することなどにより容易に制御可能である。
【0037】
次に、薄板体10Cの反りを修正するために、図14の(C)に示したように、薄板体10Cの上部におもり40を載置し、この状態にて(即ち、おもり40により薄板体10Cを伸ばすように下方に押圧しながら)、薄板体10Cを所定の条件にて焼成する(例えば、図14に示した凸状部11及び凹状部12を形成するための起伏が形成されているセッター30の上に薄板体10Cを載置するとともに、300gのアルミナ製のおもり40を薄板体10Cの上に載せた状態において、1400℃・1時間の条件にて焼成する。)。その結果、図14の(D)に示したように、図1に示した凸状部11及び凹状部12を有する薄板体10が形成される。
【0038】
なお、グリーンシート10Aに対して焼成前セラミックス10Bを印刷することなく、グリーンシート10Aを所定の条件にて焼成することにより、図14の(B)に示したような反りを有する薄板体10Cを得ることもできる。即ち、例えば、セッター中央部がくり抜かれた(すなわち4方の外枠のみがある)セッター上にグリーンシート10Aを置いた状態にてグリーンシート10Aを焼成すれば、グリーンシート10Aの中央部が自重によって撓み、焼成後において中央部が凹形状となった反りを有する薄板体10Cを得ることができる。そして、その後、上述した第3製法例と同じ方法により、薄板体10を製造することもできる。
【0039】
(第1変形例)
次に、本発明による薄板体の各種変形例について説明する。図15に示したように、本発明の第1変形例に係る薄板体51は、薄板体51の周辺部のみに凸状部11と凹状部12とを備えている。この薄板体51に対して、図6乃至図8を用いて説明した場合と同じ条件(梁の長さL=40mm、奥行きb=30mm、厚みt=30μm、材質はジルコニア)にて荷重を加え、薄板体51を1mm撓ませる(y=1mm)のに必要な荷重Fを実測したところ、50.2g重であった。このように、薄板体51の周辺部のみに凸状部11と凹状部12を形成させた場合であっても、凸状部11及び凹状部12を備えない上記仮想薄板体と比較して、外力に対して極めて変形しにくい薄板体が提供されることが理解できる。
【0040】
(第2変形例)
図16に示したように、本発明の第2変形例に係る薄板体52は、薄板体52の中央部のみに凸状部11と凹状部12とを備えている。
(第3変形例)
図17に示したように、本発明の第3変形例に係る薄板体53は、山脈状の凸状部11及び溝状の凹状部12が方向性を有して(同一方向に)整列されているものである。
【0041】
(第4変形例)
図18に示したように、本発明の第4変形例に係る薄板体54は、凸状部11及び凹状部12が規則的に交互に整列されたもの(メッシュ形状に沿った凸状部11及び凹状部12を備えたもの)である。即ち、波形のしわの尾根が正方格子に沿うように形成されていてもよい。
なお、これらの第1変形例〜第4変形例の薄板体51〜54も、第1製法例の押し型20の上面に形成される起伏の形状、又は、第2製法例の焼成用セッターの上面に形成される起伏の形状を適宜設定することにより簡単に製造することができる。
【0042】
例えば、図18に示した薄板体54は、図12を参照して説明した第1製法例において、押し型20として金属メッシュを使用することにより製造できる。より具体的に述べると、セラミックスのグリーンシート10Aと金属メッシュからなる押し型20とを、例えば5〜100kgf/cm2程度の加重を印加しながら互いに押圧させる。これにより、セラミックスのグリーンシート10Aの表面にメッシュ形状に沿った凹上部及び凸状部を形成することができる。この凹上部及び凸状部の深さは荷重により制御可能である。そして、そのグリーンシート10Aを前述したように焼成する。この結果、図18に示した凸状部11及び凹状部12を有する薄板体54が容易に形成される。
【0043】
(第5変形例)
図19に示したように、本発明の第5変形例に係る薄板体55は、セラミックスシート55aと、セラミックスシート55aとは熱膨張率が相違する材料からなるシート55b,55cと、の積層体である。この場合、セラミックスシート55aは固体電解質ジルコニア(YSZ;イットリア安定化ジルコニア)である。シート55bは、固体電解質ジルコニア55aの一面に形成された燃料極である。この燃料極は、Ni+YSZサーメットからなり、多孔質体である。シート55cは、固体電解質ジルコニア55aの他面に形成された空気極である。この空気極は、LSM(La(Sr)MnO3:ランタンストロンチウムマンガナイト)からなり、多孔質体である。従って、薄板体55は、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell;固体電解質形燃料電池)の単セルとして使用される。
【0044】
薄板体55は、グリーンシート法により作成したセラミックスシート(ジルコニアテープ)55aを1400℃・1時間にて焼成し、その焼成体の下面にシート(燃料極となる層)55bを印刷法により形成してから1400℃・1時間にて焼成し、更に、その焼成体の上面にシート(空気極となる層)55cを同じく印刷法により形成してから1200℃・1時間にて焼成することにより形成される。なお、薄板体55においては、セラミックスシート(緻密なジルコニア固体電解質層)55aの厚さを30μm、シート(燃料極層)55bの厚さを10μm、シート(空気極層)55cの厚さを10μmとした。薄板体55のサイズは30mm×30mmとした。
【0045】
ところで、セラミックスシート(緻密なジルコニア固体電解質層)55aを構成するYSZの熱膨張率と、シート(燃料極層)55bを構成するNi+YSZサーメットの熱膨張率と、シート(空気極層)55cを構成するLSMの熱膨張率と、は互いに相違している。従って、それぞれが焼成されるとき焼成収縮差と熱膨張差があることから、焼成後には残留応力に伴う基板反りが発生する。そして、その後、例えば上記第3製法により「波状のしわ」を導入することが可能である。
【0046】
なお、ジルコニアテープ55aの一面にシート(燃料極となる層)55bを印刷法により形成してから、両者を1400℃・1時間にて焼成し、その後、シート(空気極層)55cを上述した方法により形成してもよい。或いは、ジルコニアテープ55aと燃料極層となるテープ55bを積層一体化し、両者を1400℃・1時間にて焼成し、その後、シート(空気極層)55cを上述した方法により形成してもよい。
【0047】
この実施形態の薄板体55のように、薄板体55がセラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体である場合、その薄板体は外力に対し変形し難いばかりでなく、内部応力が発生しても変形し難いという効果を奏し得る。即ち、積層体の薄板体55が高温の環境下にて保持されるとき、或いは、薄板体55に対し温度差が付与される環境下(例えば片面を加熱するなどの環境下)にて薄板体55が使用されるとき、各層での熱膨張差に伴う内部応力が発生する。しかし、薄板体55は、凹状部11及び凸状部12をそれぞれ複数備えるので、そのような内部応力が発生しても変形し難いという効果を奏することができる。
【0048】
以上、説明したように、本発明の実施形態及び変形例に係る薄板体は、凸状部及び凹状部を有していて、凸状部及び凹状部を有さない同種の薄板体(仮想薄板体)よりも、変形し難い薄板体となっている。従って、この薄板体を使用すれば、外部からの力が加わった場合でも所期の性能を発揮し易いデバイス、或いは、製造し易いデバイス、が提供される。
【0049】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各薄板体は、アルミナ等の通常のセラミックスからなっていてもよい。更に、上記各薄板体は、窒化珪素及び炭化珪素等の高耐熱衝撃性セラミックスであってもよく、イットリア部分安定化ジルコニアであってもよい。更に、上記各薄板体の平面視における形状は、正方形や長方形に限らず、これらを含む正多角形、多角形、円形、長円形及び楕円形等であってもよい。
【0050】
また、第5変形例の薄板体55において、シート(燃料極層)55bは、白金、白金−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、ルテニウム、ルテニウム−ジルコニアサーメット等から構成することができる。
【0051】
更に、シート(空気極層)55cは、例えば、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物(例えば、上述のランタンマンガナイトのほか、ランタンコバルタイト)から構成することができる。ランタンコバルタイト及びランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト(ランタンマンガナイトの場合)、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。また、パラジウム、白金、ルテニウム、白金−ジルコニアサーメット、パラジウム−ジルコニアサーメット、ルテニウム−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、パラジウム−酸化セリウムサーメット、ルテニウム−酸化セリウムサーメットであってもよい。
【0052】
加えて、第5変形例の薄板体55は、3層の積層体であったが、積層数は2層又は3層以上であってもよい(例えば、4層〜7層)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る薄板体の斜視図である。
【図2】図1の薄板体が備える凸状部及び凹状部を示した部分拡大斜視図である。
【図3】図1の薄板体が備える凸状部の他の一例を示す斜視図である。
【図4】図1の薄板体が備える凹状部の他の一例を示す斜視図である。
【図5】図1の薄板体の断面図である。
【図6】薄板体の大きさ及び荷重印加箇所等を示した同薄板体の斜視図である。
【図7】図6に示した薄板体の正面図である。
【図8】図6に示した薄板体が変形した場合の同薄板体の正面図である。
【図9】凸状部及び凹状部を備えない仮想薄板体と凸状部及び凹状部を備える本発明の薄板体とにおける厚さと撓み量の関係を示すグラフである。
【図10】頂部底部間距離平均値とセラミックス薄板体を所定量だけ撓ませるのに必要な荷重との関係を示したグラフである。
【図11】頂部底部平面方向距離とセラミックス薄板体を所定量だけ撓ませるのに必要な荷重との関係を示したグラフである。
【図12】本発明による薄板体の第1製法例の工程図である。
【図13】本発明による薄板体の第2製法例の工程図である。
【図14】本発明による薄板体の第3製法例の工程図である。
【図15】本発明による薄板体の第1変形例の斜視図である。
【図16】本発明による薄板体の第2変形例の斜視図である。
【図17】本発明による薄板体の第3変形例の斜視図である。
【図18】本発明による薄板体の第4変形例の斜視図である。
【図19】本発明による薄板体の第5変形例の斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
10、51〜55…薄板体、11…凸状部、11a…頂部、12…凹状部、12a…底部、30…焼成用セッター、40…おもり、P…平面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックススシートを含む焼成された薄板体であって、その厚さが5μm以上且つ100μm以下で均一である薄板体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セラミックスシートを含む焼成された薄板体は、例えば、センサ、アクチュエータ及び固体酸化物形燃料電池(SOFC)の単セル等の種々の装置に用いられて来ている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2004−342584号公報
【発明の開示】
【0003】
このような装置に用いられる薄板体は、装置を小型化する等の目的を達成するために、極めて薄い。従って、薄板体は、装置に組み込む作業を行う際、或いは、装置に組み込んだ後、外力を受けて変形して種々の問題を発生する。例えば、そのような薄板体がSOFCの単セルとして使用される場合、その薄板体と対向する部分に形成される燃料流路又は空気流路は極めて狭いので、変形した薄板体がこれらの流路を閉じてしまうという問題が発生する可能性がある。また、薄板体が流路を閉じない程度に変形した場合であっても、空気や燃料等の流体が流路を流れる際の圧損が薄板体の変形によって増大するという問題が発生する。従って、本発明の目的の一つは、外力に対して変形し難い焼成された薄板体を提供することにある。更に、本発明の目的の他の一つは、焼成された薄板体が積層体である場合、各層間の熱膨張率差による内部応力に対しても変形し難い薄板体を提供することにある。
【0004】
上記目的を達成するための本発明による薄板体は、少なくともセラミックスシートを含み、且つ、焼成されることによって形成された薄板体である。
更に、この薄板体は、
その厚さが5μm以上且つ100μm以下の均一の厚さであり、
前記薄板体の一つの平面から突出した凸状部を複数備えるとともに同平面から陥没した凹状部を複数備え、
前記薄板体を同薄板体の所定の支持箇所で支持するとともに同薄板体に対し同支持箇所以外の荷重印加箇所に前記平面に直交する方向であって所定の大きさの荷重を加えたときの撓み量が、前記薄板体が前記凸状部及び前記凹状部を備えることなく平坦であると仮定した場合に同仮定した薄板体を前記支持箇所で支持するとともに同仮定した薄板体に対し前記荷重印加箇所に前記平面に直交する方向であって前記所定の大きさの荷重を加えたときの撓み量よりも小さい薄板体である。
【0005】
発明者は、その厚さが5μm以上且つ100μm以下の均一の厚さを有する「セラミックスシートを含む焼成された薄板体」に凸状部及び凹状部を複数備えさせることに成功した。更に、発明者は、このような凸状部及び凹状部を複数有する薄板体は、凸状部及び凹状部を有さない従来の薄板体(材質及び厚さ等の他の条件は本発明の薄板体と同一の条件からなる薄板体)より、所定の荷重に対する撓み量が小さくなることを見出した。即ち、本発明によれば、外力に対して変形し難い薄板体が提供される。
【0006】
この薄板体において、前記複数の凸状部のうちの少なくとも一つの凸状部は同凸状部の最高点に位置する頂部が前記平面に沿う方向に連続的に伸びるように形成され、且つ、前記複数の凹状部のうちの少なくとも一つの凹状部は同凹状部の最低点に位置する底部が前記平面に沿う方向に連続的に伸びるように形成されていることが好ましい。
【0007】
このように、凸状部が「薄板体の平面に沿う所定の方向に長手方向を有する山脈状」であり、凹状部が「薄板体の平面に沿う所定の方向に長手方向を有する溝状」であれば、外力に対して一層変形し難い「セラミックスシートを含む焼成された薄板体」が提供され得る。なお、薄板体の一面側から見た凸状部及び凹状部は、同薄板体の他面側から見ればそれぞれ凹状部及び凸状部である。また、この山脈状の凸状部及び/又は溝状の凹状部は、薄板体上部から見た形状(薄板体の平面視における形状)が直線的であっても良いし、曲線的であっても良い。
【0008】
更に、このような薄板体は、
前記凸状部の最高点に位置する頂部の前記平面からの距離を前記複数の凸状部について単純平均した頂部距離平均値と、前記凹状部の最低点に位置する底部の前記平面からの距離を前記複数の凹状部について単純平均した底部距離平均値と、の和である頂部底部間距離平均値が20μm以上且つ400μm以下であることが好ましい。
【0009】
検討によれば、頂部底部間距離平均値が20μm以上になると、薄板体に同じ撓み量を発生させるのに必要な外力が大きくなることが判明した(図10を参照。)。つまり、頂部底部間距離平均値が20μm以上になると、外力に対して薄板体が極めて変形し難くなることが判明した。一方、頂部底部間距離平均値が400μm以上となると、薄板体の表面に形成された凹状部及び凸状部の曲率が大きくなることに起因して焼成体である薄板体にマイクロクラックが発生する場合があることが判明した。マイクロクラックが生じると、薄板体の強度は極端に低下する。以上のことから、頂部底部間距離平均値は、20μm以上且つ400μm以下であることが好ましい。
【0010】
更に、この場合、前記薄板体は、前記複数の凸状部のうちの一つの凸状部と同一つの凸状部に隣接した前記複数の凹状部うちの一つの凹状部とからなるとともに同一つの凸状部の頂部と同一つの凹状部の底部との前記平面に沿う方向の距離(以下、「頂部底部平面方向距離」と称呼する。)が0.05mm以上且つ1.00mm以下である少なくとも一組の凸状部及び凹状部を含んでいることが望ましい。
【0011】
検討によれば、頂部底部平面方向距離が1.00mm以下となると、薄板体に同じ撓み量を発生させるのに必要な外力が大きくなることが判明した(図11を参照。)。つまり、頂部底部平面方向距離が1.00mm以下となると、外力に対して薄板体が極めて変形し難くなることが判明した。一方、頂部底部平面方向距離が50μm未満であって凸状部と凹状部とが極めて近接した状況になると、焼成体である薄板体にマイクロクラックが発生する場合があることが判明した。マイクロクラックが生じると、薄板体の強度は極端に低下する。以上のことから、頂部底部平面方向距離は、0.05mm(50μm)以上且つ1.00mm(1000μm)以下であることが好ましい。
【0012】
このような薄板体は、セラミックスシート単体から構成されていてもよく、セラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体であってもよい。
【0013】
特に、薄板体がセラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体である場合、その薄板体は外力に対し変形し難いばかりでなく、内部応力が発生しても変形し難いという効果を奏しうる。即ち、前記積層体の薄板体が高温の環境下にて保持されるとき、或いは、そのような薄板体に対し温度差が付与される環境下(例えば片面を加熱するなどの環境下)にてその薄板体が使用されるとき、各層での熱膨張差に伴う内部応力が発生する。しかし、本発明による薄板体は、凹状部及び凸状部を備えるので、そのような内部応力が発生しても変形し難いという効果を奏することができる。
【0014】
前記薄板体がセラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体からなる場合、その薄板体は、前記セラミックスシートが固体電解質ジルコニアであり、同固体電解質ジルコニアの一面に燃料極が形成され、同固体電解質ジルコニアの他面に空気極が形成されてなる薄板体であってもよい。これによれば、外力に対して変形し難いSOFC用の単セルが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示した本発明の実施形態に係る薄板体10は、セラミックスの一種であるジルコニアからなっている。薄板体10は、平面視において長方形(正方形を含む。)である。薄板体10の幅(一辺の長さ)a及び奥行き(他の辺の長さ)bは、5mm以上且つ300mm以下である。
【0016】
薄板体10の厚さtは、全体に渡って均一であり、5μm以上且つ100μm以下(例えば、30μm)である。薄板体10の厚さtが5μmより薄くなると、その薄板体10を形成するための均一なセラミックスグリーンシートを成形することが困難になるからであり、また焼成収縮時にセッターとの引っかかりによりワレが発生してしまうからである。また、薄板体10の厚さtを100μm以下としたのは、薄板体10の厚さtが100μmより厚くなると、薄板体10自身の剛性が増大してしまうので、後述する凸状部11と凹状部12(波状のしわ)を設けることによってもたらされる撓みを抑制する顕著な効果が得られないからである。
【0017】
薄板体10は、図1及び薄板体10の部分拡大斜視図である図2に示したように、薄板体10の一つの平面(例えば、表面及び裏面のうちの何れかの面)Pから突出した凸状部11と、その平面Pから陥没した凹状部12と、をそれぞれ複数、平面P上において分布上の偏りが略ないように(略均一に)備えている。それらの凸状部11と凹状部12は、畝、波形のしわ及びリブと称呼することもできる。
【0018】
図2に示したように、複数の凸状部11のうちの少なくとも一つの凸状部は、その一つの凸状部の最高点に位置する頂部11a(図5を参照。)が平面Pに沿う方向に所定の距離だけ(連続的に)伸びるように形成されている。即ち、少なくとも一つの凸状部は、「薄板体10の平面Pに沿う所定の方向に長手方向を有する山脈状」である。同様に、複数の凹状部12のうちの少なくとも一つの凹状部は、その凹状部の最低点に位置する底部12a(図5を参照。)が平面Pに沿う方向(平面Pと平行な方向)に連続的に伸びるように形成されている。即ち、少なくとも一つの凹状部は、「薄板体10の平面Pに沿う所定の方向に長手方向を有する溝状」である。
【0019】
凸状部11は、図3に示したように、円錐台形状を有していてもよい。同様に、凹状部12は、図4に示したように、円錐台形状を有していてもよい。
【0020】
図5に示した頂部11aの平面Pからの距離h1を複数の(総ての)凸状部11について単純平均した頂部距離平均値と、図5に示した底部12aの平面Pからの距離h2を複数の(総ての)凹状部12について単純平均した底部距離平均値と、の和である頂部底部間距離平均値は、20μm以上且つ400μm以下である。
【0021】
また、薄板体10は、複数の凸状部のうちの一つの凸状部と同一つの凸状部に隣接した複数の凹状部うちの一つの凹状部とからなるとともに同一つの凸状部の頂部11aと同一つの凹状部の底部12aとの平面Pに沿う方向の距離(w/2)が0.05mm以上且つ1.00mm以下である少なくとも一組の凸状部及び凹状部を含んでいる。
【0022】
ここで、薄板体10が凸状部11及び凹状部12を備えることにより、どのように変形し難くなるかについて検討した。
【0023】
この検討のため、図6及び図7に示したように、薄板体10の左右方向両端の近傍部位を距離Lを隔てて支持し(即ち、梁の長さをLとし)、その薄板体10に対して、薄板体10の平面Pに直交する方向の荷重Fを加える。荷重Fを加える点(荷重印加箇所)は、薄板体10の中央(2箇所の支持部位のそれぞれから距離L/2の位置、且つ、奥行き方向の手前又は後方の辺から距離b/2の位置)である。この薄板体10のサンプルにおいて、距離Lは40mm、距離bは30mm、厚みtは30μmである。また、薄板体10の材質はジルコニアである。
【0024】
いま、薄板体10に凸状部11及び凹状部12が存在しないと仮定し、図8に示したように、荷重Fを加えた位置における平面Pに直交する向き(荷重Fの向き)の撓み量をyとすると、撓み量yは材料力学上、下記(1)式のように表される。なお、以下において、凸状部11及び凹状部12を備えない薄板体を仮想薄板体と称呼する。
【数1】
【0025】
ここで、断面2次モーメントIは(2)式のように表される。
【数2】
【0026】
従って、(2)式を(1)式に代入することにより、撓み量yは下記(3)式のように表される。
【数3】
【0027】
この(3)式から、荷重F、ヤング率E(ジルコニアの場合、E=200GPa)が一定であると仮定すると、撓み量yは、梁の長さLの3乗に比例し、奥行きの長さbに反比例し、且つ、薄板体の厚さtの3乗に反比例することが理解される。そこで、梁の長さLと奥行きの長さbを一定とすると、撓み量yは厚さtの3乗に反比例する。従って、撓み量yと厚さtとの関係は、図9の破線の曲線C1により表される。
【0028】
これに対し、上述した凸状部11及び凹状部12を備える薄板体10においては、荷重F、ヤング率E、梁の長さL及び奥行きの長さb等が仮想薄板体と同じであっても、撓み量yと厚さtとの関係は、図9の実線の曲線C2により表したように変化する。即ち、凸状部11及び凹状部12を備える薄板体10の撓み量yは、厚さtが薄板体10と同じである仮想薄板体の撓み量yよりも小さくなる。
【0029】
例えば、仮想薄板体を1mm撓ませる(y=1mm)のに必要な荷重Fを実測したところ、5.1g重であった。
【0030】
これに対し、凸状部11及び凹状部12を備える薄板体10を1mm撓ませる(y=1mm)のに必要な荷重Fを実測したところ、78.3g重であった。即ち、薄板体10を所定量だけ撓ませるのに必要な荷重は、仮想薄板体を同所定量だけ撓ませるのに必要な荷重よりも非常に大きい値となっていた。
【0031】
また、前述した頂部底部間距離平均値と「セラミックス薄板体を1mm撓ませるのに必要な荷重」との関係を調査し、その結果を図10に示した。図10から、頂部底部間距離平均値が20μm以上になると、急激に前記荷重が大きくなることがわかる。一方、頂部底部間距離平均値が400μm以上となると、薄板体の表面に形成された凹状部及び凸状部の曲率が大きくなることに起因して焼成体である薄板体にマイクロクラックが発生するため、極端に強度の弱い薄板体が発生した。以上のことから、頂部底部間距離平均値は、20μm以上且つ400μm以下であることが好ましい。
【0032】
更に、前述した「一つの凸状部の頂部11aと同一つの凹状部の底部12aとの平面Pに沿う方向の距離(w/2)」(即ち、頂部底部平面方向距離)と「セラミックス薄板体を1mm撓ませるのに必要な荷重」との関係を調査し、その結果を図11に示した。図11から、頂部底部平面方向距離が1000μm(1.00mm)以下となると、前記荷重が急激に大きくなることがわかる。従って、頂部底部平面方向距離を1000μm(1mm)以下とすると、変形に強い薄板体10を得ることができる。一方、頂部底部平面方向距離が50μm未満であって凸状部11と凹状部12とが極めて近接した状況になると、焼成体である薄板体にマイクロクラックが発生するため、極端に強度の弱い薄板体が発生した。以上のことから、頂部底部平面方向距離は、50μm以上且つ1mm以下であることが好ましい。
【0033】
次に、薄板体10の製造方法について説明する。
(第1製法例)
第1製法例においては、先ず、図12の(A)に示したように、セラミックスのグリーンシート10Aと、押し型20とを準備する。押し型20の上面には、凸状部11及び凹状部12を形成するための起伏が形成されている。次いで、グリーンシート10Aを押し型20の上面に対して押圧する。この結果、図12の(B)に示したように、グリーンシートの一面側に凸状部11及び凹状部12となる起伏が形成される。そして、このグリーンシート10Aを所定の焼成条件(例えば、1400℃、1時間)にて焼成する。この結果、図1に示した凸状部11及び凹状部12を有する薄板体10が形成される。
【0034】
(第2製法例)
第2製法例においては、図13の(A)に示したように、セラミックスのグリーンシート10Aと、焼成用セッター30とを準備する。この焼成用セッターの上面には、研削、研磨及びブラスト処理等のうちの適当な手法により、凸状部11及び凹状部12を形成するための起伏が形成されている。次に、図13の(B)に示したように、グリーンシート10Aを焼成用セッター30の上面に対して押圧しながら、このグリーンシート10Aを所定の焼成条件(例えば、1400℃、1時間)にて焼成する。この結果、図1に示した凸状部11及び凹状部12を有する薄板体10が形成される。
【0035】
(第3製法例)
第3製法例においては、図14の(A)に示したように、セラミックスのグリーンシート10Aを準備し、そのグリーンシート10Aの両端の片面側(或いは、グリーンシート10Aの周辺部)に焼成前セラミックス小片10Bを印刷により成形する。焼成前セラミックス小片10Bは、グリーンシート10Aと同種のセラミックスからなる。
【0036】
次に、グリーンシート10A及び焼成前セラミックス小片10Bを所定の焼成条件(例えば、1400℃、1時間)にて焼成する。この結果、グリーンシート10Aと焼成前セラミックス小片10Bとの収縮差によって、図14の(B)に示したように、グリーンシート10Aが反りを有する薄板体10Cとなる。なお、グリーンシート10Aとセラミックス小片10Bとの焼成収縮差は、例えば粒子径が異なる材料を使用することなどにより容易に制御可能である。
【0037】
次に、薄板体10Cの反りを修正するために、図14の(C)に示したように、薄板体10Cの上部におもり40を載置し、この状態にて(即ち、おもり40により薄板体10Cを伸ばすように下方に押圧しながら)、薄板体10Cを所定の条件にて焼成する(例えば、図14に示した凸状部11及び凹状部12を形成するための起伏が形成されているセッター30の上に薄板体10Cを載置するとともに、300gのアルミナ製のおもり40を薄板体10Cの上に載せた状態において、1400℃・1時間の条件にて焼成する。)。その結果、図14の(D)に示したように、図1に示した凸状部11及び凹状部12を有する薄板体10が形成される。
【0038】
なお、グリーンシート10Aに対して焼成前セラミックス10Bを印刷することなく、グリーンシート10Aを所定の条件にて焼成することにより、図14の(B)に示したような反りを有する薄板体10Cを得ることもできる。即ち、例えば、セッター中央部がくり抜かれた(すなわち4方の外枠のみがある)セッター上にグリーンシート10Aを置いた状態にてグリーンシート10Aを焼成すれば、グリーンシート10Aの中央部が自重によって撓み、焼成後において中央部が凹形状となった反りを有する薄板体10Cを得ることができる。そして、その後、上述した第3製法例と同じ方法により、薄板体10を製造することもできる。
【0039】
(第1変形例)
次に、本発明による薄板体の各種変形例について説明する。図15に示したように、本発明の第1変形例に係る薄板体51は、薄板体51の周辺部のみに凸状部11と凹状部12とを備えている。この薄板体51に対して、図6乃至図8を用いて説明した場合と同じ条件(梁の長さL=40mm、奥行きb=30mm、厚みt=30μm、材質はジルコニア)にて荷重を加え、薄板体51を1mm撓ませる(y=1mm)のに必要な荷重Fを実測したところ、50.2g重であった。このように、薄板体51の周辺部のみに凸状部11と凹状部12を形成させた場合であっても、凸状部11及び凹状部12を備えない上記仮想薄板体と比較して、外力に対して極めて変形しにくい薄板体が提供されることが理解できる。
【0040】
(第2変形例)
図16に示したように、本発明の第2変形例に係る薄板体52は、薄板体52の中央部のみに凸状部11と凹状部12とを備えている。
(第3変形例)
図17に示したように、本発明の第3変形例に係る薄板体53は、山脈状の凸状部11及び溝状の凹状部12が方向性を有して(同一方向に)整列されているものである。
【0041】
(第4変形例)
図18に示したように、本発明の第4変形例に係る薄板体54は、凸状部11及び凹状部12が規則的に交互に整列されたもの(メッシュ形状に沿った凸状部11及び凹状部12を備えたもの)である。即ち、波形のしわの尾根が正方格子に沿うように形成されていてもよい。
なお、これらの第1変形例〜第4変形例の薄板体51〜54も、第1製法例の押し型20の上面に形成される起伏の形状、又は、第2製法例の焼成用セッターの上面に形成される起伏の形状を適宜設定することにより簡単に製造することができる。
【0042】
例えば、図18に示した薄板体54は、図12を参照して説明した第1製法例において、押し型20として金属メッシュを使用することにより製造できる。より具体的に述べると、セラミックスのグリーンシート10Aと金属メッシュからなる押し型20とを、例えば5〜100kgf/cm2程度の加重を印加しながら互いに押圧させる。これにより、セラミックスのグリーンシート10Aの表面にメッシュ形状に沿った凹上部及び凸状部を形成することができる。この凹上部及び凸状部の深さは荷重により制御可能である。そして、そのグリーンシート10Aを前述したように焼成する。この結果、図18に示した凸状部11及び凹状部12を有する薄板体54が容易に形成される。
【0043】
(第5変形例)
図19に示したように、本発明の第5変形例に係る薄板体55は、セラミックスシート55aと、セラミックスシート55aとは熱膨張率が相違する材料からなるシート55b,55cと、の積層体である。この場合、セラミックスシート55aは固体電解質ジルコニア(YSZ;イットリア安定化ジルコニア)である。シート55bは、固体電解質ジルコニア55aの一面に形成された燃料極である。この燃料極は、Ni+YSZサーメットからなり、多孔質体である。シート55cは、固体電解質ジルコニア55aの他面に形成された空気極である。この空気極は、LSM(La(Sr)MnO3:ランタンストロンチウムマンガナイト)からなり、多孔質体である。従って、薄板体55は、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell;固体電解質形燃料電池)の単セルとして使用される。
【0044】
薄板体55は、グリーンシート法により作成したセラミックスシート(ジルコニアテープ)55aを1400℃・1時間にて焼成し、その焼成体の下面にシート(燃料極となる層)55bを印刷法により形成してから1400℃・1時間にて焼成し、更に、その焼成体の上面にシート(空気極となる層)55cを同じく印刷法により形成してから1200℃・1時間にて焼成することにより形成される。なお、薄板体55においては、セラミックスシート(緻密なジルコニア固体電解質層)55aの厚さを30μm、シート(燃料極層)55bの厚さを10μm、シート(空気極層)55cの厚さを10μmとした。薄板体55のサイズは30mm×30mmとした。
【0045】
ところで、セラミックスシート(緻密なジルコニア固体電解質層)55aを構成するYSZの熱膨張率と、シート(燃料極層)55bを構成するNi+YSZサーメットの熱膨張率と、シート(空気極層)55cを構成するLSMの熱膨張率と、は互いに相違している。従って、それぞれが焼成されるとき焼成収縮差と熱膨張差があることから、焼成後には残留応力に伴う基板反りが発生する。そして、その後、例えば上記第3製法により「波状のしわ」を導入することが可能である。
【0046】
なお、ジルコニアテープ55aの一面にシート(燃料極となる層)55bを印刷法により形成してから、両者を1400℃・1時間にて焼成し、その後、シート(空気極層)55cを上述した方法により形成してもよい。或いは、ジルコニアテープ55aと燃料極層となるテープ55bを積層一体化し、両者を1400℃・1時間にて焼成し、その後、シート(空気極層)55cを上述した方法により形成してもよい。
【0047】
この実施形態の薄板体55のように、薄板体55がセラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体である場合、その薄板体は外力に対し変形し難いばかりでなく、内部応力が発生しても変形し難いという効果を奏し得る。即ち、積層体の薄板体55が高温の環境下にて保持されるとき、或いは、薄板体55に対し温度差が付与される環境下(例えば片面を加熱するなどの環境下)にて薄板体55が使用されるとき、各層での熱膨張差に伴う内部応力が発生する。しかし、薄板体55は、凹状部11及び凸状部12をそれぞれ複数備えるので、そのような内部応力が発生しても変形し難いという効果を奏することができる。
【0048】
以上、説明したように、本発明の実施形態及び変形例に係る薄板体は、凸状部及び凹状部を有していて、凸状部及び凹状部を有さない同種の薄板体(仮想薄板体)よりも、変形し難い薄板体となっている。従って、この薄板体を使用すれば、外部からの力が加わった場合でも所期の性能を発揮し易いデバイス、或いは、製造し易いデバイス、が提供される。
【0049】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各薄板体は、アルミナ等の通常のセラミックスからなっていてもよい。更に、上記各薄板体は、窒化珪素及び炭化珪素等の高耐熱衝撃性セラミックスであってもよく、イットリア部分安定化ジルコニアであってもよい。更に、上記各薄板体の平面視における形状は、正方形や長方形に限らず、これらを含む正多角形、多角形、円形、長円形及び楕円形等であってもよい。
【0050】
また、第5変形例の薄板体55において、シート(燃料極層)55bは、白金、白金−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、ルテニウム、ルテニウム−ジルコニアサーメット等から構成することができる。
【0051】
更に、シート(空気極層)55cは、例えば、ランタンを含有するペロブスカイト型複合酸化物(例えば、上述のランタンマンガナイトのほか、ランタンコバルタイト)から構成することができる。ランタンコバルタイト及びランタンマンガナイトは、ストロンチウム、カルシウム、クロム、コバルト(ランタンマンガナイトの場合)、鉄、ニッケル、アルミニウム等をドープしたものであってよい。また、パラジウム、白金、ルテニウム、白金−ジルコニアサーメット、パラジウム−ジルコニアサーメット、ルテニウム−ジルコニアサーメット、白金−酸化セリウムサーメット、パラジウム−酸化セリウムサーメット、ルテニウム−酸化セリウムサーメットであってもよい。
【0052】
加えて、第5変形例の薄板体55は、3層の積層体であったが、積層数は2層又は3層以上であってもよい(例えば、4層〜7層)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る薄板体の斜視図である。
【図2】図1の薄板体が備える凸状部及び凹状部を示した部分拡大斜視図である。
【図3】図1の薄板体が備える凸状部の他の一例を示す斜視図である。
【図4】図1の薄板体が備える凹状部の他の一例を示す斜視図である。
【図5】図1の薄板体の断面図である。
【図6】薄板体の大きさ及び荷重印加箇所等を示した同薄板体の斜視図である。
【図7】図6に示した薄板体の正面図である。
【図8】図6に示した薄板体が変形した場合の同薄板体の正面図である。
【図9】凸状部及び凹状部を備えない仮想薄板体と凸状部及び凹状部を備える本発明の薄板体とにおける厚さと撓み量の関係を示すグラフである。
【図10】頂部底部間距離平均値とセラミックス薄板体を所定量だけ撓ませるのに必要な荷重との関係を示したグラフである。
【図11】頂部底部平面方向距離とセラミックス薄板体を所定量だけ撓ませるのに必要な荷重との関係を示したグラフである。
【図12】本発明による薄板体の第1製法例の工程図である。
【図13】本発明による薄板体の第2製法例の工程図である。
【図14】本発明による薄板体の第3製法例の工程図である。
【図15】本発明による薄板体の第1変形例の斜視図である。
【図16】本発明による薄板体の第2変形例の斜視図である。
【図17】本発明による薄板体の第3変形例の斜視図である。
【図18】本発明による薄板体の第4変形例の斜視図である。
【図19】本発明による薄板体の第5変形例の斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
10、51〜55…薄板体、11…凸状部、11a…頂部、12…凹状部、12a…底部、30…焼成用セッター、40…おもり、P…平面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともセラミックスシートを含む焼成された薄板体であって、
その厚さが5μm以上且つ100μm以下の均一の厚さであり、
前記薄板体の一つの平面から突出した凸状部を複数備えるとともに同平面から陥没した凹状部を複数備え、
前記薄板体を同薄板体の所定の支持箇所で支持するとともに同薄板体に対し同支持箇所以外の荷重印加箇所に前記平面に直交する方向であって所定の大きさの荷重を加えたときの撓み量が、前記薄板体が前記凸状部及び前記凹状部を備えることなく平坦であると仮定した場合に同仮定した薄板体を前記支持箇所で支持するとともに同仮定した薄板体に対し前記荷重印加箇所に前記平面に直交する方向であって前記所定の大きさの荷重を加えたときの撓み量よりも小さい薄板体。
【請求項2】
請求項1に記載の焼成された薄板体であって、
前記複数の凸状部のうちの少なくとも一つの凸状部は同凸状部の最高点に位置する頂部が前記平面に沿う方向に連続的に伸びるように形成され、且つ、前記複数の凹状部のうちの少なくとも一つの凹状部は同凹状部の最低点に位置する底部が前記平面に沿う方向に連続的に伸びるように形成されている薄板体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の焼成された薄板体であって、
前記凸状部の最高点に位置する頂部の前記平面からの距離を前記複数の凸状部について単純平均した頂部距離平均値と、前記凹状部の最低点に位置する底部の前記平面からの距離を前記複数の凹状部について単純平均した底部距離平均値と、の和である頂部底部間距離平均値が20μm以上且つ400μm以下である薄板体。
【請求項4】
請求項3に記載の焼成された薄板体であって、
前記複数の凸状部のうちの一つの凸状部と同一つの凸状部に隣接した前記複数の凹状部うちの一つの凹状部とからなるとともに同一つの凸状部の頂部と同一つの凹状部の底部との前記平面に沿う方向の距離が0.05mm以上且つ1.00mm以下である少なくとも一組の凸状部及び凹状部を含む薄板体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の焼成された薄板体であって、
セラミックスシート単体からなることを特徴とする薄板体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の焼成された薄板体であって、
セラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体であることを特徴とする薄板体。
【請求項7】
請求項6に記載の焼成された薄板体において、
前記セラミックススシートは固体電解質ジルコニアであり、前記熱膨張率が相違する材料からなるシートとして同固体電解質ジルコニアの一面に燃料極が形成され、前記熱膨張率が相違する材料からなるシートとして同固体電解質ジルコニアの他面に空気極が形成されてなる薄板体。
【請求項1】
少なくともセラミックスシートを含む焼成された薄板体であって、
その厚さが5μm以上且つ100μm以下の均一の厚さであり、
前記薄板体の一つの平面から突出した凸状部を複数備えるとともに同平面から陥没した凹状部を複数備え、
前記薄板体を同薄板体の所定の支持箇所で支持するとともに同薄板体に対し同支持箇所以外の荷重印加箇所に前記平面に直交する方向であって所定の大きさの荷重を加えたときの撓み量が、前記薄板体が前記凸状部及び前記凹状部を備えることなく平坦であると仮定した場合に同仮定した薄板体を前記支持箇所で支持するとともに同仮定した薄板体に対し前記荷重印加箇所に前記平面に直交する方向であって前記所定の大きさの荷重を加えたときの撓み量よりも小さい薄板体。
【請求項2】
請求項1に記載の焼成された薄板体であって、
前記複数の凸状部のうちの少なくとも一つの凸状部は同凸状部の最高点に位置する頂部が前記平面に沿う方向に連続的に伸びるように形成され、且つ、前記複数の凹状部のうちの少なくとも一つの凹状部は同凹状部の最低点に位置する底部が前記平面に沿う方向に連続的に伸びるように形成されている薄板体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の焼成された薄板体であって、
前記凸状部の最高点に位置する頂部の前記平面からの距離を前記複数の凸状部について単純平均した頂部距離平均値と、前記凹状部の最低点に位置する底部の前記平面からの距離を前記複数の凹状部について単純平均した底部距離平均値と、の和である頂部底部間距離平均値が20μm以上且つ400μm以下である薄板体。
【請求項4】
請求項3に記載の焼成された薄板体であって、
前記複数の凸状部のうちの一つの凸状部と同一つの凸状部に隣接した前記複数の凹状部うちの一つの凹状部とからなるとともに同一つの凸状部の頂部と同一つの凹状部の底部との前記平面に沿う方向の距離が0.05mm以上且つ1.00mm以下である少なくとも一組の凸状部及び凹状部を含む薄板体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の焼成された薄板体であって、
セラミックスシート単体からなることを特徴とする薄板体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の焼成された薄板体であって、
セラミックスシートと同セラミックスシートとは熱膨張率が相違する材料からなるシートとの積層体であることを特徴とする薄板体。
【請求項7】
請求項6に記載の焼成された薄板体において、
前記セラミックススシートは固体電解質ジルコニアであり、前記熱膨張率が相違する材料からなるシートとして同固体電解質ジルコニアの一面に燃料極が形成され、前記熱膨張率が相違する材料からなるシートとして同固体電解質ジルコニアの他面に空気極が形成されてなる薄板体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−50222(P2008−50222A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229547(P2006−229547)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]