説明

セラミック基板、及び、そのセラミック基板の製造方法

【課題】セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度が向上されたセラミック基盤を提供する。
【解決手段】セラミック部2と、セラミック部2の少なくとも1面に形成された、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層3と、表面処理層3の表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層4と、第1の金属層4の表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層5と、第2の金属層5の表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第3の金属層6と、からなるセラミック基板1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板、及びセラミック基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック多層基板は、耐熱性・耐湿性に優れ、また、高周波回路において良好な周波数特性を有することから、モバイル機器のRF(Radio Frequency)モジュール、放熱性を利用したパワーLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)用の基板や液晶のバックライト向けLED用の基板、また、自動車搭載用の電子制御回路用の基板として用いられている。
【0003】
現在、これらセラミック多層基板の製造方法としては、セラミック部を準備するセラミック準備工程と、前記セラミック部の表面を研磨する工程(セラミック部研磨工程)と、前記研磨後のセラミック部の表面に、金属層を形成する工程(金属形成工程)と、
を有していた(例えば、これに類似する技術は下記特許文献1に記載されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−245393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したセラミック基板の製造方法では、前記セラミック部の表面を研磨することによって、セラミック部を形成する際のセラミック部の反り(セラミック基板の反り)の低減することができる。
【0006】
しかしながら、前記従来例における課題は、前記セラミック部と前記金属層との熱膨張係数の違いに起因して、前記セラミック部と、前記セラミック基板表面に形成した金属層の間の密着強度が低下してしまうという課題を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、前記セラミック部と、前記セラミック部の表面に形成された金属層の間の密着強度を向上させたセラミック基板、およびそのセラミック基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そしてこの目的を達成するために、本発明は、セラミック部と前記セラミック部の少なくとも1面に形成された、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層と、前記表面処理層の表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層と、前記第1の金属層表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層と、前記第2の金属層表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第3の金属層と、からなるセラミック基板とした。
【0009】
また、本発明は、セラミック部を準備し、かつ、前記セラミック部の表面をサンドブラスター法によって表面処理を実施し、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層を形成するセラミック部準備工程と、前記サンドブラスター工程にて形成された前記表面処理層上に、乾式めっき法によって、第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、前記第1の金属層形成工程にて形成された前記第1の金属層上に、乾式めっき法によって、第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、前記第2の金属層形成工程にて形成された前記第2の金属層上に、湿式めっき法によって、第3の金属層を形成する第3の金属層形成工程と、からなるセラミック基板の製造方法とした。
【0010】
これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、セラミック部と前記セラミック部の少なくとも1面に形成された、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層と、前記表面処理層の表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層と、前記第1の金属層表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層と、前記第2の金属層表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第3の金属層と、からなるセラミック基板としたので、前記セラミック部と、前記セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができる。
【0012】
すなわち、本発明においては、前記セラミック部と前記第1の金属層との間に、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層を形成することによって、前記セラミック部と前記第1の金属層との間の密着強度を向上させることができると推測される。その結果として、前記セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1におけるセラミック基板1の構成を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるセラミック基板の製造方法を示すフローチャート
【図3】本発明の実施の形態1におけるセラミック部準備工程を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態1におけるグリーンシートの断面図を示すものであり、図4(a)はグリーンシート9Aの断面図、図4(b)はグリーンシート9Bの断面図、図4(c)はグリーンシート9Cの断面図
【図5】本発明の実施の形態1の積層工程における積層手順を示す断面図
【図6】本発明の実施の形態1の積層工程におけるグリーンシート積層体の断面図
【図7】本発明の実施の形態1の積層工程における加圧加熱方法を説明する断面図
【図8】本発明の実施の形態1の脱バインダー工程における加圧加熱方法を説明する断面図
【図9】本発明の実施の形態1の焼成工程における加圧加熱方法を説明する断面図
【図10】本発明の実施の形態1の焼成工程後におけるグリーンシート積層体の断面図
【図11】本発明の実施の形態1の拘束層除去工程後におけるグリーンシート積層体の断面図
【図12】本発明の実施の形態1の第1の金属層形成工程後におけるグリーンシート積層体の断面図
【図13】本発明の実施の形態1における第2の金属層形成工程後のグリーンシート積層体の断面図
【図14】本発明の実施の形態1における第3の金属層形成工程後のグリーンシート積層体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態を図面とともに詳細に説明するが、これら実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0015】
(実施の形態1)
[1]セラミック基板の構成
まずはじめに、本実施形態におけるセラミック基板の構成に関して説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態1におけるセラミック基板1の構成を示す断面図である。
図1に示すように、セラミック基板1は、セラミック部2と、そのセラミック部2の少なくとも1面(図1中では、上面)に形成された表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層3と、その表面処理層3の表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層4と、その第1の金属層4の表面に、乾式めっき法によって形成された第2の導電性金属からなる第2の金属層5と、その第2の金属層5の表面に、湿式めっき法によって形成された第3の導電性金属からなる第3の金属層6と、から構成されるものである。このセラミック部2の表面に形成されている第1の金属層4、第2の金属層5、第3の金属層6は、この後加工されて、所望の電子部品(例えば、前述のLEDや、IC=Integrated Cuircuit)を実装するための外部電極(図示なし)や、電気回路パターン配線(図示なし)を形成することできる。
【0017】
また、本実施形態において、セラミック部2、表面処理層3、第1の金属層4、第2の金属層5の厚さは、それぞれ、セラミック部2は0.48[mm]、表面処理層3は0.9[um]、第1の金属層4は15[nm]、第2の金属層5は500[nm](0.5[um])とし、第3の金属層6は5[um]から100[um]の間の膜厚で、適宜決定を行った。
【0018】
また、本実施形態におけるセラミック部2は、主成分がセラミックの成分から構成されている。本実施形態におけるセラミック部2は、アルミナ(Al2O3)粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物からなる、シート状の形状のグリーンシートと呼ばれるものを、複数枚(少なくとも2枚以上)積層し、加圧し、その後、900[℃]にて焼成することによって形成されたものである。さらに、図1に示すように、セラミック部2内部には、内部配線部7、ビア8が形成されている。
また、本実施形態における表面処理層3は、後述にて詳細を説明するが、水とアルミナ粉末の割合の混合物を、圧縮空気にて、セラミック部2の上下面から吹き付けることによって形成することができる。
【0019】
また、本実施形態における第1の金属層4は、乾式めっき法の一つであるRFスパッタ(Radio Frequency sputtering)法によって形成した。なお、本実施形態においては、乾式メッキ法としてRFスタッパ法を用いたが、例えば、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法等、その他の乾式めっき法を用いることもできる。更に、本実施形態における第1の金属層4は、チタン(Ti)を用いた。なお、本実施形態における第1の金属層4は、チタン(Ti)を用いたが、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、ニッケルクロム合金(NiCr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)の中から選択されたいずれか1つ、もしくはその合金を用いることも可能である。
【0020】
また、本実施形態における第2の金属層5は、乾式めっき法の一つであるRFスパッタ法によって形成した。ここで、第2の金属層5は、第1の金属層4を形成後、その第1の金属層4を形成したRFスパッタ装置内で、真空を割らずに(RFスパッタ装置内のチャンバー内を大気圧にしないで)、同一RFスパッタ装置にて、連続的に形成した。更に、本実施形態における第1の金属層4は、銅(Cu)を用いた。なお、本実施形態における第1の金属層4は、チタン(Ti)を用いたが、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、ニッケルクロム合金(NiCr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)等、比較的電気抵抗が低く、第3の金属層6を形成する際の、湿式めっき法の1つである電界めっき法における電極として用いることができる金属を用いることができる。
【0021】
また、本実施形態における第3の金属層6は、第2の金属層5を形成後、電界めっき法で第2の金属層5を形成した。本実施形態における第2の金属層5としては銅(Cu)を用いた。ここで、第2の金属層5としての銅(Cu)を電界めっき法に形成したのは、乾式めっき法(例えば、スパッタ法や真空蒸着法)や無電界めっき法に比べ、膜厚形成レート(単位時間当たりの膜の成長速度)が速いため、比較的安価に形成できること、及び、乾式めっき法や無電界めっき法に比べ、厚い膜厚のもの(数ミクロンオーダー)が形成することができ、その結果として、前述のパワーLED用基板の配線に必要とされる膜厚の第3の金属層6が形成できるからである。なお、第3の金属層6の材料としては、本実施形態で用いた銅の他に、例えば電気抵抗の低い物質、例えば金(Au)や銀(Ag)等も用いることができる。
【0022】
なお、本実施形態においては、図1に示すセラミック部2の下面にも表面処理層3を形成しているが、本実施形態においては、このセラミック部2に、その焼成時にセラミック基板1の図1中のX方向、およびY方向(すなわち、セラミック基板1の平面方向)には収縮させず、セラミック基板1の図1中のZ方向のみ収縮させるタイプのセラミック部2(一般に無収縮セラミックと呼ばれる)としたため、後述で詳しく説明するが、このセラミック基板1の製造時に、セラミック部2の上下面に拘束層10(図5、図6に図示)を配置、焼成後に、この拘束層10をサンドブラスター法にて除去するためである。
また、本実施形態においては、セラミック部2に、無収縮セラミックを用いたが、そのほかに、収縮セラミック(図1中のX方向、Y方向、およびZ方向)を用いることが可能である。セラミック部2に収縮セラミックを用いた場合にも、焼成後に、その表面に(後述の)サンドブラスター法を用いて、表面処理層3を形成すればよい。
【0023】
以上が、本実施形態におけるセラミック基板の構成である。
【0024】
[2]セラミック基板の製造方法
次に、本実施形態におけるセラミック基板の製造方法に関して説明する。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態1におけるセラミック基板の製造方法を示すフローチャートである。
【0026】
図2に示すように、本実施形態におけるセラミック基板の製造方法は、
S1:セラミック部準備工程
S2:第1の金属層形成工程と、
S3:第2の金属層形成工程と、
S4:第3の金属層形成工程と、
という4つの工程から構成されるものである。
【0027】
以下に、S1〜S3の製造工程の詳細を説明する。
【0028】
[2]−(1): セラミック部準備工程S1
図3は、本発明の実施の形態1におけるセラミック部準備工程を示すフローチャートである。
【0029】
図3に示すように、本実施形態におけるセラミック部準備工程S1は、
S100:グリーンシート準備工程
S200:積層工程
S300:脱バインダー工程
S400:焼成工程
S500:サンドブラスター工程
という5つの工程から構成されるもので、この5つの工程によって、セラミック部2を形成し、さらに、そのセラミック部2の少なくとも片面(セラミック部2の表面、裏面両方でも良い)に、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層3を形成するのである。 それでは、以下に、この5つの工程の順次説明を行う。
【0030】
[2]−(1)−(i):グリーンシート準備工程S100
まずはじめに、図4を用いて、セラミック部2の材料となるグリーンシート9A、グリーンシート9B、グリーンシート9Cを準備するグリーンシート準備工程S100に関して説明する。
【0031】
図4は、本発明の実施の形態1におけるグリーンシートの断面図を示すものであり、図4(a)はグリーンシート9Aの断面図、図4(b)はグリーンシート9Bの断面図、図4(c)はグリーンシート9Cの断面図を示すものである。
【0032】
本実施形態においては、純のグリーンシート(アルミナ粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物をシート状に形成したもの)から、図4(a)〜図4(c)に示すように、グリーンシート9A(図4(a))、グリーンシート9B(図4(b))、グリーンシート9C(図4(c))を作成する。
【0033】
まず、はじめに、図4(a)に示すグリーンシート9Aに関して説明する。グリーンシート9Aには、例えば、レーザー光による加工によってスルーホール(一般には穴とも呼ばれる)を形成し、その後、そのスルーホーに導体ペーストを充填することによって、ビア8を形成する。これにて、グリーンシート9Aが完成する。
【0034】
次に、図4(b)に示すグリーンシート9Bに関して説明する。グリーンシート9Bは、はじめに、グリーンシート9Aと同様に、スルーホールを形成し、その後、スルーホールに導体ペーストを充填することによって、ビア8を形成する。次に、グリーンシート9B上面に導体ペーストを、スクリーン印刷法を用いて所望のパターンに印刷して内部配線部7を形成する。これにて、グリーンシート9Bが完成する。
【0035】
次に、図4(c)に示すグリーンシート9Cに関して説明する。グリーンシート9Cは、はじめに、グリーンシート9Aと同様に、ビア8を形成する。これにて、グリーンシート9Cが完成する。
【0036】
[2]−(1)−(ii):積層工程S200
次に、図5、図6、図7を用いて、積層工程S200について説明する。
【0037】
図5は、本発明の実施の形態1の積層工程における積層手順を示す断面図である。また、図6は、本発明の実施の形態1の積層工程におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。また、図7は、本発明の実施の形態1の積層工程における加圧加熱方法を説明する断面図を示すものである。
【0038】
まず、はじめに、図5、図6に示している拘束層10に関して説明する。
【0039】
一般に、アルミナ粉末とガラス粉末を配合したガラス・セラミックの組成物で、シート状の形状のグリーンシートを、高温を印加すると、アルミナ粉末とガラス粉末が焼成することによって、そのグリーンシートの体積(平面方向、および厚さ方向)に収縮する。
【0040】
本実施形態においても、本工程である積層工程S200、次の工程である脱バインダー工程S300、次々工程である焼成工程S400にて、グリーンシート積層体11を、熱を印加するのであるが、その際、図5に示すように、それらグリーンシート9A、9B、9Cを挟み込むように、印加する温度では焼成しない成分のセラミックからなる拘束層10を上下面に配置しておく。
【0041】
こうすることによって、グリーンシー9A、9B、9Cは、図5中に示す、X方向、およびY方向(すなわち、グリーンシート積層体11の平面方向)には収縮せず、Z方向(すなわち、グリーンシート積層体11の厚さ方向)にのみ収縮する。このX方向、Y方向に収縮させないために、この拘束層10を使用するのである。本実施形態においては、アルミナ粉末をシート状に成形したものを拘束層10として用いた。
次に、図5を用いて、グリーンシート9A、9B、9Cを積層し、グリーンシート積層体11を準備する方法を説明する。
【0042】
まず、拘束層10上に、グリーンシート9Cを積層する。次に、グリーンシート9C上にグリーンシート9Bを、グリーンシート9Aに形成されているビア8と、グリーンシート9Bに形成されているビア8の位置が合うように位置合わせを実施しながら積層する。
【0043】
次に、グリーンシート9B上のグリーンシート9Aを積層する。最後に、グリーンシート9A上に、拘束層10を配置する。
【0044】
このようにして、図6に示すような、グリーンシート積層体11が準備されるのである。
【0045】
次に、図7に示すように、グリーンシート積層体11の上下面にステンレス板12を配置し、それを台座13上に配置し、その上面から加圧加熱をすることによって、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C同士を仮接着する。
【0046】
ここで、図7中のグリーンシート積層体11は、図6中のグリーンシート積層体11と同一のものであるが、図7中のグリーンシート積層体11は簡略化して図示している。
【0047】
また、本実施形態において、グリーンシート積層体11上のステンレス板12上から加圧した圧力は15.2[MPa]とし、加熱温度は85[℃]を用いた。このようにして、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C同士を仮接着する。
なお、グリーンシート積層体11と、グリーンシート積層体11の上下面に配置したステンレス板12とは、ステンレス板12の材質がニッケルクロム合金(NiCr)であるため接着されることはない。
【0048】
[2]−(1)−(iii):脱バインダー工程S300
次に、図8を用いて、脱バインダー工程S300について説明する。
【0049】
図8は、本発明の実施の形態1の脱バインダー工程を説明する断面図を示すものである。
【0050】
この工程では、図8に示すように、グリーンシート積層体11を台座14上に配置し、加熱をすることによって、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C内部の有機バインダーを除去する。
【0051】
本実施形態において、グリーンシート積層体11は、加熱温度は650[℃]にて加熱を行った。このようにして、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C内部の有機バインダーを除去する。
【0052】
[2]−(1)−(iv):焼成工程S400
次に、図9を用いて、焼成工程S400について説明する。
【0053】
図9は、本発明の実施の形態1の焼成工程における加圧加熱方法を説明する断面図を示すものである。また、図10は、本発明の実施の形態1の焼成工程後におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。
グリーンシート積層体11を台座15上に配置し、加熱をすることによって、グリーンシート積層体11を焼成する。
【0054】
本実施形態において、グリーンシート積層体11上は、加熱温度は900[℃]を用いた。
【0055】
このようにして、この焼成工程後、図10に示すように、グリーンシート積層体11は、その厚さ方向に収縮するのである。
また、この焼成工程S400を実施することによって、グリーンシート9A、9B、9Cがセラミック部2となるのである。
【0056】
[2]−(1)−(v):サンドブラスター工程S500
次に、サンドブラスター工程S500について説明する。
【0057】
この工程では、サンドブラスター法(例えば、特許文献である国際公開第1999/56510号を参照)を用いて、グリーンシート積層体11の上面と下面の拘束層10を除去すると共に、セラミック部2の上面と下面に、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層3を形成する。
【0058】
本実施形態においては、水96gと平均粒径0.1〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、グリーンシート積層体11の上下面の拘束層10上から吹き付ける。
【0059】
図11は、本発明の実施の形態1のサンドブラスター工程後におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。
このように、水96gと平均粒径0.1〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、グリーンシート積層体11の上下面の拘束層10上から吹き付ける作業を行うことによって、セラミック部2上に、0.1um以上(アルミナ粉末の最小の平均粒径)、30um以下(アルミナ粉末の最大の平均粒径)の表面処理層3を形成することができる。この表面処理層3の厚さは、この吹き付ける作業(吹き付け時間)を調整することによって調整可能である。本実施形態においては、前述の[1]で説明したように、表面処理層3が0.9umになるように、吹き付け時間を調整した。
【0060】
以上のように、本実施形態におけるセラミック部準備工程S1は、図4に示す、グリーンシート準備工程S100、積層工程S200、脱バインダー工程S300、焼成工程S400、サンドブラスター工程S500という5つの工程を実施することによって、セラミック部2を準備するとともに、このセラミック部2上に、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層3を形成することができるのである。
【0061】
[2]−(2):第1の金属層形成工程S2
次に、図2中の第1の金属層形成工程S2に関して説明する。
第1の金属層形成工程S2においては、前述のセラミック部2上の表面処理層3表面に、乾式めっき法によって、第1の金属層4を形成する。本実施形態においては、前述のように、RFスパッタ法によって形成した。ここで、本実施形態においては、スパッタリングターゲットとしてチタン(Ti)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中で、第1の金属層4としてチタン(Ti)薄膜を、前述の表面処理層3が形成されたグリーンシート積層体11をスパッタリング基板として、スパッタリングターゲットとスパッタリング基板間に高周波電圧を印加することによって、15[nm]形成した。この具体的なスパッタリング条件は、スパッタリングを開始する前のスパッタリング装置内の真空度(背圧)を7×10−4[Pa]以下にした後、スパッタ時のパワーを250W、アルゴンガス圧力を3.3Pa、設定温度を30℃とした。
【0062】
図12は、本発明の実施の形態1における第1の金属層形成工程後のグリーンシート積層体11を示すものである。図12に示すように、この第1の金属層形成工程S2後、グリーンシート積層体11は、セラミック部2上の表面処理層3の表面に第1の金属層4が形成されるのである。
【0063】
[2]−(3):第2の金属層形成工程S3
次に、図2中の第2の金属層形成工程S3に関して説明する。
【0064】
第2の金属層形成工程S3においては、前述の第1の金属層4の表面に、乾式めっき法によって、第1の金属層4を形成する。ここで、本実施形態においては、第2の金属層5は、第1の金属層4を形成後、その第1の金属層4を形成したRFスパッタ装置内で、真空を割らずに(RFスパッタ装置内のチャンバー内を大気圧にしないで)、同一RFスパッタ装置にて、連続的に形成した。
【0065】
すなわち、RFスパッタ装置内で、第1の金属層4を形成したチャンバーとは別のチャンバーへ、真空を割らずに、前述の第1の金属層4が形成されたグリーンシート積層体11を移動させ、その別のチャンバーで第2の金属層5を形成した。
また、本実施形態においては、スパッタリングターゲットとして銅(Cu)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中で、第2の金属層5とし銅(Cu)薄膜を、前述の第1の金属層4が形成されたグリーンシート積層体11をスパッタリング基板として、スパッタリングターゲットとスパッタリング基板間に高周波電圧を印加することによって、500[nm]形成した。この具体的なスパッタリング条件は、スパッタリングを開始する前のスパッタリング装置内の真空度(背圧)を、再度、7×10−4[Pa]以下にした後、スパッタ時のパワーを100W、アルゴンガス圧力を3.0Pa、設定温度を30℃とした。
【0066】
図13は、本発明の実施の形態1における第2の金属層形成工程後のグリーンシート積層体11の断面図を示すものである。図13に示すように、この第2の金属層形成工程S3後、グリーンシート積層体11は、第1の金属層4表面に第2の金属層5が形成されるのである。
【0067】
[2]−(4):第3の金属層形成工程S4
最後に、図2中の第3の金属層形成工程S4に関して説明する。
【0068】
図14は、本発明の実施の形態1における第3の金属層形成工程後のグリーンシート積層体の断面図を示すものである。
【0069】
第3の金属層形成工程S4においては、前述の第2の金属層5の表面に、湿式めっき法の一つである電界めっき法によって、第3の金属層6を形成する。
【0070】
本実施形態においては、上述したように、第3の金属層6として銅を用いた。また、この第2の金属層5の膜厚は5.0[um]を用いた。
【0071】
以上のように、本実施形態におけるセラミック基板1の製造方法は、セラミック部準備工程S1、第1の金属層形成工程S2、第2の金属層形成工程S3、第3の金属層形成工程S4という4つの工程を実施することによって、図14に示すように、この第3の金属層形成工程S4後、グリーンシート積層体11は、第2の金属層5表面に第3の金属層6が形成されるのである。なお、図14に示す本発明の実施の形態1の第3の金属層形成工程S4後のグリーンシート積層体11は、図1に示す本発明の実施の形態1のセラミック基板1は同等の物である。
【0072】
以上のように、図2、及び上記[2]−(1)から[2]−(4)が、本実施形態のセラミック基板の製造方法である。
【0073】
[3]本発明の一実施形態における発明の効果
次に、本発明の一実施形態の発明の効果に関して説明する。
【0074】
従来のセラミック部2(表面処理層3がない場合)と、第1の金属層との間の密着強度を測定したところ、0.40[N/mm]であった。一方、本実施形態におけるセラミック部2(表面処理層3がない場合)との密着強度を測定したところ、0.75[N/mm]という、密着強度が向上されていることが確認できた。
【0075】
以上のように、この密着強度が向上は、アルミナが点在するアルミナ点在層を有することによって、このアルミナ成分が、セラミック部2と表面処理層3の間の密着強度を向上させていると考えられる。
【0076】
なお、本実施形態において、アルミナ点在層の厚さは0.9[um]としたが、このアルミナ点在層の厚さは0.1um以上、30um以下の範囲であれば、セラミック部2と表面処理層3の間の密着強度が、実際の製品として必要とされる密着強度を有していることを確認している。
【0077】
[4]まとめ
以上のように、本実施形態においては、セラミック部と、前記セラミック部の少なくとも1面に形成された、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層と、前記表面処理層の表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層と、前記第1の金属層表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層と、前記第2の金属層表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第3の金属層と、からなるセラミック基板としたので、前記セラミック部と、前記セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができる。
【0078】
すなわち、本実施形態においては、セラミック部2と第1の金属層4との間に、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層3を形成することによって、セラミック部2と第1の金属層4との間の密着強度を向上させることができると推測される。その結果として、セラミック部2の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかるセラミック基板は、セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができるので、特に、最近普及の進んでいる液晶テレビや携帯電話の液晶画面用のバックライト向けLED用基板として用いられるセラミック多層基板として用いられることが大いに期待されるものとなる。
【符号の説明】
【0080】
1 セラミック基板
2 セラミック部
3 表面処理層
4 第1の金属層
5 第2の金属層
6 第3の金属層
7 内部配線部
8 ビア
9A、9B、9C グリーンシート
10 拘束層
11 グリーンシート積層体
12 ステンレス板
13、14、15 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック部と、
前記セラミック部の少なくとも1面に形成された、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層と、
前記表面処理層の表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層と、
前記第1の金属層表面に、乾式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層と、
前記第2の金属層表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第3の金属層と、
からなるセラミック基板。
【請求項2】
前記第1の金属層が、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、ニッケルクロム合金(NiCr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)の中から選択されたいずれか1つ、もしくはその合金であることを特徴とする請求項1記載のセラミック基板。
【請求項3】
前記第2の金属層が、銅(Cu)であることを特徴とする請求項2記載のセラミック基板。
【請求項4】
前記第3の金属層が、銅(Cu)であることを特徴とする請求項3記載のセラミック基板。
【請求項5】
前記表面処理層が、サンドブラスター法によって処理されたこと、
を特徴とする請求項1乃至4記載のセラミック基板。
【請求項6】
セラミック部を準備し、その後、前記セラミック部の表面をサンドブラスター法によって表面処理を実施し、表面粗さ(Ra)が1um以上30um以下である表面処理層を形成するセラミック部準備工程と、
前記セラミック部準備工程にて形成された前記表面処理層上に、乾式めっき法によって、第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、
前記第1の金属層形成工程にて形成された前記第1の金属層上に、乾式めっき法によって、第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、
前記第2の金属層形成工程にて形成された前記第2の金属層上に、湿式めっき法によって、第3の金属層を形成する第3の金属層形成工程と、
からなるセラミック基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−186328(P2012−186328A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48693(P2011−48693)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】