説明

セラミック構造体の製造方法

【課題】表面に所望のパターンの凹部が形成されるセラミック構造体を簡単に効率よく製造することができる方法を提供することであり、内部に所望のパターンの空洞が形成されるセラミック構造体を簡単に効率よく製造することができる方法を提供することである。【解決手段】セラミックグリーンシート1の表面に型10を押圧してセラミックグリーンシート1に凹部12を形成する工程と、該セラミックグリーンシート1を焼成する工程とを含むセラミック構造体の製造方法である。凹部12に加え、内部に空洞を形成することができる上で、セラミックグリーンシート1に凹部を形成する工程の後、セラミックグリーンシート1を含む複数枚のセラミックグリーンシートを積層し焼成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に所望のパターンの凹部が形成されるセラミック構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面に凹部が形成されたセラミック構造体があり、その用途としては、例えば半導体素子や各種電子部品等を収納するための電子部品収納用パッケージ、各種流体の流路等が期待されている。
【0003】
図7は、表面に凹部が形成されたセラミック構造体の従来の製造方法を示す工程図である。図8は、打ち抜き加工で貫通パターンが形成されたセラミックグリーンシートを示す平面図である。
【0004】
一般に、このセラミック構造体の製造方法は、図7(a)に示すように、セラミックグリーンシート100の所定箇所に貫通パターン101を打ち抜き加工で形成する。ついで、図7(b)に示すように、該貫通パターン101が形成されたグリーンシート100と他のグリーンシート102とを積層して積層体103を形成し、該積層体103を焼成することによって、表面に凹部が形成されたセラミック構造体を得ている。
【0005】
しかしながら、この製造方法では、例えば図8に示すような貫通パターン101を打ち抜き加工でグリーンシート100に形成すると、該貫通パターン101によりグリーンシート100が複数に分割されてしまうので、積層体103を形成する際の作業性が低下する。すなわち、打ち抜き加工では、自由なパターンの凹部をグリーンシートに形成しにくいという問題がある。
【0006】
特許文献1には、セラミックグリーンシートに形成された貫通孔(貫通パターン)に所定の樹脂シートを嵌め込んでなるセラミックグリーンシート−樹脂シート複合体が記載されている。この方法によると、貫通パターンに所定の樹脂シートを嵌め込むので、貫通パターンを形成することによるグリーンシートが複数に分割されることがなく、積層体を形成する際の作業性が低下することが低減する。
【0007】
しかしながら、セラミックグリーンシートと嵌め込まれた樹脂シートの境界面の接着力が小さいので、セラミックグリーンシート−樹脂シート複合体を移送及び積層する際に変形が生じ、作業性が低下することよりその生産性は必ずしも十分ではない。
【特許文献1】特開2005−131971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる課題は、表面に所望のパターンの凹部が形成されるセラミック構造体を簡単に効率よく製造することができる方法を提供することである。
本発明の他の課題は、内部に所望のパターンの空洞が形成されるセラミック構造体を簡単に効率よく製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)セラミックグリーンシートの表面に型を押圧してセラミックグリーンシートに凹部を形成する工程と、該セラミックグリーンシートを焼成する工程とを含むことを特徴とするセラミック構造体の製造方法。
(2)セラミックグリーンシートの表面を切削してセラミックグリーンシートに凹部を形成する工程と、該セラミックグリーンシートを焼成する工程とを含むことを特徴とするセラミック構造体の製造方法。
(3)前記セラミックグリーンシートに凹部を形成する工程の後、該セラミックグリーンシートを含む複数枚のセラミックグリーンシートを積層し焼成する工程を含む前記(1)または(2)記載のセラミック構造体の製造方法。
(4)前記セラミックグリーンシートに凹部を形成する工程の後、該凹部に樹脂を充填する工程と、該樹脂を充填したセラミックグリーンシートを含む複数枚のセラミックグリーンシートを積層し焼成する工程とを含み、前記焼成時に前記樹脂を熱分解させて除去する前記(1)〜(3)のいずれかに記載のセラミック構造体の製造方法。
(5)前記樹脂が気泡を含む前記(4)記載のセラミック構造体の製造方法。
(6)前記樹脂が中空樹脂ビーズを含む前記(4)または(5)記載のセラミック構造体の製造方法。
(7)セラミックグリーンシートに形成される前記凹部の体積をVとしたとき、該凹部に充填される前記樹脂の占有体積は0.8V〜1.1Vであり、該樹脂が熱分解する直前の溶融状態の体積Vliq.は0.2V〜0.6Vである前記(4)〜(6)のいずれかに記載のセラミック構造体の製造方法。
(8)前記焼成時に前記樹脂を熱分解させて除去する際において、前記樹脂の上部側の重量が80%減少する温度をTa℃、下部側の重量が80%減少する温度をTb℃とし、前記凹部が形成されたセラミックグリーンシートに含まれる樹脂バインダーの重量が20%減少する温度をTc℃としたとき、Ta<Tb≦Tcの関係を満たす前記(4)〜(7)のいずれかに記載のセラミック構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
上記(1),(2)によれば、セラミックグリーンシートの表面に型を押圧して、または切削してセラミックグリーンシートに凹部を形成するので、自由なパターンの凹部を簡単に形成することができ、移送の際にセラミックグリーンシートの変形を未然に防止可能となるので、効率よくセラミック構造体を製造することができるという効果がある。
【0011】
上記(3)によれば、前記凹部に加えて、内部に自由なパターンの空洞を有するセラミック構造体を得ることができる。
上記(4)によれば、前記凹部に樹脂が充填されているので、セラミックグリーンシートの剛性が向上し、該セラミックグリーンシートの取り扱い性が向上すると共に、該セラミックグリーンシートを含む複数枚のセラミックグリーンシートを積層する際には均圧積層が可能となり、その結果、凹部や空洞に変形がなく、層間剥離することのないセラミック構造体を製造することができる。さらに、前記樹脂は熱分解させて除去するので、効率よくセラミック構造体を製造することができる。
【0012】
上記(5)によれば、前記樹脂が気泡を含むので、該樹脂を熱分解させて除去する際に発生する熱分解物の量を低減することができ、その結果、熱分解物がセラミックグリーンシートと接触することによるグリーンシートに含まれる樹脂バインダーの溶解、セラミックスの表面変質を抑制でき、さらに発生した分解ガス等の圧力によるグリーンシートの変形やクラック等の発生も抑制することができる。
【0013】
上記(6)によれば、前記樹脂が剛体である中空樹脂ビーズを含むので、該樹脂が凹部に充填されるグリーンシートの剛性が向上し、高い圧力で積層した場合であっても、確実に均圧積層することができる。
【0014】
上記(7)によれば、樹脂が熱分解する直前の溶融状態の体積Vliq.が所定の関係を満たすので、熱分解物の量をより低減することができる。
上記(8)によれば、樹脂を上部から下部へ順序よく熱分解させることができるので、寸法精度の高い凹部もしくは空洞を有するセラミック構造体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にかかるセラミック構造体の製造方法の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態にかかるセラミック構造体の製造方法を示す工程図である。図2は、この実施形態により製造されるセラミック構造体の一例を示す平面図である。
【0016】
本実施形態にかかるセラミック構造体の製造方法は、まず、図1(a)に示すように、セラミックグリーンシート1と型10とを準備する。
<セラミックグリーンシート>
セラミックグリーンシート1は、例えばセラミック粉末および/またはガラス粉末と、所望により助剤成分を添加し混合した混合物に、樹脂バインダー、可塑剤等の添加剤や、有機溶剤等を加えて調製したスラリーを、例えばドクターブレード法、圧延法、プレス法等の成形法により所定の厚みに成形して得ることができる。
【0017】
(セラミック粉末)
前記セラミック粉末としては、金属もしくは非金属の酸化物または非酸化物の粉末が挙げられる。また、これらの粉末の組成は単一組成、化合物の状態のものを単独または混合して使用してもよい。具体的には、例えばLi,K,Mg,B,Al,Si,Cu,Ca,Br,Ba,Zn,Cd,Ga,In,ランタノイド,アクチノイド,Ti,Zr,Hf,Bi,V,Nb,Ta,W,Mn,Fe,Co,Ni等の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物等が挙げられる。
【0018】
さらに、SiO2,Al23,ZrO2,TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物の他、ZnO,MgO,MgAl24,ZnAl24,MgSiO3,Mg2SiO4,Zn2SiO4,Zn2TiO4,SrTiO3,CaTiO3,MgTiO3,BaTiO3,CaMgSi26,SrAl2Si28,BaAl2Si28,CaAl2Si28,Mg2Al4Si518,Zn2Al4Si518,AlN,Si34,SiC等が挙げられる。さらには、Al23およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられ、これらは、用途に合わせて選択することができる。
【0019】
(ガラス粉末)
ガラス粉末としては、例えばSiO2−B23系,SiO2−B23−Al23系,SiO2−B23−Al23−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnである),SiO2−Al23−M1O−M2O系(但し、M1,M2は同じかまたは異なるものであり、Ca,Sr,Mg,BaまたはZnである),SiO2−B23−Al23−M1O−M2O系(但し、M1,M2は前記で定義した通りである),SiO2−B23−M3O系(但し、M3はLi,NaまたはKである),SiO2−B23−Al23−M3O系(但し、M3は前記で定義した通りである),Pb系ガラス,Bi系ガラス,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,希土類酸化物の群から選ばれる少なくとも1種を含有するガラスが好ましい。これらのガラスは焼成処理することによって非晶質ガラスとなるもの、また焼成処理によって、リチウムシリケート,クォーツ,クリストバライト,コージェライト,ムライト,アノーサイト,セルジアン,スピネル,ガーナイト,ウイレマイト,ドロマイト,ペタライトやその置換誘導体の結晶を少なくとも1種を析出する結晶化ガラスが用いられる。
【0020】
セラミック粉末とガラス粉末を混合させる場合の割合は、通常のガラスセラミック構造体材料に用いられる割合であり、重量比でセラミック粉末:ガラス粉末=60:40〜1:99であるのが好ましい。また、助剤成分としては、例えばB23,ZnO,MnO2,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物,希土類金属酸化物等が挙げられ、用途に合わせて選択することができる。
【0021】
また、本発明のセラミック構造体を圧電素子として使用する場合には、チタン酸バリウムやジルコン酸鉛−チタン酸鉛系固溶体などの灰チタン石型構造の結晶などが挙げられ、具体的にはチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)およびチタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)などのチタン酸ジルコン酸塩、またはチタン酸鉛などが挙げられる。
【0022】
(樹脂バインダー)
前記樹脂バインダーとしては、例えばアクリル系(アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等)、ポリビニルアセタール系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンカーボネート系等の単独重合体または共重合体が挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましい。
【0023】
アクリル系の具体例としては、例えばメチルアクリレート,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,エチルメタクリレート,n−プロピルアクリレート,n−プロピルメタアクリレート,イソプロピルアクリレート,イソプロピルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,n−ブチルメタクリレート,イソブチルアクリレート,イソブチルメタクリレート,tert−ブチルアクリレート,tert−ブチルメタクリレート,シクロヘキシルアクリレート,シクロヘキシルメタクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,2−エチルヘキシルメタクリレート,イソノニルアクリレート,イソノニルメタクリレート,イソデシルアクリレート,イソデシルメタクリレート等が挙げられ、これらアクリル酸エステルやメタクリル酸アルキルエステルを主鎖とする共重合体には、カルボン酸基,アルキレンオキサイド基,水酸基,グリシジル基,アミノ基またはアミド基を含有するモノマーが共重合成分として含まれているものを好適に用いることができる。
【0024】
カルボン酸基を有するものとしては、例えば、アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,イタコン酸,フマル酸等が挙げられ、アルキレンオキサイドを有するものとしては、メチレンオキサイド,エチレンオキサイド,プロピレンオキサイド等があり、水酸基を有するものとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシエチルメタクリレート,2−ヒドロキシブチルアクリレート,2−ヒドロキシブチルメタクリレート,ジエチレングリコールモノアクリレート,ジエチレングリコールモノメタクリレート,グリセリンモノアクリレート,グリセリンモノメタクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,トリメチロールプロパントリメタクリレート等があり、グリシジル基を有するものとしては、グリシジルアクリレート,グリシジルメタクリレート等があり、アミノ基またはアミド基を有するものとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート,ジメチルアミノエチルメタクリレート,ジエチルアミノエチルアクリレート,ジエチルアミノエチルメタクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルアクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート,アクリルアミド,シクロヘキシルアクリルアミド,シクロヘキシルメタクリルアミド,N−メチロールアクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド等がある。
【0025】
これらアクリル酸エステルやメタクリル酸アルキルエステルを主鎖とする共重合体には、他の共重合可能なアクリロニトリル,スチレン,エチレン,酢酸ビニル,n−ビニルピドリドン等を共重合させてもよい。
【0026】
ポリビニルアセタール系の具体例としては、ポリビニルブチラール,ポリビニルエチラール,ポリビニルプロピラール,ポリビニルオクチラール,ポリビニルフェニラール等やその誘導体等が挙げられる。
【0027】
セルロース系の具体例としては、メチルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ニトロセルロース,酢酸セルロース等が挙げられる。
【0028】
(可塑剤)
前記可塑剤としては、例えばジメチルフタレート,ジブチルフタレート,ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP),ジヘプチルフタレート,ジ−n−オクチルフタレート,ジイソノニルフタレート,ジイソデシルフタレート,ブチルベンジルフタレート,エチルフタリルエチルグリコレート,ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル系や、ジ−2−エチルヘキシルアジペート,ジブチルジグリコールアジペート等の脂肪族エステル系があり、これらの中から選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましい。
【0029】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、例えばテルピネオール,ジヒドロテルピネオール,エチルカルビトール,ブチルカルビトール,カルビトールアセテート,ブチルカルビトールアセテート,ジイソプロピルケトン,メチルセルソルブアセテート,セルソルブアセテート,ブチルセルソルブ,ブチルセルソルブアセテート,シクロヘキサノン,シクロヘキサノール,イソホロン,シプロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート,ブチルカルビトールメチル−3−ヒドロキシヘキサノエート,トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート,パイン油,ミネラルスピリット等の高沸点溶剤が好適に使用できる。
【0030】
<型>
型10の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば金型、樹脂型等が挙げられる。また、型10は、セラミックグリーンシート1に形成される凹部に対応する凸部11を備えている。この凸部11のセラミックグリーンシート1に接触する部位の表面は、耐摩耗性や離型性を向上させる上で表面被覆処理が施されているのが好ましい。具体的には、金型にかかる凸部11の前記表面の耐摩耗性を向上させる方法としては、例えばダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)、グラファイト・ライク・カーボン(GLC)等による表面被覆処理が挙げられる。また、金型および樹脂型にかかる凸部11の前記表面の離型性を向上させる方法としては、例えばシリコーンコート、テフロン(登録商標)コート等による表面被覆処理が挙げられる。
【0031】
凸部11の表面粗さ(Ry)は0.5以下であるのが好ましい。これにより、型10の離型性がより向上する。これに対し、前記表面粗さ(Ry)が0.5より大きいと、離型性が低下すると共に、凸部11の表面凹凸がグリーンシート1の凹部に転写されるおそれがある。前記表面粗さ(Ry)は、JISB0601(表面粗さ定義)に準拠した値であり、例えばミツトヨ社製の「サーフテストSV−3100」で凸部11の表面を測定して得られる値である。
【0032】
凸部11の高さhは、セラミックグリーンシート1の厚さの3/4以下であるのが好ましい。これにより、セラミックグリーンシート1の表面に凹部を形成することができる。これに対し、前記高さhがグリーンシート1の厚さの3/4より高いと、グリーンシート1の強度が低下して変形するおそれがあるので好ましくない。
【0033】
ついで、図1(b)に示すように、上記で説明したセラミックグリーンシート1の表面に型10を押圧する。型10を押圧する際の押圧力としては、特に限定されるものではなく、用途に応じて任意に選定することができる。
【0034】
また、型10を押圧する際には、グリーンシート1の裏面を所定の固定台に固定するのが好ましい。これにより、押圧する際にグリーンシート1がずれることがないので、所定位置で確実に型10を押圧することができると共に、下記で説明する型10の離型時において、グリーンシート1が型10と共に持ち上がることによる該シート1の変形を防止することができる。固定方法としては、例えば固定台に備えられた吸引機構を利用する吸引固定、粘着テープ等による貼着固定等が挙げられる。本発明では、繰り返し使用することができ、生産性に優れる上で、吸引固定であるのが好ましい。
【0035】
ついで、図1(c)に示すように、押圧した型10をグリーンシート1から離型する。これにより、セラミックグリーンシート1の表面に、型10の凸部11に対応した凹部12が形成される。そして、このグリーンシート1を所定の焼成条件で焼成することにより、凹部12が形成されたセラミック構造体を得ることができる。なお、前記焼成条件としては、特に限定されるものではなく、グリーンシート1を構成する材料組成により適宜選択すればよい。
【0036】
ここで、上記で説明した通り、本実施形態では型をセラミックグリーンシートの表面に押圧することにより凹部を形成するので、自由なパターンの凹部を簡単に形成することができる。具体的には、例えば図2に示すようなパターンの凹部21を含むセラミック構造体20であっても、該凹部21に対応した凸部を有する型をグリーンシートに押圧することにより、簡単に形成することができる。
【0037】
次に、本発明にかかる他の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図3は、この実施形態にかかるセラミック構造体の製造方法を示す工程図である。この実施形態にかかる製造方法によると、凹部に加えて内部に空洞を有するセラミック構造体を得ることができる。具体的には、まず、図3(a)に示すように、上記で説明した凹部12が形成されたセラミックグリーンシート1を準備する。ついで、該凹部12に樹脂50を充填する。
【0038】
<樹脂>
樹脂50は、凹部12が形成されたグリーンシート1の剛性を向上させると共に、後述する積層体15を形成する際には、均圧積層を可能とするものであり、さらに、該積層体15を焼成する際には、熱分解して除去できるものである。該樹脂50の組成は、樹脂バインダーと、可塑剤および滑剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0039】
(樹脂バインダー)
樹脂バインダーとしては、熱分解性に優れるものが好ましく、例えばアクリル系,α−メチルスチレン系等が好ましい。アクリル樹脂としては、例えばアクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体等が挙げられ、具体的には、例えばアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。このようなものとしては、例えばメチルアクリレート,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,エチルメタクリレート,n−プロピルアクリレート,n−プロピルメタアクリレート,イソプロピルアクリレート,イソプロピルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,n−ブチルメタクリレート,イソブチルアクリレート,イソブチルメタクリレート,t−ブチルアクリレート,t−ブチルメタクリレート,シクロヘキシルアクリレート,シクロヘキシルメタクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0040】
これらのアクリル樹脂は、必要に応じて単独または2種以上を適宜選択して使用することができる。その中でも、イソブチルメタクリレート系(IBMA)やメチルメタクリレート系(MMA)樹脂バインダーの単体若しくは共重合体が特に好ましい。また、熱分解性を損なわない範囲内であれば、アクリル樹脂と共重合が可能であり、スチレン,α−メチルスチレン,アクリロニトリル,エチレン等を適宜導入してもよい。
【0041】
(可塑剤・滑剤)
樹脂50に柔軟性や可とう性を付与するために添加される可塑剤としては、前記セラミックグリーンシート1で例示した可塑剤と同じものが例示される。
また、前記滑剤としては、例えばジエチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコール,ジエチレングリコールメチルエーテル,トリエチレングリコールメチルエーテル,ジエチレングリコールエチルエーテル,ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル,トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル,エチレングリコールフェニルエーテル,エチレングリコール−n−アセテート,ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル,ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のエチレングリコール系、ジプロピレングリコール,トリプロピレングリコール,ポリプロピレングリコール,ジプロピレングリコールメチルエーテル,トリプロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールモノエチルエーテル,ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル,トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル,プロピレングリコールフェニルエーテル,エチレングリコールベンジルエーテル,エチレングリコールイソアミルエーテル等のプロピレングリコール系、グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン等のグリセリン系等が挙げられ、中でもポリエチレングリコール(PEG),グリセリンが好ましい。
【0042】
また、天然ワックスおよび合成ワックス等を滑剤として用いてもよい。一般的な樹脂バインダーであるアクリル樹脂等は、熱分解時にモノマー単位に解重合を起こして低分子化するため、大量の分解ガスが発生するのに対し、ワックス類の多くは熱分解時に大きな分子に分解し、分子量が大きいまま気化するので、分解ガスの発生量を低減でき、分解ガス発生圧力による周囲のグリーンシートの変形やクラックの発生等を防ぐ効果がある。天然ワックスとしては、例えば、カルナバワックス,キャンデリラワックス,シュガーワックス,ライスワックス,木ロウ,ベイベリーワックス,オーキュリーワックス,エスパルトワックス,ホホバ油等の植物系ワックス、蜜蝋,昆虫ロウ,鯨ロウ,ラノリンワックス等の動物系ワックス、パラフィンワックス,マイクロクリスタリンワックス,ペトロラタム等の石油系ワックス、オゾケライトワックス,セレシン,モンタンワックス等の鉱物系ワックス等が挙げられる。中でもカルナバワックス,パラフィンワックス,マイクロクリスタリンワックスが好ましい。さらに、合成ワックスとしては例えば、酸化天然ワックス,アマイドワックス,ポリエチレンワックス,酸化ポリエチレンワックス,酸変性ポリエチレンワックス,ポリプロピレンワックス,酸変性ポリプロピレンワックス,酸変性ポリプロピレンワックス,フィッシャートロプシュワックス,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−アクリル酸共重合体,エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。中でもポリエチレンワックス,エチレン−アクリル酸共重合体,エチレン−メタクリル酸共重合体が好ましく、これらの中から選ばれる少なくとも1種を含有するのがよい。
【0043】
なお、上記で例示した可塑剤や滑剤の添加量は少ない方が好ましい。これは、例えば樹脂50が接触する部位に微細な配線導体等の導体部が形成されている場合には、焼成時において、溶融した樹脂50の可塑剤や滑剤が導体部に含まれる樹脂バインダーを溶解させるおそれがあり、その結果、導体部の強度が低下して導体部が変形したり、断線するおそれがあるからである。また、固体状のワックス等の一部は、加熱融解時に体積膨張を引き起こすものがあるため、注意を要する。
【0044】
(気泡・中空樹脂ビーズ)
樹脂50は、さらに気泡を含むのが好ましい。これにより、樹脂50を熱分解させて除去する際に発生する熱分解物の量を低減することができる。該気泡は樹脂50中に均一に分布しているのが好ましく、例えば前記樹脂バインダーを多孔質化することにより樹脂50に含ませることができる。
【0045】
樹脂バインダーを多孔質化する方法としては、特に制限されないが、例えば熱誘起相分離法、非溶媒誘起相分離法等の高分子溶液の相分離を利用する方法、ポリマー生成時発生ガス利用、熱分解反応発生ガス利用等の化学反応発生ガス活用法、機械的な物理手法や各種発泡剤等の化学的手法等でガスを混入させる方法、樹脂ビーズを充填させて樹脂ビーズ同士の空隙を利用する方法、発泡性樹脂ビーズの使用、多孔質樹脂ビーズの使用、中空樹脂ビーズの使用等の樹脂ビーズ活用法、超臨界状態の二酸化炭素や窒素を利用したマイクロセルラープラスチック法等が挙げられる。
【0046】
前記樹脂ビーズとしては、焼成時に良好な熱分解挙動を示すものであれば特に制限されないが、本発明ではアクリル系,α−メチルスチレン系等が好ましい。また、(中空)樹脂ビーズの平均粒径は1〜20μmが好ましい。平均粒径が1μm未満であると、樹脂ビーズの凝集が問題となり、平均粒径が20μmを超えると、充填された樹脂50の表面に突起が生じ易い。樹脂ビーズの添加量は、脱バインダー時において該樹脂ビーズが発生する溶融物やガス等でグリーンシートが変形したりクラック等を発生することがない量であり、具体的には、樹脂バインダー100重量部に対して50〜150重量部程度であるのがよい。
【0047】
前記気泡の大きさは、積層体15を形成する際の均圧積層性の上で、微細であるのが好ましく、具体的には、気泡の平均直径は500μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であるのがよい。そのため、前述した気泡形成方法の中でも、発泡性樹脂ビーズ,多孔質樹脂ビーズ,中空ビーズ等の各種樹脂ビーズの活用による多孔質化、もしくはマイクロセルラープラスチック法を利用することが好ましく、特に、中空樹脂ビーズが好ましい。これにより、中空樹脂ビーズが剛体であるので、該中空樹脂ビーズを含む樹脂50が凹部12に充填されたグリーンシート1の剛性が向上する。
【0048】
また、気泡の平均直径は凹部12に充填された樹脂50の厚みtに対して(1/3)t以下であることが望ましい。これにより、積層体15を形成する際には、所定の均圧積層が可能となる。これに対し、気泡の平均直径が前記(1/3)tより大きい場合には、樹脂50の剛性が低下するので、高い圧力で積層した場合に樹脂50から周囲のグリーンシートに圧力が伝わりにくくなり、均圧積層性が低下するおそれがある。なお、本発明にかかる前記樹脂50の厚みt、すなわち凹部12の深さは、特に限定されるものではなく、上記した均圧積層が可能となる厚みであればよい。
【0049】
樹脂50の気孔率は、上記した効果を得る上で40〜80%、好ましくは50〜70%程度であるのがよい。前記気孔率は、樹脂50内に含まれる気泡の割合を百分率で表したものであり、例えば凹部12に充填された樹脂50の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、全視野に占める気泡の割合から算出することができる。
【0050】
樹脂50は、例えばスクリーン印刷等により凹部12に充填することができる。具体的には、図3(a)に示すように、凹部12に対応した所定の貫通パターンが形成された印刷マスク51をグリーンシート1の表面上に載置し、ついで、スキージ52をマスク51の表面に押し付けながら同図に示す方向に移動させ、図3(b)に示すように、樹脂50を選択的に凹部12に充填する。
【0051】
なお、前記充填する際には、樹脂50を加熱し、軟化させて充填するのが好ましい。このため、樹脂の軟化点は、セラミックグリーンシート1の軟化点より低いのが好ましい。また、必要に応じて適当な溶剤で粘度調整を行ってもよく、その場合には、充填後に乾燥させればよい。
【0052】
ついで、図3(c)に示すように、凹部12に樹脂50が充填されたグリーンシート1を複数枚積層して積層体15を形成する。具体的には、例えばグリーンシートの表面に、樹脂バインダー,溶剤,可塑剤より成る適当な接着剤を塗布もしくは転写し、他のグリーンシートと加圧し積層することにより一体化して積層体15を得る。
【0053】
ここで、本実施形態では、グリーンシート1の凹部12に樹脂50が充填されているので、積層体15を形成する際には均圧積層が可能となり、その結果、凹部12や、図3(d)に示す空洞13が変形するのを抑制できると共に、層間剥離することのないセラミック構造体16が得られる。
【0054】
ついで、図3(d)に示すように、積層体15を所定条件で焼成することにより、前記凹部12と共に、内部に空洞13を含むセラミック構造体16が得られる。なお、焼成温度は、セラミック材料等との関係により適宜選択することができる。
【0055】
本実施形態では、焼成時に樹脂50を熱分解させて除去する。ここで、樹脂50が熱分解する直前の溶融状態の体積Vliq.が以下に示す所定の関係を満たすのが好ましい。すなわち、セラミックグリーンシート1に形成される凹部12の体積をVとしたとき、凹部12に充填される樹脂50の占有体積は0.8V〜1.1Vであり、樹脂50が熱分解する直前の溶融状態の体積Vliq.は0.2V〜0.6Vであるのが好ましい。これにより、積層体15を形成する際の均圧積層が可能となると共に、熱分解物の量をより低減することができる。前記占有体積とは、凹部12の体積に対する樹脂50の体積を意味し、樹脂50に含まれる気泡の体積も含む。
【0056】
この溶融状態体積Vliq.は、例えば樹脂50に導入する気泡の体積比等により調整することが可能である。ここで、Vliq.が0.2Vより低くなるように樹脂50中の気泡の割合を増した場合には、樹脂50の強度が低下し、均圧積層性が低下するおそれがある。また、Vliq.が0.6Vより高くなるように樹脂50中の気泡の割合を減らした場合には、樹脂50の強度が必要以上に増加し、樹脂50の凹部12への充填性が低下するおそれがある。さらに、樹脂50が熱分解する際には、(V−Vliq.)の空隙体積が小さいので、樹脂50の熱分解ガスを外部に放出させにくくなり、その結果、樹脂50の熱分解ガスの圧力による周囲のグリーンシートにクラック,変形等を発生させるおそれがある。
【0057】
また、積層体15を焼成し樹脂50を熱分解させて除去する際において、樹脂50の熱分解性は、凹部12が形成されたグリーンシート1に含まれる樹脂バインダーよりも優れている、すなわち熱分解しやすいことが好ましい。これにより、グリーンシート1中の樹脂バインダーが熱分解(脱脂)してグリーシート1中の残存樹脂バインダー量が減少するに伴ってグリーンシート1の強度が低下し、脆くなったグリーンシート1上で遅れて樹脂50が熱分解した場合、加熱によって液状になった高粘度の樹脂50の溶融物が、脱脂後に脆くなったグリーンシート1の表面で沸騰に伴う上下左右への振動運動を伴いながら熱分解するため、その熱分解部分に接するグリーンシート1の表面が部分的にえぐり取られることでその表面が侵食破壊される現象を解消することができる。
【0058】
具体的には、樹脂50の熱分解は、上部側から下部側に向けて順次熱分解を開始し、最終的に下部で熱分解が完了する、すなわち樹脂50の上部側は、下部側よりも熱分解しやすく構成されているのが好ましい。これにより、樹脂50の上部側の樹脂バインダーが熱分解除去される下記で説明する第一の脱バインダー工程では、グリーンシート1の凹部12は下部側の樹脂50で保護されているので、上部側の樹脂50の熱分解過程で生じる溶融物によるダメージを防ぐことができ、続く第二の脱バインダー工程において、樹脂50の下部側の樹脂バインダーを熱分解除去することにより、樹脂50の溶融物によるグリーンシート1への影響を最小限に抑えることができる。これらの効果は、凹部12に充填される樹脂50の充填量が多い場合に顕著である。
【0059】
このように樹脂50の熱分解性に差を持たせる手段としては、例えば樹脂50を上部側と下部側の2層で構成し、上部側と下部側の樹脂材料を変える方法等が挙げられる。具体的には、凹部12に充填する樹脂50を、例えば上部側樹脂および下部側樹脂で構成し、上部側樹脂の樹脂バインダーを下部側樹脂の樹脂バインダーよりも熱分解性に優れたものを選定すればよい。また、前記した気泡の有無により、それぞれの熱分解性に差を付与してもよい。
【0060】
特に、本発明では、積層体15の焼成時に樹脂50を熱分解させて除去する際において、樹脂50の上部側の重量が80%減少する温度をTa℃、下部側の重量が80%減少する温度をTb℃とし、凹部12が形成されたセラミックグリーンシート1に含まれる樹脂バインダーの重量が20%減少する温度をTc℃としたとき、Ta<Tb≦Tcの関係を満たすのが好ましい。
【0061】
これにより、大部分の樹脂50を熱分解させた後に、グリーンシート1の樹脂バインダーが熱分解を開始することが可能となり、樹脂50の溶融物が残存する段階では、グリーンシート1の樹脂バインダーは熱分解を開始していないことから、十分な強度を維持できる。そのため、樹脂50の溶融物がそれに接触するグリーンシート1を侵食破壊することを防ぐことができる。また、Tc℃を超える温度を下記で説明する所定時間維持することで、グリーンシート1の樹脂バインダーも十分に熱分解させることができる。
【0062】
上記関係は、例えばN2雰囲気中、昇温速度10℃/分で600℃まで熱重量示差熱分析(TG/DTA)を差動型高温熱天秤(理学電機(株)製「TG8120」)で行なった場合に、上部側樹脂、下部側樹脂および凹部12が形成されたセラミックグリーンシート1に含まれる樹脂バインダーが上記関係を満たすのがよい。また、上記関係を満たす上で、樹脂50は600℃以下において99重量%以上が熱分解するのが好ましい。
【0063】
焼成時における脱バインダー工程の温度プロファイルは、樹脂50の上部側が熱分解する温度Ta℃付近を、例えば1時間から6時間維持して十分に樹脂50の上部側を熱分解除去する第一の脱バインダー工程と、続けてTb℃を、例えば1時間から6時間維持して十分に樹脂50の下部側を熱分解除去する第二の脱バインダー工程と、続けてTc℃を超える温度を、例えば1時間から6時間維持して行なう第三の脱バインダー工程に分けて行なうことが好ましい。なお、前記保持時間は、樹脂バインダーの量および材料によって上記範囲内で変化する。
【0064】
このようにして製造されるセラミック構造体の凹部12および内部の空洞13は、高い直角度、平面度および寸法精度を有する焼結面から成るため、切削や表面処理等の特別な平坦化処理を行なう必要がない。従って、凹部12もしくは内部の空洞13に電子部品等を搭載する場合には、ボンディング不良等の不具合を防ぐことができる。さらに、流体の流路としてセラミック構造体をマイクロ化学チップ等とする場合には、流量や流速を一定にすることが可能となる。
【0065】
また、曲率半径についても、設計通りのセラミック構造体を得ることができるので、凹部12もしくは空洞13に電子部品等を搭載する場合には、凹部12もしくは空洞13の有効体積を最大化できるので、電子部品等の搭載密度を高めることができる。さらに、空洞13を流体の流路とする場合には、設計通りの流量や流速を実現することが可能となる。
【0066】
なお、必要に応じて、凹部12もしくは空洞13の内面を研磨処理や切削処理を施してもよい。これにより、さらに高い直角度、平面度および寸法精度が得られる。さらに、本発明のセラミック構造体を下記で説明するマイクロ化学チップとして使用する場合には、各種化学薬品等に対する耐性,濡れ性,撥水性,表面張力,構成成分の溶出,表面の極性,表面の官能基等、被処理流体に影響を与える要因を考慮して各種表面処理を施してもよい。
【0067】
本発明にかかるセラミック構造体の製造方法における他の実施形態は、セラミックグリーンシートの表面を切削してセラミックグリーンシートに凹部を形成する工程と、該セラミックグリーンシートを焼成する工程とを含むことを特徴とする。この構成であっても、上記で説明した実施形態と同様の効果が得られる。前記切削は、特に限定されるものではなく、本発明にかかる凹部を形成することが可能な切削機を用いて行えばよい。
なお、上記した以外の構成は、上記で説明した実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0068】
上記のようにして製造される本発明のセラミック構造体の用途としては、例えばマイクロ化学チップが挙げられる。微細加工技術の進展に伴い、化学,生化学における分析,生産のための操作や反応を微細加工されたチップ等を用いてフローシステムを構築する開発が進んでおり、マイクロフルイディクス,μ−TAS(Micro Total Analysis System),MEMS(Micro Electro Mechanical Systems;微小電子機械システム),BioMEMS(Bio Micro Electro Mechanical Systems)等の分野に応用されつつある。
【0069】
例えばμ−TASでは、一般的に10センチから数センチ角程度以下のガラス,シリコン,セラミック等のチップ表面に溝を形成し、その溝中に被処理流体を流して、分離,分析,反応,生産,精製,遺伝子解析等を行なっている。フローシステムの微小化は、被処理流体量の低減化,迅速化,比表面積の増加による効率向上化,生産性向上化等に有効である。
【0070】
フローシステムは流路,ポンプなどの送液機構,液溜め,弁,屈曲管,分岐管,合流管,拡大管,反応槽,分離領域,検出用フローセル,加熱部,冷却部,pH調整部,レーザ照射部,放射線照射部,検査部等から構成される。また、電極,電子回路,各種センサー,各種アンテナ等を搭載することで被処理流体の電気泳動,各種データの無線による送信等も可能である。
【0071】
さらに、機械,電子,光,化学,生化学等の複合機能を一体化,集積化,小型化,高機能化するためには、同一基板上にメタライズ配線や流路等の凹部構造を混在させて形成する技術や複数基板を三次元的に積層する技術が重要である。これらの技術は、本発明の製造方法を応用することで実現できると期待される。
【0072】
なお、本発明の製造方法を応用して作製されるマイクロ化学チップは、セラミック製となるが、化学的耐久性,透明性,電気絶縁性等に優れた他の材料で形成したマイクロ化学チップを組み合わせてもよい。例えば、ガラス,石英ガラス等のガラス類、アクリル系樹脂,ポリカーボネート,シリコーンゴム等の樹脂類、これらの複合材料、もしくはこれらの組合せによって形成したものが挙げられる。これらの材料は、酸,アルカリ,各種化学薬品等に対する耐性,濡れ性,撥水性,表面張力,構成成分の溶出,表面の極性,表面の官能基等、被処理流体に影響を与える要因を考慮して選択することが好ましい。
【0073】
本発明の製造方法を応用して得られたマイクロ化学チップにおいて用いられる被処理流体としては、純水,各種水溶液,コロイド液,懸濁液,血液,尿,体液,核酸類(DNA,RNA等),蛋白質類(抗原,抗体,レクチン,アドヘシン,各種生理活性物質の受容体,ペプチド等),糖類,細胞,各種培養液,培養抽出液,反応液,有機溶媒,各種化学薬品およびそれらの混合液等を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0074】
上記マイクロ化学チップ以外の用途としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
例えば、
(a)図4に示すように、電気回路17が表面または内部に内蔵されたセラミック構造体18、
(b)凹部12や空洞13の内面に導体層を形成して成る導波管や導波管回路基板、または凹部12や空洞13に導体を充填して成る回路配線やコンデンサ,インダクタンス等を有する配線基板、
(c)(b)の導波管回路基板や配線基板を用いた、LSI等の半導体集積回路素子,水晶振動子等の圧電振動子,フォトダイオードやCCD素子等の受光素子,各種センサー素子,各種電子部品等を収納するための電子部品収納用パッケージ、
(d)(b)の導波管、導波管回路、配線基板を用いたミリ波回路、ミリ波回路を用いた自動車等用のミリ波レーダー、
(e)内部に酸素ガス,水素ガス,アルコール,炭化水素ガス等が流通するための流路が形成された燃料電池や燃料電池用改質器、
(f)圧電材料から成り、内部に形成された空洞13や流路からインクを圧電効果により外部に放出するインクジェットプリンターヘッド、
(g)圧電材料から成り、凹部12や空洞13を形成して成るアクチュエーター等の圧電素子、
(h)凹部12や空洞13の内面に電子部品等を搭載するための導体層が形成された光学用途の部品,基板、凹部12や空洞13によって光路が形成された光学用途の部品,基板、
(i)内部にフラクタル構造の複数の空洞13が形成された電波吸収体、
(j)PDP(Plasma Display Panel),FED(Field Emission Display)等の背面板等の多数の凹部12が形成されたディスプレイ部品、
等が挙げられる。
【0075】
なお、上記で説明した実施形態では、表面にのみ凹部12が形成されたセラミックグリーンシート1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、セラミックグリーンシートの両面に凹部を形成し、該グリーンシートを焼成して両面に凹部が形成されたセラミック構造体としてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、凸部11を備えた型10を押圧することにより形成される凹部12の場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、要求される凹部に応じた各種の凸部を有する型が採用可能である。具体的には、例えば図5(a)に示すように、先端部が曲面を有する凸部31を備えた型30を押圧することにより形成される凹部32、図5(b)に示すように、断面形状が略三角形を有する凸部41を備えた型40を押圧することにより形成される凹部42等が挙げられる。
【0077】
また、上記で説明した他の実施形態では、スクリーン印刷で樹脂50を凹部12に充填する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図6(a)に示すように、印刷マスクを用いることなく、直接グリーンシート1の凹部12にスキージ52で樹脂50を充填する方法や、図6(b)に示すように、ディスペンサー(供給ノズル)53を用いてグリーンシート1の凹部12に樹脂50を充填する方法等であってもよい。
【0078】
また、積層体15を凹部12に樹脂50が充填されたグリーンシート1のみで構成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、該グリーンシート1と他のグリーンシート(凹部12が形成されていないグリーンシート)とを積層して積層体を形成してもよい。さらに、樹脂50が上記で説明した中空樹脂ビーズのみで構成されていてもよい。
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
[実施例1]
<グリーンシートの作製>
SiO2,Al23,CaO,ZnO,B23からなるガラスセラミック原料粉末100重量部に対して、メチルアクリレートとメチルメタクリレートの共重合組成物のバインダーを11重量部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを5重量部添加し、トルエンを有機溶剤としてボールミルにより36時間混合しスラリーを調製した。得られたスラリーを用いてドクターブレード法により成形、乾燥して、焼成後に厚さ0.7mmになるグリーンシートを複数枚作製した。
【0081】
<型の作製>
図1に示すような型10を作製した。具体的には、まず、平板のダイス鋼に焼入れ処理を行った。ついで、このダイス鋼の型となる主面、およびその反対面に平坦加工を施した後、主面を研削加工し、凸部11を形成した。該凸部11は、型10をグリーンシートの表面に押圧することにより形成される凹部12が幅0.2mm、深さ0.2mmとなるような形状に形成した。そして、この凸部11を含む主面全体にDLC加工を施した。
【0082】
<セラミック構造体の作製>
前記グリーンシートを固定台(吸着固定)に載置して固定し、前記型10をグリーンシートの表面に押圧し、グリーンシートに図1に示す凹部12を形成した。このグリーンシートを複数枚作製し、これらのグリーンシートを含む複数枚のグリーンシートを積層し、ついで、4.9MPaの圧力で一体化してグリーンシート積層体を作製した。
【0083】
その後、このグリーンシート積層体は脱バインダーを行ない、続けて950〜1000℃で焼成することで、表面の凹部および内部に空洞構造を有するセラミック構造体を作製した。
【0084】
[比較例1]
<樹脂シートを用いたセラミック構造体の作製>
実施例1と同様にして第1のグリーンシートを作製した。この第1のグリーンシートに、幅0.2mmの貫通溝を作製し、この溝に、厚みを0.5mmにした以外は実施例1と同様にして作製した第2のグリーンシートを嵌め込んだ。
【0085】
ついで、イソブチルメタクリレートの樹脂バインダー100重量部に対して、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)3重量部、ポリエチレングリコール3.5重量部から成る樹脂組成物のシートを厚さ0.2mmで作製し、このシートを、第2のグリーンシートが溝に嵌め込まれた第1のグリーンシートと積層してグリーンシート積層体を作製した。
【0086】
次に、このグリーンシート積層体を、Al23系セッターに載置して窒素,水素,水蒸気の混合雰囲気焼成炉内にて、樹脂の80%重量減少温度付近である310℃で3時間保持して、十分に樹脂の除去を行なった。
【0087】
その後、さらにグリーンシートに含まれる樹脂バインダーの20%重量減少温度を超える温度領域である850℃を3時間保持して、さらに脱バインダーを行ない、続けて950〜1000℃で焼成することで、表面の凹部および内部に空洞構造を有するセラミック構造体を作製した。
【0088】
上記で得られた実施例1および比較例1の各セラミック構造体について、凹部の幅の変形の評価を行った。凹部の幅の変形は走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1から明らかなように、型10を用いて凹部を作製したセラミック構造体(実施例1)は、作業性が容易であり、作業中に凹部の幅の変形が見られなかった。一方、貫通の溝に樹脂シートを嵌め込んだ比較例1は、作業中に溝部分の樹脂シートとグリーンシートの境界より分離して溝幅が大きくなっている部分が見られた。
【0091】
[実施例2〜7]
<樹脂を用いたセラミック構造体の作製>
次に、凹部を作製したグリーンシートに樹脂を充填し、セラミック構造体の凹部もしくは空洞部の構造評価を行った。
具体的には、まず、実施例1と同様にしてグリーンシート及びグリーンシートの凹部を作製した。ついで、前記グリーンシートを固定台(吸着固定)に載置して固定し、前記型10をグリーンシートの表面に押圧し、グリーンシートに図1に示す凹部12を形成した。
【0092】
次に、イソブチルメタクリレートの樹脂バインダー100重量部に対して、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)3重量部、ポリエチレングリコール3.5重量部から成る樹脂組成物に対して気泡を導入して、表2に示す気泡平均直径および溶融状態体積を有する状態に調製された充填用樹脂を作製した。前記凹部12の形状と略同一に開口部を作製した印刷マスクをグリーンシートに載置し、充填用樹脂を60℃に加熱しながら印刷マスクを介して、スキージで押し付け、前記凹部12に充填用樹脂を充填した。
【0093】
続いて、アクリル樹脂,溶剤,フタル酸エステル系の可塑剤より成る接着剤を塗布したグリーンシートを4.9MPaの圧力で積層することにより複数枚のグリーンシートを一体化し、グリーンシート積層体を作製した。なお、樹脂の占有体積は、体積Vであるセラミックグリーンシートの凹部となる空隙部位0.8V〜1.1V(占有体積には中空樹脂ビーズ内部に含まれる気泡体積を含む)に設定した。また、樹脂が熱分解する直前の溶融状態の体積Vliq.は0.2V〜0.6Vに設定した。
【0094】
次に、このグリーンシート積層体を、Al23系セッターに載置して窒素,水素,水蒸気の混合雰囲気焼成炉内にて、樹脂の80%重量減少温度付近である310℃で3時間保持して、十分に樹脂の除去を行なった。
【0095】
その後、さらにグリーンシートに含まれる樹脂バインダーの20%重量減少温度を超える温度領域である850℃を3時間保持して、さらに脱バインダーを行ない、続けて950〜1000℃で焼成することで、表面の凹部および内部に空洞構造を有するセラミック構造体を作製した。
【0096】
[実施例8]
樹脂の構成物において、平均粒径10μmの架橋イソブチルメタクリレートの樹脂ビーズをイソブチルメタクリレートの樹脂バインダー100重量部に対して100重量部追加したものに、DOP6重量部、ポリエチレングリコール7重量部から成る樹脂組成物に対して気泡を導入し、気泡平均直径および溶融状態体積を有する樹脂ビーズと気泡が混在した樹脂を作製した。他の条件は実施例2〜7と同様にしてセラミック構造体を作製した。
【0097】
[実施例9]
グリーンシートの凹部に充填する樹脂の構成において、上下2層構造からなる樹脂を作製した。下層部を構成する充填用樹脂(下部側樹脂)は、n−ブチルメタクリレートの樹脂バインダー100重量部に対して、DOP3重量部、ポリエチレングリコール3.5重量部から成る樹脂組成物に対して気泡を導入して厚さ0.1mmになるように充填した。
【0098】
一方、下層部の上に構成する上層部の充填用樹脂(上部側樹脂)は、イソブチルメタクリレートの樹脂バインダー100重量部に対して、DOP3重量部、ポリエチレングリコール3.5重量部から成る樹脂組成物に対して気泡を導入して厚さ0.1mmになるように充填し、表1に示す気泡平均直径および溶融状態体積を有する厚さ0.2mmの樹脂充填されたグリーンシートを用意した。他の条件は実施例2〜7と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
【0099】
次に、このグリーンシート積層体を、Al23系セッターに載置して窒素,水素,水蒸気の混合雰囲気焼成炉内にて、上層部を構成する樹脂シートの80%重量減少温度Ta℃付近である310℃で3時間保持して、十分に上層部の樹脂シートの除去を行なった後、下層部の樹脂シートの80%重量減少温度Tb℃付近である330℃で3時間保持して、十分に最下層部の樹脂シートの除去を行なった。
【0100】
その後、さらにグリーンシートに含まれる樹脂バインダーの20%重量減少温度Tc℃を超える温度領域である850℃を3時間保持して、さらに脱バインダーを行ない、続けて950〜1000℃で焼成することでセラミック構造体を作製した。
【0101】
上記で得られた実施例2〜9の各セラミック構造体について、凹部の底面の表面粗さ、および構造不良の評価を行った。各評価方法を以下に示すと共に、その結果を表2に併せて示す。
【0102】
<底面の表面粗さの評価方法>
凹部もしくは空洞の底面の表面粗さは、日本工業規格に定義された最大高さRyの定義に基づき、ミツトヨ社製のサーフテストSV−3100を用いて評価し、全ての測定部位の平均値を示した。
<構造不良の評価方法>
凹部もしくは空洞を取り囲む壁面部に構造不良がないか走査型電子顕微鏡で観察した。
【0103】
【表2】

【0104】
実施例2〜9における各セラミック構造体は、型10を用いることにより、表面に所望のパターンの凹部12を簡単に形成することができた。また、表2より、実施例2〜9では、樹脂の占有体積は、体積Vであるセラミックグリーンシートの凹部となる空隙部位の0.8V〜1.1V(占有体積には中空樹脂ビーズ内部に含まれる気泡体積を含む)に設定し、溶融状態体積Vliq.が0.2V〜0.6Vである樹脂を嵌め込んだ状態で加圧積層を行なったため、変形が抑制されて、優れた寸法精度を有するセラミック構造体を得ることができた。また、凹部および空洞の底面においてRyが5μm以内であり、凹凸の少ない優れたセラミック構造体が得られた。
【0105】
特に、実施例8では、充填樹脂に樹脂ビーズと気泡を介在させた構造になっていることから、剛体である樹脂ビーズの存在で樹脂シート自体の剛性が向上するため、高い圧力で積層した場合でも均圧積層性をより一層維持することが可能であるうえ、熱分解時の種々の不具合を低減する効果があるため良好な結果を得ることが出来た。さらに、実施例9では、充填樹脂を熱分解性の異なる上下2層構造を形成すると共に、脱バインダー工程を多段階に分けて実施することで樹脂の熱分解が上層部から最下層部へ順序良く起こったため、良好な形状のセラミック構造体を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態にかかるセラミック構造体の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の一実施形態により製造されるセラミック構造体の一例を示す平面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の他の実施形態にかかるセラミック構造体の製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の他の実施形態により製造されるセラミック構造体の一例を示す平面図である。
【図5】(a)および(b)は、凹部が形成されたセラミックグリーンシートの他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明にかかるセラミックグリーンシートの凹部に樹脂を充填する他の方法を説明するための概略説明図である。
【図7】表面に凹部が形成されたセラミック構造体の従来の製造方法を示す工程図である。
【図8】打ち抜き加工で貫通パターンが形成されたセラミックグリーンシートを示す平面図である。
【符号の説明】
【0107】
1 セラミックグリーンシート
10,30,40 型
11,31,41 凸部
12,21,32,42 凹部
13 空洞
15 積層体
16,18,20 セラミック構造体
17 電気回路
50 樹脂
51 印刷マスク
52 スキージ
53 ディスペンサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックグリーンシートの表面に型を押圧してセラミックグリーンシートに凹部を形成する工程と、該セラミックグリーンシートを焼成する工程とを含むことを特徴とするセラミック構造体の製造方法。
【請求項2】
セラミックグリーンシートの表面を切削してセラミックグリーンシートに凹部を形成する工程と、該セラミックグリーンシートを焼成する工程とを含むことを特徴とするセラミック構造体の製造方法。
【請求項3】
前記セラミックグリーンシートに凹部を形成する工程の後、該セラミックグリーンシートを含む複数枚のセラミックグリーンシートを積層し焼成する工程を含む請求項1または2記載のセラミック構造体の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックグリーンシートに凹部を形成する工程の後、該凹部に樹脂を充填する工程と、該樹脂を充填したセラミックグリーンシートを含む複数枚のセラミックグリーンシートを積層し焼成する工程とを含み、前記焼成時に前記樹脂を熱分解させて除去する請求項1〜3のいずれかに記載のセラミック構造体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂が気泡を含む請求項4記載のセラミック構造体の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂が中空樹脂ビーズを含む請求項4または5記載のセラミック構造体の製造方法。
【請求項7】
セラミックグリーンシートに形成される前記凹部の体積をVとしたとき、該凹部に充填される前記樹脂の占有体積は0.8V〜1.1Vであり、該樹脂が熱分解する直前の溶融状態の体積Vliq.は0.2V〜0.6Vである請求項4〜6のいずれかに記載のセラミック構造体の製造方法。
【請求項8】
前記焼成時に前記樹脂を熱分解させて除去する際において、前記樹脂の上部側の重量が80%減少する温度をTa℃、下部側の重量が80%減少する温度をTb℃とし、前記凹部が形成されたセラミックグリーンシートに含まれる樹脂バインダーの重量が20%減少する温度をTc℃としたとき、Ta<Tb≦Tcの関係を満たす請求項4〜7のいずれかに記載のセラミック構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−168294(P2007−168294A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369958(P2005−369958)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】