説明

セラミック配線基板個片の移載方法、およびその移載装置

【課題】ブレーク溝で切断した後、ピックアップテーブルの上面に移動され、大判の姿をなしている(大判状態で縦横に並ぶ)セラミック配線基板個片群から、基板個片ごとピックアップしてトレー等、別の位置に移載(移動)する場合に好適な、セラミック配線基板個片の移載方法を得る。
【解決手段】テーブル21の上面を、伸縮するシート31で覆っておき、このシート31の上面に、切断後、大判における配線基板部位の配列状態のままのセラミック配線基板個片群10を載置し、各基板個片11を吸着してピックアップする際、隣接する縦横の各基板個片11相互における切断面間に間隔Sができるように、シート31をテーブル21の上面に沿って引き伸ばしておく。シート31の上面に載置したとき、間隔がなかったとしても、この引き伸ばしにより、基板個片相11互間に間隔Sができるから、引っかかりのない円滑なピックアップができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収容するパッケージなどに使用されるセラミック配線基板の製造過程(例えば最終工程)で、焼成済の多数個取りのセラミック基板を切断、分割し、切断前の配線基板部位の配列状態(碁盤目状)のままの多数のセラミック配線基板(個片)群とし、この基板個片群からセラミック配線基板の各個片(各配線基板)を個別にピックアップして、別位置に置かれたトレー等の容器などに収容する場合のような、セラミック配線基板個片の移載(移動)方法、及びその移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック配線基板を製造する過程では、例えば、配線基板部位が碁盤目状をなす形で、縦横に複数連なる形で配置されてなる多数個取りのセラミック基板(大判)の状態で焼成し、その後、露出する端子等の金属層に一括してメッキ等の処理がなされる。その後、セラミック配線基板個片となるように、ブレーク溝(隣接する配線基板部位相互間の境界線に沿って設けられている切断用の溝)に沿って切断される。切断され、分割されたセラミック配線基板個片は、その後の工程で、ピックアップされ、トレー等に移載(移動)、配置され、次工程(例えば、検査工程)に搬送(移送)される。
【0003】
このような製造工程中、大判をセラミック配線基板個片に分割する手法(切断手段)としては、種々あるが、例えば次のようにして行われる(特許文献1)。大判を、切断手段である一対のベルト(逆回転し、互いのベルトが接するように配置された2組のベルト装置のベルト)相互間に通し、そのベルトの流れ方向において大判が若干の角度、屈曲するように曲げ力(衝撃)を付与する。こうすることで、脆性なセラミック基板(大判)を、その流れ方向に対し直角な横のブレーク溝(隣接する配線基板部位相互間の境界線)で次々と切断する。ただし、この段階では、そのブレーク溝で切断されているだけであり、全体としてみると大判における配線基板部位の配列状態は保持されている。すなわち、この切断工程では、複数のセラミック配線基板個片部位が横に連なっている短冊状の帯板状基板(中判)が、その長手方向に沿って切断されてはいるものの、全体としては大判における配線基板部位の配列状態のままである。
【0004】
続いて、このような切断仕掛品を、前工程のベルトによる大判の送り方向と直角方向の送り方向をなす、別の一対のベルト相互間に通す。すなわち、複数の列をなす帯板状基板(中判)を、各帯板状基板の長手方向に複数の列で流して、別の一対のベルト相互間に通す。これにより、上記したのと同様に、帯板状基板(中判)がその流れ方向(各帯板状基板の長手方向)において、若干の角度、屈曲するように曲げ力(衝撃)を付与する。こうすることで、各帯板状基板は、その流れ方向(帯板の長手方向)に対して、直角な横のブレーク溝(1列で連なっているセラミック配線基板部位の相互間の境界線)で、次々と切断される。これにより多数の方形(通常、長方形、又は正方形)のセラミック配線基板個片(以下、基板個片、又は単に個片ともいう)が得られる。すなわち、上記のような切断工程を経ることにより、多数個取りのセラミック基板(大判)は、多数のセラミック配線基板個片に切断されたものとなる。
【0005】
ところで、上記した切断法による切断工程を経て得られたセラミック配線基板個片群(多数のセラミック配線基板個片)の切断直後は、全体としては、切断前の配線基板部位が碁盤目状に縦横に複数連なる形で配置されてなる多数個取りのセラミック基板(大判)における配線基板部位の配列状態のままである。すなわち、上記工程による切断直後は、多数のセラミック配線基板個片に切断されてはいるものの、この段階では大判における配線基板部位の配列状態が保たれている。
【0006】
一方、このように大判の配列状態が保たれているセラミック配線基板個片群は、従来、その状態のままでピックアップ用のテーブル(台面)の上面に移動、載置され、該上面においてセラミック配線基板個片ごと、個別にピックアップされ、上記したようなトレー等に移載されていた。他方、このピックアップは、通常、真空引き等の吸着手段(吸着装置)で行われ、この吸着装置を移動する等して、所望とする移載が行われていた。すなわち、その吸着部(吸盤)をセラミック配線基板個片の上面に当てて吸着してピックアップし、移動手段を駆動して吸着装置を別位置に移動し、所定の位置にある例えばトレーの上面において吸着を解除し、セラミック配線基板個片をそこに移載、配置する。以後、これらの吸着等を繰り返し、所定数の基板個片をトレーに移載、配置する。そして、その終了後は、当該トレーを別途の移動手段で移動し、セラミック配線基板個片群を次工程に搬送する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−221361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記したようなベルト相互間を通す切断手段で切断し、その切断後のセラミック配線基板個片群から、吸着により、各セラミック配線基板個片をピックアップ装置で引き上げる際には、次のような問題があった。切断後、ピックアップ用のテーブル(台面)の上面に載置されたセラミック配線基板個片群は、大判におけるセラミック配線基板個片部位の配列状態が保たれている。したがって、このような個片群において隣接するセラミック配線基板個片同士の切断面相互間、すなわち、1つのセラミック配線基板個片の周囲の4辺は、それに隣接するセラミック配線基板個片の辺との間に、実質的には隙間がないか、あっても微小な隙間(0.2〜0.3mm程度)にすぎない。このため、図8のAに示したように、切断面相互間に隙間がない基板個片11,11の状態において、図8のBに示したように、ピックアップ装置の吸着用のロッド205で、セラミック配線基板個片11をピックアップしようとすると、その基板個片11は、接触や摩擦により、隣のセラミック配線基板個片11の縁を一緒に持ち上げてしまうことがある。しかも、セラミック基板(大判、又は中判)は、これを屈曲又は折り曲げる形でブレーク溝で切断しているだけであるから、その切断面には、微小なバリが発生していることや、微小な傾斜が発生していることが多い。これにより、隣接する一方のセラミック配線基板個片の切断面の部分が、他方のセラミック配線基板個片の切断面に被さっていることも多い。こうしたことから、セラミック配線基板個片群から、セラミック配線基板個片を吸着して引き上げる際には、引き上げようとするセラミック配線基板個片の辺が、それに隣接しているセラミック配線基板個片の辺に接触したり、引っかかってしまうことがあるのである。
【0009】
そして、当該引き上げ対象のセラミック配線基板個片に隣接する個片が、その縁を引き上げられるように一緒に持ち上げられるような場合には、その後、落下する。これにより、このように引き上げ対象をなすセラミック配線基板個片を引き上げる際において、隣の個片に引っかかりを生じる場合には、一緒に引き上げられた個片にカケが発生したり、落下時に移動やひっくり返りを起こすなどの問題を生じる。また、引き上げ対象をなすセラミック配線基板個片に隣接する周囲の複数の基板個片や、それらに隣接する基板個片に連鎖的に引っかかり等が生じるような場合には、それらの落下時の姿勢、衝撃次第では、多数のセラミック配線基板個片が飛散してしまうことさえある。そして、このような場合には、ピックアップ工程を一時的に停止して、移動、飛散したセラミック配線基板個片を収集し、元位置に戻すなどの多大かつ余分な作業を強いられることになり、セラミック配線基板個片の移載の稼動効率の大きな低下を招いてしまう。
【0010】
しかも、セラミック配線基板個片でも、それが平面視、縦横、それぞれ数mm(2〜3mm)で、厚みも1mm未満といった微小な配線基板となると、それ自体の重さ(自重)も極めて僅かであり、したがって、上記した問題が発生しやすい。なお、このような問題は、セラミック配線基板個片群において、ピックアップ対象の基板個片に隣接する周囲の基板個片が持ち上がらないように、例えば、窓穴付きの板(枠状の板)等からなる持ち上がり防止手段で、それらを押え付け可能なように配置することも考えられる。すなわち、その周囲のセラミック配線基板個片の持ち上がりを規制しつつ、当該ピックアップ対象の基板個片を、その窓穴内においてピックアップするというものである。しかし、これでは、ピックアップ装置や持ち上がり防止手段の制御が複雑化するため、移載の迅速化が阻害される。
【0011】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたもので、ブレーク溝で切断した後、ピックアップテーブルの上面に移動され、基板個片が縦横に並ぶセラミック配線基板個片群(基板個片の集合体)から、基板個片ごとピックアップしてトレー等、別の位置に移載(移動)する場合に好適な、セラミック配線基板個片の移載方法、およびその移載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、複数の配線基板部位がブレーク溝を介して縦横に連なる多数個取りセラミック基板を、該多数個取りセラミック基板における前記配線基板部位の配列状態のままで、前記ブレーク溝に沿って各セラミック配線基板個片に切断し、
その切断後の前記多数個取りセラミック基板における配線基板部位の配列状態のままのセラミック配線基板個片群をピックアップ用のテーブルに載置し、
各セラミック配線基板個片を吸着してピックアップし、別の位置に移動して載置するセラミック配線基板個片の移載方法において、
前記テーブルの上面を、伸縮するシートで覆っておき、このシートの上面に、切断後の前記多数個取りセラミック基板における配線基板部位の配列状態のままのセラミック配線基板個片群を載置し、
各セラミック配線基板個片を吸着してピックアップする際、
隣接する縦横の各セラミック配線基板個片相互における切断面間に間隔ができ、或いはその間隔が拡がるように、前記シートを前記テーブルの上面に沿って引き伸ばしておくことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の本発明は、前記シートを前記テーブルの上面に沿って、平面視、放射状方向に引き伸ばすことを特徴とする請求項1に記載のセラミック配線基板個片の移載方法である。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、複数の配線基板部位がブレーク溝を介して縦横に連なる多数個取りセラミック基板を、該多数個取りセラミック基板における前記配線基板部位の配列状態のままで、前記ブレーク溝に沿って各セラミック配線基板個片に切断し、
その切断後の前記多数個取りセラミック基板における配線基板部位の配列状態のままのセラミック配線基板個片群をピックアップ用のテーブルに載置し、
各セラミック配線基板個片を吸着してピックアップし、別の位置に移動して載置するのに使用されるセラミック配線基板個片の移載装置であって、
前記テーブルと、
そのテーブルの上面を覆う伸縮自在のシートと、
そのシートの上面に載置された切断後の多数個取りセラミック基板における配線基板部位の配列状態のままのセラミック配線基板個片群において、隣接する縦横の各セラミック配線基板個片相互における切断面間に間隔ができ、或いはその間隔が拡がるように、前記シートを前記テーブル上面に沿って引き伸ばすシート引き伸ばし装置と、
このテーブルの上面に載置された各セラミック配線基板個片を吸着してピックアップするピックアップ装置と、
ピックアップしたセラミック配線基板個片を別の位置に移動し、載置するためのピックアップ装置の移動装置と、を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の本発明は、前記テーブルが、平面視、円形をなすと共に、その上面と外周面とのコーナーに、凸となす丸み部が周方向に沿って付けられている一方、該テーブルは、ベース上に立設されたガイド軸部材の上端に固定されており、
該テーブルと前記ベースとの間であって、該ガイド軸部材にはこれにガイドされて昇降可能の昇降盤が、前記ベース又は前記テーブルに設けられたシリンダ装置の駆動により昇降可能に設けられており、
前記シートが、前記テーブルの丸み部において周方向に沿って下向きに延びるスカート部を有するように保持され、前記昇降盤が下降された際に、該スカート部が下向きに引張られるように、該スカート部が該昇降盤に固定されていることを特徴とする請求項3に記載のセラミック配線基板個片の移載装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセラミック配線基板個片の移載方法、又はその移載装置によれば、セラミック配線基板個片のピックアップ時には、前記シートが前記テーブルの上面に沿って引き伸ばされているか、引き伸ばすことができる。したがって、このシートの伸びに対応して、その上面に載置されているセラミック配線基板個片群における各基板個片の切断面の相互間には間隔ができるか、間隔が拡がる。これにより、基板個片がピックアップされる際、当該ピックアップの対象の基板個片は、それに隣接する、他の基板個片に引っかかったり、それを持ち上げることなくピックアップされる。このため、基板個片を、円滑に別位置に移載することができる。
【0017】
本発明においてシートは、 隣接する縦横の各セラミック配線基板個片の切断面相互に間隔ができ、或いは間隔が大きくなるように、 前記テーブルの上面に沿って引き伸ばせばよい。したがって、基板個片が、平面視、方形(長方形又は正方形)であることから、例えば、隣接する基板個片の縦及び横の切断面(各辺)に垂直となる方向に、すなわち、その縦及び横の2方向にシートを引張っるようにすればよい。また、このような2方向への引張りではなく、シートをテーブルの上面に沿って放射状方向に引張ってもよい。なお、セラミック配線基板個片の切断面相互間の間隔は、基板個片の縦横の辺において同じである必要は必ずしもない。基板個片がピックアップされる際に隣接する基板個片に引っかからなければよいためである。
【0018】
本発明において前記シートは、適度の弾性(伸縮性)を有するゴム製のシート、又は適度の弾性(伸縮性)を有する樹脂材製のものを用いればよい。そして、シートはその上面(大判における配線基板部位の配列状態にある基板個片群が載置される側の表面)は、粘着性がないものとするのが好ましい。なお、シートを放射状方向に引き伸ばす場合、大判の中心から放射状に拡がる方向に引張ってもよいし、大判の1つのコーナを起点として、例えば、1/4円の周囲を半径外方に引張ってもよい。当然のことながら、縦横の2方向に引張る場合でも、大判の対角線方向に、2方向に引張るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を具体化した、セラミック配線基板個片の移載装置の実施形態例を説明する概略構成立面図。
【図2】図1の移載装置の一部を斜め上から見た平面図。
【図3】図1の移載装置のうち、ピックアップ用のテーブル、及びシート引き伸ばし装置を具体化した、シートを引き伸ばす前の半断面立面図。
【図4】図3においてテーブルのシートの上に載置されたセラミック配線基板個片群を説明する、シートの引き伸ばし前の説明用平面図。
【図5】図1の移載装置のうち、ピックアップ用のテーブル、及びシート引き伸ばし装置を具体化した、シートを引き伸ばしている状態の半断面立面図。
【図6】図5においてテーブルのシートの上に載置されたセラミック配線基板個片群を説明する、シートの引き伸ばし状態の説明用平面図。
【図7】シートの引き伸ばし方向の変更例の説明用平面図。
【図8】従来の基板個片のピックアップにおける問題点の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を具体化した実施の形態例について説明する。まず、セラミック配線基板個片の移載装置(以下、移載装置)101について、図1〜図6に基づいて説明する。この移載装置101は、切断後の大判の配列状態にある基板個片群10を、その配列状態のままで載置するピックアップ用のテーブル21を、図1の左下に有している。そして、その上方には、そのテーブル21上に載置される各基板個片11を、順次、吸着してピックアップするピックアップ装置201を備えている。このピックアップ装置201は、左右に往復動可能の移動装置301に取り付けられている。これにより、ピックアップ装置201は、ピックアップした基板個片11と共に、図1の右方に設置された載置台装置401側に移動されるように構成されている。一方、テーブル21は、図2、図4等に示したように、平面視、円形をなし、図3に示したように、その上面23が平坦(平面)であると共に、適度の伸縮性を有する(伸縮自在の)シート(例えばゴムシート)31で覆われている。また、このシート31は、テーブル21の上面23に沿って、本例ではテーブル21の上面23の中心から放射状方向に引き伸ばされるように設けられている。なお、このようなテーブル21及びシート31の引き伸ばし装置については後で詳述するが、ピックアップ装置201、その移動装置301、及びこれらの作動機構等について先に、図1、図2等に基づいて説明する。
【0021】
ピックアップ装置201は、例えば、真空作動シリンダ203からなり、テーブル21の上の所定位置において、例えば自由状態でロッド205が下降し、そのロッド205の端に設けられた吸盤(図示せず)が、セラミック配線基板個片11の上面に当接して、それを真空吸着しながらピックアップする(引き上げる)ように設定されている。なお、説明を簡易とするため、真空作動シリンダ203は1つのみ図示しているが、これは、吸着対象の基板個片11の数等に応じて適宜の数、設けておけばよい。このようなピックアップ装置201は、図1において左右に延びるその移動用の軸305に、図示しない直動ガイド等を介して取り付けられており、例えばサーボ機構にて左右に往復動制御されるように設けられている。これにより、セラミック配線基板個片11をピックアップしたピックアップ装置201は、図1の右方の載置台装置401の受台403上に配置された例えばトレー410の上に移動され、その所定位置で、真空を解除することで、その基板個片11をトレー410上の所定位置(空所)に載置するように設定されている。なお、テーブル21及び載置台装置401は、それぞれ、移載装置101の平面概略を示す図2の左右において、図示上下に延びるその走行移動用の軸105,405の上に、図示しない直動ガイド等を介して取り付けられており、それぞれ、その軸105,405(図2の上下方向)に沿って、往復動制御され、所定の基板個片をピックアップし、トレー410の所定位置にこれを載置するように設定されている。
【0022】
さて次に、本例の移載装置101の要部をなすテーブル21及びその上面23を覆っているシート31、さらには、このシート31をテーブル21の上面23に沿って、その中心から放射状方向に引き伸ばすように構成されたシート31の引き伸ばし装置等について説明する。上記したように、本例では、テーブル21は、図2等に示したように、平面視円形で、図3等に示したように、一定厚さの金属製の板から形成されている。ただし、テーブル21は、その上面23と外周面24とのコーナーに、凸となす丸み部25が周方向に沿って付けられている。また、このテーブル21は、ベース41上に、平面視、テーブル21と同心の円周上において例えば等角度間隔で垂直に立設された4本のガイド軸部材(丸棒)45の上端に固定されている。なお、ベース41は、テーブル21を上記したように走行、制御させるため、図2において上下方向に移動、制御可能の軸105に、図示しない直動ガイド手段を介して取り付けられている。
【0023】
また、テーブル21とベース41との間であって、ガイド軸部材45には、これにガイドされて昇降可能の昇降盤(スライダ)51が、円筒状のブッシュ52を介してテーブル21と平行となるように取り付けられている。すなわち、昇降盤51には、ガイド軸部材45と同配置で、円形穴が上下に貫通形成されており、ここにブッシュ52が下方から挿入され、その外周に突出形成されたフランジを介し、ボルト54締めされて昇降盤51に固定されている。また、昇降盤51は、本例では、テーブル21と略同外径を有する平面視、円形をなしている。ただし、昇降盤51の外周面(円筒面)のうち、テーブル21と反対側(図3の下側寄り部位)寄り部位56は、その外径がテーブル21寄り側の部位(円筒面)より小さい円筒面に形成され、詳細は後述するが、この円筒面にシート31の外周のスカート部35が固定されている。
【0024】
このような昇降盤51は、本例では、ベース41に立設状に取付けられた、その昇降用のシリンダ61の駆動により昇降制御されるように設けられている。すなわち、このシリンダ61は、そのロッド63の先端が昇降盤51の下面の中央を支持、又はその中央に固着されており、シリンダ本体の下端(フランジ)がベース41の上面に固定されている。しかして、このシリンダ61のロッド63を前進(上動)させることで、昇降盤51をガイド軸部材45に沿って前進(上動)させ、ロッド63を後退(下動)させることで、昇降盤51をガイド軸部材45に沿って後退(下動)させる構成とされている。なお、シリンダ61の前進、後退はともに空圧制御としてもよいが、本例では、前進はスプリング駆動(内部に設けられたスプリング)で行い、後退のみ空圧制御するスプリング付きのシリンダ61が使用されている。
【0025】
一方、テーブル21の上面23は、上記したように、適度の伸縮性を有するゴム製のシート31で覆われている。そして、このシート31は、昇降盤51をガイド軸部材45に沿って前進(上動)させている状態において、そのシート31における外周寄り部位を、テーブル21の外周の丸み部25において周方向に沿って下向きとなるように折り曲げることでスカート部35としている。すなわち、このシート31における下向きに延びるスカート部35を、昇降盤51が前進(上端)位置にあるとき、昇降盤51の外周面(円筒面)を包囲するようになじませながら密着させる。そして、その状態で、昇降盤51の外周面における下側寄り部位56の外径が小さい円筒面の位置において、そのスカート部35を外側から、例えば、バンド71を周方向に回して緊締している。これによりシート31は、スカート部35を介して昇降盤51に固定されている。なお、昇降盤51の前進端位置は、例えば、その上面がテーブル21の下面に当る位置となるように設定されている。またスカート部35をこのように緊締するに当っては、テーブル21の上面23を覆っているシート31に皺がでないようにする(テーブル21の上面23に密着状態で平坦になるようにする)ため、テーブル21の平面視、中心から放射状方向にそのシート31に、適度の引張り力が付与されるようにした上で、テーブル21の外縁の全体(全周)においてシート31を下向きに曲げなじませてスカート部35とし、このスカート部35に、下向きに適度の引張り力を付与した上で、バンド71を緊締するとよい。なお、本例では、バンド71は、スカート部35の上下、2箇所で緊締している。
【0026】
しかして、上記した構成による移載装置101では、図5に示したように、テーブル21は、昇降盤51の昇降用のシリンダ61を駆動し、そのロッド63を、前進(上端)位置から後退させることで、昇降盤51は所定ストローク下降する。これにより、その外周面に固定されている、テーブル21の上面23を覆っているシート31のうち、そのスカート部35が、昇降盤51の外周の全体において下向きに引張られる。このとき、そのシート31のうち、テーブル21の上面23を覆っている部位(円形部位)の外周縁は、テーブル21の外周面との角に形成された丸み部25に沿って下向きに伸びかつ、この丸み部25において滑るようにして下向きに引き伸ばされる。これにより、シート31は、図6に示したように、平面視、テーブル21の中心から放射状方向に外向きに引張られるから、テーブル21の上面23を覆っているシート31の円形部位は、同心円状に拡大するように引き伸ばされる。一方、この昇降用のシリンダ61のロッド63を前進させるよう排気すれば、シリンダ61内の図示しないスプリングにより昇降盤51は上昇(前進端位置に移動)するから、シート31は元(図3)の状態にその弾性により収縮する。なお、本例において、シート引き伸ばし装置は、昇降盤51及びその昇降用のシリンダ61、シート31を昇降盤51に固定しているバンド71等から構成されている。
【0027】
しかして、このようなテーブル21を含むセラミック配線基板個片11の移載装置101を用いる場合においては、前工程で、複数の配線基板部位がブレーク溝を介して縦横に連なる形で配置されてなる多数個取りセラミック基板である大判を上記したようなベルト装置を用いて切断する。これにより、大判は、それにおける配線基板部位の配列状態のままで、ブレーク溝に沿って各セラミック配線基板個片に切断され、図4に示したような基板個片11相互間には実質的に隙間のない、その配列状態のままの基板個片群10となる。そして、このようにな基板個片群10を、図3に示したように、テーブル21の上面23を覆っているシート31が引き伸ばされていない状態(基準状態)にある、ピックアップ用のテーブル21の上面23を覆っているゴムシート31の上面(表面)に載置する。このとき、図4に示したように、セラミック配線基板個片群10の中心がテーブル21の上面23の中心に位置するようにして載置する。
【0028】
次いで、図5に示したように、昇降盤51の昇降用のシリンダ61を駆動し、そのロッド63を、前進(上端)位置から、後退させ、昇降盤51を所定ストローク下降させる。これにより、テーブル21の上面23を覆っているシート31は、そのストロークに対応して、図6に示したように、テーブル21の中心から放射状方向に同心円状にて拡大するように引き伸ばされる。この結果、シート31の上面に載置されていたセラミック配線基板個片群10は、図6に示したように、隣接する基板個片11の切断面相互間に、略均等な間隔Sができ、或いは、引き伸ばし前には微小隙間しかなかったものが、略均等な間隔Sに拡がる。
【0029】
本例では、この状態において、テーブル21の上にある基板個片11をピックアップして、トレー410に移載すればよい。すなわち、ピックアップ装置201、及びテーブル21を、それぞれ移動制御する。そして、ピックアップ装置201をなす真空作動シリンダ203を、上記したように駆動し、そのロッド205先端に設けられた吸盤で、基板個片群10の中の所望とする基板個片11の上面に当接させ、それを真空吸着しながらピックアップする(引き上げる)。このピックアップ時、本例では、縦横に隣接する基板個片11は、その切断面相互間に間隔Sがあるから、従来のように、隣接する基板個片11に引っかかることなく、吸着した基板個片11をピックアップすることができる。
【0030】
したがって、そのピックアップ後は、ピックアップ装置201を上記したように走行制御し、図1の右の載置台装置401の受台403上に配置された例えばトレー410の上に搬送し、要すれば、載置台装置401を走行制御して、トレー410上の所定位置(空スペース)において、ピックアップ装置201をなす真空作動シリンダ203の真空を解除する。こうすることで、基板個片11はトレー410上に所定位置に載置され、当該基板個片11の移載が終了する。以後はこのようにシート31を引き伸ばしている状態で、上記操作を繰り返すことで、1つの大判に対応するセラミック配線基板個片群10における各基板個片11の移載を行うことができる。そして、その移載の終了後は、昇降盤51の昇降用のシリンダ61のロッド63を前進(端)位置におき、最初に戻って、別の切断後の大判における配線基板部位の配列状態のままの基板個片群10を、テーブル21上のシート31の上面に載置し、その後、シリンダ61のロッド63を後退させてシート31を引き伸ばし、上記した工程を繰り返せばよい。このように本例による基板個片の移載によれば、従来のようなそのピックアップ時において、隣接する基板個片を一緒に持ち上げたりそれに引っかかることなく、円滑な移載ができる。
【0031】
なお、上記した移載装置101によるときは、シート31の上面に載置されている基板個片群10における縦横の各基板個片11の切断面相互間の間隔Sは、シート31の引き伸ばし量に依存し、それは、昇降盤51の昇降用のシリンダ61のロッド63の後退ストロークの大きさによる。したがって、このシリンダ61のロッド63の後退ストロークは、基板個片11のピックアップにおいて、それに隣接する基板個片11に引っかかることがない間隔が得られるように設定すればよい。すなわち、隣接する基板個片11の切断面相互間の間隔が確実に保持され、いずれの基板個片11を引き上げる際にも、相互に隣接する基板個片11に接触しない適度の間隔となるようにその引き伸ばし量を設定すればよい。また、上記もしたようにその間隔は、セラミック配線基板個片11の縦横の各辺において同じである必要は必ずしもない。また、上記移載装置101においては、昇降盤51を昇降させるシリンダ61をベース41と昇降盤51との間に設けた場合で説明したが、テーブル21と昇降盤51との間の間隔を変位できればよいことから、そのシリンダ61はテーブル21と昇降盤51との間に設けてもよい。
【0032】
さらに、上記もしたように、本発明においてシート31は、 隣接する縦横の各セラミック配線基板個片11の切断面相互に間隔ができ、或いは間隔が大きくなるように、テーブル21の上面23に沿って引き伸ばすことができればよい。したがって、図7に示したように、シート31を、平面視、例えば、正方形のテーブル21の上面を覆うようにすると共に、そのシート31を同様の正方形とし、その縦及び横の外縁の辺に沿って剛性のある棒材(図示せず)を固着し、基板個片群10の載置後、その棒材を、平面視、その棒材に垂直な外方に、図7−Aの引き伸ばし前の状態から、図7−Bのように、図中矢印で示したように引張ることで引き伸ばすこととしてもよい。このようにしても、基板個片10相互間に間隔Sができるためである。ただし、上記したように、シートを放射状方向に引き伸ばす装置によれば、簡易な構成で、シートの上面を略均等に、その面が大きくなるようにそれを引き伸ばすことができる。また、上記例では、ゴム製のシートを用いた場合で説明したが、これは、適度の弾性、伸縮性を有するもので、耐久性があるものから選択して用いればよい。本発明の基板個片の移載方法及びその装置は、上記したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更して具体化できる。
【符号の説明】
【0033】
10 セラミック配線基板個片群
11 セラミック配線基板個片(基板個片)
21 ピックアップ用のテーブル
23 テーブルの上面
24 テーブルの外周面
25 丸み部
31 シート
35 シートのスカート部
41 ベース
45 ガイド軸部材
51 昇降盤
61 シリンダ(シリンダ装置)
101 セラミック配線基板個片の移載装置
201 ピックアップ装置
301 ピックアップ装置の移動装置
S 基板個片相互における切断面間の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線基板部位がブレーク溝を介して縦横に連なる多数個取りセラミック基板を、該多数個取りセラミック基板における前記配線基板部位の配列状態のままで、前記ブレーク溝に沿って各セラミック配線基板個片に切断し、
その切断後の前記多数個取りセラミック基板における配線基板部位の配列状態のままのセラミック配線基板個片群をピックアップ用のテーブルに載置し、
各セラミック配線基板個片を吸着してピックアップし、別の位置に移動して載置するセラミック配線基板個片の移載方法において、
前記テーブルの上面を、伸縮するシートで覆っておき、このシートの上面に、切断後の前記多数個取りセラミック基板における配線基板部位の配列状態のままのセラミック配線基板個片群を載置し、
各セラミック配線基板個片を吸着してピックアップする際、
隣接する縦横の各セラミック配線基板個片相互における切断面間に間隔ができ、或いはその間隔が拡がるように、前記シートを前記テーブルの上面に沿って引き伸ばしておくことを特徴とするセラミック配線基板個片の移載方法。
【請求項2】
前記シートを前記テーブルの上面に沿って、平面視、放射状方向に引き伸ばすことを特徴とする請求項1に記載のセラミック配線基板個片の移載方法。
【請求項3】
複数の配線基板部位がブレーク溝を介して縦横に連なる多数個取りセラミック基板を、該多数個取りセラミック基板における前記配線基板部位の配列状態のままで、前記ブレーク溝に沿って各セラミック配線基板個片に切断し、
その切断後の前記多数個取りセラミック基板における配線基板部位の配列状態のままのセラミック配線基板個片群をピックアップ用のテーブルに載置し、
各セラミック配線基板個片を吸着してピックアップし、別の位置に移動して載置するのに使用されるセラミック配線基板個片の移載装置であって、
前記テーブルと、
そのテーブルの上面を覆う伸縮自在のシートと、
そのシートの上面に載置された切断後の多数個取りセラミック基板における配線基板部位の配列状態のままのセラミック配線基板個片群において、隣接する縦横の各セラミック配線基板個片相互における切断面間に間隔ができ、或いはその間隔が拡がるように、前記シートを前記テーブル上面に沿って引き伸ばすシート引き伸ばし装置と、
このテーブルの上面に載置された各セラミック配線基板個片を吸着してピックアップするピックアップ装置と、
ピックアップしたセラミック配線基板個片を別の位置に移動し、載置するためのピックアップ装置の移動装置と、を含むことを特徴とするセラミック配線基板個片の移載装置。
【請求項4】
前記テーブルが、平面視、円形をなすと共に、その上面と外周面とのコーナーに、凸となす丸み部が周方向に沿って付けられている一方、該テーブルは、ベース上に立設されたガイド軸部材の上端に固定されており、
該テーブルと前記ベースとの間であって、該ガイド軸部材にはこれにガイドされて昇降可能の昇降盤が、前記ベース又は前記テーブルに設けられたシリンダ装置の駆動により昇降可能に設けられており、
前記シートが、前記テーブルの丸み部において周方向に沿って下向きに延びるスカート部を有するように保持され、前記昇降盤が下降された際に、該スカート部が下向きに引張られるように、該スカート部が該昇降盤に固定されていることを特徴とする請求項3に記載のセラミック配線基板個片の移載装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−243970(P2012−243970A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113035(P2011−113035)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】