説明

セリシン由来のポリペプチドおよび角層剥離酵素保護剤

【課題】皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼを、乾燥から保護し活性低下を防止するとともに、活性が低下したプロテアーゼに対しては本来の活性を回復させることができ、かつ、乾燥による肌荒れを予防改善する効果に優れた新規成分、または角層剥離酵素保護剤を提供する。
【解決手段】本発明によるセリシン由来のポリペプチドは、アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を10〜20モル%含み、重量平均分子量が1,000〜70,000であり、かつ、その0.5重量%水溶液の600nmにおける吸光度が、pH2.5〜8.0の範囲において0.2以下であるという性質を有するものである。本発明の角層剥離酵素保護剤は、本発明によるポリペプチドを有効成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絹タンパク質セリシンに由来する特定の性質を持つポリペプチドに関する。詳しくは本発明は、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼを、乾燥から保護し活性低下を防止するとともに、活性が低下したプロテアーゼに対しては本来の活性を回復させる効果を有する、ポリペプチドに関する。本発明はまた、このようなポリペプチドを有効成分とする角層剥離酵素保護剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、真皮、表皮、そして最外層の角質層(角層)からなる。正常な皮膚では、表皮細胞の分裂、角化、角質層の形成、そして角質層の剥離というターンオーバーが繰り返され、常に新陳代謝が行われている。角質層を構成する角質細胞はデスモソームと呼ばれる糖タンパク質等を介し強固に結合されているが、ターンオーバーに伴ってこの細胞間接着構造が分解され、角質層の自然な剥離が行われる。この細胞間接着構造の分解には、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が関与していることが明らかにされつつある。前記ターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼとして、セリンプロテアーゼタイプやシステインプロテアーゼタイプのものが知られているが、中でもトリプシン様およびキモトリプシン様セリンプロテアーゼが重要と考えられている。
【0003】
乾燥性の肌荒れを起こした皮膚(ドライスキン)では、細胞間接着構造の分解と角質層の剥離が正常に行われないことが観察されている。これは、ドライスキンでは、細胞間接着構造の分解に関与するプロテアーゼの活性が低下し、十分に機能していないことを示唆するものである。
【0004】
このため、前記プロテアーゼの乾燥条件下における活性低下を防止し、かつ低下したプロテアーゼの機能を正常な状態へ回復させることが、皮膚のターンオーバーの正常化につながり、乾燥性の肌荒れの予防改善に有効であると考えられる。
【0005】
例えば、特開2002−234845号公報(特許文献1)には、皮膚のトリプシンおよびキモトリプシン様プロテアーゼの角層剥離効果を高める物質として、ビタミンB12活性を有するコバラミン類を含む角質剥離促進剤および皮膚化粧料が開示されている。また、特開2003−226613号公報(特許文献2)には、植物抽出物を含有するプロテアーゼ活性促進剤および化粧料組成物が開示されている。
【0006】
これらの文献に記載の技術はいずれも、皮膚のプロテアーゼの活性を増強し、角質層の剥離を加速することによって、肌荒れを予防改善しようとするものである。しかしながら、これらの技術では、プロテアーゼが過剰に活性化されて皮膚刺激を生じることがあり、ドライスキンのように刺激に過敏な皮膚への適用が躊躇される場合もあると考えられた。
【0007】
一方、乾燥などによる肌荒れを予防改善する従来技術として、ペプチド類、特には絹(シルク)由来のペプチド類を、保湿剤または他の機能性成分として皮膚外用剤に配合することが知られている。例えば、特開2006−117607号公報(特許文献3)には、加水分解シルクタンパク質と抗炎症剤とを含有する皮膚外用剤が、特開2007−277119号公報(特許文献4)には、加水分解シルクタンパク質とアスコルビン酸とを含有する皮膚外用剤が開示されている。そして、シルクタンパク質としてはセリシンが好ましい旨記載されている。
【0008】
これらの技術はいずれも、皮膚の水分量を保持することにより、乾燥などによる肌荒れを予防改善しようとするものである。しかしながら、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼの活性低下防止や、低下したプロテアーゼの活性回復という観点で検討されたものではなく、乾燥による肌荒れに対する予防改善効果はさらに改善できる余地があると考えられた。
【0009】
セリシンは、繭糸に含まれる天然の絹タンパク質の1種であり、その優れた生体親和性から、食品、化粧品、医薬品などへの応用が検討され、一部は実用化されている。例えば、これまでに、保湿作用、抗酸化作用、皮膚炎症防止作用、コラーゲン産生促進作用、細胞賦活作用、紫外線防御作用などの作用効果を有することが報告されている(例えば、特開平10−245345号公報(特許文献5)、および特開平10−226653号公報(特許文献6)など)。
【0010】
加水分解されたセリシンは、pH4付近に等電点を有する。一般に、タンパク質の水に対する溶解度は、等電点において最小となり、沈澱を生じる。そのため、pHが4付近、例えば3.0〜4.5の範囲にある皮膚外用剤には、通常、前記セリシンを安定的に配合することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−234845号公報
【特許文献2】特開2003−226613号公報
【特許文献3】特開2006−117607号公報
【特許文献4】特開2007−277119号公報
【特許文献5】特開平10−245345号公報
【特許文献6】特開平10−226653号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは今般、繭糸から加水分解させて抽出したセリシン(以下、単に「抽出セリシン」または「セリシン」ということがある)から選択的に分画した特定のポリペプチドに、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼの活性低下を効果的に防止し、またこのプロテアーゼの低下した活性を大幅に回復させる機能を有することを、予想外にも見出した。このポリペプチドは、肌荒れ予防改善効果もあることがわかった。本発明者らは、これまでに、抽出セリシンに、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼの乾燥による活性低下を防止する効果、および、低下したプロテアーゼの活性を回復させる効果のあることを見出しており、また、前記セリシンに、乾燥による肌荒れを予防改善する効果のあることも見出している(特願2008−208443号)。ところが、今回、抽出セリシンから、陰イオン交換樹脂を用いて、アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を特定の高い割合で含み、かつ、重量平均分子量が特定の範囲のものを選択的に分画してポリペプチドを得たところ、驚くべきことに、このポリペプチドは、抽出セリシンに比べて、極めて優れたプロテアーゼ活性低下防止効果、プロテアーゼ活性回復効果、および肌荒れ予防改善効果を有するものであった。しかも、このポリペプチドの水溶液は、酸性領域を含む広範囲のpHにおいて、沈澱を生じることがなく、安定な性状を維持していた。
本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0013】
本発明は、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼを、乾燥から保護し活性低下を防止するとともに、活性が低下したプロテアーゼに対しては本来の活性を回復させることができる成分であって、乾燥による肌荒れを予防改善する効果に優れた新たな成分を提供することを目的とする。本発明はまた、その水溶液が広範囲のpHにおいて安定な性状を維持することができる成分の提供もその目的とする。さらに本発明は、そのような成分を有効成分とする角層剥離酵素保護剤の提供もその目的とする。
【0014】
本発明のセリシン由来のポリペプチドは、下記性質を有するものである:
(1) アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を10〜20モル%含み、
(2) 重量平均分子量が1,000〜70,000であり、かつ
(3) 0.5重量%水溶液の600nmにおける吸光度が、pH2.5〜8.0の範囲において、0.2以下である。
【0015】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明によるポリペプチドは、
繭糸から水を用いてセリシンを抽出し、
得られた抽出液を陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収することにより得られるものである。
【0016】
本発明の一つのより好ましい態様によれば、本発明によるポリペプチドは、
繭糸から水を用いて抽出し、重量平均分子量が約1,000〜70,000のセリシンを含む抽出液を得、
得られた抽出液を、そのpHが5〜8の中性付近とした後に、弱塩基性の陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収することにより得られるものである。
【0017】
本発明の角層剥離酵素保護剤は、本発明によるポリペプチドを有効成分とする。
【0018】
本発明の一つの好ましい態様によれば、前記角層剥離酵素保護剤は、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼの、皮膚における乾燥による活性低下を防止するか、または、前記プロテアーゼの低下した活性を回復させるために用いられる。
【0019】
本発明による皮膚外用剤組成物は、本発明による角層剥離酵素保護剤を含んでなる。
【0020】
本発明の一つの好ましい態様によれば、前記皮膚外用剤組成物は、乾燥による肌荒れを予防改善するために用いられる。
【0021】
本発明の別態様によれば、本発明によるポリペプチドの製造方法であって、
繭糸から水を用いてセリシンを抽出し、
得られた抽出液を陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収する
ことを含んでなる、製造方法が提供される。
【0022】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明による製造方法は、
繭糸から水を用いて抽出し、重量平均分子量が約1,000〜70,000のセリシンを含む抽出液を得、
pHを5〜8とした抽出液を、弱塩基性の陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収する
ことを含んでなる。
【0023】
本発明によるセリシン由来のポリペプチドは、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼを、乾燥から保護し活性低下を防止することができ(プロテアーゼ活性低下防止効果)、また、乾燥により活性が低下したプロテアーゼに対しては本来の活性を回復させることができる(プロテアーゼ活性回復効果)。また、本発明によるポリペプチドは、易水溶性であり、その水溶液は広範囲のpHにおいて安定な性状を維持することができる。しかも、生体適合性に優れ、皮膚に対する刺激性や感作性が無く、安全性に優れている。したがって、これまで配合が困難であったpHが酸性領域にある皮膚外用剤や、敏感肌用の皮膚外用剤にも容易に配合することができる。したがって、本発明によるポリペプチドを有効成分とする角層剥離酵素保護剤は、これら性質を有するものである。
【0024】
また、本発明によるポリペプチドは、乾燥による肌荒れの予防または改善に極めて有効である。すなわち、本発明によるポリペプチド(または角層剥離酵素保護剤)を、例えば、皮膚外用剤組成物に配合して皮膚に適用すると、皮膚のターンオーバーを正常な状態に保って、乾燥による肌荒れを予防することができる。また、乾燥により肌荒れを起こした皮膚に適用すると、皮膚のターンオーバーを正常な状態へ導き、肌荒れを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】0.5重量%ポリペプチド水溶液の、pHと、600nmにおける吸光度との関係を示すグラフである。
【図2】化粧水の肌荒れ改善効果を示すグラフである。
【発明の具体的説明】
【0026】
セリシン由来のポリペプチド
本発明によるセリシン由来のポリペプチドは、前記したように、アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を10〜20モル%含み、重量平均分子量が1,000〜70,000であり、かつ、その0.5重量%水溶液の600nmにおける吸光度が、pH2.5〜8.0の範囲において0.2以下であるという性質を有するものである。
【0027】
セリシンとは、繭糸に含まれる天然の絹タンパク質の1種である。本発明によるポリペプチドは、繭糸から抽出したセリシン(後述するように多様なセリシン分子を含む)に分画処理を施すことにより、前記特定のポリペプチドを選択的に調製したものである。
【0028】
本発明によるポリペプチドは、分画前のセリシンと比較して、顕著に優れたプロテアーゼ活性低下防止効果およびプロテアーゼ活性回復効果を発揮する。その理由は定かでないが、本発明者らは次のように推測している:
セリシンは、そもそも、他のタンパク質と比較して、セリンに富む(約30モル%)という特徴的なアミノ酸組成を有するため、水素結合を介してプロテアーゼと相互作用し、酵素の立体構造を安定化させる効果があると考えられる。さらに、抽出セリシンから選択的に分画した本発明によるポリペプチドは、塩基性アミノ酸、すなわち、ヒスチジンやアルギニン、リジンを高い割合で含むため、プラス電荷による電気的な分子間相互作用が引き起こされ、プロテアーゼの構造安定化に寄与すると考えられる。なお、これら作用メカニズムに関する説明は、一つの理論的考察であって、本発明を限定するものではない。
【0029】
本発明によるポリペプチドは、アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を10〜20モル%、好ましくは13モル%以上含んでなる。含有量が10モル%未満であると、分画前のセリシンと比較して優位性が認められないことがある。一方、分画前のセリシンにおける塩基性アミノ酸の含有量が約6モル%と少量であることから、塩基性アミノ酸の含有量が20モル%を超えるポリペプチドを得ることは困難である。
なおポリペプチドにおけるアミノ酸組成は、例えば、高速液体クロマトグラフアミノ酸分析システムLC−10(株式会社島津製作所製)を用い、ポストカラム誘導体化−蛍光検出法にてアミノ酸を測定することができる。
【0030】
本発明によるポリペプチドは、重量平均分子量が1,000〜70,000であり、好ましくは5,000〜50,000である。重量平均分子量が1,000未満であると、ポリペプチド鎖が短いためにプロテアーゼとの相互作用が弱く、プロテアーゼに対する作用効果が十分に発揮されないことがある。重量平均分子量が70,000を超えると、溶解度が低下し、例えば、皮膚外用剤組成物に配合した場合の製剤安定性が低下したり、皮膚への浸透が不十分であったりするため、プロテアーゼに対する作用効果が十分に発揮されないことがある。
なおポリペプチドの重量平均分子量は、例えば、高速液体クロマトグラフCLASS−LC10(株式会社島津製作所製)を用いたGPC分析によって測定し求めることができる。
【0031】
本発明によるポリペプチドは、易水溶性であり、その水溶液は、酸性領域を含む広範囲のpHにおいて、沈澱を生じることがなく、安定な性状を維持することができる。沈澱生成の程度は、水溶液の濁度、すなわち600nmにおける吸光度を指標として表される。本発明によるポリペプチドは、その0.5重量%水溶液の600nmにおける吸光度が、pH2.5〜8.0(特にはpH3.0〜4.5)の範囲において0.2以下であり、好ましくは0.1以下である。吸光度が0.1以下であると、透明性が高く、目視でも濁りは一切認められない。したがって、例えば、皮膚外用剤組成物に配合した場合の製剤安定性に優れている。吸光度が0.1を超えて0.2以下であると、目視にて濁りが若干認められるが、皮膚外用剤組成物の製剤安定性は許容されるレベルである。一方、吸光度が0.2を超えると、目視にて濁りが明らかに認められ、皮膚外用剤組成物の製剤安定性が低下することがある。
【0032】
ポリペプチドの製造方法
本発明によるポリペプチドは、例えば、次のようにして調製することができる。
はじめに、繭糸からセリシンを抽出する。
非結晶性タンパク質であるセリシンは、親水性溶媒、好ましくは水を用いて繭糸から抽出することができる。例えば、蚕繭や生糸など、繭糸を含んでなる原料を熱水に浸漬して処理することにより、原料中のセリシンを加水分解させて水中に溶出させることができる。このとき、必要に応じて、酸、アルカリまたは酵素を併用してもよい。
【0033】
次いで、濾過、遠心分離などにより、抽出液から不溶物を除去する。次いで、必要に応じて、中和処理や、透析、ゲル濾過クロマトグラフィーなどによる脱塩処理を施して抽出液を精製する。さらに、加熱、減圧、逆浸透膜などにより濃縮してもよいし、熱風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などにより乾燥し、一旦、固体として回収してもよい。
【0034】
繭糸に含まれる天然のセリシンには、分子量が異なるいくつかの成分があることが知られている。例えば、特開2002−128691号公報によれば、分子量が約40万、約25万、約20万、約3万5千のセリシンが確認されている。前記の繭糸抽出液は、これらセリシンを混合した状態で含んでいる。また、セリシン分子が互いに水素結合し、見かけの分子量を増している場合もある。そして、酸、アルカリまたは酵素を併用してセリシンを加水分解させて得た抽出液は、さらに多様な分子種を含む混合物である。
【0035】
抽出液に含まれるセリシンの分子量は特に限定されないが、この段階で、重量平均分子量がおおよそ1,000〜70,000となるように調整しておくとよい。具体的には、抽出温度や時間、併用する剤の種類や濃度などの条件を制御することにより可能である。例えば、実施例の1(1)項の「セリシン」の欄に記載のようにして、所望の重量平均分子量のセリシンを得ることができる。
【0036】
抽出液に含まれるセリシンは、アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を、通常、約5〜8モル%含んでいる。
【0037】
次に、抽出液(固体として回収したセリシンを用いる場合には、固体セリシンを水に溶解させた水溶液)から、本発明によるポリペプチドを分画する。
分画方法は特に限定されるものでなく、例えば、塩析、有機溶媒沈殿、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、逆浸透、限外濾過、超遠心分離、電気透析などを挙げることができる。これらは2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明によるポリペプチドを、収率よく、かつ簡単に得ることができることから、イオン交換クロマトグラフィーによる分画が好ましい。
【0038】
イオン交換クロマトグラフィーにより本発明によるポリペプチド(アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を高い割合で含む)を分画する方法としては、抽出液を陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収する方法と、抽出液を陽イオン交換樹脂と接触させ、陽イオン交換樹脂に吸着した画分を溶出液で溶出させて回収する方法の2つがある。本発明においては、収率が高く、しかも、回収した画分の脱塩処理などの煩雑な処理を省くことができるという点から、陰イオン交換樹脂を用いる方法が好ましい。
【0039】
本発明に用いられうる陰イオン交換樹脂は、特に限定されるものでなく、強塩基性、弱塩基性のいずれも使用可能である。本発明においては、ポリペプチドの収率の観点から、弱塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい。
【0040】
前記の通り、陰イオン交換樹脂を用いて本発明によるポリペプチドを分画する場合には、本発明によるポリペプチド以外のポリペプチド(以下、「目的外のポリペプチド」ということがある)を陰イオン交換樹脂に選択的に吸着させ、本発明によるポリペプチドは吸着させないでおくことが求められる。
【0041】
陰イオン交換樹脂と接触させる抽出液のpHは、中性付近、すなわち5〜8であることが好ましく、6〜7であることがより好ましい。抽出液のpHが中性付近から外れると、ポリペプチドの荷電率が変化して、陰イオン交換樹脂に対する吸着性が変化するため、目的外のポリペプチドを選択的に吸着させることができず、その結果、本発明によるポリペプチドを得ることができないことがある。抽出液のpHが前記範囲外である場合には、中和処理を施してpHを調整することが望ましい。
【0042】
さらに、抽出液が多量の塩類を含む場合には、脱塩処理を施すことが好ましい。塩類もまた、目的外のポリペプチドを陰イオン交換樹脂に吸着させる際の妨げとなるからである。
【0043】
抽出液に含まれるセリシンの濃度は特に限定されないが、収率の観点からは、0.1〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量%である。したがって、固体セリシンを水に溶解させた水溶液を用いる場合には、セリシンの濃度がこの範囲になるように調整することが好ましい。
【0044】
典型的には、かかる抽出液を、陰イオン交換樹脂と接触させる。接触方法は特に限定されるものでなく、例えば、陰イオン交換樹脂を充填したカラムに抽出液を流し込む方法や、抽出液と陰イオン交換樹脂とを均一に混和する方法が挙げられる。
【0045】
抽出液に含まれるセリシンと、陰イオン交換樹脂との使用比率は、使用する樹脂の吸着能力により適宜調整することができる。例えば、最大吸着能力が30mgBSA/mlである陰イオン交換樹脂の場合、セリシンの重量1gに対し、樹脂が5〜30mlであることが好ましく、7.5〜15mlであることがより好ましい。また、例えば、最大吸着能力が37mgBSA/mlである陰イオン交換樹脂の場合、セリシンの重量1gに対し、樹脂が4〜25mlであることが好ましく、6〜10mlであることがより好ましい。樹脂の比率が下限未満であると、目的外のポリペプチドを十分に吸着させることができず、その結果、本発明によるポリペプチドを得ることができないことがある。樹脂の比率が上限を超えると、目的外のポリペプチドを十分に吸着して余りあり、樹脂量が過剰となる。
【0046】
本発明においては、次いで、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収する。
【0047】
必要に応じてさらに、回収された画分中のポリペプチドの重量平均分子量が1,000〜70,000となるように、さらに分画処理を施すことができる。分画方法は特に限定されるものでなく、例えば、塩析、ゲル濾過クロマトグラフィー、透析、逆相クロマトグラフィー、逆浸透、限外濾過、超遠心分離などを挙げることができる。これらは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0048】
さらに、必要に応じて、精製、濃縮、乾燥のような処理を施すことができる。詳細は、繭糸からセリシンを抽出する場合と同様である。
【0049】
かくして、本発明によるポリペプチドを得ることができる。通常、分画前のセリシン100gから、本発明によるポリペプチドを30〜60g得ることができる。
【0050】
よって、本発明の別態様によれば、前記したように、本発明によるポリペプチドの製造方法であって、
繭糸から水を用いてセリシンを抽出し、
得られた抽出液を陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収することを含んでなる、製造方法が提供される。好ましくは、この製造方法は、
繭糸から水を用いて抽出し、重量平均分子量が約1,000〜70,000のセリシンを含む抽出液を得、
pHを5〜8とした抽出液を、弱塩基性の陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収することを含んでなる。
【0051】
角層剥離酵素保護剤および皮膚外用剤組成物
本発明によるポリペプチドは、後述する実施例の評価試験に示されるように、実際に、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼを、乾燥から保護し活性低下を防止することができ、また、乾燥により活性が低下したプロテアーゼに対しては本来の活性を回復させることができる。
【0052】
本発明によれば、本発明によるポリペプチドを有効成分とする角層剥離酵素保護剤が提供される。ここで角層剥離酵素とは、角層の剥離作用に関与する酵素であればいずれのものも包含されうる。本発明においては、該酵素は、好ましくはプロテアーゼ、より好ましくは、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼである。
【0053】
本発明の一つの好ましい態様によれば、前記したように、前記角層剥離酵素保護剤は、皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼの、皮膚における乾燥による活性低下を防止するか、または、前記プロテアーゼの低下した活性を回復させるために用いられる。
【0054】
本発明によるポリペプチドは、易水溶性であり、通常の皮膚外用剤成分との混和性に優れ、製剤とした場合の安定性にも優れている(後述する実施例の評価試験)。また、その水溶液は広範囲のpHにおいて安定な性状を維持することができるため、これまで配合が困難であったpHが酸性領域、例えば3.0〜4.5の範囲にある皮膚外用剤組成物にも配合することができる。しかも、本発明によるポリペプチドは、生体適合性に優れ、皮膚に対する刺激性や感作性がなく、安全性に優れている。そのため、外部刺激に過敏な肌、いわゆる敏感肌用の皮膚外用剤組成物にも配合することができる。
【0055】
本発明によるポリペプチドは、後述する実施例の使用試験に示されるように、実際に、乾燥による肌荒れの予防改善のあることが確認されている。したがって、本発明によるポリペプチドは、乾燥による肌荒れの予防改善に極めて有効である。すなわち、本発明によるポリペプチドを、例えば、皮膚外用剤組成物に配合して皮膚に適用すると、皮膚のターンオーバーを正常な状態に保って、乾燥による肌荒れを予防することができる。また、乾燥により肌荒れを起こした皮膚に適用すると、皮膚のターンオーバーを正常な状態へ導き、肌荒れを改善することができる。
【0056】
よって本発明によれば、本発明による角層剥離酵素保護剤を含んでなる、皮膚外用剤組成物が提供される。本発明の一つの好ましい態様によれば、前記皮膚外用剤組成物は、乾燥による肌荒れを予防改善するために用いられる。
【0057】
ここで、「角層剥離酵素保護剤を含んでなる」とは、本発明による皮膚外用剤組成物が、角層剥離酵素保護剤、すなわちその有効成分である本発明のポリペプチドを、所望の効果を発揮するのに充分な量(すなわち、有効量)で必然的に含むことを意味し、その限りにおいて、必要により他の成分を含んでも良いことを意味する。
【0058】
皮膚外用剤組成物におけるポリペプチドの含有量は、組成物全量に対して、0.01〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2重量%である。含有量が0.01重量%未満であると、皮膚に対する作用効果が十分に発揮されないことがある。含有量が10重量%を超えても、作用効果のさらなる向上は得られ難い。
【0059】
皮膚外用剤組成物には、本発明における所望の効果を損なわない範囲内で、通常の化粧品や医薬品などの皮膚外用剤組成物に用いられる他の任意成分、例えば、保湿剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、乳化剤、増粘剤、界面活性剤、キレート剤、油性成分、アルコール類、色材、粉末成分、ビタミン類、抗炎症剤、pH調整剤、防腐剤などを、必要に応じて適宜配合することができる。また、加水分解シルクタンパク質、好ましくはセリシンと、二価の金属塩とを併用することによる相乗効果が見出されていることから(特願2008−208443号)、必要に応じて、二価の金属イオンをさらに配合してもよい。
【0060】
本発明による皮膚外用剤組成物は、例えば、化粧水、乳液、軟膏、クリーム、パックなどの形態として提供することができる。また、本発明による組成物は、化粧品、医薬品、医薬部外品等として提供することができる。
【0061】
なお本明細書において、「約」、「おおよそ」、「程度」および「付近」を用いた値の表現は、その値を設定することによる目的を達成する上で、当業者であれば許容することができる値の変動を含む意味である。例えば、所定の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内の変動を許容し得ることを意味する。
【実施例】
【0062】
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
1. ポリペプチドの製造
(1) セリシン(比較例)
家蚕の切り繭50gを水洗した後、1kgの水に浸漬し、溶液のpHが9.5になるように水酸化ナトリウムを添加した。この条件にて繭を2時間煮沸し、セリシンの抽出および加水分解を行った。
得られた抽出液に、塩酸を添加して中和した。次いで、抽出液を平均孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過し、不溶物を除去した。さらに、抽出液をゲル濾過クロマトグラフィーを原理とする脱塩カラムPD−10(GE Healthcare社製)を用いて脱塩し、セリシン水溶液を得た。このセリシン水溶液を凍結乾燥して、セリシンの粉末10gを得た。
【0064】
得られたセリシンは、アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を6.3モル%含んでおり、重量平均分子量は約30,000であった。また、0.5重量%水溶液の600nmにおける吸光度は、pH3.8において最大の0.352を示し、その近傍のpH3.3〜4.0の範囲において0.2を超えており、濁りが認められた(図1を参照)。
【0065】
なおここで、アミノ酸組成は、高速液体クロマトグラフアミノ酸分析システムLC−10(株式会社島津製作所製)を用い、ポストカラム誘導体化−蛍光検出法にてアミノ酸を測定して得た。
【0066】
また、重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフCLASS−LC10(株式会社島津製作所製)を用いたGPC分析によって得た。GPC分析用カラムには、Superdex75 10/300GL(GE Healthcare社製)を用いた。
【0067】
また、0.5重量%水溶液の600nmにおける吸光度は、クエン酸または塩酸にてpHを2.5付近〜7.5付近の範囲に調整後、マイクロプレートリーダーIWAKI ASAHI TECHNO GLASS EZS-ABS(IWAKI社製)を用い、600nmにおける吸光度を測定して得た値とした。
【0068】
(2) ポリペプチドA(本発明)
前記セリシンの粉末0.3gを水30gに溶解させて、セリシン水溶液(セリシンの濃度:1重量%)を調製した。このセリシン水溶液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂micro prep DEAE support(Biorad社製)3mlに添加し、転倒混和して、セリシンに含まれる目的外のポリペプチドを陰イオン交換樹脂に吸着させた。
【0069】
次いで、遠心機H−501FR(株式会社コクサン製)を用いて20℃、3000rpmの条件にて10分間遠心分離を行い、上清約30gを回収した。次いで、平均孔径0.2μmのセルロース膜を用いて濾過し、膜透過画分約30gを回収した。
回収した膜透過画分を凍結乾燥してポリペプチド(ポリペプチドA)の粉末0.17gを得た。
【0070】
得られたポリペプチドAは、アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を13.8モル%含んでおり、重量平均分子量は約20,000であった。また、0.5重量%水溶液の600nmにおける吸光度は、pH2.6〜6.6の範囲において0.060〜0.084であり、濁りは認められなかった(図1を参照)。
【0071】
(3) ポリペプチドB(比較例)
前記セリシンの粉末1gを水20gに溶解させて、セリシン水溶液(セリシンの濃度:5重量%)を調製した。このセリシン水溶液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂micro prep DEAE support(Biorad社製)10mlに添加し、転倒混和して、セリシンに含まれる本発明によるポリペプチド以外のポリペプチド(ポリペプチドB)を陰イオン交換樹脂に吸着させた。
【0072】
次いで、遠心機H−501FR(株式会社コクサン製)を用いて20℃、3000rpmの条件にて10分間遠心分離を行い、上清を除去した。次いで、0.5Mの塩化ナトリウム水溶液20mlを添加し、転倒混和して、樹脂に吸着したポリペプチドBを溶出させた。次いで、前記と同様に遠心分離を行い、上清約20gを回収した。次いで、平均孔径0.2μmのセルロース膜を用いて濾過し、膜透過画分約20gを回収した。
回収した膜透過画分を凍結乾燥してポリペプチドBの粉末0.28gを得た。
【0073】
得られたポリペプチドBは、アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を6.8モル%含んでおり、重量平均分子量は約30,000であった。また、0.5重量%水溶液の600nmにおける吸光度の測定を試みた。pH4.0付近において沈殿物が認められたが、沈殿物の均一な分散が困難であったため、正確な吸光度測定は困難であった。
【0074】
2. ポリペプチドのプロテアーゼに対する評価試験
(1) プロテアーゼ活性低下防止効果
前記で得られたセリシン、ポリペプチドAおよびポリペプチドBを、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)に、濃度が0.5重量%となるようにそれぞれ溶解させて、ポリペプチド溶液を調製した。各ポリペプチド溶液に、最終濃度が100μg/mlとなるようにトリプシン(シグマ社製)をそれぞれ添加した。同時に、前記緩衝液に前記濃度のトリプシンを添加した酵素溶液(ポリペプチドなし)を調製した。
【0075】
各サンプル(セリシン、ポリペプチドA、ポリペプチドBおよびポリペプチドなし)を96wellマイクロプレートに10μlずつ分注し、40℃の恒温器内に2時間静置して乾燥処理した。次いで、前記緩衝液を190μlずつ添加し、酵素を再溶解させた。
比較対照として、前記酵素溶液(ポリペプチドなし)10μlに、前記緩衝液を180μl添加したものを調製した(乾燥処理なし)。
【0076】
次いで、酵素反応基質(N-Succinyl-Arg-p-Nitroanilide(シグマ社製)を10mMとなるようにDMSOに溶解)を10μlずつ添加し、37℃で2時間酵素反応させた。
反応終了後、遊離したp−ニトロアニリドの発色(吸光波長420nm)をマイクロプレートリーダーIWAKI ASAHI TECHNO GLASS EZS-ABS(IWAKI社製)を用いて測定した。各サンプルについて、比較対照の活性値を100とし、乾燥処理後のプロテアーゼの活性値の比率を算出した。この値が高いほど、プロテアーゼの活性低下防止効果に優れていることを意味する。
【0077】
結果は表1の「活性低下防止効果」の欄に示される通りであった。
結果から明らかなように、本発明によるポリペプチドAは、分画前のセリシンや調製過程で除去されるポリペプチドBと比較して、プロテアーゼの活性値が顕著に高く、プロテアーゼ活性低下防止効果に優れることが確認された。
【0078】
(2) プロテアーゼ活性回復効果
100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)に、最終濃度が100μg/mlとなるようにトリプシン(シグマ社製)を添加して、酵素溶液を調製した。
この酵素溶液を96wellマイクロプレートに10μlずつ分注し、40℃の恒温器内に2時間静置して乾燥処理した。次いで、前記セリシン、ポリペプチドAおよびポリペプチドBを、前記緩衝液に濃度が0.5重量%となるようにそれぞれ溶解させて調製した溶液、ならびに前記緩衝液(ポリペプチドなし)を、190μlずつ添加し、酵素を再溶解させた。
比較対照として、前記酵素溶液10μlに、前記緩衝液を180μl添加したものを調製した(乾燥処理なし)。
【0079】
次いで、酵素反応基質(N-Succinyl-Arg-p-Nitroanilide(シグマ社製)を10mMとなるようにDMSOに溶解)を10μlずつ添加し、37℃で2時間酵素反応させた。
反応終了後、遊離したp−ニトロアニリドの発色(吸光波長420nm)をマイクロプレートリーダーIWAKI ASAHI TECHNO GLASS EZS-ABS(IWAKI社製)を用いて測定した。各サンプルについて、比較対照の活性値を100とし、乾燥処理後のプロテアーゼの活性値の比率を算出した。この値が高いほど、プロテアーゼの活性回復効果に優れていることを意味する。
【0080】
結果は表1の「活性回復効果」の欄に示される通りであった。
結果から明らかなように、本発明によるポリペプチドAは、分画前のセリシンや調製過程で除去されるポリペプチドBと比較して、プロテアーゼの活性値が顕著に高く、プロテアーゼ活性回復効果に優れることが確認された。
【0081】
【表1】

【0082】
3. ヒトの皮膚に対する使用試験
前記で得られたセリシンおよびポリペプチドAを用いて、表2に示す組成の化粧水を調製した。同時にポリペプチドを添加しない化粧水を調製した。
これらを用いて、乾燥による肌荒れに対する効果の検証を行った。
【0083】
健常な4名のパネラーの前腕内側を、アセトン/エーテル混液(重量比1:1)で処理した後、水で処理し、擬似の乾燥による肌荒れ状態を作製した。30分後、水分蒸散量を、テヴァメーターTM300(インテグラル社製)を用いて、室温25℃、湿度40%の恒温恒湿内にて測定した。
【0084】
1日朝と晩の2回、前記化粧水の適量(500μl)をコットンに浸み込ませ、前記肌荒れ状態とした皮膚に塗布した。7日間継続使用し、翌日の朝に水分蒸散量を測定した。使用前の水分蒸散量を1とし、7日間継続使用後の水分蒸散量の比率を算出した。この値が低いほど、肌荒れ改善効果に優れていることを意味する。
【0085】
結果は図2に示される通りであった。
結果から明らかなように、本発明によるポリペプチドAを配合した化粧水は、分画前のセリシンを配合した化粧水と比較して、有意に肌荒れ改善効果に優れていることが確認された。
【0086】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記性質を有する、セリシン由来のポリペプチド:
(1) アミノ酸組成として塩基性アミノ酸を10〜20モル%含み、
(2) 重量平均分子量が1,000〜70,000であり、かつ
(3) 0.5重量%水溶液の600nmにおける吸光度が、pH2.5〜8.0の範囲において、0.2以下である。
【請求項2】
繭糸から水を用いてセリシンを抽出し、
得られた抽出液を陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収することにより得られる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
繭糸から水を用いて抽出し、重量平均分子量が約1,000〜70,000のセリシンを含む抽出液を得、
得られた抽出液を、そのpHが5〜8の中性付近とした後に、弱塩基性の陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収することにより得られる、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチドを有効成分とする、角層剥離酵素保護剤。
【請求項5】
皮膚のターンオーバーの調節に関与するプロテアーゼの、皮膚における乾燥による活性低下を防止するか、または、前記プロテアーゼの低下した活性を回復させるために用いられる、請求項4に記載の保護剤。
【請求項6】
請求項4または5に記載の角層剥離酵素保護剤を含んでなる、皮膚外用剤組成物。
【請求項7】
乾燥による肌荒れを予防改善するために用いられる、請求項6に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドの製造方法であって、
繭糸から水を用いてセリシンを抽出し、
得られた抽出液を陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収する
ことを含んでなる、製造方法。
【請求項9】
繭糸から水を用いて抽出し、重量平均分子量が約1,000〜70,000のセリシンを含む抽出液を得、
pHを5〜8とした抽出液を、弱塩基性の陰イオン交換樹脂と接触させ、陰イオン交換樹脂に吸着しなかった画分を回収する
ことを含んでなる、請求項8に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−6353(P2011−6353A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151131(P2009−151131)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】