説明

センサの製造方法

【課題】センサ素子にダメージを与えることなく、キャップ接合に用いる接着樹脂の残渣を低減できるセンサの製造方法を提供する。
【解決手段】センサ素子を形成した基板上に、該センサ素子を囲繞する平面形状の感光性接着樹脂を介して、前記センサ素子の上方を覆うキャップを接合してなるセンサの製造方法において、感光性接着樹脂の塗布前に、上記センサ素子を含む基板表面全体に、感光性接着樹脂の現像液に可溶の材料からなる下地層を形成しておく。そして、この下地層上に塗布した感光性接着樹脂を露光及び現像し、感光性接着樹脂の現像液によって、感光性接着樹脂の露光した領域と該露光領域の下に位置する下地層とを一緒に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップを備えたセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば微小電気機械システム(MEMS;Micro Electro Mechanical Systems)を利用したMEMSセンサや赤外線センサでは、センサ素子を形成または搭載した基板上に、センサ素子を素子上方に空隙を設けた状態で覆うキャップを設けたキャップ構造が知られている。従来のキャップ構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−208230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャップは、センサ素子を形成または搭載した基板上に、感光性接着樹脂を介して接合されている。感光性接着樹脂は、センサ素子を含む基板表面に全面塗布され、キャップ接合領域を画定する所定のマスクパターンを用いて露光及び現像することで、基板上に設けられる。しかし、センサ素子の構造や基板表面状態によっては、感光性接着樹脂を塗布する基板表面に微小な凹凸が存在し、この凹凸において感光性接着樹脂が現像されにくく、残渣が生じてしまうことが課題となっている。例えばセンサ素子が、吸収または放出した水分量に応じて静電容量または電気抵抗が変化する感湿膜と、この感湿膜を覆う保護層と、この保護層に形成した感湿膜を外気に曝露させる複数の開口部とを有する湿度センサ素子である場合には、感光性接着樹脂が塗布される基板表面に複数の開口部が開口していて各開口部が狭小であるため、この複数の開口部において感光性接着樹脂が現像されにくい。残渣をなくすには、現像後にO2プラズマ処理を実施する方法が知られているが、センサ素子自体にダメージを与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みて、センサ素子にダメージを与えることなく、キャップ接合に用いる接着樹脂の残渣を低減可能なセンサの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、感光性接着樹脂の塗布前に、感光性接着樹脂の現像液に可溶の材料からなる下地層を基板表面に形成しておけば、現像時に感光性接着樹脂と下地層が一緒に除去され、下地層を介して感光性接着樹脂が剥がれやすくなることから、基板表面に凹凸があっても残渣を低減できることに着目して完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、センサ素子を形成した基板上に、該センサ素子を囲繞する平面形状の感光性接着樹脂を介して、前記センサ素子の上方を覆うキャップを接合してなるセンサの製造方法であって、前記感光性接着樹脂を塗布する前に、前記センサ素子を含む基板表面全体に、該感光性接着樹脂の現像液に可溶の材料からなる下地層を形成する工程と、この下地層の上に、前記感光性接着樹脂を塗布する工程と、前記基板と前記キャップの接合領域を画定する所定のマスクパターンを用いて前記感光性接着樹脂を露光する工程と、前記感光性接着樹脂を現像し、該感光性接着樹脂の現像液によって、前記感光性接着樹脂の露光した領域及び該露光領域の下に位置する下地層を除去する工程とを有することを特徴としている。
【0008】
前記下地層は、AlまたはAl23により形成することが好ましい。この態様によれば、エポキシ樹脂やポリイミド等を含む感光性接着樹脂の現像液としてTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)やKOH(水酸化カリウム)等のアルカリ現像液を用い、このアルカリ現像液により感光性接着樹脂と下地層が一緒に除去される。
【0009】
センサ素子は、吸収または放出した水分量に応じて静電容量または電気抵抗が変化する感湿膜と、この感湿膜を覆う保護層と、この保護層に形成した、前記感湿膜を外気に曝露させる複数の開口部とを有する湿度センサ素子とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感光性接着樹脂の塗布前に感光性接着樹脂の現像液に可溶の材料からなる下地層を形成し、感光性接着樹脂の現像時に感光性接着樹脂の露光部分と該露光部分の下に位置する下地層を一緒に除去するので、基板表面に微小な凹凸が存在していても感光性接着樹脂の残渣は生じにくく、センサ素子にダメージを与えずに、キャップ接合に用いる接着樹脂の残渣を低減できるセンサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明方法により製造したセンサを示す断面図である。
【図2】同センサを示す平面図である。
【図3】本発明によるセンサの製造方法の一工程を示す断面図である。
【図4】図3の次工程を示す断面図である。
【図5】図4の次工程を示す断面図である。
【図6】図5の次工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2は、本発明方法により製造した完成状態のセンサを示している。本センサは湿度センサ1であり、吸収または放出した水分量に応じて静電容量または電気抵抗が変化する感湿膜21と、この感湿膜21の上下に位置する下部電極22及び上部電極23と、上部電極22の上から感湿膜21を覆う保護層24と、この保護層24及び上部電極22に形成した、感湿膜21を外気に曝露させる複数の開口部25とを有する湿度センサ素子20を備えている。
【0013】
湿度センサ1は、シリコンまたはガラスからなる基板10上に、上記湿度センサ素子20と、この湿度センサ素子20の上方を覆うキャップ30と、湿度センサ素子20とキャップ30の間に空隙を設けた状態で、該キャップ30の周縁を基板10に接合した感光性接着樹脂(周縁スペーサ樹脂)40とを備えている。基板10の回路形成面である基板表面10aには、湿度センサ素子20の他に、該湿度センサ素子20の下部電極22及び上部電極23と電気的に接続した複数の電極パッド26が設けられている。キャップ30は、図2に示すように平面視矩形の湿度センサ素子20よりも大きな平面矩形をなす蓋部材であって、シリコン基板、金属材料、ガラスまたは樹脂材料からなる。感光性接着樹脂40は、下地層45を介して基板表面10aに積層され、湿度センサ素子20の外周かつキャップ30の周縁端面に沿って設けられている。感光性接着樹脂40は例えばエポキシ系接着樹脂材料からなり、下地層45はAlまたはAl23からなる。本実施形態では、湿度センサ素子20を基板表面10aに直接形成してあるが、別基板上に形成した湿度センサ素子を基板表面10aに搭載する構成としてもよい。
【0014】
次に、図3〜図6を参照し、本発明を適用したセンサ(湿度センサ1)の製造方法について説明する。図3〜図6は、センサ(湿度センサ1)の製造工程を示す断面図であって、下部電極22及び上部電極23を省略して示してある。
【0015】
先ず、図3に示すように、湿度センサ素子20を形成した基板表面10aに、次工程で塗布する感光性接着樹脂の現像液に可溶の材料からなる下地層45を、全面的に形成する。ここで、基板表面10a、湿度センサ素子20の保護層24、該保護層24及び上部電極23に設けた複数の開口部25及び電極パッド26は、下地層45ですべて覆われる。下地層45は、AlまたはAl23により、10〜100nm程度の膜厚で形成する。
【0016】
次に、図4に示すように、基板表面10aに形成した下地層45の上に、感光性接着樹脂40を全面的に塗布する。感光性接着樹脂40には、エポキシ系接着樹脂を用いることができる。感光性接着樹脂40の厚さは5〜50μm程度とし、その表面高さを湿度センサ素子20の表面高さよりも高く設ける。
【0017】
続いて、図5に示すように、基板表面10a上のキャップ接合領域を画定する所定のマスクパターン50を用いて、感光性接着樹脂40を露光する。ここで、キャップ接合領域は、湿度センサ素子20の外周かつキャップ30の周縁端面に沿う平面視矩形に設定してある。
【0018】
続いて、図6に示すように、感光性接着樹脂40を現像し、該感光性接着樹脂40の現像液によって、感光性接着樹脂40の前工程で露光した領域と該露光領域の下に位置する下地層45を一緒に除去する。下地層45は感光性接着樹脂40よりも現像溶解性が高く、感光性接着樹脂45の直下にある下地層45が溶解することで感光性接着樹脂40も剥がれやすくなる。これにより、複数の開口部23で基板表面10aに凹凸が存在していても、感光性接着樹脂40の残渣を低減できる。この工程により、基板表面10aには、湿度センサ素子20の外周かつキャップ30の周縁端面に沿う平面視矩形で感光性接着樹脂40が残る。この基板表面10aに残した感光性接着樹脂40の下には下地層45が残るが、キャップ30の接合及び湿度センサ素子20に影響しない。
【0019】
そして、基板表面10aに残した感光性接着樹脂40を介して基板10とキャップ30を接合する。上述のように感光性接着樹脂40は湿度センサ素子20よりも表面高さ位置が高く設定されているので、キャップ30は、基板10との接合により、湿度センサ素子20との間に空隙を設けた状態で該湿度センサ素子20の上方を覆うことになる。
【0020】
以上の本実施形態によれば、感光性接着樹脂40の現像液に可溶の材料からなる下地層45を該感光性接着樹脂40の塗布前に形成しておくので、感光性接着樹脂40の現像時に下地層45が溶解して感光性接着樹脂40が剥がれやすくなり、基板表面に凹凸が生じていても感光性接着樹脂40の残渣を低減できる。これにより、残渣を除去するためのO2プラズマ処理は不要となり、湿度センサ素子20にダメージを与えるおそれがない。また、新たな工程を設けずに済むので、製造工程も簡便である。感光性接着樹脂40の平面形状は、図示例では矩形であるが、センサ素子を囲繞する閉じた形状であれば、環状その他の形状とすることができる。
【0021】
以上では、センサ素子として湿度センサ素子を備えた実施形態で本発明を説明したが、本発明によるセンサの製造方法は加速度センサ、各速度センサ及び圧力センサにも適用可能である。特に、残渣が生じやすい凹凸を基板表面に有するタイプに有益である。
【符号の説明】
【0022】
1 湿度センサ(センサ)
10 基板
20 湿度センサ素子(センサ素子)
21 感湿膜
22 下部電極
23 上部電極
24 保護層
25 開口部
26 電極パッド
30 キャップ
40 感光性接着樹脂
45 下地層
50 マスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子を形成した基板上に、該センサ素子を囲繞する平面形状の感光性接着樹脂を介して、前記センサ素子の上方を覆うキャップを接合してなるセンサの製造方法であって、
前記感光性接着樹脂を塗布する前に、前記センサ素子を含む基板表面全体に、該感光性接着樹脂の現像液に可溶の材料からなる下地層を形成する工程と、
この下地層の上に、前記感光性接着樹脂を塗布する工程と、
前記基板と前記キャップの接合領域を画定する所定のマスクパターンを用いて前記感光性接着樹脂を露光する工程と、
前記感光性接着樹脂を現像し、該感光性接着樹脂の現像液によって、前記感光性接着樹脂の露光した領域及び該露光領域の下に位置する下地層を除去する工程と、
を有することを特徴とするセンサの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のセンサの製造方法において、前記下地層をAlまたはAl23により形成するセンサの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のセンサの製造方法において、前記センサ素子として、吸収または放出した水分量に応じて静電容量または電気抵抗が変化する感湿膜と、この感湿膜を覆う保護層と、この保護層に形成した感湿膜を外気に曝露させる複数の開口部とを有する湿度センサ素子を形成したセンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−192706(P2011−192706A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55588(P2010−55588)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】