説明

センサノードおよびこれを用いたネットワークシステム

【課題】 計測対象物の特性や設置場所にかかわらず安全に機能するセンサノードおよびそれを用いたネットワークシステムを提供する。
【解決手段】 センサノード100は、計測対象物の内部に設置するリモートセンサ部2と、該リモートセンサ部から離間配置され、リモートセンサ部から計測情報を無線通信により得て、他のセンサノードや中央処理装置に送信するセンサノード主部1からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境の監視、対象物の状況を把握するのに好適なセンサノードおよびセンサネットワークに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の製造や環境計測分野において、各種センサを用いて、情報を収集し、ネットワークを用いて各種管理を行うセンサノードおよびセンサネットワークシステムが普及している。
【0003】
センサノードは、電池、制御回路、無線回路、アンテナ、センサを一体化してなり、収集する情報にあわせて、組み込むセンサを選択する。さらに、前記センサから得た情報を、無線を利用することにより、遠隔から監視して、例えば環境計測、製品管理などを行う。
【0004】
図3は従来のセンサネットワークを説明する図である。
【0005】
センサノード100は、センサ12によって温度や圧力などの情報を検出し、制御回路4で操作を行い、無線回路5によって通信制御してアンテナ7を介してセンタノード200または図示しない中継用の他のセンサノードに送出する。センサノード100は、通常、電池3を備え、センサ12、制御回路4、無線回路5などに駆動電力を供給する。センタノード200からアンテナを介して電力を供給できる場合は、電池3は不要であるが、センタノード200とセンサノード100が離間していることが多く、電池3を搭載する場合が多い。
【0006】
センタノード200は、電源回路20、制御回路21、無線回路22を有し、アンテナ23を介して、センサノード100または、図示しない他のセンタノードや、他のセンサノードを介して、例えば中央制御装置と通信し、遠隔の状況を伝達する。無線方式によってはマルチホップ通信が可能で、センサノードやセンタノードをホップすることにより長距離の通信を実現している。
【0007】
このようなセンサノードおよびネットワークは例えば、特許文献1に開示されている。
【0008】
従来のセンサノード100においては、上述のとおり、制御回路4、無線回路5を駆動するための電池3を搭載せざるを得ない場合が多い。このような場合は、電池3の寿命が尽きると取り替え作業が必要となるが、設置場所や環境によっては、電池の取り替えが極めて困難である。すなわち、センサノードの設置場所や環境によっては、作業者が危険にさらされるばかりでなく、時間的・費用的負担が大きいという問題や、センサノードを密閉空間内に設置したために取り替え不能になるといった問題があった。
【0009】
さらに、電池は、通常、センサに対して、重量や体積が大きいので、センサノード全体が大きくなり、計測対象物への固定が困難となる場合があった。また、電池を使用しているので、安全性の側面から、高圧もしくは可燃性等の計測対象物には設置できないという問題もあった。
【0010】
【特許文献1】特開2005−208719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の技術的課題は、小型センサノードであって、計測対象物の特性や設置場所にかかわらず安全に機能するセンサノードおよびそれを用いたネットワークシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、センサノードのセンサ部分に、電池や制御回路がなくともセンサとして充分に機能する素子を用いることにより、アンテナを介した電力の供給のみの少ない電力でも計測および無線通信可能なセンサノードおよびそれを用いたネットワークシステムを実現する。
【0013】
すなわち、本発明のセンサノードは、計測対象物の内部または外部の任意の場所に設置するリモートセンサ部と、該リモートセンサ部から離間配置され、リモートセンサ部から計測情報を無線通信により得て、必要に応じてこの情報を蓄積、操作して他のセンサノードやセンタノードあるいは中央処理装置に送信するセンサノード主部の2つの独立部分からなる。
【0014】
リモートセンサ部は、センサとアンテナからなり、電池や制御回路を有さない。該センサとしては、温度や圧力などの環境変化によって、受信信号の位相や周波数を変化させて反射する機能を有する基体に電極を付設した素子を用い、この素子にアンテナを接続してリモートセンサ部を構成する。
【0015】
センサノード主部は、前記リモートセンサ部と通信する、第1の無線回路に接続された第1のアンテナと、第2の無線回路および制御回路が接続され、他のセンサノードやセンタノードなどの中継機器や、前記中継機器およびネットワーク全体を統括する中央処理装置などと通信する第2のアンテナと、センサノード主部の各回路に電力を供給する電池からなる。
【0016】
センサノード主部には、電池の替わりに、センタノードなどの他の中継機器や中央処理装置から送信される無線電波から電力を生成する電力生成回路(第1の電力生成回路)を付設してもよい。
【0017】
リモートセンサ部には、安定した駆動電力を得るために、センサノード主部から送信される無線電波から電力を生成する電力生成回路(第2の電力生成回路)を付設してもよい。
【0018】
リモートセンサ部のアンテナ(第3のアンテナ)と、センサノード主部に配された第1のアンテナ間の通信周波数と、センサノード主部に配された第2のアンテナと他の中継機器や中央処理装置間の通信周波数は、混信を回避する程度に異なるのが良い。
【0019】
センサは、圧電基板や薄膜積層体のように、温度や圧力、液体や気体の密度、濃度、粘性、電気伝導度などの変化により、少なくとも一部に変形や歪みを生じて、入力された信号の位相や周波数を変化させる基体に、信号を入力する為の電極と、信号を出力する為の電極を付設した素子とし、例えば表面弾性波素子が好ましい。また、磁場や温度などの外部環境の変化によって入力した信号の周波数や位相に変化を生じさせる素子であれば、センサとして使用可能であり、例えばMI素子が好ましい。
【0020】
前記入力電極および出力電極には、アンテナから直接に信号を入力し、すなわち受信し、直接に出力する、すなわち、送出するのが小型化、長寿命化の点で好ましい。
【0021】
本発明のセンサノードは、既知のセンサノードと同様に、例えば中継機器や中央処理装置とともにセンサネットワークシステムを構成することによりその機能を発揮する。
【0022】
本発明によれば、第1の無線回路に接続された第1のアンテナと、前記第1の無線回路に接続された制御回路と、前記制御回路に接続された第2の無線回路と、前記第2の無線回路に接続された第2のアンテナと、前記第1の無線回路または前記第2の無線回路または前記制御回路のいずれかに接続された電池を有するセンサノード主部と、センサと前記センサに接続された第3のアンテナからなるリモートセンサ部からなることを特徴とするセンサノードが得られる。
【0023】
本発明によれば、第1の無線回路に接続された第1のアンテナと、前記第1の無線回路に接続された制御回路と、前記制御回路に接続された第2の無線回路と、前記第2の無線回路に接続された第2のアンテナと、前記第1の無線回路または前記第2の無線回路または前記制御回路のいずれかに接続された第1の電力生成回路を有するセンサノード主部と、センサと前記センサに接続された第3のアンテナからなるリモートセンサ部からなることを特徴とするセンサノードが得られる。
【0024】
本発明によれば、前記センサノード主部と前記リモートセンサ部は、前記第1のアンテナと前記第3のアンテナで通信し、前記第2のアンテナを介して中継機器または中央処理装置と通信することを特徴とするセンサノードが得られる。
【0025】
本発明によれば、前記リモートセンサ部は、無線電波から電力を生成する第2の電力生成回路を有することを特徴とするセンサノードが得られる。
【0026】
本発明によれば、前記第1のアンテナと前記第3のアンテナ間で使用する周波数と、前記第2のアンテナと、前記中継機器または前記中央処理装置間とで使用する周波数は異なることを特徴とするセンサノードが得られる。
【0027】
本発明によれば、前記センサは、基体に入力電極と出力電極を有し、基体の変形によって入力信号と出力信号の位相同士または周波数同士の少なくともいずれかひとつが変化することを特徴とするセンサノードが得られる。
【0028】
本発明によれば、前記センサが表面弾性波素子であることを特徴とするセンサノードが得られる。
【0029】
本発明によれば、前記センサノードおよび中央処理装置を用いたことを特徴とするネットワークシステムが得られる。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、小型化が可能で、設置場所に拘束されない安全かつ低価格なセンサノードおよびこれを用いたセンサネットワークシステムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
図1は、本発明によるセンサノードを説明する図である。
【0033】
センサノード100は、計測対象物の内部または外部に設置するリモートセンサ部2と、リモートセンサ部2から数cm〜数m程度離間して配置され、他のセンサノードやセンタノードあるいは中央処理装置と通信するセンサノード主部1からなる。なお、リモートセンサ部2とセンサノード主部の設置距離は、通信性能を安定して確保するためには、1cm以上1m未満が好ましく、特に50cm以下が好ましい。
【0034】
リモートセンサ部2は、センサ9とアンテナ10からなり、電池や制御回路を有さない。センサ9は、温度や圧力などの環境変化によって、位相や周波数を変化させて反射する材料に電極を付設した素子を用い、この素子にアンテナ10を接続してなる。
【0035】
センサノード主部1は、リモートセンサ部2と通信する無線回路6に接続された第1のアンテナ8と、無線回路5、制御回路4が接続され、他のセンサノードや、センタノードなどの中継機器や中央処理装置などとネットワーク通信する第2のアンテナ7、およびセンサノード主部の各回路に電力を供給する電池3からなる。なお、センサノード主部の近傍に他の中継機器や中央処理装置を配することが可能な場合は、電池3の替わりに、電力生成回路を設けて、無線電波により電力を生成または供給してもよい。
【0036】
センサ9で検出された情報はアンテナ10、アンテナ8、無線回路6を介して制御回路4に通知され、この情報は無線回路5、アンテナ7を介して、ネットワークを構成する図示していない他のセンサノードやセンタノード、中央処理装置に送出される。他のセンサノードやセンタノードからは、マルチホップ通信方式や光ファイバケーブルなどの一般的な通信手段で中央処理装置に送出される。なお、センサ9は電源が不要なパッシブタイプの素子を用いる。
【0037】
センサ9として例えば表面弾性波素子を用いた場合は、アンテナ8およびアンテナ10を介してセンサ9が受信した信号は、センサ9が検知した計測対象物の歪みに対応して、周波数および位相が変更され、再びアンテナ10から送出される。センサノード主部1のアンテナ8は周波数および位相が変更された信号を受信し、無線回路6を経由して制御回路4において、変更された信号の周波数及び位相を算出し、センサ9が送信した信号との比較を行い、センサ9を付設した計測対象物の歪み具合を認識する。
【0038】
すなわち、センサ9は、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶、酸化亜鉛薄膜、ダイヤモンド薄膜およびこれらの組み合わせからなる基体に一般的な電極材料により交叉指電極を設けてなる構成とした場合、歪みセンサ、圧力センサとして使用することが可能となる。
【0039】
さらに、前記構成の素子を気体中に設置することにより、露点計、湿度センサ、ガスセンサとして用いることができ、液体中に設置することにより、液体の密度、粘性、電気伝導度、流速、流量を検知するセンサやバイオセンサーとして用いることができる。
【0040】
図2は、本発明によるセンサノードを説明する図でリモートセンサ部を示している。
【0041】
リモートセンサ部2は、センサ9とアンテナ10およびセンサ9に駆動電圧、または励起電圧を供給する電力生成回路11からなる。電力生成回路11は、アンテナ10を介して受信した電波信号から電力を生成する。
【0042】
一般的にセンサノードとセンタノード間の距離は、数10m〜数km程度であり、センタノードからの電波信号によるセンサノードの電力生成は難しい。従って、センサノードに電池を組み込むのが一般的である。しかしながら、本発明においては、センサノードをセンサノード主部とリモートセンサ部2に分離する構成を採用しており、センサノード主部とリモートセンサ部2の距離は数cm〜数10cmに設定する。従って、従来のパッシブタグと同様にリモートセンサ部2は、センサノード主部からの電波信号から十分な電力を生成することが可能となる。
【0043】
なお、電波の干渉の防止や、良好な通信状態を確保するためには、図1におけるセンサノード100と図示しない他のセンサノード間の相互通信やセンサノード100と図示しないセンタノードとの間の通信に使用する通信周波数と、センサノード主部1とリモートセンサ部2の間で使用する通信周波数は、異なる周波数帯域とするのが良い。
【0044】
例えば、センサノード100同士の相互通信やセンサノード100とセンタノードとの間の通信用としては2.42GHzの周波数帯域が好ましく、センサノード主部1とリモートセンサ部2との間の通信用としては、150kHzの周波数帯域が好ましい。
【0045】
本発明のセンサノードを用いることにより、センサノード主部は安全に作業可能な環境に設置可能となり、センサネットワークシステムの適用範囲が広がる。また、小型でかつ電池を有さないリモートセンサ部のみを可燃性の計測対象物の中に設置し、センサノード主部を該計測対象物の外部もしくは離間した場所に設置することが可能となるので、安全性が格段に向上し、例えば可燃性のガスの圧力監視にも使用することが可能となる。
【0046】
さらに、タイヤの空気圧センサのように、リモートセンサ部のみをタイヤの内部に設置すれば、従来のセンサノードのように、電池交換の都度、タイヤを取り外すことが不要となる。
【0047】
特にセンサとして各種の既存の表面弾性波素子を使用することにより、より一層の小型化、高信頼性化、低価格化等が実現できる。
【0048】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のセンサノードを用いることにより、環境監視システム、製品の安全管理システム、危険予知システムなどに代表される多様なセンサネットワークシステムを簡便かつ低価格で構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明によるセンサノードを説明する図。
【図2】本発明によるセンサノードを説明する図。
【図3】従来のセンサネットワークを説明する図。
【符号の説明】
【0051】
1 センサノード主部
2 リモートセンサ部
3 電池
4、21 制御回路
5、6、22 無線回路
7、8、10、23 アンテナ
9、12 センサ
11 電力生成回路
20 電源回路
100 センサノード
200 センタノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線回路に接続された第1のアンテナと、前記第1の無線回路に接続された制御回路と、前記制御回路に接続された第2の無線回路と、前記第2の無線回路に接続された第2のアンテナと、前記第1の無線回路または前記第2の無線回路または前記制御回路のいずれかに接続された電池を有するセンサノード主部と、センサと前記センサに接続された第3のアンテナからなるリモートセンサ部からなることを特徴とするセンサノード。
【請求項2】
第1の無線回路に接続された第1のアンテナと、前記第1の無線回路に接続された制御回路と、前記制御回路に接続された第2の無線回路と、前記第2の無線回路に接続された第2のアンテナと、前記第1の無線回路または前記第2の無線回路または前記制御回路のいずれかに接続された第1の電力生成回路を有するセンサノード主部と、センサと前記センサに接続された第3のアンテナからなるリモートセンサ部からなることを特徴とするセンサノード。
【請求項3】
前記センサノード主部と前記リモートセンサ部は、前記第1のアンテナと前記第3のアンテナで通信し、前記第2のアンテナを介して中継機器または中央処理装置と通信することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のセンサノード。
【請求項4】
前記リモートセンサ部は、無線電波から電力を生成する第2の電力生成回路を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のセンサノード。
【請求項5】
前記第1のアンテナと前記第3のアンテナ間で使用する周波数と、前記第2のアンテナと、前記中継機器または前記中央処理装置間とで使用する周波数は異なることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のセンサノード。
【請求項6】
前記センサは、基体に入力電極と出力電極を有し、前記基体の変形によって入力信号と出力信号の位相同士または周波数同士の少なくともいずれかひとつが変化することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のセンサノード。
【請求項7】
前記センサが表面弾性波素子であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のセンサノード。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の前記センサノードおよび前記中央処理装置を用いたことを特徴とするネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−317084(P2007−317084A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148210(P2006−148210)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】