説明

センサ付軸受装置

【課題】軸受の回転する外輪または内輪にセンシングデータを検出するセンサを設置する場合でも、電力供給と信号の送受信をワイヤレスで同時に実現でき、かつ、電池交換や部品交換の頻度が少なく、常に安定した電力を供給することができるセンサ付軸受装置を提供する。
【解決手段】測定対象である軸受からセンシングデータを検出するセンサと、前記センサから出力される検出信号を処理する制御回路ユニットと、前記制御回路ユニットに電源供給する太陽電池と、前記制御回路ユニットとワイヤレスで送受信し前記センサの制御およびセンシングデータの取得を行なうデータ取得装置とによりセンサ付軸受装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ付軸受装置に関し、さらに詳細には、軸受に設置したセンサの電源供給を太陽電池により行うと共に、このセンサへの信号の入出力をワイヤレスで実現するようにしたセンサ付軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道車両などの車両において車軸である回転軸を支持する軸受や、加工機や組立装置などの産業機械に適用されるボールねじやリニアガイドなどの直動装置および軸受は、運動することによって振動を生じたり、摩擦によって発熱したりする。これらの振動や熱温度等は軸受や直動装置の寿命に影響する。したがって、とくに装置の内部などの点検が難しい部分に取り付けられる軸受や直動装置については、汎用品である振動センサや温度センサを予め別途用意し、それを必要に応じて対象となる部位に取り付け、検出信号を信号線で出力している。振動センサや温度センサが電力を必要とするものである場合、電力を給電線により供給している。
【0003】
検出対象である軸受の振動や温度等のセンシングデータ(すなわち物理情報)の検出信号を信号線で出力すると、安定した出力信号が得られる。給電線で電力を供給すると、安定した電力の供給が得られる。また、信号線と給電線は、通常一つに束ねられた多芯ケーブルにして使用されることが多い。しかし、このケーブルが接続されたセンサは、軸受の回転側に直接取り付けることができない。また、このケーブルが接続されたセンサを直動装置の可動体に取り付けると、ケーブルが繰り返し屈曲されて断線することがある。
【0004】
そこで、従来、転がり軸受にワイヤレスセンサを設け、このセンサに電力を一次電池から供給し、検出信号を電波で送信するようにしたセンサ付軸受装置が特許文献1等で知られている。
【0005】
このようなワイヤレスセンサは、予め設定された閾値を超えたときに電波を出力するようにすることで消費電力を少なくし、一次電池を備えることで比較的長期間使用することが可能である。しかし、閾値を超える振動が長時間出力されるなどによって電力を消費するので、一次電池はいずれ交換しなければならない。
【0006】
また、検出対象となるセンシングデータを継続的に検出するためには、安定した電源が必要である。動力源の回転軸のように、安定した回転速度が得られる場所に設けられる軸受では、面対向発電機を備えることでセンサに安定した電力が供給されるが、加工機や組立装置などの産業機械に設けられる軸受あるいはボールねじやリニアガイドなどの直動装置は、速度が変動したり断続的に動いたりするため、安定した電力を供給することは困難である。
【特許文献1】特開2003−22492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような実情に鑑みなされたもので、軸受の回転する外輪または内輪にセンシングデータを検出するセンサを設置する場合でも、電力供給と信号の送受信をワイヤレスで同時に実現でき、かつ、電池交換や部品交換の頻度が少なく、常に安定した電力を供給することができるセンサ付軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、測定対象である軸受からセンシングデータを検出するセンサと、前記センサから出力される検出信号を処理する制御回路ユニットと、前記制御回路ユニットに電源供給する太陽電池と、前記制御回路ユニットとワイヤレスで送受信し前記センサの制御およびセンシングデータの取得を行なうデータ取得装置とを具備してなることを特徴とするセンサ付軸受装置を提供することにより、達成される。
【0009】
また、本発明の上記目的は、前記センサ、前記制御回路ユニット、前記太陽電池は、前記軸受の回転する外輪または内輪に設置されており、前記データ取得装置は前記軸受の外部に設置されていることを特徴とするセンサ付軸受装置を提供することにより、より効果的に達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、前記太陽電池はリング型太陽電池であることを特徴とするセンサ付軸受装置を提供することにより、より効果的に達成される。
【0011】
また、本発明の上記目的は、前記制御回路ユニットは前記太陽電池と同一の基板に取り付けられていることを特徴とするセンサ付軸受装置を提供することにより、より効果的に達成される。
【0012】
さらにまた、本発明の上記目的は、前記センシングデータは前記軸受における振動、温度、回転速度、移動速度、回転角度、圧力、歪、湿度、空気流、ガス濃度の少なくともいずれか一つに関する物理情報であることを特徴とするセンサ付軸受装置を提供することにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るセンサ付軸受装置は、軸受に太陽電池を設置することにより軸受に設置したセンサに電源供給すると共に、このセンサに対する信号の入出力をワイヤレス、すなわち無線または光信号によって行なうように構成されているので、本発明によれば、軸受の回転する外輪または内輪にセンシングデータを検出するセンサを設置する場合でも、電力供給と信号の送受信をワイヤレスで同時に実現でき、かつ、電池交換や部品交換の頻度が少なく、常に安定した電力を供給することができるセンサ付軸受装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の内容を実施例に基づき説明する。なお、本発明は必ずしも以下の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、その構成を種々に変更し得ることものであることはいうまでもない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ付軸受装置1に正面断面図、図2はその右側面図である。本センサ付軸受装置1は、ハウジング2の両端側に装着された左右一対の転がり軸受3、4により回転軸5を回転可能に支持する軸受機構における振動を検出する場合のものであって、一方の転がり軸受3の回転輪である外輪3A(内輪3Bは静止輪)の側面にリング型の太陽電池6を取り付け、かつ、この太陽電池6の表面側に制御回路ユニット7およびセンシングデータである振動を検出するセンサ(以下、「軸受センサ」という)8をこの順に取り付ける一方、転がり軸受3の外部に制御回路ユニット7と送受信するデータ取得装置9を設置して成っている。
【0016】
図3は、上述したセンサ付軸受装置1における電源供給とデータ取得の関係を示すブロック図である。図示するように、制御回路ユニット7は、太陽電池6に接続された充電回路7A、充電回路7Aに接続された二次電池7B、二次電池7Bおよび軸受センサ6接続された制御回路7C、制御回路7Cに接続された送信器7Dおよび受信器7Eによって構成されている。
【0017】
一方、センサ軸受3の外部に設置されたデータ取得装置9には、送信器9Aおよび受信器9Bが接続されている。図3に点線で示すように、このデータ取得装置9側の送信器9Aおよび受信器9Bと、制御回路ユニット7側の送信器7Dおよび受信器7Eとによりワイヤレス通信網が形成されている。
【0018】
次に、以上のとおり構成された本センサ付軸受装置1の作用について説明する。
【0019】
軸受センサ8には、測定対象である転がり軸受3からセンシングデータすなわち振動に関するデータが入力される。このデータは軸受センサ8から信号Sとして制御回路ユニット7の制御回路7Cに出力され、処理される。この制御回路7Cには充電回路7A、二次電池7Bを介して太陽電池6から電力が供給される。二次電池7Bには太陽電池6から供給される電力の余剰分が蓄えられる。充電回路7Aは、二次電池7Bへの過充電防止機能を備えており、二次電池7Bの容量が一杯になると、この充電回路7Aによって過充電が防止される。
【0020】
この太陽電池6に外部から光が照射されると電流が発生し、これにより電源供給が実現する。とくに、この光にレーザ光などを用いて電力を供給することにより、高パワーのエネルギーを一様に供給できる発電機としての太陽電池6を実現することができる。
【0021】
制御回路ユニット7とデータ取得装置9とはワイヤレス通信網を介してワイヤレス(無線あるいは光信号)でデータの送受信が行なわれる。データ取得装置9からの信号は無線あるいは光信号により制御回路ユニット7に送信され、軸受センサ8の制御およびセンシングデータの取得が行なわれ、かくして当該軸受機構における振動管理が実施される。
【0022】
以上のとおり、本センサ付軸受装置1は、転がり軸受3に太陽電池6を設置することにより、転がり軸受3に設置した軸受センサ8に電源供給すると共に、この軸受センサ8に対する信号の入出力をワイヤレス、すなわち無線または光信号によって行なうように構成されているので、本センサ付軸受装置1によれば、軸受センサ8を回転軸5と共に回転する転がり軸受3の外輪3Aに設置する場合にも、電力供給と信号の送受信をワイヤレスで同時に効率的に実現でき、かつ電池交換あるいは部品交換等が不要なセンサ付軸受装置を提供することができる。
【0023】
以上、本発明の内容を一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは前述したとおりである。
【0024】
例えば、前記実施形態では、軸受センサ8を回転する転がり軸受3の外輪3A側面に設置したが、転がり軸受3の内輪3Bが回転する場合には、図4に示すように、軸受センサ8をこの内輪3Bの側面に設置してもよい。また、センシングを行なう目的に応じ、軸受センサ8の転送面、あるいは内部などの適切な位置に設置することができる。
【0025】
本発明に用いられる転がり軸受3は、少なくとも外輪3Aと内輪3Bとの間に組み込まれた複数の転動体を有し、外輪3Aまたは内輪3Bのいずれか一方が静止輪で、他方が回転輪であればよく、ころ軸受、玉軸受、あるいは複列、単列などの任意の軸受を適用することができる。
【0026】
また、軸受センサ8の制御基板などを含む制御回路ユニット7は太陽電池6と同じ転がり軸受3の外輪3A側面に設置したが、これを必要に応じ、太陽電池6の基板と同一の基板に設置することもできる。
【0027】
また、前記実施形態のように、制御回路ユニット7に太陽電池6および充電回路7Aを含めることが好ましいが、これらは必ずしも必要なものではなく、場合によっては省くこともできる。
【0028】
また、前記実施形態は、センシングデータが軸受機構における振動である場合であるが、この外、温度、回転速度、移動速度、回転角度、圧力、歪、湿度、空気流、ガス濃度の少なくともいずれか一つに関する物理情報であってもよく、センシング目的に応じて複数個の軸受センサ8を設置することもできる。
【0029】
さらにまた、本発明は、上述したような回転軸5を軸受3、4により回転可能に支持する軸受機構の場合に限定されるものではなく、この他、加工機や組立装置などの産業機械に適用されるボールねじやリニアガイドなどの直動装置および軸受にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサ付軸受装置の正面断面図である。
【図2】上記センサ付軸受装置の右側面図である。
【図3】上記センサ付軸受装置における電源供給とデータ取得の関係を示すブロック図である。
【図4】本発明の変更例に係るセンサ付軸受装置の右側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 センサ付軸受装置
2 ハウジング
3 転がり軸受
3A 外輪
3B 内輪
4 転がり軸受
5 回転軸
6 太陽電池
7 制御回路ユニット
8 軸受センサ
9 データ取得装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象である軸受からセンシングデータを検出するセンサと、前記センサから出力される検出信号を処理する制御回路ユニットと、前記制御回路ユニットに電源供給する太陽電池と、前記制御回路ユニットとワイヤレスで送受信し前記センサの制御およびセンシングデータの取得を行なうデータ取得装置とを具備してなることを特徴とするセンサ付軸受装置。
【請求項2】
前記センサ、前記制御回路ユニット、前記太陽電池は、前記軸受の回転する外輪または内輪に設置されており、前記データ取得装置は前記軸受の外部に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項3】
前記太陽電池はリング型太陽電池であることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項4】
前記制御回路ユニットは前記太陽電池と同一の基板に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ付軸受装置。
【請求項5】
前記センシングデータは前記軸受における振動、温度、回転速度、移動速度、回転角度、圧力、歪、湿度、空気流、ガス濃度の少なくともいずれか一つに関する物理情報であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のセンサ付軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−15626(P2009−15626A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177133(P2007−177133)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】