説明

センサ固定具

【課題】複数個のセンサで形成される指向領域がつながるようにセンサを配置すること、さらには、各センサの指向領域を所定の測定対象空間の中で同じ向きにし、センサシステムとしての測定誤差を防止することを課題とする。
【解決手段】複数のセンサを固定可能な固定具であって、センサの測定動作を阻害しないようにセンサを個々に保持する保持部材と、複数の前記保持部材をその上下から固定する為の挟持部材と、前記保持部材と挟持部材とを固定する為の連結部材とを備え、前記挟持部材の挟持面には、保持部材を略円周方向に配置することを規制するための段差部が形成され、該段差部は、前記挟持面と直交する垂直段差面を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを固定する固定具に関するもので、特にロボットの走行や四肢の運動による環境認識のために、対象とする物体までの距離、方位等の情報を得ることができる複数個のセンサを固定できる固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロボットにおいて、ロボットの走行や、体の移動時に、周りの環境を認識する為、超音波センサ、光センサ等を利用して、環境中の対象物体を認識することが行われている。しかし、これら各センサには、測定可能な角度範囲(指向領域ともいう)があり、ロボットに各方向から接近する対象物体の方位や距離、物体の形状等の情報を正確的に認識することが困難であるという課題があった。
【0003】
このような問題の改善としては、特許文献1に記載の超音波センサ装置がある。この超音波センサ装置は超音波送信器と、超音波受信器と、情報処理装置とから構成される。また、この装置は、超音波送信器と超音波受信器を同じ円筒状の支持壁の外周部の円周上に交互に配設し、複数の超音波送信器により円周方向に広く超音波が送信され、複数の超音波受信器はその指向領域がいくつも重なるように円周上に並べられることにより、各反射物体(対象物体)夫々の距離や、反射点の方位を算出するとともに、反射波の強度を計測して反射物体の形状等を把握することができ、360度放射状全方向に存在する反射物体の距離、方位、形状等を把握することが可能となるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−131426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1には、センサを円周方向に沿ってどのように固定するかが開示されていない。また、センサの指向領域を如何にムラなく連続的に形成することに関する記載はない。従来より、複数のセンサを取りける際には、センサ間の位置ズレを生じやすく、センサを精度よく配置させないと、センサの指向領域をつなぐことができない問題があった。
【0006】
また、各センサの指向領域を所定な測定対象空間の中で同じ向きにしないと、センサ間の計測に誤差が生じてしまい、測定対象物の方位及びその形状を正確的に認識できない虞がある。
【0007】
そのほか、特許文献1には、センサシステムを利用する対象ロボットの身体部位が特定されておらず、例えば、ロボットの足や腕のような柱状の身体部位に取り付ける場合、取付け対象とする面は1箇所ではなく複数箇所あるので、如何にセンサ間の位置精度を上げながら、複数の取付け対象面にセンサを固定することが困難であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、複数のセンサを固定する場合であっても、精度よく取付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
複数のセンサを固定可能なセンサ固定具であって、センサの測定動作を阻害しないようにセンサを個々に保持する保持部材と、複数の保持部材をその上下から固定する為の挟持部材と、保持部材と挟持部材とを固定する為の連結部材とを備え、挟持部材の挟持面には、保持部材を略円周方向に配置することを規制するための段差部が形成され、該段差部は、挟持面と直交する垂直な段差面を有する。
【0010】
段差部は、傾斜段差面と垂直段差面とから構成される楔形状である。また、保持部材には、この段差部形状に対応する押込み部が設けられる。
【0011】
また、段差部の段差面には、保持部材と線接触で固定可能な突起を形成されている。
【0012】
また、段差部は、挟持面の上方又は下方からみて、その輪郭形状が正多角形となっている。
【0013】
挟持部材の形状は、円環状、円弧状、円盤状の中のいずれか一つである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、段差部を利用することにより、複数個センサに形成される指向領域がつながるようにセンサを配置することができる。さらに、段差部の垂直段差面によりセンサ保持部材の取付け角度を規制することで、各センサの指向領域を所定な測定対象空間の中で同じ向きにするができ、センサシステムの測定誤差を防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係るセンサ固定具の全体構成例を示す斜視図である。
【図2】図1の近接覚センサを保持部材に装着することを示す説明図である。
【図3】図1の挟持面段差形状と部品の装着を説明する斜視図である。
【図4】第2の実施形態に係るセンサ固定具の楔形状段差部を示す説明斜視図である。
【図5】図2の挟持面の楔状段差の部分拡大図である。
【図6】図2の楔作用発生時の保持部材装着状態を示す要部縦断面図である。
【図7】第2の実施形態に係るセンサ固定具のボルト締結を示す他の一例説明図である。
【図8】第3の実施形態に係るセンサ固定具を説明する要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1〜3は、本発明の第1の実施形態を示す。図1において、センサ固定具Aは近接覚センサ1(反射型フォトセンサ)を保持する保持部材2と、保持部材2を円周方向に沿って複数配置させ、保持部材1を上方及び下方から挟む一対の挟持部材3Aと、保持部材2と挟持部材3Aとを固定する連結部材であるボルト4を備える。
【0017】
図2は、近接覚センサ1と保持部材2の固定方法の一例を示す。センサ保持部材2は長方形(正方形若しくはアスペクト比≠1の長方形)の形状となっている。保持部材2の中央には円状の開口6があり、開口6には、近接覚センサ1が収容される。また、保持部材2の側面には、イモネジ7を螺合するための小孔8が設けられている。さらに、保持部材2の上面及び下面には、挟持部材3Aと固定するためのボルト孔9が設けられている。
【0018】
近接覚センサ1を保持部材2に固定する際、近接覚センサ1を保持部材2の開口6に嵌め込ませ、両側面から孔8にイモネジ7を螺合することにより、近接覚センサ1を保持部材2に固定する。イモネジ7の締め付け部位については、保持部材2の上下の被挟持面(挟持面と当接する保持部材2の上下面)に設けてもよい。
【0019】
また、本実施形態では、近接覚センサ1を保持部材2に嵌め込ませ、近接覚センサシステムを形成することを例として挙げられるが、センサシステムの用途によって同種類若しくは異種類のセンサを保持部材2に付けてもよく、たとえば、超音波センサを取付け、超音波センサシステムを形成することもできる。
【0020】
なお、保持部材2は、センサの測定部を露出してその測定動作を阻害しないように、センサの非測定部のみを固定する形状にする。たとえば、センサの非測定部を保持部材に嵌めこんでセンサを固定する方法が挙げられる。保持部材は長方体形状に限定しておらず、挟持部材の垂直な段差面と面接触できるいずれの規則若しくは不規則な立体形状としてもよい。
【0021】
次に、図3によりセンサ固定具Aの各部品の組み立てについて説明する。両挟持部材3Aの挟持面14には、保持部材2の配置位置を規制する折線状の段差部5Aが形成されている。挟持部材3Aの挟持面14の段差部5Aの輪郭形状は正多角形となっている。保持部材2被挟持面の横辺の長さと、段差部5Aの正多角形輪郭の辺の長さとは同じである。組み立ての際、段差部5Aの正多角形輪郭形状を基準にして各保持部材2を段差部5Aに寄せながら配置させる。そして、保持部材2を該段差部5Aに当接する状態でボルト4により締めつける。
【0022】
本実施形態では、挟持部材3Aに輪郭形状が正多角形の段差部5Aを設けることにより、複数個のセンサを精度よくほぼ円周上に配置でき、センサの指向領域をムラなくつなぐことできる。さらに、段差5Aの垂直段差面を用いることで、各センサは挟持面に対して垂直方向に固定することにより、各センサの向きによるセンサシステムの測定誤差を生じることを防止できる。
【0023】
また、段差部5Aの正多角形輪郭形状について、辺数や角の大きさ等は、センサ自身の指向領域によって決定される。
【0024】
なお、挟持部材3Aの挟持面14の形状に関して、センサ固定具Aの固定で形成されるセンサシステムはロボットの足や腕のような柱状の身体部位に取付ける場合、挟持部材の中央部に開口がある形状にすることが好ましく、たとえば円環状にすることができ、また、ロボットの頭頂部に取り付け周囲の環境情報を測定する場合、挟持部材に開口のない円盤状にしてよい。そのほか、測定角度範囲は360度より小さい場合、挟持部材を円弧状にしてセンサを円弧に沿って配置してもよく、円環状の挟持部材にセンサを円弧状に配置してもよい。
【0025】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るセンサ固定具の一例については、図4〜6を参照して説明する。センサ固定具の構成については、くさび形状の段差部5B、およびそれに対応して保持部材2に押込み部11を設けたこと以外、第1の実施形態の構成と同様である。従って、第1実施形態と同一又は同等な部分については、同一符号を付与し説明を省略又は簡略化する。
【0026】
図6に示すように、段差部5Bは、円環の内側に設けられる垂直段差面5B1、および挟持面外側の傾斜段差面5B2からなり、楔形状となっている。保持部材2の押込み部11は、段差部5Bの形状とほぼ補完する形状になっているが、押込み部11の底部と段差部5Bの底部とを組み立てる際、押込み部11の底部と段差部5Bの底部との間に隙間を残るように押込み部11の深さを設定する。その理由は、保持部材2を挟持部材3Aで挟んで固定すると、挟持面に対して垂直方向から保持部材2を押し込ませる力が発生し、その力が傾斜段差面5B2の押込み部11に伝達され、押込み部11を垂直段差面5B1へ押し付けさせる水平方向の分力を生じる。この水平方向の分力により、保持部材2と挟持部材3A間の緊密な接触状態を保持し続けることができる。
【0027】
なお、挟持部材3Aには、円環の内側縁部近傍に孔12が設けられ、ボルトで保持部材を直接に固定せず、上下の挟持部材3Aだけを図示しないスリーブにて貫通させ、そして図示しないボルトで固定する。本実施形態は楔形状の段差部5Bを利用することで、ボルトで直接に保持部材を締め付けなくても、器具Aは安定な構造を得ることができる。
【0028】
また、図7は本実施形態に係るスリーブ12締結構造の他の一例を示すものである。挟持部材3Bは円盤状となり、円盤中央の円心位置に孔が一つのみ設けられる。それ以外の構成は、本実施形態の上述の構成と同様である。この変形例も同様に、くさび形状の段差部5Bを用いて保持部材2を固定する為、図7のように一本のスリーブ12を挟持部材3Bの中央部に配置し、挟持部材3Bの上下より図示しないボルトにより固定すれば、安定な構造を得ることができる。
【0029】
なお、スリーブの固定位置は円盤中央ではなくほかの位置でもよく、スリーブの本数を増やして、スリーブを円盤状のほかの場所に分布してもよい。
【0030】
本実施形態のセンサ固定具Aは、センサシステムの用途によって同種類若しくは異種類のセンサを固定することができる。たとえば、近接覚センサや超音波センサを固定してそれらのセンサシステムを形成することができる。
【0031】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るセンサ固定具Aについては、図8を参照して説明する。段差部5Cには、突起13が形成される。それ以外の点については第1実施形態のセンサ固定具Aの構成と同様である。
【0032】
挟持面の上方からみて、突起13は半円形となり、正多角形各辺に2個設けられる。保持部材2を挟持部材3Aに取付ける際、正多角形の同じ辺に位置される2個の突起13に基準して、保持部材2と線接触することで、精度よく保持部材を固定することができる。
【0033】
突起13だけを精度よく加工すれば、保持部材2と挟持部材3Aとの位置を精度よく決めることができるので、段差面全体を精密に加工することが不要となる。
【0034】
なお、挟持面の上からみて、突起13を半円形とする以外、例えば三角形にして、その頂点の一つを保持部材2と線接触してもよい。また、本実施形態の半円形の突起を有する垂直段差と実施形態2の傾斜段差とを組み合わせて段差部5Cを形成し、楔作用を用いてセンサ保持部材2を固定することもよい。
【0035】
本実施形態のセンサ固定具Aは、上記実施形態1と同様に、センサシステムの用途によって同種類若しくは異種類のセンサを固定することができる。そのほか、測定角度範囲は360度より小さい場合、挟持面を円弧状にしてセンサを円弧に沿って配置してもよく、円環状の挟持面にセンサを円弧状に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明に係るセンサ固定具は、複数のセンサを一つの全体として精度よく固定でき、産業用ロボット等の智能装置に装着することで、全方位の測定またはより広い範囲の測定が可能となり、障害物の形状や方位等の環境情報を収集することができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 近接覚センサ
2 保持部材
3 挟持部材(3A―円環状のもの,3B―円盤状のもの)
4 ボルト
5 段差部(5A,5B,5C)
6 開口
7 イモネジ
11 押込み部
12 スリーブ
13 突起
14 挟持面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサを固定可能なセンサ固定具であって、センサの測定動作を阻害しないようにセンサを個々に保持する保持部材と、複数の前記センサ保持部材をその上下から固定する為の挟持部材と、前記保持部材と挟持部材とを固定する為の連結部材とを備え、前記挟持部材の挟持面には、保持部材を略円周方向に配置することを規制するための段差部が形成され、該段差部は、前記挟持面と直交する垂直な段差面を有することを特徴とするセンサ固定具。
【請求項2】
前記段差部は傾斜段差面と前記の垂直段差面とから構成される楔形状であり、前記保持部材には、前記段差部形状に対応する押込み部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ固定具。
【請求項3】
前記段差部の段差面には、前記保持部材と線接触で固定可能な突起が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ固定具。
【請求項4】
前記段差部は、前記挟持面の上方又は下方からみて、その輪郭形状が正多角形となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ固定具。
【請求項5】
前記挟持部材の形状は円環状、円弧状、円盤状の中のいずれか一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−52983(P2011−52983A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199620(P2009−199620)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】