説明

センサ組立体

【課題】コスト上昇を抑えながら、また、もし仮にブラケットが変形した場合でも、回転センサが回転速度を正確に検出できるようなセンサ組立体を提供することを目的とする。
【解決手段】回転センサ11と、回転センサ11を保持した状態で被固定部材10に固定されるブラケット20と、ブラケット20に取り付けられ、ブラケット20が被固定部材10に固定されると回転センサ11及び被固定部材10と当接する状態になるスペーサ21と、を備え、回転センサ11が、ブラケット20に取り付けられたスペーサ21とブラケット20とに挟持された状態でブラケット20に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ組立体に関し、特に、被固定部材へ固定する際に高い位置決め精度が得られるようなセンサ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
センサは、使用に際して、被検出体を正確に検出し得る位置に固定する必要がある。このため、特許文献1では、自動変速機の制御のために、自動変速機側の回転速度を検出する回転センサを、自動変速機のケース下部に設けるコントロールバルブに、ブラケットを介して取り付けている。具体的には、回転センサの他に油圧センサや油温センサを取り付けてサブアッセンブリ化した状態のブラケットを、ボルトによってコントロールバルブに締結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−271918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたセンサの取付方法では、回転センサを、被検出体の回転速度を正確に検出できる位置に精度よく固定することができない。すなわち、ボルトとブラケットのボルト孔との間には組み込みのためのクリアランスが必要であって、その分回転センサの位置の精度が悪化する。また、ブラケットを金属板のプレス加工だけで成型すると、ブラケットの形状の精度を向上させることは困難であるから、ブラケット形状の精度を向上させるためには、ブラケットの切削加工等が必要になり、コストがかかるという問題がある。さらに、もし仮にボルトの締結力によってブラケットが変形した場合も、回転センサを、被検出体の回転速度を正確に検出できる位置に精度よく固定することができなくなる。
【0005】
そこで、本発明では、コスト上昇を抑えながら、また、もし仮にブラケットが変形した場合でも、回転センサが回転速度を正確に検出できるようなセンサ組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセンサ組立体は、回転センサと、当該回転センサを保持した状態で被固定部材に固定されるブラケットと、当該ブラケットに取り付けられ、ブラケットが被固定部材に固定された状態で回転センサと被固定部材の両方と当接するスペーサと、を備え、回転センサが、ブラケットに取り付けられたスペーサとブラケットとに挟持された状態でブラケットに保持される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転センサと被固定部材としてのコントロールバルブとの間にスペーサを介し、このスペーサによりコントロールバルブに対する回転センサの位置決めを行う構成なので、コスト上昇を抑えながら、また、もし仮にボルトを締め込む際にブラケットが変形した場合でも、回転センサの位置の精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態を適用する自動変速機の概略構成図である。
【図2】センサ取付部の拡大図である。
【図3】ブラケットの詳細図である。
【図4】スペーサの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態を適用する車両用の自動変速機1の一部分について示した概略図である。
【0011】
2はトルクコンバータ、3はクラッチ機構、10はコントロールバルブ、11は回転センサである。
【0012】
トルクコンバータ2は、図示しないエンジンのクランクシャフト端部に固定されたドライブプレートにボルト等によって接続され直接回転駆動されるポンプインペラ2aと、このポンプインペラ2aにより流体を介して回転駆動されるタービンランナ2bを備える。
【0013】
クラッチ機構3は、タービンランナ2bに接続された入力軸6に固定されたクラッチドラム4と、クラッチドラム4の内周部とその外周部が係合する複数のドリブンプレート8と、ドリブンプレート8と交互に並ぶドライブプレート9と、ドライブプレート9の内周部とその外周部が係合するクラッチハブ5と、クラッチハブ5に接続された中間軸7とを備える。
【0014】
コントロールバルブ10は、自動変速機1の下面開口部に取り付けられており、その上面にはクラッチドラム4の回転速度を検出するための回転センサ11が設置されている。
【0015】
図2は、図1の回転センサ11の取付部分の拡大図である。図3、図4はそれぞれ後述するブラケット20、スペーサ21を表わす図である。
【0016】
回転センサ11は、検出部11bと、これより大径の胴体部分11cとを有する段付き円柱形状であり、胴体部分11cの下面にはセンサ凸部11aを有する。
【0017】
ブラケット20は、回転センサ11の検出部11bが貫通する孔を有する上面20aと、上面20aからコントロールバルブ10方向に伸びる2つの側面20bと、各側面20bの下端からコントロールバルブ10の上面と平行に延びる取付面20cとを有する門型である。側面20bには、孔(以下、ロック部という)30を有する。
【0018】
スペーサ21は、上面には回転センサ11の下面にある凸部11aが嵌合するスペーサ凹部21bを有し、下面にはコントロールバルブ10に設けた凹部10aに嵌合するスペーサ凸部21aを有する、樹脂製の直方体である。そして、ブラケット20の側面20bと対向する面には、ロック部30と係合する凸部(以下スペーサロック部という)40を有する。
【0019】
このスペーサロック部40は、スペーサ部材と一体成型してもよいし、別部材をスペーサ20の側面に取り付けてもよい。そして、スペーサ21の側面から突出したスペーサロック部40は、ブラケット20の側面20bが弾性変形することでロック部30に係合する。ロック部30及びスペーサロック部40を設ける位置については後述する。
【0020】
これらの構成部品を、図2に示す状態になるようにコントロールバルブ10に取り付ける。すなわち、コントロールバルブ10上面には、スペーサ凸部21aがC/V凹部10aに嵌合するようにスペーサ21が配置され、その上にはスペーサ凹部21bにセンサ凸部11aが嵌合するように回転センサ11が配置され、さらに回転センサ11の検出部11bがブラケット20の上面20aの孔を挿通するようにブラケット20が回転センサ11及びスペーサ21に被せられた状態で配置される。ブラケット20の取付面20cがコントロールバルブ10の上面にボルト22で締結されることで回転センサ11がブラケット20により上側から押さえられてコントロールバルブ10に固定される。
【0021】
なお、スペーサロック部40とロック部30が係合することで、スペーサ21はブラケット20に固定され、さらに回転センサ11の胴体部分11cがブラケット20の上面20aとスペーサ21の上面で挟持された状態となる。
【0022】
これにより、ブラケット20から回転センサ11が脱落することを防止するための別部材を用いることなく、ブラケット20、回転センサ11及びスペーサ21を、センサ組立体として、いわゆるサブアッセンブリ状態にすることができるので、自動変速機1の組み立て工程を簡略化することができる。
【0023】
上述したように、回転センサ11はセンサ凸部11aとスペーサ凹部21bとによってスペーサ21に対して位置決めされており、そのスペーサ21はスペーサ凸部21aとC/V凹部10aとによりコントロールバルブ10の上面に対して位置決めされている。
【0024】
また、スペーサ凸部21aとC/V凹部10aとの間のガタは、スペーサロック部40とロック部30との間のガタよりも小さくなるように設定する。これにより、ブラケット20に寸法誤差があった場合でも、コントロールバルブ10に対するスペーサ21の位置のずれはスペーサ凸部21aとC/V凹部10aの寸法により制限されるので、回転センサ11のコントロールバルブ10に対する位置のずれを抑制することができる。
【0025】
さらに、センサ凸部11aとスペーサ凹部21bとの間のガタは、センサ11の検出部11bとブラケット20の上面20aの孔との間のガタよりも小さくなるように設定する。これにより、ブラケット20に寸法誤差がある場合でも、スペーサ21に対する回転センサ11の位置のずれはセンサ凸部11aとスペーサ凹部21bの寸法により制限されるので、回転センサ11のスペーサ21に対する位置のずれを抑制することができる。
【0026】
このため、回転センサ11はスペーサ21により位置決めされることになるので、例えばブラケット20の形状の精度を出すためにブラケット20に切削加工等を行うことなく、コスト上昇を抑えながら回転センサの位置の精度を確保することができる。また、もし仮にボルト22を締め込む際にブラケット20が変形した場合でも、これに伴う回転センサ11の位置の変化を抑制することができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、スペーサ凸部21aをC/V凹部10aに挿入する構成としたが、これに限定されるわけではない。例えば、スペーサ21に凹部を設け、これにコントロールバルブ10に設けた凸部を嵌合させる構成や、両者に凹部を設け、ここに一本の位置決めピンを嵌合させる構成等、コントロールバルブ10に対するスペーサ21の位置決めが可能な構成ならばよい。回転センサ11のスペーサ21に対する位置決めについても、これと同様である。
【0028】
また、スペーサ21をブラケット20に取り付ける構造として、スペーサロック部40がロック部30に係合する構成を示したが、これに限定されるものではなく、センサ組立体をサブアッセンブリ状態にする際に、スペーサ21がブラケット20から脱落しない構造であればよい。さらに、スペーサ21を樹脂で形成することとしたが、これに限定されるものではない。
【0029】
また、本実施形態では、クラッチドラム4の回転速度を検出する回転センサ11を、自動変速機1の本体下部に配置するコントロールバルブ10の上面に取り付ける構成について説明したが、これに限られるわけではなく、回転センサを何らかの部品に固定する構成であれば同様に適用可能である。
【0030】
以上により本実施形態では、次のような効果が得られる。
【0031】
(1)回転センサ11と、回転センサ11を保持した状態でコントロールバルブ(被固定部材)10に固定されるブラケット20と、ブラケット20に取り付けられ、ブラケット20がコントロールバルブ10に固定された状態で回転センサ11とコントロールバルブ10の両方と当接するスペーサ21と、を備え、回転センサ11が、ブラケット20に取り付けられたスペーサ21とブラケット20とに挟持された状態でブラケット20に保持されるので、コスト上昇を抑えながら、また、もし仮にコントロールバルブ10に固定する際にブラケット20が変形したとしても、回転センサ11の位置の精度を確保することができる(請求項1に対応)。
【0032】
(2)スペーサ凸部(スペーサ21に設けた嵌合部)21aとC/V凹部(被固定部材に設けた被嵌合部)10aとの間のガタが、ロック部30とスペーサロック部40との間のガタよりも小さいので、ブラケット20に寸法誤差があった場合でも、回転センサ11のコントロールバルブ10に対する位置のずれを抑制することができる(請求項2に対応)。
【0033】
(3)センサ凸部(センサに設けた嵌合部)11aとスペーサ凹部(スペーサに設けた被嵌合部)21bとの間のガタが、回転センサ11の検出部11bとブラケット20の上面20aの孔との間のガタよりも小さいので、回転センサ11のスペーサ21に対する位置のずれを抑制することができる(請求項3に対応)。なお、本実施形態では、ブラケット20の上面20aに回転センサの検出部11bが貫通する孔を設ける構造を示したが、これに限定されるものではなく、ブラケット20の上面20aに回転センサの検出部11bが貫通するような切り欠きを設ける構造であってもよい。
【0034】
また、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 自動変速機
2 トルクコンバータ
3 クラッチ機構
4 クラッチドラム
5 クラッチハブ
6 入力軸
7 中間軸
8 ドリブンプレート
9 ドライブプレート
10 コントロールバルブ
11 回転センサ
20 ブラケット
21 スペーサ
22 ボルト
30 ロック部
40 スペーサロック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転センサと、
当該回転センサを保持した状態で被固定部材に固定されるブラケットと、
当該ブラケットに取り付けられ、前記回転センサ及び前記被固定部材に当接するスペーサと、
を備え、
前記回転センサが、前記スペーサと前記ブラケットとに挟持された状態で前記ブラケットに保持されることを特徴とするセンサ組立体。
【請求項2】
前記スペーサは前記被固定部材に設けた被嵌合部と嵌合する嵌合部を有し、
前記スペーサは前記ブラケットに設けた被係合部に係合する係合部を有し、
前記スペーサの嵌合部と前記被固定部材の被嵌合部との間のガタが、前記スペーサの係合部と前記ブラケットの被係合部との間のガタよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のセンサ組立体。
【請求項3】
前記回転センサは前記スペーサに設けた被嵌合部と嵌合する嵌合部を有し、
前記ブラケットは前記回転センサの一部が貫通する貫通部を有し、
前記回転センサの嵌合部と前記スペーサの被嵌合部との間のガタが、前記回転センサと前記ブラケットの貫通部との間のガタよりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−236606(P2010−236606A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84847(P2009−84847)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】