センシングシステム及び方法
センシングシステムは、複数のセンシング要素が埋め込まれたマトリクス構造を有する材料であって、前記センシング要素が前記材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する材料を備える。前記センシングシステムは、アンテナを含み、ソースRF信号及び戻りRF信号を受信するように配置された受信機であって、前記戻りRF信号を前記材料から受信する受信機を更に備える。前記センシング要素の前記電子分布及び/又は輸送特性の変化により、前記材料の特性の変化が前記戻りRF信号から決定できるように前記ソースRF信号が変化する。材料の特性の変化を検出する対応方法も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシングシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造ヘルスモニタリング(SHM:Structural health monitoring)は、土木、構造及び航空宇宙工学等の産業での関心が高まっている技術分野である。SHMの目的は、構造体で検知された異常の指標を与えるために、センサーを用いて危険構造要素に関するデータを収集し、それによりその信頼性及び安全性を監視することである。現在のSHMシステムは、関心ある任意の構造体の重要ポイントにおいて、一又は複数のセンサーの設置を必要とする。センサーの種類は、検出される関心ある特定のパラメータによって異なる。これにより、このようなシステムは、設置が高価で時間のかかるものになってしまうが、センサーのリアルタイム連続モニタリングは、実際には非現実的である。
【0003】
既知のシステムにおける欠点の一つは、現代の航空機に用いられる複合材料が、現在のSHM技術を時代遅れのものとし、現在の技術が満たすことのできない需要をこの産業内に生じさせてしまうことである。
【0004】
複合材料の使用が増えているその他の産業は、シール及びガスケット等の部品の疲労のモニタリングが重要である石油・ガス産業、トンネル及びパイプライン網等の地下構造物、並びに信頼性及び安全性が最重要の軍用機及び潜水艦技術である。
【0005】
これらの利点は、以下の目的で埋め込み部品、心臓弁及び股関節の監視を必要とする医療分野に適している。即ち、信頼性及び安全性のため、水又は大気汚染をロバストな材料を用いて低コストで追跡できる環境センシングのため、生産工程中に材料、特に複合材料を追跡してプラスチック部品の品質を向上できる高度製造のため、並びに、宇宙空間等の生存に適さない又は人が近づきにくい場所での応用又はタービン等の回転機器を用いる用途のためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術分野は、厳密な検査のためにすぐには近づくことができない構造体を選択的に且つ連続して監視するために、信頼性の高い正確な無線センシングを必要とする。
【0007】
本発明は、上記に概説した課題を克服しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、複数のセンシング要素が埋め込まれたマトリクス構造体を有する材料であって、前記センシング要素が前記材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する材料と、アンテナを含み、ソースRF信号及び戻りRF信号を受信するように配置された受信機であって、前記戻りRF信号を前記材料から受信する受信機と、を備え、前記センシング要素の前記電子分布及び/又は輸送特性の変化により、前記材料の特性の変化が前記戻りRF信号から決定できるように前記ソースRF信号が変化することを特徴とするセンシングシステムが提供される。
【0009】
また本発明は、複数のセンシング要素が埋め込まれたマトリクス構造体を有する材料であって、前記センシング要素が前記材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する材料の特性の変化を検出するセンシング方法であって、ソースRF信号を用いて前記材料を調べる工程と、前記材料から戻りRF信号を受信する工程と、前記センシング要素の前記電子分布及び/又は輸送特性によって引き起こされる前記戻りRF信号の変化から、前記材料の特性の変化を決定する工程と、を備えることを特徴とするセンシング方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るシステムの一例を示す模式図である。
【図2】本発明に係るシステムの更なる例を示す模式図である。
【図3】図3aから図3cは、本発明に係るシステムを採用する際に得られる出力の例を示す図である。
【図4】図4aから図4cは、本発明に係るシステムを採用する際に得られる出力の更なる例を示す図である。
【図5】粘性溶液と接している大気中の水晶チップの共振を示すグラフである。
【図6】カーボンナノチューブ(CNT)高分子複合体のマイクロ波共振を表すグラフである。
【図7】ナノチューブを含まない試料に対する、9GHzにおける多層ナノチューブ複合材のマイクロ波共振を表すグラフである。
【図8】圧力の低下(左から右)におけるGHz共振を表すグラフである。
【図9】接触圧及びガス/静水圧に応じるOリング固有センサー形状を示す図である。
【図10】音響的に共振する粒子が壁全体に組み込まれているけれども、内面上の粒子のみが溶液粘度に関する減衰を有し且つ振動するのに好都合な条件にある、複合材料パイプ固有センサー形状を示す図である。
【図11】機体の外板を支持フレームと結合させる表面に固有センシング接着剤を取り入れており、剥離と構造力がしばしば最高となる剥離点での歪みとについてフィードバックさせる複合材航空機の翼を示す図である。
【図12】ヒートタイルの整合性のモニタリングに用いた本発明を示す図である。
【図13】環境測定アプローチに基づく固有センシングシステムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、アンテナ2を有する無線送受信機1の模式図が示される。材料3の一部、例えば高分子材料は、複数のセンシング要素4が内部に分散してマトリクス材料3に囲まれるように埋め込まれたマトリクス構造体を有する。センシング要素4は、材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する。この性質は、結果的には、マトリクス材料3を調べるためにアンテナ2を介して送受信機1から送信される無線周波数(RF)信号(例えば、マイクロ波信号)の交互的変動を生じさせ、材料の変化を戻り信号から決定できる。このように、センシング要素4によって、材料の特性の変化における非侵襲的固有センシングが可能となる。
【0012】
無線送受信機1は、雑音を減じるためにパルス、周波数、位相、又はデジタル的に変調されるような変調無線周波数信号を発生するように構成され、リアルタイムにマトリクス材料3から形成される構造体からの戻り信号を検出するように構成される。戻り無線信号は、通常、散乱、反射、又は送信装置(set-up)により収集される。送受信機1は、センシング要素の環境に関連する電磁スペクトルのGHz域における重要なスペクトル特性を追跡するように設計される。その結果、戻りGHzスペクトル及びバルク材料3の物理的及び化学的特性に関する情報の遠隔収集における変化となる。
【0013】
アンテナ2は、無線周波数信号を放射し且つリアルタイムに高信号/雑音比で反射信号を収集するように配置される。使用時には、アンテナ2は、RF信号を材料3の広又は狭域に広がる標的部位に加える。これは、例えば航空機の構造部品において特に有利である。ここでは、センシングは、シール又は接合個所等の特定の小領域、或いは全翼等の大構造体に集中する。アンテナは、レーダベースシステムのように機能して波長に応じたGHz放射の狭ビームを発生するように配置することができる。この性質は、好ましくは、パラボラ又はフェーズアレイアンテナ構造体で達成される。図2はセンシングシステムの更なる例を示している。ここでアンテナは双方向アンテナ5である。
【0014】
バルク材料を測定する別の方法は、差動比測定に基づくものである。本発明の本実施例は、信号源及び受信機の合計が2よりも多いことを必要とするであろう。本実施例の利点は、シート又はパネル等の、比較的大きな試料内の特定位置が解像(resolve)できることである。この情報により、バルク材料特性の画像を形成できるので、受信信号を結合させることによってある特定位置からの重要な物理/化学情報を得ることができる。
【0015】
好適な実施例では、センシング要素4が支持されている材料は、エラストマー又はエポキシマトリクス等の高分子マトリクスであり、従って、センシング要素4を追加すると、複合高分子マトリクス材料3を形成できる。この材料3は、GHz域における電磁信号の効率的な送信を支援できるように、絶縁であることが理想的である。埋め込み要素4はセンシングの目的に用いられ、必要であれば、更なる要素を追加して追加センシング機能を形成することができる。
【0016】
当該技術の現状のシステム及び方法によれば、材料に向けられた無線信号は、材料の機械的、電気的及び化学的状態に関する情報を引き出すことができない。しかしながら、電子分布及び/又は輸送特性が局所環境によって変動された追加センシング要素は、このモニタリング機能を可能にできる。センシング要素4は、材料3の誘電特性又は磁性等の特性を変動させるように配列される。
【0017】
センシング要素4は、高調波発生(harmonic generation)及び周波数倍増(frequency doubling)を引き起こす高品質な共振挙動又は非線形的特性を示す任意の粒子からなる。この目的に用いることができる粒子は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、ゴールドナノリング、磁気粒子、及びその他多くを含む。異常な電波特性を引き起こす基本的機構は、元来は、音響性、誘電性、圧電性、磁歪性、導電性又は半導性であってよい。その結果、材料の誘電特性又は磁性等の特性が変化し、それが次に戻り電波を特定の方法で変動させる。粒子の種類は、歪み、温度、水和又はpH等の特定の環境変化に応じるように選択される。より厳しい環境において信号レベルを高めるために、センシング粒子を、電磁共振を増加させる低損失誘電体の第2粒子に吸着させることもできる。
【0018】
センシング要素4は粒子からなり、その共振Qファクタは、材料3の電気的及び/又は磁気的性質の変化によって変化してよい。例えば、材料3の機械的変化は、電気抵抗の増加を引き起こすことができ、それが誘電損失を増加させ、材料3のQファクタを減少させる。
【0019】
これらの特性を手に入れ、有効に展開させるためには、電波を粒子に結び付ける機構が必要とされる。これを達成するために、複合マトリクス材料3と送信機とアンテナ装置1及び2との間で電波エネルギーをやりとりさせる二の機構のうちの一の機構又は両機構が同時に採用される。
【0020】
第1カップリング機構は、粒子のサイズによって規定されたコヒーレント寸法内の磁気又は電気双極子の存在に加えて、高分子を介した粒子の均一分散を用いる。マトリクス粒子は、例えば磁歪、逆圧電性、磁気直接発生(magnetic direct generation)又は二本のワイヤ間で起こりうる電子結合を介してセンシング粒子に結合される。カップリング自体は、作用センサー材料(working sensor material)を構成するには十分ではないが、その他の誘電複合材料に関連するセンシング複合材料の挙動における一つの差は、高品質な共振がこの材料から反射される無線信号に現れることである。従って、マトリクス材料をセンサーとして用いる際には、その材料の電気的及び/又は機械的特性等の特性が、標的位置で均一に粒子の共振周波数を変動させるので、埋め込み粒子は同様の分だけ周波数を変化させ、従ってネット信号はコヒーレントとなる。
【0021】
この第1の機構を監視する一つの方法は、図3a及び図3bに示すように、パッシブ共振センシング方法によるものである。例えば高分子であるマトリクス材料3の共振周波数が、時間の関数として追跡される。図3aは、戻りRF信号周波数の追跡を可能とする通常のシステムの結果を示す。この方法において、戻り信号の周波数スペクトルの変化は、材料の共振周波数の変化を示す。
【0022】
好ましくは、センシングシステムは、材料の機械的、電気的及び化学的状態のうちの少なくとも一つを決定するように配置された回路網を更に備える。従って、複合材料から形成された構造体の異常又は欠陥の位置及び程度を決定する正確で確実な方法が必要とされる。
【0023】
第1の機構を用いる場合、図3aから図3cに示すようなパッシブ共振センシング方法が通常用いられる。図3bを参照すると、周波数例27.3GHzのシステム出力6は、材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する、例えばナノ材料であるセンシング要素が埋め込まれた材料から構成された構造体の高分子パネル部7から反射されたRF信号に対応する。本実施例において、周波数27.3GHzは、この複合材料の反射信号の周波数スペクトルにおいて所定の期待されるくぼみ部であるが、これは調べられた各パネル部7の各部から反射され、何の欠陥もないことを示している。
【0024】
図3cを参照すると、システム出力6は、34GHzである周波数出力6から明らかなように、構造部品7の領域における異常又は欠陥8を示す。周波数変化の程度は、検出されるパラメータの大きさを示す。この欠陥8の正確な位置は、アンテナ調整をして平行ビームを更に平行に発生させて、又はアンテナを構造体のより近くに置いて検査域のサイズを狭めて、無線ビーム幅を狭めることにより決定できる。置換又は修理すべき部品が小さい場合は、欠陥領域の分解能を高めるために、より高周波数の無線信号が用いられるであろう。これにより、各ナノ粒子を封入する高分子によって規定されるような環境の変化が明らかになる。
【0025】
第2の機構は、粒子運動に共鳴した方法では結合しないが、代わりに元来の扇動無線信号(original instigating radio signal)の調和振動数の発生を引き起こす埋め込み粒子を採用する。そして、マトリクス内粒子間の結合性の変化に関連する高調波発生のレベルを監視する。
【0026】
第2の機構を用いる場合、図4aから図4cに示すようなアクティブ調和センシング方法が通常用いられる。このアクティブ方法は、好ましくは、ナノ複合材の中に進むインタロゲーション信号と、インタロゲーション信号の周波数の2倍の周波数でナノ複合材から戻される信号との間の振幅比のモニタリングを含む。
【0027】
図4aは、基本振動数Fを有するインタロゲーションRF信号(IN)、及び二倍調和振動数2Fを有する戻りRF信号(OUT)の例を示しており、これらの振幅は夫々A1及びA2として示される。振幅比A1/A2が決定且つ追跡される。この比は、粒子間の局所的相互作用、従って高分子材料の正確な状態の概要を述べるので重要である。
【0028】
図4bにおいて、出力6は、選択されたインタロゲーション周波数27.3GHzへの応答を示さない。しかしながら、図4cに示すように、インタロゲーション信号の二倍又は更に高調波であって環境レベルを超える54.6GHzの受信信号は、複数の高分子パネル部7のうちの一つにおける欠陥8の存在を示す。
【0029】
複合マトリクス材料3を製作する際には、効率的で一貫したセンシングを可能とするために、センシング要素4は材料内でほぼ等間隔であることが好ましい。しかしながら、必要であれば、接点又は屈曲部等の潜在的に弱い点で材料3におけるセンシング要素4の密度を高めることができる。
【0030】
一の例において、高分子マトリクスの粒子の一部は、通常、センシング要素として作用するマイクロメータ又はナノメータサイズのポア又は「ホール」に置き換えられる。ホールは、気体又は流体、通常は大気又は水からなる。各ポアは、分極粒子(polarisable particle)として機能する。ポア数は、ポア間の結合を避けるために、好ましくは比較的低い。この配置は、ナノ粒子等の特定粒子の購入費用、及びこれらの粒子をマトリクス材料中に分散させる工程を回避するので有利である。ポアを追加すると、センシングシステムで用いることのできる材料の選択の範囲が広がる。
【0031】
また、異なる種類のセンシング要素4を用いると、どの特定パラメータが検出されるかに影響を及ぼす場合があることも理解すべきである。複数種類の要素を用いることができ、単一の材料3から複数のパラメータ測定が提供される。
【0032】
上記システム及び方法の更なる利点は、構造体で検知された任意の欠陥の修理に無線信号が役立つことである。例えば、マイクロ波信号は、構造体の亀裂等の破損部位を修理するために加熱もできる。亀裂は電気的により抵抗力があるので破損領域に熱が集中される。よって、マイクロ波誘導電流が、オームの法則によって亀裂を加熱する。
【0033】
上記の固有センシングシステム及び方法は、リモートセンシングが望ましい不良環境に特に適している。固有センシングシステム及び方法は、現在のSHMシステム及び方法と比べて好都合なことに非常に低コストで、製造中及び最終用途内で、構造材料に関する情報に迅速にアクセスできる。
【0034】
採用された材料は、通常、摩耗、破損又は温度に関する情報が求められる構成材料である。埋め込み粒子は、材料の応力、歪み、温度、pH、水和、体積ひずみ(volume distortion)、密度揺動、汚染(contamination)、放射(radiation)又は着氷等の、材料の環境変化に関する情報を提供するように選択される。粒子の環境変化は、経時的な材料内のクリープ又は不安定性によっても起こる可能性があり、これは材料の性能を落としてしまう。
【0035】
従って、本発明は、構造体上又は構造体内にセンサーを余分に取り付ける必要がなく、航空宇宙産業向け構造部品等(航空機の翼、パネル、ボルト、ベッセル(vessels)及びシール等)の危険構造部品と、石油・ガス産業向けスマートシールとの連続的又は選択的なデータ収集を可能とする。即ち、これらの構造体は、単に上記の材料から形成される。これは、このような構造部品の形成に複合材料の使用が増えている産業において航空機のメンテナンス及び修理費を減らす、はるかに経済的なSHMシステムを示す。部品の摩耗又は疲労状態は、リアルタイムで収集できる。従って、置換の時間が明らかになり、製造時及び部品の使用時のダウンタイム、管理及び運用コストが減少する。製造工程も細かく監視され、材料内部からのフィードバックを用いて最適化される。
【0036】
パイプラインセンシングの分野では、本発明のシステム及び方法によって、連続的な歪みモニタリングが可能であり、オペレータが漏洩等の問題の発生を防止できるようになる。対照的に、現在の光ファイバー技術は、一旦漏洩が生じた場合にのみ、液体又は気体システムの漏洩の存在を夫々示す「ホットスポット」又は「コールドスポット」を認識する。
【0037】
本発明は、坑内モニタリング等のモニタリングシステムのロバスト性も向上させ、コネクタやワイヤの必要性を取り除く。別々の電源を有する複数のセンサー装置の必要性も取り除かれる。ワイヤレス相互作用を介してセンシング要素に電力が与えられるからである。その他の応用分野は、複合体の品質管理、航空機及び高速ブレーキシステム、人の健康モニタリング、原子力及び化学プラントでの圧力モニタリング、熱シールド及びノーズ・コーンの温度測定、並びに宇宙ステーション、線路及びタンカーの亀裂の検知を含む。
【0038】
本発明を可能にするものは、いくつかの材料の共振である。本発明は、多くの材料に生じるマイクロ波共振を用いる。無線信号に敏感な機器を用いて検出できる電子及び核特性に関連する機構が複数ある。これらは、誘電率測定、反射電力、IRイメージング、スペクトル分析、表面インピーダンス等に対するシステムを含む。固有センシングの次の例は、誘電率測定を用いている。これらのうちの一つ目は、粘度に応答する水晶チップであり、二つ目は、温度及び圧力に応答する多層ナノチューブ(MWNT:Multi-Wall NanoTube)ナノ複合材である。
【0039】
水晶チップは、音響共振器であると認められている。内部では、フォノンがチップの表面間を容易に移動し、音響定常波を作り出す。これらの共振は複数の周波数で起こり、チップの電圧として検知できる。本発明の目的のために重要なのは、チップの電波特性も変化することである。これは、チップの誘電特性を測定することによって決定できる。水晶チップの誘電特性は、図5の曲線「A」に示される。スパイクは、音響共振により生じる。それらは、大抵の絶縁体に特有の誘電曲線に重ね合わされる。センシングは、図5の曲線「B」に示すように、共振を減衰させる砂糖水溶液を添加することにより明示される。図に示すように、粘性減衰の結果、ピークが広がって短くなり、ほぼ見えなくなる。
【0040】
好ましくは、本発明は、高分子に分散された多層カーボンナノチューブ(CNTs)を用いる。CNTsは、電波スペクトルにおいて識別可能な共振を有する。それらは、例えば温度による高分子の変化を検知するために監視される。
【0041】
図6の例に示すように、400MHzで共振が見られる。これらは、エネルギーギャップ(層間エネルギー(inter-wall energy)の差に基づく)又はフォノンに関連する共振(長さに基づく)であり、最良の信号に対して同じ周波数を有する。温度差を測定するためには、高周波数のピークが追跡される。共振周波数の変化を分離しやすいからである。CNT粒子に対しては、高分子共振は広くて短いので、曲線は通常ローレンツ関数(lorentzian function)にフィットし、温度によって約103−104ppm/℃で変化する中心周波数を探すことができる。
【0042】
より高い周波数では、浸透機構に基づくより大きな無線共振が生じ、これにより、リベット、ねじ又はワイヤ等の小さな部品から、或いは数メートルの距離にあるパネルやその他の部品から反射される遠距離場電磁信号を介して、温度又は歪み信号が得られる。この共振信号の大きさは、様々な大きさの多層ナノチューブボタンによって明示される。これらは、曲線「C」が9GHzにおける多層ナノチューブ複合材のマイクロ波共振を表し、曲線「D」がナノチューブを含まない試料を表す図7に示すように、9から10GHz付近において、又はwt%を増加させる際にはより低い周波数において、かなりの損失正接と共振する。
【0043】
圧力は共振周波数を減少させる。なぜならCNTsは接近して移動し、広範な周波数にわたって伝導度を増加させるからである。伝導損失は低周波数において支配的であるので、ピークの左側のレベルが上がり、よって左にシフトされたように見える。他方、ピークの右側のレベルは下がり、よって左にシフトされたように見える。
【0044】
最終的には、図8に示すように、全てのピークが加圧下では左にシフトするようにみえる。この現象は、本願では浸透限界周波数として称される。
【0045】
浸透限界周波数(PTF:percolation threshold frequency)は、二つの別々の工程、即ち、反対方向に向く曲線を夫々有する伝導損失及びエバネセント浸透(evanescent penetration)から生じる転換点である。一般に、誘電損率は、周波数とともに増加し、エバネセント深さ(evanescent depth)、ひいては損失容量(lossy volume)のサイズは、電磁外板厚さ(electro-magnetic skin depth)に応じて周波数とともに減少する。転換点は、両方が釣り合う場合である。この数は、都合のよいことには、歪み、温度又はその他の変化を伝えるものである。
【0046】
この種の共振は、緩和過程ではない。それよりむしろ状態の変化が存在するので、電波は、低周波数で誘電体を、又は高周波数で反射導体を検出する。その結果、追跡可能な無線「カラー」を有する固有センシング材料となる。
【0047】
固有センサーを作成するために、共振粒子は、その用途に共通の材料に投入される。これは、高分子、ゲル、ゾル−ゲル、ペンキ、接着剤又はセラミック材料であってもよい。これらの材料は、異なる部品となる。即ち、ビル、ボート、車、航空機及びその他多くの内部で、リング、チューブ、プレート、ねじ、シート、Oリング、グロメット、ウォッシャー、バルブ及びその他の形になる。
【0048】
例として、環境を検出するためにOリング、パイプ及びグロメットから構成される固有センサーを考える。これらのセンサーは、二次複合材であってもよい。ここで、複合材料は別の金属/セラミック部品と結合する。或いは、センサーは、例えばRFIDタグのアンテナ部品に追加又はアンテナ部品を置換するために、或いはRFIDタグのアンテナと連携してカップリングを強化するために、電気回路又はアンテナの特性を向上させる新規の材料から構成されてもよい。
【0049】
構成部品の形状/サイズも、粒子共振と連動して信号レベルを高めることができる。これは、その部品が粒子共振に一致する自然マイクロ波共振を有する際に起こる。この効果が最も強い好適な物体の一つは、Oリング構造である。適切な導電性のために、ナノ複合Oリングは、Oリングの周囲が電気的に多波長である際に、粒子共振又はPTFで共振できる。
【0050】
図9は、摩耗、化学/熱分解、射出、過剰圧縮又は組み立て中の損傷を明らかにするために、動作中に伝送線及びアンテナを介してOリングの無線共振が監視される、典型的なOリングの構成を示している。
【0051】
過酷な環境での信頼性のために、本発明は、センサーとしての構造体を活用できる。良い一例は、図10に示すように、パイプ内の水の粘度を測定することである。過酷な環境での粘度測定は、従来のセンサーを脆弱にする。なぜなら、高速且つ乱流である流体の流れの中に突き出ているからである。一方、固有センシングシステムは、情報を収集するチューブの内壁と、過酷な環境の外側に位置するアンテナとの組み合わせを用いることによって、よりロバストである。ここから、アンテナは粒子内に音波を発生させ、それが次に溶液によって減衰される。圧電粒子の場合、構造体の重要な側面は、粒子が活性化され、溶液と接触するところでより鋭い共振を所有することである。これは、水晶の全域で電位を増加させ、高分子内部に埋め込まれた粒子に対する内面粒子の低音減衰(low acoustic damping)を増加させる水誘電体の分極効果によるものである。
【0052】
図11は、機体の外板を支持フレームと結合させる表面に固有センシング接着剤を取り入れた複合材航空機の翼を示している。これらの領域は、しばしば、パネル又はその他の耐力構造における歪みのホットスポットとなり、それらの機械的状態に関する情報を伝達する。このため、複合構造の重要な機械的情報は、結合点において利用可能である。
【0053】
本発明を使用できる他の領域は、図12に示すように、地上用途のため、又は地球大気圏に突入しようとする宇宙船の熱シールドに用いるために、異常な高熱にさらされた断熱タイルの完全性の変化を監視する領域である。重要な側面は、無線共振である粒子を、粒子の融点以下になるように熱伝導が温度を制限する領域にのみ組み入れることである。この層から更にベッセル(vessel)の内部に向けて、固有センシングは、タイルの完全性判別、及びそれがまだ所定位置にあるかどうかの指標となる。
【0054】
本発明の他の側面は、環境方法(ambient method)のそれである。環境方法は、送信機を取り除くことによる固有センシングシステムの単純化を意図するものであり、よって無線ライセンスを必要としない。環境無線信号を用いて、固有センシング材料の共振周波数を探し出す。これを行うために、アンテナが二本必要であり、図12に示すように、一方は固有センシング材料に隣接され、他方は固有センシング材料から離される。二つのアンテナの信号を比較すると、固有センシング材料からの信号は、材料の共振周波数において背景電波エネルギーが欠けているが、基準アンテナはそうではないであろう。
【0055】
従って、ミキシング回路(又は類似の回路)を介して収集されたアンテナ信号間の差は、材料の共振周波数を生じさせるであろう。
【符号の説明】
【0056】
1 無線送信機
2 アンテナ
3 材料
4 センシング要素
5 指向性アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシングシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造ヘルスモニタリング(SHM:Structural health monitoring)は、土木、構造及び航空宇宙工学等の産業での関心が高まっている技術分野である。SHMの目的は、構造体で検知された異常の指標を与えるために、センサーを用いて危険構造要素に関するデータを収集し、それによりその信頼性及び安全性を監視することである。現在のSHMシステムは、関心ある任意の構造体の重要ポイントにおいて、一又は複数のセンサーの設置を必要とする。センサーの種類は、検出される関心ある特定のパラメータによって異なる。これにより、このようなシステムは、設置が高価で時間のかかるものになってしまうが、センサーのリアルタイム連続モニタリングは、実際には非現実的である。
【0003】
既知のシステムにおける欠点の一つは、現代の航空機に用いられる複合材料が、現在のSHM技術を時代遅れのものとし、現在の技術が満たすことのできない需要をこの産業内に生じさせてしまうことである。
【0004】
複合材料の使用が増えているその他の産業は、シール及びガスケット等の部品の疲労のモニタリングが重要である石油・ガス産業、トンネル及びパイプライン網等の地下構造物、並びに信頼性及び安全性が最重要の軍用機及び潜水艦技術である。
【0005】
これらの利点は、以下の目的で埋め込み部品、心臓弁及び股関節の監視を必要とする医療分野に適している。即ち、信頼性及び安全性のため、水又は大気汚染をロバストな材料を用いて低コストで追跡できる環境センシングのため、生産工程中に材料、特に複合材料を追跡してプラスチック部品の品質を向上できる高度製造のため、並びに、宇宙空間等の生存に適さない又は人が近づきにくい場所での応用又はタービン等の回転機器を用いる用途のためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術分野は、厳密な検査のためにすぐには近づくことができない構造体を選択的に且つ連続して監視するために、信頼性の高い正確な無線センシングを必要とする。
【0007】
本発明は、上記に概説した課題を克服しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、複数のセンシング要素が埋め込まれたマトリクス構造体を有する材料であって、前記センシング要素が前記材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する材料と、アンテナを含み、ソースRF信号及び戻りRF信号を受信するように配置された受信機であって、前記戻りRF信号を前記材料から受信する受信機と、を備え、前記センシング要素の前記電子分布及び/又は輸送特性の変化により、前記材料の特性の変化が前記戻りRF信号から決定できるように前記ソースRF信号が変化することを特徴とするセンシングシステムが提供される。
【0009】
また本発明は、複数のセンシング要素が埋め込まれたマトリクス構造体を有する材料であって、前記センシング要素が前記材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する材料の特性の変化を検出するセンシング方法であって、ソースRF信号を用いて前記材料を調べる工程と、前記材料から戻りRF信号を受信する工程と、前記センシング要素の前記電子分布及び/又は輸送特性によって引き起こされる前記戻りRF信号の変化から、前記材料の特性の変化を決定する工程と、を備えることを特徴とするセンシング方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るシステムの一例を示す模式図である。
【図2】本発明に係るシステムの更なる例を示す模式図である。
【図3】図3aから図3cは、本発明に係るシステムを採用する際に得られる出力の例を示す図である。
【図4】図4aから図4cは、本発明に係るシステムを採用する際に得られる出力の更なる例を示す図である。
【図5】粘性溶液と接している大気中の水晶チップの共振を示すグラフである。
【図6】カーボンナノチューブ(CNT)高分子複合体のマイクロ波共振を表すグラフである。
【図7】ナノチューブを含まない試料に対する、9GHzにおける多層ナノチューブ複合材のマイクロ波共振を表すグラフである。
【図8】圧力の低下(左から右)におけるGHz共振を表すグラフである。
【図9】接触圧及びガス/静水圧に応じるOリング固有センサー形状を示す図である。
【図10】音響的に共振する粒子が壁全体に組み込まれているけれども、内面上の粒子のみが溶液粘度に関する減衰を有し且つ振動するのに好都合な条件にある、複合材料パイプ固有センサー形状を示す図である。
【図11】機体の外板を支持フレームと結合させる表面に固有センシング接着剤を取り入れており、剥離と構造力がしばしば最高となる剥離点での歪みとについてフィードバックさせる複合材航空機の翼を示す図である。
【図12】ヒートタイルの整合性のモニタリングに用いた本発明を示す図である。
【図13】環境測定アプローチに基づく固有センシングシステムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、アンテナ2を有する無線送受信機1の模式図が示される。材料3の一部、例えば高分子材料は、複数のセンシング要素4が内部に分散してマトリクス材料3に囲まれるように埋め込まれたマトリクス構造体を有する。センシング要素4は、材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する。この性質は、結果的には、マトリクス材料3を調べるためにアンテナ2を介して送受信機1から送信される無線周波数(RF)信号(例えば、マイクロ波信号)の交互的変動を生じさせ、材料の変化を戻り信号から決定できる。このように、センシング要素4によって、材料の特性の変化における非侵襲的固有センシングが可能となる。
【0012】
無線送受信機1は、雑音を減じるためにパルス、周波数、位相、又はデジタル的に変調されるような変調無線周波数信号を発生するように構成され、リアルタイムにマトリクス材料3から形成される構造体からの戻り信号を検出するように構成される。戻り無線信号は、通常、散乱、反射、又は送信装置(set-up)により収集される。送受信機1は、センシング要素の環境に関連する電磁スペクトルのGHz域における重要なスペクトル特性を追跡するように設計される。その結果、戻りGHzスペクトル及びバルク材料3の物理的及び化学的特性に関する情報の遠隔収集における変化となる。
【0013】
アンテナ2は、無線周波数信号を放射し且つリアルタイムに高信号/雑音比で反射信号を収集するように配置される。使用時には、アンテナ2は、RF信号を材料3の広又は狭域に広がる標的部位に加える。これは、例えば航空機の構造部品において特に有利である。ここでは、センシングは、シール又は接合個所等の特定の小領域、或いは全翼等の大構造体に集中する。アンテナは、レーダベースシステムのように機能して波長に応じたGHz放射の狭ビームを発生するように配置することができる。この性質は、好ましくは、パラボラ又はフェーズアレイアンテナ構造体で達成される。図2はセンシングシステムの更なる例を示している。ここでアンテナは双方向アンテナ5である。
【0014】
バルク材料を測定する別の方法は、差動比測定に基づくものである。本発明の本実施例は、信号源及び受信機の合計が2よりも多いことを必要とするであろう。本実施例の利点は、シート又はパネル等の、比較的大きな試料内の特定位置が解像(resolve)できることである。この情報により、バルク材料特性の画像を形成できるので、受信信号を結合させることによってある特定位置からの重要な物理/化学情報を得ることができる。
【0015】
好適な実施例では、センシング要素4が支持されている材料は、エラストマー又はエポキシマトリクス等の高分子マトリクスであり、従って、センシング要素4を追加すると、複合高分子マトリクス材料3を形成できる。この材料3は、GHz域における電磁信号の効率的な送信を支援できるように、絶縁であることが理想的である。埋め込み要素4はセンシングの目的に用いられ、必要であれば、更なる要素を追加して追加センシング機能を形成することができる。
【0016】
当該技術の現状のシステム及び方法によれば、材料に向けられた無線信号は、材料の機械的、電気的及び化学的状態に関する情報を引き出すことができない。しかしながら、電子分布及び/又は輸送特性が局所環境によって変動された追加センシング要素は、このモニタリング機能を可能にできる。センシング要素4は、材料3の誘電特性又は磁性等の特性を変動させるように配列される。
【0017】
センシング要素4は、高調波発生(harmonic generation)及び周波数倍増(frequency doubling)を引き起こす高品質な共振挙動又は非線形的特性を示す任意の粒子からなる。この目的に用いることができる粒子は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、ゴールドナノリング、磁気粒子、及びその他多くを含む。異常な電波特性を引き起こす基本的機構は、元来は、音響性、誘電性、圧電性、磁歪性、導電性又は半導性であってよい。その結果、材料の誘電特性又は磁性等の特性が変化し、それが次に戻り電波を特定の方法で変動させる。粒子の種類は、歪み、温度、水和又はpH等の特定の環境変化に応じるように選択される。より厳しい環境において信号レベルを高めるために、センシング粒子を、電磁共振を増加させる低損失誘電体の第2粒子に吸着させることもできる。
【0018】
センシング要素4は粒子からなり、その共振Qファクタは、材料3の電気的及び/又は磁気的性質の変化によって変化してよい。例えば、材料3の機械的変化は、電気抵抗の増加を引き起こすことができ、それが誘電損失を増加させ、材料3のQファクタを減少させる。
【0019】
これらの特性を手に入れ、有効に展開させるためには、電波を粒子に結び付ける機構が必要とされる。これを達成するために、複合マトリクス材料3と送信機とアンテナ装置1及び2との間で電波エネルギーをやりとりさせる二の機構のうちの一の機構又は両機構が同時に採用される。
【0020】
第1カップリング機構は、粒子のサイズによって規定されたコヒーレント寸法内の磁気又は電気双極子の存在に加えて、高分子を介した粒子の均一分散を用いる。マトリクス粒子は、例えば磁歪、逆圧電性、磁気直接発生(magnetic direct generation)又は二本のワイヤ間で起こりうる電子結合を介してセンシング粒子に結合される。カップリング自体は、作用センサー材料(working sensor material)を構成するには十分ではないが、その他の誘電複合材料に関連するセンシング複合材料の挙動における一つの差は、高品質な共振がこの材料から反射される無線信号に現れることである。従って、マトリクス材料をセンサーとして用いる際には、その材料の電気的及び/又は機械的特性等の特性が、標的位置で均一に粒子の共振周波数を変動させるので、埋め込み粒子は同様の分だけ周波数を変化させ、従ってネット信号はコヒーレントとなる。
【0021】
この第1の機構を監視する一つの方法は、図3a及び図3bに示すように、パッシブ共振センシング方法によるものである。例えば高分子であるマトリクス材料3の共振周波数が、時間の関数として追跡される。図3aは、戻りRF信号周波数の追跡を可能とする通常のシステムの結果を示す。この方法において、戻り信号の周波数スペクトルの変化は、材料の共振周波数の変化を示す。
【0022】
好ましくは、センシングシステムは、材料の機械的、電気的及び化学的状態のうちの少なくとも一つを決定するように配置された回路網を更に備える。従って、複合材料から形成された構造体の異常又は欠陥の位置及び程度を決定する正確で確実な方法が必要とされる。
【0023】
第1の機構を用いる場合、図3aから図3cに示すようなパッシブ共振センシング方法が通常用いられる。図3bを参照すると、周波数例27.3GHzのシステム出力6は、材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する、例えばナノ材料であるセンシング要素が埋め込まれた材料から構成された構造体の高分子パネル部7から反射されたRF信号に対応する。本実施例において、周波数27.3GHzは、この複合材料の反射信号の周波数スペクトルにおいて所定の期待されるくぼみ部であるが、これは調べられた各パネル部7の各部から反射され、何の欠陥もないことを示している。
【0024】
図3cを参照すると、システム出力6は、34GHzである周波数出力6から明らかなように、構造部品7の領域における異常又は欠陥8を示す。周波数変化の程度は、検出されるパラメータの大きさを示す。この欠陥8の正確な位置は、アンテナ調整をして平行ビームを更に平行に発生させて、又はアンテナを構造体のより近くに置いて検査域のサイズを狭めて、無線ビーム幅を狭めることにより決定できる。置換又は修理すべき部品が小さい場合は、欠陥領域の分解能を高めるために、より高周波数の無線信号が用いられるであろう。これにより、各ナノ粒子を封入する高分子によって規定されるような環境の変化が明らかになる。
【0025】
第2の機構は、粒子運動に共鳴した方法では結合しないが、代わりに元来の扇動無線信号(original instigating radio signal)の調和振動数の発生を引き起こす埋め込み粒子を採用する。そして、マトリクス内粒子間の結合性の変化に関連する高調波発生のレベルを監視する。
【0026】
第2の機構を用いる場合、図4aから図4cに示すようなアクティブ調和センシング方法が通常用いられる。このアクティブ方法は、好ましくは、ナノ複合材の中に進むインタロゲーション信号と、インタロゲーション信号の周波数の2倍の周波数でナノ複合材から戻される信号との間の振幅比のモニタリングを含む。
【0027】
図4aは、基本振動数Fを有するインタロゲーションRF信号(IN)、及び二倍調和振動数2Fを有する戻りRF信号(OUT)の例を示しており、これらの振幅は夫々A1及びA2として示される。振幅比A1/A2が決定且つ追跡される。この比は、粒子間の局所的相互作用、従って高分子材料の正確な状態の概要を述べるので重要である。
【0028】
図4bにおいて、出力6は、選択されたインタロゲーション周波数27.3GHzへの応答を示さない。しかしながら、図4cに示すように、インタロゲーション信号の二倍又は更に高調波であって環境レベルを超える54.6GHzの受信信号は、複数の高分子パネル部7のうちの一つにおける欠陥8の存在を示す。
【0029】
複合マトリクス材料3を製作する際には、効率的で一貫したセンシングを可能とするために、センシング要素4は材料内でほぼ等間隔であることが好ましい。しかしながら、必要であれば、接点又は屈曲部等の潜在的に弱い点で材料3におけるセンシング要素4の密度を高めることができる。
【0030】
一の例において、高分子マトリクスの粒子の一部は、通常、センシング要素として作用するマイクロメータ又はナノメータサイズのポア又は「ホール」に置き換えられる。ホールは、気体又は流体、通常は大気又は水からなる。各ポアは、分極粒子(polarisable particle)として機能する。ポア数は、ポア間の結合を避けるために、好ましくは比較的低い。この配置は、ナノ粒子等の特定粒子の購入費用、及びこれらの粒子をマトリクス材料中に分散させる工程を回避するので有利である。ポアを追加すると、センシングシステムで用いることのできる材料の選択の範囲が広がる。
【0031】
また、異なる種類のセンシング要素4を用いると、どの特定パラメータが検出されるかに影響を及ぼす場合があることも理解すべきである。複数種類の要素を用いることができ、単一の材料3から複数のパラメータ測定が提供される。
【0032】
上記システム及び方法の更なる利点は、構造体で検知された任意の欠陥の修理に無線信号が役立つことである。例えば、マイクロ波信号は、構造体の亀裂等の破損部位を修理するために加熱もできる。亀裂は電気的により抵抗力があるので破損領域に熱が集中される。よって、マイクロ波誘導電流が、オームの法則によって亀裂を加熱する。
【0033】
上記の固有センシングシステム及び方法は、リモートセンシングが望ましい不良環境に特に適している。固有センシングシステム及び方法は、現在のSHMシステム及び方法と比べて好都合なことに非常に低コストで、製造中及び最終用途内で、構造材料に関する情報に迅速にアクセスできる。
【0034】
採用された材料は、通常、摩耗、破損又は温度に関する情報が求められる構成材料である。埋め込み粒子は、材料の応力、歪み、温度、pH、水和、体積ひずみ(volume distortion)、密度揺動、汚染(contamination)、放射(radiation)又は着氷等の、材料の環境変化に関する情報を提供するように選択される。粒子の環境変化は、経時的な材料内のクリープ又は不安定性によっても起こる可能性があり、これは材料の性能を落としてしまう。
【0035】
従って、本発明は、構造体上又は構造体内にセンサーを余分に取り付ける必要がなく、航空宇宙産業向け構造部品等(航空機の翼、パネル、ボルト、ベッセル(vessels)及びシール等)の危険構造部品と、石油・ガス産業向けスマートシールとの連続的又は選択的なデータ収集を可能とする。即ち、これらの構造体は、単に上記の材料から形成される。これは、このような構造部品の形成に複合材料の使用が増えている産業において航空機のメンテナンス及び修理費を減らす、はるかに経済的なSHMシステムを示す。部品の摩耗又は疲労状態は、リアルタイムで収集できる。従って、置換の時間が明らかになり、製造時及び部品の使用時のダウンタイム、管理及び運用コストが減少する。製造工程も細かく監視され、材料内部からのフィードバックを用いて最適化される。
【0036】
パイプラインセンシングの分野では、本発明のシステム及び方法によって、連続的な歪みモニタリングが可能であり、オペレータが漏洩等の問題の発生を防止できるようになる。対照的に、現在の光ファイバー技術は、一旦漏洩が生じた場合にのみ、液体又は気体システムの漏洩の存在を夫々示す「ホットスポット」又は「コールドスポット」を認識する。
【0037】
本発明は、坑内モニタリング等のモニタリングシステムのロバスト性も向上させ、コネクタやワイヤの必要性を取り除く。別々の電源を有する複数のセンサー装置の必要性も取り除かれる。ワイヤレス相互作用を介してセンシング要素に電力が与えられるからである。その他の応用分野は、複合体の品質管理、航空機及び高速ブレーキシステム、人の健康モニタリング、原子力及び化学プラントでの圧力モニタリング、熱シールド及びノーズ・コーンの温度測定、並びに宇宙ステーション、線路及びタンカーの亀裂の検知を含む。
【0038】
本発明を可能にするものは、いくつかの材料の共振である。本発明は、多くの材料に生じるマイクロ波共振を用いる。無線信号に敏感な機器を用いて検出できる電子及び核特性に関連する機構が複数ある。これらは、誘電率測定、反射電力、IRイメージング、スペクトル分析、表面インピーダンス等に対するシステムを含む。固有センシングの次の例は、誘電率測定を用いている。これらのうちの一つ目は、粘度に応答する水晶チップであり、二つ目は、温度及び圧力に応答する多層ナノチューブ(MWNT:Multi-Wall NanoTube)ナノ複合材である。
【0039】
水晶チップは、音響共振器であると認められている。内部では、フォノンがチップの表面間を容易に移動し、音響定常波を作り出す。これらの共振は複数の周波数で起こり、チップの電圧として検知できる。本発明の目的のために重要なのは、チップの電波特性も変化することである。これは、チップの誘電特性を測定することによって決定できる。水晶チップの誘電特性は、図5の曲線「A」に示される。スパイクは、音響共振により生じる。それらは、大抵の絶縁体に特有の誘電曲線に重ね合わされる。センシングは、図5の曲線「B」に示すように、共振を減衰させる砂糖水溶液を添加することにより明示される。図に示すように、粘性減衰の結果、ピークが広がって短くなり、ほぼ見えなくなる。
【0040】
好ましくは、本発明は、高分子に分散された多層カーボンナノチューブ(CNTs)を用いる。CNTsは、電波スペクトルにおいて識別可能な共振を有する。それらは、例えば温度による高分子の変化を検知するために監視される。
【0041】
図6の例に示すように、400MHzで共振が見られる。これらは、エネルギーギャップ(層間エネルギー(inter-wall energy)の差に基づく)又はフォノンに関連する共振(長さに基づく)であり、最良の信号に対して同じ周波数を有する。温度差を測定するためには、高周波数のピークが追跡される。共振周波数の変化を分離しやすいからである。CNT粒子に対しては、高分子共振は広くて短いので、曲線は通常ローレンツ関数(lorentzian function)にフィットし、温度によって約103−104ppm/℃で変化する中心周波数を探すことができる。
【0042】
より高い周波数では、浸透機構に基づくより大きな無線共振が生じ、これにより、リベット、ねじ又はワイヤ等の小さな部品から、或いは数メートルの距離にあるパネルやその他の部品から反射される遠距離場電磁信号を介して、温度又は歪み信号が得られる。この共振信号の大きさは、様々な大きさの多層ナノチューブボタンによって明示される。これらは、曲線「C」が9GHzにおける多層ナノチューブ複合材のマイクロ波共振を表し、曲線「D」がナノチューブを含まない試料を表す図7に示すように、9から10GHz付近において、又はwt%を増加させる際にはより低い周波数において、かなりの損失正接と共振する。
【0043】
圧力は共振周波数を減少させる。なぜならCNTsは接近して移動し、広範な周波数にわたって伝導度を増加させるからである。伝導損失は低周波数において支配的であるので、ピークの左側のレベルが上がり、よって左にシフトされたように見える。他方、ピークの右側のレベルは下がり、よって左にシフトされたように見える。
【0044】
最終的には、図8に示すように、全てのピークが加圧下では左にシフトするようにみえる。この現象は、本願では浸透限界周波数として称される。
【0045】
浸透限界周波数(PTF:percolation threshold frequency)は、二つの別々の工程、即ち、反対方向に向く曲線を夫々有する伝導損失及びエバネセント浸透(evanescent penetration)から生じる転換点である。一般に、誘電損率は、周波数とともに増加し、エバネセント深さ(evanescent depth)、ひいては損失容量(lossy volume)のサイズは、電磁外板厚さ(electro-magnetic skin depth)に応じて周波数とともに減少する。転換点は、両方が釣り合う場合である。この数は、都合のよいことには、歪み、温度又はその他の変化を伝えるものである。
【0046】
この種の共振は、緩和過程ではない。それよりむしろ状態の変化が存在するので、電波は、低周波数で誘電体を、又は高周波数で反射導体を検出する。その結果、追跡可能な無線「カラー」を有する固有センシング材料となる。
【0047】
固有センサーを作成するために、共振粒子は、その用途に共通の材料に投入される。これは、高分子、ゲル、ゾル−ゲル、ペンキ、接着剤又はセラミック材料であってもよい。これらの材料は、異なる部品となる。即ち、ビル、ボート、車、航空機及びその他多くの内部で、リング、チューブ、プレート、ねじ、シート、Oリング、グロメット、ウォッシャー、バルブ及びその他の形になる。
【0048】
例として、環境を検出するためにOリング、パイプ及びグロメットから構成される固有センサーを考える。これらのセンサーは、二次複合材であってもよい。ここで、複合材料は別の金属/セラミック部品と結合する。或いは、センサーは、例えばRFIDタグのアンテナ部品に追加又はアンテナ部品を置換するために、或いはRFIDタグのアンテナと連携してカップリングを強化するために、電気回路又はアンテナの特性を向上させる新規の材料から構成されてもよい。
【0049】
構成部品の形状/サイズも、粒子共振と連動して信号レベルを高めることができる。これは、その部品が粒子共振に一致する自然マイクロ波共振を有する際に起こる。この効果が最も強い好適な物体の一つは、Oリング構造である。適切な導電性のために、ナノ複合Oリングは、Oリングの周囲が電気的に多波長である際に、粒子共振又はPTFで共振できる。
【0050】
図9は、摩耗、化学/熱分解、射出、過剰圧縮又は組み立て中の損傷を明らかにするために、動作中に伝送線及びアンテナを介してOリングの無線共振が監視される、典型的なOリングの構成を示している。
【0051】
過酷な環境での信頼性のために、本発明は、センサーとしての構造体を活用できる。良い一例は、図10に示すように、パイプ内の水の粘度を測定することである。過酷な環境での粘度測定は、従来のセンサーを脆弱にする。なぜなら、高速且つ乱流である流体の流れの中に突き出ているからである。一方、固有センシングシステムは、情報を収集するチューブの内壁と、過酷な環境の外側に位置するアンテナとの組み合わせを用いることによって、よりロバストである。ここから、アンテナは粒子内に音波を発生させ、それが次に溶液によって減衰される。圧電粒子の場合、構造体の重要な側面は、粒子が活性化され、溶液と接触するところでより鋭い共振を所有することである。これは、水晶の全域で電位を増加させ、高分子内部に埋め込まれた粒子に対する内面粒子の低音減衰(low acoustic damping)を増加させる水誘電体の分極効果によるものである。
【0052】
図11は、機体の外板を支持フレームと結合させる表面に固有センシング接着剤を取り入れた複合材航空機の翼を示している。これらの領域は、しばしば、パネル又はその他の耐力構造における歪みのホットスポットとなり、それらの機械的状態に関する情報を伝達する。このため、複合構造の重要な機械的情報は、結合点において利用可能である。
【0053】
本発明を使用できる他の領域は、図12に示すように、地上用途のため、又は地球大気圏に突入しようとする宇宙船の熱シールドに用いるために、異常な高熱にさらされた断熱タイルの完全性の変化を監視する領域である。重要な側面は、無線共振である粒子を、粒子の融点以下になるように熱伝導が温度を制限する領域にのみ組み入れることである。この層から更にベッセル(vessel)の内部に向けて、固有センシングは、タイルの完全性判別、及びそれがまだ所定位置にあるかどうかの指標となる。
【0054】
本発明の他の側面は、環境方法(ambient method)のそれである。環境方法は、送信機を取り除くことによる固有センシングシステムの単純化を意図するものであり、よって無線ライセンスを必要としない。環境無線信号を用いて、固有センシング材料の共振周波数を探し出す。これを行うために、アンテナが二本必要であり、図12に示すように、一方は固有センシング材料に隣接され、他方は固有センシング材料から離される。二つのアンテナの信号を比較すると、固有センシング材料からの信号は、材料の共振周波数において背景電波エネルギーが欠けているが、基準アンテナはそうではないであろう。
【0055】
従って、ミキシング回路(又は類似の回路)を介して収集されたアンテナ信号間の差は、材料の共振周波数を生じさせるであろう。
【符号の説明】
【0056】
1 無線送信機
2 アンテナ
3 材料
4 センシング要素
5 指向性アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンシング要素が埋め込まれたマトリクス構造体を有する材料であって、前記センシング要素が前記材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する材料と、
アンテナを含み、ソースRF信号及び戻りRF信号を受信するように配置された受信機であって、前記戻りRF信号を前記材料から受信する受信機と、
を備え、
前記センシング要素の前記電子分布及び/又は輸送特性の変化により、前記材料の特性の変化が前記戻りRF信号から決定できるように前記ソースRF信号が変化する
ことを特徴とするセンシングシステム。
【請求項2】
前記センシング要素は、前記材料の誘電特性を変動させるように配列されることを特徴とする請求項1に記載のセンシングシステム。
【請求項3】
前記センシング要素は、前記材料の磁性を変動させるように配列されることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンシングシステム。
【請求項4】
前記センシング要素は、少なくとも単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、ゴールドナノリング、磁気ナノ粒子、ナノワイヤ及び球状ナノ粒子のうちの少なくとも一つからなるナノ粒子を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項5】
前記センシング要素は、ポアを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項6】
前記センシング要素は粒子からなり、その共振周波数は、前記材料の電気的及び/又は磁気的性質によって変化することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項7】
前記センシング要素は、前記戻りRF信号で共振を引き起こすように、磁歪、逆圧電性、磁気直接発生又は電子結合を介して前記ソースRF信号の変化を引き起こす粒子からなることを特徴とする請求項6に記載のセンシングシステム。
【請求項8】
前記センシング要素は粒子からなり、その共振Qファクタは、前記材料の電気的及び/又は磁気的性質の変化によって変化することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項9】
前記センシング要素は、前記ソースRF信号との相互作用時に、前記戻りRF信号で前記ソースRF信号の調和振動数を発生させるように配列されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項10】
前記材料は、高分子からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項11】
前記材料は、ナノ複合材料からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項12】
前記材料は、エラストマー又はエポキシマトリクスからなることを特徴とする請求項11に記載のセンシングシステム。
【請求項13】
前記センシング要素は、前記材料内でほぼ等間隔であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項14】
前記材料の特性の変化は環境変化に応じており、該環境変化は、前記材料の応力、歪み、温度、pH、水和、体積ひずみ、密度揺動、汚染、放射又は着氷の変化であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項15】
前記送受信機によって発生する無線信号は、パルス、周波数、位相又はデジタル的に変調されることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項16】
前記センシングシステムは、少なくとも一の送信機を更に備え、該少なくとも一の送信機は、ソースRF信号を送信するように配置されることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項17】
前記センシングシステムは、前記センシング要素間の局所的相互作用を監視するために、前記送信機によって発生する前記ソースRF信号の周波数の2倍の周波数における前記戻りRF信号間の振幅比を決定するように配置されることを特徴とする請求項16に記載のセンシングシステム。
【請求項18】
前記ソースRF信号は、前記材料の特性の変化が決定される前記材料の部位を加熱するように配置されることを特徴とする請求項16に記載のセンシングシステム。
【請求項19】
前記アンテナは、指向性アンテナからなることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項20】
前記アンテナは、パラボラ又はフェーズアレイアンテナ構造体のうちの一つを備えることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項21】
前記アンテナは、前記ソースRF信号が前記材料からなる構造体の所定の標的部位に向くように配置されることを特徴とする請求項16から19のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項22】
前記センシングシステムは、前記材料の前記機械的、電気的及び化学的状態のうちの少なくとも一つを決定するように配置された回路網を更に備えることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項23】
前記センシングシステムは、時間関数として前記材料の共振周波数を決定するように配置されることを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項24】
前記センシングシステムは、前記材料に関する空間的情報を得るために、前記少なくとも一のソースRF信号からの前記戻りRF信号を結合するように配置されることを特徴とする請求項16から23のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項25】
複数のセンシング要素が埋め込まれたマトリクス構造体を有する材料であって、前記センシング要素が前記材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する材料の特性の変化を検出するセンシング方法であって、
ソースRF信号を用いて前記材料を調べる工程と、
前記材料から戻りRF信号を受信する工程と、
前記センシング要素の前記電子分布及び/又は輸送特性によって引き起こされる前記戻りRF信号の変化から、前記材料の特性の変化を決定する工程と、
を備えることを特徴とするセンシング方法。
【請求項26】
ソースRF信号を発生させる工程を更に備えることを特徴とする請求項25に記載のセンシング方法。
【請求項1】
複数のセンシング要素が埋め込まれたマトリクス構造体を有する材料であって、前記センシング要素が前記材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する材料と、
アンテナを含み、ソースRF信号及び戻りRF信号を受信するように配置された受信機であって、前記戻りRF信号を前記材料から受信する受信機と、
を備え、
前記センシング要素の前記電子分布及び/又は輸送特性の変化により、前記材料の特性の変化が前記戻りRF信号から決定できるように前記ソースRF信号が変化する
ことを特徴とするセンシングシステム。
【請求項2】
前記センシング要素は、前記材料の誘電特性を変動させるように配列されることを特徴とする請求項1に記載のセンシングシステム。
【請求項3】
前記センシング要素は、前記材料の磁性を変動させるように配列されることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンシングシステム。
【請求項4】
前記センシング要素は、少なくとも単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、ゴールドナノリング、磁気ナノ粒子、ナノワイヤ及び球状ナノ粒子のうちの少なくとも一つからなるナノ粒子を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項5】
前記センシング要素は、ポアを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項6】
前記センシング要素は粒子からなり、その共振周波数は、前記材料の電気的及び/又は磁気的性質によって変化することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項7】
前記センシング要素は、前記戻りRF信号で共振を引き起こすように、磁歪、逆圧電性、磁気直接発生又は電子結合を介して前記ソースRF信号の変化を引き起こす粒子からなることを特徴とする請求項6に記載のセンシングシステム。
【請求項8】
前記センシング要素は粒子からなり、その共振Qファクタは、前記材料の電気的及び/又は磁気的性質の変化によって変化することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項9】
前記センシング要素は、前記ソースRF信号との相互作用時に、前記戻りRF信号で前記ソースRF信号の調和振動数を発生させるように配列されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項10】
前記材料は、高分子からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項11】
前記材料は、ナノ複合材料からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項12】
前記材料は、エラストマー又はエポキシマトリクスからなることを特徴とする請求項11に記載のセンシングシステム。
【請求項13】
前記センシング要素は、前記材料内でほぼ等間隔であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項14】
前記材料の特性の変化は環境変化に応じており、該環境変化は、前記材料の応力、歪み、温度、pH、水和、体積ひずみ、密度揺動、汚染、放射又は着氷の変化であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項15】
前記送受信機によって発生する無線信号は、パルス、周波数、位相又はデジタル的に変調されることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項16】
前記センシングシステムは、少なくとも一の送信機を更に備え、該少なくとも一の送信機は、ソースRF信号を送信するように配置されることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項17】
前記センシングシステムは、前記センシング要素間の局所的相互作用を監視するために、前記送信機によって発生する前記ソースRF信号の周波数の2倍の周波数における前記戻りRF信号間の振幅比を決定するように配置されることを特徴とする請求項16に記載のセンシングシステム。
【請求項18】
前記ソースRF信号は、前記材料の特性の変化が決定される前記材料の部位を加熱するように配置されることを特徴とする請求項16に記載のセンシングシステム。
【請求項19】
前記アンテナは、指向性アンテナからなることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項20】
前記アンテナは、パラボラ又はフェーズアレイアンテナ構造体のうちの一つを備えることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項21】
前記アンテナは、前記ソースRF信号が前記材料からなる構造体の所定の標的部位に向くように配置されることを特徴とする請求項16から19のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項22】
前記センシングシステムは、前記材料の前記機械的、電気的及び化学的状態のうちの少なくとも一つを決定するように配置された回路網を更に備えることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項23】
前記センシングシステムは、時間関数として前記材料の共振周波数を決定するように配置されることを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項24】
前記センシングシステムは、前記材料に関する空間的情報を得るために、前記少なくとも一のソースRF信号からの前記戻りRF信号を結合するように配置されることを特徴とする請求項16から23のいずれか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項25】
複数のセンシング要素が埋め込まれたマトリクス構造体を有する材料であって、前記センシング要素が前記材料の物理的又は化学的性質の変化に応じて変化する電子分布及び/又は輸送特性を有する材料の特性の変化を検出するセンシング方法であって、
ソースRF信号を用いて前記材料を調べる工程と、
前記材料から戻りRF信号を受信する工程と、
前記センシング要素の前記電子分布及び/又は輸送特性によって引き起こされる前記戻りRF信号の変化から、前記材料の特性の変化を決定する工程と、
を備えることを特徴とするセンシング方法。
【請求項26】
ソースRF信号を発生させる工程を更に備えることを特徴とする請求項25に記載のセンシング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−505621(P2011−505621A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535453(P2010−535453)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003968
【国際公開番号】WO2009/068886
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(510127930)パラマタ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PARAMATA LIMITED
【住所又は居所原語表記】Merlin Place, Milton Road, Cambridge CB4 0PD United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003968
【国際公開番号】WO2009/068886
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(510127930)パラマタ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PARAMATA LIMITED
【住所又は居所原語表記】Merlin Place, Milton Road, Cambridge CB4 0PD United Kingdom
【Fターム(参考)】
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