説明

センシング回路、光検出回路、表示装置および電子機器

【課題】センシング素子の経時劣化による検出値のずれを、センシング特性が等しいセンシング素子を2つ使用して正確に校正する。
【解決手段】光電変換特性が等しいa-Si TFT1とa-Si TFT2を使用する。a-Si TFT1の入射光量をフィルタ3で減らし、a-Si TFT1の光劣化の進行を遅らせる。a-Si TFT1,2のリーク電流の測定値i´,i´と、メモリに記憶している積算照度−光劣化率プロファイルデータとに基づいて、a-Si TFT2の光劣化率dまたはa-Si TFT1の光劣化率dを特定し、特定した光劣化率dまたはdを用いて環境光の照度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照度や温度等を検出可能なセンシング回路、光検出回路、これを用いた表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子としてアモルファスシリコン薄膜トランジスタ等を使用した光センサでは、検出される照度と真の照度とのずれが時間の経過に応じて徐々に大きくなる。これは積算照度が増えるほど導電率が低下するという光劣化現象が起きるからである。このような光劣化による検出照度のずれをなくすため、例えば、特許文献1には、同じ光電変換素子を2つ使用することが記載されている。
【0003】
具体的に説明すると、特許文献1には、アクティブマトリックス駆動型の液晶ディスプレイ等に用いられる薄膜トランジスタとほぼ同じ構造を有し、かつ特性の等しい光電変換素子1,2を直列に接続したラインイメージセンサが開示されている(同文献1の段落0045,図2)。光電変換素子1には、光源から放射され、原稿104の表面で反射された照射光100aが入射する。また、光電変換素子2には、同じ光源から放射され、反射面106で反射された照射光100bが入射する(同文献1の図1(B),段落0041)。同文献1の図2に示す等価回路において、電源の電位をVd、光電変換素子1の電気抵抗をRa、光電変換素子2の電気抵抗をRbとすると、ラインイメージセンサの出力である画像読取信号の電位Voは、下式のとおりである(同文献1の段落0048)。
Vo=(Vd)/{1+(Rb/Ra)}
【0004】
ここで、光電変換素子1に入射する照射光100aと、光電変換素子2に入射する照射光100bとは、同じ光源から放射されている。よって、光源の放射強度が変動しても画像読取信号の電位Voはこれに依存せず、画像情報を担った原稿表面の濃度のみに依存する(同文献1の段落0049)。また、一般に使用される原稿は、反射率の高い白色の領域が原稿全体の面積の95%程度を占める。よって、白色の原稿を読み取った場合に光電変換素子1に入射する照射光100aと同じ照度の照射光100bを光電変換素子2に入射すべく、反射率の高い反射面106を設けること等により、光電変換素子1と光電変換素子2の光劣化の程度を概略等しくしている(同文献1の段落0053,段落0054,段落0056)。このため、上記の式においてRb/Ra(光電変換素子1,2の電気抵抗の比)は、原稿表面の濃度が同じであれば常に一定の値をとる。したがって、光劣化によって光電変換素子1,2の電気伝導率が低下しても、光電変換素子1,2の電気抵抗の比は変化せず、画像読取信号の電位Voには光劣化による影響が現れない(同文献1の段落0028,段落0051)。
【特許文献1】特開平6−350803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術を用いて光劣化による検出照度のずれをなくすためには、光電変換素子1と光電変換素子2の光劣化の程度を概略等しく保つ必要がある。この点について、特許文献1には、一般に使用される原稿では、全体の面積の95%程度が反射率の高い白色であるので、白色をターゲットにして光電変換素子2に入射させる照射光100bの照度を設定すればよい旨が記載されている。しかしながら、例えば、カラー写真画像を読み取る場合のように、読み取り対象となる原稿において白色の占める割合が10%にも満たない場合は多々存在する。したがって、光電変換素子1の積算照度と、光電変換素子2の積算照度との差は、徐々に大きくなり、やがては無視できない大きさになる。つまり、光電変換素子1と光電変換素子2との光劣化の程度を概略等しく保つことができなくなり、正確なセンサ出力を得られなくなる。
【0006】
また、例えば、環境光の照度(周囲の明るさ)を検出する光センサの場合、ラインイメージセンサのように原稿画像の読み取りを行なう必要がない。このような光センサにおいて、光電変換特性が等しい2つの光電変換素子に同じ環境光を入射しても、光劣化による検出照度のずれを校正することはできない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、センシング素子の経時劣化による検出値のずれを、センシング特性が等しいセンシング素子を2つ使用して正確に校正可能なセンシング回路、光検出回路、これを用いた表示装置および電子機器を提供することにある。また、イメージセンサ以外のセンサにおいても、センシング素子の経時劣化による検出値のずれを、センシング特性が等しいセンシング素子を2つ使用して校正可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係るセンシング回路は、測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの第1出力信号を出力する第1センシング素子と、前記第1センシング素子と同じ入出力特性を有し、測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの第2出力信号を出力する第2センシング素子と、前記第2センシング素子に加わる前記エネルギーの大きさを所定の低減率で減らす低減手段と、前記第1センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第1劣化率と、前記第1センシング素子に加わる前記エネルギーの大きさと時間との積である積算値との関係を劣化特性として記憶する記憶手段と、前記所定の低減率を考慮して前記劣化特性を参照することにより、前記第1劣化率と前記第2センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第2劣化率との組を複数特定し、特定した複数の前記第1劣化率と前記第2劣化率の組の各々と、前記第1出力信号および前記第2出力信号と、前記所定の低減率とに基づいて、前記第1センシング素子に加わる前記エネルギーの大きさと前記低減手段に入力する前記エネルギーの大きさとを演算し、演算結果に基づいて、両者の差分が最小となる前記第1劣化率と前記第2劣化率との組を特定する特定手段と、前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、入出力特性が等しい第1センシング素子と第2センシング素子を使用し、第2センシング素子の入出力特性の劣化の進行を低減手段で遅らせることで、第1出力信号および第2出力信号と、所定の低減率と、記憶手段に記憶している劣化特性とに基づいて、第1センシング素子の劣化率を特定することができる。よって、特定した劣化率と第1出力信号とを用いてエネルギーの大きさを求めることで、第1センシング素子や第2センシング素子の入出力特性が劣化しても正確な検出値を得ることができる。なお、測定対象となるエネルギーには、例えば、光エネルギーや熱エネルギーが含まれる。つまり、本発明は、例えば、光の強さ(照度)を検出する光センサや、温度を検出する温度センサに適用することができ、センシング素子には、光電変換素子や感温素子が含まれる。
【0010】
また、上述したセンシング回路において、前記検出手段は、前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出することの代わりに、前記特定手段によって特定した前記第2劣化率と前記第2出力信号と前記所定の低減率とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出する構成であってもよい。この構成であっても正確な検出値を得ることができる。
【0011】
また、本発明に係る他の光検出回路は、測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの第1出力信号を出力する第1センシング素子と、前記第1センシング素子と同じ入出力特性を有し、測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの第2出力信号を出力する第2センシング素子と、前記第2センシング素子に加わる前記エネルギーの大きさを所定の低減率で減らす低減手段と、前記第1センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第1劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルの比である出力比との関係を劣化特性として記憶する記憶手段と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を算出し、算出した比と前記記憶手段を参照して得られた前記劣化特性の出力比とを比較して、比較結果に基づいて前記第1劣化率を特定する特定手段と、前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、入出力特性が等しい第1センシング素子と第2センシング素子を使用し、第2センシング素子の入出力特性の劣化の進行を低減手段で遅らせることで、第1出力信号のレベルと第2出力信号のレベルとの比と、所定の低減率と、記憶手段に記憶している劣化特性とに基づいて、第1センシング素子の劣化率を特定することができる。よって、特定した劣化率と第1出力信号とを用いてエネルギーの大きさを求めることで、第1センシング素子や第2センシング素子の入出力特性が劣化しても正確な検出値を得ることができる。なお、測定対象となるエネルギーには、例えば、光エネルギーや熱エネルギーが含まれる。つまり、本発明は、照度を検出する光センサや、温度を検出する温度センサに適用することができ、センシング素子には、光電変換素子や感温素子が含まれる。
【0013】
また、上述した他のセンシング回路において、前記記憶手段は、前記第1センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第1劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルの比である出力比との関係を劣化特性として記憶することの代わりに、前記第2センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第2劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルの比である出力比との関係を劣化特性として記憶し、前記特定手段は、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を算出し、算出した比と前記記憶手段を参照して得られた前記劣化特性の出力比とを比較して、比較結果に基づいて前記第1劣化率を特定することの代わりに、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を算出し、算出した比と前記記憶手段を参照して得られた前記劣化特性の出力比とを比較して、比較結果に基づいて前記第2劣化率を特定し、前記検出手段は、前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出することの代わりに、前記特定手段によって特定した前記第2劣化率と前記第2出力信号と前記所定の低減率とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出する構成であってもよい。この構成であっても正確な検出値を得ることができる。
【0014】
また、本発明に係る光検出回路は、入射する光の照度に応じたレベルの第1出力信号を出力する第1光電変換素子と、前記第1光電変換素子と同じ光電変換特性を有し、入射する光の照度に応じたレベルの第2出力信号を出力する第2光電変換素子と、入射する光の照度を所定の減光率で減光させて前記第2光電変換素子に出力する減光手段と、光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と積算照度との関係を記憶する記憶手段と、前記第1光電変換素子の積算照度を第1積算照度、前記第2光電変換素子の積算照度を第2積算照度、前記第1積算照度に対応する前記劣化率を第1劣化率、前記第2積算照度に対応する前記劣化率を第2劣化率としたとき、前記所定の減光率を考慮して前記第1積算照度と前記第2積算照度との組を特定し、特定した前記第1積算照度と前記第2積算照度とに基づいて前記記憶手段に記憶された劣化率と積算照度との関係を参照し、前記特定した前記第1積算照度と前記第2積算照度との組に対応する前記第1劣化率と前記第2劣化率との組を取得する取得手段と、前記第1光電変換素子に入射する光の照度を第1照度、前記減光手段を介して前記第2光電変換素子に入射する光の照度を第2照度としたとき、前記第1出力信号と前記第1劣化率とに基づいて、前記第1照度を算出し、前記第2出力信号と前記第2劣化率とに基づいて、前記第2照度を算出し、前記第1照度と前記第2照度との差分を算出する差分算出手段と、前記取得手段を用いて得た前記第1劣化率と前記第2劣化率との組を前記差分算出手段に供給し、前記差分が最小となる前記第1劣化率を特定し、特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、入射する光の照度を演算する演算手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、光電変換特性が等しい第1光電変換素子と第2光電変換素子を使用し、第2光電変換素子の光劣化の進行を減光手段で遅らせることで、第1出力信号および第2出力信号と、記憶手段に記憶している劣化率と積算照度との関係(積算照度に対する光電変換効率の劣化特性)とに基づいて、第1光電変換素子の劣化率を特定することができる。よって、特定した劣化率と第1出力信号とを用いて、入射する光の照度を求めることで、光劣化により第1光電変換素子や第2光電変換素子の導電率が低下しても、正確な検出照度を得ることができる。なお、同じ光電変換特性を有することには、光電変換効率の劣化特性が等しいことも含まれる。
【0016】
また、上述した光検出回路において、前記演算手段は、前記差分が最小となる前記第1劣化率を特定し、特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、入射する光の照度を演算することの代わりに、前記差分が最小となる前記第2劣化率を特定し、特定した前記第2劣化率と前記第2出力信号と前記所定の減光率とに基づいて、入射する光の照度を演算する構成であってもよい。この構成であっても正確な検出照度を得ることができる。また、上述した光検出回路において、前記記憶手段は、光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と積算照度とを対応付けて複数記憶する構成であってもよいし、光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と積算照度との関係を定めた関数を記憶する構成であってもよい。
【0017】
また、本発明に係る他の光検出回路は、入射する光の照度に応じたレベルの第1出力信号を出力する第1光電変換素子と、前記第1光電変換素子と同じ光電変換特性を有し、入射する光の照度に応じたレベルの第2出力信号を出力する第2光電変換素子と、入射する光の照度を所定の減光率で減光させて前記第2光電変換素子に出力する減光手段と、前記第1光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を記憶する記憶手段と、前記出力比を算出する出力比算出手段と、前記記憶手段を参照して取得した複数の出力比の各々と、前記出力比算出手段で算出した出力比との差分を算出する差分算出手段と、前記差分が最小となる前記劣化率を特定し、特定した前記劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、入射する光の照度を演算する演算手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、光電変換特性が等しい第1光電変換素子と第2光電変換素子を使用し、第2光電変換素子の光劣化の進行を減光手段で遅らせることで、第1出力信号のレベルと第2出力信号のレベルとの比(出力比)と、記憶手段に記憶している劣化率と出力比との関係(出力比に対する光電変換効率の劣化特性)とに基づいて、第1光電変換素子の劣化率を特定することができる。よって、特定した劣化率と第1出力信号とを用いて、入射する光の照度を求めることで、光劣化により第1光電変換素子や第2光電変換素子の導電率が低下しても、正確な検出照度を得ることができる。なお、同じ光電変換特性を有することには、光電変換効率の劣化特性が等しいことも含まれる。
【0019】
また、上述した他の光検出回路において、前記記憶手段は、前記第1光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を記憶することの代わりに、前記第2光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を記憶し、前記演算手段は、特定した前記劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、入射する光の照度を演算することの代わりに、特定した前記劣化率と前記第2出力信号と前記所定の減光率とに基づいて、入射する光の照度を演算する構成であってもよい。この構成であっても正確な検出照度を得ることができる。
【0020】
また、上述した他の光検出回路において、前記記憶手段は、前記第1光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比とを対応付けて複数記憶する構成であってもよい。また、上述した他の光検出回路において、前記記憶手段は、前記第1光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を定めた関数を記憶する構成であってもよい。また、上述した他の光検出回路において、前記記憶手段は、前記第2光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比とを対応付けて複数記憶する構成であってもよい。また、上述した他の光検出回路において、前記記憶手段は、前記第2光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を定めた関数を記憶する構成であってもよい。
【0021】
なお、前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子は、例えば、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ、高温ポリシリコン薄膜トランジスタ等であってもよい。また、前記減光手段は、例えば、グリーンカラーフィルタ等、所定の光透過率を有するフィルタであってもよい。
【0022】
次に、本発明に係る表示装置は、上述したいずれかの光検出回路と、画像を表示する表示部と、前記光検出回路の出力信号に基づいて、前記表示部の画像の輝度を調整する調整部とを備えることが好ましい。この表示装置には、例えば、液晶表示装置や、液晶素子以外の電気光学素子を用いた電気光学装置等が含まれる。また、本発明に係る電子機器は、上述した表示装置を備えることが好ましい。この電子機器には、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、情報携帯端末等が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<1.第1実施形態>
図1は、光電変換素子として使用するa-Si TFT(Amorphous Silicon TFT:アモルファスシリコン薄膜トランジスタ)のゲート電圧とドレイン電流との関係を示すグラフである。ゲートオフ時に着目すると、チャネル部に光が当たっていない場合は、同図に暗電流として示すように、10−13A以下となるリーク電流(ドレイン電流)しか流れない。これに対し、同じゲートオフ時であっても、チャネル部に光が当たっている場合は、チャネル部に当たっている光の強さ(明るさ)に応じたリーク電流が流れる。つまり、このa-Si TFTは、ゲートオフ時におけるリーク電流の大きさが、チャネル部に当たっている光の強さに比例する。
【0024】
このようなリーク電流特性を有するa-Si TFTを使用して照度を検出する場合、図2に示す回路を用いればよい。同図に示すように、a-Si TFTのゲート電極Gには−10Vのゲート電圧を印加して、a-Si TFTのゲートを常にオフにしておく。そして、スイッチSWをオンにしてコンデンサCに電圧Vs(例えば、+2V)を印加した後、スイッチSWをオフにすると、コンデンサCの両端の電圧は、時間の経過に応じてVsから徐々に低下する。このときのコンデンサCの放電特性は、a-Si TFTのリーク電流Iの大きさ、すなわちa-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さに応じて異なる。具体的には、図3に示すように、a-Si TFTのチャネル部に当たっている光が強いほど、コンデンサCの電圧は急速に低下する。
【0025】
したがって、スイッチSWをオフにした後、予め定められた基準時間tが経過した時点でコンデンサCの電圧を測定すれば、その電圧値と、a-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さとの間には反比例関係が成立する。よって、基準時間tが経過した時点でのコンデンサCの電圧値とa-Si TFTのチャネル部に当たっている光の強さとの関係を示すプロファイルデータを予めメモリに記憶しておけば、このプロファイルデータを参照することで、測定したコンデンサCの電圧値からa-Si TFT のチャネル部に当たっている光の強さを求めることができる。
【0026】
しかしながら、図2に示した回路では、積算照度が増えるほど導電率が低下するというa-Si TFT の光劣化現象によって、検出照度と真の照度との間にずれが生じる。このため、正確な照度測定を行うことができない。そこで、本実施形態に係わる光センサ回路は、図4に示す回路を備える。この図4に示す回路は、図2に示した回路を2系統有している。a-Si TFT1とa-Si TFT2は、同じa-Si TFTを使用しており、両者の光電変換特性は、光劣化特性を含めて全て同じである。但し、光劣化が進行する速度は、フィルタ3を設けているのでa-Si TFT1とa-Si TFT2とで異なる。検出対象となる外光(環境光)は、a-Si TFT1とa-Si TFT2の両方に照射される。a-Si TFT2のチャネル部には環境光がそのまま入射するが、a-Si TFT1のチャネル部に入射する光の量は、a-Si TFT1のチャネル部を覆うフィルタ3によって1/10に減らされる。このようにフィルタ3は、透過率10%の減光フィルタであって、a-Si TFT1の入射光量をa-Si TFT2の入射光量の1/10に減らす。
【0027】
また、スイッチSW1とスイッチSW2は、同じ切換信号によって制御される。つまり、スイッチSW1とスイッチSW2をオフからオンあるいはオンからオフに切り換えるタイミングは同じである。コンデンサC1,C2の電圧を測定する場合は、スイッチSW1,SW2をオンしてコンデンサC1,C2に電圧Vsを印加した後、スイッチSW1,SW2をオフし、予め定められた基準時間tが経過した時点でコンデンサC1,C2の電圧値をそれぞれ測定する。
【0028】
ところで、a-Si TFT1とa-Si TFT2において、チャネル部に入射する光の強さ(照度)とリーク電流との関係は、図5に示すグラフのようになる。a-Si TFT1,2の場合は、図1に示したように暗電流がほとんど流れないので、照度Lとリーク電流Iとの関係は切片0の一次式で表すことができる。なお、図5には、光劣化のない初期状態でのa-Si TFT1(フィルタあり)とa-Si TFT2(フィルタなし)の特性直線を実線で示しているが、各々の特性直線は光劣化によって点線で示すように変化する。したがって、例えば、a-Si TFT1のリーク電流の測定値iを得ても、a-Si TFT1の光劣化率(光電変換効率の劣化の程度)が不明であると、このときの照度lは、同図に示すように一意に定まらず、正確な照度を検出することができない。これはa-Si TFT2についても同様である。
【0029】
また、a-Si TFT1とa-Si TFT2における積算照度(照度×時間)Hと光劣化率Dとの関係は、図6に示すグラフのようになる。なお、同図に示す光劣化率は、リーク電流値を正規化したものである。a-Si TFT1とa-Si TFT2は、同じa-Si TFTを使用しており、かつ、a-Si TFT1の入射光量がa-Si TFT2の入射光量の1/10に減らされているだけである。よって、a-Si TFT1の積算照度は、常にa-Si TFT2の積算照度の1/10になる。つまり、a-Si TFT1の光劣化が進行する速度は、a-Si TFT2の光劣化が進行する速度の1/10になる。したがって、図6に示す特性は、a-Si TFT1とa-Si TFT2で同じになる。また、このグラフからも明らかとなるように、a-Si TFT1,2の光劣化率は、積算照度に対して一意に定まる。
【0030】
ここで、フィルタ3およびa-Si TFT2に入射する環境光の照度をLとすると、図5に示した光劣化のない初期状態でのa-Si TFT1の照度(フィルタ3に入射する環境光の照度)とリーク電流との関係は、式(1)で表すことができる。同様に、光劣化のない初期状態でのa-Si TFT2の照度とリーク電流との関係は、式(2)で表すことができる。
なお、定数aは、光劣化のない初期状態でのa-Si TFT1の照度とリーク電流との関係を定めた一次式の傾きである。同様に、定数aは、光劣化のない初期状態でのa-Si TFT2の照度とリーク電流との関係を定めた一次式の傾きである。
I= a×L …(1)
I= a×L …(2)
【0031】
また、図5に示したように照度とリーク電流との関係を示す特性直線は、光劣化によって点線で示すように変化する。よって、光劣化が生じている場合のa-Si TFT1の照度(フィルタ3に入射する環境光の照度)とリーク電流との関係は、式(3)で表すことができる。同様に、光劣化が生じている場合のa-Si TFT2の照度とリーク電流との関係は、式(4)で表すことができる。
I´= a´×L …(3)
I´= a´×L …(4)
【0032】
ここで、図6に示した積算照度Hと光劣化率Dとの関係は、式(5)の近似式で表すことができる。また、前述したように、a-Si TFT1の積算照度は、a-Si TFT2の積算照度に対して常に1/10となる。よって、a-Si TFT1の光劣化率dは式(6)で表すことができ、a-Si TFT2の光劣化率dは式(7)で表すことができる。
=f(H ) …(5)
=f(h) …(6)
=f(h)=f(10h) …(7)
【0033】
また、上述した式(3)における定数a´は、光劣化率dに比例して変動する。同様に、上述した式(4)における定数a´は、光劣化率dに比例して変動する。したがって、定数a´は式(8)で表すことができ、定数a´は式(9)で表すことができる。
´=a×d = a×f(h) …(8)
´=a×d = a×f(h)= a×f(10h) …(9)
【0034】
よって、a-Si TFT1の照度l(フィルタ3に入射する環境光の照度)は、a-Si TFT1のリーク電流の測定値がi´である場合、式(10)で求めることができる。同様に、a-Si TFT2の照度lは、a-Si TFT2のリーク電流の測定値がi´である場合、式(11)で求めることができる。したがって、式(10)によって求めたa-Si TFT1の照度lと、式(11)によって求めたa-Si TFT2の照度lとの照度差DIFは、式(12)となる。
【数1】

【数2】

【数3】

【0035】
ここで、図6に示した積算照度と光劣化率との関係は、a-Si TFT1とa-Si TFT2で同じであり、かつ事前に把握しておくことができる。したがって、積算照度と光劣化率との関係を、例えば、図7に示す積算照度−光劣化率プロファイルデータ4として予めメモリに記憶しておくことができる。なお、同図に示す積算照度−光劣化率プロファイルデータ4において、ADD(Hex)は、メモリの格納アドレス(16進数)である。また、d(Dec)は10進数で表記した場合の光劣化率であり、d(Hex)は16進数で表記した場合の光劣化率である。但し、実際のメモリには、光劣化率d(Dec)を記憶しておく必要はない。また、フィルタ3の透過率が10%である場合は、図7に示すように、積算照度hの値を対数でとり(h=1、2、3、…、9、10、20、30、…、90、100、200、300…)、各々に対応する光劣化率d(Hex)の値を登録する構成であると、無駄な光劣化率dの値を一切登録せずに済むので、メモリの使用量を低減できる。
【0036】
なお、発明の理解を容易にするため、図7においては積算照度hに対する光劣化率dの減少率を実際の場合よりも大きくしている。また、以降の説明では、光劣化率としてd(Dec)の値を用いることとする。
【0037】
この積算照度−光劣化率プロファイルデータ4を参照すれば、例えば、a-Si TFT1の光劣化率dの値を、積算照度hが“1”のときの光劣化率d(Dec)の値“1.000”と仮定した場合に、このときのa-Si TFT2の光劣化率dの値は、積算照度hが“10”のときの光劣化率d(Dec)の値“0.950”として特定することができる。また、a-Si TFT1の光劣化率dの値を、積算照度hが“2”のときの光劣化率d(Dec)の値“0.985” と仮定した場合に、このときのa-Si TFT2の光劣化率dの値は、積算照度hが“20”のときの光劣化率d(Dec)の値“0.935”として特定することができる。つまり、図7に示す積算照度−光劣化率プロファイルデータ4を参照すれば、例えば、a-Si TFT1の積算照度hの値を“1”、“2”、“3”、…と仮定した場合に、この仮定した積算照度hの値毎に、そのときのa-Si TFT1の光劣化率dの値とa-Si TFT2の光劣化率dの値との組を特定することができる。
【0038】
そして、このようにして特定した組毎に、特定した光劣化率d,dの値と、測定して得られたリーク電流i´,i´の値と、定数a,aの値とを式(12)に代入して照度差DIFを算出すれば、算出した照度差DIFのうち、最小値(理想的には0)となる照度差DIFMINを特定することで、この照度差DIFMINを算出する際に使用したdとdが、現時点におけるa-Si TFT1とa-Si TFT2の光劣化率になる。よって、このようにして特定した光劣化率dを式(13)に代入することで、光劣化によりa-Si TFT1,2の導電率が低下しても、環境光の照度Lを正確に検出することが可能になる。
【数4】

【0039】
図8は、本実施形態に係わる光センサ回路5および光検出回路10の全体構成を示すブロック図である。光検出回路10は、図7に示した積算照度−光劣化率プロファイルデータ4を記憶するメモリ6と、CPUやROM等を備え、図4に回路構成を示した光センサ回路5における測定結果と積算照度−光劣化率プロファイルデータ4とに基づいて、環境光の照度Lを算出する制御部7とを備える。
【0040】
図9は、制御部7によって実行される照度検出処理のフローチャートである。同図に示すように、まず、制御部7は、a-Si TFT1のリーク電流i´と、a-Si TFT2のリーク電流i´とを測定する(ステップS101)。次いで、制御部7は、積算照度−光劣化率プロファイルデータ4を参照する際の格納アドレスADDの値を“0”にセットする(ステップS102)。この後、制御部7は、格納アドレスADDの値が“48”以下であるか否かを判別する(ステップS103)。格納アドレスADDの値が“48”より大きい場合は、ステップS112に移行する。なお、最初の段階では、ステップS102において格納アドレスADDの値が“0”にセットされているので、ステップS103における判別結果はYESとなり、ステップS104に進む。
【0041】
そして、ステップS104において、制御部7は、積算照度−光劣化率プロファイルデータ4(図7参照)から、格納アドレスADDの値に従って光劣化率d,dの値を読み出す。例えば、格納アドレスADDの値が“0”の場合は、光劣化率dの値としてd(Dec)の値“1.000”を読み出す。また、光劣化率dの値は、格納アドレスADDの値に“10”を加算して読み出される。すなわち、格納アドレスADDの値が“0”の場合は、光劣化率dの値としてd(Dec)の値“0.950”を読み出す。
【0042】
次いで、制御部7は、ステップS104において読み出した光劣化率d,dの値と、ステップS101において測定したリーク電流i´,i´の値と、定数a,aの値とを式(12)に代入し、照度差DIFを計算する(ステップS105)。この後、制御部7は、格納アドレスADDの値が“0”であるか否かを判別する(ステップS106)。格納アドレスADDの値が“0”であった場合、制御部7は、ステップS108に移行し、ステップS105において算出した照度差DIFの値を照度差DIFMIN(暫定)として、また、ステップS104において読み出したdの値を、a-Si TFT2の光劣化率D(暫定)としてメモリ6に格納する。
【0043】
また、制御部7は、ステップS106の判別結果がNOであった場合、すなわち格納アドレスADDの値が“1”〜“48”のいずれかであった場合は、既にメモリに格納されている照度素DIFMIN(暫定)の値と、今回、ステップS105において算出した照度差DIFの値とを比較する(ステップS107)。その結果、今回算出した照度差DIFの値の方が小さかった場合は、ステップS108に移行する。そして、制御部7は、メモリ6に格納されている照度差DIFMIN(暫定)の値を、今回算出した照度差DIFの値に書き換えるとともに、メモリ6に格納されている光劣化率D(暫定)の値を、今回、ステップS104において読み出したdの値に書き換える。一方、ステップS107の判別結果がNOであった場合、制御部7は、メモリ6に格納されている照度差DIFMIN(暫定)と光劣化率D(暫定)の値を何ら書き換えることなく、ステップS109に移行する。
【0044】
この後、ステップS109〜S111では、格納アドレスADDの値を繰り上げる処理を行なう。図7に示したように積算照度−光劣化率プロファイルデータ4は、格納アドレスADDに対して積算照度hを式(14)のように設定し、対応する光劣化率を格納するようにしている。
h={ADD(LSB)+ 1}×10ADD(MSB) …(14)
【0045】
したがって、制御部7は、まず、格納アドレスADDのLSBが“8”よりも小さいか否かを判別し(ステップS109)、LSBが“8”よりも小さければ、格納アドレスADDのLSBのみをインクリメントする(ステップS110)。一方、制御部7は、LSBが“8”であれば、格納アドレスADDのLSBを“0”にするとともに、MSBをインクリメントする(ステップS111)。制御部7は、このようにして格納アドレスADDの値を繰り上げる処理を行なった後、ステップS103に戻る。
【0046】
このようにして制御部7は、格納アドレスADDの値が“48”を超えるまでステップS103〜S111の処理を繰り返す。これにより、積算照度−光劣化率プロファイルデータ4を参照して光劣化率d,dの値の組が複数特定されるとともに、特定された組毎に照度差DIFの値が算出される。また、メモリ6には、このようにして算出された照度差DIFのうち、最小値となる照度差DIFMINの値と、この照度差DIFMINを算出したときに使用したdの値(光劣化率D)が格納される。
【0047】
そして、格納アドレスADDの値が“48”を超えると、制御部7は、ステップS112に移行し、まず、メモリ6に格納されている光劣化率Dの値を読み出す。次いで、制御部7は、読み出した光劣化率Dの値と、ステップS101において測定したa-Si TFT2のリーク電流i´の値と、定数aの値とを式(13)に代入し、環境光の照度Lを算出する。なお、光劣化率Dの値は、dとして式(13)に代入される。
【0048】
このように本実施形態によれば、光電変換特性が等しいa-Si TFT1とa-Si TFT2を使用し、a-Si TFT1の光劣化の進行をフィルタ3で遅らせることで、a-Si TFT1,2のリーク電流の測定値i´,i´と、メモリ6に記憶している積算照度−光劣化率プロファイルデータ4とに基づいて、a-Si TFT2の光劣化率dを特定することができる。よって、このようにして特定した光劣化率dと、a-Si TFT2のリーク電流の測定値i´と、定数aとを用いて環境光の照度Lを求めることで、光劣化によりa-Si TFT1,2の導電率が低下しても、環境光の照度Lを正確に検出することができる。
【0049】
なお、積算照度−光劣化率プロファイルデータ4の代わりに式(5)をメモリ6に記憶する構成であってもよい。式(5)は、積算照度と光劣化率との関係を定めた関数であるから、この式(5)とフィルタ3の減光率とに基づいて、照度差DIFを算出する際に使用する光劣化率d,dの値の組を特定することができる。このようにすれば、積算照度−光劣化率プロファイルデータ4をメモリ6に記憶しておく必要がないから、メモリ6の使用量を低減できる。
【0050】
また、上述した照度検出処理では、照度差DIFMINを算出したときに使用したa-Si TFT2の光劣化率dと、a-Si TFT2のリーク電流の測定値i´と、定数aとを用いて、環境光の照度Lを算出する場合について説明した。しかしながら、照度差DIFMINを算出したときに使用したa-Si TFT1の光劣化率dと、a-Si TFT1のリーク電流の測定値i´と、定数aと、フィルタ3の減光率とを用いて、環境光の照度Lを算出することもできる。但し、この場合は、フィルタ3の減光率の値に加え、照度差DIFMINを算出したときに使用したa-Si TFT1の光劣化率dの値を、メモリ6に保持しておく必要がある。
【0051】
また、本実施形態では、リーク電流の測定値i´,i´を用いて環境光の照度Lを算出する場合について説明した。しかしながら、図4に示した回路において、スイッチSW1,SW2をオフしてから基準時間tが経過した時点でのコンデンサC1,C2の電圧値v´,v´を測定し、この電圧値v´,v´と光劣化率とを用いて環境光の照度Lを算出することもできる。但し、この場合は、基準時間tが経過した時点でのコンデンサC1の電圧値とa-Si TFT1の照度との関係を示すプロファイルデータや、基準時間tが経過した時点でのコンデンサC2の電圧値とa-Si TFT2の照度との関係を示すプロファイルデータをメモリ16に記憶しておく必要がある。
【0052】
<2.第2実施形態>
第1実施形態では、フィルタ3として透過率10%の減光フィルタを用いた場合について説明したが、本実施形態では、フィルタ3としてグリーンカラーフィルタを使用した場合について説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0053】
本実施形態に係わる光センサ回路は、第1実施形態の場合と同様に図4に示した回路を備える。但し、フィルタ3としてグリーンカラーフィルタを使用し、このグリーンカラーフィルタによってa-Si TFT1の入射光量をa-Si TFT2の入射光量よりも減らす点で、第1実施形態と相違する。このようにフィルタ3としてグリーンカラーフィルタを使用した場合、a-Si TFT1,2における積算照度とリーク電流との関係は、図10に示すグラフのようになる。グリーンカラーフィルタの有無による積算照度の違いによって、a-Si TFT1(フィルタあり)の特性直線と、a-Si TFT2(フィルタなし)の特性直線との傾きが異なる。また、a-Si TFT1のリーク電流とa-Si TFT2のリーク電流との比をKとすると、このリーク電流比Kと積算照度との関係は、図11に示すグラフのようになり、式(15)で表すことができる。
K=p(H) …(15)
【0054】
ここで、a-Si TFT1のリーク電流の測定値をi´、a-Si TFT2のリーク電流の測定値をi´とすると、測定値から得られるリーク電流比kmsgは、式(16)となる。また、リーク電流比Kと、a-Si TFT2(フィルタなし)の光劣化率との関係は、式(17)の近似式で表すことができ、図12に示すグラフのようになる。なお、図12に示す光劣化率は、リーク電流値を正規化したものである。
kmsg=i´/i´ …(16)
D=g(K) …(17)
【0055】
ここで、図12に示したリーク電流比Kとa-Si TFT2の光劣化率との関係は、事前に把握しておくことができる。したがって、リーク電流比Kとa-Si TFT2の光劣化率との関係を、例えば、図13に示すリーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14としてメモリに記憶しておくことができる。なお、同図に示すリーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14において、ADD(Hex)は、メモリの格納アドレス(16進数)である。また、k(Dec)は10進数で表記した場合のリーク電流比であり、k(Hex)は16進数で表記した場合のリーク電流比である。同様に、d(Dec)は、10進数で表記した場合のa-Si TFT2の光劣化率であり、d(Hex)は、16進数で表記した場合のa-Si TFT2の光劣化率である。
【0056】
但し、実際のメモリには、格納アドレスADDの値毎に、リーク電流比k(Hex)と光劣化率d(Hex)のみが記憶されていればよく、リーク電流比k(Dec)や光劣化率d(Dec)をメモリに記憶しておく必要はない。なお、発明の理解を容易にするため、図13においては光劣化率dの減少率を実際の場合よりも大きくしている。また、以降の説明では、リーク電流比としてk(Dec)の値を、また、光劣化率としてd(Dec)の値を用いることとする。
【0057】
このリーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14に格納されている全てのリーク電流比kについて、測定値から得たリーク電流比kmsgとの差分を式(18)を用いて算出し、この差分DIFが最小値(理想的には0)となるkを特定すれば、このkと対応付けてプロファイルデータ14に格納されている光劣化率dが、現時点におけるa-Si TFT2の光劣化率になる。よって、このようにして特定した光劣化率dを、前述した式(13)にdとして代入することで、光劣化によりa-Si TFT1,2の導電率が低下しても、環境光の照度Lを正確に検出することが可能になる。
【数5】

【0058】
図14は、本実施形態に係わる光センサ回路15および光検出回路20の全体構成を示すブロック図である。光検出回路20は、図13に示したリーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14を記憶するメモリ16と、CPUやROM等を備え、図4に回路構成を示した光センサ回路15(但し、フィルタ3としてグリーンカラーフィルタを用いる)における測定結果とリーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14とに基づいて、環境光の照度Lを算出する制御部17とを備える。
【0059】
図15は、制御部17によって実行される照度検出処理のフローチャートである。同図に示すように、まず、制御部17は、a-Si TFT1のリーク電流i´と、a-Si TFT2のリーク電流i´とを測定する(ステップS201)。次いで、制御部17は、測定したリーク電流i´,i´を用いてリーク電流比kmsgを算出する(ステップS202)。この後、制御部17は、リーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14を参照する際の格納アドレスADDの値を“0”にセットする(ステップS203)。次いで、制御部17は、格納アドレスADDの値が予め定められた最大値ADDMAXより小さいか否かを判別する(ステップS204)。最大値ADDMAX以上であれば、ステップS211に移行する。なお、最初の段階では、ステップS203において格納アドレスADDの値が“0”にセットされているので、ステップS204における判別結果はYESとなり、ステップS205に進む。
【0060】
そして、ステップS205において、制御部17は、リーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14(図13参照)から、格納アドレスADDの値に従ってリーク電流比kと光劣化率dの値を読み出す。例えば、格納アドレスADDの値が“0”の場合は、リーク電流比kの値としてk(Dec)の値“10.83”を読み出し、光劣化率dの値としてd(Dec)の値“1.000”を読み出す。
【0061】
次いで、制御部17は、ステップS202において算出したリーク電流比kmsgの値と、ステップS205において読み出したリーク電流比kの値とを式(18)に代入し、リーク電流比の差分DIFを計算する(ステップS206)。この後、制御部17は、格納アドレスADDの値が“0”であるか否かを判別する(ステップS207)。格納アドレスADDの値が“0”であった場合、制御部17は、ステップS209に移行し、ステップS206において算出した差分DIFの値を差分DIFMIN(暫定)として、また、ステップS205において読み出したdの値をa-Si TFT2の光劣化率D(暫定)としてメモリ16に格納する。
【0062】
また、制御部17は、ステップS207の判別結果がNOであった場合は、既にメモリに格納されている差分DIFMIN(暫定)の値と、今回、ステップS206において算出した差分DIFの値とを比較する(ステップS208)。その結果、今回算出した差分DIFの値の方が小さかった場合は、ステップS209に移行する。そして、制御部17は、メモリ16に格納されている差分DIFMIN(暫定)の値を、今回算出した差分DIFの値に書き換えるとともに、メモリ16に格納されている光劣化率D(暫定)の値を、今回、ステップS205において読み出したdの値に書き換える。一方、ステップS208の判別結果がNOであった場合、制御部17は、メモリ16に格納されている差分DIFMIN(暫定)と光劣化率D(暫定)の値を何ら書き換えることなく、ステップS210に移行する。
【0063】
この後、制御部17は、格納アドレスADDの値をインクリメントし(ステップS210)、ステップS204に戻る。このようにして制御部17は、格納アドレスADDの値が最大値ADDMAXになるまでステップS204〜S210の処理を繰り返す。これにより、リーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14に格納されている全てのリーク電流比kについて、リーク電流比kmsgとの差分DIFが算出される。また、メモリ16には、このようにして算出された差分DIFのうち、最小値となる差分DIFMINの値と、このときのa-Si TFT2の光劣化率Dの値が格納される。
【0064】
そして、格納アドレスADDの値が最大値ADDMAXに達すると、制御部17は、ステップS211に移行し、まず、メモリ16に格納されている光劣化率Dの値を読み出す。次いで、制御部17は、読み出した光劣化率Dの値と、ステップS201において測定したa-Si TFT2のリーク電流i´の値と、定数aの値とを式(13)に代入し、環境光の照度Lを算出する。なお、光劣化率Dの値は、dとして式(13)に代入される。
【0065】
このように本実施形態によれば、光電変換特性が等しいa-Si TFT1とa-Si TFT2を使用し、a-Si TFT1の光劣化の進行をフィルタ3(グリーンカラーフィルタ)で遅らせることで、a-Si TFT1,2のリーク電流の測定値i´,i´と、メモリ16に記憶しているリーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14とに基づいて、a-Si TFT2の光劣化率dを特定することができる。よって、このようにして特定した光劣化率dと、a-Si TFT2のリーク電流の測定値i´と、定数aとを用いて環境光の照度Lを求めることで、光劣化によりa-Si TFT1,2の導電率が低下しても、環境光の照度Lを正確に検出することができる。
【0066】
なお、リーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14の代わりに式(17)をメモリ16に記憶する構成であってもよい。式(17)は、リーク電流比と、a-Si TFT2(グリーンカラーフィルタなし)の光劣化率との関係を定めた関数であるから、この式(17)に基づいて、リーク電流比の差分DIFを算出する際に使用するリーク電流比kと光劣化率dの値を特定することができる。このようにすれば、リーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14をメモリ16に記憶しておく必要がないから、メモリ16の使用量を低減できる。
【0067】
また、上述した照度検出処理(図15)では、差分DIFMINを算出したときのa-Si TFT2の光劣化率dと、a-Si TFT2のリーク電流の測定値i´と、定数aとを用いて、環境光の照度Lを算出する場合について説明した。しかしながら、図13に示したリーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14に、リーク電流比と、a-Si TFT1(グリーンカラーフィルタあり)の光劣化率との関係を登録しておけば、差分DIFMINを算出したときのa-Si TFT1の光劣化率dと、a-Si TFT1のリーク電流の測定値i´と、定数aと、フィルタ3による減光率とを用いて、環境光の照度Lを算出することもできる。但し、この場合は、フィルタ3の減光率の値に加え、差分DIFMINを算出したときのa-Si TFT1の光劣化率dの値をメモリ16に保持しておく必要がある。
【0068】
また、本実施形態では、リーク電流の測定値i´,i´を用いて環境光の照度Lを算出する場合について説明した。しかしながら、図4に示した回路において、スイッチSW1,SW2をオフしてから基準時間tが経過した時点でのコンデンサC1,C2の電圧値v´,v´を測定し、この測定値v´,v´と光劣化率とを用いて環境光の照度Lを算出することもできる。但し、この場合は、基準時間tが経過した時点でのコンデンサC1の電圧値とa-Si TFT1の照度との関係を示すプロファイルデータや、基準時間tが経過した時点でのコンデンサC2の電圧値とa-Si TFT2の照度との関係を示すプロファイルデータをメモリ16に記憶しておく必要がある。
【0069】
<3.第3実施形態>
本実施形態では、第1実施形態おいて説明した光センサ回路5と光検出回路10、あるいは第2実施形態おいて説明した光センサ回路15と光検出回路20を使用し、環境光の照度(周囲の明るさ)に応じて画面全体の明るさを調整する表示装置について説明する。
【0070】
図16は、本実施形態に係わる表示装置50の構成を示すブロック図である。この表示装置50は、透過型の液晶表示装置であり、液晶パネルAAと、光検出回路350と、調光回路400と、バックライト500と、制御回路600と、画像処理回路700とを備える。また、液晶パネルAAには、画像表示領域Aと、走査線駆動回路100と、データ線駆動回路200と、光センサ回路300とが設けられる。画像表示領域Aには、X方向に延在するm本の走査線と、Y方向に延在するn本のデータ線とが形成される。また、走査線とデータ線との各交差に対応する位置には画素回路P1が配置され、各画素回路P1は、スイッチング素子としてa-Si TFTを備える。
【0071】
走査線駆動回路100は、マトリクス状に配列する画素回路P1を、走査信号Y1、Y2、Y3、…、Ymを用いて行単位で選択して動作させる。一方、データ線駆動回路200は、走査線駆動回路100が選択した1行分(n個)の画素回路P1に対し、データ信号X1、X2、…、Xnを供給する。制御回路600は、クロック信号等の各種の制御信号を走査線駆動回路100とデータ線駆動回路200に出力する。また、画像処理回路700は、入力画像データDinに、液晶パネルAAの光透過特性を考慮したガンマ補正等を施した後、RGB各色の画像データをD/A変換して画像信号VIDを生成し、データ線駆動回路200に供給する。
【0072】
光センサ回路300は、第1実施形態おいて説明した光センサ回路5、または第2実施形態において説明した光センサ回路15であって、光電変換素子(a-Si TFT1,2)として、各画素回路P1に備わるa-Si TFTと同じa-Si TFTを使用している。また、光検出回路350は、第1実施形態おいて説明した光検出回路10、または第2実施形態において説明した光検出回路20であって、光センサ回路300の測定結果に基づいて環境光の照度を検出すると、検出結果である照度データ350aを調光回路400に出力する。なお、光検出回路350は、光センサ回路300における光電変換素子の光劣化を校正し、環境光の正確な照度を検出する。調光回路400は、液晶パネルAAの背面に設けられたバックライト500を照度データ350aに応じた輝度で発光させる。
【0073】
バックライト500からの光は液晶パネルAAを介して射出される。また、液晶パネルAAには、各画素回路P1に対応してマトリクス状に画素が設けられており、各画素に印加されるデータ信号の電圧レベルに応じて液晶分子の配向や秩序が変化し、透過率が画素毎に制御される。よって、光変調による階調表示が可能となり、画像表示領域Aに画像が表示される。
【0074】
ここで、表示画像の見易さは、周囲の明るさによって左右される。例えば、日中の自然光の下では、バックライト500の発光輝度を高く設定し、画面全体を明るくする必要がある。一方、夜間の暗い環境の下では、バックライト500の発光輝度が日中ほど高くなくても鮮明な画像を表示することができる。したがって、調光回路400は、照度データ350aの値が大きい場合は、バックライト500の発光輝度を高く設定する一方、照度データ350aの値が小さい場合は、バックライト500の発光輝度を低く設定して消費電力を削減する。
【0075】
このように本実施形態においては、光センサ回路300(光センサ回路5,15)の測定結果を光検出回路350(光検出回路10,20)で校正して得られる照度データ350aに基づいてバックライト500の発光輝度を調整したので、環境光の正確な照度に基づいて画面の明るさを制御し、表示画像を見易くしたり、表示装置50の消費電力を低減することができる。また、各画素回路P1に備わるa-Si TFTと、光センサ回路300に備わる2つのa-Si TFTは同じものであるので、液晶パネルAAを製造する際に、光センサ回路300用の2つのa-Si TFTや、さらには図4に示した回路を液晶パネルAA上に形成することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、バックライト500の発光輝度を調整する場合について説明したが、光検出回路350から出力される照度データ350aを画像処理回路700に供給し、画像処理回路700において、照度データ350aに基づいて画像信号VIDの信号レベルを調整してもよい。この場合、データ線駆動回路200は、調整された画像信号VIDに基づいてデータ信号X1〜Xnを生成するので、環境光の照度に応じて画面全体の明るさを調整することができる。
【0077】
<4.変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に述べる各種の変形が可能である。
【0078】
(1)光電変換素子は、例えば、LTPS TFT(Low-Temperature Poly-Silicon TFT:低温ポリシリコン薄膜トランジスタ)や、HTPS TFT(High Temperature Poly-Silicon TFT:高温ポリシリコン薄膜トランジスタ)であってもよい。また、検出対象となる光は、環境光(外光)に限らず、例えば、光源から放射される光であってもよい。したがって、本発明は、イメージセンサ等にも適用可能である。また、フィルタ3の透過率は、10%に限らず、例えば、20%や50%であってもよい。要は、100%よりも小さい所定の透過率であればよい。また、第2実施形態では、フィルタ3としてグリーンカラーフィルタを使用した場合について説明したが、フィルタ3として使用することのできるカラーフィルタの色は、グリーンに限らず、例えば、レッドやブルーであってもよい。
【0079】
(2)第3実施形態では、表示装置として透過型の液晶表示装置を挙げたが、本発明に係わる表示装置は、例えば、半透過型の液晶表示装置や、反射型の液晶表示装置であってもよい。但し、反射型の液晶表示装置の場合は、光検出回路350から出力される照度データ350aに基づいて画像信号VIDの信号レベルを調整し、画面全体の明るさを制御する。また、本発明に係わる表示装置は、OLED(Organic Light Emitting Diode:有機発光ダイオード)素子を用いた電気光学装置であってもよい。OLED素子は、光の透過量を変化させる液晶素子とは異なり、それ自体が発光する電流駆動型の発光素子である。但し、OLED素子を用いた電気光学装置の場合も、光検出回路350から出力される照度データ350aに基づいて画像信号VIDの信号レベルを調整し、画面全体の明るさを制御する。さらに、本発明に係わる表示装置は、液晶素子やOLED素子以外の電気光学素子を用いた電気光学装置であってもよい。なお、電気光学素子とは、電気信号(電流信号または電圧信号)の供給によって透過率や輝度といった光学的特性が変化する素子である。例えば、無機EL(ElectroLuminescent)や発光ポリマー等の発光素子を用いた表示パネルや、着色された液体と当該液体に分散された白色の粒子とを含むマイクロカプセルを電気光学物質として用いた電気泳動表示パネル、極性が相違する領域ごとに異なる色に塗り分けられたツイストボールを電気光学物質として用いたツイストボールディスプレイパネル、黒色トナーを電気光学物質として用いたトナーディスプレイパネル、あるいはヘリウムやネオン等の高圧ガスを電気光学物質として用いたプラズマディスプレイパネル等を備えた電気光学装置に対しても本発明を適用することができる。
【0080】
<5.電子機器>
次に、上述した実施形態および変形例に係る表示装置50を適用した電子機器について説明する。図17に、表示装置50を適用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す。パーソナルコンピュータ2000は、表示ユニットとしての表示装置50と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。
図18に、表示装置50を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての表示装置50を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、表示装置50に表示される画面がスクロールされる。
図19に、表示装置50を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての表示装置50を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が表示装置50に表示される。
なお、表示装置50が適用される電子機器としては、図17〜図19に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した表示装置50が適用可能である。
【0081】
<6.その他>
本発明は、温度センサにも適用可能である。
例えば、感温特性が等しい2つの同じ感温素子(熱電対、測温抵抗体、サーミスタ)を使用し、一方の感温素子のみを断熱部材で覆い、断熱部材で覆われた感温素子に加わる温度を、他方の感温素子に加わる温度の50%に減らす。また、感温特性の劣化する度合いを示す劣化率と、感温素子に加わる積算温度(温度×時間)との関係を示すプロファイルデータや関数をメモリに記憶しておく。そして、2つの感温素子の各々を用いて得られる測定値(例えば、各感温素子に定電流を供給して得られる感温素子の両端の電圧値)と、断熱部材による温度の低減率と、メモリに記憶されているプロファイルデータや関数とを用いて、第1実施形態おいて説明した光検出回路10の場合と同様にして、例えば、断熱部材で覆われていない方の感温素子の劣化率を特定し、特定した劣化率と、断熱部材で覆われていない方の感温素子の測定値とに基づいて、正確な温度を検出する。なお、感温特性の劣化する度合いを示す劣化率と、2つの感温素子の測定値の比との関係を示すプロファイルデータや関数をメモリに記憶しておく構成であってもよい。この場合は、2つの感温素子の測定値の比と、断熱部材による温度の低減率と、メモリに記憶されているプロファイルデータや関数とを用いて、第2実施形態おいて説明した光検出回路20の場合と同様にして、例えば、断熱部材で覆われていない方の感温素子の劣化率を特定し、特定した劣化率と、断熱部材で覆われていない方の感温素子の測定値とに基づいて、正確な温度を検出すればよい。
【0082】
以上の内容をまとめると、以下に記載するとおりである。但し、断熱部材で覆われている方の感温素子の劣化率を特定し、特定した劣化率と、断熱部材で覆われている方の感温素子の測定値と、断熱部材による温度の低減率とに基づいて、正確な温度を検出することも可能である。
【0083】
素子に加わる熱エネルギー(温度)に応じたレベルの第1測定信号を得ることが可能な第1感温素子と、
前記第1感温素子と同じ感温特性を有し、素子に加わる熱エネルギー(温度)に応じたレベルの第2測定信号を得ることが可能な第2感温素子と、
前記第2感温素子に加わる温度を所定の低減率で減らす断熱手段と、
前記第1感温素子の感温特性の劣化の程度を示す第1劣化率と、前記第1感温素子に加わる積算温度との関係を劣化特性として記憶する記憶手段と、
前記所定の低減率を考慮して前記劣化特性を参照することにより、前記第1劣化率と前記第2感温素子の感温特性の劣化の程度を示す第2劣化率との組を複数特定し、特定した複数の前記第1劣化率と前記第2劣化率の組の各々と、前記第1測定信号および前記第2測定信号と、前記所定の低減率とに基づいて、前記第1感温素子に加わる温度と前記断熱手段に加わる温度とを演算し、演算結果に基づいて、両者の差分が最小となる前記第1劣化率と前記第2劣化率との組を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1測定信号とに基づいて、温度を検出する検出手段と
を備える温度検出回路。
【0084】
素子に加わる熱エネルギー(温度)に応じたレベルの第1測定信号を得ることが可能な第1感温素子と、
前記第1感温素子と同じ感温特性を有し、素子に加わる熱エネルギー(温度)に応じたレベルの第2測定信号を得ることが可能な第2感温素子と、
前記第2感温素子に加わる温度を所定の低減率で減らす断熱手段と、
前記第1感温素子の感温特性の劣化の程度を示す第1劣化率と、前記第1測定信号のレベルと前記第2測定信号のレベルの比である出力比との関係を劣化特性として記憶する記憶手段と、
前記第1測定信号のレベルと前記第2測定信号のレベルとの比を算出し、算出した比と前記記憶手段を参照して得られた前記劣化特性の出力比とを比較して、比較結果に基づいて前記第1劣化率を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1測定信号とに基づいて、温度を検出する検出手段と
を備える温度検出回路。
【0085】
また、本発明は、音の大きさを検出するセンサ等にも適用可能である。このように本発明は、センシング特性(入出力特性)が等しい2つのセンシング素子を使用し、一方のセンシング素子に加わる光や温度や音等のエネルギーを所定の低減率で減らすとともに、センシング素子の劣化特性をメモリに記憶しておき、2つのセンシング素子の各々を用いて得られる測定値と、所定の低減率と、メモリに記憶している劣化特性とを用いて、いずれか一方のセンシング素子の劣化率を特定し、特定した劣化率を用いて正確な検出値を得ることを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるa-Si TFTのゲート電圧とドレイン電流との関係を示すグラフである。
【図2】a-Si TFT を使用して照度を検出する回路の構成を示す回路図である。
【図3】図2に示した回路におけるコンデンサCの放電特性を示すグラフである。
【図4】光センサ回路の構成を示す回路図である。
【図5】a-Si TFT1,2における照度とリーク電流との関係を示すグラフである。
【図6】a-Si TFT1,2における積算照度と光劣化率との関係を示すグラフである。
【図7】積算照度−光劣化率プロファイルデータ4のデータ構成を示す図である。
【図8】光センサ回路5および光検出回路10の全体構成を示すブロック図である。
【図9】制御部7によって実行される照度検出処理のフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係わるa-Si TFT1,2の積算照度とリーク電流との関係を示すグラフである。
【図11】a-Si TFT1,2におけるリーク電流比Kと積算照度との関係を示すグラフである。
【図12】a-Si TFT1,2のリーク電流比Kと、a-Si TFT2の光劣化率との関係を示すグラフである。
【図13】リーク電流比−光劣化率プロファイルデータ14のデータ構成を示す図である。
【図14】光センサ回路15および光検出回路20の全体構成を示すブロック図である。
【図15】制御部17によって実行される照度検出処理のフローチャートである。
【図16】本発明の第3実施形態に係る表示装置50の全体構成を示すブロック図である。
【図17】本発明に係る電子機器の具体例を示す斜視図である。
【図18】本発明に係る電子機器の具体例を示す斜視図である。
【図19】本発明に係る電子機器の具体例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0087】
1,2…a-Si TFT、3…フィルタ、4…積算照度−光劣化率プロファイルデータ、14…リーク電流比−光劣化率プロファイルデータ、5,15…光センサ回路、6,16…メモリ、7,17…制御部、10,20…光検出回路、50…表示装置、AA…液晶パネル、A…画像表示領域、P1…画素回路、100…走査線駆動回路、200…データ線駆動回路、300…光センサ回路、350…光検出回路、350a…照度データ、400…調光回路、500…バックライト、600…制御回路、700…画像処理回路、2000…パーソナルコンピュータ、3000…携帯電話機、4000…情報携帯端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの第1出力信号を出力する第1センシング素子と、
前記第1センシング素子と同じ入出力特性を有し、測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの第2出力信号を出力する第2センシング素子と、
前記第2センシング素子に加わる前記エネルギーの大きさを所定の低減率で減らす低減手段と、
前記第1センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第1劣化率と、前記第1センシング素子に加わる前記エネルギーの大きさと時間との積である積算値との関係を劣化特性として記憶する記憶手段と、
前記所定の低減率を考慮して前記劣化特性を参照することにより、前記第1劣化率と前記第2センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第2劣化率との組を複数特定し、特定した複数の前記第1劣化率と前記第2劣化率の組の各々と、前記第1出力信号および前記第2出力信号と、前記所定の低減率とに基づいて、前記第1センシング素子に加わる前記エネルギーの大きさと前記低減手段に入力する前記エネルギーの大きさとを演算し、演算結果に基づいて、両者の差分が最小となる前記第1劣化率と前記第2劣化率との組を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出する検出手段と
を備えるセンシング回路。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出することの代わりに、
前記特定手段によって特定した前記第2劣化率と前記第2出力信号と前記所定の低減率とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出する
ことを特徴とする請求項1に記載のセンシング回路。
【請求項3】
測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの第1出力信号を出力する第1センシング素子と、
前記第1センシング素子と同じ入出力特性を有し、測定対象となるエネルギーの大きさに応じたレベルの第2出力信号を出力する第2センシング素子と、
前記第2センシング素子に加わる前記エネルギーの大きさを所定の低減率で減らす低減手段と、
前記第1センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第1劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルの比である出力比との関係を劣化特性として記憶する記憶手段と、
前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を算出し、算出した比と前記記憶手段を参照して得られた前記劣化特性の出力比とを比較して、比較結果に基づいて前記第1劣化率を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出する検出手段と
を備えるセンシング回路。
【請求項4】
前記記憶手段は、
前記第1センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第1劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルの比である出力比との関係を劣化特性として記憶することの代わりに、
前記第2センシング素子の入出力特性の劣化の程度を示す第2劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルの比である出力比との関係を劣化特性として記憶し、
前記特定手段は、
前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を算出し、算出した比と前記記憶手段を参照して得られた前記劣化特性の出力比とを比較して、比較結果に基づいて前記第1劣化率を特定することの代わりに、
前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を算出し、算出した比と前記記憶手段を参照して得られた前記劣化特性の出力比とを比較して、比較結果に基づいて前記第2劣化率を特定し、
前記検出手段は、
前記特定手段によって特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出することの代わりに、
前記特定手段によって特定した前記第2劣化率と前記第2出力信号と前記所定の低減率とに基づいて、前記エネルギーの大きさを検出する
ことを特徴とする請求項3に記載のセンシング回路。
【請求項5】
入射する光の照度に応じたレベルの第1出力信号を出力する第1光電変換素子と、
前記第1光電変換素子と同じ光電変換特性を有し、入射する光の照度に応じたレベルの第2出力信号を出力する第2光電変換素子と、
入射する光の照度を所定の減光率で減光させて前記第2光電変換素子に出力する減光手段と、
光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と積算照度との関係を記憶する記憶手段と、
前記第1光電変換素子の積算照度を第1積算照度、前記第2光電変換素子の積算照度を第2積算照度、前記第1積算照度に対応する前記劣化率を第1劣化率、前記第2積算照度に対応する前記劣化率を第2劣化率としたとき、
前記所定の減光率を考慮して前記第1積算照度と前記第2積算照度との組を特定し、
特定した前記第1積算照度と前記第2積算照度とに基づいて前記記憶手段に記憶された劣化率と積算照度との関係を参照し、前記特定した前記第1積算照度と前記第2積算照度との組に対応する前記第1劣化率と前記第2劣化率との組を取得する取得手段と、
前記第1光電変換素子に入射する光の照度を第1照度、前記減光手段を介して前記第2光電変換素子に入射する光の照度を第2照度としたとき、
前記第1出力信号と前記第1劣化率とに基づいて、前記第1照度を算出し、
前記第2出力信号と前記第2劣化率とに基づいて、前記第2照度を算出し、
前記第1照度と前記第2照度との差分を算出する差分算出手段と、
前記取得手段を用いて得た前記第1劣化率と前記第2劣化率との組を前記差分算出手段に供給し、前記差分が最小となる前記第1劣化率を特定し、特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、入射する光の照度を演算する演算手段と
を備える光検出回路。
【請求項6】
前記演算手段は、
前記差分が最小となる前記第1劣化率を特定し、特定した前記第1劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、入射する光の照度を演算することの代わりに、
前記差分が最小となる前記第2劣化率を特定し、特定した前記第2劣化率と前記第2出力信号と前記所定の減光率とに基づいて、入射する光の照度を演算する
ことを特徴とする請求項5に記載の光検出回路。
【請求項7】
前記記憶手段は、光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と積算照度とを対応付けて複数記憶する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の光検出回路。
【請求項8】
前記記憶手段は、光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と積算照度との関係を定めた関数を記憶する
ことを特徴とする請求項5または6に記載の光検出回路。
【請求項9】
入射する光の照度に応じたレベルの第1出力信号を出力する第1光電変換素子と、
前記第1光電変換素子と同じ光電変換特性を有し、入射する光の照度に応じたレベルの第2出力信号を出力する第2光電変換素子と、
入射する光の照度を所定の減光率で減光させて前記第2光電変換素子に出力する減光手段と、
前記第1光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を記憶する記憶手段と、
前記出力比を算出する出力比算出手段と、
前記記憶手段を参照して取得した複数の出力比の各々と、前記出力比算出手段で算出した出力比との差分を算出する差分算出手段と、
前記差分が最小となる前記劣化率を特定し、特定した前記劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、入射する光の照度を演算する演算手段と
を備える光検出回路。
【請求項10】
前記記憶手段は、
前記第1光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を記憶することの代わりに、
前記第2光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を記憶し、
前記演算手段は、
特定した前記劣化率と前記第1出力信号とに基づいて、入射する光の照度を演算することの代わりに、
特定した前記劣化率と前記第2出力信号と前記所定の減光率とに基づいて、入射する光の照度を演算する
ことを特徴とする請求項9に記載の光検出回路。
【請求項11】
前記記憶手段は、前記第1光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比とを対応付けて複数記憶する
ことを特徴とする請求項9に記載の光検出回路。
【請求項12】
前記記憶手段は、前記第1光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を定めた関数を記憶する
ことを特徴とする請求項9に記載の光検出回路。
【請求項13】
前記記憶手段は、前記第2光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比とを対応付けて複数記憶する
ことを特徴とする請求項10に記載の光検出回路。
【請求項14】
前記記憶手段は、前記第2光電変換素子における光電変換の効率の劣化の程度を示す劣化率と、前記第1出力信号のレベルと前記第2出力信号のレベルとの比を示す出力比との関係を定めた関数を記憶する
ことを特徴とする請求項10に記載の光検出回路。
【請求項15】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子は、アモルファスシリコン薄膜トランジスタである
ことを特徴とする請求項5乃至14のうちいずれか1項に記載の光検出回路。
【請求項16】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子は、低温ポリシリコン薄膜トランジスタである
ことを特徴とする請求項5乃至14のうちいずれか1項に記載の光検出回路。
【請求項17】
前記第1光電変換素子と前記第2光電変換素子は、高温ポリシリコン薄膜トランジスタである
ことを特徴とする請求項5乃至14のうちいずれか1項に記載の光検出回路。
【請求項18】
前記減光手段は、所定の光透過率を有するフィルタである
ことを特徴とする請求項9乃至14のうちいずれか1項に記載の光検出回路。
【請求項19】
前記フィルタは、グリーンカラーフィルタである
ことを特徴とする請求項18に記載の光検出回路。
【請求項20】
請求項5乃至19のうちいずれか1項に記載の光検出回路と、
画像を表示する表示部と、
前記光検出回路の出力信号に基づいて、前記表示部の画像の輝度を調整する調整部と
を備える表示装置。
【請求項21】
請求項20に記載の表示装置を備えた電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−2661(P2009−2661A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161001(P2007−161001)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】