説明

センターベアリングサポートの装着構造

【課題】サポートラバー4を有するセンターベアリングサポート1を一対のブラケット11,12で挟み込み、ブラケット11,12を車体にボルト止めするセンターベアリングサポート1の装着構造において、ブラケット11,12を互いに溶接しなくてもブラケット11,12およびセンターベアリングサポート1を組立状態に保つことができるようにする。
【解決手段】ブラケット11,12に孔状係合部11e,12eを設けるとともにサポートラバー4に突起状係合部4eを設け、センターベアリングサポート1をブラケット11,12で挟み込んだときに孔状係合部11e,12eに突起状係合部4eが嵌め込まれることにより、ブラケット11,12は互いに溶接されない状態で組み立てられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等車両における車体の下面に吊設され、車体の下側に横架されるプロペラシャフトを弾性的に支持するセンターベアリングサポートの装着構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センターベアリングサポートはブラケットを介して車体に装着され、一層詳しくは、図5および図6に示すように、サポートラバー52を有するセンターベアリングサポート51を上下一対のブラケット53,54で挟み込み、ブラケット53,54を車体(図示せず)にボルト止め(図示せず、ブラケット53,54に設けたボルト挿通孔を符号55で示す)することにより装着される。
【0003】
しかしながら、従来技術には、以下の問題がある。
【0004】
すなわち上記図5および図6に示したように、従来の構造では、サポートラバー52を有するセンターベアリングサポート51を一対のブラケット53,54で挟み込んだ後、ブラケット53,54を互いに溶接している(溶接部位を符号56で示す)。しかしながら、上記したようにブラケット53,54は車体にボルト止めされることから、ブラケット53,54同士の溶接は当該ブラケット53,54を車体に固定するまでの働き(ブラケット53,54およびセンターベアリングサポート51を組立状態に保つ働き)しかなく、ブラケット53,54を車体にボルト止めしてしまえばブラケット53,54が溶接されていることは不要となるために、過剰品質と考えられる。
【0005】
また、ブラケット53,54を溶接すると、ブラケット53,54およびセンターベアリングサポート51よりなる組立品はもはや分解することが不可能となる。したがって、溶接してからではブラケット53,54に十分な表面処理を施すことができず、特に溶接部位56近辺で耐食性が低下してしまう。
【0006】
また、ブラケット53,54およびセンターベアリングサポート51が組み立てられた状態では、両者間に水(泥水等)が浸入してそのまま溜まってしまうことがあり(水が溜まりやすい部位を符号57で示す)、よって氷結に伴う体積膨張等によりブラケット53,54に破損が生じたり、錆が発生したりすることがある。
【0007】
【特許文献1】実開昭50−35933号公報
【特許文献2】実開昭51−107548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて、サポートラバーを有するセンターベアリングサポートを一対のブラケットで挟み込み、ブラケットを車体にボルト止めするセンターベアリングサポートの装着構造において、一対のブラケットを互いに溶接しなくてもこれらのブラケットおよびセンターベアリングサポートを組立状態に保つことができ、もってブラケットの溶接工程を省略するとともに組立後に分解することが可能な装着構造を提供することを目的とする。
【0009】
またこれに加えて、ブラケットおよびセンターベアリングサポート間に浸入する水を排出する機能を備え、もって氷結によるブラケットの破損や錆の発生を抑えることが可能な装着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による装着構造は、サポートラバーを有するセンターベアリングサポートを一対のブラケットで挟み込み、前記ブラケットを車体にボルト止めするセンターベアリングサポートの装着構造において、前記各ブラケットに孔状係合部を設けるとともに前記孔状係合部に対応して前記サポートラバーに突起状係合部を設け、前記センターベアリングサポートを前記一対のブラケットで挟み込んだときに前記孔状係合部に前記突起状係合部が嵌め込まれることにより、前記一対のブラケットは互いに溶接されない状態で組み立てられることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項2による装着構造は、上記した請求項1記載の装着構造において、ブラケットに設けた孔状係合部は、前記ブラケットおよびセンターベアリングサポート間に浸入する水に対する水抜き孔を兼ねることを特徴とするものである。
【0012】
上記構成を備えた本発明の装着構造においては、センターベアリングサポートのサポートラバーに設けた突起状係合部が一方のブラケットに設けた孔状係合部に嵌め込まれることによりセンターベアリングサポートおよび一方のブラケットが連結されるとともに、同じくサポートラバーに設けた突起状係合部が他方のブラケットに設けた孔状係合部に嵌め込まれることによりセンターベアリングサポートおよび他方のブラケットが連結される。したがって、一対のブラケットは互いに直接連結されなくてもセンターベアリングサポートを介して連結されることから、一対のブラケットを互いに溶接しなくても一対のブラケットおよびセンターベアリングサポートの三者を組立状態に保つことが可能となる。
【0013】
また、ブラケットに設けた孔状係合部が水抜き孔を兼ねる場合には、ブラケットおよびセンターベアリングサポート間に浸入する水を排出することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0015】
すなわち、本発明の請求項1による装着構造においては上記したように、センターベアリングサポートのサポートラバーに設けた突起状係合部が一方のブラケットに設けた孔状係合部に嵌め込まれることによりセンターベアリングサポートおよび一方のブラケットが連結されるとともに、サポートラバーに設けた突起状係合部が他方のブラケットに設けた孔状係合部に嵌め込まれることによりセンターベアリングサポートおよび他方のブラケットが連結される。したがって、一対のブラケットは互いに直接連結されなくてもセンターベアリングサポートを介して連結されることから、一対のブラケットを互いに溶接しなくても一対のブラケットおよびセンターベアリングサポートの三者を組立状態に保つことが可能とされている。したがって、ブラケット同士の溶接工程を省略することができ、組立作業を容易化することができる。
【0016】
また、ブラケット同士は溶接されないので、一旦嵌め込んだ突起状係合部を孔状係合部から引き抜くことによりブラケットおよびセンターベアリングサポートは分解することが可能とされている。したがって、必要に応じ分解してブラケットに十分な表面処理を施したり、あるいは必要に応じ一部の部品(例えばセンターベアリングサポート)のみを新品と交換したりすることができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0017】
またこれに加えて、本発明の請求項2による装着構造においては上記したように、ブラケットに設けた孔状係合部が水抜き孔を兼ねることから、ブラケットおよびセンターベアリングサポート間に浸入する水を排出することが可能とされている。したがって、ブラケットおよびセンターベアリングサポート間に水が溜まって氷結によるブラケットの破損や錆が発生するのを抑えることができ、ブラケットの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0019】
(1)外環外周部ゴム廻しおよび2分割ブラケット挟み込み構造のセンターベアリングサポートにおいて、サポートラバーの外径部にゴム突起を持ち、またその突起が嵌まり込むような貫通穴をブラケットに設定し、サポートラバーをブラケットで挟み込んだ場合に上記突起と穴が嵌まり込んで仮固定ができる構造とする。
【0020】
(2)サポートラバーの外周側にゴム突起を設定し、その位置に相当する部分のブラケットに貫通穴を設定する。これによりサポートラバーをブラケットで挟み込んだときにゴム突起とブラケット貫通穴とが嵌まり込み、センターベアリングサポートを車体に組み付けるまで溶接などの固定をしなくても良い。また、ゴム突起内まで外環を延ばすことでゴム突起とブラケット貫通穴との結合力(離脱力)を大きくすることが可能である。
【0021】
(3)2分割されたブラケットのサポートラバー保持部に孔をプレス同時成形する。孔は複数箇所あっても可とする。サポートラバー外周部すなわちブラケットとの合わせ部に突起を設け、前記孔に挿入することでブラケットを仮止めする構造とする。突起については、カエリを設けることで保持力を上げても可。
【実施例】
【0022】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施例に係る装着構造に用いられるセンターベアリングサポート1およびブラケット11,12の組立状態を示しており、そのA−A線拡大断面が図2に示されている。また、図3は図2の要部拡大図である。
【0024】
当該実施例に係る装着構造は、サポートラバー4を有するセンターベアリングサポート1を上下一対のブラケット11,12で挟み込み、この一対のブラケット11,12を車体(図示せず)にボルト止めするセンターベアリングサポート1の装着構造であって、各ブラケット11,12に孔状の係合部11e,12eが設けられるとともに、この孔状係合部11e,12eに対応してサポートラバー4に突起状の係合部4eが設けられ、センターベアリングサポート1を一対のブラケット11,12で挟み込んだときに孔状係合部11e,12eに突起状係合部4eが嵌め込まれることにより、一対のブラケット11,12は互いに溶接されなくても組み立てられるように構成されている。
【0025】
各構成要素の詳細は、以下のとおりである。
【0026】
すなわち先ず、センターベアリングサポート1は、金属製の外環2と内環3が環状を呈するゴム状弾性体製のサポートラバー4を介して連結されており、内環3の内周側にベアリング5、ベアリング保持環6および軸方向一対のダストシール7が嵌着されている。ベアリング5の内周側にはプロペラシャフト(図示せず)が挿通される。サポートラバー4は、外環2を埋設した外周取付部4aと、内環3に接着された内周取付部4bと、両取付部4a,4b間に設けられたベロー状の作動部4cとを一体に有しており、ベロー状作動部4cの背面側であって内周取付部4bの外周面に、外環2と内環3の径方向変位を一定量までに規制するためのストッパ突起4dが設けられている。
【0027】
ブラケット11,12は、所定の金属により成形されるとともに上下一対の組み合わせよりなり、それぞれ上記センターベアリングサポート1を保持するための正面半円形の保持部11a,12aと、その両側に設けられた平面フランジ状の取付部11b,12bとを一体に有しており、取付部11b,12bの平面上にボルト挿通孔11c,12cが対応して設けられている。また、半円形保持部11a,12aの内周面にはその軸方向中央に位置して、上記センターベアリングサポート1におけるサポートラバー4の外周取付部4aを嵌合するための溝状装着部11d,12dが設けられている。尚、このブラケット11,12は互いに溶接されないので、溶接部位は設けられていない。
【0028】
上記各ブラケット11,12における半円形保持部11a,12aの円周上中央部位に孔状係合部11e,12eが設けられており、この孔状係合部11e,12eに対応して、上記サポートラバー4における外周取付部4aの外周面に突起状係合部4eが設けられている。孔状係合部11e,12eは各ブラケット11,12に1箇所ずつ設けられているので、これに対応して、突起状係合部4eは上下2箇所に設けられている。また、孔状係合部11e,12eはそれぞれ円周方向に延びる長孔状に形成されているので、これに対応して、突起状係合部4eも円周方向に長いものとして形成されている。
【0029】
また、各突起状係合部4eの先端には、孔状係合部11e,12eの軸方向幅よりも幅広の抜け止め頭部4fが設けられており、さらに各突起状係合部4eの厚み内には、その芯材として機能する金属片部2aが埋設されている。この金属片部2aは外環2にその一部として設けられたものであって、すなわち筒状を呈する外環2の軸方向一端に径方向外方へ向けてフランジ状立ち上がり部が円周上一部に突起状係合部4eに対応して設けられ、このフランジ状立ち上がり部が突起状係合部4e内に埋設されることにより金属片部2aとされている。この金属片部2aには、ゴム状弾性体よりなる突起状係合部4eを補強する補強効果があり、また突起状係合部4eを孔状係合部11e,12eから抜けにくくする抜け止め効果がある。
【0030】
上記センターベアリングサポート1を車体の下面に装着するに際しては、センターベアリングサポート1を上下一対のブラケット11,12で挟み込み、ブラケット11,12を車体にボルト止めするが、センターベアリングサポート1をブラケット11,12で挟み込むと、孔状係合部11e,12eに突起状係合部4eが根元まで嵌め込まれることから、センターベアリングサポート1およびブラケット11,12は一体の組立品とされる。
【0031】
すなわち、センターベアリングサポート1のサポートラバー4の上部に設けた突起状係合部4eは、上側のブラケット11に設けた孔状係合部11eに嵌め込まれ、これによりセンターベアリングサポート1および上側のブラケット11が連結される。また、サポートラバー4の下部に設けた突起状係合部4eは、下側のブラケット12に設けた孔状係合部12eに嵌め込まれ、これによりセンターベアリングサポート1および下側のブラケット12が連結される。このとき上下のブラケット11,12は取付部11b,12b同士が重ねられる。したがって一対のブラケット11,12は互いに直接連結されなくてもセンターベアリングサポート1を介して間接的に連結されることから、一対のブラケット11,12を互いに溶接しなくても一対のブラケット11,12およびセンターベアリングサポート1の三者を組立状態に保つことが可能とされている。したがって上記装着構造によれば、ブラケット11,12同士の溶接工程を省略することができることから、組立作業を容易化することができる。
【0032】
また、上記したようにブラケット11,12同士を溶接することなく組み立てることから、一旦嵌め込んだ突起状係合部4eを孔状係合部11e,12eから引き抜くことによって上記組立品は分解することが可能とされている。したがって、必要に応じ分解してブラケット11,12に十分な表面処理を施したり、あるいは必要に応じて一部の部品のみを新品と交換したりすることができることから、メンテナンス性を向上させることができる。
【0033】
また、ブラケット11,12に設けた孔状係合部11e,12eが水抜き孔を兼ねるよう構成されていることから、センターベアリングサポート1およびブラケット11,12間に浸入する水を外部に排出することが可能とされている。水は具体的には、センターベアリングサポート1におけるサポートラバー4の外周取付部4aとブラケット11,12の溝状装着部11d,12d間の隙間に浸入しやすく、浸入した水が排出されないと、氷結に伴う体積膨張によりブラケット11,12が破損したりブラケット11,12に錆が発生したりする。したがって上記装着構造によれば、浸入した水を排出できることからブラケット11,12に破損や錆が発生するのを抑えることができ、これによりブラケット11,12の耐久性を向上させることができる。
【0034】
尚、上記孔状係合部11e,12eおよび突起状係合部4eの形状や配置、形成数などは特に限定されるものでなく、要は、孔状係合部11e,12eに突起状係合部4eを圧入することによりブラケット11,12に対してセンターベアリングサポート1を組み付けることができれば良い。
【0035】
図4に示す他の実施例では、孔状係合部11e,12eは円孔とされ、この円孔にピン状をなす突起状係合部4eが圧入される構成とされている。ピン状の係合部4eの先端には抜け止め頭部(カエリまたは段付き形状とも称する)4fが設けられるとともに、さらに組付時の引き手4gが一体に設けられている。引き手4gは、孔状係合部11e,12eにピン状係合部4eを圧入するときにこれを掴んで引っ張るためのものであって、ピン状係合部4eは図示した状態から抜け止め頭部4fが孔状係合部11e,12eを通過するまで圧入されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例に係る装着構造に用いるセンターベアリングサポートおよびブラケットの組立状態を示す正面図
【図2】図1におけるA−A線拡大断面図
【図3】(A)および(B)ともそれぞれ図2の要部拡大図
【図4】(A)は本発明の他の実施例に係る装着構造に用いるセンターベアリングサポートおよびブラケットの要部断面図、(B)は同図(A)におけるB方向矢視図、(C)は突起状係合部の斜視図
【図5】従来例に係るセンターベアリングサポートおよびブラケットの組立状態を示す正面図
【図6】図5におけるC−C線拡大断面図
【符号の説明】
【0037】
1 センターベアリングサポート
2 外環
2a 金属片部
3 内環
4 サポートラバー
4a 外周取付部
4b 内周取付部
4c 作動部
4d ストッパ突起
4e 突起状係合部
4f 抜け止め頭部
4g 引き手
5 ベアリング
6 ベアリング保持環
7 ダストシール
11,12 ブラケット
11a,12a 保持部
11b,12b 取付部
11c,12c ボルト挿通孔
11d,12d 溝状装着部
11e,12e 孔状係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サポートラバー(4)を有するセンターベアリングサポート(1)を一対のブラケット(11)(12)で挟み込み、前記ブラケット(11)(12)を車体にボルト止めするセンターベアリングサポート(1)の装着構造において、
前記各ブラケット(11)(12)に孔状係合部(11e)(12e)を設けるとともに前記孔状係合部(11e)(12e)に対応して前記サポートラバー(4)に突起状係合部(4e)を設け、前記センターベアリングサポート(1)を前記一対のブラケット(11)(12)で挟み込んだときに前記孔状係合部(11e)(12e)に前記突起状係合部(4e)が嵌め込まれることにより、前記一対のブラケット(11)(12)は互いに溶接されない状態で組み立てられることを特徴とするセンターベアリングサポートの装着構造。
【請求項2】
請求項1記載のセンターベアリングサポートの装着構造において、
ブラケット(11)(12)に設けた孔状係合部(11e)(12e)は、前記ブラケット(11)(12)およびセンターベアリングサポート(1)間に浸入する水に対する水抜き孔を兼ねることを特徴とするセンターベアリングサポートの装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−230296(P2007−230296A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52291(P2006−52291)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】