説明

ソフトウェアキーボード装置及びそれを備えたテレビジョン受像機

【課題】ソフトウェアキーボードのキーをカーソルで選択するソフトウェアキーボード装置において、簡単な仕組みを追加することにより、ソフトウェアキーボードの基本的構成を大きく変えることなく、目標のキーに到達するまでの操作回数を削減する。
【解決手段】テレビジョン受像器1のモニター部2の画面に表示されたソフトウェアキーボード20のキー21の中から、目標のキー21をリモコン10を使って選択する。リモコン10に設けた増倍キー13を押すとジョグ移動増倍モードになり、リモコン10のジョグスイッチ11を操作したときのカーソル22のジョグ移動距離が所定の倍率に拡大される。そして現在カーソル22が位置するキー21及びカーソル22が移動する可能性のあるキー21とそれ以外のキー21とで表示方式が変わり、カーソル22が移動する可能性のあるキー21を含むキーマトリックス内の行と列はハイライト表示となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソフトウェアキーボード装置及びそれを備えたテレビジョン受像機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に対しコマンドを入力するインタフェース機構として、物理的なキーボードに代え、画面上に表示されるキーをポインティングデバイスやシフトキー等で選択する、いわゆるソフトウェアキーボードと呼ばれるものが様々な局面で使用されるようになっている。テレビジョン受像機にあっても、地上波デジタル放送対応のものではデータ放送の受信画面上でソフトウェアキーボードにより入力を行う仕組みが取り入れられている。そのようなソフトウェアキーボードの例を特許文献1〜5に見ることができる。
【特許文献1】特開2005−286835号公報([0021]−[0037]、図1−7)
【特許文献2】特表2005−509974号公報([0014]−[0031]、図1−2)
【特許文献3】特開2004−118675号公報([0019]−[0047]、図1−7)
【特許文献4】特開2000−39941号公報([0018]−[0061]、図1−10)
【特許文献5】特開平10−228344号公報([0006]−[0037]、図1−4、7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献3記載のソフトウェアキーボードのように、ポインティングデバイスを用いてキーの選択を行うものにあっては、次に選択すべきキーが飛び離れた位置にあっても容易にカーソルを移動できる。しかしながら機器のリモートコントローラ(以下「リモコン」と略称する)に備わったシフトキー(ジョグキー)でカーソルをジョグ移動させてキーを選択する仕組みのものでは、目指すキーが遠く離れた位置にある場合、シフトキー(ジョグキー)の押し下げ動作を何回も繰り返さねばならない。そこで、できるだけ少ないキー操作回数で目標のキーに到達できるよう、様々な工夫がこらされている。
【0004】
特許文献1に記載されたTV受信機では、ソフトウェアキーボードにリモコンのキー配列を重ねて表示し、目標のソフトウェアキーに位置が一致したリモコンキーを押すことにより、そのソフトウェアキーの入力を確定する仕組みになっている。この方式は、リモコンのキーの中に少なくともテンキーが含まれている必要があり、また画面上でソフトウェアキーのキー種別とリモコンのキー種別を並べて表示するので見やすさに欠けるという問題がある。
【0005】
特許文献2に記載された装置では、ソフトウェアキーボードのキーマトリックス内をカーソルが自動的に移動する。目標のソフトウェアキーにカーソルが一致したときにカーソルの動きを止め、そのソフトウェアキーの入力を確定する。この方式は、目標のソフトウェアキーにカーソルが重なった瞬間にカーソルを止める必要があり、反射神経の衰えた人には操作しづらいという問題がある。
【0006】
特許文献4に記載された装置では、ソフトウェアキーボードがキーパレットの領域とメニューの領域に大別され、リモコンのメニューキーを押すことにより、フォーカスをキーパレット領域からメニュー領域へ、あるいはその逆へと移動することができる。またフォーカスがキーパレットの端にあるとき、キーパレットの外に出るようにフォーカス移動キーを操作すると、フォーカスがキーパレットの反対側に移動する。フォーカスがキーパレットの端の位置にないときは、キーを1個ずつたどる形でフォーカスをジョグ移動させねばならない。
【0007】
特許文献5に記載された装置では、m×nのマトリックスで再帰的に配列されたソフトウェアキーボードを、同じくm×nのマトリックス構造のキー配列を有するリモコンで操作してキー入力回数を減らしている。この方式だとキー配列を一定の法則にあてはめねばならず、ソフトウェアキーボードの設計が制約を受ける。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、ソフトウェアキーボードのキーをカーソルで選択するソフトウェアキーボード装置において、簡単な仕組みを追加することにより、ソフトウェアキーボードの基本的構成を大きく変えることなく、目標のキーに到達するまでの操作回数を削減できるようにすることを目的とする。またこのようソフトウェアキーボード装置を備えた使い勝手の良いテレビジョン受像機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、画面にインターフェースとして表示されたソフトウェアキーボードのキーを、画面上のカーソルをリモコンでジョグ移動させることにより選択するソフトウェアキーボード装置を備えたテレビジョン受像機において、
前記リモコンに、前記カーソルのジョグ移動距離を増倍できる増倍キーを設けるとともに、この増倍キーの操作によりジョグ移動増倍モードにしたときは、現在カーソルが位置するキー及びカーソルが移動する可能性のあるキーとそれ以外のキーとで表示方式を変え、且つ前記カーソルが移動する可能性のあるキーを含むキーマトリックス内の行と列をハイライト表示することを特徴としている。
【0010】
この構成によると、地上波デジタル放送のデータ放送受信画面上でインターフェースとして表示されたソフトウェアキーボードのキーをリモコンで選択する際など、増倍キーでカーソルのジョグ移動距離を増倍することにより、一気に何個か先のキーへとカーソルを移動させることが可能になり、少ない操作回数で速やかに目標のキーを選択することができる。また増倍移動先のキーとそれ以外のキーとで表示モードが変わり、そのキーを含むキーマトリックス内の行と列をハイライト表示するから、次の操作でカーソルがどの位置まで移動するかが明確になり、カーソルを過たず目標のキーに接近させることができる。
【0011】
請求項2の発明は、画面にインターフェースとして表示されたソフトウェアキーボードのキーを、画面上のカーソルをカーソル移動装置でジョグ移動させることにより選択するソフトウェアキーボード装置において、前記カーソル移動装置に、カーソルのジョグ移動距離を増倍できる増倍キーを設けたことを特徴としている。
【0012】
この構成によると、増倍キーでカーソルのジョグ移動距離を増倍することにより、一気に何個か先のキーへとカーソルを移動させることが可能になり、少ない操作回数で速やかに目標のキーを選択することができる。増倍キーを追加するだけなのでハードウェアの変更が少なく、ソフトウェアキーボードの基本的構成を変える必要もないので実現容易である。
【0013】
請求項3の発明では、請求項2のソフトウェアキーボード装置において、前記増倍キーの操作によりジョグ移動増倍モードにしたときは、現在カーソルが位置するキー及びカーソルが移動する可能性のあるキーとそれ以外のキーとで表示方式を変えることを特徴としている。
【0014】
この構成によると、次の操作でカーソルがどの位置まで移動するかが明確になり、カーソルを過たず目標のキーに接近させることができる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項2又は3のソフトウェアキーボードにおいて、前記カーソル移動装置が前記画面を有する機器のリモコンであることを特徴としている。
【0016】
この構成によると、ソフトウェアキーボードを表示させる機器のリモコンをカーソル移動装置に兼用したから、構成要素の数が減り、製造コストを削減できる。使用者にとっても、使い慣れたリモコンでカーソルの操作まで行うことができるから利便性が高い。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、画面にインターフェースとして表示されたソフトウェアキーボードのキーを、画面上のカーソルをリモコンでジョグ移動させることにより選択するソフトウェアキーボード装置において、前記リモコンに、前記カーソルのジョグ移動距離を増倍できる増倍キーを設けるとともに、この増倍キーの操作によりジョグ移動増倍モードにしたときは、現在カーソルが位置するキー及びカーソルが移動する可能性のあるキーとそれ以外のキーとで表示方式を変え、且つ前記カーソルが移動する可能性のあるキーを含むキーマトリックス内の行と列をハイライト表示するものであるから、テレビジョン受像機にこのソフトウェアキーボード装置を備えさせ、地上波デジタル放送のデータ放送受信画面上でインターフェースとして表示されたソフトウェアキーボードのキーをリモコンで選択する際など、増倍キーでカーソルのジョグ移動距離を増倍することにより、一気に何個か先のキーへとカーソルを移動させることが可能になり、少ない操作回数で速やかに目標のキーを選択することができる。また増倍移動先のキーとそれ以外のキーとで表示モードが変わり、そのキーを含むキーマトリックス内の行と列をハイライト表示するから、次の操作でカーソルがどの位置まで移動するかが明確になり、カーソルを過たず目標のキーに接近させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。図1はソフトウェアキーボード装置を備えたテレビジョン受像機の概略構成図、図2−4はソフトウェアキーボードの概念図にしてそれぞれ異なるモードを示すものである。
【0019】
図1には、ソフトウェアキーボード装置を備えた機器の一例として、テレビジョン受像機1が示されている。テレビジョン受像機1はモニター部2と制御回路部3に大別され、リモコン10が付随する。
【0020】
制御回路部3には次の回路要素が含まれる。すなわち、リモコン10からの赤外線信号を受け取る赤外線受光部4、赤外線受光部4から信号を受け取って処理する中央処理部5、中央処理部5での処理に必要なデータを蓄積するメモリ6、モニター部2の画面上にソフトウェアキーボードを表示させるためのOSD(On Screen Display)回路7、及びTV出力回路8である。
【0021】
リモコン10には、テレビジョンのチャンネル選択や音量調整を行うためのキー群(これらは図示しない)の他、メニュー選択を行うためのジョグキー(十字キー)11が備えられている。ジョグキー11の中心には決定キー12が配置されている。ジョグキー11と決定キー12はソフトウェアキーボードでキーの選択と決定を行うのにも用いられる。その他リモコン10には増倍キー13が設けられている。
【0022】
モニター部2の画面に表示されるソフトウェアキーボード20を図2に示す。ソフトウェアキーボード20はキー21を12行15列のマトリックスに配列したものである。ソフトウェアキーボード20におけるキー21の選択は次のようにして行われる。
【0023】
図2において、ソフトウェアキーボード20の上端の行を第1行とし、左端の列を第1列とする。カーソル22は現在第4行第4列の位置のキー21にある。識別のため、このキー21には「A」の符号が付されている。カーソル22を第10行第13列の位置のキー21(識別のため「B」の符号が付されている)に移動させる場合、通常であればジョグキー12を操作してカーソル22を下に6回、右に9回、合計15回ジョグ移動させることになる。
【0024】
上記のように何度もジョグ移動させる手間を省くのが増倍キー13の役割である。増倍キー13を押しながらジョグキー12を押すと、ジョグ移動距離が所定の倍率に拡大される。すなわち予め設定した倍率の分だけ先のキー21にカーソル22が移動する。ここでは倍率は「5」に設定されており、カーソル22は、ジョグの方向によって、第9行第4列のキー21に移動するか、第4行第9列のキー21に移動することになる。
【0025】
増倍キー13を押してジョグ移動増倍モードにすると、ソフトウェアキーボード20の表示が図3のように変わる。すなわち、現在カーソル22のある第4行第4列のキー21と、カーソル22が移動する可能性のある第9行第4列のキー21、及び第4行第9列のキー21と、それ以外のキー21とで表示方式を変える。これは例えば、第4行第4列、第9行第4列、及び第4行第9列の3個のキー21は図2の表示状態のままに保ち、それ以外のキー21はグレイ表示にする、あるいは淡く表示するといった手法で達成できる。
【0026】
さらに、カーソル22の移動先が5行あるいは5列離れた箇所であることを印象づけるため、その行と列をハイライト表示する。すなわち第9行のバックには水平のハイライト帯23Hを入れ、第9列のバックには垂直のハイライト帯23Vを入れる。
【0027】
どちらを先にしても構わないが、第4行第4列のカーソル22を下に1回、右に1回増倍移動させると、カーソル22は第9行第9列の位置に来る。ここで増倍キー13から指を離すと図2の表示に戻る。後は通常のジョグ移動モードで下に1回、右に4回させればカーソル22は目標であった第10行第13列のキー21に到着する。ここまでに要したジョグ移動回数は7回であり、増倍移動を利用しなかった場合に比べ、ジョグ移動回数を8回節約できたことになる。
【0028】
カーソル22が移動する可能性のあるキー21の表示方式が変わるのは、その時点におけるカーソル位置を基準として行われる。従って、カーソル22が例えば第9行第4列の位置に増倍移動したとすれば、第9行第4列のキー21の他、右方向に増倍移動する可能性がある第9行第9列のキー21と、上方向に増倍移動(逆戻りということになるが)する可能性がある第4行第4列のキー21が図2の表示状態で、それ以外のキー21はグレイ表示など他の表示方式となる。ハイライト帯23H、23Vの位置もその都度変わる。
【0029】
キー21の表示方式を変えるについては、上記の方式の他、様々な方式が考えられる。例えばキーの大きさを変える、キーの形状を変える、フォントを変える、フォントの色を変える、非表示にするなどである。適宜のものを選択し、あるいはそれらを組み合わせて実施すればよい。
【0030】
増倍移動の場合の倍率も任意に設定できる。図3の場合の「5」は単なる例示に過ぎない。
【0031】
ジョグ移動増倍モードに入り、再びそこから抜けるやり方も色々なものが考えられる。図3では増倍キー13を押している間中ジョグ移動増倍モードが維持されることとしたが、増倍キー13を一度押せばそれ以後指を離してもジョグ移動増倍モードが維持され、もう一度増倍キー13を押すことによりジョグ移動増倍モードから抜ける、という方式も可能である。あるいは、増倍キー13を一度押してジョグ移動増倍モードにした後、ジョグキー11でカーソル22を一度増倍移動させればジョグ移動増倍モードから脱却する、ということにもできる。
【0032】
図4にジョグ移動増倍モードの他の例を示す。図4における増倍移動の倍率は「10」である。この場合、右方向へのジョグスイッチ11を少し長く押すとカーソル22は一気に第4行第14列のキー21まで移動する。下方向へのジョグスイッチ11を押した後、連続して右方向へのジョグスイッチ11を押すと、カーソル22は第9行第9列のキー21まで一気に移動する。
【0033】
以上本発明の実施形態につき説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、ソフトウェアキーボードを備える機器全般、及びソフトウェアキーボード装置を備えるテレビジョン受像機に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ソフトウェアキーボード装置を備えたテレビジョン受像機の概略構成図
【図2】ソフトウェアキーボードの概念図
【図3】異なるモードにおけるソフトウェアキーボードの概念図
【図4】さらに異なるモードにおけるソフトウェアキーボードの概念図
【符号の説明】
【0036】
1 テレビジョン受像機
2 モニター部
3 制御回路部
10 リモコン
11 ジョグキー
13 増倍キー
20 ソフトウェアキーボード
21 キー
22 カーソル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面にインターフェースとして表示されたソフトウェアキーボードのキーを、画面上のカーソルをリモコンでジョグ移動させることにより選択するソフトウェアキーボード装置を備えたテレビジョン受像機において、
前記リモコンに、前記カーソルのジョグ移動距離を増倍できる増倍キーを設けるとともに、この増倍キーの操作によりジョグ移動増倍モードにしたときは、現在カーソルが位置するキー及びカーソルが移動する可能性のあるキーとそれ以外のキーとで表示方式を変え、且つ前記カーソルが移動する可能性のあるキーを含むキーマトリックス内の行と列をハイライト表示することを特徴とするテレビジョン受像機。
【請求項2】
機器の画面にインターフェースとして表示されたソフトウェアキーボードのキーを、画面上のカーソルをカーソル移動装置でジョグ移動させることにより選択するソフトウェアキーボード装置において、
前記カーソル移動装置に、カーソルのジョグ移動距離を増倍できる増倍キーを設けたことを特徴とするソフトウェアキーボード装置。
【請求項3】
前記増倍キーの操作によりジョグ移動増倍モードにしたときは、現在カーソルが位置するキー及びカーソルが移動する可能性のあるキーとそれ以外のキーとで表示方式を変えることを特徴とする請求項2に記載のソフトウェアキーボード装置。
【請求項4】
ジョグ移動増倍モード時、前記カーソルが移動する可能性のあるキーを含むキーマトリックス内の行と列をハイライト表示することを特徴とする請求項3に記載のソフトウェアキーボード装置。
【請求項5】
前記カーソル移動装置が前記画面を有する機器のリモコンであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のソフトウェアキーボード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−206861(P2007−206861A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23329(P2006−23329)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】