説明

ソフトエラー率の計算方法、プログラム、半導体集積回路の設計方法及び設計装置、並びに半導体集積回路

【課題】SRAM又は記憶回路素子のソフトエラー率(SER)を製品設計段階で簡単に見積もる方法を提供する。
【解決手段】MISFETで構成される記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード拡散層面積とソフトエラー率(SER)との関係を複数の情報記憶ノード電圧Vnをパラメータとして測定した測定結果を使用し(S1)、同一情報記憶ノード電圧VnにおけるSERの情報記憶ノード面積依存性を表す第1の数式を導出する(S2)。そして、測定結果から同一情報記憶ノード面積ScにおけるSERの情報記憶ノード電圧依存性の関係を第1の数式に代入して第2の数式を導出する(S3)。求めたい記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧を第2の数式に代入すれば、そのSERを計算することができる(S4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタで構成される記憶回路又は情報保持回路を有する半導体集積回路、そのソフトエラー率の計算方法及びプログラム、並びにその設計方法及び設計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時の半導体デバイスの微細化による問題の一つにソフトエラーがある。半導体デバイスのソフトエラーは、狭義の意味では記憶ノードに蓄積された電荷が放射線によって失われることによって、情報が「反転」する一過性の不良である。低電圧化と相まって今後大きな問題となると予想される。
【0003】
この問題の対策としては、記憶ノードに容量を付加することでソフトエラー耐性を向上させる方法が知られている。しかしながら、メモリセルが小さくなった今日、簡単なプロセスで多くの容量を付加することは難しい。さらに、高速SRAMには、動作速度の面からセルノードにソフトエラーに効果があるほどの容量を付加できないことがある。
【0004】
また、容量付加とは異なるソフトエラー対策としては、セルノード拡散層や基板(ウェル)の不純物濃度プロファイルを最適化するが知られている。セルノード拡散層や基板(ウェル)の不純物濃度プロファイルの最適化法の一つとしては、セルノード拡散層に入る電子・正孔を少なくすることが挙げられる。ウェルの中にウェルやバリヤ層を設けること等がその代表的な方法である。しかしながら、最適条件を決めるには多くの試作をしなければならないという問題がある。
【0005】
現状では、どれか一つの対策ではなく、上記のような種々の対策を合わせて製品を作っている。このため、製品を試作あるいはTEG(Test Element Group)を試作してみないとソフトエラー率(SER)が判らない状態にある。
【0006】
発表されているSRAMのSERのトレンドは発表者によって異なる結果となっている。例えば、非特許文献1には、各世代での単位ビット数当りで比較した場合、微細化でSERが悪化する(FIT値が増加する)ことが記載されている。一方、非特許文献2及び非特許文献3には、微細化でSERが概ねよくなる(FIT値は減少する)ことが示されている。これらは、各世代のSRAMの電圧(ノード電圧)の設定やセルサイズの違いなどが原因と考えられる。
【0007】
こうした背景の中、設計段階で微細化デバイスのSERを精度良く見積もることがますます重要となってきた。従来、SERの見積もりに関しては、主にシミュレーションが使われてきた。
【0008】
一般にソフトエラーのシミュレーションを行うには製品のプロセス情報やマスクレイアウト情報、回路情報、及び核反応モデルなどが必要で、当該シミュレータに精通した技術者(シミュレータの開発者)でないと使用できないという問題がある。シミュレーションの例として、特許文献1が挙げられる。この特許文献1にはシミュレーションを使ってその結果を製品設計へフィードバックすることやシミュレーションの評価方法が開示されている。
【0009】
また、特定の情報をパラメータとしてシミュレーションを行いその結果をテーブルにしておき、パラメータを入力すれば簡単にSERを計算できる方法が知られている。例えば、非特許文献4には、MBGR法によるテーブルモデルデータが記載されている。
【特許文献1】特開2004−251813号公報(図6)
【非特許文献1】P. Hazucha, et al., "Neutron Soft Error Rate Measurements in a 90-nm CMOS Process and Scaling Trends in SRAM from 0.25um to 90-nm Generation" 2003 IEEE International Electron Devices Meeting TECHNICAL DIGEST, pp.523-526 (Fig.16)
【非特許文献2】Soon -Moon Jung, et al., "Soft Error Immune 0.46um2 SRAM Cell with MIM Node Capacitor by 65nm CMOS Technology for Ultra High Speed SRAM" 2003 IEEE International Electron Devices Meeting TECHNICAL DIGEST, pp.289-292 (Fig.9)
【非特許文献3】Ethan H. Cannon, et al., "SRAM SER in 90,130and180nm Bulk and SOI Technologies" 2004 IEEE International Reliability Physics Symposium, pp.300-304 (Fig.1)
【非特許文献4】Y. Tosaka, et al., "Simple Method for Estimating Neutron-Induced Soft Error Rates Based on Modified BGR Model" IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS, VOL. EDL-20, NO.2, pp89-91, 1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献4に記載のテーブルモデルを用いれば、電卓等で簡単にSERを求めることができる。しかしながら、このテーブルモデルを使用する場合には、セルのノードが反転するのに必要な電荷量(臨界電荷量)Qcと、空乏層Wを加味しセルのサイズと深さとの関係から定められる値(感応深さ)dを、別途シミュレーションで求めなければならない。このように、現状では、設計段階でSERを見積もるにはシミュレータが必要である。更に、シミュレーションの精度についても検証が必要であるという問題点もある。したがって、システムの設計段階において、シミュレーションを使用することなく、かつ精度よくSERを見積もることができれば、システムのソフトエラー対策を施すことができて便利である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるソフトエラー率の計算方法は、トランジスタで構成される記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード拡散層面積とソフトエラー率との関係を複数の情報記憶ノード電圧をパラメータとして測定した測定結果から、同一情報記憶ノード電圧におけるソフトエラー率の情報記憶ノード面積依存性を表す第1の数式を導出する工程と、同一情報記憶ノード面積におけるソフトエラー率の情報記憶ノード電圧依存性の関係を前記第1の数式に代入して、ソフトエラー率を情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧の関数で示す第2の数式を導出する工程と、前記第2の数式に所望の情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を計算する工程とを有するものである。
【0012】
本発明においては、記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード拡散層面積とソフトエラー率との関係を複数の情報記憶ノード電圧をパラメータとして測定した測定結果から、ソフトエラー率を情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧の関数で示す第2の数式を導出することで、シミュレーションなしで所望のノード電圧、拡散層面積におけるソフトエラー率を算出することができる。
【0013】
本発明にかかる半導体集積回路の設計方法は、トランジスタで構成される記憶回路又は情報保持回路を有する半導体集積回路の設計方法であって、前記記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード拡散層面積とソフトエラー率との関係を複数の情報記憶ノード電圧をパラメータとして測定した測定結果から、同一情報記憶ノード電圧におけるソフトエラー率の情報記憶ノード面積依存性を表す第1の数式を導出する工程と、前記測定結果から同一情報記憶ノード面積におけるソフトエラー率の情報記憶ノード電圧依存性の関係を前記第1の式に代入して第2の数式を導出する工程と、前記第2の数式に所望の情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を計算する工程と、前記計算したソフトエラー率が所定の値以上であるときに前記情報記憶ノード拡散層面積、前記情報記憶ノード電圧又は製造プロセスのうち少なくともいずれか1つを変更して換算情報記憶ノード拡散層面積及び/又は換算情報記憶ノード電圧を算出する工程と、前記第2の数式に前記換算情報記憶ノード拡散層面積及び/又は前記換算情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を再計算する工程とを有するものである。
【0014】
本発明においては、実測したソフトエラー率から第2の数式を導出し、これに所望のノード電圧及び拡散層面積を代入して見積もったソフトエラー率が所定の値以上である場合には、設計変更してソフトエラー率を再計算することができ、よってソフトエラー率についてのスペックを満たす半導体集積回路の設計を行なうことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、SRAM又は記憶回路素子のソフトエラー率(SER)を製品設計段階で簡単に見積もることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、本発明を、SRAM又は記憶回路素子のソフトエラー率(SER)を簡単な計算により見積もることができるSERの計算方法、及びこれを利用した半導体集積回路の設計方法に適用したものである。具体的には、データを保持する拡散層の面積、ノード電圧、及び過去の世代の実験結果から、次世代製品のSERを精度良く見積もるものである。
【0017】
上述したように、従来、種々のSERの見積もり方法が提案されているが、結果は一致せず、その見積もり方法は確立されていない。このような中、本願発明者等はSERを精度よく見積もるべく鋭意実験研究した結果、既存製品のSERのデータを利用することで、新製品を作る前(設計時)にSERを精度よく見積もる方法を構築した。
【0018】
先ず、SERを設計段階で見積もるには、SERがどのようなファクタで決まるか検討が必要である。DRAM、SRAM、F/F等のデータ保持回路におけるソフトエラーは、シリコン基板中(以下、ウェル中も含むものとする。)に入射した放射線や荷電粒子によってキャリアが発生し、これが情報ノード拡散層へ流入し、これにより、情報ノード電位が変化することで起こる。ここで、ソフトエラーとは、広義の意味ではデバイスにおける不良のうち、電源再投入やリセット信号などによって正常動作に戻る一過性の誤動作をいい、回復不可能な不良であるハードエラーと対語をなすものであるが、ここでは(半導体デバイスにおいては)、狭義の意味の記憶情報のデータ反転を言い、放射線や荷電粒子起因のメモリセルなどの記憶素子のデータ反転を意味する。
【0019】
先ず、本願発明の理解を容易とするためソフトエラーについて簡単に説明しておく。ソフトエラーを引き起こす主な放射線としては、デバイスのパッケージ材料や配線材料に微量に含まれるウラン(U)やトリウム(Th)などの原子核の崩壊過程で放出されるα粒子や地上に到達する宇宙線(主に中性子)がある。
【0020】
半導体基板に放射線が入射すると、局所的に高密度の電子・正孔対を生成する。記憶ノード拡散層に電子または正孔が収集されると、記憶ノード電位が変化し、場合によっては記憶データの反転が起こり、ソフトエラーとなる。以下、CMOS SRAMを例にとって、NMISFETの記憶ノード拡散層(「H」ノード)近傍で、放射線によって基板内で発生した電子・正孔の移動について説明する。
【0021】
図1に示すように、Pウェル101に形成された記憶ノードN拡散層102にα線や中性子線などの放射線(粒子)103が突入すると、原子核と衝突して粒子の軌道上に多量のホール・エレクトロンペア105が生成される。例えばα線はシリコン中を進む際電子をクーロン力による相互作用により電離させる。α線が一対の電子−正孔対を生成するのに要する平均エネルギーは約3.6eVであり、5MeVのエネルギーを有するα線の場合約140万個の電子−正孔対105が発生する。このとき、放射線(2次イオン)によって発生した電子−正孔対105の局所的高電界によってあたかも空乏層104が引き伸ばされたごとく、(図1では電子が)過剰に収集される。図1は、これを模式的に示したものである。この過剰な電荷収集をファネリング効果といい、図1に示すあたかも空乏層が引き伸ばされた領域を便宜上ファネリング領域と呼ぶ。
【0022】
空乏層104及びファネリング領域では、電子と正孔はドリフトによって移動する。ドリフトによる移動は非常に高速に行われるので、発生した電荷は一気に記憶ノードN拡散層102方向と基板101方向に移動することになる。空乏層104とファネリング領域以外で発生した電子及び正孔は拡散によって移動するが、拡散による移動はドリフトと比べ遅く、ほとんどの電子と正孔は対消滅する。しかし、一部(図1では電子)は記憶ノードN拡散層102に取り込まれる。
【0023】
このように、基板内に発生した電子・正孔は、発生した場所と記憶ノード拡散層−基板で形成されるPN接合の空乏層との位置関係によって、大きく分けて、ドリフト(drift)、ファネリング(funneling)、拡散(diffusion)の3つの移動メカニズムにより、セルノード拡散層への電荷収集が行なわれる。この電荷収集により記憶ノード電位が大きく変化すると記憶データの反転が起こり、ソフトエラーが発生する。なお、基板中で発生したキャリアが、どのように情報ノード拡散層に収集されるかについては、Eiji Takeda, et al., "A Cross Section of α-Particle-Induced Soft-Error Phenomena in VLSI's" IEEE TRANSACTION ON ELECTRON DEVICES, VOL.36, NO.11, pp2567-2575,1989(非特許文献5)に記載されている。
【0024】
微細化がソフトエラーに及ぼす影響として、ALPEN効果や寄生バイポーラトランジスタ動作現象が知られている。ALPEN効果とは、MISFETのドレイン−ソース間をα粒子が貫通するような場合に情報反転が起こる現象である。ALPEN効果については、Eiji Takeda, et al., "A New SOFT-ERROR PHENOMENON IN VLSIs The alpha-particle-Induced source/drain penetration (ALPEN) effect" 1988 IEEE International Reliability Physics Symposium, pp.109-112(非特許文献6)や、非特許文献5に記載されている。α粒子だけでなくイオンでも同様の現象が生じる。このALPEN効果はMISFETのゲート長が短くなると起こりやすい。
【0025】
ALPEN効果に近い現象として、放射線によってMISFETのソース近傍で電子・正孔が多量発生すると、ソースをエミッタ、基板をベース、ドレインをコレクタとする寄生バイポーラTrがONすることがある。
【0026】
そうすると、ドレインの電位が低下(上昇)して情報が反転する。この報告例がKenichi Osada, et al., "SRAM Immunity to Cosmic-Ray-Induced Multierrors Based on Analysis of an Induced Parasitic Bipolar Effect" IEEE JOURNAL OF SOLID=STATE CIRCUITS, VOL.39, NO.5, pp827-833, 2004(非特許文献7)に記載されている。
【0027】
ここで、ソフトエラーには、「H」レベルにある情報ノード拡散層(N型)に電子が流入して「L」レベルになる場合と、「L」レベルにある情報ノード拡散層(P型)に正孔が流入して「H」レベルになる場合がある。後述するように、電子の拡散速度と正孔の拡散速度とは異なるため、その電荷収集量も異なる。
【0028】
次に、本願発明の原理について説明する。デバイスのSERを設計段階で見積もるには、微細化した場合に情報ノード拡散層に収集される電荷量(収集電荷量)がどうなるかを考える必要がある。なお、これに関係する公知技術として、シミュレーションによって求めたSERと縮小率の関係が上述の特許文献1に記載されている。特許文献1には、寸法(サイズ)を小さくすると、概ね1次元あたり長さの2乗に比例してソフトエラー耐性が向上することが記載されている。また、上述の非特許文献1には、拡散層面積とSERの関係が示されている。
【0029】
更に、図2に示すようなSRAMのSERの電圧依存性が知られている。すなわち、セルノード電圧Vnが減少すると指数関数的にSERが悪くなる。このような関係は多くの論文(例えば、P.E. Dodd, et al., "Neutron-Induced Soft Errors, Latchup, and Comparison of SER Test Methods for SRAM Technologies" 2002 IEEE International Electron Devices Meeting TECHNICAL DIGEST, pp.333-336(非特許文献8)のFig.3等)に発表されている。
【0030】
SERは、セルノード電圧Vnの累乗近似や指数近似で実測と合う。よって、SERとセルノード電圧Vnとの間には図2に示すように、下記の式(1)、又は式(2)が成立することがわかる。なお、kはフィッティングパラメータである。
SER∝exp(−Vn)・・・(1)
SER∝Vn^(−k)・・・(2)
【0031】
なお、非特許文献8には、セルサイズに関わらずセルノード電圧でSERがほぼ近似できることが記載されている。この結果は広範囲なセルノード電圧で測定した場合の結果であり、ノード電圧が高いセルはセルサイズが大きいものと考えられる。しかしながら、今日の微細化・低電圧デバイスのSERはノード電圧の式だけで記述することは誤差が大きい。
【0032】
以上のことから、ソフトエラー率SERを見積もる上で、セルノード容量Cs、セルノード電圧Vn、及びセルノード拡散層面積(収集電荷量に関係する。)Scの3つのファクタとSERの関係を把握する必要がある。次に、本願発明者等によるSRAMのセルノード面積とSERの関係について測定した結果を図3に示す。本願発明者等は、この図3に示す測定結果に基づき、セルノード容量Cs、セルノード電圧Vn、及びセルノード拡散層面積ScからSERを見積もる方法を見出した。
【0033】
図3は、発明者等がSRAMにα粒子を照射してSERを測定した結果であって、同一のノード電圧で異なる記憶ノードサイズのSRAMのSERの測定結果を示す図である。縦軸はSERを規格化して示し、横軸はセルノード拡散層面積(NMISFETとPMISFETの両方のノード面積の和)を示す。図3において、異なる記憶ノードサイズは、プロセスも異なるが、各セル間は一般的なスケーリング則に近い縮小を行ったものである。
【0034】
ソフトエラー率(SER)は、セルの書き込み情報を、データ表裏(H/L)をチェッカーボードパターンに書き込み、そのソフトエラー率を測定し、平均値を求めたものである。図3は、セルノード電圧Vnが1.0V、1.4V、1.8Vの3電圧で各々SERを測定したものである。この図3から、本願発明者等は下記の式(3)が成立することを知見した。
SER∝F(Sc,Vn)・・・(3)
F(@)は@の関数を示す。すなわち、SERは、Sc、Vnの関数で表すことができる。
【0035】
ここで、図3に示す3本の直線は、コンピュータのソフトウェアで自動フィッティング近似したものである。図3から、かなり広いセルノード電圧Vnの範囲(1.0〜1.8V)とセルノード拡散層面積Scに対して式(3)が適用できることが分かる。
【0036】
さらに、上図の関係をNMISFETで構成される情報保持ノード拡散層面積ScnとPMISFETで構成される情報保持ノード拡散層面積Scpを使って
セルノード拡散層面積Sc=Scn+α×Scp
として表したときに、最も誤差が少なくなるときのαを調べた。結果、αが0.4のときが最も誤差が小さくなった。C.Hu "Alpha-Particle-Induced Field and Enhanced Collection of Carriers" IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS, VOL. EDL-3, NO.2, pp31-34, 1982(非特許文献9)によれば、ファネリング効果を表す式としてキャリアの移動度が含まれているように、この差は、電子と正孔の移動度の差、さらに実験したSRAMのノード拡散層面積のうち、NMISFETで構成されるノード拡散層面積がPMISFETのそれより大きいということなどによる。
【0037】
また、図3の結果から注目すべき点は、セルノード拡散層面積Scがある値Kで、SERの電圧依存性がなくなることである。このことについての詳細は後述する。
【0038】
以上の実験結果から、本願発明者等は、次のような手順でSRAMのSERを簡単に精度良く見積もる方法を見出した。
【0039】
[1]
NMISFETとPMISFETで構成されるSRAMの情報保持ノード拡散層面積Scとソフトエラー率(SER)の関係を複数のノード電圧Vnをパラメータとして測定する。すなわち、図3を作成する。
【0040】
[2]
測定結果から、個々のセルについて、同一情報保持ノード電圧Vnにおけるソフトエラー率SERの情報保持ノード拡散層面積Sc依存性を示す下記式(4)で示す第1の数式を導出する。なお、この第1の数式は、例えばパーソナルコンピュータ(以下、PCという。)などを利用して市販のソフトウェアによる自動フィッティングにより簡単に求めることができる。
SER=f×Sc^(−g)・・・(4)
ここで、f(f>0)、g(g>0)には、セルノード電圧Vn依存性がある。
【0041】
[3]
測定結果から同一情報保持ノード拡散層面積Scにおけるソフトエラー率SERの情報保持ノード電圧Vn依存性の関係を第1の数式に代入し、第2の数式を導出する。すなわち、個々のセルのSERとセルノード電圧Vnの関係から、fとgをVnの関数として表す。
【0042】
このとき、最もよくフィッティングするように、PC等を利用して自動フィッティングにより近似式を導出することが好ましい。例えば図3では、Vn=1.0V、1.4V、1.8Vに対する3つの式が得られる。これらの3つの式から、各々f1、f2、f3とg1、g2、g3が得られる。f1、f2、f3からfをVnの関数として求める。同様にg1、g2、g3からgをVnの関数として求める。
【0043】
この場合、実験結果は次の式(5)、又は式(6)で示す第2の数式で近似することができる。
SER=(a×Vn^b)×Sc^(p×exp(q×Vn))・・・(5)
SER=(a×Vn^b)×Sc^(p×Vn+q)・・・(6)
ここで、第2の数式として式(5)を使用するか、式(6)を使用するかは、実験結果による。すなわち、測定結果がよりマッチングする方を選択するなどすればよい。
【0044】
[4]
上記第2の数式(式(5)又は式(6))に所望の情報保持ノード拡散層面積Sc(セルサイズでもよい)と情報保持ノード電圧Vnを代入して見積もりたいSRAMのソフトエラー率SERを計算する。この計算はパソコンや関数電卓で簡単に計算することができる。
【0045】
図3の測定に使用したデバイスは、異なるプロセスで製造された製品も含まれる。しかしながら、本願発明者等がこの方法により導出した第2の数式は、プロセスが異なるのにも関わらず、高精度にフィッティングできる。
【0046】
以上により、本発明においては、最初にSERを実測するか、既存の測定データを用意する必要があるが、その後は間単にSERを見積もることができる。さらに、上述したように、プロセスが異なるのに関わらず式(5)、式(6)のフィッティング結果は極めて高精度であった。すなわち、極めて精度がよいという特長がある。このように、本発明においては、実測データでフィッティングしているので、材料中のα粒子数はモールド材料のロットで変わることや中性子数は時間(季節)や場所で変わることなどを考慮すれば、本方法による見積り精度は充分高いといえる。
【0047】
ここで、図3は、セルノード面積Scに対するSERを示すグラフ図になっているが、セルノード電圧Vnに対するSERを示すグラフ図としてもよい。その場合、先ず、SERのセルノード電圧依存性の式、すなわち上述の式(1)、又は式(2)を求める。
SER∝exp(−Vn)・・・(1)
SER∝Vn^(−k)・・・(2)
【0048】
そして、この式(1)、又は式(2)に、同一セルノード電圧におけるSERの情報保持ノード拡散層面積依存性の関係を代入し、
SER=f(Sc)exp(−Vn×g(Sc))
などを求めればよい。
【0049】
実施の形態1.
次に、本発明の実施の形態1について説明する。図4は本実施の形態にかかる半導体デバイス設計装置を示す図である。この設計装置は、MISFET等のトランジスタで構成される記憶回路又は情報保持回路を有する半導体デバイスの設計を行なうものである。図4に示すように、半導体デバイス設計装置10は、SERの測定結果を入力するデータ入力部11と、第1及び第2の数式導出部12、13と、第2の数式から半導体デバイスのSERを見積もるSER演算部14と、SERの見積もり結果からその評価を行なうSER評価部15と、SERの見積もり結果等を出力する結果出力部16とを有する。
【0050】
データ入力部11からは、記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード拡散層面積とソフトエラー率との関係を複数の情報記憶ノード電圧をパラメータとして測定した測定結果を入力する。
【0051】
第1の数式導出部12は、データ入力部11から入力される測定結果に基づき、同一情報記憶ノード電圧におけるソフトエラー率の情報記憶ノード面積依存性を表す第1の数式を導出する。
【0052】
第2の数式導出部13は、測定結果から同一情報記憶ノード面積におけるソフトエラー率の情報記憶ノード電圧依存性の関係を第1の数式に代入して、ソフトエラー率を情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧の関数で示す第2の数式を導出する。
【0053】
SER演算部14は、記第2の数式に所望の情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を計算する。
【0054】
SER評価部15は、SER演算部14が計算したソフトエラー率を評価する。このSER評価部15は、計算したソフトエラー率SERが所定の値未満であれば、結果出力部16にてその結果を出力する。一方、SERが所定の値以上である場合、すなわち、SERを見積もった半導体デバイスが所定SERの条件満たさない場合は、その旨、結果出力部16を介して通知し、例えばSERの再計算を行なわせることができる。
【0055】
図5は、SERの計算方法(見積もり方法)を示すフローチャートである。先ず、上述の図3にグラフを作成すべく、複数種のセルのSERの電圧依存性を測定する(ステップS1)。そして、データ入力部11にその測定結果を入力する。具体的には、セルノード面積Sc、及びセルノード電圧Vnを異ならせてSERを測定した結果を入力する。
【0056】
第1の数式導出部12は、上述したように、個々のセルについて、情報記憶ノード電圧におけるSERの情報記憶ノード面積依存性を示す第1の数式(式(4))を導出する(ステップS2)。第1の数式は、上述したように、ソフトエラー率をSER、情報記憶ノード拡散層面積をSc、フィッティングパラメータをf、gとすると
SER=f×Sc^gを満たす。
【0057】
そして、第2の数式導出部12は、セルノード電圧Vnが異なる複数の第1の数式(式(4))から第2の数式(式(5)又は式(6))を導出する(ステップS3)。第2の数式は、上述したように、フィッティングパラメータをa、b、p、qとすると
SER=(a×Vn^b)×Sc^(p×exp(q×Vn))(式(5))
又は
SER=(a×Vn^b)×Sc^(p×Vn+q)(式(6))
を満たす。ここで式(5)、式(6)のいずれを使用するかはユーザが適宜選択、又はフィッティング率の高い方を選択すればよい。
【0058】
SER演算部14は、この第2の数式を保持する。ユーザが求めたいデバイスのセルノード電圧及びセルノード面積を入力すると、SER演算部14は、当該第2の数式にその値を代入して見積もったSERを結果出力部16に出力する(ステップS4)。
【0059】
ユーザは、結果出力部16の表示結果を半導体デバイスの設計に反映させることができる。また、本実施の形態においては、このSERを自動的に評価するSER評価部15を更に備えているため、SERが所定の条件を満たさない場合には、ユーザに対して後述する換算情報記憶ノード拡散層面積及び換算情報記憶ノード電圧を入力させたり、又は換算値を自動生成して、設計変更後のSERの再計算を行なうことができる。
【0060】
以上のような半導体デバイス設計装置10は、例えば図6のようなコンピュータ200により構成することができる。図6に示すように、コンピュータ200は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202及びRAM(Random Access Memory)203を有し、これらがバス204を介して相互に接続されている。このバス204にはまた、入出力インターフェイス205も接続されている。
【0061】
入出力インターフェイス205には、キーボード、マウスなどよりなる入力部206、CRT、LCDなどよりなるディスプレイ、並びにヘッドフォンやスピーカなどよりなる出力部207、ハードディスクなどより構成される記憶部208、モデム、ターミナルアダプタなどより構成される通信部209などが接続されている。
【0062】
CPU201は、ROM202に記憶されているソフトウェアモジュールを構成する各種プログラム、又は記憶部208からRAM203にロードされたソフトウェアモジュールを構成する各種プログラムに従って各種の処理を実行する。RAM203にはまた、CPU201が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0063】
通信部209は、図示せぬインターネットを介しての通信処理を行う。CPU201から提供されたデータを送信する。また通信部209は通信相手から受信したデータをCPU201、RAM203、記憶部208に出力する。記憶部208はCPU201との間でやり取りし、情報の保存・消去を行う。通信部209はまた、他の装置との間で、アナログ信号又はディジタル信号の通信処理を行う。
【0064】
入出力インターフェイス205にはまた、必要に応じてドライブ210が接続され、磁気ディスク211、光ディスク212、フレキシブルディスク213、又は半導体メモリ214などが適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが必要に応じて記憶部208にインストールされる。
【0065】
そして、半導体デバイス設計装置10は、各ブロックにおける任意の処理を、CPU201にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することができる。この場合、コンピュータプログラムは、記録媒体に記録して提供することも可能であり、また、インターネットその他の伝送媒体を介して伝送することにより提供することも可能である。
【0066】
本実施の形態においては、デバイスの設計段階でSERを高精度に見積もることができるため、この見積もり結果に応じて様々な対応が可能となる。例えば、システム設計は実際のデバイス入手前から開始されるが、このSERの大きさに応じてシステムのソフトエラー対策を行なうことができる。具体的には、ECCなどの冗長回路、誤動作防止プログラムや誤動作が起きた場合のフェイルセーフ機能などをSERに応じたものとすることができる。
【0067】
すなわち、デバイスの設計段階でSERを算出することができるため、次期製品のSERをできるだけ早くから精確に知ることができる。このような設計段階、すなわち、製品が存在しない時点で標準電圧でのSERだけでなく、その電圧依存性をも提示することができるため、例えばSRAMなどをスタンバイ時に電圧を下げて使うとどの程度SERが変化するのか等を知ることができ、それに応じたソフトエラー対策を講じることができる。
【0068】
実施の形態2.
次に本発明の実施の形態2について説明する。上述の実施の形態1に示したように、半導体デバイスの設計段階においてSERを見積もることができ、見積もり結果に応じた設計変更を行い、ソフトエラー対策を講じることができる。ここで、ソフトエラー対策として、セルトランジスタの記憶ノードにキャパシタを付加したり(以下付加容量という。)、基板をSOIに変更したりすることが考えられる。
【0069】
上述の実施の形態1におけるSER見積もり方法は、一般的なスケーリングに近い関係の複数のセルのデータを使用していることから、多少のプロセス差でも適用可能である。しかしながら、情報記憶ノードに付加容量を設けたり、SOI基板を使う場合には、SERは前世代の傾向と変わるので、上述の見積もり方法を単純に用いることができなくなる場合がある。本実施の形態は、付加容量を設けた場合や、SOI基板を使用した場合にもSERを正しく見積もることができるものである。
【0070】
先ず、付加容量を設けた場合のSERの計算方法について説明する。例えば、MIM(Metal - Insulator - Metal)の付加容量を基板上部に設けた場合の計算方法について説明する。なお、本実施の形態における付加容量は、拡散層面積を大きくするものではない。すなわち、ノード拡散層の収集電荷量は変わらないものとして説明する。
【0071】
上述の第2の数式から付加容量を設けない場合についてSERを計算する。今、着目メモリセルノードや情報記憶ノードのノード電圧をVo、ノード容量をCo、見積もったSERまたは実測したSERをSERo(FIT単位)とする。このとき、下記式(7)のような関係がある。
SERo∝1/[Vo×Co]・・・(7)
記憶ノードに付加する付加容量をCaとし、そのときのSERをSERaとすると、下記式(8)のような関係がある。
SERa∝1/[Vo×(Co+Ca]]・・・(8)
SER(FIT単位で表したとき)は、下記式(9)に示すように、臨界電荷量Qcに逆比例の関係にあり、また臨界電荷量は情報記憶ノード電圧Vnに比例する。
SER∝1/Qc、Qc∝Vn・・・(9)
【0072】
式(9)と上式(8)から、情報記憶ノード電圧Vo、情報記憶ノード容量Coの情報記憶ノードのメモリセルやF/F回路、ラッチ回路に付加容量Caを付加したときのSERaは、ノード容量Coにノード電圧をどの程度上昇させた場合に相当するかを考える。ここでは拡散層面積は変わらないので情報記憶ノードでの収集電荷量の変化はなく、情報記憶ノード電圧の換算上昇分をVaとすると、
Va×Co=Vo×Ca
である。よって、下記式(10)を満たす。
Va=Vo×(Ca/Co)・・・(10)
それゆえ、当該情報記憶ノードサイズ(ノード容量)における下記換算電圧に相当するSERを読み取ればよい。
Vn=Vo+Va=Vo(1+Ca/Co)・・・(11)
【0073】
このようにして、セルノードに付加容量を付加する場合には、情報記憶ノード電圧を換算情報記憶ノード電圧としてSERを見積もることが可能である。
【0074】
次に、SOI基板を利用した場合のSERの計算方法について説明する。SOI基板を利用したような場合には収集電荷量がバルク基板と変わることやファネリング効果が異なること、寄生バイポーラ効果(SOI基板でなくとも存在する。)のバルク基板との程度差などにより、上述のSER見積り方法をバルク基板からSOI基板に変更する場合に適用することは困難である。ここで、諸条件が大きく変わる場合には、(SOI基板や所定の条件で)異なるセルサイズを搭載したTEG試作後、本発明を適用すればよい。もちろん、実測やシミュレーションで、バルク基板とSOI基板における収集電荷量差(減少)を調べて、その減少率をセルノード拡散層面積の減少に当てはめれば、既存のバルク基板のデータからでも上述の見積もり方法でSERを見積もることが可能である。
【0075】
このような場合の計算方法の例として、バルク基板のSERデータからSOI基板に変更した場合のSERの見積もりに本方法を適用することを考える。バルク基板からSOI基板にすることによって、セル記憶ノード拡散層に収集される電荷が減少する。この減少率をシミュレーションによって求める。より詳しくは、当該放射線に対して収集電荷量は記憶ノード拡散層面積/体積や周囲の拡散層間の距離などに依存することから、収集電荷量をこれらの関数として扱う。
【0076】
バルク基板のSERデータの当該記憶ノード拡散層面積のSERに対して、
換算記憶ノード拡散層面積=(記憶ノード拡散層面積)×(収集電荷量の減少率)・・・(12)
として、換算記憶ノード拡散層面積を求める。この換算記憶ノード拡散層面積に応じたSERを算出すればSOI基板でのSERを見積もることができる。
【0077】
さらに、プロセス(不純物プロファイル)を大きく変化させた場合にも、SOI基板の例のように収集電荷量の増減に着目して、収集電荷量を補正することによってSERを見積もることができる。
【0078】
このように、本実施の形態においては、付加容量を設けたり、SOI基板を利用した場合であっても、上述の第1の数式及び第2の数式に、換算情報記憶ノード電圧や換算情報記憶ノード拡散層面積を代入することでSERを見積もることができる。したがって、SERの見積もり結果によっては、SER対策のため、付加容量を設けたり、SOI基板に変更したりの設計変更を行なって再度SERを見積もりし直すことも可能となる。
【0079】
次に、本実施の形態にかかるSERの計算方法を使用した半導体集積回路の設計装置及び設計方法について説明する。設計装置は、上述の図4に示す設計装置10と同様の構成とすることができる。
【0080】
ここで、本実施の形態においては、SER評価部15は、見積もったSERが所定の値より大きい場合には、例えば結果出力部16を使用してその旨表示する。そして、データ入力部11から、情報記憶ノード拡散層面積、情報記憶ノード電圧又は製造プロセスのうち少なくともいずれか一つを変更した場合の換算情報記憶ノード拡散層面積と換算情報記憶ノード電圧を入力させる。なお、SER評価部15がSERの値に応じて、自動的に換算情報記憶ノード拡散層面積及び換算情報記憶ノード電圧を生成するようにしてもよい。そして、SER演算部14にSERを再計算させる。
【0081】
具体的には、上述したように、付加容量を付加したり、基板をSOI基板に変更したりすることができる。付加容量を付加した場合には、情報記憶ノード電圧の代わりに、式(11)で示す換算情報記憶ノード電圧を入力する。また、基板をSOI基板に変更した場合には、情報記憶ノード拡散層面積の代わりに、式(12)で示す換算情報記憶ノード拡散層面積を入力すればよい。
【0082】
SER演算部14は、第2の数式に換算情報記憶ノード拡散層面積や、換算情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率SERを再計算する。SER評価部15は、このSERを再び評価する。このSER評価部15により、見積もったSERに応じて半導体デバイスのSERが所定の値未満になるよう、設計変更を行なうことができる。
【0083】
図7は、本実施の形態にかかる半導体デバイス設計方法を示すフローチャートである。ステップS11〜ステップS14は、上述のステップS1〜ステップS4と同様である。そして、SER評価部15が、SER演算部14が算出したSERが製品スペックを満たすか否かを判断し(ステップS15)、スペックを満たす場合には処理を終了する。
【0084】
一方、スペックを満たさない場合には、製品に応じたSER対策を施す(ステップS16)。例えばセルサイズを変更することで、ノード面積を変更する。または、付加MIM容量を変更する等、プロセスを変更する。さらには、回路構成等を変更することでノード電圧を変更する。以上により、再度SERを算出するための新セルノード拡散層面積、新セルノード電圧を決定する(ステップS17)。上述したように、付加容量を付加したり基板を変更した場合は、新セルノード拡散層面積、新セルノード電圧は、上記式(11)、式(12)で示す換算情報記憶ノード拡散層面積や換算情報記憶ノード電圧となる。そして、この値を使用して、SERスペックを満たすまで、SERを再計算させるステップS14からの処理を繰り返す。
【0085】
本実施の形態においては、SERの見積もり結果に応じて様々なソフトエラー対策を講じることができる。そして、ソフトエラー対策として容量付加や、基板の変更等を行なった場合であっても、SERを正しく見積もることができる。
【0086】
また、他のソフトエラーの対策としては、上述したように、使用材料の高純度化による発生放射線の減少や遮蔽、メモリセルのノード電荷量(ノード蓄積電荷量)の増加等の対策がある。また、材料やデバイス構造の面からは、以下のような対策もある。すなわち、
パッケージ材料や配線材料の高純度化により、α粒子放出量を減少させる
α粒子を遮蔽するための膜(ポリイミド膜)でチップ表面をコートする
基板不純物分布を最適化して、放射線によって基板内に発生した電荷のノード拡散層への収集量を減少させる
これらの対策方法等により、ソフトエラー低減を図ってもよい。さらに、ECC(Error Checking and Correct)などのエラー訂正機能を導入することで、より信頼性の高いメモリシステムを構築することが可能となる。
【0087】
ところで、一般にSRAMは世代が変わっても、セルを構成するドライバーNMISFET、トランスファNMISFETとロードPMISFETの互いのサイズ(TrのW)の比率はそれほど変わらない。すなわち、N+ノード拡散層面積とP+ノード拡散層面積の比率も世代間であまり変わらない。そのため、図3に示すように、電圧依存性がなくなるサイズが存在するものと考えられる。ただし、NMISFETとPMISFETのサイズ比(ノード拡散層面積比率)が世代間で異なれば、必要に応じて数式を変化させればよい。
【0088】
いずれにせよ、測定データから数式を導くにあたり、先ず第1に、SERをセルノード拡散層面積の関数として表し、第2にセルノード拡散層面積の関数の中にノード電圧の関数を組み込むことによって、精度のよい近似式が得られる。
【0089】
実施の形態3.
上述の実施の形態で説明したように、本発明にかかるSER見積もり方法はSRAMのSERを見積もることができる他、様々なセル構造に対しても適用可能である。本実施の形態は、SRAM以外の回路構成に特に好適なSERの見積もり方法である。ここでは、SRAMセル以外のPMISFETとNMISFETからなるインバータ回路を含むF/F回路やラッチ回路などに適用する場合について説明する。
【0090】
一般にF/F回路やラッチ回路は、PMISFETとNMISFETのサイズ比率や拡散層間隔がSRAMとは異なる。そのような場合、実測した回路によっては実測データを精度よく近似できる式を導出できないことがある。
【0091】
H. Fukui et al., "Comprehensive Study on Layout Dependence of Soft Errors in CMOS Latch Circuits and Its Scaling Trend for 65nm Technology Node and Beyond" 2005 IEEE Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers , pp.222-223(非特許文献10)には、NMISFETとPMISFETのサイズでSERが変化することが示されている。F/F回路やラッチ回路のSERをより精確に見積もるには、PMISFETとNMISFETのそれぞれのSERを考えなければならない。
【0092】
本実施の形態にかかるSERの計算方法は、そのような場合のSERを見積もるための方法である。図8は、本実施の形態にかかるSERの計算方法を示すフローチャートである。
【0093】
NMISFET、PMISFET(CMISFET(Complementary Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor))で構成される記憶素子又は情報保持回路のSERを、NMISFETサイズ(拡散層面積Scn)とPMISFETサイズ(拡散層面積Scp)のうち、一方のMISFETのサイズを固定して、他方のMISFETのサイズを変えた複数の回路でSERを複数のノード電圧をパラメータとして測定する(ステップS21)。
【0094】
例えば図9に示すように、NMISFITサイズ、PMISFITサイズをマトリクス的に組み合わせた回路でSERを測定をすればよい。なお、通常、n、mは、2〜3でよい。このようなSERのNMISFET、PMISFETのサイズ依存性を電圧を変えて測定する。
【0095】
ここで、マトリスクス的にとは、理想的にはn×m通りの回路(SER11〜SERmn)でSERを測定する。ただし、多くの回路でのSER測定は困難な場合もある。この場合は、PMISFETとNMISFETの組み合わせを適当に、例えばPMISFETとNMISFETのサイズを各々3種類ぐらい選んでSER測定すればよい。そして、各MISFETのサイズ依存性を求める。そうすれば、全部の回路でSERを測定しなくてもSERを見積もることができる。
【0096】
例えば、横軸にNMISFETサイズ、縦軸にSER実測値のグラフをPMISFETのサイズをパラメータとして作成する。NMISFETとPMISFETを各々3つのサイズ(Na、Nb、Ncと、Pa、Pb、Pcの9種類とする)で測定しておけば、PMISFETサイズPaのときに、NMISFETのサイズがNa、Nb、Ncであることから、そのほかのNMISFETのサイズでのSERも予測することができる。同じくPb、Pcの場合もSER求めることができる。そして、グラフの横軸をPMISFETして、同様に作成すれば製品で使用するPとNのMISFETのサイズの組み合わせのSERを求めることができる。
【0097】
ここで、NMISFET起因のSERをSERn、PMISFET起因のSERをSERpとすると、測定したSER(トータルSER:SERt)は次式で示される。
SERt=SERn+SERp・・・(13)
この式(13)におけるSERn及びSERpを直接測定するのは困難である。そこで、上述したように、記憶ノードを構成するPMISFETとNMISFETのサイズ(ノード面積)をマトリクス的に組み合わせた回路でSER測定する。または、SERを実測とシミュレーションとを組み合わせたもので算出してもよい。すなわち、n×m種類の回路のSERを測定することが困難な場合、一部は測定した実測値を使用し、測定ができなかった回路のSERはシミュレーションで補完するようにしてもよい。
【0098】
次に、N又はPのいずれかのMISFETのサイズを固定しておき、他方のMISFETのサイズの関数としてSERを表す(ステップS22)。たとえばNMISFETサイズを固定し、PMISFETサイズの関数としてSERを表す。次にサイズを固定する一方のMISFETを変え同様にSERを他方のMISFETの関数として表す。すなわち、上記の場合であれば、今度はPMISFETサイズを固定し、NMIFETサイズの関数としてSERを表す。
【0099】
そして、一方のMISFETのサイズをパラメータとして、SERを他方のMISFETの関数として表す。さらに逆の組み合わせでSERを表す(ステップS23)。例えば、NMISFETのサイズをパラメータとして、SERをPMISFETの関数として表し、PMISFETのサイズをパラメータとして、SERをNMISFETの関数として表す。
【0100】
次に、図5に示すステップS2と同様の処理を行なう。すなわち、SERの面積依存性から、セルノード電圧をパラメータとした第1の数式を導出する(ステップS24)。例えば、図9のSER11について第1の数式を導出する。
【0101】
次いで、図5に示すステップS3と同様に、同一情報保持ノード拡散層面積におけるソフトエラー率の情報保持ノード電圧Vn依存性の関係をステップS24で求めた第1の数式に代入して第2の数式を導出する(ステップS25)。上記の場合であれば、ステップS24と同様、SER11について第2の数式を導出すればよい。
【0102】
そして、ステップS24、S25を繰り返し、種々のMISFETサイズについて第1、第2の数式を導出し、テーブルモデルを生成する(ステップS26)。こうして生成したテーブルモデルを使用して、図5のステップS4と同様に、所望のMISFETサイズや電圧の値を求める。希望のサイズのMISFETの組み合わせがテーブルモデルの中にない場合には、近い組み合わせで計算して、その計算結果から近似して求めることも可能である。
【0103】
本実施の形態においては、テーブルモデルを使用して、SERを精度よく見積もることができる。F/F回路やラッチ回路においてもSRAMセルと同様にSERを見積もることができるが、PMISFETとNMISFETのサイズが種々あると、臨界電荷量と収集電荷量が互いに変化するので、SERの見積もりも簡単でない。したがって、本実施の形態にかかるSER見積もり方法のように、マトリクス的にMISFETのサイズ依存性を調べ、テーブルモデルを生成しておくことで、汎用性が高いSER計算方法を提供することができる。また、このようにして、マトリクス的に調べることで、新たにSERのサイズ依存性を数式化することも可能である。すなわち
【0104】
SERn=F(Scn、Scp)、SERp=F(Scn、Scp)
F(*)は、*の関数を示す。
を作成することができる。これにより、更に汎用性が高いSERの計算方法を提供することができる。また、このSERの見積もり方法は、SRAMのデータを使用して、同程度のノード面積のF/F回路などのSERの見積もりにも使用することができる。
【0105】
ところで、上述の図3に示したように、本願発明者等が測定したデータから、ある記憶ノード面積(0.03〜0.04μm)になると、セルノード電圧に依存しなくなることを知見した。
【0106】
ここで、図3における、SERが記憶ノード電圧に依存しなくなる記憶ノード面積(Node Voltage Independence Point :以下、NVIPという)は、次のような意味を持つ。上述したように、SERは情報記憶ノードの蓄積電荷量(単純には、ノード容量とノード電圧の積で表してよい)と放射線によって発生したキャリアの収集量(収集電荷量)の関係で決まる。
【0107】
NVIPは、情報記憶ノード電圧が高くなると、以下の2つの効果1、2のSERへの影響が相殺されてしまうためと考えられる。
効果1:記憶ノードの蓄積電荷量を増加してSERを低減する効果
効果2:拡散層空乏層幅の増加、寄生バイポーラ効果の増加、及び基板ポテンシャル歪の差等によってセルノード拡散層で放射線によって発生したキャリアの実効収集電荷量が増してSERを増加する効果
【0108】
ここで実効収集電荷量とは、通常の電荷収集量に加え、寄生バイポーラ効果等によって発生したSERを電荷収集量に換算したものを含めた電荷収集量の値である。例えば、ある回路の測定したSERがSERaであり、そのうち純粋な電荷収集QbによるSERがSERbで、寄生バイポーラ効果等によって発生したSERがSERcとする。そして、このときの寄生バイポーラ効果等によるSERcを収集電荷量に換算した値をQcとする。このとき、当該回路の純粋な電荷収集量はQbであるが、見かけ上、電荷収集量はQb+Qcとなったとみなせる。このQb+Qcを実効収集電荷量とする。
【0109】
上述の図3はα粒子照射による実験結果であるが、発明者等は地上でソフトエラーを起こす放射線の一つである中性子照射の場合においてもほぼ同じセルノード面積のNVIPを計測した。微細セルでは、一般に臨界電荷量が小さくなるので、高エネルギー中性子とSi基板との反応で発生する2次イオンのうち軽いイオン種の影響が大きくなる。このことは、特許文献1にもシミュレーション結果として記載されている。そのためα粒子照射実験で得られたNVIPとおおよそ同じ面積に中性子に対するNVIPが存在する。
【0110】
このSERに対するNVIPは、NVIPからSERとセル電圧の関係が変わるという重要な意味を有する。一般にSERは電源電圧(ノード電圧)が高いほどよい。しかしながら、ノード拡散層面積が小さくなると電源電圧(ノード電圧)依存性が小さくなり、NVIPに至る。NVIPより小面積のノード拡散層面積でのSERは、電圧依存性がなくなるか、電圧が低いとバイポーラTrの動作を抑制できるなどによりSERがよくなることを意味する。このことは、当該セルが選択されない場合あるいは当該情報記憶ノード素子が選択されない(動作しない)場合には電源電圧(ノード電圧)を可能な限り低くし、選択されたセルや選択された情報記憶ノード素子は通常の周辺回路と同じ電圧で動作させることがよいことを示す。
【0111】
すなわち、選択セル電圧をVDDとした場合、非選択セル電圧をVn(Vh<Vn<VDD)とすることができる。すなわち、従来は、ソフトエラー対策から、非選択セル電圧を下げることができなかったが、NVIPより小面積であれば電圧依存性が小さい、すなわち、セル電圧を下げてもソフトエラー率SERが大きくなることはなく、非選択セル電圧を選択セル電圧VDDより低くすることで消費電力を低減することができる。
【0112】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、上述の実施の形態においては、MISFETから構成されるSRAM等の記憶回路又は情報保持回路のSERを計算するものとして説明したが、バイポーラトランジスタで構成される半導体集積回路のSERを計算することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】ソフトエラーを説明するための図である。
【図2】SRAMのソフトエラー率SERの電圧依存性を示すグラフ図である。
【図3】本願発明者等のSER測定結果であって、セルノード電圧Vn、及びセルノード拡散層面積Scに対するSERの関係を示すグラフ図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる半導体デバイス設計装置を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるSERの計算方法を示すフローチャートである。
【図6】コンピュータを示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2にかかる半導体デバイス設計方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態3にかかるSERの計算方法を示すフローチャートである。
【図9】記憶ノードを構成するPMISFETとNMISFETのサイズ(ノード面積)をマトリクス的に組み合わせた回路を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
11 データ入力部
12 第1の数式導出部
13 第2の数式導出部
14 SER演算部
15 SER評価部
16 結果出力部
101 ウェル
101 基板
102 拡散層
104 空乏層
105 ホール・エレクトロンペア
200 コンピュータ
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 バス
205 入出力インターフェイス
206 入力部
207 出力部
208 記憶部
209 通信部
210 ドライブ
211 磁気ディスク
212 光ディスク
213 フレキシビルディスク
214 半導体メモリ
218 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタで構成される記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード拡散層面積とソフトエラー率との関係を複数の情報記憶ノード電圧をパラメータとして測定した測定結果から、同一情報記憶ノード電圧におけるソフトエラー率の情報記憶ノード面積依存性を表す第1の数式を導出する工程と、
同一情報記憶ノード面積におけるソフトエラー率の情報記憶ノード電圧依存性の関係を前記第1の数式に代入して、ソフトエラー率を情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧の関数で示す第2の数式を導出する工程と、
前記第2の数式に所望の情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を計算する工程とを有する、記憶回路又は情報保持回路のソフトエラー率の計算方法。
【請求項2】
前記第1の数式は、前記ソフトエラー率をSER、前記情報記憶ノード拡散層面積をSc、フィッティングパラメータをf、gとすると
SER=f×Sc^g
を満たす
ことを特徴とする請求項1記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項3】
前記第2の数式は、前記ソフトエラー率をSER、前記情報記憶ノード拡散層面積をSc、情報記憶ノード電圧をVn、フィッティングパラメータをa、b、p、qとすると
SER=(a×Vn^b)×Sc^(p×exp(q×Vn))
又は
SER=(a×Vn^b)×Sc^(p×Vn+q)
を満たす
ことを特徴とする請求項1又は2記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項4】
前記記憶回路又は情報保持回路におけるN型トランジスタで形成される情報記憶ノード拡散層面積をScn、P型トランジスタで形成される情報記憶ノード拡散層面積をScp、情報記憶ノード拡散層面積Scの関数をF(Sc)、定数をαとしたとき、
SER∝F(Sc)、Sc=Scn+α×Scp
が最も実測値に合うように前記αの値を決定する工程を更に有する
ことを特徴とする請求項2又3に記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項5】
基板からキャリアを直接収集しないように前記記憶ノード拡散層の上方に形成した容量を付加した場合の当該容量をCa、前記記憶回路又は情報保持回路の前記記憶ノード電圧をVn、前記記憶ノード容量をCoとしたとき、
前記第2の数式のVnに、
Vn(1+Ca/Co)
を代入する
ことを特徴とする請求項3記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項6】
前記記憶回路又は情報保持回路を構成するP型トランジスタとN型トランジスタのサイズを各々変化させてソフトエラー率を測定する工程を有する
ことを特徴とする請求項1記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項7】
前記計算したソフトエラー率が所定の値以上のとき、前記情報記憶ノード拡散層面積、前記情報記憶ノード電圧又は製造プロセスのうち少なくともいずれか1つを変更して換算情報記憶ノード拡散層面積及び/又は換算情報記憶ノード電圧を算出する工程と、
前記第2の数式に前記換算情報記憶ノード拡散層面積及び/又は前記換算情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を再計算する工程とを更に有する、請求項1記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項8】
前記換算情報記憶ノード拡散層面積は、前記トランジスタのドレイン面積を変更した場合の換算値である
ことを特徴とする請求項7記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項9】
前記換算情報記憶ノード拡散層面積は、放射線によって発生したキャリアが前記情報記憶ノード拡散層に収集される量に応じた換算値である
ことを特徴とする請求項7記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項10】
前記放射線によって発生したキャリアが前記情報記憶ノード拡散層に収集される量は、シミュレーション値又は試験デバイスの測定値である
ことを特徴とする請求項9記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項11】
前記換算情報記憶ノード電圧は、前記トランジスタの拡散層より上方に設けられた容量の容量値に応じて変更する
ことを特徴とする請求項7記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項12】
前記記憶回路又は情報保持回路は、MISFETで構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載のソフトエラー率の計算方法。
【請求項13】
トランジスタで構成される記憶回路又は情報保持回路のソフトエラー率の計算処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード拡散層面積とソフトエラー率との関係を複数の情報記憶ノード電圧をパラメータとして測定した測定結果から、同一情報記憶ノード電圧におけるソフトエラー率の情報記憶ノード面積依存性を表す第1の数式を導出する工程と、
前記測定結果から同一情報記憶ノード面積におけるソフトエラー率の情報記憶ノード電圧依存性の関係を前記第1の式に代入して第2の数式を導出する工程と、
前記第2の数式に所望の情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を計算する工程とを有する、プログラム。
【請求項14】
トランジスタで構成される記憶回路又は情報保持回路を有する半導体集積回路の設計方法であって、
前記記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード拡散層面積とソフトエラー率との関係を複数の情報記憶ノード電圧をパラメータとして測定した測定結果から、同一情報記憶ノード電圧におけるソフトエラー率の情報記憶ノード面積依存性を表す第1の数式を導出する工程と、
前記測定結果から同一情報記憶ノード面積におけるソフトエラー率の情報記憶ノード電圧依存性の関係を前記第1の式に代入して第2の数式を導出する工程と、
前記第2の数式に所望の情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を計算する工程と、
前記計算したソフトエラー率が所定の値以上であるときに前記情報記憶ノード拡散層面積、前記情報記憶ノード電圧又は製造プロセスのうち少なくともいずれか1つを変更して換算情報記憶ノード拡散層面積及び/又は換算情報記憶ノード電圧を算出する工程と、
前記第2の数式に前記換算情報記憶ノード拡散層面積及び/又は前記換算情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を再計算する工程とを有する、半導体集積回路の設計方法。
【請求項15】
トランジスタで構成される記憶回路又は情報保持回路を有する半導体集積回路の設計装置であって、
前記記憶回路又は情報保持回路の情報記憶ノード拡散層面積とソフトエラー率との関係を複数の情報記憶ノード電圧をパラメータとして測定した測定結果から、同一情報記憶ノード電圧におけるソフトエラー率の情報記憶ノード面積依存性を表す第1の数式を導出する第1の数式導出部と、
同一情報記憶ノード面積におけるソフトエラー率の情報記憶ノード電圧依存性の関係を前記第1の数式に代入して、ソフトエラー率を情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧の関数で示す第2の数式を導出する第2の数式導出部と、
前記第2の数式に所望の情報記憶ノード面積及び情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を計算するSER演算部とを有する半導体集積回路の設計装置。
【請求項16】
前記SER演算部が計算したソフトエラー率を評価するSER評価部を更に有する、請求項15記載の半導体集積回路の設計装置。
【請求項17】
前記SER評価部は、前記計算したソフトエラー率が所定の値以上である場合に、情報記憶ノード拡散層面積、情報記憶ノード電圧又は製造プロセスのうち少なくともいずれか一つを変更して求めた換算情報記憶ノード拡散層面積及び/又は換算情報記憶ノード電圧を入力させ、
前記SER演算部は、前記第2の数式に前記換算情報記憶ノード拡散層面積及び前記換算情報記憶ノード電圧を代入してソフトエラー率を再計算する、
ことを特徴とする請求項15記載の半導体集積回路の設計装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−66598(P2008−66598A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244699(P2006−244699)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】