説明

ソレノイドアクチュエータ用のアーマチュア

【課題】キャビテーションを解決する、又は緩和する、ソレノイドアクチュエータ用のアーマチュアを提供する。
【解決手段】アーマチュアは、アーマチュアの使用時に押圧ばねを受け入れるのに適した凹所(174;274;374)を含む第1面(170;270;370)と、第1面(170;270;370)とは反対側の第2面(172;272;372)と、アーマチュアの使用時に、凹所(174;274;374)と第2面(172;272;372)との間でアーマチュアを通る流体流路を提供する流体連通手段(178;210;310)とを含む。第1面(170;270;370)は流体連通手段(178;210;310)と干渉しない。本発明は、アクチュエータの作動中にキャビテーションによる損傷が起こる危険を低減する。一つの用途では、アクチュエータは、選択的触媒還元システム用の流体ポンプ(100、200)で使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドアクチュエータで使用するのに適したアーマチュアに関する。詳細には、本発明は、選択的触媒還元システムの部分を形成するポンプで使用するためのアーマチュアに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンにおいて窒素酸化物排気ガスエミッションを減少する一つの戦略は、還元剤を含む反応物、代表的には、尿素水溶液等の液体アンモニア源を排気ガス流中に導入することを必要とする。この方法は、選択的触媒還元法即ちSCRとして公知である。SCR触媒として公知の排気ガス触媒の上流で還元剤を排気ガス中に噴射する。排気ガス中の窒素酸化物は、SCR触媒上でアンモニア源と触媒還元反応を生じ、気体状の窒素及び水を形成する。
【0003】
代表的には、選択的触媒還元(SCR)システムでは、本出願人の現在継続中の欧州特許出願第EP−A−1878920号に記載されているように、反応物を供給タンクから排気ガス流中に配置された噴射ノズルまで、適当なポンプを使用して圧送することによって反応物を排気ガス流中に噴射する。
【0004】
図1は、反応物をSCRシステムに圧送するのに適した公知のポンプ20を概略に且つ簡略化した形態で示す。ポンプ20は、ほぼ円筒形のハウジング24内に配置されたソレノイドアクチュエータ22を含む。アクチュエータ22は、ハウジング24と一体成形されたチューブ状(管状)の磁極部材26と、この磁極部材26の周囲に配置されたワイヤ捲線即ちコイル28を含む。磁極部材26の一端が、アクチュエータ22の環状の磁極面30を形成する。
【0005】
アーマチュア32が、アーマチュアチャンバ34内に磁極面30と隣接して設けられている。アーマチュア32は、圧送プランジャー36に連結されている。プランジャー36は、磁極部材26内の中央に配置されたスリーブ40の中央ボア38に摺動自在に受け入れられている。スリーブ40の一方の端面42は、磁極面30から間隔が隔てられており、磁極面30と隣接したばねチャンバ44を形成する。アーマチュア32を磁極面30から遠ざかる方向に押圧するため、押圧ばね46がばねチャンバ44に部分的に受け入れられている。押圧ばね46は、一端がスリーブ40の端面42に当接しており、他端がアーマチュア30の中央領域48に当接している。
【0006】
更に、ポンプ20の上流端には、タンク(図示せず)等の流体源から流体を受け取る入口50が設けられており、下流端には、送出ノズル(図示せず)と連通した出口52が設けられている。内燃エンジン用のSCRシステムでポンプ20を使用する場合、流体は反応物であり、送出ノズルはエンジンの排気管内に配置される。
【0007】
流体を入口50から出口52まで搬送するため、ポンプ20内に供給通路54が設けられている。この例では、供給通路54は、磁極部材26とコイル28との間の環状空間56を含み、更に、磁極部材26及びスリーブ40を貫通した、スリーブ40のボア38と連通した半径方向通路58を含む。圧送プランジャー36が図1に示す位置にあり、アーマチュア32が磁極面30から遠ざかる方向に押圧されている場合には、半径方向通路58は、スリーブ40のボア38の下流端に形成された送出チャンバ60と連通している。
【0008】
送出チャンバ60から出口52への流体の流れは、出口バルブ62によって制御される。出口バルブ62は、送出チャンバ60内の流体の圧力が閾値レベルを越えたときに開放するように構成されている。
【0009】
作動では、ポンプの圧送ストローク中、コイル28が賦勢され、コイル28の周囲にドーナッツ状の磁界を発生する。その結果、アーマチュア32が押圧ばね46の力に抗して磁極面30に向かって移動し、プランジャー36の下流端が、半径方向通路58と送出チャンバ60との間の流体の流れを遮断する。プランジャー36の下流端は送出チャンバ60の容積を減少し、その結果、送出チャンバ60内の流体の圧力が上昇する。閾値圧力に至ると、出口バルブ62が開放し、流体をポンプ20の出口52から送出する。
【0010】
次いでコイル28を消勢する。このとき、アーマチュア32に作用する磁力が消える。押圧ばね46の力によりアーマチュア32を磁極面30から遠ざかる方向に移動し、圧送チャンバ60の容積を増大し、半径方向通路58と送出チャンバ60との間の流体連通を再び開ける。流体は、次いで、送出チャンバ60を再充填し、いつでも次の圧送ストロークを行う準備ができる。
【0011】
SCRシステムでは、流体を排気管内に迅速に頻繁に噴射するのが望ましい。例えば、流体が送出ノズルを出るときに十分に噴霧されるようにするため、圧送プランジャー36の速度は、代表的には2m/s程度の比較的高速でなければならない。図1からわかるように、アーマチュア32は、アーマチュアチャンバ34内の流体を通って移動しなければならない。アーマチュア32の直径が比較的大きいため、アーマチュア32の移動時に大量の流体が押し退けられる。流体を押し退けるため、アーマチュア32及び従って圧送プランジャー36の移動速度が低下する。
【0012】
アーマチュア32及び従ってプランジャー36が、アーマチュアチャンバ34内で十分に高速で移動できるようにするため、アーマチュア32にベント穴64を設けることが公知である。これらのベント穴64は、磁極面30に最も近いアーマチュア32の面から、磁極面30から最も遠い反対側の面まで、アーマチュア32を軸線方向に貫通している。アーマチュア32の移動中、流体は、ベント穴64並びにアーマチュア32の周囲を通って流れることができ、これによってアーマチュア32に作用する流体の抵抗(又は抗力)を低減する。
【0013】
コイル28を消勢し、アーマチュア32が磁極面30から遠ざかる方向に移動するとき、ばねチャンバ44内の圧力が急速に低下する。これにより、アクチュエータ20にキャビテーションによる損傷が加わる。これは、圧力の低下によって発生した、ばねチャンバ44内の流体中の気泡(cavity)が潰れることによって発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願第EP−A−1878920号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、上述の問題点を解決する、又は緩和する、アクチュエータ用アーマチュアを提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の背景技術に対し、本発明の第1の特徴では、アーマチュアの使用時に押圧ばねを受け入れるのに適した凹所が設けられた第1面と、第1面とは反対側の第2面とを含むソレノイドアクチュエータが提供される。アーマチュアは、更に、アーマチュアの使用時に凹所と第2面との間でアーマチュアを通して流体連通するための手段を含む。第1面は、流体連通手段と干渉しない。
【0017】
凹所と第2面との間に流体流路を形成することによって、アーマチュアの移動時のアーマチュアの前後の圧力差を小さくできる。従って、特に凹所の領域で、キャビテーションによる損傷が起こる危険が低い。従って、アーマチュアは、選択的触媒還元システムのポンプ等の高速及び/又は高振動数で作動するアクチュエータで使用するのに適している。
【0018】
更に、アーマチュアの第1面が流体連通手段と干渉しないため、アクチュエータで使用したとき、流体連通手段の存在が、アーマチュアの磁気的挙動に大きな悪影響を及ぼすことがない。詳細には、前面と隣接したアーマチュアの材料内で磁界を通すアーマチュアの性能が、流体連通手段の存在によって大幅に低減されることがない。この目的のため、流体連通手段は、アーマチュアの第1面から間隔が隔てられていてもよい。
【0019】
流体連通手段は、凹所の周壁と連通していてもよい。アーマチュアは、第1面に対して垂直な中央軸線を形成し、流体流路は、この軸線と平行な方向に第1成分を有し、軸線に関して半径方向に延びる第2成分を有する。一実施例では、流体流路が描くベクトルは、軸線と平行な第1ベクトル及び軸線に関して半径方向に延びる第2ベクトルに分解できる。好ましくは、流体流路は、軸線に関して傾斜している。アーマチュアは全体に円筒形であってもよいし、円盤状であってもよく、軸線はアーマチュアの円筒体軸線であってもよい。
【0020】
一実施例では、流体連通手段は、第2面から凹所まで延びる一つ又はそれ以上の通路を含む。
別の実施例では、流体連通手段は、アーマチュアの第2面に設けられた、凹所内に開放した一つ又はそれ以上のチャンネルを含む。前記チャンネル又は各チャンネルの深さは、凹所に向かって増大してもよい。このように、チャンネルは、アーマチュアの軸線に関して傾斜した流体流路を形成してもよい。
【0021】
前記チャンネル又は各チャンネルは、アーマチュアの製造中、工具及びアーマチュアを第1面に対して垂直方向に相対的に移動することによって、前記チャンネル又は各チャンネルを形成できるように構成されていてもよい。この場合、アーマチュアは、アーマチュアの形状により、例えば型成形やプレスによって製造を簡単に行うことができる。一例では、アーマチュアは、前記チャンネル又は各チャンネルが第1面に対して垂直方向に第2面に開放するように形成されている。
【0022】
流体連通手段は、更に、凹所に続く前記チャンネル又は各チャンネルの開口部と隣接した、凹所の端面に、窪みを含んでいてもよい。窪みはディンプルであってもよい。有利には、窪みは、流体流路の断面積を増大するのに役立つ。
【0023】
アーマチュアは、更に、第1面と第2面との間に流体流路を提供するベント手段を含んでいてもよい。一実施例では、流体連通手段はベント手段と交差する。
アーマチュアは、更に、アーマチュアの使用時にプランジャーを受け入れるためのアパーチャを含んでいてもよい。アパーチャは、好ましくは、第2面と凹所との間を延びる。使用時、アパーチャは、プランジャーによって閉鎖される。プランジャーの代わりに、ピストン、バルブエレメント、又は他の制御部材を使用してもよい。
【0024】
本発明の第2の特徴では、本発明の第1の特徴によるアーマチュアを含むソレノイドアクチュエータが提供される。アクチュエータは、更に、磁極面を持つ磁極部材を含んでいてもよい。この場合、アーマチュアの第1面が磁極面と向き合う。アクチュエータは、更に、押圧ばね(付勢ばね)を含んでいてもよい。押圧ばねの第1端は、アーマチュアの凹部内に受け入れられることができる。押圧ばねは、アーマチュアを磁極面から遠ざかる方向に押圧することができる。
【0025】
本発明の第3の特徴では、選択的触媒還元システム用の流体ポンプが提供される。流体ポンプは、本発明の第1の特徴によるアーマチュア及び/又は本発明の第2の特徴によるソレノイドアクチュエータを含む。
【0026】
本発明の各特徴の好ましい特徴及び/又は随意の特徴が、本発明のこの他の特徴に単独で又は適当な組み合わせで含まれていてもよい。
次に、本発明の実施例を、同様の部分に同様の参照番号を付した添付図面を参照して単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、既知の流体ポンプの断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例によるアーマチュアを持つ流体ポンプの断面図である。
【図3】図3は、図2に示す流体ポンプのアーマチュアの拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施例によるアーマチュアを持つ流体ポンプの断面図である。
【図5】図5は、図4の流体ポンプのアーマチュアを示す図であり、図5(a)は、アーマチュアの一方の面の斜視図であり、図5(b)は、アーマチュアの他方の反対側の面の斜視図であり、図5(c)は、アーマチュアのA−A線での断面図である。
【図6】本発明の第3実施例によるアーマチュアを示す図であり、図6(a)は、アーマチュアの一方の面の斜視図であり、図6(b)は、アーマチュアの他方の反対側の面の斜視図であり、図6(c)は、アーマチュアのA−A線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図2は、内燃エンジンのSCR計量分配システムで反応物を圧送するのに適した流体ポンプ100を示す。このポンプ100の構成要素の多くは、図1の既知のポンプ20を参照して上文中に説明した構成要素と同様であり、同様の部分には同じ参照番号を使用した。従って、図2に示す本発明と、図1の既知のポンプ20との間の相違点のみを以下に詳細に説明する。
【0029】
ポンプ100は、本発明の第1実施例によるアーマチュア132を持つアクチュエータ122を含む。図3を更に参照すると、アーマチュア132は、ほぼディスク状の本体168を含み、このディスク状の本体の直径方向中央に中央軸線(図3において、参照符号Pが付してある)を有する。アーマチュア132は、フェライト鉄合金等の適当な軟磁性体で形成されている。アーマチュア132は、アクチュエータ122の磁極面30と向き合う第1面170と、第1面170とは反対側の第2面172を含む。
【0030】
ほぼ円筒形の凹所174が、アーマチュア132の第1面170に設けられている。凹所174は、アーマチュア132の本体168と同軸に配置されている。アパーチャ176が、凹所174から第2面172まで延びている。
【0031】
ベント穴164が、第1及び第2の面170、172間をアーマチュア軸線Pと平行な方向に貫通している。図2及び図3には、こうしたベント穴164のうちの一つしか示してないが、好ましくは、アーマチュア132の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てられた幾つかのベント穴164が設けられている。
【0032】
更に、ベント通路178が、第2面172から凹所174まで本体168を貫通している。ベント通路178は、アーマチュア132の軸線Pに対して所定の角度で、即ち傾斜して配置されたドリル穴を含む。これらの傾斜ベント通路178は、凹所174の周壁180内に開口又は開放している。図2及び図3に一つの傾斜ベント通路178が断面で示してあるが、3つの他の傾斜ベント通路178の周壁180への開口部だけが示してある。この例では、全部で7個の通路178が設けられている。
【0033】
凹所174を除き、アーマチュア132の第1面170は全体に平らである。第2面172は、アパーチャ176が設けられた中央ランド184の周囲に配置された環状の溝即ち窪み182を有する。軸線方向ベント穴164及び傾斜ベント通路178は、溝182と連通しており、即ち溝182と交差している。
【0034】
使用時は、図2に示すように、アーマチュア132は、ポンプ100のアーマチュアチャンバ34内に配置される。圧送プランジャー136は、プランジャーシャフト186を含み、その上流端に、円筒形プランジャーへッド188と、端プレート190とを備えている。好ましくは、端プレート190は、プランジャーへッド188と一体である。プランジャーへッド188は、アーマチュア132のアパーチャ176に受け入れられる。端プレート190の直径は、プランジャーへッド188よりも大きく、そのため、端プレート190は、アーマチュア132の第2面172のランド184に当接する。
【0035】
プランジャーへッド188は、アパーチャ176にぴったりと嵌まっており、螺着又は締り嵌めしていてもよい。端プレート190は、溶接又は他の方法で、アーマチュア132に連結されてもよい。プランジャーへッド188及び端プレート190は、ポンプ100の使用時に、流体がアパーチャ176を通って流れないようにする。
【0036】
図1の公知のポンプと同様に、ポンプのチューブ状(管状)の磁極部材26は、スリーブ140を受け入れている。スリーブ140は中央ボア138を含み、このボア内でプランジャー136のシャフト186が摺動できる。スリーブ140の上流端面142は、磁極面30から下流方向に僅かにセットバックしてある。
【0037】
ばね46の上流端は凹所174に受け入れられ、その上流端面175に当接する。かくして、本発明のこの実施例では、アーマチュア132は、凹所174の形態のばねチャンバを有する。ばね46の下流端は、スリーブ140の端面142に当接する。
【0038】
ポンプ100の作動は、図1のポンプに説明したのと同様である。しかしながら、傾斜ベント通路178が流体連通手段を提供し、これにより、アーマチュア132がアーマチュアチャンバ34内で往復動するとき、アーマチュアの第2面172と凹所174との間で流体を流すことができる。従って、有利には、アーマチュア132が磁極面30に近付くと、流体は、それでも、凹所174が形成するばねチャンバと、アーマチュアチャンバ34との間を流れることができる。その結果、アーマチュア132の下流側での、特に凹所174内での及びスリーブ140の端面142と隣接した部分での、圧力低下が最小になり、キャビテーションによる損傷が起こり難くなる。
【0039】
通路178が設けられていない場合には、アーマチュア132が磁極面30にまさに当接するとき、凹所174内の流体がアーマチュアチャンバ34から孤立する。これにより、アーマチュア132の下流側で非常に高い圧力低下が生じ、これによりキャビテーションによる損傷の危険が高くなる。
【0040】
コイル28を賦勢(励磁)すると、磁界がハウジング24からアーマチュアの周縁部192に入り、次いで、アーマチュア本体168を通って第1面170に至り、磁極部材26の磁極面30に入る。
【0041】
傾斜通路178はアーマチュア132の第1面170と交差しないということに着目されるべきである。その代わり、傾斜通路178は凹所174内に開放しており、第1面170は通路178と干渉しない。同様に、アーマチュアの周縁部192は、通路178と干渉しない。従って、コイル28の賦勢時のアーマチュア132内での磁界の経路は、傾斜通路178の存在による影響をほとんど受けず、そのため、傾斜通路178は、好ましいとされるように、大きな流れ面積を提供するために傾斜通路178の直径が比較的大きい場合でも、アーマチュア132に加わる力を大きく減少しない。
【0042】
更に、通路178を設けることにより、アーマチュア132の質量が大幅に減少するということは理解されよう。アーマチュア132の質量を減少することによって、アーマチュア132の慣性が減少し、その結果、プランジャー136は比較的高い速度で移動できる。しかしながらアーマチュア132の曲げ剛性は、通路178の存在によって大幅な低下をきたすことはない。
【0043】
更に、傾斜通路178が凹所の周壁180に開放しているため、凹所174の端面175は、通路178の開口部と干渉せず、ばね46を安定的に配置できる平らな表面を提供する。同様に、通路178がアパーチャ176と重ならないため(すなわち、通路178がアパーチャ176を侵害しないため)、アパーチャ176へのプランジャーへッド188の嵌着には、通路178の存在による影響が及ぼされない。
【0044】
各傾斜通路178は、アーマチュア軸線Pに関して半径方向成分及び軸線方向成分のみを持つ方向に延びる。その結果、アーマチュア132の移動時に傾斜通路178を通る流体の流れは、通路178が半径方向成分を持たない方向に延びる場合のように、アーマチュア132に回転力を発生しない。
【0045】
図2及び図3のアーマチュア132は、適当な材料でできた中実の棒状体(バー)又はロッドから機械加工によって製造できる。軸線方向ベント穴164及び傾斜ベント通路178は、ドリル加工によって形成できる。
【0046】
図4は、本発明の第2実施例によるアーマチュア232を持つポンプ200を示す。図4のポンプ200は、アーマチュア232の設計だけが図2のポンプ100と異なっており、同様の部分に同じ参照番号が付してある。第1及び第2の実施例間の相違点のみを以下に説明する。
【0047】
図5に追加に示すように、第2実施例では、アーマチュア232は、本体268と、使用時にアクチュエータ54の磁極面30と向き合う第1面270と、第1面270とは反対側の第2面272とを含む。
【0048】
ばね46の上流端を受け入れるため、第1面270に凹所274が設けられている。本発明のこの実施例では、凹所274の面取りを施した領域277が、凹所の端面275と周壁280とを連結している。ばね46は、凹所274の全体に平らな端面275に当接する。
【0049】
本発明の第1実施例と同様に、アーマチュア232の第2面272は、中央ランド284の周囲に配置された環状溝282を含む。アパーチャ276が、凹所274から第2面272まで延びている。使用では、流体がアパーチャ276を通って流れないように、プランジャー136がアパーチャ276に受け入れられる。
【0050】
アーマチュア232は、アーマチュア232の周囲に等間隔に間隔が隔てられて配置された5個の軸線方向ベント穴264を含む。これらのベント穴264は、アーマチュア軸線Pと平行な方向にアーマチュア232を貫通している。これらのベント穴264の各々は、環状溝282と連通しており、アーマチュア232の第1及び第2の面270、272間を流体連通できる。
【0051】
更に、アーマチュア232は、その第2面272に、半径方向に延びる5個の溝又はチャンネル210を備えている。これらのチャンネル210はほぼU字形状の断面を有し、各チャンネル210の深さはアーマチュア232の中心に近づくに従って増大し、各チャンネル210のベース214は、アーマチュア232の軸線Pに関して所定の傾斜角度で延びる。各チャンネル210は、中央ランド284の下流で凹所274の周壁280と交差し、すなわち、中央ランド284の下流で凹所274の周壁280内に開口している。それによって、チャンネル210は、アーマチュア232の使用時に、流体を第2面272と凹所274との間で流すことができる流体連通手段を形成する。
【0052】
図5(b)及び図5(c)で最も明瞭にわかるように、流体を凹所274とチャンネル210との間で流すことができるように、各チャンネル210が凹所274の壁280と出会う場所に面取り領域277は、設けられていない。更に、チャンネル210を通る流れ面積を増大するため、凹所274の端面275に凹み又は窪み212を設けることによって、各チャンネル210と凹所274との間の交差部が拡大してある。従って、各チャンネル210と凹所274との間の交差部は、ほぼ円形である。
【0053】
本発明のこの第2実施例のチャンネル210は、本発明の第1実施例の傾斜通路178と同じ目的で役立ち、同じ利点を有する。
更に、第2実施例のチャンネル210の形状は、各チャンネル210の全体が、アーマチュア232の第2面272に対して軸線方向に開放するような形状を有するということに着目されたい。換言すると、軸線Pに沿ってアーマチュア232の第2面272を見たとき、各チャンネル210の全ての部分が見えるのである。同様に、各窪み212は、アーマチュア232の第1面270に対して開放している。従って、アーマチュア232の製造中、チャンネル210及び窪み212は、夫々、工具及びアーマチュア232をアーマチュア軸線Pと平行な方向に相対的に移動することによって形成できる。
【0054】
従って、アーマチュア232は、金属の射出成形によって、傾斜チャンネルを形成するための引き込み可能なピンを必要とすることなく、容易に製造でき、又は、パンチ及びダイの軸線方向移動だけが行われるプレス及び焼結プロセスによって容易に製造できる。
【0055】
図6は、本発明の第3実施例によるアーマチュア332を示す。このアーマチュア332は、図5に示す第2実施例のアーマチュアと同様である。第3実施例と第2実施例との間の僅かな相違を以下に説明する。
【0056】
本発明のこの第3実施例では、三つのチャンネル310が、アーマチュア332の第2面272に設けられており、これによって、アーマチュア332の第2面272と第1面370の凹所374との間に流体連通手段が形成されている。更に、第1及び第2の面370、372間を流体連通できるように、6個の軸線方向ベント穴364が設けられている。
【0057】
チャンネル310は、これらの軸線方向ベント穴364のうちの三つのベント穴と交差する。従って、これらのチャンネル310は、アーマチュア332の本体368内深くまで延ばすことができ、それによって、各チャンネル310と凹所374の周壁380との間の交差面積は、図4及び図5に示すアーマチュアにおけるよりも大きくできる。軸線方向ベント穴364の周囲から凹所の壁380まで延びる各チャンネル310のベース314は、アーマチュア332の軸線に関して所定の傾斜角度をなして延びている。
【0058】
面取り領域377が、凹所374の端面375と周壁380との間に設けられているが、面取り領域377は、各チャンネル310と凹所374との間の交差領域には設けられておらず、これによって、流れ面積を増大している。しかしながら、チャンネル310が、アーマチュア332の第1面370に向かって更に延びているため、この実施例では、凹所374の端面375に窪みを設ける必要がない。
【0059】
アーマチュアの凹所と第2面との間を流体連通するための任意の適当な手段が設けられていてもよいということは理解されよう。但し、このような流体連通手段が、アーマチュアの第1面と干渉せず、交差せず、又はこの面に沿って又はこの面内に延びていない限りにおいてである。このような手段の例としては、ドリル穴、ボア、通路、チャンネル、溝、切欠き(ノッチ)、導管、凹み、窪み、等が挙げられる。流体連通手段の形態は、アーマチュアについての好ましい製造方法に基づいて選択される。
【0060】
アーマチュアには、任意の適当な数の流体連通手段を設けることができる。例えば、三個乃至七個の通路、チャンネル、又はこの他の同様の手段が、設けられていてもよい。同様に、任意の適当な数の軸線方向ベント穴が設けられていてもよい。通路の数を増やすことによって、有利には、アーマチュアを通る流体連通に利用できる全断面積が増大する。好ましくは、軸線方向ベント穴及び流体連通手段は、アーマチュアの周囲に均等に分配されているが、必ずしもこのようになっていなくてもよい。
【0061】
流体連通手段は、本発明の第3実施例におけるように、一つ又はそれ以上の軸線方向ベント穴と交差していてもよく、又は変形例では、流体連通手段は軸線方向ベント穴とは別個に設けられていてもよい。流体連通手段を介してアーマチュアを通る適切な流体流れが得られるため、軸線方向ベント穴を省略してもよいと考えられる。
【0062】
上文中に説明した本発明の実施例に対し、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、幾つかのこの他の変形及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
26 チューブ状磁極部材
30 磁極面
34 アーマチュアチャンバ
46 ばね
100 流体ポンプ
122 アクチュエータ
132 アーマチュア
136 圧送プランジャー
138 中央ボア
140 スリーブ
142 上流端面
152 端面
164 ベント穴
168 ディスク状本体
170 第1面
172 第2面
174 円筒形凹所
175 上流端面
176 アパーチャ
178 ベント通路
180 周壁
182 環状溝
186 プランジャーシャフト
188 円筒形プランジャーへッド
190 端プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドアクチュエータ用のアーマチュア(132;232;332)であって、
前記アーマチュアは、
前記アーマチュアの使用時に押圧ばねを受け入れるのに適した凹所(174;274;374)を含む第1面(170;270;370)と、
前記第1面(170;270;370)とは反対側の第2面(172;272;372)と、
前記アーマチュアの使用時に、前記凹所(174;274;374)と前記第2面(172;272;372)との間で前記アーマチュアを通る流体流路を提供する流体連通手段(178;210;310)とを備え、
前記第1面(170;270;370)は、前記流体連通手段(178;210;310)と干渉しない、アーマチュア。
【請求項2】
請求項1に記載のアーマチュアにおいて、
前記流体連通手段は、前記凹所(174;274;374)の周壁(180;280;380)と連通する、アーマチュア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアーマチュアにおいて、
前記アーマチュア(132;232;332)は、前記第1面(170;270;370)に対して垂直な中央軸線(P)を有し、
前記流体流路は、前記軸線(P)と平行な方向の第1成分と、前記軸線(P)に関して半径方向に延びる第2成分とを有する、アーマチュア。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアーマチュアにおいて、
前記流体流路は、前記軸線(P)に関して傾斜している、アーマチュア。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載のアーマチュアにおいて、
前記流体連通手段は、前記第2面(172)から前記凹所(174)まで延びる一つ又はそれ以上の通路(178)を含む、アーマチュア。
【請求項6】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載のアーマチュアにおいて、
前記流体連通手段は、前記アーマチュアの前記第2面(272;372)に設けられた、前記凹所(274;374)に開放した一つ又はそれ以上のチャンネル(210;310)を含む、アーマチュア。
【請求項7】
請求項6に記載のアーマチュアにおいて、
前記チャンネル(210;310)又はこれらのチャンネルの各々の深さは、前記凹所(274;374)に向かって増大する、アーマチュア。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のアーマチュアにおいて、
前記チャンネル(210;310)又はこれらのチャンネルの各々は、前記アーマチュア(232;332)の製造中、工具及び前記アーマチュア(232;332)を前記第1面(270;370)に対して垂直方向に相対的に移動することによって形成できる、アーマチュア。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載のアーマチュアにおいて、
前記流体連通手段は、更に、前記凹所(274)内に開口した前記チャンネル又は各チャンネル(210)の開口部と隣接した、前記凹所(274)の端面(275)に設けられた窪み(212)を含む、アーマチュア。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載のアーマチュアにおいて、更に、
前記第1面(170;270;370)と前記第2面(172;272;372)との間に流体流路を形成するベント手段(164;264;364)を含む、アーマチュア。
【請求項11】
請求項10に記載のアーマチュアにおいて、
前記流体連通手段(310)は、前記ベント手段(364)と交差する、アーマチュア。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載のアーマチュアにおいて、更に、
前記アーマチュアの使用時にプランジャー(136)を受け入れるためのアパーチャ(176;276;376)を含み、
前記アパーチャ(176;276;376)は、前記第2面(172;272;372)と前記凹所(174;274;374)との間を延びている、アーマチュア。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載のアーマチュア(132;232;332)を含むソレノイドアクチュエータにおいて、更に、
磁極面(30)を持つ磁極部材(26)を含み、
前記アーマチュアの前記第1面(170;270;370)は、前記磁極面(30)と向き合う、ソレノイドアクチュエータ。
【請求項14】
請求項13に記載のソレノイドアクチュエータにおいて、更に、
押圧ばね(46)を含み、
前記押圧ばね(46)の第1端は、前記アーマチュア(132;232;332)の前記凹所(174;274;374)内に受け入れられる、ソレノイドアクチュエータ。
【請求項15】
選択的触媒還元システム用の流体ポンプ(100;200)において、
請求項13又は14に記載のソレノイドアクチュエータ又は請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載のアーマチュアを含む、流体ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−106453(P2011−106453A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−253002(P2010−253002)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(510119821)デルファイ・テクノロジーズ・ホールディング・エス.アー.エール.エル. (45)
【Fターム(参考)】