説明

ソレノイドポンプ

【課題】流体が流通する流体通路の連通状態を容易に切り換え、且つ流通する流体の量を精度よく制御する。
【解決手段】ソレノイドポンプ10は、流体を入力ポート68から出力ポート70に流通させる流体通路60が形成されたハウジング18と、ソレノイド部12の励磁状態に基づいて変位して流体通路60を開閉する可動部材20と、を備える。流体通路60は、入力ポート68に連通する入力側通路64と、出力ポート70に連通する出力側通路66と、入力側通路64及び出力側通路66に連通するとともにハウジング18と可動部材20の先端部とによって囲まれた空間からなるポンプ室62と、を含む。可動部材20は、変位にともなってポンプ室62と出力側通路66との連通を開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドの励磁作用下に変位する可動部材を有し、この可動部材の変位によって流体通路の開閉を切り換えるソレノイドポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学分野や医療分野では、液体に含まれる成分を分析する、または、複数の液体を所定量の割合で混合する等の目的で、微量の液体を供給する液体供給装置が用いられている。こうした装置は、微量の液体を流入及び流出させるソレノイドポンプが流路中に備えられ、液体を所望の量に供給制御するように構成されている。
【0003】
このようなソレノイドポンプとしては、例えば、特許文献1に開示された流体ポンプ(fluid metering pump)をあげることができる。特許文献1の流体ポンプは、ソレノイド(solenoid assembly)を励磁して可動部材(plunger)を摺動することで、この可動部材が閉塞していた入力側通路(inlet flow passage)の開口部を開放して、入力側通路とポンプ室(pump chamber)を連通させる。すなわち、特許文献1の流体ポンプは、可動部材の開放動作にともなって上流側の流路から所望の量の流体(液体)をポンプ室に流入し、可動部材の閉塞動作にともなって所望の量の流体をポンプ室から流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5284425号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の流体ポンプでは、可動部材が入力側通路とポンプ室との連通を開閉することによって、以下に列挙する課題が生じる。
【0006】
第1に、可動部材が流体を流入させる入力側通路を閉塞することから、ポンプ室が出力側通路に連通したまま開放状態となるため、このポンプ室や出力側通路に残留した流体が劣化しやすくなる。特に、流体が液体の場合、ポンプ室内から出力側通路を介して水分が抜け液体が固化してしまうおそれがあり、この場合、ポンプ室に流入する液体の量が変化してしまう、またはメンテナンスにおいてポンプ室内の洗浄に手間がかかる等の不都合が生じる。
【0007】
第2に、流出される流体がポンプ室及び出力側通路という比較的大きな容積からなる空間に貯留されるため、可動部材が入力側通路を閉塞する時に、多量の流体が押し出されることになり、この流体の流出が終了するタイミング(流体が液体の場合、液切れとも呼ばれる)に大きなばらつきが生じる。その結果、出力側通路から流出する流体の量が安定しなくなる。
【0008】
第3に、可動部材が入力側通路を閉塞した状態において、入力側通路を直接閉塞するダイヤフラム(diaphragm)の膜部が経時変化によって撓むことで、ポンプ室の容積を変化させてしまう。これにより、ポンプ室に流入していた流体を出力側通路に押し出すことがあり、流体の漏れが発生する原因となる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、流体が流通する流体通路の連通状態を容易に切り換え、且つ流通する流体の量を精度よく制御することができ、しかも、流体通路内における流体の劣化を防ぐとともに、出力側通路から流出される流体の量を安定化させ、さらに流体の漏れを防ぐことができるソレノイドポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、流体を入力ポートから出力ポートに流通させる流体通路が形成されたハウジングと、ソレノイドの励磁状態に基づいて変位して前記流体通路を開閉する可動部材と、を備えるソレノイドポンプであって、前記流体通路は、前記入力ポートに連通する入力側通路と、前記出力ポートに連通する出力側通路と、前記入力側通路及び前記出力側通路に連通するとともに前記ハウジングと前記可動部材の先端部とによって囲まれた空間からなるポンプ室と、を含み、前記可動部材は、前記変位にともなって前記ポンプ室と前記出力側通路との連通を開閉することを特徴とする。
【0011】
上記によれば、可動部材がポンプ室と出力側通路との連通を開閉する構成としているため、可動部材が流体通路を閉塞した状態では、ポンプ室と出力側通路とが確実に遮断される。すなわち、ソレノイドポンプは、ポンプ室内に存在する流体を出力側通路に露呈させることがない。よって、出力側通路が開放状態となっていても、ポンプ室内の流体まで劣化させることがなく、劣化する流体の量を低減することができる。また、流体が液体の場合は、露呈によって生じる液体の個化を抑制することが可能となり、ポンプ室内の容積を安定化させることができる。これにより、ソレノイドポンプは、ポンプ室内に流入する液体の量を一定にすることができ、所望の量の液体を精度よく供給することができる。しかも、液体の固化が抑制されることで、洗浄等のメンテナンスを容易に行うこともできる。
【0012】
また、可動部材がポンプ室と出力側通路との連通を閉塞する構成では、可動部材による流体通路の閉塞時に、上記のとおり流体の流出を確実に遮断することができる。このため、可動部材による流体通路の閉塞時に、流体の流出が終了するタイミングを一定とすることができ、出力側通路から所望の量の流体を安定的に流出することができる。
【0013】
ここで、ソレノイドポンプの具体的構成として、前記ハウジングは、前記ポンプ室と連通する前記出力側通路の開口部を包囲する固定壁が形成されており、前記可動部材の先端部には、前記固定壁と対向する当接部が形成されるとともに外周縁部が前記ハウジングに固定されるダイヤフラムが備えられており、前記当接部は、前記流体通路の閉塞状態において、前記固定壁に密着するように構成することができる。
【0014】
このように、流体通路の閉塞状態において、ダイヤフラムの当接部がハウジングの固定壁に密着することにより、ポンプ室と出力側通路とをより確実に遮断することができる。また、ダイヤフラムの膜部が経時変化によって撓んでも、可動部材が出力側通路を閉塞しているので、ポンプ室に流入している流体を押し出すことがなく、流体の漏れを確実に防ぐことができる。
【0015】
この場合、前記固定壁及び前記当接部は、平坦状に形成されていることが好ましい。固定壁が平坦状に形成されていることで、出力側通路に向かう流体の流れを阻害するものが存在しないため、例えば、開口部の周囲に密閉用の突起が形成されている構成等と比較して、ポンプ室に流入した流体をスムーズに出力側通路に案内することができる。さらに、固定壁と対向する当接部が平坦状に形成されているため、流体通路の閉塞状態では、固定壁と当接部とをより強固に密着させることができる。
【0016】
また、前記ダイヤフラムは、弾性力を備えるとともに前記当接部と前記外周縁部とを連結する膜部を有し、前記可動部材は、前記膜部における前記ポンプ室を臨む面と反対側の面を支持する支持部を備える構成としてもよい。
【0017】
この支持部は、可動部材が流体通路を閉塞する時に、ダイヤフラムが流体から圧力を受けた場合でも、膜部を容易に支持して、該膜部の変形を防ぐことができる。これにより、流体の圧力を受けてもダイヤフラムの形状を維持したまま流体通路を閉塞することができ、所望の量からなる流体を安定的に出力側通路に流出させることができる。
【0018】
この場合、前記支持部は、前記ダイヤフラムによる前記流体通路の閉塞状態において、前記反対側の面の傾斜に沿うテーパ形状に形成されていることが好ましい。このように、支持部が、膜部のポンプ室を望む面と反対側の面の傾斜に沿うテーパ形状に形成されていることで、支持部は、膜部を弾性変形させる等の大きな負荷をかけずに、確実に膜部を支持することができる。
【0019】
そして、前記ダイヤフラムは、前記可動部材の先端部に取り付けられる取付部を有し、前記支持部は、リング状に形成され、前記取付部の側周面を囲うように取り付けられていてもよい。これにより、支持部は、膜部の反対側を全面に渡って支持することができるため、膜部を一層確実に支持することができる。しかも、リング状の支持部によってダイヤフラムの取付部を囲うことにより、ダイヤフラムが可動部材から脱落することを抑止する構成とすることもできる。
【0020】
また、前記出力側通路の開口部は、前記可動部材に向かって拡径するテーパ形状に形成されており、前記ダイヤフラムは、前記出力側通路の開口部のテーパ形状と係合する凸部が形成されていてもよい。
【0021】
出力側通路の開口部がテーパ形状に形成されていることで、ポンプ室内にある流体を出力側通路により容易に導くことができる。また、ダイヤフラムの凸部は、出力側通路の開口部に係合することで、出力側通路の開口部を簡単に密閉することができ、流体通路の連通をより確実に遮断することができる。
【0022】
さらに、前記入力側通路には、前記入力ポートから前記ポンプ室に前記流体を流通させ、一方、前記ポンプ室から前記入力ポートに前記流体が流通することを遮断する入力側チェック弁が設けられ、前記ダイヤフラムは、前記入力側チェック弁の先端弁部に対向する係合部を備え、前記先端弁部は、前記ダイヤフラムによる前記流体通路の閉塞状態において、前記係合部により閉塞される構成としてもよい。
【0023】
このように、係合部により入力側チェック弁の先端弁部を閉塞することにより、流体が流入される入力側通路から該流体のサージ圧等の圧力がかかった場合でも、先端弁部が閉塞した入力側チェック弁において阻止することができる。これにより、ポンプ室やダイヤフラムに圧力が及ぶことがなくなる。よって、例えば、押圧ばねにより可動部材を押圧することで流体通路を閉塞する構成では、押圧力が小さいばねを適用することができる。そして、押圧力が小さい押圧ばねを適用することで、ソレノイドの励磁作用にともなう可動部材を変位させる力(推力)を抑えることが可能となり、コイルの巻回量等が少ない小型のソレノイドを用いて装置の小型化を図ることができる。
【0024】
この場合、前記係合部は、前記ダイヤフラムに一体形成されていてもよい。このように、ダイヤフラムに係合部を一体形成することで部品点数を少なくすることができる。特に、微量の流体を流入及び流出させるソレノイドポンプは、ダイヤフラムが小さいため、係合部を一体形成することで装置の組立を容易にすることができる。
【0025】
ここで、前記可動部材の後端部と対向する位置には、前記可動部材の変位における変位量を調節する変位量調節機構が設けられていることが好ましい。
【0026】
変位量調節機構によって可動部材の変位量を調節することにより、可動部材とハウジングによって形成されるポンプ室の容積を容易に調節することができる。これにより、ソレノイドポンプ内に流入及び流出させる流体を、ユーザが要望する量に簡単に調節することができる。
【0027】
この場合、前記変位量調節機構は、前記可動部材の変位方向に沿って調節用雌ねじが形成された固定部材と、前記調節用雌ねじに螺合して固定部材に対し軸線方向に移動可能となった調節用ボルトと、によって構成され、前記調節用ボルトは、前記可動部材側に最も移動した状態で前記可動部材側の端部が前記固定部材から突出する構成としてもよい。このように、変位量調節機構は、調節用ボルトを固定部材に対し軸線方向に移動することで、この調節用ボルトの可動部材側の端部の位置が調節されるため、可動部材の変位量を一層容易に調節することできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、流体が流通する流体通路の連通状態を容易に切り換え、且つ流通する流体の量を精度よく制御することができ、しかも、流体通路内における流体の劣化を防ぐとともに、出力側通路から流出される流体の量を安定化させ、さらにダイヤフラムの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係るソレノイドポンプにおいてソレノイド部に電力が供給されていない通常状態の内部構造を示す側面断面図である。
【図2】第1実施形態に係るソレノイドポンプにおいてソレノイド部の励磁状態の内部構造を示す側面断面図である。
【図3】図1のソレノイドポンプのポンプ室周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図4】図2のソレノイドポンプのポンプ室周辺を拡大して示す側面断面図である。
【図5】第1実施形態に係るソレノイドポンプの変形例を示す側面断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るソレノイドポンプの内部構造を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るソレノイドポンプについて好適な実施の形態(第1及び第2実施形態)を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。第1及び第2実施形態に係るソレノイドポンプは、既述したように、微量の液体を供給制御する液体供給装置の流路に備えられ、該微量の液体を流入及び流出させるように構成されている。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ソレノイドポンプ内を流通する流体として気体を適用することができ、また、比較的量が多い流体を流通させるように構成することもできる。また、以降の説明では、発明の理解を容易にするために、特に指示のない限り、図1に示す矢印方向を基準として、上下左右方向を説明していく。
【0031】
図1は、本発明の第1実施形態に係るソレノイドポンプ10においてソレノイド部12に電力が供給されていない通常状態の内部構造を示す側面断面図である。図1に示すように、第1実施形態に係るソレノイドポンプ10は、ケース14、中間連結部16及びハウジング18によって外観が構成され、その内部にはソレノイド部12、可動部材20等が収容されている。
【0032】
ケース14は、例えば、金属製材料から有底筒状に形成され、ソレノイド部12を上方から覆うように装着される。このケース14の上部中央部には、後述する固定鉄心22の取付部22bが挿通される孔14aが形成されている。
【0033】
ソレノイド部12は、コイル24が巻回されるボビン26と、ボビン26の軸心位置に挿入される固定鉄心(固定部材)22と、コイル24に電気的に接続される電源接続部材28とを含み、ケース14内部に配設される。ボビン26は、円筒状に形成され、軸方向に貫通する挿通孔26aを備えている。ボビン26の上端部及び下端部には、半径外方向に拡径した一組の鍔部26b、26cが形成され、この鍔部26b、26cの間にコイル24が巻回されて保持される。
【0034】
固定鉄心22は、金属製材料によって略円柱状に形成されている。この固定鉄心22は、側周面がボビン26の挿通孔26aに略一致する外径となっており、挿通孔26aに挿入されることで該ボビン26と嵌合する。また、固定鉄心22の下部には、側周面が半径内方向に縮径した受け部22aが形成され、さらに、上部には、同じく側周面が半径内方向に縮径した取付部22bが形成されている。またさらに、固定鉄心22の中心軸には、ボルト挿入孔23が貫通形成されており、このボルト挿入孔23の上部には雌ねじ部23aが形成されている。
【0035】
ボルト挿入孔23には調節用ボルト90が挿入され、雌ねじ部23aには調節用ボルト90の頭部に形成された雄ねじ部90aが螺合される。また、雄ねじ部90aの上部には固定ナット32が螺合される。固定ナット32の螺合前には、ケース14が固定鉄心22の取付部22bに孔14aを介して取り付けられ、この孔14aよりも外径が大きいリング状のワッシャ30が嵌め込まれる。これにより、ワッシャ30と固定鉄心22がケース14を挟み込み、固定鉄心22の取付部22bにケース14を固定させる。なお、固定ナット32にはナットカバー32aが被せられる。
【0036】
電源接続部材28は、ボビン26の下部に配設され、該ボビン26を巻回しているコイル24に電気的に接続されている。この電源接続部材28は、ケース14の側面から突出する端子28aを有し、この端子28aは電源コード28bを介して図示しない外部電源に接続されている。ソレノイド部12は、電源接続部材28を介して外部電源から電力が通電されると、その電流変化に基づいて励磁されることになる。
【0037】
また、ソレノイドポンプ10の中間連結部16は、3つのスリーブ(第1のスリーブ34、第2のスリーブ36、第3のスリーブ38)と、該3つのスリーブの孔部34a、36a、38a内を挿通し且つボビン26の挿通孔26aに挿入されるガイド部材39とによって構成されている。第1のスリーブ34は、有底筒状に形成されるとともに、上部中央部にボビン26の挿通孔26aの内径と略一致する孔部34aが穿設されている。さらに、第1のスリーブ34の内周面には雌ねじ部34bが形成されており、この雌ねじ部34bには、ソレノイドポンプ10の組立時に下側からハウジング18が螺合される。
【0038】
第2のスリーブ36は、第1のスリーブ34上部に配設される環状の部材であり、その中央部には、第1のスリーブ34の孔部34aと同径の孔部36aが形成されている。
【0039】
第3のスリーブ38は、第2のスリーブ36上部に配設される環状の部材であり、第1及び第2のスリーブ34、36と同様に、その中央部には、孔部34a、36aと同径の孔部38aが形成されている。この第3のスリーブ38は外周面の一部が切り欠かれ、電源接続部材28が収容可能となっている。電源接続部材28は、この第3のスリーブ38とボビン26の鍔部26cに挟持されることにより保持される。
【0040】
ガイド部材39は、外径が孔部34a、36a、38a及び挿通孔26aの内径に略一致する円筒状に形成されている。このガイド部材39の軸芯には、軸方向に延びるガイド孔39aが形成されている。また、ガイド部材39の下部には、半径外方向に延出するフランジ39bが形成されている。ガイド部材39は、第1のスリーブ34とハウジング18の螺合にともなって、フランジ39bが第1のスリーブ34の天井面とハウジング18の上面の間に挟み込まれる。これにより、ガイド部材39は、筒状部分が第1のスリーブ34の孔部34aから立設される。そして、ガイド部材39の筒状部分の外周面には、第2及び第3のスリーブ36、38、及びボビン26が順次外嵌される。さらに、ガイド孔39aの上部には、固定鉄心22の受け部22aが嵌め込まれて、その嵌合箇所が溶接されることで、ガイド部材39と固定鉄心22の連結がなされる。
【0041】
すなわち、ソレノイドポンプ10は、中間連結部16よりも上部側に配設される各構成の軸心位置がガイド部材39を介して同軸上に配設されることになる(電源接続部材28を除く)。また、ソレノイドポンプ10は、中間連結部16及び固定鉄心22によって上部側の各構成が一体的に保持され、下部のハウジング18に連結される構成となっている。
【0042】
ソレノイドポンプ10の可動部材20は、プランジャ40、フランジ部材42、ダイヤフラム44等を含み、ソレノイドポンプ10内に変位自在に配設される。プランジャ40は、例えば、鉄等の磁性材料によって略円柱形状に形成されている。また、プランジャ40は、ガイド部材39のガイド孔39a内において上下方向に変位可能な外径に形成されており、該ガイド孔39a内に挿入されることで、その上部に存在する固定鉄心22と同軸上に配置される。このプランジャ40は、ソレノイド部12の励磁作用によって固定鉄心22側(上方向)に吸引される推力が付与され、これによって上方向に変位する構成となっている。
【0043】
また、プランジャ40の先端部(下部)には、ねじ孔40aが形成されており、このねじ孔40aには取付用ねじ46が螺合される。この取付用ねじ46には、中間部分の頭部46a寄りに半径外方向に拡径した胴部46bが形成されており、この胴部46bにはフランジ部材42が嵌合される。一方、取付用ねじ46の頭部46aには、ダイヤフラム44が取り付けられる。
【0044】
フランジ部材42は、プランジャ40の先端面よりも半径外方向に拡径する円板形状に形成されている。このフランジ部材42の上面には、最外周縁よりも内方向に縮径した段部42aが形成されており、この段部42aには押圧ばね48の下部側端部が係合される。
【0045】
押圧ばね48は、上部側端部がガイド部材39のフランジ39bに当接し、下部側端部に係合されているフランジ部材42を常時下方向に付勢するように構成されている。可動部材20は、この押圧ばね48によりフランジ部材42が押圧されることで、一体的に下方向に押圧される。
【0046】
ダイヤフラム44は、図3に示すように、例えば、ゴム等の弾性材料から形成され、比較的厚肉に形成された中央部44aと、この中央部44aに連なるとともに半径外方向に拡径し且つ薄肉に形成された膜部44bと、この膜部44bに連なりハウジング18に固定される外周縁部44cと、を有する。ダイヤフラム44の中央部44a上面には、フックを有する取付孔44dが形成されており、取付用ねじ46の頭部46aは、この取付孔44dに挿入されフックによって係止される。ダイヤフラム44は、プランジャ40との取付状態において、該プランジャ40の先端部と反対側にある中央部44a及び膜部44bの下面がハウジング18に臨むように構成されている。また、フランジ部材42は、ダイヤフラム44の取付部分とプランジャ40の先端面によって挟み込まれることで確実に保持される。
【0047】
図1に戻り、ソレノイドポンプ10のハウジング18は、3つのブロック体(第1のブロック体50、第2のブロック体52、第3のブロック体54)からなり、第1〜第3のブロック体50、52、54が下側から順に積層されて、連結用ねじ56によって連結されることで一体に構成されている。また、ハウジング18には、液体が流通可能な流体通路60が形成されている。この流体通路60は、ポンプ室62、入力側通路64及び出力側通路66を有している。
【0048】
第1のブロック体50は、液体供給装置(図示せず)の流路100に接続される部材であり、この流路100に接続される下側端面には、入力ポート68及び出力ポート70が形成されている。入力ポート68は、上流側の流路100aが接続されて、ソレノイドポンプ10内に液体を流入させ、出力ポート70は、下流側の流路100bが接続されてソレノイドポンプ10内から液体を流出させる機能を有している。
【0049】
第1のブロック体50の内部には、入力ポート68から反対側の上側端面まで貫通する第1の入力側通路64aと、出力ポート70から上側端面まで貫通する第1の出力側通路66aと、が穿設されている。第1の出力側通路66aの上部側には、この第1の出力側通路66aよりも大きな内径からなる第1の収容部67が形成されている。第1の収容部67には、ハウジング18が組み立てられる時に出力側チェック弁80が収容される。出力側チェック弁80は、先端弁部80aがポンプ室62から出力ポート70に向かうように収容され、この先端弁部80aは、液体の流入時には閉口することで出力側通路66から液体の流入を遮断し、液体の流出時には開口することで液体の流出を許容する。
【0050】
第2のブロック体52は、第1のブロック体50と第3のブロック体54の中間に介在する部材である。第2のブロック体52内部には、第1の入力側通路64aに連通する第2の入力側通路64bと、第1の出力側通路66aに連通する第2の出力側通路66bと、が穿設されている。第2の入力側通路64b及び第2の出力側通路66bは、第1のブロック体50に接続される下側端面から反対側の上側端面に貫通するように形成されている。また、第2の入力側通路64bの下部側には、この第2の入力側通路64bよりも大きな内径からなる第2の収容部65が形成されている。第2の収容部65には、ハウジング18が組み立てられる時に入力側チェック弁82が収容される。入力側チェック弁82は、先端弁部82aが入力ポート68からポンプ室62に向かうように収容され、この先端弁部82aは、液体の流入時には開口することで入力側通路64から液体の流入を許容し、液体の流出時には閉口することで液体の流出を遮断する。
【0051】
また、第2のブロック体52の上側端面は、図3に示すように、側部に対して中央部が窪んだ凹部84に形成されており、この凹部84はダイヤフラム44の下面と対向する。凹部84は、側面が第3のブロック体54に向かって拡径するテーパ状に形成されるとともに、底面がダイヤフラム44と当接する固定壁84aとして平坦状に形成されている。また、凹部84の側面には、第2の入力側通路64bの開口部64cが所定箇所(図3中では右側)に形成されており、固定壁84aの中心部には、第2の出力側通路66bの開口部66cが形成されている。
【0052】
図1に示すように、凹部84とダイヤフラム44によって囲まれた空間は、流体通路60のポンプ室62として構成されている。すなわち、このポンプ室62は、入力側通路64(第1及び第2の入力側通路64a、64b)及び出力側通路66(第1及び第2の出力側通路66a、66b)に連通しており、入力側通路64から液体が流入され、出力側通路66に流出させる機能を有している。
【0053】
第3のブロック体54は、半径外方向に突出した突縁部54aを下部側に有する円筒状に形成されており、この筒内には可動部材20の先端部が挿入される。突縁部54aの下側端面は第2のブロック体52の上側端面の側部に接続される。この突縁部54aは、第2のブロック体52と第3のブロック体54の接続時に、第2のブロック体52の上側端面の側部と協働してダイヤフラム44の外周縁部44cを挟み込む。これによりダイヤフラム44の外周縁部44cはハウジング18に固定される。また、第3のブロック体54の外周面には雄ねじ部54bが形成されている。ハウジング18と中間連結部16の接続は、この雄ねじ部54bが第1のスリーブ34の雌ねじ部34bに螺合されることによりなされる。
【0054】
第1実施形態に係るソレノイドポンプ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にソレノイドポンプ10の動作及び作用効果について図1〜図4を参照しながら説明する。
【0055】
ソレノイドポンプ10は、ソレノイド部12の励磁作用によって内部に配設した可動部材20を変位させることで流体通路60を開閉する。すなわち、ソレノイド部12が励磁されていない非励磁状態の場合は、可動部材20がソレノイドポンプ10内のガイド孔39aの下部側に位置してポンプ室62と出力側通路66を閉塞している。そして、外部電源から電力が供給されソレノイド部12が励磁状態となった場合は、可動部材20が吸引されガイド孔39aの上部側に変位することになり、これによりポンプ室62と出力側通路66が開放される。
【0056】
図1に示すように、ソレノイドポンプ10は、非励磁状態において、可動部材20の先端側に取り付けられたダイヤフラム44が、押圧ばね48によってポンプ室62内から出力側通路66側(下方向)に押圧される。この場合、ダイヤフラム44の中央部44a下面側が第2のブロック体52の凹部84の中心部に当接する。
【0057】
図3に示すように、凹部84の中心部には、出力側通路66の開口部66cがテーパ形状に形成されており、さらに凹部84の周囲には開口部66cを包囲する平坦状の固定壁84aが形成されている。一方、ダイヤフラム44の中央部44a下面の中心位置には、出力側通路66の開口部66cと対向する凸部44eが形成されている。この凸部44eの側周部は、開口部66cに向かって縮径するテーパ形状に形成されている。また、ダイヤフラム44は、この凸部44eの周囲を包囲するように平坦状の当接部44fが形成されており、この当接部44fが固定壁84aと対向している。したがって、ダイヤフラム44による流体通路60の閉塞状態では、共に平坦状に形成された固定壁84aと当接部44fとが密着することになり、ポンプ室62と出力側通路66とを確実に閉塞(遮断)することができる。さらに、流体通路60の閉塞状態では、出力側通路66の開口部66cのテーパ形状と凸部44eのテーパ形状が密着し、凸部44eが開口部66cを密閉した状態にするため、ポンプ室62と出力側通路66とを一層確実に遮断することができる。
【0058】
図2に示すように、ソレノイドポンプ10は、ソレノイド部12が励磁状態(電力が供給されている状態)に切り換えられると、可動部材20がガイド孔39a内の上部側に変位して、プランジャ40の後端部が固定鉄心22の受け部22a、または後述する調節用ボルト90の先端部90bに当接する。そして、可動部材20の変位にともなって、その先端部に取り付けられたダイヤフラム44は、ポンプ室62と出力側通路66の閉塞状態を開放する。可動部材20の変位時には、ガイド孔39aによってプランジャ40が案内されることで、該可動部材20を上方向に精度よく変位させることができる。
【0059】
図4に示すように、外周縁部44cがハウジング18に固定されているダイヤフラム44は、可動部材20の変位ともなって、中央部44aと膜部44bとを上方向に変位及び変形して、ポンプ室62の容積(空間の体積)を大きくさせる。これにより、ポンプ室62は液体を吸引して室内に流入させることができる。ここで、図2に示すように、入力側通路64に配設された入力側チェック弁82は、ポンプ室62が液体を吸引する作用に伴って先端弁部82aが開口し、入力ポート68側からポンプ室62に液体を流入させる。一方、出力側通路66に配設された出力側チェック弁80は、ポンプ室62が液体を吸引するときも先端弁部80aの閉口状態を維持して、出力側通路66からポンプ室62に液体が流入することを遮断する。したがって、出力側通路66からポンプ室62内への液体の流入が阻止され、入力側通路64からのみポンプ室62内への液体の流入が許容されることになる。
【0060】
可動部材20がガイド孔39a内の上部側に変位した状態では、ポンプ室62内に所望の量の液体が流入される。すなわち、ソレノイドポンプ10は、可動部材20の上部側変位位置が変更されることで、その変位量が調節され、これによりポンプ室62に流入及び流出される液体の量を調節することができる。このため、本実施形態に係るソレノイドポンプ10には、可動部材20の変位量を調節する変位量調節機構86が設けられている。
【0061】
図1に示すように、変位量調節機構86は、可動部材20(プランジャ40)の後端部と対向する位置にある固定鉄心22と、調節用ボルト90と、によって構成されている。具体的には、固定鉄心22のボルト挿入孔23が可動部材20の変位方向に沿って形成されており、このボルト挿入孔23の雌ねじ部(調節用雌ねじ)23aに調節用ボルト90の雄ねじ部90aが螺合されている。調節用ボルト90は、固定鉄心22に対する回転に伴って上下方向に移動することができ、可動部材20側に最も移動した状態で可動部材20側の端部(先端部90b)が固定鉄心22から突出するように構成されている。
【0062】
すなわち、変位量調節機構86は、固定鉄心22の下端面から突出する先端部90bの突出量を調節する。この場合、ナットカバー32aを外して調節用ボルト90をねじ送りし先端部90bの位置を調節することで、プランジャ40の後端部が先端部90bに当接する上部側変位位置が調節される。その結果、ソレノイドポンプ10は、可動部材20の変位量が調節され、ポンプ室62に流入する液体の量が調節される。なお、可動部材20は、調節用ボルト90と当接する箇所に緩衝部材が設けられていてもよい。この緩衝部材は、調節用ボルト90との当接する際の衝撃を吸収することができる。
【0063】
ソレノイドポンプ10は、励磁状態から非励磁状態に切り替わると、図3に示すように、ガイド孔39aの上部側に変位していた可動部材20が、押圧ばね48によって押圧されて下方向に変位する。これにともないダイヤフラム44も下方向に変位及び変形し、ポンプ室62の容積を小さくさせる。ポンプ室62内に流入していた液体は、このダイヤフラム44の変位及び変形によってポンプ室62から出力側通路66に流出する。このとき、出力側チェック弁80の先端弁部80aは、液体の押圧力を受けて開口し液体を流出させる。一方、入力側チェック弁82の先端弁部82aは、液体がポンプ室62内に流入した後に閉じられ、ポンプ室62からの液体の流出を遮断する。したがって、ポンプ室62に流入した液体は、出力側通路66の開口部66cのみに流れ込むことになり、出力側通路66から出力ポート70を介して下流側の流路100bに流出する。なお、ソレノイドポンプ10は、出力側通路66の開口部66cがテーパ形状に形成されているため、液体をポンプ室62から出力側通路66に容易に導くことができる。
【0064】
以上のとおり、本実施形態に係るソレノイドポンプ10は、可動部材20がポンプ室62と出力側通路66の連通を閉塞する時に、液体の流出を可動部材20によって確実に遮断することができる。このため、可動部材20が入力側通路64を閉塞する構成(例えば、特許文献1の流体ポンプ)と比較して、可動部材20による流体通路60の閉塞時に、液体の流出が終了するタイミングを一定とすることができ、出力側通路66から所望の量の流体を安定的に流出することができる。
【0065】
また、ソレノイドポンプ10は、押圧ばね48が可動部材20の先端部側に備えられるフランジ部材42を押圧する構成であるため、同じく先端部に取り付けられたダイヤフラム44に押圧力を良好に伝えることができ、ダイヤフラム44による流体通路60を強固に閉塞することが可能となる。すなわち、特許文献1の流体ポンプのように、押圧ばね(spring)が可動部材20の後端部よりも後方に設けられる構成では、押圧力の付与によって可動部材20がよれてしまう可能性があり、該可動部材20による流体通路60の閉塞が良好にできない等の不具合を生じさせるおそれがある。しかし、本実施形態に係るソレノイドポンプ10は、可動部材20の先端部に備えられるフランジ部材42を押圧することで、上記のような不具合を回避することができる。
【0066】
さらに、ソレノイドポンプ10は、既述したように、固定壁84aが平坦状に形成されており、出力側通路66に向かう液体の流れを阻害するものが存在しないため、開口部66cの周囲に密閉用の突起が形成されている構成等と比較して、ポンプ室62に流入した液体をスムーズに出力側通路66に案内することができる。
【0067】
ここで、本実施形態に係るソレノイドポンプ10は、ダイヤフラム44の膜部44bを支持する支持部92が可動部材20に備えられている。この支持部92は、弾性材料によって形成され、膜部44bのポンプ室62を臨む面と反対側の面に配設されている。支持部92は、流体通路60の閉塞時に膜部44bを支持して、膜部44bが液体からの圧力によって変形することを防止することができ、これによりポンプ室62から流出される液体の量を安定化させることができる。
【0068】
また、本実施形態の支持部92のダイヤフラム44に対向する側の面(下面)は、流体通路60の閉塞状態におけるダイヤフラム44の膜部44bの、ポンプ室62とは反対側の面の傾斜に沿うテーパ形状に形成されている。これにより、支持部92は、膜部44bを弾性変形させる等の大きな負荷をかけずに、確実に膜部44bを支持することができる。
【0069】
さらに、支持部92は、リング状に形成され、ダイヤフラム44が可動部材20に取り付けられている中央部44a上部側の側周面を囲うように嵌合される。これにより、支持部92は、膜部44bの反対側を全面に渡って支持することができ、膜部44bを一層容易に支持することができる。しかも、リング状の支持部92は、ダイヤフラム44と取付用ねじ46の取付部分を弾性的に締め付けることができるため、ダイヤフラム44が可動部材20から脱落することを抑止することが可能となる。
【0070】
ソレノイドポンプ10は、支持部92を備えることによって、可動部材20(ダイヤフラム44)が下方向に変位する際に、ポンプ室62内に流入していた液体の圧力で膜部44bが上側に撓むことを防止できる。このため、ダイヤフラム44によって、ポンプ室62内に流入していた液体を確実に出力側通路66に押し出すことができる。
【0071】
そして、ダイヤフラム44がポンプ室62と出力側通路66とを閉塞した状態では、ポンプ室62内に存在する液体を出力側通路66に露呈させることがなくなる。よって、出力側通路66が開放状態となっていても、ポンプ室62内の液体まで劣化させることがなく、劣化する流体の量を低減することができる。また、この露呈によって生じる液体の個化も抑制することが可能となり、ポンプ室62内の容積を安定化させることができる。これにより、ソレノイドポンプ10は、ポンプ室62内に流入する液体の量を一定にすることができ、所望の量の液体を精度よく供給することができる。しかも、液体の固化が抑制されることで、洗浄等のメンテナンスを容易に行うこともできる。
【0072】
また、ダイヤフラム44がポンプ室62と出力側通路66との連通を閉塞する構成では、ダイヤフラム44の膜部44bが経時変化によって撓んでも、可動部材20が出力側通路66を閉塞しているので、ポンプ室62に流入している液体を押し出すことがなく、液体の漏れを確実に防ぐことができる。
【0073】
図5は、第1実施形態に係るソレノイドポンプ10の変形例を示す側面断面図である。図5に示すように、本変形例に係るソレノイドポンプ10Aは、入力側通路64に収容されている入力側チェック弁82の先端弁部82aが直接ポンプ室62内に突き出た構成となっている点で、第1実施形態に係るソレノイドポンプ10とは異なる。このように構成しても、可動部材20がポンプ室62と出力側通路66を開閉することができるため、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、この変形例に係るソレノイドポンプ10Aによれば、第2のブロック体52を小さく形成することができるため、装置をより小型化することが可能となる。
【0074】
図6は、本発明の第2実施形態に係るソレノイドポンプ10Bの内部構造を示す側面断面図である。第2実施形態に係るソレノイドポンプ10Bは、入力側通路64に収容されている入力側チェック弁82の先端弁部82aが直接ポンプ室62内に突き出ており、且つ先端弁部82aに対向する位置に係合部94が備えられている点で、第1実施形態に係るソレノイドポンプ10とは異なる。
【0075】
この係合部94は、ダイヤフラム44の膜部44bの下面に設けられており、ダイヤフラム44による流体通路60の閉塞状態において、入力側チェック弁82の先端弁部82aを閉塞する。このように、係合部94により入力側チェック弁82の先端弁部82aを閉塞することにより、液体が流入される入力側通路64から該液体のサージ圧等の圧力がかかった場合でも、入力側チェック弁82において阻止することができる。これにより、ポンプ室62やダイヤフラム44に圧力が及ぶことがなくなるため、例えば、可動部材20を押圧ばね48により押圧することで流体通路60を閉塞する構成では、押圧力が小さいばねを適用することができる。そして、押圧力が小さい押圧ばね48を適用することで、ソレノイド部12の励磁作用にともなう可動部材20を変位させる力(推力)を抑えることが可能となり、コイル24の巻回量等が少ない小型のソレノイドを用いて装置の小型化を図ることができる。
【0076】
また、この係合部94は、ダイヤフラム44の膜部44bに一体形成されている。このように、ダイヤフラム44に係合部94を一体形成することで、部品点数を少なくすることができる。特に、微量の液体を流入及び流出させるソレノイドポンプ10Bは、ダイヤフラム44が小さいため、係合部94を一体形成することで装置の組立を容易にすることができる。
【0077】
以上、本発明に係るソレノイドポンプ10、10A、10Bは、流体が流通する流体通路60の連通状態を容易に切り換え、且つ流通する流体の量を精度よく制御することができ、しかも、流体通路60内における流体の劣化を防ぐとともに、出力側通路66から流出される流体の量を安定化させ、さらにダイヤフラム44の耐久性を向上させることができる。特に、このソレノイドポンプ10、10A、10Bは、微量の流体を精度よく流入及び流出させる流体供給装置等に好適に用いることができる。
【0078】
なお、本発明に係るソレノイドポンプ10、10A、10Bは、上述の実施の形態(第1及び第2実施形態)に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0079】
10、10A、10B…ソレノイドポンプ 12…ソレノイド部
14…ケース 16…中間連結部
18…ハウジング 20…可動部材
22…固定鉄心 23…ボルト挿入孔
24…コイル 26…ボビン
28…電源接続部材 40…プランジャ
42…フランジ部材 44…ダイヤフラム
44a…中央部 44b…膜部
44c…外周縁部 44d…取付孔
44e…凸部 44f…当接部
48…押圧ばね 60…流体通路
62…ポンプ室 64…入力側通路
66…出力側通路 68…入力ポート
70…出力ポート 80…出力側チェック弁
82…入力側チェック弁 84…凹部
84a…固定壁 86…変位量調節機構
90…調節用ボルト 92…支持部
94…係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を入力ポートから出力ポートに流通させる流体通路が形成されたハウジングと、ソレノイドの励磁状態に基づいて変位して前記流体通路を開閉する可動部材と、を備えるソレノイドポンプであって、
前記流体通路は、前記入力ポートに連通する入力側通路と、前記出力ポートに連通する出力側通路と、前記入力側通路及び前記出力側通路に連通するとともに前記ハウジングと前記可動部材の先端部とによって囲まれた空間からなるポンプ室と、を含み、
前記可動部材は、前記変位にともなって前記ポンプ室と前記出力側通路との連通を開閉することを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のソレノイドポンプにおいて、
前記ハウジングは、前記ポンプ室と連通する前記出力側通路の開口部を包囲する固定壁が形成されており、
前記可動部材の先端部には、前記固定壁と対向する当接部が形成されるとともに外周縁部が前記ハウジングに固定されるダイヤフラムが備えられており、
前記当接部は、前記流体通路の閉塞状態において、前記固定壁に密着することを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項3】
請求項2記載のソレノイドポンプにおいて、
前記固定壁及び前記当接部は、平坦状に形成されていることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項4】
請求項2又は3記載のソレノイドポンプにおいて、
前記ダイヤフラムは、弾性力を備えるとともに前記当接部と前記外周縁部とを連結する膜部を有し、
前記可動部材は、前記膜部における前記ポンプ室を臨む面と反対側の面を支持する支持部を備えることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項5】
請求項4記載のソレノイドポンプにおいて、
前記支持部は、前記ダイヤフラムによる前記流体通路の閉塞状態において、前記反対側の面の傾斜に沿うテーパ形状に形成されていることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項6】
請求項4又は5記載のソレノイドポンプにおいて、
前記ダイヤフラムは、前記可動部材の先端部に取り付けられる取付部を有し、
前記支持部は、リング状に形成され、前記取付部の側周面を囲うように取り付けられていることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載のソレノイドポンプにおいて、
前記出力側通路の開口部は、前記可動部材に向かって拡径するテーパ形状に形成されており、
前記ダイヤフラムは、前記出力側通路の開口部のテーパ形状と係合する凸部が形成されていることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか一項に記載のソレノイドポンプにおいて、
前記入力側通路には、前記入力ポートから前記ポンプ室に前記流体を流通させ、一方、前記ポンプ室から前記入力ポートに前記流体が流通することを遮断する入力側チェック弁が設けられ、
前記ダイヤフラムは、前記入力側チェック弁の先端弁部に対向する係合部を備え、
前記先端弁部は、前記ダイヤフラムによる前記流体通路の閉塞状態において、前記係合部により閉塞されることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項9】
請求項8記載のソレノイドポンプにおいて、
前記係合部は、前記ダイヤフラムに一体形成されていることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のソレノイドポンプにおいて、
前記可動部材の後端部と対向する位置には、前記可動部材の変位における変位量を調節する変位量調節機構が設けられていることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項11】
請求項10記載のソレノイドポンプにおいて、
前記変位量調節機構は、前記可動部材の変位方向に沿って調節用雌ねじが形成された固定部材と、前記調節用雌ねじに螺合して固定部材に対し軸線方向に移動可能となった調節用ボルトと、によって構成され、
前記調節用ボルトは、前記可動部材側に最も移動した状態で前記可動部材側の端部が前記固定部材から突出することを特徴とするソレノイドポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−92777(P2012−92777A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242354(P2010−242354)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】