説明

ソレノイドモジュール

【課題】車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されることのないソレノイドモジュールを提供することにある。
【解決手段】ソレノイドモジュール10は、ソレノイドと駆動回路を一体化したものである。ソレノイドモジュール10は、車両部品に搭載される際に割付けられる機能を認識するため、機能識別信号が入力するインターフェース回路であるデジタル入力回路13を備える。これにより、同じ車両部品に搭載される複数のソレノイドモジュールが設計的に同じハードウェアでも、当該ソレノイドモジュールに割付けられた機能を認識させ、前記認識した機能に基づき動作させることを可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドとソレノイドを駆動する駆動回路一体化したソレノイドモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機などの車両部品は、ソレノイドをアクチュエータとして使用している。ソレノイドは、一般に機差バラツキを有している。そのため、車両部品の特性が均一になるよう、車両部品の製造時にソレノイドを搭載した状態で、機差バラツキを補正するパラメータを調節している。従って、故障発生等によりソレノイドの交換が必要になった場合、再度車両から自動変速機などの車両部品を取り出した上でソレノイド交換を行い、改めてパラメータを調節する必要がある。
【0003】
このようなパラメータ調整を簡略化するために、ソレノイドとこれを制御する駆動回路を一体化してソレノイドモジュールとし、さらにソレノイドモジュール内に情報記憶部を有することで、ソレノイドの機差バラツキを補正するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−242806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ソレノイドを使用する自動変速機などの車両部品には、一つの車両部品に対し複数のソレノイドを搭載する場合があり、各ソレノイドモジュールは各々の要求機能を果たすために異なる動作をする必要がある。
【0006】
従って、これを特許文献1記載の方式で実現しようとすると、ソレノイドを使用する車両部品の制御装置に、搭載するソレノイドの数と等しい数の通信インターフェースを設ける必要がある。しかし、一般に車両部品の制御装置で持つ通信インターフェースの数はソレノイドの数を下回り、この場合、通信インターフェースをソレノイドモジュール間で共用する必要がある。
【0007】
従って、各ソレノイドモジュールが各々機能を認識し、異なる動作をするには、ソレノイドモジュールを機能毎に設計、製造する必要がある。その場合、従来はどのソレノイドをどの機能に割付けても問題なかったのに、ソレノイドを駆動回路と一体化することで、車両部品の製造時において割付け箇所が予め指定されるといった制約が生じる。つまり、製造上における新たな管理項目が発生するといった課題がある。
【0008】
また、特許文献1記載のものでは、ソレノイドモジュールとこれを搭載する車両部品の制御装置との間で通信を行うため、クロックやチップセレクトといった制御を車両部品の制御装置にて行う必要があり、そのためのハーネスを必要とする。さらに特許文献1記載のものでは、特性情報の記憶や通信に基づくソレノイドの制御を全てハードウェアで行うことになり、ソレノイドモジュール内の回路構成が複雑になる。
【0009】
このような課題に対しては、駆動回路に加え、マイクロコンピュータ(マイコンと記載する)も一体化するという案が考えられる。しかし、この案を採用した場合でも、車両部品の制御装置の通信インターフェースをソレノイドモジュール間で共有する限り、今度はマイコンに実装するプログラムを機能毎に変える必要がある。従って、車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されるという課題は残る。
【0010】
さらに、ソレノイドとマイコンを一体化する場合、ソレノイドモジュールのプログラム書換え(以降、「リプロ」と称する)に関する課題もある。複数のソレノイドモジュールが車両部品に搭載された状態でリプロを行う場合、リプロに使用する通信IDを車両部品の制御装置のものとは別に準備する必要がある。その上、ソレノイドモジュール毎にリプロ用通信IDを準備するか、あるいは、複数のソレノイドモジュールが同じ通信IDで同時に通信を行ってもリプロが可能になるよう、リプロを行うツール側を変更する必要がある。
【0011】
しかし、もし、ソレノイドモジュール毎にリプロ用通信IDを準備できたとしても、各々の通信IDで通信を行うには、プログラム書換え前のソレノイドモジュールに機能毎の別々のプログラムが実装されている必要があり、やはり、車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されるという問題がある。
【0012】
また、もし、複数のソレノイドモジュールが同じ通信IDで同時に通信を行ってもリプロが可能になるようにツール側を変更できたとしても、プログラム書換え前のソレノイドモジュールに機能毎の別々のプログラムが実装されていない限り、リプロ後に機能毎に違う動作をさせることは不可能である。従って、やはりこの場合においても、車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されるという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されることのないソレノイドモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ソレノイドと駆動回路を一体化したソレノイドモジュールであって、車両部品に搭載される際に割付けられる機能を認識するため、機能識別信号が入力するインターフェース回路を備え、同じ車両部品に搭載される複数のソレノイドモジュールが設計的に同じハードウェアでも、当該ソレノイドモジュールに割付けられた機能を認識させ、前記認識した機能に基づき動作させることを可能である。
かかる構成により、車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されることのないとなる。
【0015】
(2)また、上記目的を達成するために、本発明は、ソレノイドとマイクロコンピュータを一体化したソレノイドモジュールであって、車両部品に搭載される際に割付けられる機能を認識するため、機能識別信号が入力するインターフェース回路を備え、同じ車両部品に搭載される複数のソレノイドモジュールが設計的に同じハードウェアでも、当該ソレノイドモジュールに割付けられた機能を認識させ、前記認識した機能に基づき動作させることを可能である。
【0016】
かかる構成により、車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されることのないとなる。
【0017】
(3)上記(2)において、好ましくは、同じ車両部品に搭載される複数のソレノイドモジュールに実装されるプログラムが同一でも、前記複数のソレノイドモジュールが前記車両部品に搭載された状態でのプログラム書換えを可能である。
【0018】
(4)上記(2)において、好ましくは、さらに、前記ソレノイドモジュールが前記車両部品に搭載された状態でプログラム書換えを行う際、当該ソレノイドモジュールが前記車両部品に成りすます成りすましロジックを備え、該成りすましロジックにより、当該ソレノイドモジュールが前記車両部品に成りすまして、プログラム書換えを行うツールとの通信を行うことで、車両部品用の通信IDのみで、且つプログラム書換えを行うツールを変更することなくプログラム書換えを可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されることのなくなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態によるソレノイドモジュールを用いたシステムのブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるソレノイドモジュールの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールを用いたシステムのブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールにおいてCAN通信に用いるIDの説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールとATCUにおけるソレノイド機能認識モード時の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールの通常時の制御内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールによるプログラムの書き換え処理を行うためのシステムブロック図である。
【図8】本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールにおいてCAN通信に用いるIDの説明図である。
【図9】発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールによるプログラムの書き換え処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールによるプログラムの他の書き換え処理を行うためのシステムブロック図である。
【図11】本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールにおいてCAN通信に用いるIDの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施形態によるソレノイドモジュールの構成及び動作について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるソレノイドモジュールを用いたシステムのブロック図である。図2は、本発明の第1実施形態によるソレノイドモジュールの構成を示すブロック図である。
【0022】
図1は、車両部品として自動変速機を例にした場合、この自動変速機を制御する制御装置(ATCU)とソレノイドモジュールのシステム構成を示している。
【0023】
自動変速機に搭載されるソレノイドモジュールは、多いもので10個近く搭載される可能性があるが、ここでは、ロックアップ(LU)用ソレノイドモジュール10A、ライン圧(PL)用ソレノイドモジュール10B、フロントブレーキ(FrB)用ソレノイドモジュール10Cの3個のソレノイドモジュール10が搭載されているものとする。
【0024】
各ソレノイドモジュール10は、電源電圧用や通信用の端子が備えられ、この他に一つの入力ポート(DI)を備える。
【0025】
ATCU20は、電源電圧用や通信用の端子の他に、搭載されるソレノイドモジュールの数分の出力ポートDO0(LU),DPO1(PL),DO2(FrB)を備えている。これらの出力ポートDO0,DO1,DO2は、それぞれ、ソレノイドモジュール10A,10B,10Cの入力ポートDIと接続されている。ATCU20の出力ポートDO0,DO1,DO2からは、機能識別信号が、ソレノイドモジュール10A,10B,10Cに出力する。
【0026】
図2は、本実施形態によるソレノイドモジュールの内部構成を示している。
【0027】
図1に示したロックアップ(LU)用ソレノイドモジュール10A、ライン圧(PL)用ソレノイドモジュール10B、フロントブレーキ(FrB)用ソレノイドモジュール10Cは、全て同一の内部構成を有しており、ここでは、ソレノイドモジュール10として説明する。
【0028】
ソレノイドモジュール10は、レギュレータ11と、通信用のインターフェース回路12と、ソレノイドの駆動回路14と、記憶素子15と、デジタル入力回路13を備えている。
【0029】
レギュレータ11は、電源電圧を制御して、所定電圧を出力し、ソレノイドの駆動回路14等に供給する。通信用のインターフェース回路12は、ATCU20から送られてくる通信データ,クロック信号,チップセレクト信号を受信して、ソレノイドの駆動回路14に供給する。ソレノイドの駆動回路14は、レギュレータ11により制御された電圧をソレノイドに供給するとともに、その際、受信した通信データに基づいて、ソレノイドに供給する電流を制御する。
【0030】
デジタル入力回路13は、本実施形態の特徴的な回路であり、機能識別信号を入力する入力回路であり、インターフェース回路である。機能識別信号とは、通信データのような信号ではなく、単純なON/OFFのみの信号で良いので、ソレノイドモジュール内部に持つのはデジタル入力回路13とし、これがATCU20に備えられているソレノイドの各機能用出力端子に結線されているものとする。
【0031】
ATCU20の一つの通信インターフェースを3つのソレノイドモジュール10A,10B,10Cで共用する場合、ソレノイドモジュールに機能識別信号を入力する回路を持たなければ、各ソレノイドモジュールは同じデータをATCUから受取ることになる。従って、ソレノイドモジュールを機能別に設計、製造していない限り、搭載されるソレノイドモジュールは全て同じ動作をすることになる。例えば、LU用ソレノイドのみを動作させたい場合、ATCUからソレノイドモジュールへ指令値を送信するが、全てのソレノイドモジュールが設計的に同一であれば、PL用ソレノイドモジュール10Bも、FrB用ソレノイドモジュール10Cも、LU用ソレノイドモジュール10Aと同じようにATCU20が送信する指令値に従って動作することになる。
【0032】
そこで、本実施形態のソレノイドモジュール10は、機能識別信号を入力する入力ポートがONになった時のみ通信データを受信するような回路構成となっている。そして、ATCU20はソレノイドモジュール10に指令値を送信する際、送信対象のソレノイドモジュールに対応した出力ポートをONにした上で送信する。例えば、図1に示した構成において、LU用ソレノイドモジュール10Aを動作させたい場合には、ATCU20は、出力ポートDO0(LU)をオンにする。このとき、出力ポートDO1(PL),DO2(FrB)は、オフとしている。その上で、ATCU20が指令値を送信することで、PL用ソレノイドモジュール10BやFrB用ソレノイドモジュール10CがLU用ソレノイドモジュール10Aと設計的に同一であっても、ATCU20が送信する指令値に基づいて動作することはない。
【0033】
なお、本実施形態のソレノイドモジュールの機能識別方法は、毎回ATCUが各出力ポートをONにする方法の他に、通信と機能識別信号を組み合わせて使用することで機能識別情報を記憶素子に記憶させておくという方法を採用しても良いものである。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、ソレノイドモジュールを機能毎6に設計、製造する必要がなくなり、車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されることがなくなる。
【0035】
次に、図3〜図11を用いて、本発明の第2の実施形態によるソレノイドモジュールの構成及び動作について説明する。
最初に、図3を用いて、本実施形態によるソレノイドモジュールの構成について説明する。
図3は、本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールを用いたシステムのブロック図である。
【0036】
ソレノイドモジュール10’は、レギュレータ11と、コントロールエリアネットワーク(CAN)用のインターフェース回路15と、ソレノイドの駆動回路14と、マイコン16と、デジタル入力回路13を備えている。ソレノイドモジュール10’は、図1に示したATCU20に接続される。
【0037】
レギュレータ11は、電源電圧を制御して、所定電圧を出力し、ソレノイドの駆動回路14等に供給する。CAN用のインターフェース回路15は、図1に示したATCU20から送られてくるCANデータを受信して、マイコン16に供給する。マイコン16はROM16Aを有し、このROM16Aにプログラムやソレノイドの機差バラツキを補正するデータを記憶することができる。なお、本例ではマイコン内部に持つROMを情報記憶部として活用するが、情報記憶部として使用できれば、マイコンの内部、外部あるいは、ROMに限定する必要はない。
【0038】
マイコン16は、ソレノイドの駆動回路14に、レギュレータ11により制御された電圧をソレノイドに供給するとともに、その際、受信したデータに基づいて、ソレノイドに供給する電流を制御する。
【0039】
なお、インターフェース回路15についても、CANや入力ポートを例に説明するが、通信やソレノイドの機能認識が可能であれば、これらに限定する必要はない。
【0040】
デジタル入力回路13は、本実施形態の特徴的な回路であり、機能識別信号を入力する入力回路であり、インターフェース回路である。機能識別信号とは、通信データのような信号ではなく、単純なON/OFFのみの信号で良いので、ソレノイドモジュール内部に持つのはデジタル入力回路13とし、これがATCU20に備えられているソレノイドの各機能用出力端子に結線されているものとする。
【0041】
次に、図4を用いて、本実施形態によるソレノイドモジュールにおいてCAN通信に用いるIDについて説明する。
図4は、本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールにおいてCAN通信に用いるIDの説明図である。
【0042】
CAN IDの「AAA」と「BBB」は、何れも、図1に示したATCU20から送信されるIDで、CAN ID.「AAA」の「DT0」をソレノイドの機能識別を示す信号とする。本例であれば、DT0=1は、例えば、図1に示したLU用ソレノイドモジュール10Aであることを示し、DT0=2は図1に示したPL用ソレノイドモジュール10Bであることを示し、DT0=3は図1に示したFrB用ソレノイドモジュール10Cであることを示す。CAN ID.「BBB」は各ソレノイドへの指令値とする。CAN ID.「BBB」の「DT0」はLU用ソレノイドへの目標指令電流、「DT1」はPL用ソレノイドへの目標指令電流、「DT3」はFrB用ソレノイドへの目標指令電流とする。
【0043】
次に、図5を用いて、本実施形態によるソレノイドモジュールとATCUにおけるソレノイド機能認識モード時の処理内容について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールとATCUにおけるソレノイド機能認識モード時の処理内容を示すフローチャートである。
【0044】
ソレノイド機能認識モードにおいて、まずATCU20は、ステップS10において、出力ポート0をONにした上で、ステップS20において、CAN ID.「AAA」のDT0=1にして送信する。
【0045】
それに対して、受信したソレノイドモジュール10’の方は、予め入力ポートがONになった時のみCAN ID.AAAのDT0を読取るようにしておく。これにより、LU用として割付けられたソレノイドモジュール10A’は、ステップS110において、入力ポートがONか否かを判定し、入力ポートがONになると、ステップS120においてCAN ID.「AAA」の「DT0」を読取り、ステップS130において、この情報即ち、ソレノイドモジュール10A’がLU用であるという機能識別情報をソレノイドモジュール10A’に搭載されているマイコン16のROM16Aに記憶する。機能識別情報を記憶すると、ソレノイドモジュール10A’の機能識別モードは終了する。
【0046】
次に、ATCU20は、ステップS30において、出力ポート0をOFFし、ステップS40において、出力ポート1をONにした上で、ステップS50において、CAN ID.「AAA」のDT0=2にして送信する。
【0047】
PL用として割付けられたソレノイドモジュール10B’は、ステップS210において、入力ポートがONか否かを判定し、入力ポートがONになると、ステップS220においてCAN ID.「AAA」の「DT1」を読取り、ステップS230において、この情報即ち、ソレノイドモジュール10B’がLU用であるという機能識別情報をソレノイドモジュール10B’に搭載されているマイコン16のROM16Aに記憶する。機能識別情報を記憶すると、ソレノイドモジュール10B’の機能識別モードは終了する。
【0048】
次に、ATCU20は、ステップS60において、出力ポート1をOFFし、ステップS70において、出力ポート2をONにした上で、ステップS80において、CAN ID.「AAA」のDT0=3にして送信する。
【0049】
FrB用として割付けられたソレノイドモジュール10C’は、ステップS310において、入力ポートがONか否かを判定し、入力ポートがONになると、ステップS320においてCAN ID.「AAA」の「DT2」を読取り、ステップS330において、この情報即ち、ソレノイドモジュール10C’がFrB用であるという機能識別情報をソレノイドモジュール10C’に搭載されているマイコン16のROM16Aに記憶する。機能識別情報を記憶すると、ソレノイドモジュール10C’の機能識別モードは終了する。
【0050】
その後、ATCU20は、ステップS90において、出力ポート2をOFFする。
【0051】
このように一度、各ソレノイドモジュールにおいて機能識別情報即ち、LU用、PL用、FrB用であることを意味する情報が記憶されれば、後は図6に示すように、通常制御時において、ソレノイドモジュール10A’はCAN ID.「BBB」の「DT0」、ソレノイドモジュール10B’はCAN ID.「BBB」の「DT1」、ソレノイドモジュール10C’はCAN ID.「BBB」の「DT2」で受信する指示値に従って、各々動作するようになる。
【0052】
次に、図6を用いて、本実施形態によるソレノイドモジュールの通常時の制御内容について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールの通常時の制御内容を示すフローチャートである。
【0053】
通常制御時、ソレノイドモジュール10’は、ステップS410において、記憶した機能識別情報がLUか否かを判定する。
【0054】
ソレノイドモジュール10A’は、機能識別情報がLUと判定するので、ステップS420において、CAN ID.「BBB」の「DT0」を指令値として受信する。そして、ステップS480において、受信した指令値に基づいてソレノイドを制御する。
【0055】
また、ステップS410において、機能識別情報がLUでないと判定されると、ソレノイドモジュール10’は、ステップS430において、記憶した機能識別情報がPLか否かを判定する。
【0056】
ソレノイドモジュール10B’は、機能識別情報がPLと判定するので、ステップS440において、CAN ID.「BBB」の「DT1」を指令値として受信する。そして、ステップS480において、受信した指令値に基づいてソレノイドを制御する。
【0057】
また、ステップS430において、機能識別情報がPLでないと判定されると、ソレノイドモジュール10’は、ステップS450において、記憶した機能識別情報がFrBか否かを判定する。
【0058】
ソレノイドモジュール10C’は、機能識別情報がFrBと判定するので、ステップS460において、CAN ID.「BBB」の「DT2」を指令値として受信する。そして、ステップS480において、受信した指令値に基づいてソレノイドを制御する。
【0059】
また、ステップS450において、機能識別情報がFrBでないと判定されると、ソレノイドモジュール10’は、エラー処理を実行する。
【0060】
以上説明したよソレノイド機能認識モードは、ATCU起動時の毎回初回に行っても良いし、あるいは別のCAN IDを用いてソレノイド機能認識モードと通常制御との切り分けを行い、ソレノイド機能認識モードを工場出荷時やソレノイド交換時のみ行うようにしても良いものである。
【0061】
以上により、ソレノイドモジュール10A’,10B’,10C’が設計的に同一のハードウェア、同一のプログラムでも、ソレノイド機能認識モードの処理を行えば、割付けられた機能即ち、ソレノイドモジュール10A’であればLU用、ソレノイドモジュール10B’であればPL用、ソレノイドモジュール10C’であればFrB用としての動作が可能になる。勿論、製造工程において、ソレノイドモジュール10’がPL用あるいはFrB用に割付けられた場合も、その状態でソレノイド機能認識モードの処理を行えば、PL用あるいはFrB用としての動作が可能になる。従って、どのソレノイドモジュールをどの機能に割付けても問題なくなる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、ソレノイドモジュールを機能毎6に設計、製造する必要がなくなり、車両部品の製造時にソレノイドモジュールを割付ける箇所が予め指定されることがなくなる。
【0063】
また、ソレノイドとマイコンを一体化したソレノイドモジュールにおいても、マイコンに実装するプログラムを機能毎に変える必要がなくなる。
【0064】
次に、図7〜図9を用いて、本実施形態によるソレノイドモジュールによるプログラムの書き換え処理の内容について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールによるプログラムの書き換え処理を行うためのシステムブロック図である。図8は、本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールにおいてCAN通信に用いるIDの説明図である。図9は、本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールによるプログラムの書き換え処理の内容を示すフローチャートである。
【0065】
図7は、自動変速機を例に、プログラムの書き換え処理(リプロ)を行う際のシステム構成を示している。
【0066】
ATCU20と、ソレノイドモジュール10A’,10B’,10C’は、CANにより接続されている。また、ATCU20のDO0(LU)と、ソレノイドモジュール10A’のDIが接続されている。また、ATCU20のDO1(PL)と、ソレノイドモジュール10B’のDIが接続されている。また、ATCU20のDO0(FrB)と、ソレノイドモジュール10C’のDIが接続されている。
【0067】
さらに、リプロのためのプログラム書換えツール30を備えている。プログラム書換えツール30とATCU20は、CANにより接続されている。
【0068】
図8に示すように、使用する通信IDは、CAN ID.「CCA、DDA」は、ATCUのリプロ用のIDである。また、CAN ID.「CC1、DD1」は、ソレノイドモジュール10A’,10B’,10C’のリプロ用のIDである。
【0069】
次に、図9に示すように、まず、リプロを行うプログラム書換えツール30は、ステップS510において、ソレノイドモジュールのリプロ用通信IDを使用して、ATCU20に、ソレノイドモジュールのリプロを行う旨をコマンドとして送信する。
【0070】
これを受信したATCU20は、ステップS610において、出力ポート0をONにする。
【0071】
一方、ソレノイドモジュール10’は、ステップS710において、入力ポートがONか否かを判定する。例えば、ATCUの出力ポート0がONになると、ソレノイドモジュール10A’の入力ポートがONになるため、ソレノイドモジュール10A’は、ステップS720において、ソレノイドモジュール10A’のプログラムを入力ポートがONの時だけリプロ用通信IDを受信して、その受信した情報に従ってリプロを行う。
【0072】
このリプロが完了すると、ソレノイドモジュール10A’は、ステップS730において、完了した旨をATCU20に送信する。
【0073】
ATCU20は、リプロの完了を受信すると、ステップS620において、出力ポート0をOFFし、ステップS630において、出力ポート1をONにする。
【0074】
一方、ソレノイドモジュール10B’は、ATCUの出力ポート1がONになると、ソレノイドモジュール10B’の入力ポートがONになるため、ソレノイドモジュール10B’は、ステップS750において、ソレノイドモジュール10B’のプログラムを入力ポートがONの時だけリプロ用通信IDを受信して、その受信した情報に従ってリプロを行う。
【0075】
このリプロが完了すると、ソレノイドモジュール10B’は、ステップS760において、完了した旨をATCU20に送信する。
【0076】
ATCU20は、リプロの完了を受信すると、ステップS640において、出力ポート1をOFFし、ステップS650において、出力ポート2をONにする。
【0077】
一方、ソレノイドモジュール10C’は、ATCUの出力ポート2がONになると、ソレノイドモジュール10C’の入力ポートがONになるため、ソレノイドモジュール10C’は、ステップS780において、ソレノイドモジュール10C’のプログラムを入力ポートがONの時だけリプロ用通信IDを受信して、その受信した情報に従ってリプロを行う。
【0078】
このリプロが完了すると、ソレノイドモジュール10C’は、ステップS790において、完了した旨をATCU20に送信する。
【0079】
ATCU20は、リプロの完了を受信すると、ステップS660において、出力ポート2をOFFし、ステップS670において、ソレノイドモジュール10’のリプロ完了をプログラム書き換えツール30に返信する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、ソレノイドとマイコンを一体化したソレノイドモジュールのリプロにおいて、ソレノイドモジュール用の通信IDの準備や、複数のソレノイドモジュールが同じ通信IDで同時に通信を行ってもリプロが可能になるようなツール側の変更を不要にする。
【0081】
次に、図10及び図11を用いて、本実施形態によるソレノイドモジュールによる他のプログラムの書き換え処理について説明する。
図10は、本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールによるプログラムの他の書き換え処理を行うためのシステムブロック図である。図11は、本発明の第2実施形態によるソレノイドモジュールにおいてCAN通信に用いるIDの説明図である。
【0082】
図10に示すように、他のプログラムの書き換え処理のために、図7に示した構成にくわえて、プログラム書き換えツール30と、ATCU20の間に、成りすましロジック40を備えるようにしている。
【0083】
図11は、この場合の使用する通信IDを示している。CAN ID.「AAA」の「DT0」は、ソレノイドモジュールの機能種別を示し、「1」はLU用ソレノイドモジュール10A’を示し、「2」はPL用ソレノイドモジュール10B’を示し、「2」はFrB用ソレノイドモジュール10B’を示している。CAN ID.「AAA」の「DT1」〜「DT7」は、成りすましロジック40に使用する情報である。
【0084】
また、CAN ID.「BBB」の「DT0」は、LU用ソレノイドモジュール10A’への指令値を示し、CAN ID.「BBB」の「DT1」は、PL用ソレノイドモジュール10B’への指令値を示し、CAN ID.「BBB」の「DT2」は、FrB用ソレノイドモジュール10B’への指令値を示し、CAN ID.「BBB」の「DT3」〜「DT7」は、成りすましロジック40に使用する情報である。
【0085】
また、CAN ID.「CCA、DDA」は、ATCUのリプロ用のIDである。
【0086】
図7〜図9の方法では、ソレノイドモジュールのリプロを行う際にソレノイドモジュールのリプロ用通信IDを使用したが、本例では、成りすましロジック40は、特開2010−248634号公報に記載の方法を用いる事で、ATCUのリプロ用通信IDを共有することができ、ソレノイドモジュールのリプロ用通信IDを準備する必要はない。また、このリプロ方法は通信が可能であれば、CANに限定する必要もないものである。
【符号の説明】
【0087】
10A…ロックアップ(LU)用ソレノイドモジュール
10B…ライン圧(PL)用ソレノイドモジュール
10C…フロントブレーキ(FrB)用ソレノイドモジュール
20…ATCU
11…レギュレータ
12…通信用のインターフェース回路
13…デジタル入力回路
14…ソレノイドの駆動回路
15…記憶素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドと駆動回路を一体化したソレノイドモジュールであって、
車両部品に搭載される際に割付けられる機能を認識するため、機能識別信号が入力するインターフェース回路を備え、
同じ車両部品に搭載される複数のソレノイドモジュールが設計的に同じハードウェアでも、当該ソレノイドモジュールに割付けられた機能を認識させ、前記認識した機能に基づき動作させることを可能であることを特徴とするソレノイドモジュール。
【請求項2】
ソレノイドとマイクロコンピュータを一体化したソレノイドモジュールであって、
車両部品に搭載される際に割付けられる機能を認識するため、機能識別信号が入力するインターフェース回路を備え、
同じ車両部品に搭載される複数のソレノイドモジュールが設計的に同じハードウェアでも、当該ソレノイドモジュールに割付けられた機能を認識させ、前記認識した機能に基づき動作させることを可能であることを特徴とするソレノイドモジュール。
【請求項3】
請求項2記載のソレノイドモジュールにおいて、
同じ車両部品に搭載される複数のソレノイドモジュールに実装されるプログラムが同一でも、前記複数のソレノイドモジュールが前記車両部品に搭載された状態でのプログラム書換えを可能であることを特徴とするソレノイドモジュール。
【請求項4】
請求項2記載のソレノイドモジュールにおいて、
さらに、前記ソレノイドモジュールが前記車両部品に搭載された状態でプログラム書換えを行う際、当該ソレノイドモジュールが前記車両部品に成りすます成りすましロジックを備え、
該成りすましロジックにより、当該ソレノイドモジュールが前記車両部品に成りすまして、プログラム書換えを行うツールとの通信を行うことで、車両部品用の通信IDのみで、且つプログラム書換えを行うツールを変更することなくプログラム書換えを可能であることを特徴とするソレノイドモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−2589(P2013−2589A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136205(P2011−136205)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】