説明

ゾル−ゲル層を有する製品の表面構造化の方法、構造化されたゾル−ゲル層を有する製品

本発明は、表面を構造化するための、すなわち、ゾル−ゲル法によって得られる少なくとも1つの層をもつ基板を含む製品の平らな表面に、サブミリメートルスケールの横方向の特徴的な寸法を有する特徴の少なくとも1つのアレイを形成するための方法[ここで、前記構造化は、非反応性の有機基を含む、Si、Ti、Zr、W、Sb、Hf、Ta、V、Mg、Al、Mn、Co、Ni、Sn、Zn、Ceから選択される少なくとも1種の金属のアルコキシドおよび/またはハロゲン化物をベースとする加水分解されたゾル層上に高温で実施され、構造化されたマスクとの接触および場合によって圧力を使用することにより実施され、前記構造化の熱挙動を確実にするのに十分な縮合閾値に適する温度範囲において実施され、合計の構造化時間は、2時間以下である。]に関する。本発明は、こうして得られる製品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面構造化の分野に関し、特にゾル−ゲル層製品の表面構造化の方法およびこうして得られる構造化されたゾル−ゲル層製品を対象とする。
【背景技術】
【0002】
材料の構造化には多くの関心が存在する。というのは、この構造化が多くの産業分野に用途を有するためである。
【0003】
幾何学的パターンのアレイの考案によって、材料のバルク組成およびバルク特性を変えることなくこの材料に新たな独創的な機能を付与することが可能になる。
【0004】
したがって、周期的に複製されるパターンの銘刻は、特に、圧延、レーザー彫刻、またはさらにエッチング技術によって、ミリメートルスケールパターンについて、またはさらに10分の1ミリメートルのオーダーのパターンについて、ガラス製品(ガラス基板にまたはコーティングに直接)について既に実施されている。
【0005】
より小さい特徴のある寸法、特にミクロンまたはサブミクロンスケールの幅または周期を有するパターンについては、構造化技術の大多数は、(小さな)集積光学部品用にマイクロエレクトロニクスにおいて使用されているリソグラフィー技術(光リソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、等)である。
【0006】
しかし、これらは、以下に掲げる1つ以上の理由:
−これらの高コスト、
−これらの緩慢さ(走査)および複雑性(多段階)、
−パターンのサイズの制限(波長による)、ならびに
−構造化可能な表面の小さなサイズ
のために製品の大量生産の方法に適さない。
【0007】
一般的にエンボス加工と呼ばれるより最近の代替技術が、周期的に複製されるべきベースパターンを型からガラス基板上に置かれた軟層に転写するために使用されている。
【0008】
この層は、複製されるべきパターンをもったフラットプレスダイを下げて、ここで、このパターンをUVまたは熱を適用することにより固定することによって構造化される。
【0009】
上記軟層は、一般的に、無機前駆体から出発するゾル−ゲル法により調製される層である。
【0010】
この方法は、通信事業会社用の部品または、任意の他の分野において、親水性層を有するガラスを製造するのに使用されている。この技術にはリソグラフィー法に比べて多くの利点がある。
【0011】
コストについては、同一のプレスダイを、非常に多数回、再使用することができ、単一の原型から出発することによって多数の複製が生じる。
【0012】
処理能力に関しては、これは、パターンを現像するためのステップを必要とする他のリソグラフィー技術と異なって一段階プロセスである。
【0013】
しかし、フラットプレスダイを使用するこの既知エンボス加工技術は、特にミクロンまたはナノメートルスケールのパターンについて、収量および信頼性の観点では、まだ満足のいくものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の主題は、耐久性があり、製造するのが迅速であり、任意のサイズの表面および任意のパターンサイズについても同様である構造化されたゾル層を有する製品を製造する方法である。
【0015】
本方法は、構造化されたゾル−ゲル層を有する得られる製品の範囲を拡大することも目標としており、特に、新しい機能性および/または用途のための新しい幾何学的形状を得ることを目標としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のために、本発明は、表面構造化のための、すなわち、ゾル−ゲルプロセスに由来する少なくとも1種の層をもつ基板を含む製品の平らな表面に、サブミリメートルスケールの特徴的な横方向の寸法を有するパターンの少なくとも1つのアレイを形成するための方法を最初に提案し、ここで、上記構造化は、非反応性の有機基を含む、Si、Ti、Zr、W、Sb、Hf、Ta、V、Mg、Al、Mn、Co、Ni、Sn、Zn、およびCeから選択される少なくとも1種の金属のアルコキシドおよび/またはハロゲン化物をベースとする加水分解されたゾル層を用いて熱間で行われ、ここで、上記構造化は、構造化されたマスクとの接触および必要に応じて圧力を使用することにより実施され、ここで、上記構造化は、構造化の熱保持を確実にするのに十分な縮合閾値に適する温度範囲において実施され、合計の構造化時間は、2時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくはさらに30分以下である。
【0017】
本出願者は、低温でまたはさらに周囲温度を上回る温度でエンボスされたパターンアレイは、続いて、一般的に80℃から開始して熱をかけられた場合、薄れるまたは消えさえすることを観察した。
【0018】
あらゆる予想に反して、本出願者は、このパターンの衰弱は、構造化後の縮合速度が十分である場合、排除することができることを観察した。十分な縮合を得るためには、生産性を損ねて、一般的に少なくとも約10時間またはさらに1日のオーダーの非常に長い構造化時間を選択することが可能である。
【0019】
本出願者は、構造化時間は、パターンのアレイを失うことなく大幅に低減させることができることを観察した。構造化時間は、構造化がより高温で行われるにつれてより短くなる。
【0020】
また、エネルギーコストおよび/または選択したポリマーマスクの変形を制限するために、200℃以下、さらには180℃以下の構造化温度も好ましい。
【0021】
加熱は、赤外線もしくはハロゲンランプ、または加熱流体により行うことができる。補助(熱的な、放射の、等)は、接触段階の一部の間、維持することができ、または製品を硬化するために中断するもしくはさらに逆転(冷却、等)することができる。
【0022】
非常に簡単にするために、単一の設定点温度、および例えば1つの(単一の)構造化保持を選択することができる。
【0023】
構造化は、型が層に圧入する時点で出発して開始し、熱い型の後退と共にまたは層に残っている型の温度が低下した後に終わる。
【0024】
さらに、このように縮合速度を制御することにより、パターンのアレイは、マスクからのこれらの分離の前に十分に硬く、離型の間に構造化を失わない。しかし、離型の間の保持は、熱的安定性のために必要なものに比べてより低い縮合速度については可能である。
【0025】
本発明による構造化方法は、容易に自動化することができ他の製品の変換と組み合わせることができる。
【0026】
本方法は、大量および/または大規模の製品、特にエレクトロニクス、光学、建築物または自動車用のガラス製品、特にグレージングユニットの製造に適する。
【0027】
本発明による構造化方法は、構造欠陥の許容範囲(すなわち、求められる性能を低下させないもの)で、ますます大きくなる表面上にさらにより小さな特徴的なパターンサイズを達成することも可能にする。
【0028】
構造化は、大きな基板上−可とう性の、半硬質のまたは硬質の、有機の、無機物のまたは複合型の基板−特に好ましくはガラスおよび/または透明の基板に実施することができる。
【0029】
構造化は、構造化された可とう性のマスクの単純なキャピラリーフィリングによって、または圧力をかけながらの構造化されたマスクとの接触による粘弾性変形によって実施することができる。
【0030】
有利には、構造化は、表面積が0.1m以上、またはさらにより好ましくは5m以上である製品上に行うことができる。特に、製品幅は、1m以上であってよい。
【0031】
第1の実施形態において、構造化は、少なくとも100℃から130℃の間の、好ましくは10分から30分の間の温度で部分的に実施される。
【0032】
第2の実施形態において、構造化は、少なくとも130℃から200℃の間の温度で、20分未満の時間、より好ましくは150℃から180℃の間の温度で、好ましくは10分以下の、さらに5分以下の時間、部分的に実施される。
【0033】
有利には、パターンの特徴的な横方向の寸法(別にこの幅と呼ばれる)は、50μm未満、好ましくは10μm、より好ましくはさらにミクロンまたはサブミクロンサイズであってよい。多くの化学元素は、ゾル−ゲル層のための主成分であり得る。これは、元素:Si、Ti、Zr、W、Sb、Hf、Ta、V、Mg、Al、Mn、Co、Ni、Sn、Zn、およびCeの少なくとも1つの少なくとも1種の化合物を必須の構成材料として含み得る。これは、特に、前述の元素の少なくとも1つの単一のまたは混合された酸化物を含み得る。
【0034】
有機または無機または複合型の化合物(着色剤、フォトクロミック化合物、無機または複合型ナノ粒子)は、ゾル−ゲルマトリックス中に封入することができる。
【0035】
上記基は、芳香族、ビニルまたはフェニルであってよい。
【0036】
ジルコニウムまたはケイ素は、金属として好ましく選択することができ、ゾルは、好ましくは、有機基、特に芳香族、ビニルまたはフェニル基を含むケイ素またはジルコニウムアルコキシドの中から選択され、特にメチルトリエトキシシラン(MTEOS)である。
【0037】
MTEOSは、3つの加水分解基を有し、その有機部分がメチルであるオルガノシランである。これは、薄い(例えば、数百ナノメートル)または厚い(例えば、数ミクロン)層を達成することを可能にする。この化合物に基づいたゾルの合成は、一段階でなされ加熱を必要としないので極めて簡単である。さらに、調製されたゾルは、安定であり、ゲル化することなく数日間貯蔵することができる。
【0038】
上記層は、特にこのガラス素子との接着性および適合性のために本質的にシリカベースであってよい。
【0039】
構造化される層は、金属粒子を充填することができる。
【0040】
この層は、好ましくは透明であってよく、例えばガラスのもの(典型的には約1.5)より大きい光学指数を有し得る。
【0041】
指標として、600nmにおいて、シリカ層は、典型的には1.45のオーダーの屈折率を有し、酸化チタン層は、2のオーダーの屈折率を有し、ジルコニウム層は、1.7のオーダーの屈折率を有する。
【0042】
ゾル−ゲル層は、稠密であり、または特に孔形成剤、特に界面活性剤(有機)を用いて(メソ)多孔質であってよい。
【0043】
したがって、この構造化可能な層は、好ましくは透明であってよく、および/または他の特徴または機能性:疎水性、親水性、低または高指数、導電性、半導電性または誘電性を有し得る。
【0044】
好ましくは、構造化される層の厚さは、50nmから50μmの間、より好ましくは100nmから12μmの間であってよい。
【0045】
構造化が付着後に早く行われるほど、特に時間とともに発達するゾル−ゲルの結果は良くなる。
【0046】
構造化ライン上で実施される前記層を付着するステップを提供することも可能である。
【0047】
層を付着する好ましい方法は、ゾルのスピンコーティング、ディップコーティング、または吹付け、それから特に「有機−無機複合材料の熱ぬれエンボス加工(Thermowetting embossing of the organic−inorganic hybrid materials)」(W−S.Kim、K−S.Kim、Y−C.Kim、B−S Bae、2005年、Thin Solid Films、476(1)、181−184頁)の表題の文献に記載されているようにレーキングまたはブラッシングによるまたはさらには加熱による液滴の展開である。選択される方法は、スピナーを通過することによるコーティング(スピンコーティング)であってもよい。
【0048】
有利には、上記方法は、有機基を除去するために十分な処理温度、特に500℃超およびより好ましくは700℃における熱処理ステップを含む。ひび割れがなく初期寸法の保持が良好で機械的保持が良好な構造化された無機層をこのように得ることができる。例えば、これはシリカ層である。
【0049】
好ましくは、マスクは、刻印(impression)を増強するために層と接触して置いた後に加熱することができる。
【0050】
圧力は、特にマスクが好ましくはポリマー材料ベースで軟質である場合、5バール未満、好ましくは2バール未満であり得る。
【0051】
ポリマー材料としては、特にPDMS(ポリジメチルシロキサン)またはVDMS(ビニルジメチルシロキサン)で作られたエラストマーを挙げることができ、マスクは、TMCS(トリクロロメチルシロキサン)で表面処理することができる。
【0052】
これらのマスクは、基板の表面に適合する利点を有し、これによって構造化される層との接触を達成するために必要な圧力が最小化される。
【0053】
構造化は、平らなマスクで、特にフラットプレスダイを用いて実施することができ、または湾曲したマスクおよび/もしくは回転手段(シリンダー、等)に関連するマスクを使用して行うことができる。
【0054】
層の構造化の間、硬い選択された基板は、好ましくは硬いままであってよく(無機質のまたは有機の)、ここで、したがって、この表面は構造化可能にならない。
【0055】
これは、硬質基板であり得る。硬質基板は、通常の温度および圧力条件下で、無機質成分について少なくとも60GPa、有機成分について少なくとも4GPaのモジュラスを有するものを意味する。
【0056】
これは、ガラスまたはケイ素基板であり得る。ガラス基板は、無機質ガラス(ソーダ石灰シリカ、ホウケイ酸、ガラス質セラミック、等)および有機ガラス(例えば、ポリウレタンまたはポリカーボネートなどの熱可塑性ポリマー)の両方を意味する。
【0057】
ガラス基板は、好ましくは透明であり、特に少なくとも70から75%の全光透過率を有する。
【0058】
ガラス基板の組成に関して、応用に有用なスペクトルの部分(一般的に380から1200nmのスペクトル)において0.01mm−1未満の線吸収を有するガラスを使用することが好ましい。
【0059】
380から1200nmの範囲の波長スペクトルにおいて0.008mm−1未満の線吸収を有するガラスを意味するエクストラクリアガラスを使用することは、さらにより好ましい。例えば、Saint−Gobain Glassより市販されているDiamantの商標のガラスを選択することができる。
【0060】
ガラス基板は、一体式、貼合せまたは2成分であり得る。構造化後、製品は、様々なガラス処理工程:焼戻し、造形、貼合せ、等を受けることもできる。
【0061】
ガラス基板は、例えば無機質ガラスについて0.1mmのオーダーもしくは有機ガラスについて1mmのオーダーで薄くてよく、または例えば数ミリメートル以上もしくはさらに数センチメートル以上の厚さで厚くてよい。
【0062】
マスクパターンは、必ずしも複製パターンのネガではない。したがって、最終のパターンは、いくつかのマスクでまたはいくつかの工程により形成され得る。
【0063】
マスクは、これらのサイズ(幅および高さ)および/またはこれらの方向および/またはこれらの距離により識別されるパターンを有するいくつかの領域を有し得る。
【0064】
目的とする構造化の形状および/または目的とする用途に応じて、この方法は、必ずしも完全な幾何学的形状をもたらさないことがある。特に、鋭角を有するパターンの場合、パターンを、所要の性能を低下させることなく丸くすることがある。
【0065】
層および/またはマスクの表面は、界面活性剤タイプの抗接着剤を有利に含み得る。
【0066】
この目的のために、フッ素化シラン層を、S.Park、J.Gobrecht、C.Padeste、H.Schift、K.Vogelsang、B.Schnyder、U.Pieles、S.Saxerによる「ナノインプリントリソグラフィーのための改良された抗接着コーティング(Improved anti−adhesive coating for nanoimprint lithography)」の表題の文献(Paul Sherrer Institut scientific reports、2003年)に記載されているように、使用前にマスクまたは基板の表面上に移植することができる。この層は、好ましくは数ナノメートルの厚さを超えることなく、したがって、マスクの空洞を満たすことによってたとえサブミクロンスケールの寸法のパターンでも改変する危険を冒すことがない。こうして形成された抗接着層は、マスクを数回使用することも可能にする。
【0067】
構造化は、好ましくは後の電解付着のために導電性である、好ましくは上部シード層を含む多層上に実施することができる。
【0068】
パターンは、くぼみであり、および/またはレリーフであり、特に互いに平行しておよび/または常に保たれた距離で(波形の、ジグザグの、等)細長くてよい。パターンは、傾いていてもよい。
【0069】
構造化は、例えば、鋲、特に角柱の鋲のアレイ、および/または特に長方形、三角形、台形、等の断面を有する細長いパターンのアレイを形成する。
【0070】
上記構造は、周期的、疑似周期的、準周期的またはランダムであり得る。
【0071】
細長いパターンは、特にマイクロ流体の用途のための、例えばH、YまたはLの形状の屈曲部を有し得る。
【0072】
層の表面は、例えば減少していくパターンサイズを有する、類似でありまたは異なってよいマスクを使用して、好ましくは連続的に数回、構造化することができる。
【0073】
さらに、パターン自体を構造化することができる。
【0074】
例えば、構造化された表面は、疎水性であり、パターンは、長方形の断面を有し、疎水性を増強するための長方形の(サブ)パターンによって構造化されている。
【0075】
前記製品の両方の主な表面は、類似のまたは異なるパターンで、同時にまたは連続的に構造化することができる。
【0076】
本方法は、構造化された表面上に追加の層を付着し、次いで少なくとも1つの新たな構造化の工程を行うステップも含み得る。
【0077】
本方法は、好ましくはクリーンな雰囲気(クリーンルーム、等)において実施される。
【0078】
一実施形態において、ここで、マスクは、異なるパターン(これらの形状のため、これらの特徴的な寸法の1つ、特にピッチpのため異なる)および/または異なるパターンの方向を有する構造化領域によって組織化され、平らな表面は、構造化領域によって構造化される。
【0079】
特に、いくつかの(同一のまたは異なる)小さいサイズのサブマスクは、大きいサイズのマスクを形成するのに使用することができる。これによってこれらの製造がより容易になり、より多くの柔軟性(摩耗、欠点、等の場合、必要に応じてマスクの1つを変えること)が与えられる。
【0080】
導電、半導電および/または疎水性層、特に酸化物ベースの層を付着するステップは、構造化または第1の構造化に続いて行うことができる。好ましくは、この付着は連続的に実施される。例えば、この層は金属で、銀またはアルミニウムでできている。有利には、構造化された表面上に、パターン上またはパターンの間に(例えば、誘電性または導電性の低いパターン)、導電層(特に、金属の、酸化物ベースの層)を選択的に付着するステップを提供することが可能である。
【0081】
この層、例えば、金属層、特に銀またはニッケル層は、電気分解で付着することができる。この後者の場合の電気分解用の電極を形成するために、構造化された層は、有利には(半)導電層または金属粒子が充填されたゾル−ゲルタイプの誘電層またはさらに導電性上部シード層を含む多層であり得る。電解混合物の化学ポテンシャルは、高屈曲の範囲に優先的に付着するように適合される。
【0082】
層の構造化後、特に物理または化学エッチングによる基板および/または下位層へのパターンアレイの転写を考慮することができる。構造化された層は、犠牲層であってもよく、これは部分的にまたは全体的に除去され得る。
【0083】
本発明は、先に記載した方法に由来するガラス製品も対象とする。
【0084】
このガラス製品は、全ての前述した利点(パターンの耐久性および均質性、等)を有する。
【0085】
特徴的な寸法、特にパターンの幅は、好ましくはミクロンまたはサブミクロンスケールであり、好ましくは、アレイは、少なくとも0.1m以上の、より好ましくはさらに0.5m以上の表面積に及ぶ。
【0086】
構造化されたガラス製品は、幅が1から800μmの間であり、深さが0.1から500μmの間である屈曲チャネルを有するマイクロ流体の用途のための、電子、建設または自動車用途を対象とすることができる。
【0087】
特に、様々な製品、特にグレージングユニット:
−改変された(「超」疎水性のまたは親水性の)化学特性を有するもの、
−特にLCDタイプのフラットスクリーン用の照明または背面照明システム用の光学製品(反射偏光子、前方向に光をリダイレクトするための素子、等)、特にエレクトロルミネセントデバイス用の光取出し手段、例えばディスプレイスクリーン、照明または看板用途、またはフォトニック構造向けの光学製品、
−建築物のためのもの、特に好ましくは200から1500nmの間の周期pの赤外線中で回折される回折格子を含む日照および/または温度調整ガラス、または好ましくは100nmから500μmの間の周期pの可視光線中で回折性であるまたは屈折する格子を含む「昼光照明」ガラスと呼ばれる自然光のリダイレクション用のガラス、
−太陽電池
を挙げることができる。
【0088】
アレイは、三次元またはより具体的には二次元のアレイであってよく、ここで、パターンの特徴的な寸法の1つは、表面の好ましい方向においてほとんど変化しない。
【0089】
上記構造は、周期的、疑似周期的、準周期的またはランダムであり得る。
【0090】
平らな表面の反対側の表面は、構造化および/または機能的な層で覆うこともできる。
【0091】
構造化に関連した機能および特性は、次の特徴的な寸法:
−パターンの高さh(複数の高さの場合は最大高さ)およびパターンの幅w(複数の幅の場合は最大幅)、特にwに対するhの比、
−パターンの間の距離(複数の場合は最大距離)d、特にdに対するwの比、またはw+dの合計を意味するピッチp
によって決まる。
【0092】
本発明において、好ましくは:
−距離dは、10nmから500μmの間であり、
−幅wは、10nmから50μmの間であり、またはdに対するwのアスペクト比は、2・10−5から5・10の間に含まれ、
−wに対するhの比は、5以下である。
【0093】
特徴的な寸法の1つ、いくつかまたは全ては、好ましくはミクロンスケールまたはサブミクロンスケールであり得る。
【0094】
構造化は、特に表面エネルギーの生理化学的改変を誘導し得る。構造化は、超疎水性(ロータス効果)も誘導し得る。ぬれを改変するためには、ミクロンまでの範囲のサイズのパターンが可能である。
【0095】
光学的な目的のためには、ガラス製品は、その全範囲が≧100cmである1つの光源または1組の光源から放射された光を部分的に透過させ得る。
【0096】
ミクロの構造化されたまたはナノの構造化された製品の光学的機能性の範囲は広い。
【0097】
いくつかの用途は、回折効果を制限すること(およびガラス製品の透明性を保つこと)のために、100nmのオーダーの、特に400nm未満のピッチpの「ナノ」の構造化されたレリーフを必要とする。
【0098】
例えば、所望の構造は、80nmから400nmの範囲の周期を有する線の格子である。
【0099】
本発明によるアレイは、そのピッチが操作波長未満である、誘電性(透明)および導電性の線の格子を含み得る。導体は、可視スペクトル領域における使用のために、金属、特にアルミニウムまたは銀であってよい。次いで、誘電格子の高さ(レリーフであると仮定して)および金属アレイの高さが定義される。
【0100】
より多くのアレイ構成が可能である。
−誘電格子が、均一な金属層で覆われている(ダブルメタル格子および両側)、
−金属格子が、誘電格子パターン上またはパターンの間に付着されている(この構造は「せり上げ(raised)」であると言われる。)。
【0101】
誘電性パターンは、構造の全てを支持している基板と同一の材料で作られていてよい。誘電性パターンは、基板のものを下回る指数を有し得る。
【0102】
指数が基板のものを下回る材料を、基板および誘電格子の間に置くことができる。この構造は「リブ付き」と呼ばれる。
【0103】
ピッチが、明らかに操作波長、特に可視波長未満である場合(例えば波長の半分)、格子は反射偏光子として機能する。入射平面(金属の線に平行な)に垂直な偏光sは、好ましくは90%を超えて反射され、一方、偏光p(線に垂直で入射平面に平行な)は、好ましくは80−85%の間で透過される。
【0104】
反射偏光子は、他の波長範囲、特に赤外線で使用され得る。
【0105】
光源または「バックライト」からなる背面照明システムは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)スクリーン用の背面照明の光源として使用されている。
【0106】
本発明による構造化されたガラス製品は、LCDスクリーン用の反射偏光子でもあり得る。
【0107】
本発明によるガラス製品は、前方向に放射される光のリダイレクション素子(この垂線方向)でもあり得る。
【0108】
これは、この構造化された表面上に、少なくとも1つのパターン、特に幾何学的パターンの繰り返しを含むことができ、ここで、これらのパターンは、規則的にまたはランダムに分配されており、幅は50μm以下であり、これらの勾配の絶対値は、平均で10°以上、さらに好ましくは20°またはさらに30°である。
【0109】
上記パターンは、次のパターン:
−くぼみまたはレリーフの細長いパターン、特に、ほぼ90°の頂角を好ましくは有するプリズムまたはマイクロレンズ、
−くぼみまたはレリーフの三次元パターン、特に、好ましくは50μm以下の幅の底および140°未満、さらにより好ましくは110°未満の頂角を有するピラミッドタイプのもの、
−フレネルレンズタイプのパターン
の少なくとも1つの中から選択される。
【0110】
また、光学的になめらかな反対側の表面上で、前方向への光のリダイレクション用のこの素子は、硬質の拡散板と結合し、または単一の拡散層(前記された)、または低い指数の層(前記された)および外部拡散層を含み得る。
【0111】
したがって、構造化された層は、好ましくはガラス基板のものを上回る屈折率を有し得る。パターンは、0.5から50μmの間、好ましくは5μm未満のピッチで接合され得る。
【0112】
本発明によるガラス製品は、特にOLEDまたはPLEDタイプ、TFELデバイスまたはTDELデバイスの有機または無機のエレクトロルミネセント層を有する少なくとも1つの発光デバイスと結合または統合することもできる。
【0113】
既知の一方法において、エレクトロルミネセント層を有するいくつかのデバイスは、
−ガラス基板、
−上記基板の1つの同一面上の第1の電極および第2の電極(ここで、2つの電極の少なくとも1つは透明である。)、
−第1および第2の電極の間にはさまれた少なくとも1つのエレクトロルミネセント層を有するエレクトロルミネセントシステム
を含む。
【0114】
無機エレクトロルミネセント層とともに、これは、TFEL(薄膜エレクトロルミネセント)と呼ばれる。このシステムは、一般的に蛍光体層と呼ばれる層および少なくとも1つの誘電層を含む。無機エレクトロルミネセントのスタックの例は、例えば米国特許第6,358,632号明細書に記載されている。
【0115】
誘電層は、厚くてもよい(数ミクロン)。したがって、これは、TDEL(厚膜誘電体エレクトロルミネセント)と呼ばれる。TDEL実施の例は、欧州特許第1,182,909号明細書に記載されている。
【0116】
有機エレクトロルミネセント層とともに、これは、OLEDと呼ばれる。OELDは、一般的に、使用される有機材料によって2つの主要なファミリーに分類される。有機エレクトルミネセント層がポリマーである場合、これらは、PLED(ポリマー発光ダイオード)と呼ばれる。エレクトルミネセント層が小分子である場合、これらは、SMOLED(小分子有機発光ダイオード)と呼ばれる。有機エレクトルミネセントのスタックのいくつかの例は、例えば米国特許第6,645,645号明細書に記載されている。
【0117】
エレクトロルミネセントデバイスにおいて、2つの電極は、好ましくは導電層の形態を有する。
【0118】
構造化が、光の取出しに関与し、したがって発光効率の増加を可能にする。
【0119】
第1の構成において、電極間の光の捕捉の阻止が求められる。
【0120】
例えば、本発明による方法で構造化された犠牲層で覆われたガラス基板をエッチングにより構造化することを選択することは可能である。
【0121】
構造化を複製するために、次いで下部導電層(単一または多層)、エレクトロルミネセントシステムおよび上部導電層を直接付着する。短絡を避けるために、上部導電層(基板から最も遠く隔たった)を平面にすることができる。
【0122】
下部導電層を付着する前に、追加の層を付着し平らな表面を形成することも可能である。好ましくは、この追加の層は、ガラス基板の屈折率より少なくとも0.1大きい屈折率を有することができ、例えば、特にゾル−ゲルタイプのジルコニウム層はさらに少なくとも0.2大きい屈折率を有することができる。
【0123】
別法として、本発明による方法により構造化された層、例えば、特にゾル−ゲルタイプのシリカ層またはジルコニウム層を有するガラス基板を使用することを選択することは可能である。
【0124】
構造化された層を、直接的に下部導電層によってまたは平らな表面を有する追加の層によってのいずれかで覆う。好ましくは、構造化された層を覆う層は、構造化された層の屈折率よりも少なくとも0.1大きい屈折率を有することができ、例えば、屈折率1.95を有するSiNxの層はさらに少なくとも0.2大きい屈折率を有することができる。
【0125】
構造化には、サブミクロンスケールの横方向の寸法w、150nmから700nmの間のピッチp、1μm未満、特に20から200nmの間の高さhを有する少なくとも1つの周期的な格子が含まれる。エレクトロルミネセントシステムが多色性であり、特に白色光を形成している場合、構造化には、好ましくは、それぞれ、サブミクロンスケールの横方向の寸法w、1μm未満、特に20から200nmの間の高さhの複数の隣接した格子が含まれ、ここで、これらの格子は、複数の波長を取り出すために、150nmから700nmの間の明確なピッチpを有する。
【0126】
これらのパターンは、例えば、実質的に基板の1つの端部からもう1つの端部に及ぶ長い線、または50μmに等しい最小限の長さの短い線、またはさらに円形、六角形、四角、長方形、楕円である縦断面(表面に平行な)を有し、特に(実質的に)長方形、半円筒形、裁頭円錐形、またはピラミッド形である横断面を有する他のパターンであり得る。
【0127】
構造化された格子を有するOLEDデバイスの例は、参照により本明細書に組み込んでいる「二次元フォトニック結晶構造の挿入による有機発光ダイオードからの増強された光取出し効率(Enhanced light extraction efficiciency from organic light emitting diodes by insertion of two dimensional photonic crystal structure)」(Y.Doら、Journal of Applied Physics 96巻、第12号、7629−7636頁)または「高取出し効率のナノパターン形成した有機発光ダイオード(A high extraction−efficiency nanopatterned organic light emitting diode)」(Y.Leeら、Applied Physics Letters、82巻、第21号、3779−3781頁)の表題の文献に記載されている。これらの製品は、小さな表面上にリソグラフィー技術を用いて作製されている。
【0128】
第1の構成の代わりのまたはこれに累積しての、第2の構成において、ガラス基板における光の捕捉の阻止が求められる。
【0129】
これを行うために、例えば、エレクトロルミネセントデバイスを形成するためのエレクトロルミネセントシステムと結合された(結合され得る)表面と反対側のガラス基板の表面上に、本発明による方法により構造化された犠牲層によって覆われたガラス基板をエッチングにより構造化することを選択することは可能である。
【0130】
別法として、エレクトロルミネセントデバイスを形成するためのエレクトロルミネセントシステムと結合された(結合され得る)表面と反対側のガラス基板の表面上に、本発明による方法によって構造化された層、例えば、特にゾル−ゲルタイプのシリカ層またはジルコニウム層を有するガラス基板を使用することを選択することは可能である。
【0131】
好ましくは、パターンは、ガラス基板のもの以下の屈折率を有する材料から作られている。
【0132】
アレイは、周期的であり、パターンは、ミクロンスケールの横方向の寸法w、特に1から50μmの間(典型的には約10μm)を有し、パターンは0から10μmの間隔である。
【0133】
特に幾何学的なこれらのパターンは、例えば、実質的に基板の1つの端部からもう1つの端部に及ぶ長い線、または50μmに等しい最小限の長さの短い線、またはさらに円形、六角形、四角、長方形、楕円である縦断面(表面に平行な)を有し、特に(実質的に)長方形、半円筒形、裁頭円錐形、またはピラミッド形(くぼみまたはレリーフの)である横断面を有する他のパターンであり得る。
【0134】
パターンは、整列してまたは並置して六角形のアレイを形成することができる。
【0135】
マイクロレンズのアレイを有するOLEDデバイスの例は、参照により本明細書に組み込んでいるS Mollerらによる「整列したマイクロレンズアレイを使用した有機発光ダイオードにおける改良された光アウトカップリング(light−out coupling)(Improved light−out coupling in organic light emitting diodes employing ordered microlens arrays)」(Journal of Applied Physics、l91巻、第5号、3324−3327頁)に記載されている。これらの製品は、小さな表面上にリソグラフィー技術を用いて作製されている。
【0136】
本発明によるガラス製品は、エレクトロルミネセントデバイス(LED)タイプの点光源を有する発光ダイオードと結合させることもできる。この構成において、ダイオードは、第1および/または第2の構成について記載されたものなどの1つまたは複数のアレイを有するガラス基板上に固定および/または結合される。
【0137】
本発明の他の有利な詳細および特性は、次の図面によって図解されている実施例を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】アニーリング前のナノパターンを有する製品のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す図である。
【図2】アニーリング前のナノパターンを有する製品のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す図である。
【図3】アニーリング前のナノパターンを有する製品のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す図である。
【図4】アニーリング前のナノパターンを有する製品のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す図である。
【図5a】アニーリング前のナノパターンを有する得られた製品の構造化プロファイルを示す図である。
【図5b】アニーリング後のナノパターンを有する得られた製品の構造化プロファイルを示す図である。
【図6a】アニーリング前のナノパターンを有する得られた製品の構造化プロファイルを示す図である。
【図6b】アニーリング後のナノパターンを有する得られた製品の構造化プロファイルを示す図である。
【図7a】アニーリング前のナノパターンを有する製品のFTIRスペクトルを示す図である。
【図7b】アニーリング後のナノパターンを有する製品のFTIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0139】
PDMS(ポリジメチルシロキサン)のナノ構造化された軟質の複製マスクからの薄いゾル−ゲルフィルムのナノ構造化は、熱による刻印によってなされる。
【0140】
それぞれのPDMS複製マスクは、好ましくはニッケルまたはケイ素の構造化された原型上に液体のPDMSを流すことによって簡単に複製される。80℃における2時間の固化および離型後、PDMS複製マスクは、抗接着表面を成長させるためにTMCS(トリクロロメチルシロキサン)の化学蒸着によって処理される。
【0141】
多孔質のPDMS複製マスクは、硬いケイ素およびニッケルの型に比べて可能なよりよい溶媒蒸発でゾル−ゲル縮合速度論を増加させる。
【0142】
この複製マスクは、基板の表面を重んずる利点を有し、これは、基板との接触を達成するために必要な圧力を最小化する。
【0143】
2系列のゾル−ゲルフィルムAおよびBが、酸を含む条件下で得られたMTEOS(メチルトリエトキシシラン)ゾルから調製された。
【0144】
エトキシ基の完全な加水分解後、(300nmから1μmの間の厚さを有する)フィルムが、ガラス基板上にスピンコーティングされる。
【0145】
刻印段階は、低圧力(Pimp<1.5バール)で行われ、空洞は主として毛管現象によって充填される。MTEOSの低い粘度によってマスクのナノ空洞の充填が高められ、アニーリングの制約が低減される。
【0146】
マスクを、ゾル−ゲル層と接触して置いた後に加熱する。所与の時間timpについての最大の刻印温度Timpを設定する。系列AおよびBについて保持の間の最大の温度および刻印時間を、それぞれ以下の表1および2に記載している。Timpまでの上昇時間は、1分から4分の間で変わる。
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】

【0149】
上昇が早ければ早いほど、温度Timpにおける刻印をそれだけ短縮することができる。
【0150】
周囲温度に徐々に戻した後、複製マスクおよび構造化された製品を分離する。マスクは、熱いとき、例えば80℃で回収することもできる。
【0151】
それぞれの系列AおよびBについて、異なる構造化を実施した。
−図1および2で図解されている、1μmのピッチを有する340nmの幅および約150nmの深さの線のアレイ、
−図3および4で図解されている、600nmのピッチを有する直径約160nmおよび約650nmの深さの鋲のアレイ。
【0152】
上記エレメントは、数平方センチメートルにわたって良好な均質性で印刷され、複製マスクの初期のサイズと一致する。
【0153】
印刷されたMTEOSフィルムのアニーリングは、アレイを緻密にすることおよびメチル基(CH)の完全な酸化および分解を得ることのために外部雰囲気炉中で行われる。熱処理は、約500℃において約2時間行われる。フォトリソグラフィー装置もクリーンルームを利用することも必要ではない。
【0154】
系列Aについて、ナノ構造の特性は、アニーリング後に保持され、純粋なシリカナノ構造コーティングが得られる。図5aおよび5bは、それぞれ、アニーリング前後のそれぞれのサンプルA1の構造化プロファイルを示している。位置xの関数としての高さHの成長が得られる。
【0155】
したがって、初期のエレメントは、周期性(サンプルA1について1μm)を変えることなく保持することができ、シリカガラスナノ構造は、ひび割れを含まない。溝の形状は、約25%のサイズの収縮に対応して後硬化の前後でそれぞれ140nmから105nmに低下するパターンの高さとともになめらかであることが観察されている。ここで、これらの結果は、エレメントの小さな収縮で有機部分を燃焼するためにパターンをアニールする能力を示している。
【0156】
ナノパターンは、少なくとも3ヶ月間、時間とともに安定であり、従来の溶媒によって分解されない。
【0157】
構造の良好な機械的保持が、一連のフェルトパッドを用いた摩耗試験によってさらに確認され、この試験は「OPEL」試験の名称で知られている。
【0158】
系列Bについては、ナノパターンはアニーリング後に消失する。例えば、サンプルB1の場合がこのようであり、アニーリング前後で得られたこの構造化プロファイルが、図6aおよび6bに示されている。
【0159】
この場合、パターンは、フィルムが加熱段階の間に再流動化するのでアニーリング後に消失する。
【0160】
パターンの保持は、刻印後のフィルムの縮合レベルによって決まる。十分な縮合レベルの後、コーティングは、十分に架橋されてアニーリングの加熱段階の間、「硬い」ままでいるが、これは、縮合速度が遅すぎる場合、温度の影響下で再流動化する。
【0161】
これは、2つの系列A’およびB’のシリコンウェーハ上に付着されたゾル−ゲルフィルムにおけるシラノール縮合の観察によって確認される。これらのフィルムは、付着され場合によって刻印され、系列AおよびBと同じ条件下でアニールされる。
【0162】
上記観察は、垂直入射透過モードのFTIR(フーリエ変換赤外)分光法によってなされる。縮合速度は、FTIRスペクトルにおける約920cm−lにおけるSi−OH結合吸収ピークの低下とともに増加する。したがって、フィルム中のシラノール基の縮合を、920cm−lにおけるシラノールSiOH IRバンドの低下をモニターすることによって追跡した。
【0163】
ナノパターンの熱安定性についてのシラノールSiOH縮合の程度の重要性を検証する。十分な縮合速度(系列A’)については、ナノパターンが熱的に化学的に安定である不可逆の固化の状態が達成される。低い程度の縮合(高いSi−OH吸収ピークを意味する)については、構造(系列B’)は、後硬化処理の間にゾル−ゲルフィルムの再流動化のために消失する。
【0164】
縮合速度は、温度とともに増加し、したがって、温度が高ければ高いほど、それだけ少ないtimpが縮合閾値に達するのに必要である。
【0165】
図7は、700℃における2時間のアニーリングの前後の、サンプルA1のように印刷されたサンプルA1’のFTIRスペクトルを比較している。吸収Aは、波長の関数として測定される。Si−CH(1280cm−1)およびC−H(2950cm−1)結合の吸収ピークは、後硬化処理後にシラノール基(920cm−l)のように消失した。これは、SiO吸収バンドの存在によって示されるように純粋なシリカナノ構造化されたコーティングの獲得を確認している。
【0166】
さらに、構造化前に、1つのまたはその他の次のステップを、好ましくは連続的に行うことができる。
−下位層の可能な付着、
−および、さらに上流の、例えばフロート法による選択されたガラス基板の形成。
【0167】
1つのまたはその他の次のステップを、構造化後に好ましくは連続的に実施することができる。
−好ましくは縮小した寸法の複製および/または異なる方向のパターンを有する下流に置かれた類似のデバイスを用いての第2の構造化、
−エッチングによる基板および/または下位層へのパターンの転写、
−ガラス基板に対しての、1つまたは複数のガラス転移:焼戻し、貼合せ、裁断、等。
【0168】
金属層、例えば銀を構造化された表面上に付着することは、好ましくは連続的に構造化に続いて行うことができる。
【0169】
この付着は、選択的であることがあり、例えば、金属層を、線のパターンの頂上に付着して例えば電解付着用の電極を形成する。
【0170】
一例として、可視光線において反射する反射偏光子が、200nmのピッチ、80nmの半値の幅、120nmの半値の距離、180nmの誘電高さh、および100nmの金属厚さを有する金属線のアレイを形成することによって得られる。
【0171】
赤外線における偏光子を、寸法を増すことによって得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面構造化、すなわち、ゾル−ゲルに由来する少なくとも1つの層を有する基板を含む製品の平らな表面上にサブミリメートルスケールの特徴的な横方向の寸法を有するパターンの少なくとも1つのアレイを形成するための方法であって、前記構造化は、非反応性の有機基を含む、Si、Ti、Zr、W、Sb、Hf、Ta、V、Mg、Al、Mn、Co、Ni、Sn、Zn、およびCeから選択される少なくとも1種の金属のアルコキシドおよび/またはハロゲン化物をベースとする加水分解されたゾル層を用いて熱間で行われ、前記構造化は、構造化されたマスクとの接触および必要に応じて圧力を使用することにより実施され、前記構造化は、構造化の熱保持を確実にするのに十分な縮合閾値に適する温度範囲において、合計の構造化時間は、2時間以下で実施される、表面構造化方法。
【請求項2】
合計の構造化時間が、1時間以下、好ましくは30分以下であることを特徴とする、請求項1に記載の表面構造化方法。
【請求項3】
構造化が、少なくとも100℃から130℃の間の温度において、好ましくは10分から30分の間の構造化時間に部分的に実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面構造化方法。
【請求項4】
構造化が、少なくとも130℃から200℃の間の温度において、20分未満の時間に部分的に実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面構造化方法。
【請求項5】
金属が、ジルコニウムまたはケイ素であり、ならびにゾルが、好ましくは、有機基、特に芳香族、ビニルまたはフェニル基を含むケイ素またはジルコニウムアルコキシドの中から選択され、特にメチルトリエトキシシランであることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項6】
層が、透明であり、および/または稠密もしくは多孔質であり、および/または金属粒子が充填されていることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項7】
有機基を除去するために十分な処理温度、特に500℃超での後続する熱処理ステップを含むことを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項8】
マスクが、層に接触してマスクが置かれた後に加熱されることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項9】
圧力が、5バール未満、好ましくは2バール未満であり、ならびにマスクが、好ましくはポリマー材料をベースとすることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項10】
構造化が、平らなマスクを用いて、特にフラットプレスダイを使用して実施されることを特徴とする、請求項1から9の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項11】
層および/またはマスクの表面が、界面活性剤タイプの抗接着剤、および好ましくはフルオロシラン層を含むことを特徴とする、請求項1から10の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項12】
構造化が、鋲のアレイ、特に角柱鋲、および/または特に長方形もしくは三角形の断面を有する細長いパターンのアレイ、特にH、LもしくはYに屈曲した屈曲アレイを形成し、パターンが、傾いていてよいことを特徴とする、請求項1から11の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項13】
マスクが、それぞれ異なるパターンおよび/または異なるパターンの方向を有する構造化領域によって組織化されている場合、平らな表面が、構造化領域によって構造化されることを特徴とする、請求項1から12の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項14】
基板および/またはゾル−ゲル層の下にある層へのパターンアレイの転写が実施され、ならびに構造化されたゾル−ゲル層が、除去され得ることを特徴とする、請求項1から13の一項に記載の表面構造化方法。
【請求項15】
ゾル−ゲル経路により得られならびに請求項1から14の一項に記載の方法により構造化された層を有する基板を含む構造化された製品。
【請求項16】
層が、シリカで作られていることを特徴とする、請求項15に記載の構造化された製品。
【請求項17】
基板が、ガラスまたはケイ素で作られていることを特徴とする、請求項15または16に記載の構造化された製品。
【請求項18】
特徴的な横方向の寸法が、ミクロンまたはサブミクロンスケールであり、ならびに好ましくは、アレイが、少なくとも0.1m以上の、好ましくは0.5m以上の表面積に及ぶことを特徴とする、請求項15から17の一項に記載の構造化された製品。
【請求項19】
建築物、特に赤外線中で回折する回折格子を含む日照および/または温度調整ガラス、自動車またはエレクトロニクスにおいて使用される自然光のリダイレクション用のガラス、マイクロ流体用途、可視光線または赤外線中で反射する反射偏光子などの光学機能を有するガラス、特に液晶スクリーン用の前方向への光のリダイレクション用の素子、エレクトロルミネセントデバイス用の光取出し手段、または疎水性もしくは親水性ガラス、太陽電池に使用されることを目的としていることを特徴とする、請求項15から18の一項に記載の構造化された製品。
【請求項20】
特に反射偏光子を形成するための細長い誘電性パターンおよび誘電性パターンに隣接したおよび/もしくはこの上に置かれた細長い金属パターンのアレイを含むことを特徴とし、ならびに/または、特に前方向に光をリダイレクトすることを目的とする素子を形成するための、パターンが50μm以下の幅で規則的にまたはランダムに分配されており、勾配の絶対値が平均して10°以上である幾何学的パターンのアレイを含むことを特徴とする、請求項15から19の一項に記載の構造化された製品。
【請求項21】
サブミクロンスケールの横方向の寸法w、150nmから700nmの間のピッチp、1μm未満、特に20から200nmの間の高さhを有する少なくとも1つの周期的なアレイを含み、パターンは、特に長方形の断面を有し、ならびに前記アレイは、エレクトロルミネセントデバイスを形成するためのエレクトロルミネセントシステムと結合された(結合され得る)ガラス基板中にもしくはこの表面上にあってよいことを特徴とし、および/またはミクロンスケールの横方向の寸法w、50μm未満の高さhを有する周期的なアレイを含み、パターン、特に幾何学的パターンは、エレクトロルミネセントデバイスを形成するためのエレクトロルミネセントシステムと結合された(結合され得る)表面と反対側のガラス基板中にもしくはこのガラス基板の表面上に整列されてもしくは並置されて六角形のアレイを形成することを特徴とする、請求項15から20の一項に記載の構造化された製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2010−526648(P2010−526648A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501571(P2010−501571)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050594
【国際公開番号】WO2008/142322
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】