説明

タイミングライブラリ検査装置、タイミングライブラリ検査方法、及びタイミングライブラリ検査プログラムを格納する記憶媒体

【課題】タイミングの見落としに起因するLSIの誤動作及びタイミング調整回路と消費電力の増加問題を解決する。
【解決手段】タイミングライブラリ検査装置は、LSIのタイミング制約値を含むタイミングライブラリ入力部12と、そのライブラリから、LSIのタイミング制約の基準となる基準端子毎のタイミング制約を受ける制約端子のタイミング制約値を含み、複数の基準端子と制約端子の波形鈍りを行方向及び列方向に持つルックアップテーブルで表されるタイミング制約データを抽出する抽出部14aと、抽出されたデータに対し、隣接する2つのタイミング制約値の差を算出し、その増加又は減少を示す増減データ作成部14bと、14bによって作成された増減データに増加及び減少が含まれているか否かを判定する判定部14cと、含まれていると判定された場合に、タイミングライブラリに特異点が含まれることを報知する出力する出力部18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイミングライブラリ検査装置、タイミングライブラリ検査方法、及びタイミングライブラリ検査プログラムを格納する記憶媒体に関し、より詳しくは、半導体集積回路のタイミングライブラリの検証に用いられるタイミングライブラリ検査装置、タイミングライブラリ検査方法、及びタイミングライブラリ検査プログラムを格納する記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な半導体集積回路のタイミングライブラリ(例えば、順序回路の入力タイミング用タイミングライブラリ)の作成では、順序回路の入力タイミングは、動作が極めて不安定なメタステーブル領域の周辺で測定される。このメタステーブル領域では、安定した出力波形を得ることが難しく、その出力波形には、振動又はハザードを伴うなどの不十分な遷移が現れる傾向がある。特に、この傾向は、半導体集積回路の電源電圧の低電圧化によって顕著になる。
【0003】
しかしながら、タイミングライブラリの作成に於いては、不十分な遷移が現れた出力波形であっても、論理閾値である判定基準電圧を超える場合には半導体集積回路が正常動作するものと判定される。この場合には、この出力波形を入力とする論理ゲートは正常に論理動作することができないので、出力波形が判定基準電圧を超えたとしても半導体集積回路が正常動作するものと判定されるべきではない。ところが、実際には、半導体集積回路が正常動作するものと判定され、その時点の入力波形のタイミングがホールドタイム又はセットアップタイムとしてタイミングライブラリに登録される。登録されたホールドタイム及びセットアップタイムは、半導体集積回路が正常動作するときとは異なる値であるため、タイミングライブラリにおいて特異点となる。その結果、ユーザは、特異点を含むタイミングライブラリから正確な入力タイミングを読み取ることができない。すなわち、一般的なタイミングライブラリの作成では、不完全なタイミングライブラリが作成されることがある。
【0004】
さらに、タイミングライブラリが作成された後に、そのタイミングラリブラリが不完全であるか否か(すなわち、タイミングライブラリが特異点を含むか否か)について、ユーザの目視による検査が必要である。
【0005】
しかしながら、タイミングライブラリに登録されるデータ量は膨大であるので、ユーザの目視による検査は極めて困難である。従って、ユーザは、黙視による検査で特異点を見落とすと、不完全なタイミングライブラリを利用して順序回路の入力タイミングを検証することになる。その結果、順序回路の入力タイミングに違反があるにもかかわらず、その違反が見落とされることに起因する半導体集積回路の誤動作、並びに半導体集積回路のセルの入力タイミングの制約(以下、「タイミング制約」という)を過剰に与えるために追加するタイミング調整用回路に起因する回路規模及び消費電力の増加という問題が生じる。
【0006】
また、従来では、タイミングライブラリの作成における問題に対して様々な提案がなされているが(特許文献1を参照)、上記問題に対する解決方法は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−305650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、タイミングに違反があるにもかかわらず、その違反が見落とされることに起因する半導体集積回路の誤動作、並びにタイミング制約を過剰に与えるために追加するタイミング調整用回路に起因する回路規模及び消費電力の増加という問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、
半導体集積回路のタイミング制約値を含むタイミングライブラリを受け付ける入力部と、
前記入力部によって受け付けられたタイミングライブラリから、前記半導体集積回路のタイミング制約の基準となる基準端子毎の前記タイミング制約を受ける制約端子のタイミング制約値を含み、複数の基準端子の波形鈍りと複数の制約端子の波形鈍りをそれぞれ行方向及び列方向に持つルックアップテーブルで表されるタイミング制約データを抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出されたタイミング制約データに対し、隣接する2つのタイミング制約値の差を算出し、前記算出された差から前記タイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成する増減データ作成部と、
前記増減データ作成部によって作成された増減データに増加及び減少が含まれているか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記増減データに増加及び減少が含まれていると判定された場合に、前記タイミングライブラリに特異点が含まれることを報知する出力する出力部と、
を備えるタイミングライブラリ検査装置が提供される。
【0010】
本発明の第2態様によれば、
半導体集積回路のタイミング制約値を含むタイミングライブラリを受け付け、
前記受け付けられたタイミングライブラリから、前記半導体集積回路のタイミング制約の基準となる基準端子毎の前記タイミング制約を受ける制約端子のタイミング制約値を含み、複数の基準端子の波形鈍りと複数の制約端子の波形鈍りをそれぞれ行方向及び列方向に持つルックアップテーブルで表されるタイミング制約データを抽出し、
前記抽出されたタイミング制約データに対し、隣接する2つのタイミング制約値の差を算出し、
前記算出された差から前記タイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成し、
前記作成された増減データに増加及び減少が含まれているか否かを判定し、
前記増減データに増加及び減少が含まれていると判定された場合に、前記タイミングライブラリに特異点が含まれることを報知する
ことを備えるタイミングライブラリ検査方法が提供される。
【0011】
本発明の第3態様によれば、
半導体集積回路のタイミング制約値を含むタイミングライブラリを受け付ける入力命令と、
前記受け付けられたタイミングライブラリから、前記半導体集積回路のタイミング制約の基準となる基準端子毎の前記タイミング制約を受ける制約端子のタイミング制約値を含み、複数の基準端子の波形鈍りと複数の制約端子の波形鈍りをそれぞれ行方向及び列方向に持つルックアップテーブルで表されるタイミング制約データを抽出する抽出命令と、
前記抽出されたタイミング制約データに対し、隣接する2つのタイミング制約値の差を算出し、前記算出された差から前記タイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成する増減データ作成命令と、
前記作成された増減データに増加及び減少が含まれているか否かを判定する判定命令と、
前記増減データに増加及び減少が含まれていると判定された場合に、前記タイミングライブラリに特異点が含まれることを報知する出力命令と、
を備えるタイミングライブラリ検査プログラムを格納するコンピュータ読取可能な記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タイミングに違反があるにもかかわらず、その違反が見落とされることに起因する半導体集積回路の誤動作、並びにタイミング制約を過剰に与えるために追加するタイミング調整用回路に起因する回路規模及び消費電力の増加を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】タイミングライブラリ及びタイミング制約データのデータ構造を示す概略図である。
【図3】図1のCPU14によって実現される機能を示すブロック図である。
【図4】クロック波形鈍りに対するデータ波形鈍りの系列データを示す概略図である。
【図5】図3の増減データ作成部14bの処理を示す概略図である。
【図6】データ波形鈍りの系列データに対する増減データのデータ構造を示す概略図である。
【図7】クロック波形鈍りの系列データに対する増減データのデータ構造を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査装置10の構成を示すブロック図である。図2は、タイミングライブラリ及びタイミング制約データのデータ構造を示す概略図である。図3は、図1のCPU14によって実現される機能を示すブロック図である。図4は、クロック波形鈍りに対するデータ波形鈍りの系列データを示す概略図である。図5は、図3の増減データ作成部14bの処理を示す概略図である。図6は、データ波形鈍りの系列データに対する増減データのデータ構造を示す概略図である。図7は、クロック波形鈍りの系列データに対する増減データのデータ構造を示す概略図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査装置10は、入力部12と、プロセッサ(以下、「CPU(Central Processing Unit)」という)14と、記憶部16と、出力部18と、を備える。CPU14には、入力部12と、記憶部16と、出力部18と、が接続される。
【0017】
図1の入力部12は、半導体集積回路のタイミング制約値を含むタイミングライブラリを受け付けるように構成される。例えば、入力部12は、キーボード等の入力装置からユーザが入力したタイミングライブラリを受け付けるように構成される。図2(A)に示すように、タイミングライブラリは、複数のタイミング制約データから構成される。図2(B)に示すように、各タイミング制約データは、N個のクロック波形鈍り時間及びM個のデータ波形鈍り時間をインデックスとするタイミング制約値を含むテーブルである。換言すると、各タイミング制約データは、半導体集積回路のタイミング制約の基準となる端子(以下、「基準端子」という)毎のタイミング制約を受ける端子(以下、「制約端子」という)のタイミング制約値を含み、複数の基準端子の波形鈍りと複数の制約端子の波形鈍りを持つルックアップテーブルで表される。タイミング制約値は、セルの入力タイミングの制約を示す情報である。具体的には、タイミング制約値は、クロック端子とデータ端子との間又は2つのデータ端子間で定義される同期動作のための時間的な制約(すなわち、セルの入力端子(クロック端子又はデータ端子)に到達した信号とデータ端子に到達した信号との間の時間差に課せられる制約)を示す情報である。
【0018】
図1のCPU14は、記憶部16に記憶されたタイミングライブラリ検査プログラム16aを実行することによって、図3に示す抽出部14aと、増減データ作成部14bと、判定部14cと、を実現するように構成される。
【0019】
図3の抽出部14aは、入力部12によって受け付けられたタイミングライブラリから、図2(B)に示すタイミング制約データを抽出するように構成される。例えば、クロック端子が基準端子であり、データ端子を制約端子である場合には、抽出部14aは、図4のクロック波形鈍りに対するデータ波形鈍りの系列データ(C/n)を抽出する。
【0020】
図3の増減データ作成部14bは、抽出部14aによって抽出されたタイミング制約データに対し、隣接する2つのタイミング制約値の差を算出し、算出された差からタイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成して、作成した増減データを記憶部16に書き込むように構成される。なお、増減データ作成部14bは、1つの基準端子について、隣接する2つの制約端子のタイミング制約値の差を算出し、算出された差からタイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成しても良い。また、増減データ作成部14bは、1つの制約端子について、隣接する2つの基準端子のタイミング制約値の差を算出し、算出された差からタイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成しても良い。例えば、図5(A)に示すように、増減データ作成部14bは、データ波形鈍りの系列データ(C/n)に対し、データ波形鈍りのインデックスn(n:1〜N)の昇順に、隣接する2点のタイミング制約値(t(m))(m:1〜M)の差を算出し、全ての隣接する2点のタイミング制約値の大小関係を示す2ビットのデータ(1|0)から構成される増減データ(図6を参照)を作成する。また、図5(B)に示すように、増減データ作成部14bは、クロック波形鈍りの系列データ(D/m)に対し、データ波形鈍りのインデックスmの昇順に、隣接する2点のタイミング制約値(t(n))の差を算出し、全ての隣接する2点のタイミング制約値の大小関係を示す2ビットのデータから構成される増減データ(図7を参照)を作成する。図6では、増減データ(m/m−1)は、“t(m)−t(m−1)”の増減情報から構成される。図7では、増減データ(n/n−1)は、“t(n)−t(n−1)”の増減情報から構成される。増減データ作成部14bは、クロック波形鈍りの全てのインデックス値に対応するデータ波形鈍りの系列データについて、増減データを作成する。図6及び図7では、“1”は算出結果が負である(すなわち、データ波形鈍りが増えるにつれてタイミング制約値が増加する)ことを示し、“0”は算出結果が0以上である(すなわち、データ波形鈍りが増えるにつれてタイミング制約値が一定である又は減少する)ことを示す。
【0021】
図3の判定部14cは、増減データ作成部14bによって作成された増減データに増加及び減少が含まれているか否かを判定するように構成される。例えば、図6の増減データでは、増減データ(1/2)はタイミング制約値が増加することを示す“1”のみから構成され、増減データ(M−2/M−1)及び(M−1/M)はタイミング制約値が一定である又は減少することを示す“0”のみから構成され、増減データ(2/3)は増減データに“1”(増加)及び“0”(減少)が含まれる。この場合には、判定部14cは、系列データ(C/2)と系列データ(C/3)との間に特異点が存在すると判定する。図7の増減データでは、増減データ(1/2)及び増減データ(N−1/N)はタイミング制約値が増加することを示す“1”のみから構成され、増減データ(N−2/N−1)はタイミング制約値が一定である又は減少することを示す“0”のみから構成され、増減データ(2/3)は増減データに“1”(増加)及び“0”(減少)が含まれる。この場合には、判定部14cは、系列データ(D/2)と系列データ(D/3)との間に特異点があると判定する。すなわち、判定部14cは、同一クロック波形鈍りデータ波形の系列データ及び同一データ波形鈍りのクロック波形の系列データに増減の方向が1つでも異なる増減データが存在する場合に、特異点があると判定する。なお、図6の増減データの判定及び図7の増減データの判定は順不同である。
【0022】
図1の記憶部16は、タイミングライブラリ検査処理に使用される様々なデータを記憶可能に構成される。また、記憶部16は、図3に示す機能を実現するためのタイミングライブラリ検査プログラム16aを記憶する。タイミングライブラリ検査プログラム16aは、図1の入力部12によって受け付けられた入力部を受け取るための入力命令と、図3の抽出部14aを実現するための抽出命令と、増減データ作成部14bを実現するための増減データ作成命令と、判定部14cを実現するための判定命令と、図1の出力部18から出力データを出力するための出力命令と、を含む。例えば、記憶部16は、ハードディスク装置等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。
【0023】
図1の出力部18は、判定部14cによって増減データに増加及び減少が含まれていると判定された場合に、タイミングライブラリに特異点が含まれることを報知するように構成される。例えば、判定部14cによって増減データに増加及び減少が含まれる(すなわち特異点がある)と判定された場合には、出力部18は、タイミングライブラリに特異点が含まれることを示すメッセージ、特異点を含むタイミング制約データを特定する特定情報、及び特異点を含むタイミング制約データを出力する。特定情報は、タイミング制約値に対応するセルのセル名、タイミング制約が設定された端子の端子名、及びタイミング制約が設定された端子と同一セルに存在する端子の設定状態のうち少なくとも1つである。出力部18は、出力したデータをディスプレイ若しくはプリンタに送信し、又はネットワークを介してサーバに送信する。すなわち、出力部18は、判定部14cによって特異点があると判定された場合に、タイミング制約データが不完全なものであることを示す情報を出力する。
【0024】
本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査処理について説明する。図8は、本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査処理の手順を示すフローチャートである。
【0025】
<図8:入力工程(S801)> 入力部12が、ユーザによって入力されたタイミングライブラリ(図2(A)を参照)を受け付ける。なお、タイミングライブラリが記憶部16に予め記憶されている場合には、入力部12は、記憶部16に記憶されたタイミングライブラリを読み出す。
【0026】
<図8:抽出工程(S802)> 抽出部14aが、入力工程(S801)において受け付けられたタイミングライブラリから、タイミング制約値を含むタイミング制約データ(図2(B)を参照)を抽出する。
【0027】
<図8:増減データ作成工程(S803)> 増減データ作成部14bが、抽出工程(S802)において抽出されたタイミング制約データに対し、増減データ(図6及び図7を参照)を作成して、作成した増減データを記憶部16に書き込む。増減データ作成工程(S803)は、タイミング制約データに含まれる全ての系列データ(図4を参照)について行われる。
【0028】
<図8:判定工程(S804)> 判定部14cが、増減データ作成工程(S803)において作成された増減データに増加及び減少が含まれているか否か(すなわち増減データに特異点が含まれるか否か)を判定する。判定工程(S804)は、増減データに含まれる全ての系列データについて行われる。
【0029】
<図8:出力工程(S805)> 出力部18が、判定工程(S804)において増減データに増加及び減少が含まれる(すなわち増減データに特異点がある)と判定された場合に、タイミングライブラリに特異点が含まれることを報知する。
【0030】
<図8:S806> 抽出工程(S802)乃至出力工程(S805)は、タイミングライブラリに含まれる全てのタイミング制約データについて繰り返し行われる(S806−NO)。抽出工程(S802)乃至出力工程(S805)がタイミングライブラリに含まれる全てのタイミング制約データについて完了した場合には(S806−YES)、本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査処理が終了する。
【0031】
本発明の代替の実施形態では、増減データ作成部14bは、図6の増減データ又は図7の増減データの何れか一方のみを作成しても良い。この場合には、判定部14cは、図6の増減データ又は図7の増減データの何れか一方について判定工程(S804)を行う。
【0032】
本発明の実施形態によれば、増減データに基づいてタイミングライブラリのタイミング制約データに特異点が含まれるか否かが判定され、特異点が含まれる場合に、その旨が報知される。従って、タイミングに違反があるにもかかわらず、その違反が見落とされることに起因する半導体集積回路の誤動作、並びにタイミング制約を過剰に与えるために追加するタイミング調整用回路に起因する回路規模及び消費電力の増加を防ぐことができる。
【0033】
また、本発明の実施形態によれば、基準端子又は制約端子について、隣接する2つの制約端子又は基準端子のタイミング制約値の差を算出し、算出された差からタイミング制約値の増加又は減少を示す増減データが作成される。この場合には、抽象度が向上し、その結果、大容量データの処理速度を向上させることができる。
【0034】
また、本発明の実施形態によれば、基準端子及び制約端子の両方について、タイミング制約データに特異点が含まれるか否かが判定される。この場合には、タイミングライブラリ検査処理の検査精度を向上させることができる。
【0035】
また、本発明の実施形態によれば、増減データが記憶部16に記憶される。この場合には、タイミングライブラリ検査処理の処理速度を向上させることができる。
【0036】
また、本発明の実施形態によれば、増減データに増加及び減少が含まれていると判定された場合に、タイミングライブラリに特異点が含まれるメッセージが出力される。この場合には、ユーザは特異点の有無を容易に判断できる。
【0037】
また、本発明の実施形態によれば、特異点を含むタイミング制約データを特定する特定情報(タイミング制約値に対応するセルのセル名、タイミング制約が設定された端子の端子名、及びタイミング制約が設定された端子と同一セルに存在する端子の設定状態のうち少なくとも1つ)が出力される。この場合には、ユーザは、特異点の発生箇所を容易に特定することができ、且つ、特異点の発生箇所について視覚的に解析することができる。
【0038】
また、本発明の実施形態によれば、特異点を含むタイミング制約データが出力される。この場合には、ユーザは擬似エラーを容易に確認することができ、且つ、擬似エラーについて本質的エラーか否かを解析することによってタイミングライブラリの本質的エラーを容易に修正することができる。
【0039】
本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査装置10の少なくとも一部は、ハードウェアで構成しても良いし、ソフトウェアで構成しても良い。ソフトウェアで構成する場合には、タイミングライブラリ検査装置10の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させても良い。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でも良い。
【0040】
また、本発明の実施形態に係るタイミングライブラリ検査装置10の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布しても良い。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布しても良い。
【0041】
上述した実施形態は、いずれも一例であって限定的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
10 タイミングライブラリ検査装置
12 入力部
14 CPU
14a 抽出部
14b 増減データ作成部
14c 判定部
16 記憶部
18 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路のタイミング制約値を含むタイミングライブラリを受け付ける入力部と、
前記入力部によって受け付けられたタイミングライブラリから、前記半導体集積回路のタイミング制約の基準となる基準端子毎の前記タイミング制約を受ける制約端子のタイミング制約値を含み、複数の基準端子の波形鈍りと複数の制約端子の波形鈍りを持つルックアップテーブルで表されるタイミング制約データを抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出されたタイミング制約データに対し、隣接する2つのタイミング制約値の差を算出し、前記算出された差から前記タイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成する増減データ作成部と、
前記増減データ作成部によって作成された増減データに増加及び減少が含まれているか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記増減データに増加及び減少が含まれていると判定された場合に、前記タイミングライブラリに特異点が含まれることを報知する出力する出力部と、
を備えるタイミングライブラリ検査装置。
【請求項2】
前記増減データ作成部は、1つの基準端子について、隣接する2つの制約端子のタイミング制約値の差を算出し、前記算出された差から前記タイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成する請求項1記載のタイミングライブラリ検査装置。
【請求項3】
前記増減データ作成部は、1つの制約端子について、隣接する2つの基準端子のタイミング制約値の差を算出し、前記算出された差から前記タイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成する請求項1又は2記載のタイミングライブラリ検査装置。
【請求項4】
データを記憶可能に構成された記憶部をさらに備え、
前記増減データ作成部は、前記作成された増減データを前記記憶部に書き込む請求項1乃至3の何れか1項記載のタイミングライブラリ検査装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記タイミングライブラリに特異点が含まれることを示すメッセージを出力する請求項1乃至4の何れか1項記載のタイミングライブラリ検査装置。
【請求項6】
前記出力部は、さらに、前記タイミング制約データを特定する特定情報を出力する請求項1乃至5の何れか1項記載のタイミングライブラリ検査装置。
【請求項7】
前記特定情報は、前記タイミング制約値に対応するセルのセル名、前記タイミング制約が設定された端子の端子名、及び前記タイミング制約が設定された端子と同一セルに存在する端子の設定状態のうち少なくとも1つを含む請求項6記載のタイミングライブラリ検査装置。
【請求項8】
前記出力部は、さらに、前記タイミング制約データを出力する請求項1乃至7の何れか1項記載のタイミングライブラリ検査装置。
【請求項9】
半導体集積回路のタイミング制約値を含むタイミングライブラリを受け付け、
前記受け付けられたタイミングライブラリから、前記半導体集積回路のタイミング制約の基準となる基準端子毎の前記タイミング制約を受ける制約端子のタイミング制約値を含み、複数の基準端子の波形鈍りと複数の制約端子の波形鈍りをそれぞれ行方向及び列方向に持つルックアップテーブルで表されるタイミング制約データを抽出し、
前記抽出されたタイミング制約データに対し、隣接する2つのタイミング制約値の差を算出し、
前記算出された差から前記タイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成し、
前記作成された増減データに増加及び減少が含まれているか否かを判定し、
前記増減データに増加及び減少が含まれていると判定された場合に、前記タイミングライブラリに特異点が含まれることを報知する
ことを備えるタイミングライブラリ検査方法。
【請求項10】
半導体集積回路のタイミング制約値を含むタイミングライブラリを受け付ける入力命令と、
前記受け付けられたタイミングライブラリから、前記半導体集積回路のタイミング制約の基準となる基準端子毎の前記タイミング制約を受ける制約端子のタイミング制約値を含み、複数の基準端子の波形鈍りと複数の制約端子の波形鈍りをそれぞれ行方向及び列方向に持つルックアップテーブルで表されるタイミング制約データを抽出する抽出命令と、
前記抽出されたタイミング制約データに対し、隣接する2つのタイミング制約値の差を算出し、前記算出された差から前記タイミング制約値の増加又は減少を示す増減データを作成する増減データ作成命令と、
前記作成された増減データに増加及び減少が含まれているか否かを判定する判定命令と、
前記増減データに増加及び減少が含まれていると判定された場合に、前記タイミングライブラリに特異点が含まれることを報知する出力命令と、
を備えるタイミングライブラリ検査プログラムを格納するコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−59767(P2011−59767A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205750(P2009−205750)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】