タイムスロット方式を採用した無線ネットワークにおける適応型周波数ホッピング
【課題】複数のノードが周波数ホッピング・パターンを共用する無線ネットワーク・システムを提供する。
【解決手段】各送信ノードについて、ターゲット・ノードとの通信に利用可能なチャンネルを含む共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含むチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを提供し、前記共用周波数ホッピング・パターンから、次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、前記チャンネル・リスト・テーブルから、送信先のターゲット・ノードのチャンネル・リストを選択し、前記選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、前記選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記選択されたチャンネルを設定し、前記選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算する。
【解決手段】各送信ノードについて、ターゲット・ノードとの通信に利用可能なチャンネルを含む共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含むチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを提供し、前記共用周波数ホッピング・パターンから、次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、前記チャンネル・リスト・テーブルから、送信先のターゲット・ノードのチャンネル・リストを選択し、前記選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、前記選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記選択されたチャンネルを設定し、前記選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、大まかには、無線ネットワークに関し、より具体的には、タイムスロット方式を採用した無線ネットワークにおける適応型周波数ホッピングに関する。
【背景技術】
【0002】
ISA100.11a又はWirelessHART等の既存の産業用の無線システムは、タイムスロット周波数ホッピング・アプローチ及びメッシュ・ネットワーク技術により信頼性のある無線通信が可能である。しかし、これらの無線システムは、WiFi又はブルートゥースと同じ2.4GHzの周波数バンドを使用するので、WiFi又はブルートゥース等の他の無線システムからの干渉の影響を大きく受けることがある。WiFiは、ブロードバンド信号を使用しているので、WiFiからの干渉の影響が、最も重大である。このような他の無線システムからの干渉の影響を緩和するために、測定されたチャンネル状態に基づき送信周波数チャンネルをダイナミックに変更する適応型周波数ホッピング(AFH)アプローチがこれまで提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,035,314号
【特許文献2】米国公開特許出願第2005/0008064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような産業用の無線システムにAFHを適用すると、次の問題が生じる。第1の問題は、大規模無線ネットワークに適用することに関する。通信範囲が比較的大きく、システム内で互いに通信するノードが多数存在するので、各ノードが利用可能なチャンネルは異なる。このため、各トランシーバは、全ての周波数ホッピング・パターンを有していなければならないので、ネットワークの複雑度が高く、各デバイスのメモリ・サイズが大きくなる。第2の問題は、信頼性のある高速干渉検出に関する。信頼性のある測定を行うには、干渉信号を統計的に検出しなければならない。このようにチャンネル状態を判定するには、長い測定時間が必要である。このことは、干渉が大幅に増えると、ネットワークの性能が低下することを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(本発明の概要)
本発明の実施形態は、信頼性のある通信を可能にする低コストかつ低複雑度の大規模ネットワークに適した分散適応型周波数ホッピング・システムを提供する。具体的な実施形態では、システムの複数のノード間で一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、互いに通信する二つのノード間毎に一つのチャンネル・リストを共用する。送信機が割当タイムスロットにおいて共用周波数ホッピング・パターンの割当チャンネルで受信機へのパケット送信を試みるとき、このチャンネルが不良チャンネルである場合、送信機は、送信チャンネルを、その受信機のために共用チャンネル・リストから選択された代りのチャンネルに変更する。受信機も同じように選択されたチャンネルでパケットを待つ。更に、チャンネル状態を知るために、誤り率に基づく測定とCCA(Clear Channel Assessment:空きチャンネル判定)に基づく測定との両方を利用する。CCAメカニズムを使用して、干渉信号の空間占有率(Space Occupancy)を測定する。干渉を検出するCCA測定用にタイムスロットが一つ割り当てられる。このタイムスロットでは、どのノードもデータを送信しない。このタイムスロットでは、システムのノードは、周波数ホッピング・パターンの全てのチャンネルにわたって干渉信号の強度を測定し、これらの強度と所定のスレッショルドとを比較する。ノードは、数回の測定を通して強度がスレッショルドよりも大となった測定回数をカウントすることにより、チャンネル状態を判定する。したがって、信頼性を改善する適応型周波数チャンネル・メカニズムは、低コストかつ低複雑度のタイムスロット周波数ホッピングに基づくネットワーク及びメッシュ・ネットワークに組み込むことができる。
本発明の一つの特徴は、複数のノードを有する無線ネットワーク・システムに関し、前記複数のノードは、互いに通信する送信ノード及びターゲット・ノードを含み、前記複数のノード間で一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する無線ネットワーク・システムにおいて、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを提供するステップであって、各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含む前記ステップと、前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、次の割当タイムスロットのチャンネルを選択するステップと、前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記送信ノードが送信する先の前記ターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択するステップと、前記選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックするステップと、前記選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定するステップと、前記選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するステップとを含む方法である。
【0006】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記次の割当タイムスロットが到達するのを待つステップと、前記次の割当タイムスロットにおいて、前記送信ノードから前記ターゲット・ノードへデータを送信するステップとを更に含む。前記共用周波数ホッピング・パターンの前記タイムスロットは、一連のフレーム内に配置されており、各フレームは、フレーム番号を有し、複数のタイムスロットを含み、前記代りのチャンネルを計算するステップは、前記選択されたチャンネル・リストから作成された利用可能チャンネル・リストから代りのチャンネルを選択するステップを含む。前記代りのチャンネルを選択するステップは、F(x,y)=[x/y]+mod(x,y)(ここで[a]は、「a」を超えない最大の整数であり、mod(x,y)は、xをyで割った余りである。)に従って、フレーム番号(x)、前記共用周波数ホッピング・パターンの周期(y)、及びN個の利用可能なチャンネルのリストである利用可能チャンネル・リストの長さ(N)から前記代りのチャンネルのアドレスを計算することを含む。前記利用可能チャンネル・リストは、良好チャンネルだけを含む。
【0007】
具体的な実施形態では、誤り率に基づく測定及び空間占有率の測定に基づき、チャンネルを判定することにより、前記チャンネル・リストを作成する。チャンネルの誤り率を得るためのデータが送信されたとき、前記誤り率に基づく測定を行う。データ送信リンクが割り当てられていないタイムスロットで前記空間占有率の測定を行い、各ノードは、前記共用周波数ホッピング・パターン内の全てのチャンネルにわたって、1回以上の空きチャンネル判定(CCA)を実行して、チャンネル毎に前記空きチャンネル判定(CCA)がビジー(busy)の回数をカウントし、前記チャンネルの空間占有率に関係する干渉の統計的指標を得る。あるチャンネルについて、前記誤り率に基づく測定及び前記空間占有率の測定の一方又は両方が前記チャンネルの不良を示した場合、前記チャンネルを不良チャンネルとし、そうでない場合、前記チャンネルを良好チャンネルとする。前記誤り率を、パケット誤り率、ビット誤り率及びリンク品質インジケータからなるグループから選択する。測定された無線信号強度インジケータ(RSSI)がスレッショルド値よりも大である場合、前記CCAはビジーであり、前記スレッショルド値は、予め設定した固定スレッショルド値、又は前記CCAを実行する前記ノードの受信機と通信を試みる送信機からの受信信号パワーに応じて変化する可変スレッショルド値の一方である。
【0008】
本発明の別の特徴は、互いに通信する送信ノードとターゲット・ノードとを含む複数のノードを有する無線ネットワーク・システムにおける送信ノードに関する。前記送信ノードは、メイン送信機及びメイン受信機を有するメイントランシーバと、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを有するコントローラとを備える。各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含む。前記メイントランシーバは、他のノードのメイントランシーバと一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する。前記コントローラは、前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、前記メイントランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記メイン送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、前記メイン送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、前記メイン送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、前記メイン送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成されるチャンネル設定モジュールを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記送信ノードは、サブ送信機及びサブ受信機を含むサブトランシーバを更に備える。前記メイントランシーバは、前記システムの他のノードのメイントランシーバと前記共用周波数ホッピング・パターンを共用する。前記サブトランシーバは、前記システムの他のノードのサブトランシーバとオフセット周波数ホッピング・パターンを共用し、前記オフセット周波数ホッピング・パターンは、前記メイントランシーバの前記共用周波数ホッピング・パターンからオフセットしている。前記メイントランシーバ及び前記サブトランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信する。前記コントローラの前記チャンネル設定モジュールは、前記送信ノードにおいて、前記オフセット周波数ホッピング・パターンから、前記サブトランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記サブ送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、前記サブ送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記オフセット周波数ホッピング・パターンから前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、前記サブ送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、前記サブ送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成される。前記サブ送信機は、前記次の割当タイムスロットの到達を待ち、前記次の割当タイムスロットで前記送信ノードから前記ターゲット・ノードにデータを送信する。
【0010】
本発明の別の特徴は、互いに通信する送信ノードとターゲット・ノードとを含む複数のノードを有する無線ネットワーク・システムにおける送信ノードに関する。前記送信ノードは、各々が送信機及び受信機を有する複数のトランシーバと、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを有するコントローラとを備える。各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含む。前記トランシーバは、各々が他のノードの対応するトランシーバと一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する。前記コントローラは、前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、前記複数のトランシーバのうちの一つの送信機を有する一つのトランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記一つの送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、前記一つの送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、前記一つの送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、前記一つの送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成されるチャンネル設定モジュールを含む。前記複数のトランシーバは、互いにオフセットした周波数ホッピング・パターンを有する。前記トランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信する。
【0011】
具体的な実施形態について次の発明の詳細な説明をみれば、本発明の上記及びそれ以外の特徴ならびに効果は、当業者にとって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】簡略化したフレーム構造及びホッピング・パターンのタイムスロット・チャンネル・ホッピングの割当の一例を示す。
【0013】
【図2】ブルートゥース用の適応型周波数ホッピング・システムの動作フロー・チャートである。
【0014】
【図3】本発明の一実施形態によるタイムスロットを採用したネットワークにおける適応型周波数ホッピングの一例を示す。
【0015】
【図4】本発明の一実施形態によるノード又はアクセス・ポイントに含まれる通信デバイスのブロック図を示す。
【0016】
【図5】図4の通信デバイスにおける典型的な通信フローを示すフロー・チャートである。
【0017】
【図6】図4の通信デバイスにおけるチャンネル設定機能の構造の一例を示す。
【0018】
【図7】チャンネル設定機能のフロー・チャートの一例を示す。
【0019】
【図8】チャンネル・リスト・テーブルの一例を示す。
【0020】
【図9】代りのチャンネルの計算の一例を示す。
【0021】
【図10】測定結果及びチャンネルの判定の一例を示す。
【0022】
【図11】本発明の一実施形態によるマルチチャンネル通信ノードを示す。
【0023】
【図12】マルチチャンネル周波数ホッピング・パターンの一例を示す。
【0024】
【図13】提案する適応型周波数ホッピング(AFH)の効果及びAFHによるマルチチャンネル通信の効果を示す一定の干渉状態下でのシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
次の発明の詳細な説明では、本開示の一部を形成する添付図面を参照する。添付図面は、発明を限定するためではなく発明を説明するために、本発明を実施した実施形態を示す。図面中のいくつかの図にわたって、同じ番号は、実質的に類似するコンポーネントを表わす。更に、次の発明の詳細な説明は、以下に説明し図示する種々の実施形態を提示するが、本発明は、ここで説明し図示する実施形態に限定されるものではなく、当業者に知られているか、知られるようになる他の実施形態にも拡張できることに注意すべきである。本明細書における「一実施形態」、「この実施形態」又は「これらの実施形態」の記載は、実施形態に関連して説明された具体的な特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味し、本明細書の種々の箇所におけるこれらのフレーズの記載の全てが必ずしも同じ実施形態を指すことを意味しない。更に、次の発明の詳細な説明において、本発明の完全な理解のために、種々の具体的な細部が説明される。しかし、本発明を実施するためにこれらの具体的な細部の全てを必要としないことは、当業者には明らかである。他方、本発明を不必要に不明瞭にしないよう、周知の構造、材料、回路、プロセス及びインターフェースについては、詳細には説明せず、及び/又はブロック図の形式で示す。
【0026】
更に、次の発明の詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータのアルゴリズム及び動作の象徴的表現(Symbolic Representations)を用いて表わされる。これらのアルゴリズムの記載及び象徴的表現は、データ処理技術の当業者が新しいアイデアのエッセンスを他の当業者に最も効果的に伝えるために用いる手段である。アルゴリズムとは、所望の最終ステート、すなわちある結果に導く一連の定義されたステップである。本発明では、実行されるステップは、具体的な結果を得るために具体的な量の物理的操作を必要とする。通常、必ずではないが、これらの量は、記憶、転送、結合、比較その他の方法で操作できる電気的若しくは磁気的な信号又は命令の形式をとる。これらの信号をビット、値、要素、シンボル、キャラクター、ターム、番号、命令等ということが、主に一般的用法であるという理由から、時には、便利であることが知られている。しかし、これら及び類似の用語は、全て適当な物理量に関連付けるべきであり、これらの量に適用される単に便宜的なラベルにすぎないことを念頭に入れておくべきである。次の説明から明らかなように、当然、特に明記しないかぎり、発明の詳細な説明全体にわたり、「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「決定」、「ディスプレイ」等の用語を用いた説明は、コンピュータ・システムのレジスタ及びメモリ内の物理(電子的)量として表わされるデータを操作し、コンピュータ・システムのメモリ、レジスタその他の情報記憶装置、伝送デバイス又はディスプレイ・デバイス内の物理量として同様に表わされる他のデータに変換するコンピュータ・システムその他の情報処理デバイスの動作及びプロセスを含むことができる。
【0027】
本発明は、ここで説明する動作を実行するための装置にも関する。この装置は、必要な目的のために特別に構成してもよいし、一つ以上のコンピュータ・プログラムによって選択的に動作されるか、又は再構成される一つ以上の汎用コンピュータを含んでもよい。このようなコンピュータ・プログラムは、光ディスク、磁気ディスク、リードオンリー・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、ソリッド・ステート・デバイス及びドライブその他の電子情報を記憶するのに適した任意のタイプの媒体等のコンピュータ読取可能記憶媒体に記憶してよい。ここで説明するアルゴリズム及びディスプレイは、任意の特定のコンピュータその他の装置に固有のものではない。この教示に従い、プログラム及びモジュールと共に種々の汎用システムを使用してもよいし、所望の方法のステップを実行するのに、より特殊な装置を構築することが便利かもしれない。更に、本発明について特定のプログラム言語を参照しては説明しない。当然、ここで教示する本発明を実施するのに、種々のプログラム言語を使用してよい。プログラム言語の命令は、一つ以上の処理デバイス、例えば、中央処理ユニット(CPU)、プロセッサ又はコントローラによって実行してよい。
【0028】
以下により詳細に説明するように、本発明の実施形態は、信頼性のある通信を可能にするより低コストかつより低複雑度の大規模ネットワークに適した分散適応型周波数ホッピングのための装置、方法及びコンピュータ・プログラムを提供する。
【0029】
ISA100.11aシステムの簡単な説明
【0030】
ISA100.11aは、プロセス制御及び関連するアプリケーション用の無線システムに特定され、OSI標準モデルにより動作する。この規格では、メッシュ・ネットワークにおいてタイムスロット・チャンネル・ホッピング・メカニズムがデータ・リンク層として採用される。このようなメカニズムでは、二つのノード間の各リンクに一つのタイムスロットが割り当てられる。更に、図1に一例として示されるように、送信周波数チャンネルは、タイムスロット毎にホッピングする。タイムスロット・チャンネル・ホッピング・コンセプトの説明を容易にするために、図1のフレーム構造及びホッピング・パターンは簡略化されている。上の表は、各フレームが5つのタイムスロットを含むフレーム構造を示す。第1行は、各タイムスロットへの割当リンクを示し、第2行は、送信周波数チャンネルを示す。この例は、{0,1,2,3,4,5}の共用周波数ホッピング・パターンを用いる。このケースでは、ノード#1からアクセス・ポイントAPへの通信、すなわちリンクAのホッピング・パターンは、{0,5,4,3,2,1}としなければならない。このシステムは、元のホッピング・パターンからオフセットした別の周波数ホッピング・パターンと共に、マルチフレーム構造を用いてもよい。このようなシステムでは、コンテンション(contention)を生じることなく、一つのタイムスロット内で多数の通信が可能である。このシステムは、WiFiシステム等の同じ周波数バンドを有する別の無線システムからの干渉の影響を大きく受ける。「ISA100.11a−2009、ISA規格、産業自動化用の無線システム:プロセス制御及び関連するアプリケーション用の無線システム、2009年10月」を参照されたい。
【0031】
ブルートゥース用の適応型周波数ホッピング
【0032】
特許文献1には、特にブルートゥース・システム用のオーバーレイ適応型周波数ホッピング・アプローチの開示がある。このコンセプトは、最初に選択されたホッピング周波数のチャンネル状態の特性が不良である場合、カーネル(Kernel)は、最初に選択されたホッピング周波数をチャンネル状態の特性が良好な代りのホッピング周波数にマッピングする。図2は、特許文献1のブルートゥース用の適応型周波数ホッピング・システムの動作フロー・チャートである。このシステムは、GP FHカーネルを実行し(ステップ510)、得られたチャンネルが良好チャンネル・リストにあるかどうかを決定する(ステップ530)。YESであれば、システムは、得られたチャンネルを選択し、出力する(ステップ540)。NOであれば、システムは、良好チャンネル・リストから代りのチャンネルを選択し、出力する(ステップ550)。しかし、このメカニズムは、基本的にはポイントツーポイント通信のためのものであり、時間分割多重アクセス・システム又は適応型周波数ホッピングのネットワーク管理全体のためのメカニズムの開示はない。すなわち、前に説明したように、タイムスロット周波数ホッピングを採用する産業用の無線システムでは、多数のノードが一つの周波数ホッピング・シーケンスで通信し各ノードのチャンネル状態が異なるため、このメカニズムしか使用しないシステムは動作しない。したがって、特許文献1には、大規模ネットワークにおいて、チャンネル状態が異なるこのような多数のノードを扱うのに必要なメカニズムについての開示はない。
【0033】
周波数チャンネルの判定及び選択
【0034】
適応型周波数ホッピングのための周波数チャンネルの判定及び選択には、チャンネル状態を測定するためのメカニズムが必要である。特許文献2には、RSSI(Radio Signal Strength Indicator:無線信号強度インジケータ)を測定する方法の開示がある。更に、RSSI測定とパケット/ビット誤り率測定とを組み合わせて使用することの開示がある。WiFi信号等の干渉信号を考慮すると、無線信号が常に空中に発生されているとは言えないので、空間占有率等の統計的測定がより重要である。このような意味において、パケット誤り率は、チャンネルの判定に適当な指標である。しかし、このようなシステムにおけるチャンネルの判定のために全てのチャンネルにわたる十分な測定サンプルを収集するには、長い時間を要する傾向がある。このため干渉状態が大幅に変化したときに性能が劣化する。
【0035】
A.タイムスロット方式を採用した無線ネットワークにおける適応型周波数ホッピング
【0036】
上記問題を解決するために、我々は分散適応型周波数ホッピング・ネットワークを提案する。図3に、図1の変形バージョンである本発明の一実施形態によるタイムスロット方式を採用したネットワークにおける適応型周波数ホッピングの一例を示す。全てのノード及びAP(アクセス・ポイント)は、これまで説明したような共用スーパー・フレームを有する。更に、全てのノード及びAPは、スーパー・フレーム構造のための一つの周波数ホッピング・パターンを共用する。図3の例の共用ホッピング・パターンは、{0,1,2,3,4,5}である。
【0037】
図3に、リンク毎のチャンネル・リストも示す。例えば、測定結果として、リンクAは、{3,4,5}の利用可能チャンネル・リスト及び{0,1,2}の不良チャンネル・リストを有する。これらのリストは、リンクAに関連するコミニュケータ(Communicators)であるノード#1とAPとの間で共用される。フレーム#1の第1タイムスロットでは、共用ホッピング・チャンネルは、リンクAの不良チャンネル・リストにあるチャンネル0である。このように、ノード#1は、チャンネル0の代わりに、利用可能チャンネル・リストから選択されたチャンネル3でデータを送信する。APも同じように利用可能チャンネル・リストからチャンネル3を選択する。フレーム#1の4番目のタイムスロットでは、共用ホッピング・チャンネルは、リンクDの不良チャンネル・リストにないチャンネル3である。このケースでは、ノード#3は、チャンネル3でデータを送信し、ノード#1は、同じチャンネルでデータを待つ。このように、全てのリンクで同じプロセスが実行される。
【0038】
この例とは異なり、利用可能チャンネル・リストは、良好チャンネルだけを含むとは限らない。このことは、利用可能チャンネル・リストは不良チャンネルを含むことがあり得ることを意味する。不良チャンネルを含む場合、ノードは、不良チャンネルの変化する状態を知って、後で、不良チャンネルが良好な状態となった場合、このチャンネルを再利用できる。
【0039】
B.タイムスロット方式を採用した無線ネットワークにおける適応型周波数ホッピング装置
【0040】
1)通信デバイス
【0041】
図4は、本発明の一実施形態によるノード又はアクセス・ポイントに含まれる通信デバイスのブロック図を示す。図4の各ブロックは、本発明の分散適応型周波数ホッピングを実行するのに採用された無線通信デバイスの機能ユニットである。通信デバイスは、トランシーバとコントローラとを含む。トランシーバは、空中に無線信号を送信する送信機(Tx)と、空中から無線信号を受信する受信機(Rx)とを含む。トランシーバは、送受信用の周波数チャンネルについてはコントローラによって構成される。
【0042】
コントローラは、管理モジュールと、チャンネル設定モジュールと、チャンネル・テーブルと、MAC/DLモジュールとを含む。コントローラのMAC/DL機能は、無線リンクの媒体アクセス制御層と上位層とを取り扱う。管理機能は通信全てにわたる構成及び管理に関与する。図5は、通信デバイスにおける典型的な通信フローを示す。まず最初に、ステップ502において、次の割当タイムスロットの構成が処理される。この機能の詳細については後述する。ステップ504において、デバイスは、次の割当タイムスロットを待つ。ステップ506において、割当タイムスロットに到達すると、デバイスは、データがあればその送信を試みるか、又は他のノードが送信したデータを待つ。一旦、このタイムスロットで全ての通信が実行されると、次の割当タイムスロットのチャンネル構成が再び処理される。コントローラは、チャンネル設定機能及びチャンネル・テーブルも有する。チャンネル・テーブルは、少なくとも共用周波数ホッピング・パターン及びコントローラ自身のデバイスが通信できるいくつかのノードのチャンネル・リストを含む。チャンネル・リストは、チャンネル状態の情報を含む。
【0043】
図6は、図4の通信デバイスにおけるチャンネル設定機能の構造の一例を示す。図7は、図5の次の割当タイムスロットを構成するためのステップ502に対応するチャンネル設定機能のフロー・チャートの一例を示す。ステップ702において、チャンネル・テーブルにある共用周波数ホッピング・パターンから次の割当タイムスロットのためのカレント(Current)通信周波数チャンネルがロードされる。このことは、図6の入力としてタイムスロット番号及びフレーム番号、並びにホッピング・パターン・テーブルを有する「カレント・チャンネル」ブロックが示している。ステップ704において、チャンネル・テーブルから、コントローラ自身のデバイスが通信を試みる相手のターゲット・ノードのチャンネル・リストがロードされる。このことは、図6の入力としてターゲット・ノードのアドレス及びチャンネル・リスト・テーブルを有する「チャンネル・リスト」ブロックが示している。
【0044】
図8に、チャンネル・リスト・テーブルの一例を示す。図8に、図3の例について、ノード#1のチャンネル・リストだけを示す。より完全なテーブルであれば、他のノードのチャンネル・リストも同じように示される。このテーブルは、それぞれターゲットAP、ノード#2、ノード#3に対する三つのチャンネル・リストを示す。各チャンネル・リストは、各チャンネルに対して「良好」又は「不良」という判定がされた複数のチャンネルを有する。これらのチャンネルの判定については後述する。
【0045】
図7のステップ706(図6の「利用可能なチャンネルか?」ブロック)において決定されたチャンネル・リストに従い、カレント・チャンネルが利用可能でない場合、ステップ708において、利用可能チャンネル・リストから代りのチャンネルが選択される。一般に、利用可能チャンネル・リストは、チャンネル・リストから作成される。このことは、図6の入力としてタイムスロット番号及びフレーム番号並びにチャンネル・リストを有する「代りのチャンネル」ブロックが示している。ステップ706において、カレント・チャンネルが利用可能と決定された場合、代りのチャンネルを計算するステップ708はスキップされる。次に、ステップ710において、選択されたチャンネルがトランシーバに設定される。
【0046】
2)代りのチャンネルの例
【0047】
ここでは、代りのチャンネルの計算例を説明する。図9は、その一例を示す。前に説明したように、代りのチャンネルは、利用可能チャンネル・リストから選択される。選択方法の一例は、フレーム番号情報を利用するものである。図9から分かるように、計算機は、フレーム番号及び共用周波数ホッピング・パターンの周期並びに利用可能チャンネル・リストの長さから計算されたアドレスを有する代りのチャンネルを選択する。
【0048】
利用可能チャンネル・リストの例もいくつか存在する。それらの例の一つは、良好な状態のチャンネルだけを含むリストである。利用可能チャンネル・リストの別の例は、共用周波数ホッピング・パターンと同じリストである。この例は、「不良」チャンネルを使用することになる。しかし、不良チャンネルを使用する機会の回数は依然として少なく、代わりにデバイスは、そのチャンネルの誤り率を測定する機会を得ることができる。更に、この例のシステムでは、元のパターンからオフセットした別の周波数ホッピング・パターンを有するマルチフレーム構造が実行されるとき、利用可能チャンネル・リストが他のフレーム構造の周波数ホッピング・パターンからもオフセットしている場合、各スロットでコンテンションしない多数の通信が可能である。例えば、第1フレーム構造の共用周波数ホッピング・パターンが{0,1,2,3,4,5}であり、第2フレーム構造の共用周波数ホッピング・パターンが1のオフセットを意味する{1,2,3,4,5,0}である場合、第1フレーム構造の利用可能チャンネル・リストが{0,1,2,3,4,5}であり、1のオフセットを有する第2フレーム構造の利用可能チャンネル・リストが{1,2,3,4,5,0}であれば、コンテンションは生じない。
【0049】
C.チャンネルの判定及び選択
【0050】
AFHシステムにおけるチャンネルの判定及び選択方法は、重要な特徴である。本発明は、誤り率に基づく測定とビジーのCCAの数のカウントによる空間占有率の測定とを組み合わせて使用することを提案する。パケットが送信されるとき、誤り率に基づく測定が行われる。しかし、ある特定のチャンネルでパケットを送受信する機会の回数は、周波数ホッピング・メカニズムのため比較的少ない。このためチャンネル特性を得るための測定時間が長くなり、ダイナミックに変化する干渉状態では、性能の劣化が生じ得る。このとき、CCAメカニズムによる空間占有率の測定は、誤り率に基づく測定のこのような弱点を補う。図3に、このコンセプトを示す。図3では、各フレームの5番目のタイムスロットをCCAの測定期間に割り当てている。このスロットでは、どこもデータの送信を試みないので、全てのノードは、干渉状態だけを測定できる。このスロットでは、各ノードは、共用周波数ホッピング・パターンの全てのチャンネルにわたってCCAを行う。典型的なCCAモードは、RSSI(無線信号強度インジケータ)を測定するED(Energy Detection:エネルギー検出)である。この測定を繰り返し、チャンネル毎にCCAがビジーになる回数をカウントすることにより、チャンネルの判定のための空間占有率等の干渉の統計的指標が得られる。例えば、ある特定のチャンネルにおける所定の期間でビジーのCCAの数が所定の値を超えた場合、そのチャンネルを不良チャンネルとして判定できる。
【0051】
一般に、CCAがビジーである状態は、測定されたRSSIと所定のスレッショルド値との比較によって決定される。すなわち測定されたRSSIが、スレッショルド値よりも大であれば、CCAはビジーである。スレッショルド値は、あらかじめ決定した固定値でもよいし、受信機との通信を試みる送信機からの受信信号パワーに基づき可変としてもよい。
【0052】
典型的な誤り率に基づく測定は、パケット誤り率(PER)を測定する。PERとCCAの両方の結果を考慮して、図10の例に示されるように、最終チャンネル判定が行われる。この図は、APの測定結果及びノード#1とノード#2のチャンネル・リストを示す。この例では、ノードのチャンネル・リストは互いに異なる。更に、ビット誤り率(BER)測定又はLQI(Link Quality Indicator:リンク品質インジケータ)測定を誤り率に基づく測定として使用できる。
【0053】
D.チャンネル・リストの通知
【0054】
二つのノード間で一つのチャンネル・リストを共用するには、チャンネル・リストを一方のノードから他方のノードに通知しなければならない。チャンネル・リストを通知するための詳細なシーケンスは、当該技術分野で知られているので、ここでは説明しないが、解説のためにいくつかの例を示す。
【0055】
一つのアイデアは、実効時間(Effective Time)の情報を有するデータ・パケット又はACK/NACKパケットに将来のチャンネル・リストを挿入することである。別のアイデアは、将来のチャンネル・リストを共用するために、互いに交渉することである。例えば、交換されたチャンネル・リストを有する受信機がその通知と共にパケットを送信機に送信する。送信機は、一旦この情報を受信すると、この通知の受信確認を送信する。別のアイデアは、システム・マネージャーがシステムの全てのノードの測定結果を収集し、全てのリンクのチャンネル・リストを作成するものである。次に、システム・マネージャーは、全てのノードにチャンネル・リストを通知する。
【0056】
E.マルチチャンネルの実施形態
【0057】
信頼性を更に改善するために、マルチチャンネル通信コンセプトを使用できる。図11は、提案するマルチチャンネル通信ノードの一実施形態を示す。この実施形態は、二つ以上のトランシーバを含み、両方のトランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信する。
【0058】
図12は、マルチチャンネル周波数ホッピング・パターンの一例を示す。サブトランシーバの周波数ホッピング・パターンは、メイントランシーバのものからオフセットしている。説明を容易にするために、この図は、AFH動作を含まない。AFH動作により、前に説明したメカニズムをトランシーバのいずれか又は両方に適用できる。このマルチチャンネル・コンセプトを使用することによって、トランシーバの簡略化を犠牲にして信頼性を大幅に改善できる。
【0059】
図13は、提案するAFHの効果及びAFHによるマルチチャンネル通信の効果を示し、ある特定の干渉状態下でのシミュレーション結果をプロットしたものである。単一チャンネルの例に対してAFHを使用するとき、及びマルチチャンネルの例に対してAFHを使用するときに、パケット損失レートが低下する。
【0060】
F.本発明の利点
【0061】
本発明は、信頼性のある通信を可能にするため、より低コストかつより低複雑度の大規模ネットワークのための適応型周波数ホッピング・メカニズムを提供する。一実施形態では、ネットワークのノードは、一つ以上の周波数ホッピング・パターンを共用し、互いに通信を試みる二つのノードは、チャンネル状態を含むチャンネル・リストを共用する。本発明の二つの主な利点は、改善された信頼性及び高速測定である。信頼性を改善する適応型周波数チャンネル・メカニズムを、低コストかつ低複雑度のタイムスロット周波数ホッピングに基づくネットワーク及びメッシュ・ネットワークに組み込むことができる。図13には、信頼性の改善が示されている。更に、例えば、誤り率に基づく測定と空間占有率の測定とを組み合わせて使用することにより、上記のチャンネルの判定及び選択のための信頼性のある高速チャンネル状態測定を実現できる。
【0062】
本発明による無線システムは、プラント/工場の自動化、ビルの自動化、環境監視等の信頼性を必要とする産業用の無線アプリケーションに利用できる。典型的なアプリケーションの一つは監視アプリケーションである。典型的な監視アプリケーションでは、ターミナル・ノードは、センサ及び提案するトランシーバを有し、測定データをセンターに送る。別のアプリケーションは制御アプリケーションである。典型的な制御アプリケーションでは、ターミナル・ノードは、無線通信によって送信された信号により制御されるアクチュエータも有する。
【0063】
本発明を実施するコンピュータ及び記憶システムは、上記発明の実施に使用されるモジュール、プログラム及びデータ構造の記憶及び読取が可能な公知のI/Oデバイス(例えば、CD及びDVDドライブ、フロッピー(登録商標)・ディスク・ドライブ、ハード・ドライブ)も有することができる。これらのモジュール、プログラム及びデータ構造は、このようなコンピュータ読取可能媒体上に符号化できる。例えば、本発明のデータ構造は、本発明で使用されるプログラムが常駐している一つ以上のコンピュータ読取可能媒体とは独立に、コンピュータ読取可能媒体上に記憶できる。システムのコンポーネントは、デジタル・データ通信、例えば、任意の形式又は媒体の通信ネットワークにより、相互接続できる。通信ネットワークの例としては、ローカル・エリア・ネットワーク、インターネット等のワイド・エリア・ネットワーク、無線ネットワーク、記憶エリア・ネットワーク等が挙げられる。
【0064】
発明の詳細な説明において、本発明を完全に理解できるように説明するために多数の細部について説明した。しかし、本発明を実施するのにこれらの具体的な細部の全てが必要となるわけではないことは当業者に明らかである。また、本発明は、通常、フロー・チャート、フロー図、構造図又はブロック図に描かれるプロセスとして説明できるとも言える。動作がフロー・チャートにシーケンシャルなプロセスとして説明されていても、動作の多くは並列又は同時に実行することができる。また、動作の順序は変更してもよい。
【0065】
当該技術分野で知られているように、上記動作は、ハードウェア、ソフトウェア、又はソフトウェアとハードウェアのある組み合わせにより実行できる。本発明の実施形態の種々の特徴は、回路及び論理デバイス(ハードウェア)を使って実現し、他の特徴は、プロセッサに実行させるなら、本発明の実施形態を実施するための方法をプロセッサに実行させるマシン読取可能媒体上に記憶された命令(ソフトウェア)を使って実現してよい。更に、本発明のいくつかの実施形態は、ハードウェアのみにより実施してよいし、他の実施形態はソフトウェアのみで実施してよい。更に、説明した種々の機能は、単一ユニットで実施できるか、又は種々の方法で多数の部品にわたって分散させることもできる。ソフトウェアで実施するとき、コンピュータ読取可能媒体に記憶された命令に基づき、汎用コンピュータ等のプロセッサによってこれらの方法を実行してもよい。必要なら、命令は、圧縮フォーマット及び/又は暗号化フォーマットで媒体に記憶できる。
【0066】
以上から、本発明は、タイムスロット方式を採用した無線ネットワークにおける適用型周波数ホッピングのための方法、装置及びコンピュータ読取可能媒体に記憶されるプログラムを提供することが明らかなる。更に、具体的な実施形態を図示し本明細書において説明したが、開示した具体的な実施形態を同じ目的を達成すると予想される任意の構成に代えてもよいことは当業者にとって当然である。この開示は、本発明の任意の、かつ全ての適用例又は変形例をカバーすることを意図したものであり、当然、特許請求の範囲で使用する用語は、本発明を本明細書に開示された具体的な実施形態のみに限定するものと解してはならない。むしろ、本発明の範囲は、もっぱら特許請求の範囲によって決定すべきであり、特許請求の範囲の解釈について確立された原則に従い、このような特許請求の範囲に認められる均等物の全ての範囲を含むと解すべきである。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、大まかには、無線ネットワークに関し、より具体的には、タイムスロット方式を採用した無線ネットワークにおける適応型周波数ホッピングに関する。
【背景技術】
【0002】
ISA100.11a又はWirelessHART等の既存の産業用の無線システムは、タイムスロット周波数ホッピング・アプローチ及びメッシュ・ネットワーク技術により信頼性のある無線通信が可能である。しかし、これらの無線システムは、WiFi又はブルートゥースと同じ2.4GHzの周波数バンドを使用するので、WiFi又はブルートゥース等の他の無線システムからの干渉の影響を大きく受けることがある。WiFiは、ブロードバンド信号を使用しているので、WiFiからの干渉の影響が、最も重大である。このような他の無線システムからの干渉の影響を緩和するために、測定されたチャンネル状態に基づき送信周波数チャンネルをダイナミックに変更する適応型周波数ホッピング(AFH)アプローチがこれまで提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,035,314号
【特許文献2】米国公開特許出願第2005/0008064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような産業用の無線システムにAFHを適用すると、次の問題が生じる。第1の問題は、大規模無線ネットワークに適用することに関する。通信範囲が比較的大きく、システム内で互いに通信するノードが多数存在するので、各ノードが利用可能なチャンネルは異なる。このため、各トランシーバは、全ての周波数ホッピング・パターンを有していなければならないので、ネットワークの複雑度が高く、各デバイスのメモリ・サイズが大きくなる。第2の問題は、信頼性のある高速干渉検出に関する。信頼性のある測定を行うには、干渉信号を統計的に検出しなければならない。このようにチャンネル状態を判定するには、長い測定時間が必要である。このことは、干渉が大幅に増えると、ネットワークの性能が低下することを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(本発明の概要)
本発明の実施形態は、信頼性のある通信を可能にする低コストかつ低複雑度の大規模ネットワークに適した分散適応型周波数ホッピング・システムを提供する。具体的な実施形態では、システムの複数のノード間で一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、互いに通信する二つのノード間毎に一つのチャンネル・リストを共用する。送信機が割当タイムスロットにおいて共用周波数ホッピング・パターンの割当チャンネルで受信機へのパケット送信を試みるとき、このチャンネルが不良チャンネルである場合、送信機は、送信チャンネルを、その受信機のために共用チャンネル・リストから選択された代りのチャンネルに変更する。受信機も同じように選択されたチャンネルでパケットを待つ。更に、チャンネル状態を知るために、誤り率に基づく測定とCCA(Clear Channel Assessment:空きチャンネル判定)に基づく測定との両方を利用する。CCAメカニズムを使用して、干渉信号の空間占有率(Space Occupancy)を測定する。干渉を検出するCCA測定用にタイムスロットが一つ割り当てられる。このタイムスロットでは、どのノードもデータを送信しない。このタイムスロットでは、システムのノードは、周波数ホッピング・パターンの全てのチャンネルにわたって干渉信号の強度を測定し、これらの強度と所定のスレッショルドとを比較する。ノードは、数回の測定を通して強度がスレッショルドよりも大となった測定回数をカウントすることにより、チャンネル状態を判定する。したがって、信頼性を改善する適応型周波数チャンネル・メカニズムは、低コストかつ低複雑度のタイムスロット周波数ホッピングに基づくネットワーク及びメッシュ・ネットワークに組み込むことができる。
本発明の一つの特徴は、複数のノードを有する無線ネットワーク・システムに関し、前記複数のノードは、互いに通信する送信ノード及びターゲット・ノードを含み、前記複数のノード間で一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する無線ネットワーク・システムにおいて、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを提供するステップであって、各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含む前記ステップと、前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、次の割当タイムスロットのチャンネルを選択するステップと、前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記送信ノードが送信する先の前記ターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択するステップと、前記選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックするステップと、前記選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定するステップと、前記選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するステップとを含む方法である。
【0006】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記次の割当タイムスロットが到達するのを待つステップと、前記次の割当タイムスロットにおいて、前記送信ノードから前記ターゲット・ノードへデータを送信するステップとを更に含む。前記共用周波数ホッピング・パターンの前記タイムスロットは、一連のフレーム内に配置されており、各フレームは、フレーム番号を有し、複数のタイムスロットを含み、前記代りのチャンネルを計算するステップは、前記選択されたチャンネル・リストから作成された利用可能チャンネル・リストから代りのチャンネルを選択するステップを含む。前記代りのチャンネルを選択するステップは、F(x,y)=[x/y]+mod(x,y)(ここで[a]は、「a」を超えない最大の整数であり、mod(x,y)は、xをyで割った余りである。)に従って、フレーム番号(x)、前記共用周波数ホッピング・パターンの周期(y)、及びN個の利用可能なチャンネルのリストである利用可能チャンネル・リストの長さ(N)から前記代りのチャンネルのアドレスを計算することを含む。前記利用可能チャンネル・リストは、良好チャンネルだけを含む。
【0007】
具体的な実施形態では、誤り率に基づく測定及び空間占有率の測定に基づき、チャンネルを判定することにより、前記チャンネル・リストを作成する。チャンネルの誤り率を得るためのデータが送信されたとき、前記誤り率に基づく測定を行う。データ送信リンクが割り当てられていないタイムスロットで前記空間占有率の測定を行い、各ノードは、前記共用周波数ホッピング・パターン内の全てのチャンネルにわたって、1回以上の空きチャンネル判定(CCA)を実行して、チャンネル毎に前記空きチャンネル判定(CCA)がビジー(busy)の回数をカウントし、前記チャンネルの空間占有率に関係する干渉の統計的指標を得る。あるチャンネルについて、前記誤り率に基づく測定及び前記空間占有率の測定の一方又は両方が前記チャンネルの不良を示した場合、前記チャンネルを不良チャンネルとし、そうでない場合、前記チャンネルを良好チャンネルとする。前記誤り率を、パケット誤り率、ビット誤り率及びリンク品質インジケータからなるグループから選択する。測定された無線信号強度インジケータ(RSSI)がスレッショルド値よりも大である場合、前記CCAはビジーであり、前記スレッショルド値は、予め設定した固定スレッショルド値、又は前記CCAを実行する前記ノードの受信機と通信を試みる送信機からの受信信号パワーに応じて変化する可変スレッショルド値の一方である。
【0008】
本発明の別の特徴は、互いに通信する送信ノードとターゲット・ノードとを含む複数のノードを有する無線ネットワーク・システムにおける送信ノードに関する。前記送信ノードは、メイン送信機及びメイン受信機を有するメイントランシーバと、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを有するコントローラとを備える。各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含む。前記メイントランシーバは、他のノードのメイントランシーバと一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する。前記コントローラは、前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、前記メイントランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記メイン送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、前記メイン送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、前記メイン送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、前記メイン送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成されるチャンネル設定モジュールを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記送信ノードは、サブ送信機及びサブ受信機を含むサブトランシーバを更に備える。前記メイントランシーバは、前記システムの他のノードのメイントランシーバと前記共用周波数ホッピング・パターンを共用する。前記サブトランシーバは、前記システムの他のノードのサブトランシーバとオフセット周波数ホッピング・パターンを共用し、前記オフセット周波数ホッピング・パターンは、前記メイントランシーバの前記共用周波数ホッピング・パターンからオフセットしている。前記メイントランシーバ及び前記サブトランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信する。前記コントローラの前記チャンネル設定モジュールは、前記送信ノードにおいて、前記オフセット周波数ホッピング・パターンから、前記サブトランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記サブ送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、前記サブ送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記オフセット周波数ホッピング・パターンから前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、前記サブ送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、前記サブ送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成される。前記サブ送信機は、前記次の割当タイムスロットの到達を待ち、前記次の割当タイムスロットで前記送信ノードから前記ターゲット・ノードにデータを送信する。
【0010】
本発明の別の特徴は、互いに通信する送信ノードとターゲット・ノードとを含む複数のノードを有する無線ネットワーク・システムにおける送信ノードに関する。前記送信ノードは、各々が送信機及び受信機を有する複数のトランシーバと、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを有するコントローラとを備える。各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含む。前記トランシーバは、各々が他のノードの対応するトランシーバと一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する。前記コントローラは、前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、前記複数のトランシーバのうちの一つの送信機を有する一つのトランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記一つの送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、前記一つの送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、前記一つの送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、前記一つの送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成されるチャンネル設定モジュールを含む。前記複数のトランシーバは、互いにオフセットした周波数ホッピング・パターンを有する。前記トランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信する。
【0011】
具体的な実施形態について次の発明の詳細な説明をみれば、本発明の上記及びそれ以外の特徴ならびに効果は、当業者にとって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】簡略化したフレーム構造及びホッピング・パターンのタイムスロット・チャンネル・ホッピングの割当の一例を示す。
【0013】
【図2】ブルートゥース用の適応型周波数ホッピング・システムの動作フロー・チャートである。
【0014】
【図3】本発明の一実施形態によるタイムスロットを採用したネットワークにおける適応型周波数ホッピングの一例を示す。
【0015】
【図4】本発明の一実施形態によるノード又はアクセス・ポイントに含まれる通信デバイスのブロック図を示す。
【0016】
【図5】図4の通信デバイスにおける典型的な通信フローを示すフロー・チャートである。
【0017】
【図6】図4の通信デバイスにおけるチャンネル設定機能の構造の一例を示す。
【0018】
【図7】チャンネル設定機能のフロー・チャートの一例を示す。
【0019】
【図8】チャンネル・リスト・テーブルの一例を示す。
【0020】
【図9】代りのチャンネルの計算の一例を示す。
【0021】
【図10】測定結果及びチャンネルの判定の一例を示す。
【0022】
【図11】本発明の一実施形態によるマルチチャンネル通信ノードを示す。
【0023】
【図12】マルチチャンネル周波数ホッピング・パターンの一例を示す。
【0024】
【図13】提案する適応型周波数ホッピング(AFH)の効果及びAFHによるマルチチャンネル通信の効果を示す一定の干渉状態下でのシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
次の発明の詳細な説明では、本開示の一部を形成する添付図面を参照する。添付図面は、発明を限定するためではなく発明を説明するために、本発明を実施した実施形態を示す。図面中のいくつかの図にわたって、同じ番号は、実質的に類似するコンポーネントを表わす。更に、次の発明の詳細な説明は、以下に説明し図示する種々の実施形態を提示するが、本発明は、ここで説明し図示する実施形態に限定されるものではなく、当業者に知られているか、知られるようになる他の実施形態にも拡張できることに注意すべきである。本明細書における「一実施形態」、「この実施形態」又は「これらの実施形態」の記載は、実施形態に関連して説明された具体的な特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味し、本明細書の種々の箇所におけるこれらのフレーズの記載の全てが必ずしも同じ実施形態を指すことを意味しない。更に、次の発明の詳細な説明において、本発明の完全な理解のために、種々の具体的な細部が説明される。しかし、本発明を実施するためにこれらの具体的な細部の全てを必要としないことは、当業者には明らかである。他方、本発明を不必要に不明瞭にしないよう、周知の構造、材料、回路、プロセス及びインターフェースについては、詳細には説明せず、及び/又はブロック図の形式で示す。
【0026】
更に、次の発明の詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータのアルゴリズム及び動作の象徴的表現(Symbolic Representations)を用いて表わされる。これらのアルゴリズムの記載及び象徴的表現は、データ処理技術の当業者が新しいアイデアのエッセンスを他の当業者に最も効果的に伝えるために用いる手段である。アルゴリズムとは、所望の最終ステート、すなわちある結果に導く一連の定義されたステップである。本発明では、実行されるステップは、具体的な結果を得るために具体的な量の物理的操作を必要とする。通常、必ずではないが、これらの量は、記憶、転送、結合、比較その他の方法で操作できる電気的若しくは磁気的な信号又は命令の形式をとる。これらの信号をビット、値、要素、シンボル、キャラクター、ターム、番号、命令等ということが、主に一般的用法であるという理由から、時には、便利であることが知られている。しかし、これら及び類似の用語は、全て適当な物理量に関連付けるべきであり、これらの量に適用される単に便宜的なラベルにすぎないことを念頭に入れておくべきである。次の説明から明らかなように、当然、特に明記しないかぎり、発明の詳細な説明全体にわたり、「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「決定」、「ディスプレイ」等の用語を用いた説明は、コンピュータ・システムのレジスタ及びメモリ内の物理(電子的)量として表わされるデータを操作し、コンピュータ・システムのメモリ、レジスタその他の情報記憶装置、伝送デバイス又はディスプレイ・デバイス内の物理量として同様に表わされる他のデータに変換するコンピュータ・システムその他の情報処理デバイスの動作及びプロセスを含むことができる。
【0027】
本発明は、ここで説明する動作を実行するための装置にも関する。この装置は、必要な目的のために特別に構成してもよいし、一つ以上のコンピュータ・プログラムによって選択的に動作されるか、又は再構成される一つ以上の汎用コンピュータを含んでもよい。このようなコンピュータ・プログラムは、光ディスク、磁気ディスク、リードオンリー・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、ソリッド・ステート・デバイス及びドライブその他の電子情報を記憶するのに適した任意のタイプの媒体等のコンピュータ読取可能記憶媒体に記憶してよい。ここで説明するアルゴリズム及びディスプレイは、任意の特定のコンピュータその他の装置に固有のものではない。この教示に従い、プログラム及びモジュールと共に種々の汎用システムを使用してもよいし、所望の方法のステップを実行するのに、より特殊な装置を構築することが便利かもしれない。更に、本発明について特定のプログラム言語を参照しては説明しない。当然、ここで教示する本発明を実施するのに、種々のプログラム言語を使用してよい。プログラム言語の命令は、一つ以上の処理デバイス、例えば、中央処理ユニット(CPU)、プロセッサ又はコントローラによって実行してよい。
【0028】
以下により詳細に説明するように、本発明の実施形態は、信頼性のある通信を可能にするより低コストかつより低複雑度の大規模ネットワークに適した分散適応型周波数ホッピングのための装置、方法及びコンピュータ・プログラムを提供する。
【0029】
ISA100.11aシステムの簡単な説明
【0030】
ISA100.11aは、プロセス制御及び関連するアプリケーション用の無線システムに特定され、OSI標準モデルにより動作する。この規格では、メッシュ・ネットワークにおいてタイムスロット・チャンネル・ホッピング・メカニズムがデータ・リンク層として採用される。このようなメカニズムでは、二つのノード間の各リンクに一つのタイムスロットが割り当てられる。更に、図1に一例として示されるように、送信周波数チャンネルは、タイムスロット毎にホッピングする。タイムスロット・チャンネル・ホッピング・コンセプトの説明を容易にするために、図1のフレーム構造及びホッピング・パターンは簡略化されている。上の表は、各フレームが5つのタイムスロットを含むフレーム構造を示す。第1行は、各タイムスロットへの割当リンクを示し、第2行は、送信周波数チャンネルを示す。この例は、{0,1,2,3,4,5}の共用周波数ホッピング・パターンを用いる。このケースでは、ノード#1からアクセス・ポイントAPへの通信、すなわちリンクAのホッピング・パターンは、{0,5,4,3,2,1}としなければならない。このシステムは、元のホッピング・パターンからオフセットした別の周波数ホッピング・パターンと共に、マルチフレーム構造を用いてもよい。このようなシステムでは、コンテンション(contention)を生じることなく、一つのタイムスロット内で多数の通信が可能である。このシステムは、WiFiシステム等の同じ周波数バンドを有する別の無線システムからの干渉の影響を大きく受ける。「ISA100.11a−2009、ISA規格、産業自動化用の無線システム:プロセス制御及び関連するアプリケーション用の無線システム、2009年10月」を参照されたい。
【0031】
ブルートゥース用の適応型周波数ホッピング
【0032】
特許文献1には、特にブルートゥース・システム用のオーバーレイ適応型周波数ホッピング・アプローチの開示がある。このコンセプトは、最初に選択されたホッピング周波数のチャンネル状態の特性が不良である場合、カーネル(Kernel)は、最初に選択されたホッピング周波数をチャンネル状態の特性が良好な代りのホッピング周波数にマッピングする。図2は、特許文献1のブルートゥース用の適応型周波数ホッピング・システムの動作フロー・チャートである。このシステムは、GP FHカーネルを実行し(ステップ510)、得られたチャンネルが良好チャンネル・リストにあるかどうかを決定する(ステップ530)。YESであれば、システムは、得られたチャンネルを選択し、出力する(ステップ540)。NOであれば、システムは、良好チャンネル・リストから代りのチャンネルを選択し、出力する(ステップ550)。しかし、このメカニズムは、基本的にはポイントツーポイント通信のためのものであり、時間分割多重アクセス・システム又は適応型周波数ホッピングのネットワーク管理全体のためのメカニズムの開示はない。すなわち、前に説明したように、タイムスロット周波数ホッピングを採用する産業用の無線システムでは、多数のノードが一つの周波数ホッピング・シーケンスで通信し各ノードのチャンネル状態が異なるため、このメカニズムしか使用しないシステムは動作しない。したがって、特許文献1には、大規模ネットワークにおいて、チャンネル状態が異なるこのような多数のノードを扱うのに必要なメカニズムについての開示はない。
【0033】
周波数チャンネルの判定及び選択
【0034】
適応型周波数ホッピングのための周波数チャンネルの判定及び選択には、チャンネル状態を測定するためのメカニズムが必要である。特許文献2には、RSSI(Radio Signal Strength Indicator:無線信号強度インジケータ)を測定する方法の開示がある。更に、RSSI測定とパケット/ビット誤り率測定とを組み合わせて使用することの開示がある。WiFi信号等の干渉信号を考慮すると、無線信号が常に空中に発生されているとは言えないので、空間占有率等の統計的測定がより重要である。このような意味において、パケット誤り率は、チャンネルの判定に適当な指標である。しかし、このようなシステムにおけるチャンネルの判定のために全てのチャンネルにわたる十分な測定サンプルを収集するには、長い時間を要する傾向がある。このため干渉状態が大幅に変化したときに性能が劣化する。
【0035】
A.タイムスロット方式を採用した無線ネットワークにおける適応型周波数ホッピング
【0036】
上記問題を解決するために、我々は分散適応型周波数ホッピング・ネットワークを提案する。図3に、図1の変形バージョンである本発明の一実施形態によるタイムスロット方式を採用したネットワークにおける適応型周波数ホッピングの一例を示す。全てのノード及びAP(アクセス・ポイント)は、これまで説明したような共用スーパー・フレームを有する。更に、全てのノード及びAPは、スーパー・フレーム構造のための一つの周波数ホッピング・パターンを共用する。図3の例の共用ホッピング・パターンは、{0,1,2,3,4,5}である。
【0037】
図3に、リンク毎のチャンネル・リストも示す。例えば、測定結果として、リンクAは、{3,4,5}の利用可能チャンネル・リスト及び{0,1,2}の不良チャンネル・リストを有する。これらのリストは、リンクAに関連するコミニュケータ(Communicators)であるノード#1とAPとの間で共用される。フレーム#1の第1タイムスロットでは、共用ホッピング・チャンネルは、リンクAの不良チャンネル・リストにあるチャンネル0である。このように、ノード#1は、チャンネル0の代わりに、利用可能チャンネル・リストから選択されたチャンネル3でデータを送信する。APも同じように利用可能チャンネル・リストからチャンネル3を選択する。フレーム#1の4番目のタイムスロットでは、共用ホッピング・チャンネルは、リンクDの不良チャンネル・リストにないチャンネル3である。このケースでは、ノード#3は、チャンネル3でデータを送信し、ノード#1は、同じチャンネルでデータを待つ。このように、全てのリンクで同じプロセスが実行される。
【0038】
この例とは異なり、利用可能チャンネル・リストは、良好チャンネルだけを含むとは限らない。このことは、利用可能チャンネル・リストは不良チャンネルを含むことがあり得ることを意味する。不良チャンネルを含む場合、ノードは、不良チャンネルの変化する状態を知って、後で、不良チャンネルが良好な状態となった場合、このチャンネルを再利用できる。
【0039】
B.タイムスロット方式を採用した無線ネットワークにおける適応型周波数ホッピング装置
【0040】
1)通信デバイス
【0041】
図4は、本発明の一実施形態によるノード又はアクセス・ポイントに含まれる通信デバイスのブロック図を示す。図4の各ブロックは、本発明の分散適応型周波数ホッピングを実行するのに採用された無線通信デバイスの機能ユニットである。通信デバイスは、トランシーバとコントローラとを含む。トランシーバは、空中に無線信号を送信する送信機(Tx)と、空中から無線信号を受信する受信機(Rx)とを含む。トランシーバは、送受信用の周波数チャンネルについてはコントローラによって構成される。
【0042】
コントローラは、管理モジュールと、チャンネル設定モジュールと、チャンネル・テーブルと、MAC/DLモジュールとを含む。コントローラのMAC/DL機能は、無線リンクの媒体アクセス制御層と上位層とを取り扱う。管理機能は通信全てにわたる構成及び管理に関与する。図5は、通信デバイスにおける典型的な通信フローを示す。まず最初に、ステップ502において、次の割当タイムスロットの構成が処理される。この機能の詳細については後述する。ステップ504において、デバイスは、次の割当タイムスロットを待つ。ステップ506において、割当タイムスロットに到達すると、デバイスは、データがあればその送信を試みるか、又は他のノードが送信したデータを待つ。一旦、このタイムスロットで全ての通信が実行されると、次の割当タイムスロットのチャンネル構成が再び処理される。コントローラは、チャンネル設定機能及びチャンネル・テーブルも有する。チャンネル・テーブルは、少なくとも共用周波数ホッピング・パターン及びコントローラ自身のデバイスが通信できるいくつかのノードのチャンネル・リストを含む。チャンネル・リストは、チャンネル状態の情報を含む。
【0043】
図6は、図4の通信デバイスにおけるチャンネル設定機能の構造の一例を示す。図7は、図5の次の割当タイムスロットを構成するためのステップ502に対応するチャンネル設定機能のフロー・チャートの一例を示す。ステップ702において、チャンネル・テーブルにある共用周波数ホッピング・パターンから次の割当タイムスロットのためのカレント(Current)通信周波数チャンネルがロードされる。このことは、図6の入力としてタイムスロット番号及びフレーム番号、並びにホッピング・パターン・テーブルを有する「カレント・チャンネル」ブロックが示している。ステップ704において、チャンネル・テーブルから、コントローラ自身のデバイスが通信を試みる相手のターゲット・ノードのチャンネル・リストがロードされる。このことは、図6の入力としてターゲット・ノードのアドレス及びチャンネル・リスト・テーブルを有する「チャンネル・リスト」ブロックが示している。
【0044】
図8に、チャンネル・リスト・テーブルの一例を示す。図8に、図3の例について、ノード#1のチャンネル・リストだけを示す。より完全なテーブルであれば、他のノードのチャンネル・リストも同じように示される。このテーブルは、それぞれターゲットAP、ノード#2、ノード#3に対する三つのチャンネル・リストを示す。各チャンネル・リストは、各チャンネルに対して「良好」又は「不良」という判定がされた複数のチャンネルを有する。これらのチャンネルの判定については後述する。
【0045】
図7のステップ706(図6の「利用可能なチャンネルか?」ブロック)において決定されたチャンネル・リストに従い、カレント・チャンネルが利用可能でない場合、ステップ708において、利用可能チャンネル・リストから代りのチャンネルが選択される。一般に、利用可能チャンネル・リストは、チャンネル・リストから作成される。このことは、図6の入力としてタイムスロット番号及びフレーム番号並びにチャンネル・リストを有する「代りのチャンネル」ブロックが示している。ステップ706において、カレント・チャンネルが利用可能と決定された場合、代りのチャンネルを計算するステップ708はスキップされる。次に、ステップ710において、選択されたチャンネルがトランシーバに設定される。
【0046】
2)代りのチャンネルの例
【0047】
ここでは、代りのチャンネルの計算例を説明する。図9は、その一例を示す。前に説明したように、代りのチャンネルは、利用可能チャンネル・リストから選択される。選択方法の一例は、フレーム番号情報を利用するものである。図9から分かるように、計算機は、フレーム番号及び共用周波数ホッピング・パターンの周期並びに利用可能チャンネル・リストの長さから計算されたアドレスを有する代りのチャンネルを選択する。
【0048】
利用可能チャンネル・リストの例もいくつか存在する。それらの例の一つは、良好な状態のチャンネルだけを含むリストである。利用可能チャンネル・リストの別の例は、共用周波数ホッピング・パターンと同じリストである。この例は、「不良」チャンネルを使用することになる。しかし、不良チャンネルを使用する機会の回数は依然として少なく、代わりにデバイスは、そのチャンネルの誤り率を測定する機会を得ることができる。更に、この例のシステムでは、元のパターンからオフセットした別の周波数ホッピング・パターンを有するマルチフレーム構造が実行されるとき、利用可能チャンネル・リストが他のフレーム構造の周波数ホッピング・パターンからもオフセットしている場合、各スロットでコンテンションしない多数の通信が可能である。例えば、第1フレーム構造の共用周波数ホッピング・パターンが{0,1,2,3,4,5}であり、第2フレーム構造の共用周波数ホッピング・パターンが1のオフセットを意味する{1,2,3,4,5,0}である場合、第1フレーム構造の利用可能チャンネル・リストが{0,1,2,3,4,5}であり、1のオフセットを有する第2フレーム構造の利用可能チャンネル・リストが{1,2,3,4,5,0}であれば、コンテンションは生じない。
【0049】
C.チャンネルの判定及び選択
【0050】
AFHシステムにおけるチャンネルの判定及び選択方法は、重要な特徴である。本発明は、誤り率に基づく測定とビジーのCCAの数のカウントによる空間占有率の測定とを組み合わせて使用することを提案する。パケットが送信されるとき、誤り率に基づく測定が行われる。しかし、ある特定のチャンネルでパケットを送受信する機会の回数は、周波数ホッピング・メカニズムのため比較的少ない。このためチャンネル特性を得るための測定時間が長くなり、ダイナミックに変化する干渉状態では、性能の劣化が生じ得る。このとき、CCAメカニズムによる空間占有率の測定は、誤り率に基づく測定のこのような弱点を補う。図3に、このコンセプトを示す。図3では、各フレームの5番目のタイムスロットをCCAの測定期間に割り当てている。このスロットでは、どこもデータの送信を試みないので、全てのノードは、干渉状態だけを測定できる。このスロットでは、各ノードは、共用周波数ホッピング・パターンの全てのチャンネルにわたってCCAを行う。典型的なCCAモードは、RSSI(無線信号強度インジケータ)を測定するED(Energy Detection:エネルギー検出)である。この測定を繰り返し、チャンネル毎にCCAがビジーになる回数をカウントすることにより、チャンネルの判定のための空間占有率等の干渉の統計的指標が得られる。例えば、ある特定のチャンネルにおける所定の期間でビジーのCCAの数が所定の値を超えた場合、そのチャンネルを不良チャンネルとして判定できる。
【0051】
一般に、CCAがビジーである状態は、測定されたRSSIと所定のスレッショルド値との比較によって決定される。すなわち測定されたRSSIが、スレッショルド値よりも大であれば、CCAはビジーである。スレッショルド値は、あらかじめ決定した固定値でもよいし、受信機との通信を試みる送信機からの受信信号パワーに基づき可変としてもよい。
【0052】
典型的な誤り率に基づく測定は、パケット誤り率(PER)を測定する。PERとCCAの両方の結果を考慮して、図10の例に示されるように、最終チャンネル判定が行われる。この図は、APの測定結果及びノード#1とノード#2のチャンネル・リストを示す。この例では、ノードのチャンネル・リストは互いに異なる。更に、ビット誤り率(BER)測定又はLQI(Link Quality Indicator:リンク品質インジケータ)測定を誤り率に基づく測定として使用できる。
【0053】
D.チャンネル・リストの通知
【0054】
二つのノード間で一つのチャンネル・リストを共用するには、チャンネル・リストを一方のノードから他方のノードに通知しなければならない。チャンネル・リストを通知するための詳細なシーケンスは、当該技術分野で知られているので、ここでは説明しないが、解説のためにいくつかの例を示す。
【0055】
一つのアイデアは、実効時間(Effective Time)の情報を有するデータ・パケット又はACK/NACKパケットに将来のチャンネル・リストを挿入することである。別のアイデアは、将来のチャンネル・リストを共用するために、互いに交渉することである。例えば、交換されたチャンネル・リストを有する受信機がその通知と共にパケットを送信機に送信する。送信機は、一旦この情報を受信すると、この通知の受信確認を送信する。別のアイデアは、システム・マネージャーがシステムの全てのノードの測定結果を収集し、全てのリンクのチャンネル・リストを作成するものである。次に、システム・マネージャーは、全てのノードにチャンネル・リストを通知する。
【0056】
E.マルチチャンネルの実施形態
【0057】
信頼性を更に改善するために、マルチチャンネル通信コンセプトを使用できる。図11は、提案するマルチチャンネル通信ノードの一実施形態を示す。この実施形態は、二つ以上のトランシーバを含み、両方のトランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信する。
【0058】
図12は、マルチチャンネル周波数ホッピング・パターンの一例を示す。サブトランシーバの周波数ホッピング・パターンは、メイントランシーバのものからオフセットしている。説明を容易にするために、この図は、AFH動作を含まない。AFH動作により、前に説明したメカニズムをトランシーバのいずれか又は両方に適用できる。このマルチチャンネル・コンセプトを使用することによって、トランシーバの簡略化を犠牲にして信頼性を大幅に改善できる。
【0059】
図13は、提案するAFHの効果及びAFHによるマルチチャンネル通信の効果を示し、ある特定の干渉状態下でのシミュレーション結果をプロットしたものである。単一チャンネルの例に対してAFHを使用するとき、及びマルチチャンネルの例に対してAFHを使用するときに、パケット損失レートが低下する。
【0060】
F.本発明の利点
【0061】
本発明は、信頼性のある通信を可能にするため、より低コストかつより低複雑度の大規模ネットワークのための適応型周波数ホッピング・メカニズムを提供する。一実施形態では、ネットワークのノードは、一つ以上の周波数ホッピング・パターンを共用し、互いに通信を試みる二つのノードは、チャンネル状態を含むチャンネル・リストを共用する。本発明の二つの主な利点は、改善された信頼性及び高速測定である。信頼性を改善する適応型周波数チャンネル・メカニズムを、低コストかつ低複雑度のタイムスロット周波数ホッピングに基づくネットワーク及びメッシュ・ネットワークに組み込むことができる。図13には、信頼性の改善が示されている。更に、例えば、誤り率に基づく測定と空間占有率の測定とを組み合わせて使用することにより、上記のチャンネルの判定及び選択のための信頼性のある高速チャンネル状態測定を実現できる。
【0062】
本発明による無線システムは、プラント/工場の自動化、ビルの自動化、環境監視等の信頼性を必要とする産業用の無線アプリケーションに利用できる。典型的なアプリケーションの一つは監視アプリケーションである。典型的な監視アプリケーションでは、ターミナル・ノードは、センサ及び提案するトランシーバを有し、測定データをセンターに送る。別のアプリケーションは制御アプリケーションである。典型的な制御アプリケーションでは、ターミナル・ノードは、無線通信によって送信された信号により制御されるアクチュエータも有する。
【0063】
本発明を実施するコンピュータ及び記憶システムは、上記発明の実施に使用されるモジュール、プログラム及びデータ構造の記憶及び読取が可能な公知のI/Oデバイス(例えば、CD及びDVDドライブ、フロッピー(登録商標)・ディスク・ドライブ、ハード・ドライブ)も有することができる。これらのモジュール、プログラム及びデータ構造は、このようなコンピュータ読取可能媒体上に符号化できる。例えば、本発明のデータ構造は、本発明で使用されるプログラムが常駐している一つ以上のコンピュータ読取可能媒体とは独立に、コンピュータ読取可能媒体上に記憶できる。システムのコンポーネントは、デジタル・データ通信、例えば、任意の形式又は媒体の通信ネットワークにより、相互接続できる。通信ネットワークの例としては、ローカル・エリア・ネットワーク、インターネット等のワイド・エリア・ネットワーク、無線ネットワーク、記憶エリア・ネットワーク等が挙げられる。
【0064】
発明の詳細な説明において、本発明を完全に理解できるように説明するために多数の細部について説明した。しかし、本発明を実施するのにこれらの具体的な細部の全てが必要となるわけではないことは当業者に明らかである。また、本発明は、通常、フロー・チャート、フロー図、構造図又はブロック図に描かれるプロセスとして説明できるとも言える。動作がフロー・チャートにシーケンシャルなプロセスとして説明されていても、動作の多くは並列又は同時に実行することができる。また、動作の順序は変更してもよい。
【0065】
当該技術分野で知られているように、上記動作は、ハードウェア、ソフトウェア、又はソフトウェアとハードウェアのある組み合わせにより実行できる。本発明の実施形態の種々の特徴は、回路及び論理デバイス(ハードウェア)を使って実現し、他の特徴は、プロセッサに実行させるなら、本発明の実施形態を実施するための方法をプロセッサに実行させるマシン読取可能媒体上に記憶された命令(ソフトウェア)を使って実現してよい。更に、本発明のいくつかの実施形態は、ハードウェアのみにより実施してよいし、他の実施形態はソフトウェアのみで実施してよい。更に、説明した種々の機能は、単一ユニットで実施できるか、又は種々の方法で多数の部品にわたって分散させることもできる。ソフトウェアで実施するとき、コンピュータ読取可能媒体に記憶された命令に基づき、汎用コンピュータ等のプロセッサによってこれらの方法を実行してもよい。必要なら、命令は、圧縮フォーマット及び/又は暗号化フォーマットで媒体に記憶できる。
【0066】
以上から、本発明は、タイムスロット方式を採用した無線ネットワークにおける適用型周波数ホッピングのための方法、装置及びコンピュータ読取可能媒体に記憶されるプログラムを提供することが明らかなる。更に、具体的な実施形態を図示し本明細書において説明したが、開示した具体的な実施形態を同じ目的を達成すると予想される任意の構成に代えてもよいことは当業者にとって当然である。この開示は、本発明の任意の、かつ全ての適用例又は変形例をカバーすることを意図したものであり、当然、特許請求の範囲で使用する用語は、本発明を本明細書に開示された具体的な実施形態のみに限定するものと解してはならない。むしろ、本発明の範囲は、もっぱら特許請求の範囲によって決定すべきであり、特許請求の範囲の解釈について確立された原則に従い、このような特許請求の範囲に認められる均等物の全ての範囲を含むと解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードを有する無線ネットワーク・システムであって、前記複数のノードは、互いに通信する送信ノード及びターゲット・ノードを含み、前記複数のノード間で一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する前記無線ネットワーク・システムにおいて、
各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを提供するステップであって、各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含む前記ステップと、
前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、次の割当タイムスロットのチャンネルを選択するステップと、
前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記送信ノードが送信する先の前記ターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択するステップと、
前記選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックするステップと、
前記選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定するステップと、
前記選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記次の割当タイムスロットが到達するのを待つステップと、
前記次の割当タイムスロットにおいて、前記送信ノードから前記ターゲット・ノードへデータを送信するステップとを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共用周波数ホッピング・パターンの前記タイムスロットは、一連のフレーム内に配置されており、各フレームは、フレーム番号を有し、複数のタイムスロットを含み、
前記代りのチャンネルを計算するステップは、前記選択されたチャンネル・リストから作成された利用可能チャンネル・リストから代りのチャンネルを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記代りのチャンネルを選択するステップは、F(x,y)=[x/y]+mod(x,y)(ここで[a]は、「a」を超えない最大の整数であり、mod(x,y)は、xをyで割った余りである。)に従って、フレーム番号(x)、前記共用周波数ホッピング・パターンの周期(y)、及びN個の利用可能なチャンネルのリストである利用可能チャンネル・リストの長さ(N)から前記代りのチャンネルのアドレスを計算することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記利用可能チャンネル・リストは、良好チャンネルだけを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
誤り率に基づく測定及び空間占有率の測定に基づき、チャンネルを判定することにより、前記チャンネル・リストを作成し、
チャンネルの誤り率を得るためのデータが送信されたとき、前記誤り率に基づく測定を行い、
データ送信リンクが割り当てられていないタイムスロットで前記空間占有率の測定を行い、各ノードは、前記共用周波数ホッピング・パターン内の全てのチャンネルにわたって、1回以上の空きチャンネル判定(CCA)を実行して、チャンネル毎に前記空きチャンネル判定(CCA)がビジーの回数をカウントし、前記チャンネルの空間占有率に関係する干渉の統計的指標を得、
あるチャンネルについて、前記誤り率に基づく測定及び前記空間占有率の測定の一方又は両方が前記チャンネルの不良を示した場合、前記チャンネルを不良チャンネルとし、そうでない場合、前記チャンネルを良好チャンネルとする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記誤り率を、パケット誤り率、ビット誤り率及びリンク品質インジケータからなるグループから選択する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
測定された無線信号強度インジケータ(RSSI)がスレッショルド値よりも大である場合、前記CCAはビジーであり、前記スレッショルド値は、予め設定した固定スレッショルド値、又は前記CCAを実行する前記ノードの受信機との通信を試みる送信機からの受信信号パワーに応じて変化する可変スレッショルド値の一方である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
互いに通信する送信ノードとターゲット・ノードとを含む複数のノードを有する無線ネットワーク・システムにおける送信ノードであって、メイン送信機及びメイン受信機を有するメイントランシーバと、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを有するコントローラとを備え、各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含み、前記メイントランシーバは、他のノードのメイントランシーバと一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する前記送信ノードにおいて、前記コントローラは、
前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、前記メイントランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、
前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記メイン送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、
前記メイン送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、
前記メイン送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、
前記メイン送信機のための選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成されるチャンネル設定モジュールを含む、送信ノード。
【請求項10】
前記共用周波数ホッピング・パターンの前記タイムスロットは、一連のフレーム内に配置されており、各フレームは、フレーム番号を有し、複数のタイムスロットを含み、
前記代りのチャンネルを計算するステップは、前記選択されたチャンネル・リストから作成された利用可能チャンネル・リストから代りのチャンネルを選択するステップを含む、請求項9に記載の送信ノード。
【請求項11】
前記代りのチャンネルの選択は、F(x,y)=[x/y]+mod(x,y)(ここで[a]は、「a」を超えない最大の整数であり、mod(x,y)は、xをyで割った余りである。)に従って、フレーム番号(x)、前記共用周波数ホッピング・パターンの周期(y)、及びN個の利用可能なチャンネルのリストである利用可能チャンネル・リストの長さ(N)から前記代りのチャンネルのアドレスを計算することを含む、請求項10に記載の送信ノード。
【請求項12】
前記利用可能チャンネル・リストは、良好チャンネルだけを含む、請求項10に記載の送信ノード。
【請求項13】
誤り率に基づく測定及び空間占有率の測定に基づき、チャンネルを判定することにより、前記チャンネル・リストを作成し、
チャンネルの誤り率を得るためのデータが送信されたとき、前記誤り率に基づく測定を行い、
データ送信リンクが割り当てられていないタイムスロットで前記空間占有率の測定を行い、各ノードは、前記共用周波数ホッピング・パターン内の全てのチャンネルにわたって各ノードは、1回以上の空きチャンネル判定(CCA)を実行して、チャンネル毎に空きチャンネル判定(CCA)がビジーの回数をカウントし、前記チャンネルの空間占有率に関係する干渉の統計的指標を得、
あるチャンネルについて、前記誤り率に基づく測定及び前記空間占有率の測定の一方又は両方が前記チャンネルの不良を示した場合、前記チャンネルを不良チャンネルとし、そうでない場合、前記チャンネルを良好チャンネルとする、請求項9に記載の送信ノード。
【請求項14】
前記誤り率を、パケット誤り率、ビット誤り率及びリンク品質インジケータからなるグループから選択する、請求項13に記載の送信ノード。
【請求項15】
測定された無線信号強度インジケータ(RSSI)がスレッショルド値よりも大である場合、前記CCAはビジーであり、前記スレッショルド値は、予め設定した固定スレッショルド値、又は前記CCAを実行する前記ノードの受信機との通信を試みる送信機からの受信信号パワーに応じて変化する可変スレッショルド値の一方である、請求項13に記載の送信ノード。
【請求項16】
サブ送信機及びサブ受信機を含むサブトランシーバを更に備え、
前記メイントランシーバは、前記システムの他のノードのメイントランシーバと前記共用周波数ホッピング・パターンを共用し、
前記サブトランシーバは、前記システムの他のノードのサブトランシーバとオフセット周波数ホッピング・パターンを共用し、前記オフセット周波数ホッピング・パターンは、前記メイントランシーバの前記共用周波数ホッピング・パターンからオフセットしており、前記メイントランシーバ及び前記サブトランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信する、請求項9に記載の送信ノード。
【請求項17】
前記コントローラの前記チャンネル設定モジュールは、
前記送信ノードにおいて、前記オフセット周波数ホッピング・パターンから、前記サブトランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、
前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記サブ送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、
前記サブ送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記オフセット周波数ホッピング・パターンから前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、
前記サブ送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、
前記サブ送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成される請求項16記載の送信ノード。
【請求項18】
前記サブ送信機は、前記次の割当タイムスロットの到達を待ち、前記次の割当タイムスロットで前記送信ノードから前記ターゲット・ノードにデータを送信する、請求項17に記載の送信ノード。
【請求項19】
互いに通信する送信ノードとターゲット・ノードとを含む複数のノードを有する無線ネットワーク・システムにおける送信ノードであって、前記送信ノードは、各々が送信機及び受信機を有する複数のトランシーバと、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを有するコントローラとを備え、各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含み、前記トランシーバは、各々が他のノードの対応するトランシーバと一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有し、前記コントローラは、
前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、前記複数のトランシーバのうちの一つの送信機を有する一つのトランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、
前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記一つの送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、
前記一つの送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、
前記一つの送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、選択されたチャンネルを設定し、
前記一つの送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成されるチャンネル設定モジュールを含み、
前記複数のトランシーバは、互いにオフセットした周波数ホッピング・パターンを有し、
前記トランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信するように構成されるチャンネル設定モジュールを含む、送信ノード。
【請求項20】
前記送信ノードの各送信機は、前記次の割当タイムスロットの到達を待ち、前記次の割当タイムスロットで前記送信ノードから前記ターゲット・ノードにデータを送信する、請求項19に記載の送信ノード。
【請求項1】
複数のノードを有する無線ネットワーク・システムであって、前記複数のノードは、互いに通信する送信ノード及びターゲット・ノードを含み、前記複数のノード間で一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する前記無線ネットワーク・システムにおいて、
各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを提供するステップであって、各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含む前記ステップと、
前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、次の割当タイムスロットのチャンネルを選択するステップと、
前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記送信ノードが送信する先の前記ターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択するステップと、
前記選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックするステップと、
前記選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定するステップと、
前記選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記次の割当タイムスロットが到達するのを待つステップと、
前記次の割当タイムスロットにおいて、前記送信ノードから前記ターゲット・ノードへデータを送信するステップとを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共用周波数ホッピング・パターンの前記タイムスロットは、一連のフレーム内に配置されており、各フレームは、フレーム番号を有し、複数のタイムスロットを含み、
前記代りのチャンネルを計算するステップは、前記選択されたチャンネル・リストから作成された利用可能チャンネル・リストから代りのチャンネルを選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記代りのチャンネルを選択するステップは、F(x,y)=[x/y]+mod(x,y)(ここで[a]は、「a」を超えない最大の整数であり、mod(x,y)は、xをyで割った余りである。)に従って、フレーム番号(x)、前記共用周波数ホッピング・パターンの周期(y)、及びN個の利用可能なチャンネルのリストである利用可能チャンネル・リストの長さ(N)から前記代りのチャンネルのアドレスを計算することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記利用可能チャンネル・リストは、良好チャンネルだけを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
誤り率に基づく測定及び空間占有率の測定に基づき、チャンネルを判定することにより、前記チャンネル・リストを作成し、
チャンネルの誤り率を得るためのデータが送信されたとき、前記誤り率に基づく測定を行い、
データ送信リンクが割り当てられていないタイムスロットで前記空間占有率の測定を行い、各ノードは、前記共用周波数ホッピング・パターン内の全てのチャンネルにわたって、1回以上の空きチャンネル判定(CCA)を実行して、チャンネル毎に前記空きチャンネル判定(CCA)がビジーの回数をカウントし、前記チャンネルの空間占有率に関係する干渉の統計的指標を得、
あるチャンネルについて、前記誤り率に基づく測定及び前記空間占有率の測定の一方又は両方が前記チャンネルの不良を示した場合、前記チャンネルを不良チャンネルとし、そうでない場合、前記チャンネルを良好チャンネルとする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記誤り率を、パケット誤り率、ビット誤り率及びリンク品質インジケータからなるグループから選択する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
測定された無線信号強度インジケータ(RSSI)がスレッショルド値よりも大である場合、前記CCAはビジーであり、前記スレッショルド値は、予め設定した固定スレッショルド値、又は前記CCAを実行する前記ノードの受信機との通信を試みる送信機からの受信信号パワーに応じて変化する可変スレッショルド値の一方である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
互いに通信する送信ノードとターゲット・ノードとを含む複数のノードを有する無線ネットワーク・システムにおける送信ノードであって、メイン送信機及びメイン受信機を有するメイントランシーバと、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを有するコントローラとを備え、各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含み、前記メイントランシーバは、他のノードのメイントランシーバと一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有する前記送信ノードにおいて、前記コントローラは、
前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、前記メイントランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、
前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記メイン送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、
前記メイン送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、
前記メイン送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、
前記メイン送信機のための選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成されるチャンネル設定モジュールを含む、送信ノード。
【請求項10】
前記共用周波数ホッピング・パターンの前記タイムスロットは、一連のフレーム内に配置されており、各フレームは、フレーム番号を有し、複数のタイムスロットを含み、
前記代りのチャンネルを計算するステップは、前記選択されたチャンネル・リストから作成された利用可能チャンネル・リストから代りのチャンネルを選択するステップを含む、請求項9に記載の送信ノード。
【請求項11】
前記代りのチャンネルの選択は、F(x,y)=[x/y]+mod(x,y)(ここで[a]は、「a」を超えない最大の整数であり、mod(x,y)は、xをyで割った余りである。)に従って、フレーム番号(x)、前記共用周波数ホッピング・パターンの周期(y)、及びN個の利用可能なチャンネルのリストである利用可能チャンネル・リストの長さ(N)から前記代りのチャンネルのアドレスを計算することを含む、請求項10に記載の送信ノード。
【請求項12】
前記利用可能チャンネル・リストは、良好チャンネルだけを含む、請求項10に記載の送信ノード。
【請求項13】
誤り率に基づく測定及び空間占有率の測定に基づき、チャンネルを判定することにより、前記チャンネル・リストを作成し、
チャンネルの誤り率を得るためのデータが送信されたとき、前記誤り率に基づく測定を行い、
データ送信リンクが割り当てられていないタイムスロットで前記空間占有率の測定を行い、各ノードは、前記共用周波数ホッピング・パターン内の全てのチャンネルにわたって各ノードは、1回以上の空きチャンネル判定(CCA)を実行して、チャンネル毎に空きチャンネル判定(CCA)がビジーの回数をカウントし、前記チャンネルの空間占有率に関係する干渉の統計的指標を得、
あるチャンネルについて、前記誤り率に基づく測定及び前記空間占有率の測定の一方又は両方が前記チャンネルの不良を示した場合、前記チャンネルを不良チャンネルとし、そうでない場合、前記チャンネルを良好チャンネルとする、請求項9に記載の送信ノード。
【請求項14】
前記誤り率を、パケット誤り率、ビット誤り率及びリンク品質インジケータからなるグループから選択する、請求項13に記載の送信ノード。
【請求項15】
測定された無線信号強度インジケータ(RSSI)がスレッショルド値よりも大である場合、前記CCAはビジーであり、前記スレッショルド値は、予め設定した固定スレッショルド値、又は前記CCAを実行する前記ノードの受信機との通信を試みる送信機からの受信信号パワーに応じて変化する可変スレッショルド値の一方である、請求項13に記載の送信ノード。
【請求項16】
サブ送信機及びサブ受信機を含むサブトランシーバを更に備え、
前記メイントランシーバは、前記システムの他のノードのメイントランシーバと前記共用周波数ホッピング・パターンを共用し、
前記サブトランシーバは、前記システムの他のノードのサブトランシーバとオフセット周波数ホッピング・パターンを共用し、前記オフセット周波数ホッピング・パターンは、前記メイントランシーバの前記共用周波数ホッピング・パターンからオフセットしており、前記メイントランシーバ及び前記サブトランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信する、請求項9に記載の送信ノード。
【請求項17】
前記コントローラの前記チャンネル設定モジュールは、
前記送信ノードにおいて、前記オフセット周波数ホッピング・パターンから、前記サブトランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、
前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記サブ送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、
前記サブ送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記オフセット周波数ホッピング・パターンから前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、
前記サブ送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルを設定し、
前記サブ送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成される請求項16記載の送信ノード。
【請求項18】
前記サブ送信機は、前記次の割当タイムスロットの到達を待ち、前記次の割当タイムスロットで前記送信ノードから前記ターゲット・ノードにデータを送信する、請求項17に記載の送信ノード。
【請求項19】
互いに通信する送信ノードとターゲット・ノードとを含む複数のノードを有する無線ネットワーク・システムにおける送信ノードであって、前記送信ノードは、各々が送信機及び受信機を有する複数のトランシーバと、各送信ノードについて、一つ以上のチャンネル・リストを含むチャンネル・リスト・テーブルを有するコントローラとを備え、各チャンネル・リストは、ターゲット・ノードとの通信に利用可能な少なくとも一つのチャンネルを含む前記共用周波数ホッピング・パターンのチャンネルの状態を含み、前記トランシーバは、各々が他のノードの対応するトランシーバと一つの周波数ホッピング・パターンを共用し、前記共用周波数ホッピング・パターンは、一連のタイムスロットに関連するチャンネルを含み、前記タイムスロットは、各々が前記ノードのうちの二つのノード間への割当リンクを有し、前記コントローラは、
前記送信ノードにおいて、前記共用周波数ホッピング・パターンから、前記複数のトランシーバのうちの一つの送信機を有する一つのトランシーバのために次の割当タイムスロットのチャンネルを選択し、
前記チャンネル・リスト・テーブルから、前記一つの送信機により前記送信ノードが送信する先のターゲット・ノードの前記チャンネル・リストを選択し、
前記一つの送信機のために選択されたチャンネル・リストに基づき、前記選択されたチャンネルが利用可能であるかどうかをチェックし、
前記一つの送信機のために選択されたチャンネルが利用可能な場合、前記送信ノードにおいて、選択されたチャンネルを設定し、
前記一つの送信機のために選択されたチャンネルが利用可能でない場合、前記送信ノードにおいて、前記選択されたチャンネルの代わりに、前記チャンネル・リストから代りのチャンネルを計算するように構成されるチャンネル設定モジュールを含み、
前記複数のトランシーバは、互いにオフセットした周波数ホッピング・パターンを有し、
前記トランシーバは、異なるチャンネルで同じデータを送信し、異なるチャンネルで同じデータを受信するように構成されるチャンネル設定モジュールを含む、送信ノード。
【請求項20】
前記送信ノードの各送信機は、前記次の割当タイムスロットの到達を待ち、前記次の割当タイムスロットで前記送信ノードから前記ターゲット・ノードにデータを送信する、請求項19に記載の送信ノード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−229126(P2011−229126A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39996(P2011−39996)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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