説明

タイヤ帯状部材のエンズカウント装置およびエンズカウント・スリット装置

【課題】タイヤコードの本数のミスカウントを防ぐことができるタイヤ帯状部材のエンズカウント装置、およびタイヤコードの本数のミスカウントを防ぎ、所定本数のタイヤコードをスリットすることができるタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置を提供する。
【解決手段】タイヤコードの埋設により、前記タイヤ帯状部材の表面に形成された凸脈部を検出する2次元変位計と、2次元変位計をタイヤ帯状部材と非接触状態でタイヤ帯状部材の幅方向に走査させる走査機構と、走査する2次元変位計の検出信号に基づいてタイヤコードの本数をカウントするカウント手段とを備えているタイヤ帯状部材のエンズカウント装置。前記エンズカウント装置と、カウント手段のカウント情報に基づいて、タイヤ帯状部材の幅方向の一端から所定本数毎にスリットを入れるスリット機構制御手段とを備えているタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のタイヤの製造工程において、タイヤ帯状部材のコード本数を非接触状態でカウントするエンズカウント装置およびスリット装置に前記エンズカウント装置が組み込まれたエンズカウント・スリット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの製造工程において、タイヤの耐久性、走行安定性を向上することを目的として、例えば、ジョイントレスバンド(JLB)をタイヤ成形ドラムに巻付けることが一般的に行われている。
【0003】
このJLBはトッピングゴム中に所定本数のタイヤコードを埋設して構成されており、当初は、所定本数配列されたタイヤコードの表裏両面にトッピングゴムを被覆する方法(シングルコード方式)により製造されていたが、近年、生産性の向上を図るため、幅広のタイヤコードすだれ織物の表裏両面にトッピングゴムを被覆して得られた帯状部材(トップ反)を、スリット装置により所定幅に切断する方法(すだれ方式)による製造が行われている。
【0004】
具体的には、多数本のタイヤコードを縦糸としてほぼ等間隔に配置した広幅のジョイントレスバンド用のタイヤコードすだれ織物を作製し、このタイヤコードすだれ織物の表裏両面をゴムで被覆して広幅のトップ反を作製した後、ナイフやカッターなどを用いて、所定の幅にスリットしてテープ状のJLBを作製することが行われている。
【0005】
このとき、タイヤのコニシティーを維持するためには、得られたJLBの各々に含まれるタイヤコード本数は一致していることが要求される。
【0006】
これは、JLBに限らず、タイヤコードにトッピングゴムが被覆されたテープ状のタイヤ部材を製造する際の共通の問題であり、従来は、スリットに際して、帯状部材(トップ反)の表面を撮像し、画像処理を行うことにより、タイヤコード本数をカウントすることが行われていた。しかし、この帯状部材の表面を直接撮像する画像処理の場合、誤検出(ミスカウント)が増加するという問題があった。
【0007】
そこで、帯状部材を斜めに切断し、その切り口を撮像、画像処理する手法が提案された(特許文献1)。しかし、この方法を用いた場合であっても、以下に示すような問題点があった。即ち、
(a)トッピングゴムは剛性が高い材料ではないため、切断面に乱れが生じる場合があり、その場合にはミスカウントが頻発する。
(b)切断面を撮像するため、オンライン生産機に実装することができず、オフライン設備とせざるを得ない。このため、生産性の向上が困難である。
(c)画像処理を使う場合、カメラ移動用と切断機構の移動用に、少なくとも2軸の駆動機構が必要になるため、製作・設置にかかるコストが高くなる。
(d)確実なコード本数を確保するためには、カメラ移動→切断機構移動→カメラ移動→切断機構移動のサイクルを繰り返すことになるため、処理タクトが長くなる。
(e)駆動軸方向とコード流れ方向とは、直交していることが好ましいが、実際には、コードの並び方には乱れがあるため、この乱れの角度を考慮せずに切断を行うと、コードが切断される恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−105204
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、タイヤコードの本数のミスカウントを防ぐことができるタイヤ帯状部材のエンズカウント装置、およびタイヤコードの本数のミスカウントを防ぎ、所定本数のタイヤコードをスリットすることができるタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタイヤ帯状部材のエンズカウント装置は、
所定のピッチで配列されるタイヤコードをトッピングゴムで被覆して形成される幅広のタイヤ帯状部材のタイヤコードの本数をカウントするタイヤ帯状部材のエンズカウント装置であって、
前記タイヤコードの埋設により、前記タイヤ帯状部材の表面に形成された凸脈部を検出する2次元変位計と、
前記2次元変位計をタイヤ帯状部材と非接触状態でタイヤ帯状部材の幅方向に走査させる走査機構と、
走査する2次元変位計の検出信号に基づいて前記タイヤコードの本数をカウントするカウント手段と
を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置は、
所定のピッチで配列されるタイヤコードをトッピングゴムで被覆して形成される幅広のタイヤ帯状部材のタイヤコードの本数をカウントし、所定本数目のタイヤコードと次のタイヤコードとの間にスリットを入れることを特徴とするタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置であって、
前記のタイヤ帯状部材のエンズカウント装置と、
前記タイヤコードの埋設により、前記タイヤ帯状部材の表面に形成された凸脈部間にスリットを入れるスリット機構と、
前記カウント手段のカウント情報に基づいて、前記タイヤ帯状部材の幅方向の一端から所定本数目のタイヤコードと次のタイヤコードとの間の前記タイヤ帯状部材にスリットを入れるように前記スリット機構を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、前記のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置は、
前記走査機構に前記スリット機構を搭載していることを特徴とする。
【0013】
また、前記のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置は、
スリット機構が、
刃先が前記タイヤ帯状部材に向くように配置されるスリット用のカッターと、
前記カッターを前記タイヤ帯状部材の長さ方向および厚み方向にそれぞれ往復動させるカッター駆動手段とを備えていることを特徴とする。
【0014】
また、前記のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置は、
前記制御手段が、
前記タイヤ帯状部材を切り込むときは、前記カッターを前記長さ方向および前記厚み方向に往動させ、
前記カッターを戻すときは、前記カッターを前記厚み方向に復動させて前記タイヤ帯状部材から引き抜いた後、前記長さ方向に復動させて切込み前の位置に戻すように制御する制御機構を備えていることを特徴とする。
【0015】
また、前記のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置は、
前記カッター駆動手段が、
前記カッターを前記タイヤ帯状部材の長さ方向に往復動させる第1シリンダーと、前記カッターを前記タイヤ帯状部材の厚み方向に往復動させる第2シリンダーとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タイヤコードの本数のミスカウントを防ぐことができるタイヤ帯状部材のエンズカウント装置、およびタイヤコードの本数のミスカウントを防ぎ、所定本数のタイヤコードをスリットすることができるタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の実施の形態のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置を模式的に示す平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】本発明の実施の形態のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置の2次元変位計の走査方向を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置によるサンプリング値の平均波形を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置による3本の走査ラインでのカウント動作を説明する図である。
【図6】(a)は図1に示すエンズカウント・スリット装置のカッターの動作を説明する側面図、(b)はカッターが戻る時のトラブル発生を説明する平面図である。
【図7】(a)は本発明のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置のスリット機構の応用例を示す側面図、(b)(c)はこの応用例の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
1.タイヤ帯状部材のエンズカウント装置を備えたエンズカウント・スリット装置
図1(a)は、本発明の実施の形態のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置を模式的に示す平面図であり、(b)はその側面図である。図2は、同装置のブロック図である。
【0020】
(1)タイヤ帯状部材
まず、エンズカウント・スリット装置の処理対象となるタイヤ帯状部材について説明する。タイヤ帯状部材1は、互いに並設される多数本のタイヤコード11をトッピングゴム12で被覆して形成される複合体である(図3参照)。
【0021】
タイヤコード11の埋設個所ではトッピングゴム12が盛り上がって複数条の凸脈部(図示省略)が形成されるため、タイヤ帯状部材1の表面は連続する凹凸部となっている。
【0022】
(2)エンズカウント・スリット装置全体の構成
図1に示すように、タイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置は、タイヤ帯状部材1のタイヤコードの本数をカウントするためのエンズカウント装置と、タイヤ帯状部材1の長さ方向に切り込みを入れるためのスリット機構と、エンズカウント装置のカウント信号に基づいてタイヤ帯状部材1の幅方向の一端から所定本数目のタイヤコードと次のタイヤコードとの間のタイヤ帯状部材1に切り込みが入るようにスリット機構3を制御する制御手段6(図2参照)とを備えている。なお、切り込みは、JLB等の作製のための切断開始位置を示すためのマークである。
【0023】
(3)エンズカウント装置
エンズカウント装置は、タイヤ帯状部材1の凸脈部を検出するレーザ式の2次元変位計2と、2次元変位計2をタイヤ帯状部材1と非接触の状態でタイヤ帯状部材1の幅方向に走査させる走査機構と、2次元変位計2の走査による検出信号に基づいてタイヤコードの本数をカウントするカウント手段とを備えている。
【0024】
(a)2次元変位計
2次元変位計2は、タイヤ帯状部材1の表面の凸脈部を検出するセンサーヘッドおよびコントローラを備えており、タイヤ帯状部材1の上方からレーザを照射し、反射光によりタイヤ帯状部材1の表面形状をX−Z軸(X軸:水平方向(タイヤ帯状部材1の幅方向)、Z軸:鉛直方向)の2次元で計測するものである。なお、図1中の矢印Xは2次元変位計2の走査方向を示し、矢印Yはタイヤ帯状部材1の移動方向を示している。
【0025】
(b)2次元変位計の走査機構
走査機構は、タイヤ帯状部材1の上方に配置されてタイヤ帯状部材1の幅方向に架け渡されるLMガイド(走行用)41と、LMガイド41に沿って、図外の駆動手段により走行する走行体(図示省略)とを備えている。走行体には2次元変位計2が取り付けされている。
【0026】
(4)スリット機構
スリット機構は、カッター3を備えており、カッター3の刃先がカッター3の回転により上下するように構成されており、制御手段6からの指令信号によりカッター3の刃先が降下してタイヤ帯状部材1に切り込みを入れるようになっている。
【0027】
なお、スリット機構は、走査機構の走行体に取り付けられて、2次元変位計2と共にタイヤ帯状部材1の幅方向に移動するようになっている。
【0028】
(5)制御手段
図2に示すように、制御手段6は、2次元変位計コントローラ2b、上位PC61、カウント判定用シーケンサ62、カウント判定用モニタ63、変位確認用モニタ64、サーボ駆動ブロック65を備えている。上位PC61には、専用ソフトがインストールされ、コントローラを通して、2次元変位計2の測定条件やデータの入出力制御、更には走査機構の位置制御やスリット機構3の駆動制御が行われる。
【0029】
(6)その他
タイヤ帯状部材1には、所定の力でテンションが加えられるが、本実施の形態では、そのテンションの大きさを調整するためのテンション調整機構5が備わっている。
【0030】
2.タイヤコード本数のカウントとタイヤ帯状部材への切り込み
図3は、本発明の実施の形態のエンズカウント・スリット装置の2次元変位計の走査方向を示す図である。
【0031】
(1)タイヤコード本数のカウント
図3の点線矢印で示すように、2次元変位計をタイヤ帯状部材1の幅方向(X軸)に走査させることにより、タイヤ帯状部材1の幅方向のX軸位置の0.1mm毎のZ軸高さのサンプリングデータを取得して、横軸をX軸位置、縦軸をZ軸高さとしてプロットし、図4に示すような波形を作成する(●はデータのプロット点を示す)。
【0032】
図4に示すように、凸脈部の頂部から凸脈部間の谷部に向かう立ち下がり部分および谷部から凸脈部の頂部に向かう立ち上がり部分に変曲点が現れるため、そのいずれか一方の変曲点について数をカウントすることにより、タイヤコード本数をカウントすることができる。なお、実際のカウントについては、スリットのためにカッター3の刃を入れる位置情報をアウトプットする必要がある場合、2次元変位計2の走査位置とカッター3の位置とを極力近づけ、もしくは一致させることで、カッター3の刃を入れる位置精度を向上させるという観点から、谷部からの立ち上がり部分についてカウントすることが望ましい。
【0033】
(2)タイヤ帯状部材へのマーキング用の切り込み
タイヤコードの本数が所定本数カウントされた後、タイヤ帯状部材の幅方向の一端から所定本数目のタイヤコードと次のタイヤコードとの間にカッターで切り込みを入れる。
【0034】
(3)蛇行するタイヤコードへの対応
図5は、本発明の実施の形態のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置による3本の走査ラインでのカウント動作を説明する図である。図5においては、タイヤ帯状部材の長さ方向において、5mm間隔で3本の走査ラインを設けて、3つの波形が作成されている。図5に示すように、タイヤコードが蛇行している箇所では、谷部の位置(●で示す)に不揃いが生じるため、タイヤコードへの蛇行を確認することができる。また、不揃いの度合いから蛇行角度を算出することができる。そして、その結果に基づき、切り込みを入れるため、蛇行するタイヤコードの切断を防止することができる。
【0035】
(4)スリットが施されたタイヤ帯状部材を、例えば、キャメロンスリッターを用いて、フローティングカッターを前記スリット位置にセットして切断することにより、所定本数のタイヤコードを有するテープ状のタイヤ部材を得ることができる。
【0036】
3.本実施の形態の効果
(1)本実施の形態によれば、2次元変位計2を走査させて波形を作成し、この波形の変曲点を見出して変曲点の数をカウントして、タイヤ帯状部材1のタイヤコード11の本数をカウントするため、材料表面状態に影響されることもなく、画像処理によりカウントするのに比べて、ミスカウントを防ぐことができる。
【0037】
(2)2次元変位計2により正確にカウントされたタイヤコード11の本数情報に基づいてマーキング用の切り込みを入れるため、所定本数のタイヤコード11を有する製品を安定して作製することができる。
【0038】
(3)3次元処理ではなく、複数ポイントの高さデータを抽出し、2次元変位計の走査方向に沿って波形化して変曲点をカウントするだけで済むため、コストを抑制することができる。
【0039】
(4)タイヤコード11が蛇行していても、切り込み位置を正確に認識できるため、切り込み位置の信頼性が向上する。
【0040】
(5)従来の画像処理のように、2次元変位計の移動とカッターの移動を別々に移動させる必要がないため、2次元変位計による切り込み位置情報とカッターの位置情報との間にずれが生じることがなくなり、切り込み位置をより一層正確に認識することができる。
【0041】
(6)2次元変位計2の走査距離を自由に設定することができるため、種々の幅のタイヤ帯状部材に対応することができる。
【0042】
4.エンズカウント・スリット装置の応用例
図1に示す回転式のカッター3を有するスリット機構は、カッター3の回転中心を固定した状態で、カッター3をそのまま押し込んでスリットする機構となっている。
【0043】
図6(a)は図1に示すエンズカウント・スリット装置のカッターの動作を説明する側面図であり、(b)はカッターが戻る時のトラブル発生を説明する平面図である。なお、図6は、説明の便宜上タイヤ帯状部材を縦方向に描いている。
【0044】
このようなスリット機構においては、カッター3の回転範囲を狭く設定した場合、カッター3をタイヤ帯状部材1に深く押し込むことができないため、タイヤ帯状部材1の切れ目の量が少なくなって切れ目の量が広がらない。このため、作業者の目視による切れ目の判断が困難になるおそれがある。
【0045】
そこで、上記の対策として、カッター3の回転範囲を広く設定してカッター3のストロークを大きくすることが考えられる(図1(b)参照)。
【0046】
しかし、深く押し込んだカッター3を逆回転させて戻す時には、カッター3の刃先の押し込み位置とカッター3の刃先がタイヤ帯状部材1から出る位置とがほぼ同じなる。このため、図6(b)に示すように、カッター3を戻す際にタイヤ帯状部材1のたわみ等によりタイヤ帯状部材1の切れ目1aがずれた場合、戻ろうとするカッター3の刃先が切れ目1aの入っていないタイヤ帯状部材1に当たって引っ掛かり、設備停止等のトラブルが発生するおそれがある。
【0047】
そこで、カッター3を逆回転させることなく押し込んだ方向に1回転させて刃先がタイヤ帯状部材1の切れ目1aのない位置から出るようにすれば、刃先がタイヤ帯状部材1に引っ掛かるトラブルを防ぐことができる。
【0048】
しかし、カッター3を1回転させる場合、カッター3の回転範囲を確保するためのスペースが大きくなり、装置が大型化するという問題が生じる。また、カッター3の刃先の押し込み位置とタイヤ帯状部材1から出てくる位置が大きく異なるため、タイヤコードが切断されるおそれがある。
【0049】
そこで、図7に示すエンズカウント・スリット装置の応用例を採用することにより装置の改善を行っている。図7(a)は本発明のスリット機構の応用例を示す側面図であり、(b)(c)はこの応用例の動作を説明する図である。なお、図7は図6に合わせるため、タイヤ帯状部材を縦方向に描いている。
【0050】
(1)エンズカウント・スリット装置の応用例の構成
はじめに、エンズカウント・スリット装置の応用例の構成について説明する。図7(a)に示すように、エンズカウント・スリット装置の応用例は、スリット用のカッター3と、カッター3をタイヤ帯状部材1の長さ方向および厚み方向にそれぞれ往復動させるカッター駆動手段7とを備えており、カッター駆動手段7は図外の制御手段により制御される。
【0051】
図7(a)に示すように、カッター駆動手段7は、カッター3を支持する支持部材73と、タイヤ帯状部材1の長さ方向にロッド71aが伸縮する第1シリンダー71と、タイヤ帯状部材1の厚み方向にロッド72aが伸縮する第2シリンダー72とを備えている。
【0052】
第1シリンダー71のロッド71aの先端には第2シリンダー72が取り付けられ、第2シリンダー72のロッド72aの先端には支持部材73が取り付けされている。なお、第1シリンダー71は図外の支持部に固定されている。
【0053】
図7(a)に示すように、カッター3の刃先は、タイヤ帯状部材1を向き、しかもタイヤ帯状部材1の送り方向(矢印ヘ)に傾斜するように配置されている。また、カッター3は支持部材73に回転しないように固定されている。なお、図7(a)の矢印トは、タイヤ帯状部材1のスリット方向を示している。
【0054】
また、シリンダー71、72は、1つの電磁弁・配管系統で駆動し、ゴー・リターンを図外のスピードコントローラーで調整して切り込み角度、切り込み量を調整している。これにより、カッター3によるタイヤ帯状部材1への切り込み、タイヤ帯状部材1からの引き抜きをスムーズに行うことができるように構成されている。
【0055】
以上の応用例の構成では、カッター駆動手段7として、第1シリンダー71および第2シリンダー72による駆動機構を採用しているが、2軸直線駆動機構であればシリンダーに限定されるものではない。
【0056】
(2)エンズカウント・スリット装置の応用例の動作説明
次に、上記応用例の動作について説明する。カッター3によりタイヤ帯状部材1に切り込む時は、図7(b)の矢印イおよび矢印ロで示すように、カッター3をタイヤ帯状部材1の厚み方向および長さ方向に同時に往動させて、カッター3を図7(b)の矢印ハの方向に移動させる。なお、カッター3の刃先は、タイヤ帯状部材1をスムーズにスリットできるように、前記した通りタイヤ帯状部材1の送り方向(矢印ヘ)に傾けられている。
【0057】
カッター3をタイヤ帯状部材1から引き抜く時は、図7(c)の矢印ニで示すように、カッター3をタイヤ帯状部材1の厚み方向に復動させてタイヤ帯状部材1から引き抜いた後、図7(c)の矢印ホで示すように、カッター3をタイヤ帯状部材1の長さ方向に復動させて切込み前の位置に戻す。
【0058】
(3)エンズカウント・スリット装置の応用例の効果
(a)カッター3を引き抜く時は、カッター3を回転させるのではなく、カッター3を支持部材73に固定した状態でカッター3をタイヤ帯状部材1の厚み方向に復動させてタイヤ帯状部材1から引き抜くため、カッター3の刃先が上向きにならない。このため、カッター3の刃先がタイヤ帯状部材1に引っ掛かることを防止することができる。
【0059】
(b)上記のように応用例の場合、カッター3の刃先がタイヤ帯状部材1に引っ掛からないため、カッター3の切り込み時は、カッター3をタイヤ帯状部材1の厚み方向に深く押し込むことができる。このため、タイヤ帯状部材1の切れ目を押し広げることができ、作業者による切れ目1aの視認が容易になる。
【0060】
(c)また、矢印ハに示すようにタイヤ帯状部材1に対して斜めに切り込むことができるため、タイヤ帯状部材1を抵抗なくスムーズに切断することができる。
【0061】
(d)さらに、カッター3を引き抜く時は、切込み時とは逆の方向に戻すため、カッター3を切り込むためのスペースを切込み時にも利用することができ、装置の大型化を防ぐことができる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 タイヤ帯状部材
1a 切れ目
2 2次元変位計
2a 2次元変位計のセンサーヘッド
2b 2次元変位計のコントローラ
3 カッター
5 テンション調整機構
6 制御手段
7 カッター駆動手段
11 タイヤコード
12 トッピングゴム
41 LMガイド
61 上位PC
62 カウント判定用シーケンサ
63 カウント判定用モニタ
64 変位確認用モニタ
65 サーボ駆動ブロック
71 第1シリンダー
71a ロッド
72 第2シリンダー
72a ロッド
73 支持部材
X 2次元変位計の走査方向を示す矢印
Y タイヤ帯状部材の移動方向を示す矢印
イ タイヤ帯状部材の厚み方向
ロ タイヤ帯状部材の長さ方向
ハ カッター3の移動方向
ニ カッター3を引き抜く時の方向
ホ カッター3を切込み前の位置に戻す時の方向
ヘ タイヤ帯状部材の送り方向
ト タイヤ帯状部材のスリット方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のピッチで配列されるタイヤコードをトッピングゴムで被覆して形成される幅広のタイヤ帯状部材のタイヤコードの本数をカウントするタイヤ帯状部材のエンズカウント装置であって、
前記タイヤコードの埋設により、前記タイヤ帯状部材の表面に形成された凸脈部を検出する2次元変位計と、
前記2次元変位計をタイヤ帯状部材と非接触状態でタイヤ帯状部材の幅方向に走査させる走査機構と、
走査する2次元変位計の検出信号に基づいて前記タイヤコードの本数をカウントするカウント手段と
を備えていることを特徴とするタイヤ帯状部材のエンズカウント装置。
【請求項2】
所定のピッチで配列されるタイヤコードをトッピングゴムで被覆して形成される幅広のタイヤ帯状部材のタイヤコードの本数をカウントし、所定本数目のタイヤコードと次のタイヤコードとの間にスリットを入れることを特徴とするタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置であって、
請求項1に記載のタイヤ帯状部材のエンズカウント装置と、
前記タイヤコードの埋設により、前記タイヤ帯状部材の表面に形成された凸脈部間にスリットを入れるスリット機構と、
前記カウント手段のカウント情報に基づいて、前記タイヤ帯状部材の幅方向の一端から所定本数目のタイヤコードと次のタイヤコードとの間の前記タイヤ帯状部材にスリットを入れるように前記スリット機構を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とするタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置。
【請求項3】
前記走査機構に前記スリット機構を搭載していることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置。
【請求項4】
前記スリット機構が、
刃先が前記タイヤ帯状部材に向くように配置されるスリット用のカッターと、
前記カッターを前記タイヤ帯状部材の長さ方向および厚み方向にそれぞれ往復動させるカッター駆動手段とを備えていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置。
【請求項5】
前記制御手段が、
前記タイヤ帯状部材を切り込むときは、前記カッターを前記長さ方向および前記厚み方向に往動させ、
前記カッターを戻すときは、前記カッターを前記厚み方向に復動させて前記タイヤ帯状部材から引き抜いた後、前記長さ方向に復動させて切込み前の位置に戻すように制御する制御機構を備えていることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置。
【請求項6】
前記カッター駆動手段が、
前記カッターを前記タイヤ帯状部材の長さ方向に往復動させる第1シリンダーと、前記カッターを前記タイヤ帯状部材の厚み方向に往復動させる第2シリンダーとを備えていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のタイヤ帯状部材のエンズカウント・スリット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−106332(P2012−106332A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225662(P2011−225662)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】