説明

タイヤ情報検出装置

【課題】 コントローラ(質問器)から出力される質問信号を無変調信号として応答器のセンサを励振することによって変調による歪みの問題を解決する。
【解決手段】 車輌のタイヤ近傍に向けて質問信号を送信すると共に、タイヤ空気圧等のタイヤ情報を含む応答信号を受信して処理する質問器10と、所定周波数の信号によって励振されてタイヤ情報を検出するためのセンサ4を有すると共に、タイヤに装着され、質問信号に応答して応答信号を質問器10に返信する応答器1とを備え、質問器10からは所定周波数離れた第1の信号と第2の信号とを有する質問信号を送信し、応答器1には二つの信号を混合してそれらの周波数の差の信号を出力するミキサ手段3を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの空気圧等を監視するためのタイヤ情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3を参照して従来のタイヤ情報検出装置を説明する。コントローラは、約2.4GHzのマイクロ波周波数帯にある搬送波信号f1について少なくとも1つの無線周波数ジェネレータG1を含む。その搬送波信号f1は、ジェレータG2によって生成される、好ましくは1乃至30MHzの周波数帯にある少なくとも1つの低周波数信号f2によって変調される。この変調の結果として、所望の供給周波数が生成される。結果として生じる信号は、増幅され、タイヤの近傍のアンテナA1を介して送出される。
【0003】
変調は、振幅変調であることが好ましい。このような変調形式に従って、側波帯が、スペクトル内に、搬送波周波数に沿って左右に例えば振幅変調についてf1+f2およびf1−f2のところに生成される。複数の周波数f2が使用される場合、それらの合計は、例を図に示される側帯波はスペクトルを生じる。変調は、電子スイッチS1によってスイッチオフされ、そのスイッチは、タイマT1によって周期的に制御される。
【0004】
タイヤは、少なくとも1つの測定値送信機MG1(トランスポンダ)を含み、想定値送信機MG1は、少なくとも1つのアンテナA2、少なくとも1つのダイオードを持つ受信機、および受信される変調信号によって励起される水晶共振器Q1を含む。この水晶共振器Q1は、タイヤ空気圧の影響をうけて共振周波数が変わり、再びそれ自体変調器ダイオードまたはミキサダイオードD2、好ましくはパラメトリック利得が使用されることを許すバラクタダイオードに結合される。さらにその周波数は、測定値によって変更される。変調は、スイッチS1によって時間t1にスイッチオフされ、受信機E1は、すぐこの後に、t1の約1μ秒後であるt2にアクティブにされる。
【0005】
供給周波数の変調が、スイッチオフされると、水晶共振器Q1は、約1m秒間発振し続ける。搬送波が、まだ存在するので、この供給周波数は、変調ダイオードD2を介して変調される。しかし、これが起きるのは、変調周波数f2がすでに水晶共振器Q1を励起しているとき、すまわち変調周波数f2が起こり得る測定値にほぼ対応するときのみである。供給信号が、干渉を引き起こし得るA1によって変調されることなく、受信機はA3の変調された信号をアンテナA4で認識し、従って変調から測定値を導き出すことができる。変調が無い場合または変調がよわすぎる場合、起こり得る測定値は、繰り返しサンプリングすることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特許第3494440号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トランスポンダMG1においては、振幅変調波がダイオードD1によって検波されてf2の変調波が検波され、検波された変調波によって水晶共振器Q1が励振されるが、十分に励振するためには振幅変調波の変調度を大きくする必要がある。しかし、水晶共振器を励振し易くするために変調度を大きくすると、変調波が大きく歪み、スプリアス発生の問題が生じる、また、その問題を避けるために変調度を下げると変調レベルが低くなって水晶共振器を十分に励振できないという問題がある。
【0008】
本発明はコントローラ(質問器)から出力される質問信号を無変調信号として応答器のセンサを励振することによって変調による歪みの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する手段として、車輌のタイヤ近傍に向けて質問信号を送信すると共に、タイヤ空気圧等のタイヤ情報を含む応答信号を受信して処理する質問器と、所定周波数の信号によって励振されて前記タイヤ情報を検出するためのセンサを有すると共に、前記タイヤに装着され、前記質問信号に応答して前記応答信号を前記質問器に返信する応答器とを備え、前記質問器からは前記所定周波数離れた第1の信号と第2の信号とを有する前記質問信号を送信し、前記応答器には前記二つの信号を混合してそれらの周波数の差の信号を出力するミキサ手段を設けた。
【0010】
また、前記受信期間には前記第1の信号のみを送信した。
【0011】
また、前記質問器には、前記第1の信号を出力する第1の電圧制御発振器と、第1の基準信号が入力されると共に、前記第1の電圧制御発振器を制御する第1のPLL回路と、前記第2の信号を出力する第2の電圧制御発振器と、第2の基準信号が入力されると共に、前記第2の電圧制御発振器を制御する2のPLL回路とを設け、前記第1の信号を前記第1のPLL回路に入力し、前記第1の信号と前記第2の信号との差の周波数の信号を前記第2のPLL回路に入力した。
【0012】
また、前記第1の信号のレベルと前記第2の信号のレベルとを互いに等しくした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、車輌のタイヤ近傍に向けて質問信号を送信すると共に、タイヤ空気圧等のタイヤ情報を含む応答信号を受信して処理する質問器と、所定周波数の信号によって励振されてタイヤ情報を検出するためのセンサを有すると共に、タイヤに装着され、質問信号に応答して応答信号を質問器に返信する応答器とを備え、質問器からは所定周波数離れた第1の信号と第2の信号とを有する質問信号を送信し、応答器には二つの信号を混合してそれらの周波数の差の信号を出力するミキサ手段を設けたので、質問器からは振幅変調波を送信する代わりに2波の信号を送信するだけでセンサを励振することができるので、振幅変調波の歪みによるスプリアスの問題から開放されると共に、そのレベルを下げてもセンサを十分に励振することが可能である。
【0014】
また、請求項2の発明によれば、受信期間には第1の信号のみを送信したので、応答器ではセンサの出力によって第1の信号を変調して応答信号を返信できる。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、質問器には、第1の信号を出力する第1の電圧制御発振器と、第1の基準信号が入力されると共に、第1の電圧制御発振器を制御する第1のPLL回路と、第2の信号を出力する第2の電圧制御発振器と、第2の基準信号が入力されると共に、第2の電圧制御発振器を制御する2のPLL回路とを設け、第1の信号を第1のPLL回路に入力し、第1の信号と第2の信号との差の周波数の信号を第2のPLL回路に入力したので、例えば第1の信号の周波数が変動しても差の周波数は常に一定となり、センサを確実に励振することができる。
【0016】
また、請求項4の発明によれば、第1の信号のレベルと第2の信号のレベルとを互いに等しくしたので、通常の振幅変調波による搬送波レベルよりも3dBさげても、100%振幅変調波の復調によって得られる復調信号と同じレベルのビート信号(差の周波数の信号)が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に従って本発明のタイヤ情報検出装置を説明する。図1において、車輌のタイヤ(図示せず)には応答器1が装着される。また、車輌本体(図示せず)側には、質問器10が設けられる。
【0018】
応答器1はアンテナ2と、アンテナ2に結合されたミキサ手段3と、ミキサ手段3に結合されたセンサ4等を有する。ミキサ手段3はダイオード等の非直線素子からなり、周波数変換手段としての機能と変調手段としての機能を有する。また、センサ4は自己共振周波数あるいはそれに近い周波数(例えば、およそ10MHz)の信号によって励振されると自己共振するような水晶共振器等からなり、その共振周波数はタイヤの空気圧や温度等に対応して変化する。センサ4は検出すべきタイヤ情報に対応して複数設けられる。
【0019】
質問器10は、アンテナ11に結合された送信部12と受信部13とを有する。送信部12には第1の信号(例えば、周波数F1=2.4GHz)を発生する第1の電圧制御発振器21と、第1の電圧制御発振器21を制御する第1のPLL回路22と、第1のPLL回路22に第1の基準信号を供給する第1の基準発振器23と、第1の信号を増幅する第1の送信アンプ24と、第2の信号(例えば、周波数F2=2.41GHz)を発生する第2の電圧制御発振器25と、第2の電圧制御発振器25を制御する第2のPLL回路26と、第2のPLL回路26に第2の基準信号を供給する第2の基準発振器27と、第2の信号を増幅する第2の送信アンプ28とが設けられる。
【0020】
また、第1の電圧制御発振器21から出力される第1の信号と第2の電圧制御発振器25から出力される第2の信号とのビート信号(周波数差の信号)を得るためのミキサ29と、増幅された第1及び第2の信号を加算する加算手段30と、第2の送信アンプ28と加算手段30との間に接続されたスイッチ31とが設けられる。そして、加算手段30がアンテナ11に結合される。
【0021】
また、第1の電圧制御発振器21から出力される第一の信号は第1のPLL回路22に供給されると共に、ビート信号は第2のPLL回路26に供給される。そして、第1のPLL回路22と第2のPLL回路26とにはそれぞれ所定の分周比データが入力され、第1の電圧制御発振器21は2.4GHzで発振し、第2の電圧制御発振器25は2.41GHzで発振する。従って、ビート信号は10MHzとなる。二つの発振信号は加算手段30を介して(スイッチ31がオンのとき)アンテナ11に出力される。
【0022】
また、受信部13には受信アンプ41と、復調手段42と、信号処理回路43等が設けられる。
【0023】
次に、本発明のタイヤ情報検出装置の動作を説明する。代表的なタイヤ情報としては、タイヤ空気圧やタイヤ温度があるが、説明の都合上タイヤ空気圧を検出する場合について説明する。もし、タイヤ温度も検出するようにすれば、応答器1にはそのためのセンサが設けられる。
【0024】
先ず、応答器1に対して送信される質問信号は、図2に示されるように送信期間Taと受信期間Tbとに分けられる。送信期間Taにおいてはスイッチ31が閉じられ、受信期間Tbにおいてはスイッチ31が開かれる。スイッチ31が閉じられた送信期間Taでは、第1の電圧制御発振器21からは第1の信号が出力される。第1の信号の周波数は第1の基準発振器23の信号と比較するするために第1のPLL回路22に入力される。そして、第1のPLL回路22に設定された分周比によって第1の電圧制御発振器21は第1の信号周波数(F1=2.4GHz)で発振する。
【0025】
また、第2の電圧制御発振器25は第2のPLL回路26によって制御されるが、第2のPLL回路26にはミキサ29によって得られた差の周波数の信号が比較の為に入力され、第2の基準発振器27の基準信号と比較される。この差の周波数がセンサ4の自己共振周波数又はその近傍の周波数(例えば10MHz)となるように第2のPLL回路26の分周比が設定されるので、第2の電圧制御発振器25は第2の信号周波数(F2=2.41GHz)で発振する。第1の信号と第2の信号とは同レベルで送信される。
【0026】
そして、第1の電圧制御発振器21から出力された第1の信号(F1)と第2の電圧制御発振器25から出力された第2の信号(F2)とが加算手段30を介してアンテナ11から放射される。即ち、2波(F1+F2)の信号が送信される。第1の信号と第2の信号との周波数差は、センサ4の自己共振周波に一致するかその近傍となるように設定されている。
【0027】
応答器1においては、アンテナ2で受信した2波の信号がミキサ手段3であるダイオードに入力され、ここで、2波のビートである差の周波数(10MHz)が生成される。この差の周波数の信号によってセンサ4が励振され、センサは自己共振周波数で共振する。
【0028】
また、受信期間Tbでは、スイッチ31が開となるので、第1の信号(F1)のみが送信される。
【0029】
応答器1においては、センサ4から出力される共振信号は、送信期間Taが終了しても多少の時間継続するので、引き続く受信期間Tbで送られてきている第1の信号を振幅変調する。この変調は、ミキサ手段3によって行われる。そして、自己共振周波数はタイヤの空気圧の影響をうけてそれに応じた周波数に変化するので、自己共振周波数の変化がタイヤ情報となる。
【0030】
ミキサ手段3によって振幅変調された被変調波は、第1の信号とその両側に10MHz離れて発生するサイドバンド信号とを有し、これが応答信号となってアンテナ2から放射されて質問器10のアンテナ11で受信される。そして、受信アンプ41で増幅された後に復調手段42によって復調され、10MHzの信号は、信号処理回路43によって処理され、タイヤ空気圧の情報が抽出される。この情報は図示しない表示装置に表示される。
【0031】
以上のように、本発明では、質問器10からは振幅変調波を送信する代わりに2波の信号を送信するだけでセンサ4を励振することができるので、振幅変調波の歪みによるスプリアスの問題から開放されると共に、そのレベルを下げてもセンサ4を十分に励振することが可能である。また、第1の信号と第2の信号とを同レベルとし、通常の振幅変調波による搬送波レベルよりも6dBさげても、100%振幅変調波の復調によって得られる復調信号と同じレベルのビート信号(差の周波数の信号)が得られる。
【0032】
また、比較の為の第2のPLL回路26に入力する信号を第1の信号と第2の信号との差の周波数としたので、例えば第1の信号の周波数が変動しても差の周波数は常に一定(10MHz)となり、センサ4を確実に励振することができる。さらに、第2のPLL回路26は低い周波数の比較によって位相制御するので安価な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のタイヤ情報検出装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明のタイヤ情報検出装置における質問信号のフォーマットである。
【図3】従来のタイヤ情報検出装置の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0034】
1:応答器
2:アンテナ
3:ミキサ手段
4:センサ
10:質問器
11:アンテナ
12:送信部
21:第1の電圧制御発振器
22:第1のPLL回路
23:第1の基準発振器
24:第1の送信アンプ
25:第2の電圧制御発振器
26:第2のPLL回路
27:第2の基準発振器
28:第2の送信アンプ
29:ミキサ
30:加算手段
31:スイッチ
41:受信アンプ
42:ミキサ手段
43:信号処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信期間に車輌のタイヤ近傍に向けて質問信号を送信すると共に、受信期間にタイヤ空気圧等のタイヤ情報を含む応答信号を受信して処理する質問器と、所定周波数の信号によって励振されて前記タイヤ情報を検出するためのセンサを有すると共に、前記タイヤに装着され、前記質問信号に応答して前記応答信号を前記受信期間に前記質問器に返信する応答器とを備え、前記質問器からは前記所定周波数離れた第1の信号と第2の信号とを有する前記質問信号を送信し、前記応答器には前記二つの信号を混合してそれらの周波数の差の信号を出力するミキサ手段を設けたことを特徴とするタイヤ情報検出装置。
【請求項2】
前記受信期間には前記第1の信号のみを送信したことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報検出装置。
【請求項3】
前記質問器には、前記第1の信号を出力する第1の電圧制御発振器と、第1の基準信号が入力されると共に、前記第1の電圧制御発振器を制御する第1のPLL回路と、前記第2の信号を出力する第2の電圧制御発振器と、第2の基準信号が入力されると共に、前記第2の電圧制御発振器を制御する2のPLL回路とを設け、前記第1の信号を前記第1のPLL回路に入力し、前記第1の信号と前記第2の信号との差の周波数の信号を前記第2のPLL回路に入力したことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ情報検出装置。
【請求項4】
前記第1の信号のレベルと前記第2の信号のレベルとを互いに等しくしたことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のタイヤ情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−76432(P2006−76432A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262428(P2004−262428)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】