説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】グリップ性能を向上できるタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と特定の窒素含有化合物とを共重合して得られた共重合体、プロトン酸、並びに、ゴム成分を含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高性能化、高馬力化が進む一方、安全性に対する意識も高まっており、タイヤに対するグリップ性能の要求も強まってきている。例えば、高速走行時の諸性能もその1つに挙げられる。
【0003】
グリップ性能はゴム組成物のヒステリシスロス特性に依存する。従来、ゴム組成物のグリップ性を高める手法としては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)のスチレン量又はビニル量を多くして、ガラス転移点を高くする手法が知られている。しかしながら、この手法を用いた場合、耐摩耗性が低下する傾向にあるだけでなく、低温時のグリップ性能が低下し、脆化破壊が起こる危険性がある。また、オイルを多量に使う手法も知られているが、この手法を用いた場合、破壊特性の低下により耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0004】
グリップ性能を向上させるその他の手法として、ゴム組成物に添加物を配合する手法がある。添加剤としては、例えば、タングステンなどの無機化合物(特許文献1参照)、アクリル系樹脂(特許文献2参照)及びウレタン系粒子(特許文献3参照)が提案されている。しかしながら、グリップ性能の向上については未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−319447号公報
【特許文献2】特開2002−80642号公報
【特許文献3】特開2002−97303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、グリップ性能を向上できるタイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と下記一般式で表される窒素含有化合物とを共重合して得られた共重合体、プロトン酸、並びに、ゴム成分を含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式中、R及びRは水素、
【化2】

又は
【化3】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。Xは
【化4】

又は
【化5】

で置換されていてもよい。Zは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。R〜Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。R〜Rは同じであっても異なっていてもよい。R及びR〜R14は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びR〜R14は同じであっても異なっていてもよい。lは3〜10の整数を表す。m及びnは1〜9の整数を表す。)
【0008】
上記共重合体の重量平均分子量は1.0×10〜1.0×10であることが好ましい。
【0009】
上記共重合体100質量%中の窒素含有化合物の含有量は0.05〜30質量%であることが好ましい。
【0010】
上記ゴム成分100質量部に対する共重合体の含有量は2〜150質量部であることが好ましい。
【0011】
上記プロトン酸はフェノール誘導体であることが好ましい。
【0012】
上記ゴム成分100質量部に対するプロトン酸の含有量は0.1〜30質量部であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と特定の窒素含有化合物とを共重合して得られた共重合体、プロトン酸、並びに、ゴム成分を含有するゴム組成物であるので、該ゴム組成物を用いることにより、グリップ性能に優れた空気入りタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴム組成物は、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と特定の窒素含有化合物とを共重合して得られた共重合体、プロトン酸、並びに、ゴム成分を含有する。
【0016】
<共重合体>
上記共重合体は、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と、下記一般式で表される窒素含有化合物とを共重合して得られる。
なお、共重合体及び窒素含有化合物の構造同定は、例えば、日本電子(株)製のJNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて行うことができる。
【化6】

(式中、R及びRは水素、
【化7】

又は
【化8】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。Xは
【化9】

又は
【化10】

で置換されていてもよい。Zは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。R〜Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。R〜Rは同じであっても異なっていてもよい。R及びR〜R14は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びR〜R14は同じであっても異なっていてもよい。lは3〜10の整数を表す。m及びnは1〜9の整数を表す。)
【0017】
本明細書において、飽和形環形成部とは、飽和環基の一部であることを意味する。すなわち、上記一般式において、XとNとは飽和環基を構成し、ZとNとは飽和環基を構成する。
【0018】
lの値は、3〜10であり、好ましくは3〜7である。m及びnの値は、1〜9であり、好ましくは1〜6である。l、m及びnの値が上記範囲内であれば、コストと性能改善効果との両立を図ることができる。
【0019】
lの値は3〜10であるため、(CR)は複数存在する。複数の(CR)のそれぞれは同じであっても異なってもよい。同様に、mが2以上の場合、複数の(CR1011)のそれぞれは同じであっても異なってもよく、nが2以上の場合、複数の(CR1314)のそれぞれは同じであっても異なってもよい。
【0020】
及びR〜R14が脂肪族炭化水素基である場合、炭素数は1〜30であり、好ましくは1〜15である。また、R及びR〜R14が脂環族炭化水素基である場合、炭素数は3〜30であり、好ましくは3〜10である。更に、R及びR〜R14が芳香族炭化水素基である場合、炭素数は5〜30であり、好ましくは5〜10である。R及びR〜R14の炭素数が上記範囲内であれば、コストと性能改善効果との両立を図ることができる。また、入手容易性の点から、R及びR〜R14は、水素又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0021】
〜Rが脂肪族炭化水素基である場合、炭素数は1〜30であり、好ましくは1〜15である。また、R〜Rが脂環族炭化水素基である場合、炭素数は3〜30であり、好ましくは3〜15である。更に、R〜Rが芳香族炭化水素基である場合、炭素数は5〜30であり、好ましくは5〜10である。そして、R〜Rが複素環基(芳香族複素環基を含む)である場合、環構成原子数は3〜30であり、好ましくは3〜15である。R〜Rの炭素数及び環構成原子数が上記範囲内であれば、コストと性能改善効果との両立を図ることができる。また、入手容易性の点から、R〜Rは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又は複素環基であることが好ましく、脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
【0022】
が脂肪族炭化水素基の場合、炭素数は1〜4であり、好ましくは1〜3である。Rの炭素数が上記範囲内であれば、コストと性能改善効果との両立を図ることができる。
【0023】
上記一般式で表される窒素含有化合物としては、例えば、3−又は4−(2−アゼチジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ヘプタメチレンイミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−オクタメチレンイミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,5−ジメチルピロリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−メチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(3−メチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−メチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−エチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−(1−ピロリジニル)ピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−ピペリジノピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,6−ジメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(3,3−ジメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(3,5−ジメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−メチルピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−エチルピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−メチルホモピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−モルホリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,6−ジメチルモルホリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−チアゾリジリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−トオモルホリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−エチルメチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジエチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルイソプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−エチルイソプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジプロピルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ジイソプロピルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルブチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−エチルブチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチル−tert−ブチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−tert−ブチルイソプロピルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジブチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(ジ−sec−ブチル)アミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ジイソブチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(tert−アミル−tert−ブチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジペンチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルヘキシルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジヘキシルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(tert−アミル−tert−オクチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジオクチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ビス(2−エチルヘキシルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジデシルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルオクタデシルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルアニリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジフェニルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−フェニルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−ベンジルメチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−エチルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−イソプロピルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−ブチルベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−(tert−ブチル)ベンジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−ジベンジルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−メチルフェネチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(N−ベンジル−2−フェネチルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−ベンジルピペリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−フェニルピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−ベンジルピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−インドリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−メチルインドリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−フェノキサジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−フェノチアジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−アニリノピリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−ベンジルアミノピリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2,2’−ジピリジルアミノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−メチルアミノ)ピリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−(1−(2−ピリジル)ピペラジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(2−(2−メチルアミノエチル)ピリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−(エチルアミノメチル)ピリジノ)エチル)スチレン、3−又は4−(2−(4−(エチルアミノメチル)ピリジノ)エチル)スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。なかでも、性能改善効果が大きいという点で、3−又は4−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−又は4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、3−又は4−(2−モルホリノエチル)スチレン、3−又は4−(2−チアゾリジリノエチル)スチレンが好ましい。
【0024】
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、入手容易性の点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
【0025】
上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせても用いてもよい。なかでも、入手容易性の点から、スチレンが好ましい。
【0026】
<共重合体の製造方法>
(重合方法)
上記共重合体は、上記窒素含有化合物と、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物とを共重合して得られる。重合方法については特に制限はなく、例えば、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法などが挙げられる。なかでも、設計の自由度が高く、加工性にも優れるという点から、溶液重合法が好ましい。また、重合形式は特に限定されず、例えば、回分式、連続式などが挙げられる。更に、溶液重合法を用いた場合、重合反応の種類としては特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などが挙げられるが、コスト及び生産性の点から、アニオン重合が好ましい。
【0027】
溶液重合法を用いた場合には、溶液中のモノマー濃度(窒素含有化合物、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物の合計)は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が5質量%未満では、得られる共重合体の量が少なく、コストが高くなる傾向がある。また、溶液中のモノマー濃度は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。溶液中のモノマー濃度が50質量%をこえると、溶液粘度が高くなりすぎて撹拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。
【0028】
(アニオン重合における重合開始剤)
アニオン重合を行う場合、重合開始剤としては特に制限はないが、有機リチウム化合物が好ましく用いられる。上記有機リチウム化合物としては、炭素数2〜20のアルキル基を有するものが好ましい。炭素数2〜20のアルキル基を有する有機リチウム化合物としては、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられる。これらの中で、入手容易性、安全性等の観点から、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。
【0029】
(アニオン重合の方法)
上記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共重合体を製造する方法としては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂防族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、上記リチウム化合物を重合開始剤として使用し、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と、上記一般式で表される窒素含有化合物とを、必要に応じてランダマイザーの存在下でアニオン重合させることにより、目的の共重合体を得ることができる。
【0030】
(アニオン重合における炭化水素系溶剤)
上記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましい。炭素数3〜8の炭化水素系溶剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(アニオン重合におけるランダマイザー)
上記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分(例えば、ブタジエンにおける1、2−結合、イソプレンにおける3、4−結合)のミクロ構造の制御や、共重合体におけるモノマー単位(例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位)の組成分布のランダム化などの作用を有する化合物のことである。ランダマイザーとしては特に制限はなく、一般的な材料を用いることができ、例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩も用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
上記ランダマイザーの使用量は、重合開始剤に対して、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル当量未満では、添加効果が小さく、共重合体がランダム化されにくくなる傾向がある。また、ランダマイザーの使用量は、重合開始剤に対して、1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モル当量をこえると、モノマーの反応速度が大きく変化してしまい、共重合体がランダム化されにくくなる傾向がある。
【0033】
上記共重合体の生成反応後に、必要に応じて、公知の老化防止剤や、重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えることができる。
【0034】
上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×10以上、より好ましくは1.2×10以上、更に好ましくは1.5×10以上である。1.0×10未満では、ヒステリシスロスが大きくなり、低燃費性及び耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、共重合体の重量平均分子量は、好ましくは1.0×10以下、より好ましくは8.0×10以下である。1.0×10を越えると、加工性が悪化する傾向がある。
なお、本発明において、重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0035】
上記共重合体100質量%中の窒素含有化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。0.05質量%未満では、性能改善効果が得られにくい傾向がある。また、共重合体100質量%中の窒素含有化合物の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%以下である。30質量%を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0036】
<ゴム組成物>
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物に使用するゴム成分としては、ジエン系ゴムが好ましい。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系合成ゴムが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、グリップ性能及び耐摩耗性をバランスよく示すことから、NR、BR、SBRが好ましく、SBRがより好ましい。
【0037】
(共重合体)
上記共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、最も好ましくは15質量部以上である。2質量部未満であると、グリップ性能改善の効果が得られにくい傾向がある。また、共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、最も好ましくは60質量部以下である。150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0038】
(プロトン酸)
本発明のゴム組成物は、プロトン酸を含有する。プロトン酸としては特に限定されず、例えば、カルボン酸、フェノール誘導体、スルホン酸等が挙げられる。なかでも、加硫特性に悪影響を与えにくいという理由から、カルボン酸、フェノール誘導体が好ましい。
【0039】
カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸、コハク酸、マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸、安息香酸、安息香酸誘導体、ケイ皮酸、ナフトエ酸などの芳香族モノカルボン酸、フタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸が挙げられる。なかでも、グリップ性能改善効果が高いという点から、芳香族モノカルボン酸が好ましく、ナフトエ酸がより好ましい。
【0040】
フェノール誘導体としては、下記一般式(I)〜(IV)に示す化合物等が挙げられる。
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【0041】
上記一般式(I)〜(IV)において、R15〜R21は、同一又は異なって、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)の炭化水素基である。該炭化水素基としては、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)のアルキル基、炭素数1〜10(好ましくは1〜6)のアルケニル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基等を挙げることができる。
【0042】
b及びb’は、同一又は異なって、0又は1〜3の整数である。b及びb’は、1〜2であることが好ましい。
a及びa’は、同一又は異なって、1又は2の整数である。a及びa’は、1であることが好ましい。
sは、1〜3の整数である。sは、1〜2であることが好ましい。
tは、0又は1〜3の整数である。tは、1〜2であることが好ましい。
【0043】
Yは、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子又は該原子を含有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基又はそれらの不飽和基を挙げることができる。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基等を、シクロアルキレン基としては、シクロヘキシレン基等を、不飽和基としては、ビニレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、エステル結合含有基、芳香族基等を挙げることができる。Yの好ましい具体例は、次の(1)〜(3)である。また、エステル結合含有基は、−CO−O−を含むグループであり、具体例として下記の(4)〜(7)で表されるものを例示することができる。
【化15】

【0044】
上記一般式(I)〜(IV)で表されるフェノール誘導体の具体例としては、例えば、2−tert−ブチルフェノール;2−エチル−6−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;3−メチル−2,6−ビス(1−メチルエチル)フェノール;4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;3−メチル−2,6−ビス(1−メチルプロピル)フェノール;2−ブチル−6−エチルフェノール;4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェノール;6−tert−ブチル−2,3−ジメチルフェノール;2−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−シクロヘキシル−6−tert−ブチルフェノール;2−シクロヘキシル−6−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール;4,4’−ジヒドロキシビフェニル;4,4’−チオビスフェノール;ヒドロキノン;1,5−ヒドロキシナフタレン;4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−エチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−プロピリデンビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)等を挙げることができる。なかでも、窒素含有化合物と水素結合を形成しやすいという理由から、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)が好ましい。
【0045】
上記プロトン酸は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記プロトン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、最も好ましくは3.0質量部以上である。0.1質量部未満であると、グリップ性能改善の効果が得られにくい傾向がある。また、上記プロトン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、最も好ましくは10質量部以下である。30質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0047】
(補強用充填剤)
本発明のゴム組成物は、補強用充填剤を含むことができる。補強用充填剤としては、タイヤ工業において一般的な材料を使用することができ、例えば、カーボンブラック、シリカが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、グリップ性能と耐摩耗性とのバランスの点から、カーボンブラックが好ましい。
【0048】
上記カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。80m/g未満では、グリップ性能、耐摩耗性が悪化する傾向がある。カーボンブラックのNSAは、好ましくは280m/g以下、より好ましくは200m/gである。280m/gを超えると、カーボンブラックが分散しにくくなり、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217のA法によって求められる。
【0049】
上記カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、最も好ましくは80質量部以上である。10質量部未満では、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、上記カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは140質量部以下、最も好ましくは130質量部以下である。200質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0050】
(老化防止剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、老化防止剤を含むことができる。老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックスなどを適宜選択して使用することが可能である。
【0051】
(軟化剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、軟化剤を含むことができる。軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、大豆油、パーム油、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、トール油、サブ、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、などが挙げられる。
【0052】
上記軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以下である。100質量部を超えると、グリップ性能が悪化する傾向がある。
【0053】
(加硫剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加硫剤を含むことができる。加硫剤としては、例えば、有機過酸化物、硫黄系加硫剤などを使用できる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン等を使用することができる。また、硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができる。加硫剤としては、コスト及び汎用性の点から、硫黄系加硫剤が好ましく、硫黄がより好ましい。
【0054】
(加硫促進剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことができる。加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系加硫促進剤が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(加硫助剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加硫助剤を含むことができる。加硫助剤としては、例えば、ステアリン酸、酸化亜鉛(亜鉛華)などを使用することができる。
【0056】
(その他)
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記以外の成分として、補強剤(シリカ及びカーボンブラック以外のもの)、カップリング剤などのタイヤ用又は一般のゴム組成物に配合される各種配合剤及び添加剤を配合することができる。また、これらの配合剤、添加剤の含有量も一般的な量とすることができる。
【0057】
このようにして得られた本発明のゴム組成物を空気入りタイヤに用いることにより、優れたグリップ性能を有する空気入りタイヤを提供することができる。
【0058】
本発明のゴム組成物は、タイヤ用の各部材に用いることができ、なかでも、トレッド(ベーストレッド及びキャップトレッド)に好適に用いることができる。
【0059】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物は、従来公知の製造方法により製造することができ、その製造方法が限定されるものではない。例えば、上記各成分をバンバリーミキサーや混練ロール等の混練機を用いて、通常の方法及び条件で混練することによって製造することができる。
【0060】
<空気入りタイヤの製造方法>
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、必要に応じて上記配合剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の空気入りタイヤを得ることができる。
【実施例】
【0061】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0062】
以下、窒素含有化合物(1)〜(10)の合成時に用いた各種薬品について説明する。
シクロヘキサン:関東化学(株)製のシクロヘキサン
ピロリジン:関東化学(株)製のピロリジン
ヘキサメチレンイミン:関東化学(株)製のへキサメチレンイミン
モルホリン:関東化学(株)製のモルホリン
チアゾリジン:関東化学(株)製のチアゾリジン
4−ピペリジノピペリジン:関東化学(株)製の4−ピペリジノピペリジン
4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン:シグマアルドリッチ社製の4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
ジプロピルアミン:シグマアルドリッチ社製のジプロピルアミン
ジフェニルアミン:シグマアルドリッチ社製のジフェニルアミン
2,2’−ジピリジルアミン:シグマアルドリッチ社製の2,2’−ジピリジルアミン
ジビニルベンゼン:シグマアルドリッチ社製のジビニルベンゼン
1,3−ジイソプロペニルベンゼン:シグマアルドリッチ社製の1,3−ジイソプロペニルベンゼン
1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール
【0063】
<窒素含有化合物の合成>
(窒素含有化合物(1))
充分に窒素置換した100ml容器に、シクロヘキサン50ml、ピロリジン4.lml、ジビニルベンゼン8.9mLを加え、0℃にて1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えて境拌した。1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、抽出及び精製を行うことで窒素含有化合物(1)を得た。
【0064】
(窒素含有化合物(2)〜(10)の合成)
表1に従って、窒素含有化合物(1)と同様の処方にて窒素含有化合物(2)〜(10)を得た。
【0065】
【表1】

【0066】
以下、共重合体(1)〜(14)の合成時に用いた各種薬品について説明する。
シクロヘキサン:関東化学(株)製のシクロヘキサン
スチレン:関東化学(株)製のスチレン
ブタジエン:東京化成工業(株)製の1,3−ブタジエン
THF:関東化学(株)製のテトラヒドロフラン
1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
【0067】
<共重合体の合成>
(共重合体(1)の合成)
充分に窒素置換した1L容器に、シクロヘキサン600ml、THF20ml、スチレン7.4mL、1,3−ブタジエン36mL、1.6Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液5.8mlを入れ、30℃で攪拌した。1時間後、イソプロパノールを入れて反応を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加してから、ろ過した後、溶媒留去することで共重合体(1)を得た。
【0068】
(共重合体(2)〜(14)の合成)
表2に従って、共重合体(1)と同様の処方にて、共重合体(2)〜(14)を得た。
【0069】
<測定及び同定方法>
(重量平均分子量(Mw)の測定)
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)を用いて測定した。校正は、標準ポリスチレンによって行った。
【0070】
(共重合体中の窒素含有化合物含有量の測定)
共重合体中の窒素含有化合物含有量は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定した。
【0071】
【表2】

【0072】
以下、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
SBR:旭化成ケミカルズ(株)製のタフデン3330(ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN110(NSA:144m/g)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
プロトン酸(1):シグマアルドリッチ社製の1−ナフトエ酸
プロトン酸(2):シグマアルドリッチ社製の4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS
【0073】
<実施例(1)〜(15)及び比較例(1)>
表3に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を約150℃で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、約80℃で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃、15分、25kgfの条件にて加硫を行い、試験用タイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を得た。
【0074】
上記加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを使用して、以下に示す試験方法により、グリップ性能を評価した。試験結果を表3に示す。
【0075】
<評価項目及び試験方法>
(グリップ性能(1))
(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてグリップ性能を評価した。幅20mm、直径100mmの円筒形に成形した上記加硫ゴム組成物(サンプル)を用い、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度50℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0〜70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。比較例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほどグリップ性能が高いことを示す。
【0076】
(グリップ性能(2))
上記試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着して、アスファルト路面のテストコースを10走行し、グリップ性能(グリップ感、ブレーキ性能、トラクション性能)について、テストドライバーによる官能評価を行った。評価は、満点を5とし、比較例1のタイヤのグリップ性能を3とした。数値が大きいほどグリップ性能が高いことを示す。(5:良い、4:やや良い、3:普通、2:やや悪い、1:悪い)
【0077】
【表3】

【0078】
<評価結果>
表3に示すように、特定の窒素含有化合物を含む共重合体と、プロトン酸とを配合した実施例(1)〜(15)のゴム組成物は、比較例(1)のゴム組成物に比べて、グリップ性能に優れたゴム組成物となることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と下記一般式で表される窒素含有化合物とを共重合して得られた共重合体、プロトン酸、並びに、ゴム成分を含有するタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式中、R及びRは水素、
【化2】

又は
【化3】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。Xは
【化4】

又は
【化5】

で置換されていてもよい。Zは(CR、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、又は、(CR1011−S−(CR1314からなる飽和形環形成部を表す。R〜Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。R〜Rは同じであっても異なっていてもよい。R及びR〜R14は水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びR〜R14は同じであっても異なっていてもよい。lは3〜10の整数を表す。m及びnは1〜9の整数を表す。)
【請求項2】
前記共重合体の重量平均分子量が1.0×10〜1.0×10である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記共重合体100質量%中の窒素含有化合物の含有量が0.05〜30質量%である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分100質量部に対する共重合体の含有量が2〜150質量部である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記プロトン酸がフェノール誘導体である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記ゴム成分100質量部に対するプロトン酸の含有量が0.1〜30質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−79914(P2011−79914A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231892(P2009−231892)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】