説明

タイヤ空気圧監視システム

【課題】タイヤ空気圧監視システムにおいて、センサユニットからの情報信号に基づき、そのセンサユニットを備えたタイヤの取り付け位置をより正確に識別することにある。
【解決手段】タイヤホイールや車両のボデー形状によって、タイヤの回転位置に応じて検出されるRSSIに、ばらつきが生じることで、異なるタイヤのセンサユニット30b,30cから同一値のRSSIを含むRSSI情報信号が送信される可能性がある。この場合であっても、上記異なるタイヤにおけるセンサユニット30b,30cの回転位置によって重力情報が異なる。車載制御部11は、RSSI情報のみならず重力情報も加味するため、タイヤの取り付け位置を識別し、その取り付け位置にIDコードを関連付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤ空気圧監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるシステムとして、各タイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)が知られている。
従来のTPMSは、図9に示すように、各タイヤに取り付けられるセンサユニット100と、これらセンサユニット100に対して情報要求信号を無線送信するトリガ機101と、を備える。センサユニット100は、情報要求信号を受信すると、タイヤの空気圧を検出し、その検出結果を含む情報信号を無線送信する。車両に搭載される受信機103は、受信した情報信号に基づきタイヤの空気圧を監視し、タイヤの空気圧が低下した旨判断したときには警告を行う。
【0003】
さらに、特許文献1に記載のTPMSにおいては、空気圧が低下したタイヤを特定したうえで警告が行われる。具体的には、センサユニット100は、情報要求信号を受信すると、その信号の受信信号強度(RSSI:Receive Signal Strength Indication)を検出する。そして、センサユニット100は、情報要求信号のRSSIに関する情報と、固有のIDコードとを情報信号に含ませて送信する。
【0004】
受信機103は、各センサユニット100からの情報信号に含まれる情報要求信号のRSSIに関する情報に基づき、各情報信号に含まれるIDコードをタイヤの各取り付け位置(右前輪、右後輪、左前輪及び左後輪)に関連付ける。詳しくは、トリガ機101及び各センサユニット100間の距離L1〜L4と、情報要求信号のRSSIとの間には相関関係が存在する。すなわち、各センサユニット100により検出される情報要求信号のRSSIに差が生じるように距離L1〜L4はそれぞれ異なるように設定されている。従って、トリガ機101から最も近い左後輪のセンサユニット100によって検出される情報要求信号のRSSIは最大となる。受信機103は、各情報信号の情報要求信号のRSSIに関する情報を比較して、情報要求信号のRSSIが最も強い情報信号に含まれるIDコードを左後輪に関連付ける。以下同様にして、情報要求信号のRSSIの比較に基づき情報信号のIDコードが各取り付け位置に関連付けられる。この各IDコードの関連付けによって、受信機103は、情報信号を受信したとき、それに含まれるIDコードに基づき、何れの取り付け位置のタイヤに係る情報であるかを特定できる。従って、タイヤを特定したうえで警告を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−15491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際には、トリガ機101及びセンサユニット100間の距離L1〜L4と、RSSIとの関係は一定とならない。これは、センサユニット100により検出されるRSSIはタイヤホイールや車両のボデーの影響によりタイヤの回転位置に伴って変化するためである。この影響によって情報要求信号のRSSIの強弱関係が予め想定される順番とならないおそれがある。これにより、情報信号のIDコードが誤ったタイヤの取り付け位置に関連付けられることが懸念される。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサユニットからの情報信号に基づき、そのセンサユニットを備えたタイヤの取り付け位置がより正確に識別されるタイヤ空気圧監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、各タイヤに装着されるとともに、情報要求信号を受信すると、その情報要求信号の受信信号強度を検出し、その検出結果である受信信号強度情報及びタイヤの空気圧情報の少なくとも何れか一方及び識別コードを含む情報信号を送信するセンサユニットと、車両において、前記各センサユニットによって検出される受信信号強度が同一とならない位置に設けられるとともに、前記情報要求信号を無線送信する送信アンテナと、受信した前記各情報信号に含まれる情報要求信号の受信信号強度情報に基づき、前記識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付けることで、受信した前記情報信号に含まれる前記識別コードに基づき空気圧が低下したタイヤの取り付け位置を通知する車載制御装置と、を備えたタイヤ空気圧監視システムにおいて、前記センサユニットに設けられ、タイヤの回転位置に応じて値が変化する特定軸方向の重力加速度を検出する加速度センサを備え、前記センサユニットは、前記受信信号強度情報とともに、前記加速度センサの検出結果である重力情報を、前記情報信号に含ませて送信し、前記車載制御装置は、前記情報信号に含まれる前記受信信号強度情報及び前記重力情報の組み合わせに基づき、同情報信号に含まれる前記識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付けることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、送信アンテナは、各センサユニットによって検出される受信信号強度が同一とならない位置に設けられている。このため、理論的には、互いに異なる受信信号強度が検出される。しかし、実際には、タイヤホイールや車両のボデー形状によって、タイヤの回転位置に応じて検出される受信信号強度に、ばらつきが生じる。従って、異なるタイヤのセンサユニットから同一値の受信信号強度情報を含む情報信号が送信される可能性がある。この場合であっても、上記異なるタイヤにおけるセンサユニットの回転位置によって重力情報が異なる。車載制御装置は、受信信号強度情報のみならず重力情報も加味するため、タイヤの取り付け位置を識別できる。よって、その取り付け位置に識別コードを関連付けることができる。これにより、識別コードがより正確にタイヤの取り付け位置に関連付けられる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤ空気圧監視システムにおいて、各タイヤの取り付け位置が各回転位置にあるときに測定される受信信号強度情報及び重力情報が予め記憶されるメモリを備え、前記車載制御装置は、各タイヤの回転位置に応じて前記各センサユニットが検出しうる前記受信信号強度の信号強度範囲を設定し、受信した前記情報信号に含まれる前記受信信号強度が前記各信号強度範囲のうち重複しない領域にある旨判断したとき、前記情報信号に含まれる受信信号強度情報と、前記メモリに記憶される受信信号強度情報との比較のみで前記情報信号に含まれる前記識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付け、前記受信信号強度が前記各信号強度範囲のうち重複する領域にある旨判断したとき、前記情報信号に含まれる前記受信信号強度情報及び前記重力情報の組み合わせと、前記メモリに記憶される受信信号強度情報及び重力情報の組み合わせとの比較に基づき同情報信号に含まれる前記識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付けることをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、情報信号に含まれる受信信号強度が各信号強度範囲のうち重複しない領域にある旨判断されたとき、受信信号強度情報のみで情報信号に含まれる識別コードがタイヤの取り付け位置に関連付けられる。この場合には、重力情報を参照する必要がなく、より迅速に識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付けることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のタイヤ空気圧監視システムにおいて、前記車載制御装置は、異なる前記センサユニットから同一の前記受信信号強度情報及び前記重力情報を含む前記情報信号を受信しうる場合において、その情報信号を受信した旨判断したとき、走行して停車した後に再び前記情報要求信号を送信することをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、異なるセンサユニットから同一の受信信号強度情報及び重力情報を含む情報信号を受信しうる。この情報信号が受信されたとき、識別コードがタイヤの取り付け位置に関連付けられることなく、再び情報要求信号が送信される。よって、この情報要求信号の再送信を通じて、前回と異なる内容の情報信号を受信可能となる。従って、識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付けることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のタイヤ空気圧監視システムにおいて、前記送信アンテナは前記各センサユニットとの距離が異なる位置に1つ設けられることをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、送信アンテナと各センサユニットとの距離は異なるように設定されている。従って、送信アンテナが1つの場合においても、各センサユニットによって異なる受信信号強度が検出される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タイヤ空気圧監視システムにおいて、センサユニットからの情報信号に基づき、そのセンサユニットを備えたタイヤの取り付け位置をより正確に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】タイヤ空気圧監視システムの構成を示すブロック図。
【図2】送信アンテナの設置位置を示した車両の上面図。
【図3】タイヤにおける加速度センサの向きを示した模式図。
【図4】タイヤの回転に伴う加速度センサの検出結果を示す波形図。
【図5】各タイヤの各回転位置におけるRSSIを示した模式図。
【図6】第1〜第4の閾値を示すRSSIのグラフ。
【図7】RSSI情報、重力情報及び取り付け位置が対応付けられたテーブル。
【図8】車載制御部の処理手順を示すフローチャート。
【図9】背景技術におけるタイヤ空気圧監視システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかるタイヤ空気圧監視システムを具体化した一実施形態について図1〜図8を参照して説明する。
(センサユニット)
図1に示すように、車両1の各タイヤのバルブ部分にはセンサユニット30a〜30dが設けられている。具体的には、図2に示すように、右前輪にはセンサユニット30aが設けられ、左前輪にはセンサユニット30bが設けられる。また、右後輪にはセンサユニット30cが設けられ、左後輪にはセンサユニット30dが設けられる。センサユニット30a〜30dは、車両1側からのRSSI情報要求信号及び空気圧情報要求信号に基づき空気圧情報信号及びRSSI情報信号を送信する。
【0019】
図1の下側に拡大して示すように、センサユニット30a〜30dは、空気圧センサ33と、加速度センサ38と、CPU(Central Processing Unit)31と、送信回路32と、送信アンテナ32aと、受信回路37と、受信アンテナ37aと、メモリ35とを備える。不揮発性のメモリ35には、各センサユニット30a〜30dに固有のIDコード(識別コード)が記憶されている。
【0020】
受信回路37は、受信アンテナ37aを介して受信したRSSI情報要求信号又は空気圧情報要求信号を復調して、その復調した信号をCPU31に出力する。また、受信回路37はRSSI検出回路36を備える。RSSI検出回路36は、受信した各情報要求信号のRSSI(受信信号強度)を検出し、その検出結果をCPU31に出力する。
【0021】
空気圧センサ33はタイヤの空気圧を検出するとともに、その検出結果をCPU31に出力する。CPU31は、空気圧センサ33からの検出結果に基づきタイヤの空気圧を認識する。
【0022】
また、加速度センサ38は、タイヤの径方向に沿って設定される1軸方向の加速度を検出する。詳しくは、加速度センサ38は、図3の矢印で示すように、タイヤの回転位置に関わらずタイヤの回転中心O1の方向が正となるように設定されている。なお、図3においては、加速度センサ38が90°間隔で描かれているが、これは同一の加速度センサ38がタイヤの回転に伴い移動したものを表している。
【0023】
例えば、タイヤの回転が止まった状態において、加速度センサ38が車両上下方向における最も高い位置である位置P1に存在するとき、上記1軸の正方向と重力方向とが一致するため、加速度センサ38は1G(約9.8m/s)を検出する。この位置P1を原位置(θ=0)として、右回りをθの正方向とする。加速度センサ38がθ=90°となる位置P2に存在するとき、上記1軸方向と重力方向とが直交するため、加速度センサ38は0Gを検出する。また、加速度センサ38がθ=180°となる位置P3に存在するとき、上記1軸の負方向と重力方向とが一致するため、加速度センサ38は−1Gを検出する。さらに、加速度センサ38がθ=270°となる位置P4に存在するとき、上記1軸方向と重力方向とが直交するため、加速度センサ38は0Gを検出する。すなわち、図4に示すように、加速度センサ38の回転位置に応じて、加速度センサ38によって検出される重力加速度は余弦状に変化する。
【0024】
加速度センサ38は検出結果をCPU31に出力する。CPU31は、加速度センサ38からの検出結果に基づき上記1軸方向に作用する重力加速度を認識する。
そして、CPU31は、RSSI情報要求信号を受けると、メモリ35に記憶されるIDコードと、検出されたRSSI情報要求信号のRSSIと、加速度センサ38の検出結果である重力情報とを含むRSSI情報信号を生成し、それを送信回路32に出力する。送信回路32は、情報信号をUHF(Ultra High Frequency)帯の電波に変調し、その変調した信号を送信アンテナ32aを介して無線送信する。
【0025】
CPU31は、空気圧情報要求信号を受けると、認識されたタイヤの空気圧と、メモリ35に記憶されるIDコードとを含む空気圧情報信号を生成し、それを送信回路32等を介して無線送信する。
【0026】
(車両)
図1に示すように、車両1は、車載制御部11と、受信回路12と、受信アンテナ12aと、インジケータ15と、イグニッションスイッチ18と、車速センサ19と、送信回路16と、送信アンテナ16aとを備える。
【0027】
車載制御部11は、不揮発性のメモリ11aを備える。メモリ11aには各種閾値、各センサユニット30a〜30dに固有のIDコード等が記憶されている。この各IDコードは、例えば新しいタイヤを装着する際に実行されるID登録時に記憶されるとともに、車両1のイグニッションがオフ状態からオン状態に切り替えられたとき、タイヤの各取り付け位置(右前輪、右後輪、左前輪及び左後輪)に関連付けられる。
【0028】
また、車速センサ19は、車両の速度を検出するとともに、その検出結果を車載制御部11に出力する。送信アンテナ16aは、図2に示すように、各センサユニット30a〜30dとの距離L1〜L4が異なる位置に設置される。
【0029】
車載制御部11は、イグニッションスイッチ18を通じてイグニッションがオフ状態からオン状態に切り替えられた旨判断したとき、又は車速センサ19を通じて車両が停止した旨判断したとき、RSSI情報要求信号を生成し、その生成した信号を送信回路16に出力する。送信回路16は、RSSI情報要求信号をLF(Low Frequency)帯の電波に変調し、その変調した信号を送信アンテナ16aを介して無線送信する。
【0030】
受信回路12は、受信アンテナ12aを介してRSSI情報信号を受信する。そして、受信回路12は、受信したRSSI情報信号を復調し、その復調したRSSI情報信号を車載制御部11に出力する。
【0031】
ここで、図5には、各センサユニット30a〜30dが各位置P1〜P4に存在するときのRSSIが示されている。このRSSIは、予め実験により得られた値である。例えば、右前輪に着目すると、図中の右側面図に示すように位置P1においては124dBμV/mが検出され、位置P2においては130dBμV/mが検出され、位置P3においては125dBμV/mが検出され、位置P4においては120dBμV/mが検出される。このようにセンサユニット30a〜30dの位置によるRSSIのばらつきは、タイヤの回転に伴う送信アンテナ16a及びセンサユニット間におけるタイヤホイールの有無、又は車両のボデー形状等によって生じる。
【0032】
なお、センサユニット30aによって検出されうるRSSIの信号強度範囲は120〜130dBμV/mである。また、センサユニット30bの信号強度範囲は110〜118dBμV/mである。また、センサユニット30cの信号強度範囲は105〜115dBμV/mである。また、センサユニット30dの信号強度範囲は91〜96dBμV/mである。
【0033】
上記背景技術においても述べたように、送信アンテナ16aから各センサユニット30a〜30dまでの距離L1〜L4が小さいほどRSSIが強くなるという相関関係がある。従って、送信アンテナ16aからの距離が最も小さい右前輪のセンサユニット30aについては、タイヤの回転位置に関わらず検出されるRSSIは、他のタイヤのRSSIより大きくなる。従って、図6に示すように、右前輪における最小のRSSIである120dBμV/mを第1の閾値Th1に設定する。
【0034】
同様に、送信アンテナ16aからの距離が最も大きい左後輪のセンサユニット30dについては、タイヤの回転位置に関わらず検出されるRSSIは、他のタイヤのRSSIより小さくなる。従って、左後輪における最大のRSSIである96dBμV/mを第2の閾値Th2に設定する。
【0035】
次に、左前輪のRSSIと、右後輪のRSSIとを比較すると、それらRSSIの領域の一定範囲E(110dBμV/m〜115dBμV/m)が重複している。この一定範囲Eを超える値、かつ第1の閾値Th1未満の値に第3の閾値Th3を設定する。また、一定範囲E未満、かつ第2の閾値Th2を越える値に第4の閾値Th4を設定する。第3の閾値Th3及び第4の閾値Th4は、一定範囲Eに近い値とすることが望ましい。
【0036】
車載制御部11は、RSSI情報信号に含まれるRSSIを認識し、そのRSSIと第1〜第4の閾値Th1〜Th4との比較に基づき、その信号に含まれるIDコードを各取り付け位置に関連付ける。例えば、車載制御部11は、RSSI情報信号に含まれるRSSIが第1の閾値Th1以上である旨判断したとき、そのRSSIを含むRSSI情報信号のIDコードを右前輪に関連付ける。また、車載制御部11は、RSSI情報信号に含まれるRSSIが第2の閾値Th2以下である旨判断したとき、そのRSSIを含むRSSI情報信号のIDコードを左後輪に関連付ける。
【0037】
さらに、車載制御部11は、RSSI情報信号に含まれるRSSIが第3の閾値Th3以上であって第1の閾値Th1未満である旨判断したとき、そのRSSIを含むRSSI情報信号のIDコードを左前輪に関連付ける。また、車載制御部11は、RSSI情報信号に含まれるRSSIが第4の閾値Th4以下であって第2の閾値Th2を超える旨判断したとき、そのRSSIを含むRSSI情報信号のIDコードを右後輪に関連付ける。
【0038】
車載制御部11は、RSSI情報信号に含まれるRSSIが上記何れにも含まれない、すなわち一定範囲E内の値である旨判断したとき、図7のテーブルに従って制御を実行する。このテーブルは予めメモリ11aに記憶されている。同図に示すように、車載制御部11は、RSSI情報信号に含まれるRSSIが約113dBμV/mである旨判断したとき、RSSI情報信号に含まれる重力情報を参照する。上述のように、この重力情報に基づきタイヤの回転位置を判断可能である。詳しくは、車載制御部11は、図3及び図4に示すように、重力情報に基づき、重力加速度が一定範囲A〜Cの何れに属しているかを判断する。一定範囲Aは、加速度センサ38(センサユニット)が位置P1に存在しているときに検出される重力加速度である1Gを中心とした領域に設定される。一定範囲Bは加速度センサ38が位置P2又は位置P4に存在しているときに検出される重力加速度である0Gを中心とした領域に設定される。一定範囲Cは、加速度センサ38が位置P3に存在しているときに検出される重力加速度である−1Gを中心とした領域に設定される。
【0039】
車載制御部11は、図7に示すように、RSSI情報信号に含まれるRSSIが約113dBμV/mである旨判断した場合に、同信号に含まれる重力情報が一定範囲Cに属する旨判断したときには、同信号のIDコードを左前輪に関連付ける。また、車載制御部11は、RSSI情報信号に含まれるRSSIが約113dBμV/mである旨判断した場合に、同信号に含まれる重力情報が一定範囲Bに属する旨判断したときには、同信号のIDコードを右後輪に関連付ける。この関連付けは、図5に示すように、RSSIが約113dBμV/mで同一であっても、その値が測定されるタイヤの回転位置が左前輪及び右後輪間で異なることから可能となる。
【0040】
また、RSSIが約110dBμV/mの場合、右後輪及び左前輪における同一のタイヤの回転位置(位置P1)においてその値が検出される。このため、車載制御部11は、RSSI情報信号に含まれるRSSIが約110dBμV/mである旨判断したとき、同信号のIDコードを何れの取り付け位置にも関連付けない。そして、車載制御部11は、車速センサ19を通じて車両が走行を開始した後に停止した旨判断したときに、再びRSSI情報要求信号を送信アンテナ16aを介して送信する。一度、車両を走行させることで、右後輪及び左前輪における加速度センサ38の位置関係が、何れも位置P1であった上記状況から変化する。これにより、上記と同様に関連付けを行うことができる。
【0041】
車載制御部11は、RSSI情報要求信号を送信した後に、所定の周期毎に空気圧情報要求信号を生成し、その生成した信号を送信回路16に出力する。送信回路16は、空気圧情報要求信号をLF帯の電波に変調し、その変調した信号を送信アンテナ16aを介して無線送信する。
【0042】
受信回路12は、受信アンテナ12aを介して空気圧情報信号を受信する。そして、受信回路12は、受信した空気圧情報信号を復調し、その復調した空気圧情報信号を車載制御部11に出力する。車載制御部11は、復調された空気圧情報信号に含まれるIDコードと、メモリ11aに記憶されるIDコードとの照合を通じて、何れの取り付け位置からの空気圧情報信号であるかを認識する。車載制御部11は、空気圧情報信号に含まれるタイヤの空気圧がメモリ11aに記憶される閾値以下である旨判断した場合、インジケータ15を通じて何れの取り付け位置のタイヤであるかを特定したうえで低空気圧の警告を行う。上記構成によれば、タイヤのローテーションが行われた場合であっても、その後にIDコードの各取り付け位置への関連付けが自動的に行われるため、低空気圧となったタイヤの取り付け位置が正しく特定される。
【0043】
車載制御部11がIDコードの関連付けにあたって実行する処理を図8のフローチャートに沿って説明する。当該フローチャートは、イグニッションがオフ状態からオン状態に切り替えられたときに開始される。
【0044】
まず、各センサユニット30a〜30dにRSSI情報要求信号が送信される(S101)。そして、何れかのセンサユニットからのRSSI情報信号が受信される(S102)。そのRSSI情報信号に含まれるRSSIが認識される(S103)。その認識されたRSSIが第2の閾値Th2以下となるか否かが判断される(S104)。認識されたRSSIが第2の閾値Th2以下となる旨判断された場合(S104でYES)、受信したRSSI情報信号に含まれるIDコードが左後輪に関連付けられる(S105)。以上で処理が終了される。
【0045】
認識されたRSSIが第2の閾値Th2を超える旨判断された場合(S104でNO)、その認識されたRSSIが第1の閾値Th1以上となるか否かが判断される(S106)。認識されたRSSIが第1の閾値Th1以上となる旨判断された場合(S106でYES)、受信したRSSI情報信号に含まれるIDコードが右前輪に関連付けられる(S107)。以上で処理が終了される。
【0046】
認識されたRSSIが第1の閾値Th1未満である旨判断された場合(S106でNO)、その認識されたRSSIが第3の閾値Th3以上となるか否かが判断される(S108)。認識されたRSSIが第3の閾値Th3以上となる旨判断された場合(S108でYES)、受信したRSSI情報信号に含まれるIDコードが左前輪に関連付けられる(S109)。以上で処理が終了される。
【0047】
認識されたRSSIが第3の閾値Th3未満である旨判断された場合(S108でNO)、その認識されたRSSIが第4の閾値Th4以下となるか否かが判断される(S110)。認識されたRSSIが第4の閾値Th4以下となる旨判断された場合(S110でYES)、受信したRSSI情報信号に含まれるIDコードが右後輪に関連付けられる(S111)。以上で処理が終了される。
【0048】
認識されたRSSIが第4の閾値Th4を超える旨判断された場合(S110でNO)、そのRSSIが一定範囲Eに属するとして、図7のテーブルが参照される(S112)。このとき、上述のように必要に応じてRSSI情報信号に含まれる重力情報が参照される。そして、取り付け位置の関連付けが可能であるか否かが判断される(S113)。取り付け位置の関連付けが可能である場合(S113でYES)、受信したRSSI情報信号に含まれるIDコードが左前輪又は右後輪に関連付けられる(S114)。以上で処理が終了される。
【0049】
例えばRSSIが約110dBμV/mであって取り付け位置の関連付けができない旨判断された場合(S113でNO)、車速センサ19を通じて車両が走行後に停車した旨認識された後に(S115)、再びRSSI情報要求信号が送信される(S116)。そして、ステップS102の処理に戻ることで、IDコードの取り付け位置への関連付けが再度試みられる。
【0050】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)送信アンテナ16aと各センサユニット30a〜30dとの距離L1〜L4は互いに異なるように設定されている。このため、理論的には、この距離L1〜L4に応じた情報要求信号のRSSIが検出される。しかし、実際には、タイヤホイールや車両のボデー形状によって、タイヤの回転位置に応じて検出されるRSSIに、ばらつきが生じる。従って、異なるタイヤのセンサユニット30b,30cから同一値のRSSIを含むRSSI情報信号が送信される可能性がある。この場合であっても、上記異なるタイヤにおけるセンサユニット30b,30cの回転位置によって重力情報が異なる。車載制御部11は、RSSI情報のみならず重力情報も加味するため、タイヤの取り付け位置を識別し、その取り付け位置にIDコードを関連付けることができる。このため、IDコードがより正確にタイヤの取り付け位置に関連付けられる。
【0051】
(2)受信されたRSSI情報信号に含まれるRSSIが一定範囲Eに属しない場合、RSSI情報のみでRSSI情報信号に含まれるIDコードがタイヤの取り付け位置に関連付けられる。この場合には、重力情報を参照する必要がなく、より迅速に関連付けを行うことができる。
【0052】
(3)異なるセンサユニット30b,30cから同一のRSSI情報及び重力情報を含むRSSI情報信号を受信する場合もある。このRSSI情報信号が受信されたとき、IDコードがタイヤの取り付け位置に関連付けられることなく、車両の走行後の停止を待って、再びRSSI情報要求信号が送信される。よって、この情報要求信号の再送信を通じて、前回と異なる内容のRSSI情報信号を受信可能となる。従って、より確実にIDコードをタイヤの取り付け位置に関連付けることができる。
【0053】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、送信アンテナ16aは1つであったが、複数設けられていてもよい。具体的には、車両前側のセンサユニット30a,30bに対応する送信アンテナと、車両後側のセンサユニット30c,30dに対応する送信アンテナとを設ける。本構成においても、タイヤの回転位置によってはRSSI情報のみでは取り付け位置の特定ができないことが想定される。この場合には、上記実施形態と同様に重力情報を参照することで取り付け位置の特定、ひいてはその取り付け位置へのIDコードの関連付けが可能となる。
【0054】
・上記実施形態においては、RSSI情報信号に含まれるRSSIが一定範囲E(110dBμV/m〜115dBμV/m)に属するときにのみ重力情報が参照されていた。しかし、RSSI情報信号の受信毎に、その重力情報を参照してもよい。この場合、例えば、メモリ11aに予め各センサユニット30a〜30dについてのRSSI情報及び重力情報の組み合わせを記憶しておく。そして、車載制御部11は、このメモリ11aに記憶されるRSSI情報及び重力情報の組み合わせと、受信したRSSI情報信号のRSSI情報及び重力情報の組み合わせとの比較に基づき、その信号のIDコードを何れの取り付け位置に関連付けるかを判断する。
【0055】
・各情報信号及び各情報要求信号の周波数帯は上記実施形態のものに限らない。
・上記実施形態においては、情報信号としてRSSI情報信号及び空気圧情報信号の2種類あるが、情報信号を1種類としてもよい。本構成においては、情報信号には、空気圧情報と、RSSI情報と、重力情報と、IDコードとが含まれている。情報信号を1種類とすることで、情報要求信号も1種類とすることができる。
【0056】
・上記実施形態においては、事前にID登録が行われていた。しかし、IDコードを各取り付け位置に関連付ける際にID登録を行ってもよい。
・上記実施形態においては、イグニッションがオフ状態からオン状態に切り替えられたことをトリガとして、RSSI情報要求信号及びRSSI情報信号の授受を通じて、IDコードが各取り付け位置に関連付けられていた。しかし、このトリガは、ユーザの運転の意思が確認できればイグニッションの状態が切り替えられたときに限らず、シフトレバーがパーキング位置からその他の位置に操作されたとき等であってもよい。
【0057】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3の何れか一項に記載のタイヤ空気圧監視システムにおいて、前記車載制御装置は、イグニッションがオフ状態からオン状態に切り替えられた旨認識したとき、前記送信アンテナを介して、前記受信信号強度情報及び前記重力情報を含む情報信号の送信を要求する旨の前記情報要求信号を送信するタイヤ空気圧監視システム。
【0058】
同構成によれば、イグニッションがオン状態に切り替えられる毎に識別コードがタイヤの取り付け位置に関連付けられる。よって、イグニッションがオフ状態にある場合においてタイヤのローテーションが行われても、走行中には低空気圧となったタイヤの取り付け位置が正しく特定される。
【0059】
(ロ)請求項1〜3及び上記(イ)の何れか一項に記載のタイヤ空気圧監視システムにおいて、異なるセンサユニットから送信されうる同一の受信信号強度情報と、その受信信号強度情報の送信時における前記異なるセンサユニットの重力情報と、タイヤの取り付け位置とが対応付けられたテーブルが記憶されるメモリを備え、前記車載制御装置は、前記メモリに記憶されるテーブルと、前記情報信号に含まれる前記重力情報及び前記受信信号強度情報との比較に基づきタイヤの取り付け位置を特定し、その特定した取り付け位置に、同情報信号に含まれる前記識別コードを関連付けるタイヤ空気圧監視システム。
【0060】
同構成によれば、メモリに記憶されるテーブルと、情報信号に含まれる重力情報及び受信信号強度情報との比較に基づきタイヤの取り付け位置が特定される。
【符号の説明】
【0061】
1…車両、11…車載制御部(車載制御装置)、16a…送信アンテナ、30a〜30d…センサユニット、33…空気圧センサ、36…RSSI検出回路、38…加速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各タイヤに装着されるとともに、情報要求信号を受信すると、その情報要求信号の受信信号強度を検出し、その検出結果である受信信号強度情報及びタイヤの空気圧情報の少なくとも何れか一方及び識別コードを含む情報信号を送信するセンサユニットと、
車両において、前記各センサユニットによって検出される受信信号強度が同一とならない位置に設けられるとともに、前記情報要求信号を無線送信する送信アンテナと、
受信した前記各情報信号に含まれる情報要求信号の受信信号強度情報に基づき、前記識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付けることで、受信した前記情報信号に含まれる前記識別コードに基づき空気圧が低下したタイヤの取り付け位置を通知する車載制御装置と、を備えたタイヤ空気圧監視システムにおいて、
前記センサユニットに設けられ、タイヤの回転位置に応じて値が変化する特定軸方向の重力加速度を検出する加速度センサを備え、
前記センサユニットは、前記受信信号強度情報とともに、前記加速度センサの検出結果である重力情報を、前記情報信号に含ませて送信し、
前記車載制御装置は、前記情報信号に含まれる前記受信信号強度情報及び前記重力情報の組み合わせに基づき、同情報信号に含まれる前記識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付けるタイヤ空気圧監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤ空気圧監視システムにおいて、
各タイヤの取り付け位置が各回転位置にあるときに測定される受信信号強度情報及び重力情報が予め記憶されるメモリを備え、
前記車載制御装置は、各タイヤの回転位置に応じて前記各センサユニットが検出しうる前記受信信号強度の信号強度範囲を設定し、受信した前記情報信号に含まれる前記受信信号強度が前記各信号強度範囲のうち重複しない領域にある旨判断したとき、前記情報信号に含まれる受信信号強度情報と、前記メモリに記憶される受信信号強度情報との比較のみで前記情報信号に含まれる前記識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付け、前記受信信号強度が前記各信号強度範囲のうち重複する領域にある旨判断したとき、前記情報信号に含まれる前記受信信号強度情報及び前記重力情報の組み合わせと、前記メモリに記憶される受信信号強度情報及び重力情報の組み合わせとの比較に基づき同情報信号に含まれる前記識別コードをタイヤの取り付け位置に関連付けるタイヤ空気圧監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載のタイヤ空気圧監視システムにおいて、
前記車載制御装置は、異なる前記センサユニットから同一の前記受信信号強度情報及び前記重力情報を含む前記情報信号を受信しうる場合において、その情報信号を受信した旨判断したとき、走行して停車した後に再び前記情報要求信号を送信するタイヤ空気圧監視システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のタイヤ空気圧監視システムにおいて、
前記送信アンテナは前記各センサユニットとの距離が異なる位置に1つ設けられるタイヤ空気圧監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−52794(P2013−52794A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192991(P2011−192991)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】