説明

タイヤ

【課題】転がり抵抗を悪化させずに、優れた耐摩耗性及び優れた湿潤路面での制動性を有し、さらにドライ性能が向上したタイヤを提供する。
【解決手段】下記一般式(I):


で表される特定のメタロセン錯体を含む触媒組成物の存在下において、重合して得られる、特定の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含むゴム、無機充填剤、同一分子内に前記ゴムに対する反応基を1個以上、前記無機充填剤に対する吸着基を2個以上有する化合物を配合してなるゴム組成物をタイヤ部材に用いたタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり抵抗を悪化させずに、優れた耐摩耗性及び優れた湿潤路面での制動性を有し、さらにドライ性能が向上したタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のタイヤ原材料技術において、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体は、通常のアニオン系及びラジカル系重合開始剤等を用いた重合により合成され、その共役ジエン化合物部分の異性構造の一つである1,4構造は、トランス-1,4構造が一般に多く含まれる。また、該共役ジエン化合物部分の異性構造は、ビニル結合量以外の構造制御が困難であった。
【0003】
これに対し、共役ジエン化合物部分の立体規則性、例えば、シス-1,4構造の含有率を制御するため、配位子と金属原子とからなる金属触媒を用いて、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体を生成させる手法が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。しかしながら、該手法により得られる芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物部分のブロック化や低分子量化等の問題を含む場合があった。
【0004】
また、従来のタイヤ配合技術において、ゴム用補強充填剤としては、カーボンブラックが、従来、多用されている。これは、カーボンブラックが他の充填剤に比べて、高い補強性と優れた耐摩耗性を付与し得るからである。一方、近年の省エネルギーの社会的な要請に伴い、自動車の燃料消費節約を目的として、タイヤ用ゴムの低発熱化を図る場合、カーボンブラックの充填量の減量、あるいは大粒径のカーボンブラックの使用が考えられるが、いずれの場合も、補強性、耐摩耗性、湿潤路面でのグリップ性が低下するのを免れないことが知られている。他方、低発熱性と湿潤路面でのグリップ性を両立させる充填剤として、含水ケイ酸(湿式シリカ)が知られている(例えば、特許文献4〜特許文献11参照)。しかしながら、この湿式シリカは、その表面官能基であるシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集する傾向にあり、ゴム中へのシリカの分散を良くするためには混練時間を長くする必要がある。また、ゴム中へのシリカの分散が不十分なためゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、押出しなどの加工性に劣るなどの欠点を有していた。さらに、シリカ粒子の表面が酸性であることから、加硫促進剤として使用される塩基性物質を吸着し、ゴム組成物の加硫が十分に行われず、貯蔵弾性率が上がらないという欠点を有していた。
【0005】
上記欠点を改良するために、シランカップリング剤が開発されたが、依然として、シリカの分散は十分なレベルに達しておらず、特に、工業的に、良好なシリカ粒子の分散を得ることは困難であった。また、タイヤの操縦安定性に寄与する貯蔵弾性率を改良する為には、カーボン・シリカ等の補強性充填剤の配合量を増す、あるいはより小粒径物を配合する等の手法があるが、何れも未加硫ゴムの加工性の悪化は免れない。さらには、ある種の硬化性樹脂を添加する手法もあるが、発熱性が悪化するというデメリットがある。
【0006】
一方、シリカ配合ゴムの省燃費性を損なわずに操縦安定性を向上させる方法として、樹脂を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献12〜特許文献13参照)。しかし、これらの樹脂とゴムとの相溶性は不十分であり、加硫ゴムの表面荒れが生じる等の問題を有している。
【0007】
また、重合性不飽和結合と特定の官能基をもった化合物を添加したゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献14参照)が、これらの化合物では貯蔵弾性率を向上させる効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3207502号公報
【特許文献2】特開2006−137897号公報
【特許文献3】特許第3738315号公報
【特許文献4】特開平3−252431号公報
【特許文献5】特開平6−248116号公報
【特許文献6】特開平7−70369号公報
【特許文献7】特開平7−188466号公報
【特許文献8】特開平7−196850号公報
【特許文献9】特開平8−225684号公報
【特許文献10】特開平8−245838号公報
【特許文献11】特開平8−337687号公報
【特許文献12】特開2000−80205号公報
【特許文献13】特開2000−290433号公報
【特許文献14】特開2002−179841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、本発明者がタイヤ原材料技術について、検討したところ、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が高い芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体は、他のミクロ構造を多く含む芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体より、タイヤに耐摩耗性及び耐ウェットスキッド性を付与する傾向があることが分かった。
【0010】
さらに、本発明者がタイヤ配合技術について、検討したところ、貯蔵弾性率の向上が望める特定構造の化合物を含むゴム組成物は、無機充填剤の分散性に優れ、従って未加硫ゴムの粘度を上げず、加工性を損なうことなく、ゴムの表面荒れがない上、貯蔵弾性率が改良される傾向があることが分かった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を総合的に解決し、タイヤに優れた耐摩耗性及び耐ウェットスキッド性を付与することが可能な芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体をゴム成分として含み、無機充填剤の分散性に優れ、従って未加硫ゴムの粘度を上げず、加工性を損なうことなく、ゴムの表面荒れがない上、貯蔵弾性率が改良されたゴム組成物を用いた、転がり抵抗を悪化させずに、優れた耐摩耗性及び優れた湿潤路面での制動性を有し、さらにドライ性能が向上したタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討し、研究を重ねた結果、特定のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の存在下、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を付加重合させて得た、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が80%以上の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体を含むゴム成分(A)、無機充填剤(B)に、同一分子内に前記ゴム成分(A)に対する反応基a1を1個以上、前記無機充填剤(B)に対する吸着基b1を2個以上有する化合物(C1)又は、前記ゴム成分(A)に特定の構造を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルから選ばれる化合物(C2)の少なくとも1種とを含むゴム組成物を用いたタイヤが、その目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明のタイヤは、下記一般式(I):
【化1】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II):
【化2】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III):
【化3】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を付加重合して得られ、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が80%以上である芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(A1)を含むゴム成分(A)、無機充填剤(B)に、同一分子内に前記ゴム成分(A)に対する反応基a1を1個以上、前記無機充填剤(B)に対する吸着基b1を2個以上有する化合物(C1)又は、前記ゴム成分(A)に一般式(IV)で表されるアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルであって分子量250以上の化合物(C2)の少なくとも1種を含む化合物を配合してなるゴム組成物(D)を、タイヤ部材(E)のいずれかに用いたことを特徴とする。
【化4】

[式中、R14は水素、又はメチル基を示し、R15はエチレン基またはプロピレン基を示し、R16は飽和若しくは不飽和のアルキル基,アリール基または一部もしくは2か所以上が−OH、−COOH、−(C=O)−で置換されたものであり、R16部分の末端にカルボキシル基を持ち、かつ、kは0〜30の整数である。]
【0014】
ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物であり、特に、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体が一つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称することがある。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記共重合体(A1)は、前記共役ジエン化合物部分のビニル結合量が、10%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記共重合体(A1)は、芳香族ビニル化合物部分の繰り返し単位のNMR測定でのブロック量が、全芳香族ビニル化合物部分の10%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明のタイヤは、前記共重合体(A1)が、DSC測定において、融点(Tm)を有することが好ましい。
【0018】
本発明のタイヤの好適例においては、前記共重合体(A1)が、スチレン−ブタジエン共重合体である。
【0019】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記反応基a1が、非芳香族共役2重結合基又は2重結合にカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種が隣接した基である。
【0020】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記化合物(C1)の前記吸着基b1が、カルボキシル基である。
【0021】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記化合物(C1)の前記反応基a1が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びソルビン酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基である。
【0022】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記化合物(C1)が、さらにオキシアルキレン基を有する。
【0023】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記化合物(C1)が、多塩基酸の部分エステルである。
【0024】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記化合物(C1)が、以下の化学式(V)〜(VII)のいずれかで表される化合物である。
【化5】

[式中、A、A及びAは、これらのうち一つが式−(RO)−CO−CR=CR−Rで表される基であり(ここでRは炭素数2〜4のアルキレン基、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である)、他は水素原子である。]
【化6】

[式中、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基であり、m1、m2及びm3は、それぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す数で、m1+m2+m3が0〜90となる数である。]
【化7】

[式中、Rは、式−RO−で示される基、式−(R10O)−で示される基、式−CHCH(OH)CHO−で示される基、式−(R11O−COR12−COO−)11O−で示される基である。Rは炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基、R10は炭素数2〜4のアルキレン基、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数、R11は炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基、2価の芳香族炭化水素基又は−(R13O)13−(R13は炭素数2〜4のアルキレン基、uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数)、R12は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基、tは平均値で1〜30の数である。]
【0025】
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物(D)が、前記無機充填剤(B)を含むことが好ましい。
【0026】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記タイヤ部材(E)が、トレッドである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、特定のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の存在下、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を付加重合させて得た、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が80%以上の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体を含むゴム成分(A)、無機充填剤(B)と、同一分子内にゴム成分(A)に対する反応基a1を1個以上と無機充填剤(B)に対する吸着基b1を2個以上有する化合物(C1)又は、ゴム成分(A)に特定の構造を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルから選ばれる化合物(C2)の少なくとも1種とを含む前記ゴム組成物(D)を、前記タイヤ部材(E)のいずれかに用いることで、転がり抵抗を悪化させずに、優れた耐摩耗性及び優れた湿潤路面での制動性を有し、さらにドライ性能が向上したタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のタイヤは、下記一般式(I):
【化8】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II):
【化9】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III):
【化10】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を付加重合して得られ、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が80%以上である芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(A1)を含むゴム成分(A)に、同一分子内に前記ゴム成分(A)に対する反応基a1を1個以上、無機充填剤(B)に対する吸着基b1を2個以上有する化合物(C1)又は、一般式(IV) で表されるアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルであって分子量250以上の化合物(C2)の少なくとも1種を含む化合物を配合してなるゴム組成物(D)を、タイヤ部材(E)のいずれかに用いたことを特徴とする。
【化11】

[式中、R14は水素、又はメチル基を示し、R15はエチレン基またはプロピレン基を示し、R16は飽和若しくは不飽和のアルキル基,アリール基または一部もしくは2か所以上が−OH、−COOH、−(C=O)−で置換されたものであり、R16部分の末端にカルボキシル基を持ち、かつ、kは0〜30の整数である。]
【0029】
[ゴム成分(A)]
上記ゴム成分(A)は、上記共重合体(A1)を含むことを要し、40質量%以上含むことが好ましい。また、上記ゴム成分(A)は、上記共重合体(A1)を、他のゴム成分と組み合わせて用いてもよい。他のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。なお、これら他のゴム成分は、単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0030】
[芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(A1)]
前記共重合体(A1)は、上記一般式(I)及び一般式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を付加重合して得られ、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が80%以上である、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体である。
【0031】
前記共重合体(A1)は、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が非常に高く、前記共重合体(A1)をゴム成分として用いたゴム組成物は、アニオン重合することで得られた従来の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体を用いたゴム組成物及び従来の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体とシス-1,4結合量が高い共役ジエン化合物の単独重合体とをブレンドして用いたゴム組成物と比較して、耐ウェットスキッド性を高度に維持しながら、耐摩耗性を向上させることができる。この理由は、必ずしも明らかではないが、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量に由来する結晶性により耐摩耗性の向上効果があるためだと思われる。ここで、上記共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量は、80%以上であることを要し、90%以上であることが好ましい。該共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が80%未満では、シス連鎖が不十分のため、融点(Tm)は測定されず、耐摩耗性は低下する。なお、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量は、1H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルの積分比より求めることができ、その具体的な手法は特開2004−27179号公報に開示されている。
【0032】
また、前記共重合体(A1)は、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましい。共役ジエン化合物部分のビニル結合量が10%を超えると、シス-1,4結合量が低下し、耐摩耗性の向上効果が十分に得られなくなる。なお、共役ジエン化合物部分のビニル結合量は、上述のシス-1,4結合量同様、1H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルの積分比より求めることができる。
【0033】
また、前記共重合体(A1)は、芳香族ビニル化合物部分の繰り返し単位のNMR測定でのブロック量が、全芳香族ビニル化合物部分の10%以下であることが好ましく、7%以下であることが更に好まく、0%であることが特に好ましい。上記重合触媒組成物を用いて得られる前記共重合体(A1)は、芳香族ビニル化合物がランダムに重合する傾向があり、芳香族ビニル化合物のブロック化を抑制することができる。ここで、ランダムとは、芳香族ビニル化合物部分の繰り返し単位のNMR測定でのブロック量(以下、ブロック芳香族ビニル化合物含有率と称することがある)が、全芳香族ビニル化合物部分の10%以下であることをいい、ブロックとは、芳香族ビニル化合物−芳香族ビニル化合物の結合を有する芳香族ビニル化合物部分を指す。上記ブロック芳香族ビニル化合物含有率が10%を超えると、芳香族ビニル化合物の単独重合体としての挙動が現われ、ガラス転移温度が上昇し、耐摩耗性が低下する場合がある。なお、ブロック芳香族ビニル化合物含有率は、1H-NMRスペクトルの積分比より求めることができる。
【0034】
更に、前記共重合体(A1)は、DSC測定(示差走査熱量測定)において、融点(Tm)を示す。ここで、DSC測定における融点(Tm)は、共役ジエン化合物部分の連鎖に由来する静的結晶の融点を指す。
【0035】
前記共重合体(A1)は、後で詳細に説明する重合触媒組成物を用いる以外は特に制限されず、例えば、通常の配位イオン重合触媒を用いる付加重合体の製造方法と同様にして、単量体である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との混合物を共重合して得ることができる。なお、重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、該溶媒の使用量は任意であるが、重合触媒組成物に含まれる錯体の濃度を0.1〜0.0001mol/lとする量であることが好ましい。ここで、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。一方、共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3-ブタジエンが好ましい。従って、前記共重合体(A1)としては、スチレン−ブタジエン共重合体が特に好ましい。
【0036】
[共重合体(A1)の合成に用いる重合触媒組成物]
前記共重合体(A1)の合成に用いる重合触媒組成物は、上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも一種の錯体を含むことを要し、更に、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含むことが好ましい。
【0037】
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体において、式中のCpRは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpRは、C97-XX又はC911-XXで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2-フェニルインデニル、2-メチルインデニル等が挙げられる。なお、一般式(I)及び式(II)における二つのCpRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0038】
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCpR’は、無置換もしくは置換のシクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルであり、これらの中でも、無置換もしくは置換のインデニルであることが好ましい。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’は、C55-XXで示される。ここで、Xは0〜5の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基;メタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’として、具体的には、以下のものが例示される。
【化12】

(式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)
【0039】
一般式(III)において、上記インデニル環を基本骨格とするCpR’は、一般式(I)のCpRと同様に定義され、好ましい例も同様である。
【0040】
一般式(III)において、上記フルオレニル環を基本骨格とするCpR’は、C139-XX又はC1317-XXで示され得る。ここで、Xは0〜9又は0〜17の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基;メタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0041】
一般式(I)、式(II)及び式(III)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0042】
一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、ビストリアルキルシリルアミド配位子[−N(SiR3)2]を含む。ビストリアルキルシリルアミドに含まれるアルキル基R(一般式(I)におけるRa〜Rf)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基であり、メチル基であることが好ましい。
【0043】
一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[−SiX3]を含む。シリル配位子[−SiX3]に含まれるXは、下記で説明される一般式(III)のXと同様に定義される基であり、好ましい基も同様である。
【0044】
一般式(III)において、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1〜20の炭化水素基からなる群より選択される基である。ここで、上記アルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシド基が挙げられ、これらの中でも、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0045】
一般式(III)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn-ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec-ブトキシ基、チオtert-ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルチオフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基が挙げられ、これらの中でも、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0046】
一般式(III)において、Xが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミド基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミド基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6-tert-ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
【0047】
一般式(III)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
【0048】
一般式(III)において、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。また、Xが表す炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
【0049】
一般式(III)において、Xとしては、ビストリメチルシリルアミド基又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
【0050】
一般式(III)において、[B]で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0051】
上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
また、上記一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0053】
上記一般式(I)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びビス(トリアルキルシリル)アミドの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(I)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化13】

(式中、X’’はハライドを示す。)
【0054】
上記一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びシリルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(II)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化14】

(式中、X’’はハライドを示す。)
【0055】
上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
【化15】

【0056】
ここで、一般式(IIX)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す。また、一般式[A][B]で表されるイオン性化合物において、[A]は、カチオンを示し、[B]は、非配位性アニオンを示す。
【0057】
[A]で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0058】
上記反応に用いる一般式[A][B]で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、一般式[A][B]で表されるイオン性化合物は、メタロセン錯体に対して0.1〜10倍モル加えることが好ましく、約1倍モル加えることが更に好ましい。なお、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる一般式(IIX)で表される化合物と一般式[A][B]で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中で一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。また、一般式(I)又は式(II)で表されるメタロセン錯体と一般式[A][B]で表されるイオン性化合物とを組み合わせて使用することにより、反応系中で一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させることもできる。
【0059】
一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することが好ましい。
【0060】
上記重合触媒組成物に用いることができる助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられる成分から任意に選択され得る。該助触媒としては、例えば、アルミノキサン、有機アルミニウム化合物、上記のイオン性化合物等が好適に挙げられる。これら助触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
上記アルミノキサンとしては、アルキルアルミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、上記重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、メタロセン錯体の中心金属Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alとの元素比率Al/Mが、10〜1000程度、好ましくは100程度となるようにすることが好ましい。
【0062】
一方、上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。なお、上記重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
【0063】
更に、上記重合触媒組成物においては、一般式(I)及び式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそれぞれ、適切な助触媒と組み合わせることで、シス-1,4結合量や得られる共重合体の分子量を増大できる。
【0064】
[共重合体(A1)の製造方法]
前記共重合体(A1)は、上記一般式(I)及び一般式(II)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を付加重合させる工程を含む製造方法により製造される。また、該製造方法は、重合触媒として上述した重合触媒組成物を用いること以外は、従来の配位イオン重合触媒を用いる付加重合反応による付加重合体の製造方法と同様とすることができる。ここで、該製造方法は、例えば、(1)単量体として芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含む重合反応系中に、重合触媒組成物の構成成分を別個に提供し、該反応系中において重合触媒組成物としてもよいし、(2)予め調製された重合触媒組成物を重合反応系中に提供してもよい。また、(2)においては、助触媒によって活性化されたメタロセン錯体(活性種)を提供することも含まれる。なお、重合触媒組成物に含まれるメタロセン錯体の使用量は、単量体に対して1/10000〜1/100倍モルの範囲が好ましい。
【0065】
また、得られる前記共重合体(A1)の数平均分子量(Mn)は、特に限定されず、低分子量化の問題が起きることもない。更に、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、3以下が好ましく、2以下が更に好ましい。ここで、平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0066】
また、上記付加重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。
【0067】
上記付加重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス-1,4選択性が低下することがある。一方、上記付加重合反応の反応時間も特に制限されず、例えば1秒〜10日の範囲が好ましいが、重合される単量体の種類、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
【0068】
[無機充填剤(B)]
また、本発明に用いるゴム組成物(D)は、無機充填剤(B)を含むことが好ましい。前記無機充填剤(B)は、シリカ又は下記一般式(IX)で表される化合物である。ここで、シリカは、湿式シリカ及び乾式シリカ等が好ましく、湿式シリカが更に好ましい。
【化16】

ここで、式(IX)中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、d、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。
尚、一般式(IX)において、x、z がともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。
【0069】
上記一般式(IX)で表わされる前記無機充填剤(B)としては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ−水和物(Al・HO)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム(Al(OH))、炭酸アルミニウム(Al(CO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウ(Ca(OH))、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO等)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム(ZrO(OH)・nHO)、炭酸ジルコニウム(Zr(CO)、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。
また、前記一般式(IX)中のMが、アルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも1つである場合が好ましい。一般式(IX)で表されるこれらの無機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの化合物はシリカと混合して使用することもできる。前記無機充填剤(B)のうち特にシリカが好ましい。
【0070】
また、前記無機充填剤(B)は、その粒径が0.01〜10μmの粉体であることが好ましい。粒径が0.01μm未満では、グリップ力の向上が望めない割に混練作業性が低下することがあり、10μmを超えると貯蔵弾性率が低下し、耐摩耗性が低下することがあるため好ましくない。また、これらの効果の観点から、粒径は0.05〜5μmの範囲がさらに好ましい。
【0071】
前記無機充填剤(B)は、水銀圧入法で測定した比表面積が80〜300m/gの範囲にあるものが好ましく用いられる。この比表面積80m/g〜300m/gとすることにより前記無機充填剤(B)のゴムへの分散がよくなり、ゴム組成物の加工性、耐摩耗性が良好となる。補強性、加工性及び耐摩耗性のバランスなどの面から、より好ましい比表面積は100〜250m/gの範囲である。なお、この比表面積(SHg)は、細孔を円筒形と仮定し、SHg(m/g) = 2V/r[V=全細孔容積(m/g)、r=平均細孔半径(m)]で算出できる。
【0072】
本発明のタイヤに用いるゴム組成物(D)において、前記無機充填剤(B)の含有量は、前記ゴム成分(A)100質量部当たり、10〜140質量部の範囲が好ましい。この含有量を10〜140質量部とすることにより、補強性その他のゴム物性に悪影響を与えることなく本発明の目的を達成することができる。前記無機充填剤(B)の含有量はさらに20〜90質量部が好ましい。
【0073】
[化合物(C1)]
前記化合物(C1)は、同一分子内に前記ゴム成分(A)に対する反応基a1を1個以上と前記無機充填剤(B)に対する吸着基b1を2個以上有する化合物である。該化合物(C1)は、ゴム組成物の貯蔵弾性率を向上させる化合物であり、該ゴム組成物をタイヤに用いた場合、タイヤの転がり抵抗を低減し、ドライ性能を向上できる。なお、ドライ性能とは、乾燥路面上でのグリップ性能とハンドリング特性を意味する。前記ゴム成分(A)に対する反応基a1は、2重結合を有する基であって、該2重結合を活性化する基が隣接するものが好ましく、特に非芳香族共役2重結合基又は2重結合にカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種が隣接した基であることが好ましい。尚、ここで隣接とは2重結合の両端又は一方にカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種を有することをいう。
【0074】
前記化合物(C1)としては、反応基a1がマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸又はソルビン酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基であることが好ましく、中でもマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸から誘導される基、特にはマレイン酸、アクリル酸から誘導される基であることが最も好ましい。吸着基b1に関しては、カルボキシル基が好ましい。
【0075】
また、前記化合物(C1)は、さらにオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基を有することによって、ゴムとの相溶性が向上し、シリカ等の前記無機充填剤(B)との親和性が良好となる。オキシアルキレン基の平均付加モル数は、ゴムに対する反応基a1の個数1個当たり、1〜30モルの範囲であることが好ましく、さらには1〜20モル、特には2〜15モルの範囲であることが好ましい。
【0076】
前記化合物(C1)の具体例としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、クエン酸等のポリカルボン酸のモノ((メタ)アクリロイルオキシアルキル)エステル(ここで((メタ)アクリロイルは、メタクリロイル又はアクリロイルを示す);マレイン酸モノリンゴ酸エステル等の不飽和カルボン酸とオキシカルボン酸との(ポリ)エステル;エチレングリコール、へキサンジオール、シクロへキサンジメタノール等のジオールとマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸との両末端にカルボキシル基を有するエステル;N−(2−カルボキシエチル)マレアミド酸等のN−(カルボキシアルキル)マレアミド酸;下記式(V) (VI)又は(VII)で表される化合物が挙げられる。
【0077】
【化17】

式中、A、A及びAは、これらのうち一つが式−(RO)−CO−CR=CR−Rで表される基であり他は水素原子である。ここでRは炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくは、エチレン基又はプロピレン基である。R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、好ましくはRが水素原子又はメチル基、R及びRが水素原子である。nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜15の数である。
【0078】
【化18】

式中、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくは、エチレン基又はプロピレン基であり、m1、m2及びm3は、それぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す数で、m1+m2+m3が0〜90、好ましくは3〜60、さらに好ましくは6〜45となる数である。
【0079】
【化19】

式中、Rは、式−RO−で示される基、式−(R10O)−で示される基、式−CHCH(OH)CHO−で示される基、式−(R11O−COR12−COO−)11O−で示される基である。ここでRは炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜18のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキレン基である。またR10は炭素数2〜4のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数であり、好ましくは2〜40、さらに好ましくは4〜30の数である。R11は炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基、2価の芳香族炭化水素基又は−(R13O)13−(R13は炭素数2〜4のアルキレン基、uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜15の数である)、R12は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基であって、好ましくは炭素数2〜12のアルキレン基又はフェニレン基、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基である。tは平均値で1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15の数である。
これらの化合物の中では、多塩基酸の部分エステルが好ましく、式(V)、(VI)又は(VII)で表される化合物から選ばれる化合物がさらに好ましい。
【0080】
式(V)で表される化合物の具体例としては、トリメリット酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)エステル、トリメリット酸モノ[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチル]エステル、トリメリット酸モノ(ω−(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレン(10))エステル等のトリメリット酸モノ(ω−(メタ)アクリロイルオキシPOA(n))エステル(ここで(メタ)アクリロイルはメタクリロイル又はアクリロイルを示し、POA(n)はオキシエチレン又はオキシプロピレンが平均してnモル(ここで、nは1〜30である)付加したポリオキシエチレン(以下「POE」と略記することがある)又はポリオキシプロピレン(以下「POP」と略記することがある)を示す。)が挙げられる。
【0081】
式(VI)で表される化合物の具体例としては、POE(8)グリセリントリマレエート、POE(3)グリセリントリマレエート、POP(10)グリセリントリマレエート等のPOA(m)グリセリントリマレエート(ここでPOA(m)はオキシエチレン又はオキシプロピレンが平均してmモル(ここで、mは0〜90である)付加したポリオキシエチレン(POE)又はポリオキシプロピレン(POP)を示す。)等が挙げられる。
【0082】
式(VII)で表される化合物の具体例としては、グリセリンジマレエート、1,4−ブタンジオールジマレエート、1,6−へキサンジオールジマレエート等のアルキレンジオールのジマレエート、1,6−へキサンジオールジフマレート等のアルキレンジオールのジフマレート、PEG200ジマレエート、PEG600ジマレエート等のポリオキシアルキレングリコールのジマレエート(ここでPEG200、PEG600とは、それぞれ平均分子量200又は600のポリエチレングリコール(PEG)を示す)、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンマレエート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)マレエート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/マレイン酸ポリエステル、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンアジぺートマレエート、PEG600ジフマレート等のポリオキシアルキレングリコールのジフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンフマレート、両末端にカルボキシル基を有するポリ(PEG200)フマレート等の両末端カルボン酸型ポリアルキレングリコール/フマル酸ポリエステル等が挙げられる。特に、式(VII)において、Rが式−(R11O−COR12−COO−)11O−で示される基であって、(1)R11が−(R13O)13−(R13がエチレン基、u=3.5)であり、R12がビニレン基(−CH=CH−)、tが4の化合物、及び(2)R11がブチレン基であり、R12がビニレン基(−CH=CH−)、tが4の化合物が好適である。すなわち、両末端カルボン酸型の平均重合度4.5のポリエチレングリコール/マレイン酸ポリエステル(ポリエステル部分の重合度5)(PEGM)、両末端にカルボキシル基を有するポリブチレンマレエート(重合度5)(BM)が特に好適である。
【0083】
前記化合物(C1)は、分子量が250以上であることが好ましく、さらには250〜5000 の範囲であること、特には250〜3000の範囲であることが好ましい。この範囲であると引火点が高く、安全上望ましいばかりでなく、発煙が少なく作業環境上も好ましい。
【0084】
尚、前記化合物(C1)は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記化合物(C1)の製造過程における未反応分を含んでいてもよく、さらにはプロセス油、前記化合物(C1)以外のエステル等を含有することができ、この場合、前記化合物(C1)の含有量は50〜100質量%の範囲であることが好ましく、さらには80〜100質量%の範囲であることが好ましく、取り扱い性の観点からシリカ等の粉体に担持させて用いることが好ましい。また、前記化合物(C1)は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部添加することが好ましく、0.5〜6質量部の範囲が更に好ましい。
【0085】
[化合物(C2)]
前記化合物(C2)は、一般式(IV)で表されるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであって分子量250以上の化合物である。
【化20】

上記一般式(IV)において、R14は水素、又はメチル基を示し、R15はエチレン基またはプロピレン基を示す。R16は飽和若しくは不飽和のアルキル基,アリール基または一部もしくは2か所以上が−OH、−COOH、−(C=O)−で置換されたものであり、R16部分の末端にカルボキシル基を持ち、かつ、kは0〜30の整数である。
【0086】
上記アルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては各種オクチル基(n−オクチル基、分岐オクチル基、シクロオクチル基など、以下同様)、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種へキサデシル基、各種オクタデシル基、各種べへニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、オレイル基などが挙げられる。アリール基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、その例としてはフェニル基、各種トリル基、各種キシリル基、α−若しくはβ−ナフチル基、各種メチルナフチル基、各種ジメチルナフチル基などが挙げられる。
前記一般式の例としては、2−メタクリロイロキシエチルへキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクロイロキシエチルへキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0087】
尚、前記化合物(C2)は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記化合物(C2)の製造過程における未反応分を含んでいてもよく、さらにはプロセス油、前記化合物(C2)以外のエステル等を含有することができ、この場合、前記化合物(C2)の含有量は50〜100質量%の範囲であることが好ましく、さらには80〜100質量%の範囲であり、取り扱い性の観点からシリカ等の粉体に担持させて用いることが好ましい。また、前記化合物(C2)は、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部添加することが好ましく、0.5〜6質量部の範囲が更に好ましい。
【0088】
[ゴム組成物(D)]
前記ゴム組成物(D)は、前記共重合体(A1)を含む前記ゴム成分(A)に、前記化合物(C1)又は、前記化合物(C2)の少なくとも1種を含む化合物を配合してなり、更に充填剤を含有することが好ましい。ここで、該充填剤としては、上述の無機充填剤(B)が好適に挙げられる。
【0089】
また、上述の無機充填剤(B)以外の充填剤としては、カーボンブラックが挙げられる。なお、カーボンブラックとしては、GPF,FEF,SRF,HAF,ISAF,SAFグレードのものが好ましく、HAF,ISAF,SAFグレードのものが更に好ましい。これら補強性の充填剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、充填剤の配合量は、特に限定されるものではないが、前記ゴム成分(A)100質量部に対して10〜200質量部の範囲が好ましく、カーボンブラックの場合は0〜80質量部、好ましくは0〜40質量部の範囲である。充填剤の配合量が10質量部未満では、充分な補強性が得られない場合があり、200質量部を超えると、加工性が悪化する場合がある。
【0090】
前記ゴム組成物(D)への前記化合物(C1)又は、前記化合物(C2)の添加方法は、特に限定されず、前記ゴム成分(A)に通常の混練機、例えばバンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー等を用いて、添加混合することができる。
【0091】
前記ゴム組成物(D)には、前記共重合体(A1)、前記化合物(C1)又は、前記化合物(C2)、充填剤の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、軟化剤、シランカップリング剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。前記ゴム組成物(D)は、前記共重合体(A1)、前記化合物(C1)又は、前記化合物(C2)に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0092】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物(D)をタイヤ部材(E)のいずれかに用いたことを特徴とし、該タイヤ部材(E)がトレッドであることが好ましい。本発明のタイヤは、前記ゴム組成物(D)をタイヤ部材(E)のいずれかに用いる以外特に制限は無く、前記ゴム組成物(D)を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させた前記ゴム組成物(D)が未加硫の段階で、例えばトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0094】
(共重合体用のメタロセン錯体の合成)
まず、実施例1〜24、比較例1,3において、共通して使用した共重合体A1−A、A1−Bを合成するためのメタロセン錯体、一般式(III)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を合成し、その構造を1H-NMR及びX線結晶構造解析により確認した。なお、1H-NMRはTHF-d8を溶媒とし、室温で測定を行った。X線結晶構造解析は、RAXIS CS(リガク社製)を用いて行った。
【0095】
窒素雰囲気下、(2-MeC96)2GdN(SiMe3)2(0.150g,0.260mmol)のTHF溶液5mLに、トリエチルアニリニウムテトラキスフェニルボレート(Et3NHB(C66)4)(0.110g,0.260mmol)を添加し室温で12時間攪拌した。その後、THFを減圧留去し、得られた残査をヘキサンで3回洗浄したところ、オイル状化合物を得た。その残査をTHF/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、白色結晶として[(2-MeC96)GdN(SiMe3)2(THF)3][B(C65)4](150mg,59%)を得た。構造確認はX線結晶解析で行った。
【0096】
(共重合体A1−Aの重合)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、十分に乾燥した1L耐圧ガラスボトルに、スチレン104g(1mol)及びトルエン50gを添加し、ボトルを打栓した。その後、グローブボックスからボトルを取り出し、1,3-ブタジエンを54g(1mol)仕込み、モノマー溶液とした。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、ビス(2-メチルインデニル)ガドリニウム(トリメチルシリルアミド)[(2-MeC96)2GdN(SiMe3)2]を40μmol、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C65)4)を40μmol、ジイソブチルアルミニウムハライドを1mmol仕込み、トルエン10mlで溶解させ触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、モノマー溶液へ添加し、70℃で30分間重合を行った。重合後、2,6-ビス(t-ブチル)-4-メチルフェノール(BHT)の10質量%のメタノール溶液10mlを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノール/塩酸混合溶媒で重合体を分離させ、60℃で真空乾燥した。得られた重合体の収量は47gであった。
【0097】
(共重合体A1−Bの重合)
触媒溶液におけるジイソブチルアルミニウムハライドの使用量を0.8mmolとした以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。得られた重合体の収量は46gであった。
【0098】
上記のようにして製造した共重合体A1−A及びA1−Bについて、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、ミクロ構造、結合スチレン量、ブロックスチレン含有率、ガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
(数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn))
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、各重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0101】
(ミクロ構造(シス−1,4結合量、ビニル結合量)及び結合スチレン量)
重合体のミクロ構造(シス−1,4結合量、ビニル結合量)を1H-NMRスペクトル及び13C-NMRスペクトルの積分比より求め、重合体の結合スチレン量を1H-NMRスペクトルの積分比より求めた。たとえば、前記共重合体(A1)について、前記共役ジエン化合物部分のビニル結合量(つまり、ビニル結合含有率)とは、前記共役ジエン化合物部分のビニル結合のNMR測定積分値と前記共役ジエン化合物部分の全結合の積分値から求められる比率である。なお、1H-NMR及び13C-NMRは1,1,2,2-テトラクロロエタンを溶媒とし、120℃で測定を行った。
【0102】
(ブロックスチレン含有率)
スチレン部分の繰り返し単位のNMR測定でのブロック量(ブロックスチレン含有率)が全スチレン部分に占める割合を1H-NMRスペクトルの積分比より求めた。
【0103】
(ガラス転移点(Tg)(℃)及び融点(Tm)(℃))
サンプルを10mg±0.5mg秤量し、アルミニウム製の測定パンに入れ蓋をしたものを、DSC装置(TAインスツルメント社製)にて、室温から50℃まで加温し、10分間安定させた後、-80℃まで冷却し、-80℃で10分間安定させてから、10℃/minの昇温速度で50℃まで昇温しながらガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)を測定した。
【0104】
なお、サンプルの詳細NMRデータから、特にスチレン−スチレン結合が確認されなかった。
【0105】
(ゴム組成物(D)の調製及びタイヤの成形)
表1〜4上欄に示す配合処方のゴム組成物(D)を調製し、該ゴム組成物(D)をタイヤ部材(E)としてトレッド部材に用い、通常の加硫条件で加硫して、サイズ195/65R15のタイヤを試作し、下記に示す方法でタイヤ性能を評価した。その結果を表1〜4下欄に示す。
【0106】
(転がり抵抗性能)
サイズ195/65R15のタイヤにつき、回転ドラムにより80km/hの速度で回転させ、荷重を4.41kNとして、転がり抵抗を測定した。対照タイヤ(比較例1)の転がり抵抗の逆数を100として指数表示した。指数値が大きいほど、転がり抵抗が低く、転がり抵抗性能が優れることを示す。
【0107】
(ウェット性能)
サイズ195/65R15のタイヤにつき、排気量2000ccの乗用車にタイヤ4本を装着して、水深1mmの湿潤路面上で制動距離を測定した。下記に示す式により、ウェット性能を確認した。得られた値が大きいほど、湿潤路面上で制動距離が短く、ウェット性能が優れることを示す。
ウェット性能=(対照タイヤの制動距離/試験タイヤの制動距離)×100
【0108】
(ドライ性能)
サイズ195/65R15のタイヤにつき、乾燥路面での実車試験にて、テストドライバーによるフィーリングに基づき、ドライ性能(グリップ性能及びハンドリング特性)を評価した。対照タイヤ(比較例1)のドライ性能を100として指数表示し、指数値が大きいほど、乾燥路面上でのグリップ性能及びハンドリング特性が良好で、ドライ性能が優れることを示す。
【0109】
(耐摩耗性能)
サイズ195/65R15のタイヤにつき、実地耐摩耗試験にて摩耗量を測定し、耐摩耗性能を評価した。対照タイヤ(比較例1)の摩耗量の逆数を100として指数表示し、指数値が大きいほど、摩耗量が少なく、耐摩耗性能が優れることを示す。
【0110】
【表2】

【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
【表5】

【0114】
※1:SBR、JSR0122
※2:共重合体A1−A、合成品(表1に特性を示す)。
※3:共重合体A1−B、合成品(表1に特性を示す)。
※4:カーボンブラック、N234
※5:シリカ、Nipsil AQ
※6:シランカップリング剤、Si69
※7:マレイン酸モノリンゴ酸エステル
※8:エチレングリコールジマレエート
※9:1,6−へキサンジオールジフマレート
※10:N−(カルボキシエチル)マレアミド酸
※11:トリメリット酸モノ(ω−アクリロイルオキシPOP(10) )エステル
※12:トリメリット酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル )エステル
※13:トリメリット酸モノ(ω−メタクリロイルオキシPOP(9) )エステル
※14:POE(8)グリセリントリマレエート
※15:グリセリンジマレエート
※16:ポリブチレンジマレエート
※17:ポリ(PEG200)マレエート
※18:ポリブチレンアジぺートマレエート
※19:N−イソプロピル−N’−フェニル−P−フェニレンジアミン
※20:ジベンゾチアジルジスルフィド
※21:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0115】
前記共重合体(A1−A,A1−B)を含む前記ゴム成分(A)を用い、且つ、前記化合物(C1又はC2)を配合した前記ゴム組成物(D)をタイヤ部材(トレッド)に用いたタイヤ(実施例1〜24)は、従来のSBRをゴム成分とし、前記共重合体(A1−A,A1−B)を含まないゴム成分を用い、且つ、前記化合物(C1又はC2)を配合しないゴム組成物をタイヤ部材(トレッド)に用いたタイヤ(比較例2)との比較から、タイヤ性能((1)転がり抵抗性能(2)ウェット性能(3)ドライ性能(4)耐摩耗性能)が高度にバランスされ、大幅に性能向上していることが分かる。
【0116】
また、前記タイヤ(実施例1〜24)は、前記共重合体(A1−A,A1−B)を含む前記ゴム成分(A)を用い、且つ、前記化合物(C1又はC2)を配合しないゴム組成物をタイヤ部材(トレッド)に用いたタイヤ(比較例1、3)との比較からタイヤ性能((1)転がり抵抗性能(2)ウェット性能(3)ドライ性能(4)耐摩耗性能)が高度にバランスされ、性能向上していることが分かる。
【0117】
更に、前記タイヤ(実施例1〜24)は、従来のSBRをゴム成分とし、前記共重合体(A1−A,A1−B)を含まないゴム成分を用い、且つ、該ゴム成分に対し前記化合物(C1又はC2)を配合したゴム組成物をタイヤ部材(トレッド)に用いたタイヤ(比較例4〜15)との比較から、タイヤ性能((1)転がり抵抗性能(2)ウェット性能(3)ドライ性能(4)耐摩耗性能)が高度にバランスされ、性能向上していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II):
【化2】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III):
【化3】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を付加重合して得られた、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が80%以上の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(A1)を含むゴム成分(A)、無機充填剤(B)に、同一分子内に前記ゴム成分(A)に対する反応基a1を1個以上、前記無機充填剤(B)に対する吸着基b1を2個以上有する化合物(C1)を配合してなるゴム組成物(D)をタイヤ部材(E)のいずれかに用いたことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記共重合体(A1)は、前記共役ジエン化合物部分のビニル結合量が、10%以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記共重合体(A1)は、芳香族ビニル化合物部分の繰り返し単位のNMR測定でのブロック量が、全芳香族ビニル化合物部分の10%以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
DSC測定において、前記共重合体(A1)が、融点(Tm)を有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記共重合体(A1)が、スチレン−ブタジエン共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記反応基a1が、非芳香族共役2重結合基又は2重結合にカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基及びアミド基から選ばれる1種が隣接した基であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記吸着基b1が、カルボキシル基であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記反応基a1が、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びソルビン酸から選ばれる不飽和カルボン酸から誘導される基であることを特微とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記化合物(C1)がさらにオキシアルキレン基を有することを特微とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記化合物(C1)が多塩基酸の部分エステルであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記化合物(C1)が以下の化学式(V)〜(VII)のいずれかで表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【化4】

[式中、A、A及びAは、これらのうち一つが式−(RO)−CO−CR=CR−Rで表される基であり(ここでRは炭素数2〜4のアルキレン基、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である)、他は水素原子である。]
【化5】

[式中、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基であり、m1、m2及びm3は、それぞれオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す数で、m1+m2+m3が0〜90となる数である。]
【化6】

[式中、Rは、式−RO−で示される基、式−(R10O)−で示される基、式−CHCH(OH)CHO−で示される基、式−(R11O−COR12−COO−)11O−で示される基である。Rは炭素数2〜36のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基、R10は炭素数2〜4のアルキレン基、sはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜60の数、R11は炭素数2〜18のアルキレン基、アルケニレン基、2価の芳香族炭化水素基又は−(R13O)13−(R13は炭素数2〜4のアルキレン基、uはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数)、R12は炭素数2〜18のアルキレン基,アルケニレン基又は2価の芳香族炭化水素基、tは平均値で1〜30の数である。]
【請求項12】
下記一般式(I):
【化7】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Ra〜Rfは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(II):
【化8】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpRは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(III):
【化9】

(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物の存在下、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を付加重合して得られた、共役ジエン化合物部分のシス-1,4結合量が80%以上の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(A1)を含むゴム成分(A)に、下記一般式(IV)で表されるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであって分子量250以上の化合物(C2)を配合してなるゴム組成物(D)をタイヤ部材(E)のいずれかに用いたことを特徴とするタイヤ。
【化10】

[式中、R14は水素、又はメチル基を示し、R15はエチレン基またはプロピレン基を示し、R16は飽和若しくは不飽和のアルキル基,アリール基または一部もしくは2か所以上が−OH、−COOH、−(C=O)−で置換されたものであり、R16部分の末端にカルボキシル基を持ち、かつ、kは0〜30の整数である。]
【請求項13】
前記ゴム組成物(D)が、前記無機充填剤(B)を含むことを特徴とする請求項12に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記タイヤ部材(E)がトレッドであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のタイヤ。

【公開番号】特開2011−225650(P2011−225650A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94421(P2010−94421)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】