説明

タンクの製造方法

本発明は、摩擦撹拌溶接を用いて1以上の金属板からタンクを製造することに関する。1つまたは複数の金属板は、最初に互いに向かい合った1組の対向縁部(2、3)を有するチューブ形状(4)に成形され、長手方向の継ぎ目を形成し、その後対向縁部(2、3)は一緒に摩擦撹拌溶接される。摩擦撹拌溶接された領域の少なくとも一部分は冷間加工され、その後チューブは再結晶温度よりも高い温度で熱処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板から摩擦撹拌溶接したタンク、または圧力容器に用いるライナーの製造方法および摩擦撹拌溶接したタンクまたはライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
タンクは、流体、特に、おそらくしかし必須ではないが圧力下のガスを貯蔵することを目的とする容器(またはコンテナ)である。従って、用語タンクは、シリンダーのようなガスの貯蔵に通常用いるアイテム(または品目)および圧力容器に用いるライナーを包含する。
【0003】
円筒状の金属タンクは広く知られており、円筒部は通常押し出しにより形成され、溶接された予め形成した要素により又は熱間もしくは冷間加工工程により閉じられた少なくとも1つの端部を有する。例えば、国際公開公報WO2004/096459は、ポートホールダイス(porthole die)を通した押し出しによりチューブから製造したアルミニウムシリンダー製造について開示している。押し出しプロセスの際に形成される長手方向の溶接部は、回転するプローブ(rotating probe)を押し出し溶接部に沿って移動させることにより調整される。これは、微細に分割された結晶粒を溶接領域に形成する効果があると言われている。この場合、押し出しの間でプローブを適用する前に溶体化処理が実施されるようである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、出発材は金属、好ましくは例えば析出硬化によるように、熱処理により硬化できる合金の板である。その板はチューブに圧延され(または巻かれ、rolled into)、その対向する平行な縁(または端、edge)は互いに向かい合うように一緒にされ、向かい合った縁は溶接される。同様な技術は鋼のシリンダーの製造において知られている。例えば、米国特許公報第5,152,452号は高圧流体貯蔵用の鋼のシリンダーの製造について示している。この方法は、鋼板をチューブに冷間圧延することおよびTIG、MIGまたは電子ビーム溶接のような融接を用いた、接合箇所(join)に沿った溶接を含む。続いて、シリンダーの端部(end)がスウェージングにより形成される。
【0005】
圧力シリンダーの円筒部は、潜在的に最も高い圧力がかかる部分であることが知られており、従って円筒部に沿って長手方向に形成されたどのような溶接部も、既に最も高い圧力がかかる部分とみなされた部分の潜在的な弱い直線部であろう。本発明では、発明者らは摩擦撹拌溶接(FSW)を用いて強度が向上した高信頼性ジョイント(または接合部)を提供する。
【0006】
摩擦拡散溶接(friction stir welding)は、比較的新しい技術である。基本的な方法は、例えば国際公開公報WO93/10935に示され、通常2つのワークピース(被加工物)を接合するのに用いる。この方法は、回転する又は往復運動するプローブを接合されるワークピースに押し込むことと、継ぎ目(または接合線、joint line)に沿ってプローブを動かすことを含む。プローブとワークピースとの摩擦接触により生成される熱は、プローブが通過した後に継ぎ目の全域に亘り接合しワークピースを一緒に溶接する可塑化した(または柔軟になった、plasticised)材料の領域を生ずる。
【0007】
摩擦撹拌溶接はTIGまたはMIGのような融接方法により得ることができる機械的特性に比べ、より優れた機械的特性を有するジョイント(または接合部)を与えることが可能である。加えて溶接領域の結晶粒径を微細にできる。激しく加工されていることから、残念ながら、この微細化した結晶粒径は不安定であり、その後の熱処理の際に過度に大きな粒を成長させる傾向があるであろう。熱処理した溶接領域のこのような大きな粒は、タンク、とりわけ圧力下で流体を収容するように構成されたタンクでは受け入れられない。本発明は、最終のタンクにおいて大きい粒の存在を回避する、熱処理を行った摩擦拡散溶接したタンクの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って与えられたタンクまたは圧力容器の製造方法があり、該方法は、
1)1以上の金属板を互いに向かい合った1組の対向縁部を有するチューブに成形し、長手方向の継ぎ目を形成する工程と、
2)継ぎ目に沿って対向縁部を一緒に(または一体に、together)摩擦撹拌溶接する工程と、
3)摩擦撹拌溶接した領域の少なくとも一部分を冷間加工する工程と、
4)冷間加工工程の後、再結晶温度より高い温度でチューブを熱処理する工程と、
を含む。
【0009】
金属チューブは、好ましくは熱処理により強化できる合金よりなる。これにより溶接の前に金属板を好都合にシリンダーに成形でき、引き続いて冷間加工操作(または工程、operation)を実施できる。このような熱処理できる合金は、例えばアルミニウム合金を用いた例えば析出硬化によるような、いくつかの手段により強化できる合金を含む。析出硬化を用いて強化することが他の合金は、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金、ニッケル合金または鋼を含む。例えば鋼に対するような、相変態(または相転移)技術もまた硬化に用いてよい。
【0010】
析出硬化可能なアルミニウム合金、特に2001年1月に改訂されたThe Aluminum Association発行のInternational Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Aluminum Alloysに規定されているAA2000、AA6000、AA7000およびAA8000シリーズがとりわけ好ましい。具体的な好ましいアルミニウム合金は、AA6061、AA7032、AA7060およびAA7475である。
【0011】
析出硬化は、可溶性元素を溶体に取り込む溶体化処理と、その後の低温析出処理とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は長方形の板からシリンダーを形成する段階を図式的に示すAからEと名前を付けた一連の図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語「板(plate)」は、長方形または正方形の板(またはプレート)および長さ方向に沿って均一な断面を有しないチューブに圧延するのに適した形状にした板を包含することを意図している。板は均一または変化する厚さであってよい。用語「板」は0.006インチ以上の厚さの圧延された結果物を意味する。これは、通常0.006インチから0.250インチの間の厚さを有するシート及び0.250インチ以上の厚さを有する板を含む。
【0014】
本発明では、摩擦撹拌溶接部の少なくとも一部分が冷間加工される。本願発明者らは、冷間加工によって、溶接部または母金属に顕著な回復または再結晶が起こる温度よりも低い温度での変形を指している。引き抜きは、シリンダーに適用可能な冷間加工操作の一例である。しごき加工(ironing)は別の例である。
【0015】
本発明では、溶接したタンクは、摩擦撹拌溶接および冷間加工の後、熱処理される。熱勝利工程は、顕著な回復または好ましくは再結晶が起こる温度での焼鈍(またはアニーリング)を含む。アルミニウム合金では、適切な焼鈍を350℃から475℃の間で実施できる。別の実施形態では、熱処理工程は、熱処理後に可溶元素の全てまたは大部分を溶体(solution)中に保持するのに十分な速度での冷却が続く溶体化処理を含んでよい。溶体化処理は、全てまたは大部分の可溶元素が溶体中に取り込まれる温度(アルミニウム合金につては通常400℃から545℃)に加熱することにより実施され、その後、溶体中の可溶元素の大部分または全てを保持するのに十分な速度で冷却される。
【0016】
溶体化処理した合金は、その後、室温または例えば約90℃〜約200℃、好ましくは105℃〜200℃のような昇温した温度で析出処理を行い、強度を増加させてもよい。時効硬化は実質的に一定の温度で単一工程により実施してもよい。他の実施形態では、時効硬化はそれぞれの工程の異なる温度である、2以上の工程 を含んでもよい。T73テンパーは最初Sprowlsにより権利化された(米国特許公報第3,198,676号)。しかし、個々の合金および用途に適合するように構成された多くの改変したものがある(例えば、米国特許公報第4,477,292号および/または米国特許公報第5,108,520号を参照されたい)。
【0017】
摩擦撹拌溶接をした接合部は。再結晶を起こすことが可能な条件下で熱処理を実施すると過度な粒成長を示すことが知られている。焼鈍の間および溶体化の間に粒成長に適した条件が生ずる。
【0018】
アルミニウム合金の摩擦撹拌溶接部の溶体化熱処理については米国特許公開公報第2005/0011932号で検討されている。この特許出願で取り組んでいる問題は、摩擦撹拌溶接工程の際に塑性変形された接合部の一部分で熱処理の間に起こる増加した結晶粒径の結果として生ずる。粗大粒構造は良好な機械的特性にとって好ましいものではないことから、機械的な特性を改善することを意図した工程(溶体化熱処理)は、実際は重要な領域、すなわち溶接した継ぎ目に沿った領域で機械的特性の劣化が生じている。
【0019】
米国特許公開公報第2005/0011932号は、摩擦撹拌溶接の前に熱処理条件を調整することにより粗大粒の成長を避ける方法を開示している。これは、好ましくはインゴットが板に熱間圧延および必要に応じて冷間圧延される前に適用される特別の高温処理を要する。本方法は主に、特別に処理した材料の使用がコストにより禁じられることのない航空宇宙産業向けを意図したものである。本発明は、特別に製造した出発材を使用することなしに、米国特許公開公報第2005/0011932号で取り扱っている問題を克服する、よりコスト効率の良い手段を提供する。
【0020】
本発明では、溶体化熱処理工程は、溶接したチューブの摩擦撹拌溶接した領域の少なくとも一部分に冷間加工操作を実施する工程が先に行われる(または先行する)。好ましくは、これは冷間引き抜き操作又はしごき操作、すなわち約100℃よりも低い温度で行われる操作である。
【0021】
冷間加工操作自身は冷間加工したシリンダーの粒形状の改良の効果を有するであろうが、しかしより重要なことに、引き抜き加工が、その後の熱処理の摩擦撹拌溶接領域で結晶粒径を増加させる傾向に反した作用をする効果を有することを見出した。
【0022】
摩擦撹拌溶接の後でしかし溶接したチューブに冷間加工工程が適用される前に焼鈍操作を実施するのが望ましいであろう。これは、摩擦撹拌溶接の前のチューブを形成する工程が、チューブを更なる引き抜きを行うには硬過ぎる状態にした場合には必要だろうがしかし、この焼鈍操作が摩擦撹拌溶接部に出現する大きな粒をもたらすであろうリスクがある。これらの大きな粒は冷間加工により微細化することが可能であり、その後もう一度溶接領域を熱処理(焼鈍または溶体化処理)する。
【0023】
必要な冷間加工量は合金成分、摩擦撹拌溶接の条件および用いる熱処理のサイクルに依存するであろう。選択する加工量は、母金属および溶接した金属において二次的な粒成長避けるのに十分でなければならない。二次的な粒成長は、とりわけ比較的低い度合いの冷間加工で起こる傾向がある。
【0024】
引き抜きによる冷間加工はシリンダーの直径を減少または増加させ、シリンダーの壁の厚さを減少させる。典型的には、引き抜き操作の際、シリンダーの壁の厚さは5mmから2mmまで減少する −厚さが50%減少。実際には、溶体化処理の際の粗大粒の成長を避けるのに20%の冷間加工は十分である。より大きな冷間加工量は、おそらく各工程の間にシリンダーの焼鈍を伴う多工程の引き抜き操作を要するであろう。
【0025】
1つの実施形態では、シリンダーの中央部分のみが引き抜き加工され、端部はそれらの元の厚さで残され、シリンダーの端部を形成する工程の準備がされる −以下を参照されたい。他の実施形態では、シリンダーの全長を引き抜き操作することができるがしかし、端部はより低い度合の引き抜き加工を行い、端部での壁の厚さがより厚く、端部を形成する工程の準備がされる。
【0026】
引き抜き操作に先立ち、シリンダーの内面および外面を磨耗させ(または研磨し、abrade)、溶接工程の間に導入された表面の凹凸を低減しておくのが好都合である。このような磨耗(または研磨、abrasion)は、溶接した領域に限定することが可能であるが、好ましくはシリンダーの内面と外面の全体が研磨され、引く抜き操作の準備として十分に均一な表面を備えている。磨耗は研磨(sanding)工程または研削(または研磨、grinding)工程により実現可能である。
【0027】
製造方法の最後の工程−端部の形成−は、溶接により予め形成した端部を取り付けることによる、および/またはスピニング加工(またはへら絞り、spinning)もしくはスウェージングのような形成工程によりシリンダー端部をネッキング加工する(または絞る、直径を減少させる、necking down)ことにより実施できる。本発明では、熱間スピンフォーミング(または熱間スピン形成、hot spin forming)法により一方または両方の端部を閉じるのが好ましい。この目的のために、形成されるチューブの一端または両端はチューブの残りの部分よりも厚い壁の厚さを有し、スピンフォーミング工程を実施するのに十分な金属の厚さがある。これは、機械加工により実現できるが、しかし上述のように、その端部が中央部よりも厚いシリンダーを作るのに引き抜き操作を用いることが可能である。従って、単に出発材として用いる板の適切な厚さを選ぶという問題である。
【0028】
本発明をより良く理解できるように、単なる例として、図1が本発明の方法による円筒形圧力容器の製造のいくつかの工程を示している添付の図を参照し本発明の1つの実施形態を示す。
【0029】
図1は長方形の板からシリンダーを形成する段階を図式的に示すAからEと名前を付けた一連の図を含む。
【0030】
製造工程は、対向した平行な縁部2、3を有する正方形または長方形の板1により始まる。板はAA6061のようなアルミニウム合金よりなる。以後の工程の間で損傷を避けるようにその合金は好ましくは開始する前に焼鈍される。板の厚さはシリンダーの所望の壁の厚さに依存するであろう。通常、ライナーの製造用には板の厚さは約5mmでよい。板1は開いた環状(または開環状、open circular)のチューブ4(図1B)に圧延成形され、クランプ固定具(図示せず)に配置され、シリンダーの長手方向に延在するライン5を形成するように縁部2、3が引っ付けられる(または押して一緒にする、push together)。摩擦撹拌溶接がライン5に沿って実施され、単一の長手方向の溶接線(weld line)により縁部2,3を一緒に接合する。
【0031】
上述したように、溶接線に沿ってワークピースを通って、回転または往復運動するプローブを引っ張ることにより実施される。本願では、厚さの一部のみを通る溶接部は不可避的に不規則な線を残すであろうし、従って表面、最も可能性があるのは溶接が浸透(または侵入)しない内面が弱いことから、板の厚さ全体が溶接されるのが望ましい。このため、プローブが接合部の厚みに十分に深く浸透して溶接部が貫通することを確実にすることが望まく、このことは、実用上は通常、プローブ自身が溶接中にワークプレスを貫くことを意味するであろう。
【0032】
チューブはまた、その後チューブを形成するように固定具にクランプでき、複数の長手方向の溶接により摩擦撹拌溶接できる、アーチ形の部材に圧延成形される2以上の長方形の板からも製造可能であることが明らかであろう。例えば2つの長方形の板を、摩擦溶接をした2つの接合部を用いて円形のチューブを形成するように、その後接合されるそれぞれ180°アーチ形部材に圧延成形することが可能であろう。
【0033】
次に、溶接されたチューブに、シリンダーの内面および外面を回転研磨(rotation sand)して圧延、機械加工または溶接による凹凸のない均一な表面を与える研磨(sanding)工程が実施される。これは、以後の操作の際に応力点(stress point)を除去することを意図している。研磨の後、チューブは「O」状態("O" condition)に焼鈍され、チューブを次の操作のために準備するように内面および外面に潤滑剤が塗布される。
【0034】
溶接されたチューブは次に、その間にチューブの長さが増加し、チューブの壁の厚さが減少(通常、約50%)する、引き抜き操作を実施する。冷間−すなわち、約100℃より低い−で実施する引き抜きは、チューブを適切な形状のダイス(または金型、die)に押し込むことを含む。引き抜き操作の結果を図1Dに示す。それは、チューブ4の中央部6の壁の厚さは減少しているが、しかし端部7、8の壁の厚さはより厚いことが見出せるであろう。この違いの理由は、後で端部に実施される形成操作に耐えるように、十分な材料の厚さを有する端部を残しておくためである(以下を参照されたい)。予め形成した端部が用いられる場合、そして、端部の厚くした壁は必要なく、チューブの全長に引き抜き工程を実施することができる。通常、前述の厚さ5mmのプレートを用いて、中央領域6での壁の厚さは約2.5mmであり、一方端部領域7、8は5mmの壁の厚さが残存するであろうし、または壁の厚さがより少ない量減少する、僅かに少量の引き抜きを実施してもよい。
【0035】
金属を軟化させ内部応力を開放する焼鈍が間に入る複数段階の冷間引き抜きが必要となるかもしれないことに留意されたい。
【0036】
チューブの厚くした端部7、8は、次に必要であれば所望の長さに整えられ、熱間スピンフォーミング(またはホットスピンフォーミング)工程を実施されて端部がドーム形になり(または半球形になり、dome)、図1Eに示すようにそれぞれネック部9、10を形成する。明らかに、端部の正確な形状は特定の要求により決定されるであろう;例えば1つの端部は完全に閉鎖してもよい。
【0037】
半ば完成した(semi-finished)シリンダーに溶体化熱処理を行う。この処理の間、シリンダーは約1000°F(537℃)まで熱処理され、T4状態まで急速水焼入れされ、そして人為的にT6状態まで時効される。
【0038】
溶体化熱処理の目的は、材料、とりわけ溶接領域の機械的強度を改善することである。しかし、溶体化熱処理は結晶粒径を増加させる効果を有し、これが当然ながら加圧容器にとって重要である、延性や破壊強度のような特定の機械的特性を悪化させることが知られている。冷間引き抜き操作はこの効果に対抗し、溶体化熱処理の間の粗大粒の形成を防止または少なくとも低減することが見出されている。
【0039】
製造プロセスでなされた観察は、摩擦撹拌溶接をして、その後冷間加工していないシリンダーは、溶体化処理後、ベース材料が微細な粒を見せる一方、摩擦撹拌溶接した領域が肉眼で認識できる大きな粒を見せることを示している。さらに、50%の冷間引き抜きに続いて溶体化熱処理を行う摩擦撹拌溶接したチューブはベース材料と溶接領域の両方に微細な粒を見せる。
【0040】
最後に、ネック部は整えられ(または切り取って形を整える、trim)、ネジ山およびポート構造(または開口部構造、port configuration)が機械加工される。仕上げたシリンダーを十分に洗浄および濯いで機械加工操作による任意の切削液および金属の削りくずを除去する前に、ハンドリングによる任意の欠陥を除去しおよび均一な外観仕上げを作るように、外面に別の研磨を施してもよい。
【0041】
仕上げたシリンダーは、加圧したおよび加圧しない流体を貯蔵するために用いることができる。しかしながら、シリンダーはまた、例えば、通常はラッピングにカーボンファイバーのフィラメントを用いる、フープ状の複合材をラップしたシリンダー(composite hoop wrapped cylinder)または全体に複合材をラップしたシリンダー(composite full wrapped cylinder)のような複合材をラップしたシリンダー(または複合材ラップシリンダー、composite wrapped cylinder)のライナーとしても使用可能である。
【0042】
この製造方法の実行可能性をテストするように、製造の操作の際に摩擦撹拌溶接をした領域を詳しく観察し、形成操作および機械加工操作と両立可能であることを確かなものとした。
【0043】
・引き抜き操作:金属の分離の痕跡はなく、またFSW線の外観は低減された。
・スピンフォーミング操作:溶接領域は良好に機能した;材料は割れまたはクラックを生ずることなく、FSW領域に肉盛りされた(または形成された、build-up)材料は残りの領域と同じであった。スピンフォームで形成したドーム/ネック領域に視認できるFSW線の痕跡はなかった。
・機械加工操作:機械加工したポート表面またはネジ部にFSW線の痕跡はなかった。
【0044】
上述の工程により4mmの厚さのAA6061合金の長方形の板を含む出発材から製造したライナーおよびシリンダーのテストは以下の結果を示した。
【0045】
ライナーのテスト:(機械的特性)
・引張り強度:50,000Psi.(344.7MPa)
・降伏強度:43,800Psi.(302MPa)
・伸び:14%
【0046】
ライナーの破裂(またはバースト、burst)
・破裂圧力:1,300Psi.(9MPa)
・破裂位置:摩擦撹拌溶接線から約130mm離れた、側壁の中央部で長手方向に破壊
・破裂モードおよび圧力はシームレスライナーでの結果と同様である。
【0047】
DOT CFFC規格によるフィラメントを巻いたシリンダーのテスト:
初期破裂試験(virgin burst test):
・シリンダーは圧力15,100Psi(104.1MPa)での破裂により破裂試験に合格した。
・破裂の破壊は摩擦撹拌溶接線から離れていた。
・DOT CFFC規格は、3.4×使用圧力(3.4×3,000)=10,200Psi(70.3MPa)の最小破裂圧力を要求する。
【0048】
サイクル試験:
・シリンダーは、使用圧力(service pressure)3,000Psi(20.7MPa)にて10,000サイクルを達成することにより要求されるサイクルテストに合格した。
【0049】
サイクル後の破裂試験
・3,000Psi(20.7MPa)にて10,000サイクル達成に続いて5,000psi(34.5MPa)にて30サイクルを達成した後、シリンダーは破裂試験に供された。シリンダーを加圧し、摩擦撹拌溶接線から離れた側壁で破裂する前に、15,000psi(104.1MPa)に達した。
・DOT CFFC規格は、3.06×使用圧力(3.06×3,000)=9,180psi(63.3MPa)の最小破裂圧力を要求する。
【0050】
試験の結論:
・十分に巻かれた複合材料シリンダーは、シームレスライナーを用いて作られた量産のシリンダー(production cylinder)と同様に初期破裂試験、サイクル試験およびサイクル後の破裂試験に合格した。量産のシリンダーと摩擦撹拌溶接をしたシリンダーの両方は、同じライナーの仕上げ(tooling)、複合材料および巻き付けパターンにより作られ、同じライナーおよびシリンダー構成に製造された。
【0051】
全てのテスト結果は、"Basic requirement for fully wrapped carbon-fiber reinforced aluminum lined cylinders(十分に巻かれたカーボンファイバーにより補強した、アルミニウムがライニングされたシリンダーへの基本的な要求事項)"という題名の付属書Aに記載されている、2007年3月付けのDOT CFFC規格(第5版)の要求事項に従っていた。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1以上の金属板を互いに向かい合った1組の対向縁部を有するチューブに成形し、長手方向の継ぎ目を形成する工程と、
b)継ぎ目に沿って対向縁部を一緒に摩擦撹拌溶接する工程と、
c)摩擦撹拌溶接した領域の少なくとも一部分を冷間加工する工程と、
d)冷間加工工程の後、再結晶温度より高い温度でチューブを熱処理する工程と、
を含む、タンクまたは加圧容器に用いるライナーの製造方法。
【請求項2】
前記1以上の金属板が、アルミニウム合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
熱処理工程が、350℃から475℃の範囲内の焼鈍を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
熱処理工程が、全てまたは殆どの可溶元素を溶体に取り込む溶体化処理を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
シリンダーが、溶体化処理の際に400℃から545℃の間の温度に加熱され、その後殆どまたは全ての可溶元素を溶体中に保持する速度で冷却されることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
冷却が、空気または水への焼入れを含むことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
溶体化処理の後にチューブを、室温で析出硬化させることおよび/または昇温した温度で1以上の析出硬化操作をすることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
昇温した温度が、実質的に90〜200℃の範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
冷間加工が、約100℃より低い温度で実施されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
冷間加工操作が、冷間引き抜きおよび/またはしごき加工操作を含むことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
冷間加工操作が、20%より大きくパイプの厚さを減少させることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
1以上の焼鈍操作が実施され、1またはそれぞれの焼鈍操作が1以上の冷間加工操作の前、間または後に実施されることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
シリンダーの中央部のみを引き抜き加工し、シリンダーの端部の厚さを変化させない又は中央部より少ない度合まで減少した状態にすることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項14】
シリンダーが、析出硬化可能なアルミニウム合金から形成されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
シリンダーが、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金、ニッケル合金または鋼を含む群の中の1以上の合金であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
アルミニウム合金が、AA2000シリーズ、AA6000シリーズ、AA7000シリーズおよびAA8000シリーズから選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
アルミニウム合金が、AA6061、AA7032およびAA7475を含む群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法で作られたタンクまたは圧力容器に用いるライナー。
【請求項19】
その全長の少なくとも一部分に沿って摩擦撹拌溶接部を有し、
溶接領域の少なくとも一部分が冷間加工および熱処理操作を実施され、これにより前記溶接領域の少なくとも一部分が溶接領域を取り囲む母金属より高い破裂強度を有することを特徴とする金属タンクまたは圧力容器用のライナー。
【請求項20】
溶接領域が、取り囲む母金属と実質的に同じ厚さを有することを特徴とする請求項19に記載の金属タンクまたはライナー。

【公表番号】特表2010−530498(P2010−530498A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507005(P2010−507005)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050341
【国際公開番号】WO2008/139222
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(505179052)ラクスファー・グループ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】