説明

タンシノンを用いた炎症性サイトカイン産生の阻害

哺乳類細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を抑制する方法が提供される。また、哺乳類の炎症性サイトカインカスケードを阻害又は処置する方法が提供される。さらに、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックを被る、又はその危険性がある哺乳類を治療する方法が提供される。加えて、哺乳類細胞からのNO放出を抑制する方法が提供される。過剰NO産生により媒介される疾患を有する、又はその危険性のある哺乳類において、NO産生を抑制する方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的に炎症の治療に関する。より詳細には、本発明は炎症性サイトカイン産生の阻害のためのタンシノン及びタンシノン誘導体の使用を対象とする。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は2006年1月13日付けで出願された、米国仮出願第60/759,237号の利益を主張するものである。
【0003】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
合衆国政府は本発明における一括払いライセンスを有し、限られた状況において、特許権者に、国立総合医科学研究所により与えられている助成金番号R01GM063075及びR01GM070817の観点から提供されるように、適当な条件で他の者に使用許諾するように要求する権利を有する。
【背景技術】
【0004】
「重症セプシス」は体温、心拍数、呼吸数、及び白血球数の異常を含む臓器機能不全の兆候により定義される症候群である。抗生物質療法及び集中治療における近年の進歩にもかかわらず、セプシスは依然として集中治療室において最も多い死因であり、米国だけでも年間およそ225000人の犠牲者を出している。セプシスの発症は、多様な炎症誘発性メディエータ、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)(Tracey et al. 1987)、インターロイキン(IL)−1(Dinarello and Thompson 1991)、インターフェロン(IFN)−γ(Heinzel 1990)、酸化窒素(Dinapoli et al. 1996)、及びマクロファージ遊走阻止因子(MIF)(Calandra et al. 2000; Hotchkiss and Karl 2003; Riedemann et al. 2003b)の過剰な蓄積を特徴とする、調節異常(dys-regulated)全身炎症反応に(少なくとも部分的に)起因する。
【0005】
ユビキタスタンパク質である、高移動度群ボックス1(HMGB1)は活性化マクロファージ/単球により放出され(Chen et al. 2004; Rendon-Mitchell et al. 2003; Tang et al. 2006; Wang et al. 1999)、且つ致死性の内毒素血症及びセプシスの後期メディエータとして機能する(Wang et al. 1999; Wang et al. 2004b; Wang et al. 2004c; Yang et al. 2004)。循環HMGB1レベルは、内毒素血症及びセプシスのマウス(Wang et al. 1999; Yang et al. 2004)、並びにセプシスの患者(Wang et al. 1999)において、遅延的に(in a delayed fashion)(16〜32時間後)上昇する。組換えHMGB1のマウスへの投与は、セプシスの多くの臨床兆候、例えば、熱(O'Connor et al. 2003)、腸粘膜バリア機能(intestinal barrier function)の乱れ(Sappington et al. 2002)、組織損傷(Abraham et al. 2000)、及び多臓器障害(Wang et al. 1999)を再現する(recapitulates)。抗HMGB1の抗体又は阻害剤(例えば、ピルビン酸エチル、ニコチン、又はステアロイルリソホスファチジルコリン)の投与は、LPS誘導性急性組織損傷(Abraham et al. 2000; Ueno et al. 2004)、及び致死性内毒素血症(Chen et al. 2005; Wang et al. 1999; Wang et al. 2004b; Wang et al. 2004a)からマウスを有意に防御する。特に、これらの抗HMGB1試薬は、初回投与がセプシスの発症から24時間後に行われる場合であっても、マウスを致死性実験的セプシスから救う能力があり(Qin et al. 2006; Ulloa et al. 2002; Wang et al. 2004b; Yang et al. 2004)、HMGB1標的治療戦略のより大きな可能性(wider window)を示す。したがって、臨床的に安全であることが立証され、それでもHMGB1放出を抑制する能力のある薬剤は、炎症性疾患の防止及び治療において可能性を有し得る。
【0006】
人類の歴史を通して、生薬は、多様な炎症性の病気に関する民間療法の基盤を築いてきた。痛み及び熱を抑制するためのヤナギの樹皮抽出物の使用が、紀元前5世紀にギリシャの医師(ヒポクラテス)により記録されており、それに続く、痛み/熱緩和活性成分としてのサリチル酸の発見は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、すなわちアスピリンの最初の合成、及び製薬産業の成立をもたらした。何千という漢方薬のうち、ほんのわずかのみが「シェン(Shen)」と命名されている[例えば、レン シェン(Ren Shen)(朝鮮ニンジン(ginsen))、タンジン(Dan Shen:ダン シェン)(Salvia miltiorrhiza)]。タンジンは最高の薬理効果のある物質(「ダン(Dan)」と称する、辰砂(cinnabar))を含む薬草(「シェン(shen)」と称する)であり、中国において心臓血管疾患の患者に対して広く用いられてきた(Ji et al. 2000)。その有益な効果は、幾つかの赤色色素、例えば、タンシノンI、タンシノンII、タンシノンIV、及びクリプトタンシノンによるものであり(Wu et al. 1993; Yagi et al. 1994)、これらは多様な抗炎症特性を呈する(Jang et al. 2003; Kang et al. 2000; Kim et al. 2002)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
様々な証拠が複数のタンジン成分(例えば、タンシノンI、タンシノンII、及びタンシノンIV)の幾つかの抗炎症活性を示唆している(Jang et al. 2003; Kang et al. 2000; Kim et al. 2002; Li and Tang 1991; Shilin et al. 1987)。したがって、炎症、及び炎症のメディエータの放出、特に「後期」炎症メディエータに対する、これらの成分又はその誘導体の影響のさらなる特性化が必要である。本発明はこの必要性を扱う。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その結果、本発明者らはタンシノンが炎症誘発性サイトカインに起因する炎症の防止及び治療に有用であることを発見した。
【0009】
したがって、本発明は哺乳類細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を抑制する方法を対象とする。当該方法は、細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を抑制するために有効な量の水溶性タンシノンと、細胞を接触させることを含む。
【0010】
本発明はまた、哺乳類の炎症性サイトカインカスケードを阻害する方法を対象とする。当該方法は、炎症性サイトカインカスケードを阻害するために有効な量の水溶性タンシノンで、哺乳類を処置することを含む。当該方法では、哺乳類は炎症性サイトカインカスケードにより媒介される状態にある。
【0011】
さらに、本発明は哺乳類の炎症性サイトカインカスケードを処置する方法を対象とする。当該方法は、炎症性サイトカインカスケードを阻害するために有効な量のタンシノンで、哺乳類を処置することを含む。当該方法では、哺乳類は炎症性サイトカインカスケードにより媒介される状態にある。
【0012】
本発明はさらに、セプシス、敗血症、ショック、及び/又は内毒素性ショックの危険性のある哺乳類を処置する方法を対象とする。当該方法は、内毒素性ショックの生理的影響を低減又は防止するために効果的な様式で、哺乳類をタンシノンIIAスルホン酸ナトリウムで処置することを含む。
【0013】
本発明はさらに、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックを被る哺乳類を処置する方法を対象とする。当該方法は、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックの生理的影響を低減又は防止するために効果的な様式で、精製タンシノンを哺乳類に投与することを含む。
【0014】
本発明はまた、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックを被る哺乳類を処置する付加的方法を対象とする。当該方法は、セプシスの生理的影響を低減又は防止するために効果的な様式で、哺乳類をSalvia miltiorrhiza又はその抽出物を含む組成物で処置することを含む。当該方法では、組成物はlignum dalbergiae odoriferaeを含まない。
【0015】
本発明は哺乳類の細胞からのNO放出を抑制する方法をさらに対象とする。当該方法は、細胞からのNOの放出を抑制するために有効な量の水溶性タンシノンと、細胞を接触させることを含む。
【0016】
本発明はさらに、過剰NO産生により媒介される疾患の危険性のある哺乳類における、NO産生を抑制する方法を対象とする。当該方法は、哺乳類におけるNO産生を抑制するために有効な量の水溶性タンシノンを、哺乳類に投与することを含む。
【0017】
さらに、本発明は過剰NO産生により媒介される疾患を有する哺乳類における、NO産生を抑制する方法を対象とする。当該方法は、哺乳類におけるNO産生を抑制するために有効な量の精製タンシノンを、哺乳類に投与することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
その結果、本発明者らはタンシノンが炎症誘発性サイトカインに起因する炎症の防止及び治療に有用であることを発見した。実施例を参照されたい。
【0019】
したがって、本発明は哺乳類の細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を抑制する方法を対象とする。当該方法は、細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を抑制するために有効な量の水溶性タンシノンと、細胞を接触させることを含む。
【0020】
本明細書で用いられる場合、タンシノンは、図1Bに示すようにヒドロ−フェナントロ[1,2−b]フラン−10,11−ジオン四環構造を有する、マクロファージからのHMGB1の放出を阻害することができる化合物である。例としては、天然に存在する、タンシノンI(1,6−ジメチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−フェナントロ[1,2−b]フラン−10,11−ジオン)、クリプトタンシノン(1,6,6−トリメチル−1,2,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−フェナントロ[1,2−b]フラン−10,11−ジオン)、及びタンシノンIIA(1,6,6−トリメチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−フェナントロ[1,2−b]フラン−10,11−ジオン)が挙げられる(図1B)。水溶性タンシノンは極性部を有するため、図1Bの3つの天然に存在するタンシノンよりも可溶性である。このような極性部の例としては、スルホン酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、及びリン酸基が挙げられるが、これらに限定されない。極性部は、化合物がHMGB1放出を阻害する活性を有し続けると仮定すると、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムのように五員環に(図1B)、又はタンシノンの任意の他の部分に存在し得る。好ましくは、水溶性タンシノンは天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体であって、最も好ましくはタンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである。
【0021】
当該方法は、炎症誘発性サイトカインを産生する任意の細胞に有用である。好ましくは、細胞はマクロファージである。
【0022】
以下の実施例1及び実施例2に示したように、タンシノンは炎症誘発性サイトカインである、TNF−α(TNF)及びHMGB1の一方若しくは双方の放出を阻害し、ここで、炎症誘発性サイトカインは好ましくは、本方法の影響を受けるものである。当該方法はまた、1つ又は複数の他の炎症誘発性サイトカイン、例えばインターロイキン(IL)−1、インターフェロン−γ、及びマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の放出を阻害するために使用される。
【0023】
当該方法に使用される細胞は、炎症誘発性サイトカインにより媒介される症状を有する、又はその危険性のある哺乳類のものであり得る。当該方法は特定の哺乳類に限定されず、動物園にいる、若しくは野生の哺乳類(例えば、シカ、クマ、非ヒト霊長類等)、ペット(例えば、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、フェレット等)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ等)、実験動物(ラット、マウス等)、又は好ましくはヒトに用いられ得る。
【0024】
動物を処置する場合、タンシノンは医薬的に許容される賦形剤に入れることが望ましい。「医薬的に許容される」とは、(i)組成物をその用途にそぐわない状態にすることなく、組成物の他の成分と適合する、並びに(ii)過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、及びアレルギー反応)なしに、本明細書中に記載される被験体への使用に適している、物質を意味する。副作用は、組成物により与えられる利益を、そのリスクが上回る場合に「過度」である。医薬的に許容されるキャリアの例としては、任意の標準的な医薬キャリア、例えば、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水乳濁液等の乳濁液、マイクロエマルジョン等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0025】
上記の化合物は、ヒトを含む哺乳類への過度の投与実験を行うことなく、特定の用途に適するように調合され得る。また、組成物の適当な投与量は、過度の実験を行うことなく、標準の用量反応プロトコルを用いて決定され得る。
【0026】
したがって、経口、舌側、舌下、頬側、及び口腔内投与のために設計される組成物は、例えば不活性な希釈剤又は食用のキャリアを用いて、当該技術分野で既知の手段によって過度の実験を行なうことなく作ることができる。この組成物はゼラチンカプセルに入れられても、又は錠剤に圧縮されてもよい。経口治療投与の目的では、本発明の薬剤組成物は賦形剤と混和されてもよく、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、オブラート、及びチューインガム等の形で使用できる。
【0027】
また、錠剤、丸剤、カプセル、及びトローチ等は、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、及び香料添加剤を含有することもできる。結合剤のいくつかの例としては、微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンが挙げられる。賦形剤の例としては、デンプン又はラクトースが挙げられる。崩壊剤のいくつかの例としては、アルギン酸及びコーンスターチ等が挙げられる。滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カリウムが挙げられる。流動促進剤(glidant)の例としてはコロイド状二酸化ケイ素が挙げられる。甘味剤のいくつかの例としては、スクロース、及びサッカリン等が挙げられる。香料添加剤の例としては、ペパーミント、サリチル酸メチル及びオレンジフレーバリング等が挙げられる。これらの多様な組成物を調製する際に使用される材料は、医薬的に純粋であり、且つ使用される量で無毒性でなければならない。
【0028】
化合物は、例えば、静脈注射、筋肉注射、髄腔内注射又は皮下注射によって、非経口で容易に投与できる。非経口投与は、本化合物を溶液又は懸濁液中へ混和することによって達成できる。このような溶液又は懸濁液は、注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒等の滅菌した希釈剤を含むこともできる。また、非経口配合物は、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤と、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤と、EDTA等のキレート剤とを含むこともできる。アセテート、シトレート又はホスフェート等の緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストローズ等の張度の調整剤を添加してもよい。非経口製剤は、ガラス又はプラスチックで製造されたアンプル、使い捨て注射器又は複数回投与バイアルに入れることができる。
【0029】
経直腸投与には、化合物を医薬組成物に、直腸又は大腸内中に投与することが包含される。これは、座薬又は浣腸剤を用いて達成できる。座薬配合物は、当該技術分野で既知の方法によって容易に製造できる。例えば、グリセリンを約120℃に加熱し、組成物をグリセリンに溶解し、加熱グリセリンを混ぜ合わせた後、精製水を添加し、熱い混合物を座薬の流し込み型に注ぐことによって、座薬配合物を調製できる。
【0030】
経皮投与には、組成物の皮膚を通した経皮吸収が含まれる。経皮配合物には、パッチ(既知のニコチンパッチ等)、軟膏、クリーム、ジェル、及び膏薬等が挙げられる。
【0031】
本発明には、治療的に有効な量の化合物を哺乳類へ鼻から投与することが含まれる。本明細書で使用されるように、鼻からの投与、すなわち経鼻投与とは、化合物を患者の鼻孔又は鼻腔の粘膜へ投与することを含む。本発明で使用される場合、化合物の経鼻投与のための医薬組成物には、例えば、スプレー式点鼻薬、点鼻薬、懸濁液、ジェル、軟膏、クリーム又は粉末で投与される既知の方法で調製される治療的に有効な量の化合物が含まれる。また化合物の投与は、鼻タンポン又は鼻スポンジを用いて行なわれても良い。
【0032】
化合物が、血液脳関門を通過するように末梢的に投与される場合、化合物は好ましくは、化合物の哺乳類血液脳関門を通過する能力を促進する医薬組成に調合される。そのような製剤は当該技術分野で既知であり、吸収を促進するために親油性化合物を含む。非親油性化合物の取込みは、親油性物質と併用することで促進され得る。鼻粘膜を介した、化合物の送達を促進し得る親油性物質の例としては、脂肪酸(例えばパルミチン酸)、ガングリオシド(例えばGM−1)、リン脂質(例えばホスファチジルセリン)、及び乳化剤(例えばポリソルベート80)、デオキシコール酸ナトリウム等の胆汁塩、並びに界面活性剤様物質、例えば、Tween(商標)等のポリソルベート80、Triton(商標)X−100等のオクトキシノール、及びタウロ−24,25−ジヒドロフシジン酸ナトリウム(STDHF)が挙げられるが、これらに限定されない。Lee et al., Biopharm., April 1988 issue:3037を参照されたい。
【0033】
本発明の特定の実施形態において、化合物は親油性物質から成るミセルと併用される。そのようなミセルは、鼻粘膜の透過性を変更することで化合物の吸収を促進し得る。適当な親油性ミセルの例としては、ガングリオシド(例えばGM−1ガングリオシド)、及びリン脂質(例えばホスファチジルセリン)が挙げられるが、これらに限定されない。胆汁塩及びその誘導体、並びに界面活性剤様物質もミセル製剤中に含まれ得る。化合物は一種若しくは数種のミセルと併用され得るし、さらに、ミセル中に収容されるか、又はその表面に付随し得る。
【0034】
代替的には、化合物はリポソーム(脂質小胞)と併用されることで、吸収を促進し得る。化合物はリポソーム中に収容されるか、若しくは溶解され、及び/又はその表面に付随し得る。適当なリポソームの例としては、リン脂質(例えばホスファチジルセリン)及び/又はガングリオシド(例えばGM−1)が挙げられる。リン脂質小胞を作成する方法としては、例えば、Roberts et al.に対する米国特許第4,921,706号明細書、及びYiournas et al.に対する米国特許第4,895,452号明細書を参照されたい。胆汁塩及びその誘導体、並びに界面活性剤様物質はまた、リポソーム製剤中に含まれ得る。
【0035】
炎症性サイトカインによって媒介され、且つ本発明を利用して有効的に治療される病気の例としては、好ましくは、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍若しくは十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性、偽膜性、急性若しくは虚血性の大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸閉塞症、腸炎、ホイップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体疾患、臓器の虚血、再灌流傷害、臓器の壊死、花粉症、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺塵症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウィルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウィルス感染、C型肝炎ウィルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、火傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、じんま疹、いぼ、膨疹、血管炎、脈管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、血栓性静脈炎、心外膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、脳梗塞、脳卒中、ギラン−バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎疹、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、リウマチ様関節炎、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植の拒絶反応、移植片対宿主病、I型糖尿病、強直性脊椎炎、バーガー病、ライター症候群、又はホジキン病である。好ましくは、上記症状は、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍若しくは十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性、偽膜性、急性若しくは虚血性の大腸炎、肝炎、リウマチ様関節炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器の虚血、再灌流傷害、臓器の壊死、花粉症、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、火傷、アルツハイマー病、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳卒中、脊髄損傷、麻痺、同種移植の拒絶反応、及び移植片対宿主病である。最も好適な実施形態では、上記症状は花粉症、セプシス、及び/又は内毒素性ショックである。
【0036】
本方法はまた、第2の抗炎症剤を哺乳類に投与することをさらに含み得る。例としては、NSAID、サイトカイン阻害剤、サリチル酸塩、COX阻害剤、COX−2阻害剤、又はステロイドが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい方法では、症状はセプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックであって、第2の処置は、ムスカリン作動薬、アドレノメデュリン、アドレノメデュリン結合タンパク質、乳脂肪球上皮成長因子VIII、活性プロテインC、又はα2A−アドレナリン拮抗薬の投与である。
【0037】
本発明はまた、哺乳類の炎症性サイトカインカスケードを阻害する方法を対象とする。当該方法は、炎症性サイトカインカスケードを阻害するために有効な量の水溶性タンシノンで、哺乳類を処置することを含む。当該方法では、哺乳類は、炎症性サイトカインカスケードで媒介される症状を有する。
【0038】
上記の方法と同様に、水溶性タンシノンは好ましくは、天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体であり、最も好ましくは、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである。任意の哺乳類が当該方法の被験体となり得る。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0039】
最も好ましくは、症状はセプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックであって、哺乳類はヒトであり、且つタンシノンはタンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである。
【0040】
さらに、本発明は哺乳類の炎症性サイトカインカスケードを処置する方法を対象とする。当該方法は、炎症性サイトカインカスケードを阻害するために有効な量のタンシノンで、哺乳類を処置することを含む。当該方法では、哺乳類は炎症性サイトカインカスケードにより媒介される症状を有する。
【0041】
好ましくは、タンシノンは水溶性タンシノンであり、より好ましくは、天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体であり、最も好ましくは、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである。任意の哺乳類が当該方法の被験体となり得る。最も好ましくは、症状はセプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックであって、哺乳類はヒトであり、且つタンシノンはタンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである。
【0042】
本発明は、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックの危険性がある哺乳類を処置する方法をさらに対象とする。当該方法は、内毒素性ショックの生理的影響を低減又は防止するために効果的な様式で、哺乳類をタンシノンIIAスルホン酸ナトリウムで処置することを含む。処置の有効性を決定するために、任意の内毒素性ショックの生理的影響を測定することができる。ここで、好ましい生理的影響はHMGB1放出、TNF放出、酸化窒素(NO)放出、又は致死性セプシスである。最も好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0043】
本発明は、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックを被る哺乳類を処置する方法をさらに対象とする。当該方法は、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックの生理的影響を低減又は防止するために効果的な様式で、精製タンシノンを哺乳類に投与することを含む。当該方法に有用なタンシノンは、例えば、タンシノンI、タンシノンIIA、又はクリプトタンシノンである。より好ましいタンシノンは水溶性タンシノンであり、最も好ましくは、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである。
【0044】
処置の有効性を決定するために、任意の内毒素性ショックの生理的影響を測定することができる。ここで、好ましい生理的影響はHMGB1放出、TNF放出、酸化窒素(NO)放出、又は致死性セプシスである。最も好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0045】
本発明はまた、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックを被る哺乳類を処置する付加的方法を対象とする。当該方法は、セプシスの生理的影響を低減又は防止するために効果的な様式で、哺乳類をSalvia miltiorrhiza又はその抽出物を含む組成物で、処置することを含む。当該方法では、組成物はlignum dalbergiae odoriferaeを含まない。組成物はSalvia miltiorrhiza、又は、好ましくは、Salvia miltiorrhizaの抽出物を含んでもよい(実施例を参照)。好ましい抽出物は有機成分を含むが、その有機成分の少なくとも5重量%がタンシノンである。より好ましくは、有機成分の少なくとも10重量%、さらに好ましくは、少なくとも25重量%、いっそう好ましくは、少なくとも50重量%、又は少なくとも80重量%がタンシノンである。最も好ましくは、有機成分の少なくとも95重量%がタンシノンである。
【0046】
処置の有効性を決定するために、任意の内毒素性ショックの生理的影響を測定することができる。ここで、好ましい生理的影響はHMGB1放出、TNF放出、酸化窒素(NO)放出、又は致死性セプシスである。最も好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0047】
本発明は、哺乳類の細胞からのNO放出を抑制する方法をさらに対象とする。当該方法は、細胞からのNOの放出を抑制するために有効な量の水溶性タンシノンと、細胞を接触させることを含む。
【0048】
上記の方法と同様に、水溶性タンシノンは好ましくは、天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体であり、最も好ましくは、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである。好ましくは、タンシノン調合液の少なくとも80%がスルホン化される。
【0049】
細胞は、好ましくは、過剰NO産生により媒介される疾患を有する、又はその危険性のある、生きている哺乳類の一部分である。そのような疾患の例としては、ショック、回腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、喘息、気管支炎、オキシダント誘導性肺外傷、慢性閉塞性気道疾患、角膜ジストロフィー、高眼圧症、トラコーマ、オンコセルカ症、網膜炎、ブドウ膜炎、交感性眼炎、眼内炎、歯周炎、関節炎、敗血症性関節炎、変形性関節症、慢性関節リウマチ、結核、ハンセン病、糸球体腎炎サルコイド、ネフローゼ、硬化性皮膚炎、日焼け、乾癬、湿疹、筋萎縮性側索硬化症、硬化症、認知症、例えばエイズ関連神経変性、アルツハイマー病、脳脊髄炎、ウイルス性脳炎若しくは自己免疫性脳炎、免疫複合体性脈管炎、全身性エリテマトーデス、虚血性心疾患、心不全、心筋症、副腎不全、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、子癇前症、子癇、尿毒症合併症、慢性肝不全、卒中、脳虚血、嚢胞性線維症、結核、悪液質、虚血再かん流、血液透析に関連する健康状態、糸球体腎炎、再狭窄、ウイルス感染の炎症性続発症、低酸素症、高圧酸素による痙攣及び中毒、認知症、シドナム舞踏病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、癲癇、コルサコフ病、脳血管障害に関連する精神遅滞、NO媒介性脳外傷及び関連の続発症、虚血性脳浮腫(脳卒中)、疼痛、片頭痛、嘔吐、免疫複合体病、免疫抑制剤(immunosupressive agent)として、急性同種移植拒絶反応、又は癌が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、最も好ましい疾患は、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックである。最も好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0050】
本発明は、過剰NO産生により媒介される疾患の危険性のある哺乳類における、NO産生を低減する方法をさらに対象とする。当該方法は、哺乳類におけるNO産生を抑制するために有効な量の水溶性タンシノンを、哺乳類に投与することを含む。好ましくは、水溶性タンシノンは、天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体であり、最も好ましくは、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである。
【0051】
当該方法に関して、好ましい疾患は、ショック、回腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、喘息、気管支炎、オキシダント誘導性肺外傷、慢性閉塞性気道疾患、角膜ジストロフィー、高眼圧症、トラコーマ、オンコセルカ症、網膜炎、ブドウ膜炎、交感性眼炎、眼内炎、歯周炎、関節炎、敗血症性関節炎、変形性関節症、慢性関節リウマチ、結核、ハンセン病、糸球体腎炎サルコイド、ネフローゼ、硬化性皮膚炎、日焼け、乾癬、湿疹、筋萎縮性側索硬化症、硬化症、認知症、例えばエイズ関連神経変性、アルツハイマー病、脳脊髄炎、ウイルス性脳炎若しくは自己免疫性脳炎、免疫複合体性脈管炎、全身性エリテマトーデス、虚血性心疾患、心不全、心筋症、副腎不全、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、子癇前症、子癇、尿毒症合併症、慢性肝不全、卒中、脳虚血、嚢胞性線維症、結核、悪液質、虚血再かん流、血液透析に関連する健康状態、糸球体腎炎、再狭窄、ウイルス感染の炎症性続発症、低酸素症、高圧酸素による痙攣及び中毒、認知症、シドナム舞踏病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、癲癇、コルサコフ病、脳血管障害に関連する精神遅滞、NO媒介性脳外傷及び関連の続発症、虚血性脳浮腫(脳卒中)、疼痛、片頭痛、嘔吐、免疫複合体病、免疫抑制剤(immunosupressive agent)として、急性同種移植拒絶反応、又は癌である。最も好ましくは、疾患はセプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックである。哺乳類は、好ましくはヒトである。
【0052】
さらに、本発明は過剰NO産生により媒介される疾患を有する哺乳類における、NO産生を低減する方法を対象とする。当該方法は、哺乳類におけるNO産生を抑制するために有効な量の精製タンシノンを、哺乳類に投与することを含む。好ましくは、タンシノンはタンシノンI、タンシノンIIA、又はクリプトタンシノンであり、より好ましくは水溶性タンシノンであり、最も好ましくはタンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである。
【0053】
当該方法に関して、好ましい疾患は、ショック、回腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、喘息、気管支炎、オキシダント誘導性肺外傷、慢性閉塞性気道疾患、角膜ジストロフィー、高眼圧症、トラコーマ、オンコセルカ症、網膜炎、ブドウ膜炎、交感性眼炎、眼内炎、歯周炎、関節炎、敗血症性関節炎、変形性関節症、慢性関節リウマチ、結核、ハンセン病、糸球体腎炎サルコイド、ネフローゼ、硬化性皮膚炎、日焼け、乾癬、湿疹、筋萎縮性側索硬化症、硬化症、認知症、例えばエイズ関連神経変性、アルツハイマー病、脳脊髄炎、ウイルス性脳炎若しくは自己免疫性脳炎、免疫複合体性脈管炎、全身性エリテマトーデス、虚血性心疾患、心不全、心筋症、副腎不全、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、子癇前症、子癇、尿毒症合併症、慢性肝不全、卒中、脳虚血、嚢胞性線維症、結核、悪液質、虚血再かん流、血液透析に関連する健康状態、糸球体腎炎、再狭窄、ウイルス感染の炎症性続発症、低酸素症、高圧酸素による痙攣及び中毒、認知症、シドナム舞踏病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、癲癇、コルサコフ病、脳血管障害に関連する精神遅滞、NO媒介性脳外傷及び関連の続発症、虚血性脳浮腫(脳卒中)、疼痛、片頭痛、嘔吐、免疫複合体病、免疫抑制剤(immunosupressive agent)として、急性同種移植拒絶反応、又は癌である。最も好ましくは、疾患はセプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックである。哺乳類は、好ましくはヒトである。
【0054】
本発明の好ましい実施形態は、以下の実施例に記載される。本明細書の特許請求の範囲の範囲内の他の実施形態が、本明細書を検討すること、又は本明細書に記載されているように本発明を実施することにより、当業者に明らかであろう。本実施例とともに、本明細書は、本実施例に続く特許請求の範囲により示される本発明の範囲及び精神で、例示としてのみ見なされることが意図される。
【実施例】
【0055】
心臓脈管薬は、後期に作用する(Late-acting)炎症誘発性メディエータである、HMGB1を選択的に抑制することにより、致死性セプシスからマウスを救う
実施例の要約
セプシスの病因は細菌内毒素により部分的に媒介されるが、細菌内毒素はマクロファージ/単球を刺激することで、初期(early)炎症誘発性サイトカイン(例えばTNF、IL−1、及びIFN−γ)、及び後期(late)炎症誘発性サイトカイン(例えばHMGB1)を順次に放出させる。致死性セプシスの後期メディエータとしてのHMGB1の最近の発見は、新しい実験的治療法の開発に関する研究を促してきた。本発明者らは、薬理学的濃度を超える(at superpharmacological concentrations)(最大10〜25μM)場合でも、多くのステロイド性抗炎症薬(例えばデキサメタゾン及びコルチゾン)、及び非ステロイド性抗炎症薬(例えばアスピリン、イブプロフェン、及びインドメタシン)が内毒素誘導性HMGB1放出に影響しないことを見出した。しかしながら、有名な漢方薬であるタンジン(Saliva miltiorrhizae)の幾つかのステロイド様色素(タンシノンI、タンシノンIIA、及びクリプトタンシノン)は、マクロファージ/単球培養物における内毒素誘導性HMGB1放出を用量依存的に抑制した。漢方薬として心臓血管疾患の患者に広く用いられてきた、水溶性タンシノンIIA誘導体(スルホン酸ナトリウム)である、TSNIIA−SSは、内毒素誘導性HMGB1の細胞質トランスロケーション、及び糖質コルチコイド受容体に非依存的な放出を選択的に抑制する。TSNIIA−SSの投与は致死性内毒素血症からマウスを有意に防御し、初回投与がセプシスの発症から24時間後に行われた場合であっても、致死性セプシスからマウスを救った。この治療効果は、セプシスの動物における、1)HMGB1(TNF及び酸化窒素ではない)の全身貯留の抑制、2)肝損傷の予防、及び3)心血管の生理的パラメータの向上(例えば全末梢血管抵抗の低下、及び心臓の1回拍出量の上昇)に部分的に起因する。総合すると、これらのデータは致死性セプシスにおけるHMGB1の病原性役割を強調し、ヒトセプシスの治療におけるTSNIIA−SSの治療可能性を支持する。
【0056】
序文
以下で実証されているように、タンジン抽出物、同様に幾つかの成分(タンシノンI、タンシノンIIA、及びクリプトタンシノン)は、細菌内毒素刺激マクロファージ培養物からのHMGB1放出を有意に抑制した。水溶性タンシノンIIA誘導体(タンシノンIIAスルホン酸ナトリウム)で動物の処置は、内毒素血症及びセプシスにおけるHMGB1の全身貯留を有意に抑制し、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムが、セプシスの発病後24時間に初回投与された場合でも、致死性の内毒素血症及びセプシスの用量依存的な予防を受けた。
【0057】
材料及び方法
細胞培養
マウスマクロファージ様RAW264.7細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC, Rockville, MD)から入手し、先述のように、初代腹膜マクロファージをBalb/Cマウス(雄、7〜8週、20〜25グラム)から、2mlのチオグリコール酸ブロス(4%)の腹腔内注入の2〜3日後に単離した(Chen et al. 2004; Rendon-Mitchell et al. 2003)。10%ウシ胎仔血清(FBS)及び2mmol/Lのグルタミンで補充した、RPMI1640培地(Gibco BRL, Grand Island, NY)で、マウスマクロファージを前培養した。ヒト末梢血単核細胞(HuPBMC)を健康なドナーの血液(Long Island Blood Bank, Melville, NY)から、Ficoll(Ficoll-Paque PLUS, Pharmacia, Piscataway, NJ)で、密度勾配遠心分離により単離し、先述のように、10%加熱不活性化ヒト血清/0.2mM L−グルタミンで補充したRPMI1640培地で培養した(Rendon-Mitchell et al. 2003)。
【0058】
LPS刺激
接着性マクロファージ又は単球を、細菌内毒素(リポ多糖体、LPS、大腸菌0111:B4、Sigma-Aldrich)での刺激の2時間前に、無血清OPTI−MEMI培地で静かに洗い、培養した。LPS刺激の16時間後、培養培地におけるHMGB1レベルを先述のように決定した(Chen et al. 2004; Rendon-Mitchell et al. 2003; Wang et al. 1999)。
【0059】
薬草抽出物の調製
様々な漢方薬をNY-Tongrentang,Inc.(Flushing, New York, USA)から入手し、水中で(85℃)4時間抽出した。水溶性画分を遠心分離(3300g、20分、4℃)、及び(0.2μmのフィルターを通した)濾過により順次に除去し、濾液画分をHMGB1抑制活性について検査した。
【0060】
薬品の入手先(Chemical-sources)及び原液
デキサメタゾン、コルチゾン、及びRU486はSigma(St. Louis, MO)から入手し、10mMの原液を100%エタノールで調製した。アスピリン(カタログ番号:A0819)、イブプロフェン(カタログ番号:I0481)、インドメタシン(カタログ番号:I5315)はLKT Laboratories Inc.(St. Paul, MN, USA)から入手し、10mMの原液を水(20mM)で調製した。タンシノンI(カタログ番号:T0153、98.6%のHPLC純度)、タンシノンIIA(カタログ番号:T0154、93.0%のHPLC純度)、及びクリプトタンシノン(カタログ番号:C7097、98.8%のHPLC純度)はLKT Laboratories Inc.から入手し、20mMの原液をジメチルスルホキシド(DMSO)で調製した。タンシノンIIAスルホン酸ナトリウム(TSNIIA−SS)はShanghai No. I Biochemical & Pharmaceutical Co., LTD(Shanghai, P. R. China)から入手し、Nova−pak C18カラム(3.9×150mm)及び0.065%トリフルオロ酢酸(TFA、v/v、水中)を用いた、HPLCによる移動相として、その純度を決定した。0〜59%アセトニトリル(v/v、0.065%TFA中)の直線勾配(流量1.0ml/分、12分間)により、試料を溶出し、452.2nmの波長で測定した。各々のHPLCピークを、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC−MS、LCQ DECA XPPLUS、Thermo Electron Corporation)を用いて分析した。大きなピーク(8.3分の保持時間)は、HPLCピーク下の全面積の80%を超える割合を占め(図1D)、且つm/z=373.07(100.0%)の赤色色素を含み、これは実験式 Cl9H17O6S−(タンシノンIIAスルホネート)に相当する。
【0061】
内毒素血症及びセプシスの動物モデル
この実験は、Feinstein Institute for Medical Research, Manhasset, New Yorkの実験動物の世話及び使用のガイドラインに従って、許可され実行された。先述のように、Balb/Cマウス(雄、7〜8週)に、細菌内毒素(LPS、15mg/kg)を腹腔内注入により、内毒素血症を誘導した(Chen et al. 2005; Wang et al. 1999; Wang et al. 2006)。先述のように、雄のBalb/Cマウス(7〜8週、20〜25g)又はSprague−Dawleyラット(290〜310g)において、盲腸結紮穿孔(CLP)によりセプシスを誘導した(Wang et al. 2006; Yang et al. 2002b)。薬草成分を指示された用量及び時点で、マウスに腹腔内投与し、マウスが2週間まで生存することを観察した。並行実験では、血液を採取するために、内毒素血症後28時間(−0.5及び+24時間の2回の薬草成分投与の後)、及びCLP後52時間(+24及び+48時間の2回の薬草成分投与の後)にマウスを安楽死させた。
【0062】
TNF ELISA
先述のように、市販の酵素免疫測定(ELISA)キット(カタログ番号:MTA00、R & D Systems, Minneapolis, MN)を用いて、様々な希釈度での精製組換えTNFの検量線に準拠して、培養培地又は血清中のTNFレベルを決定した(Chen et al. 2004; Rendon-Mitchell et al. 2003; Wang et al. 2006)。
【0063】
酸化窒素分析
NO2-産生をグリース反応(Rendon-Mitchell et al. 2003)に基づき、比色分析で測定することにより、培養培地中の酸化窒素レベルを間接的に決定した。様々な希釈度で亜硝酸ナトリウムを用いて作成した検量線に準拠して、NO2-濃度を決定した。
【0064】
HMGB1ウエスタンブロット分析
先述のように、ウエスタンブロット分析により、培養培地又は血清中のHMGB1レベルを決定した(Chen et al. 2004; Rendon-Mitchell et al. 2003; Wang et al. 1999)。相対バンド強度をNIHイメージ1.59ソフトウェアを用いて定量し、精製HMGB1で作成した検量線に準拠して、HMGB1レベルを決定した。
【0065】
サイトカイン抗体アレイ
1つのメンブレンで62種のサイトカインを検出する、マウスサイトカイン抗体アレイ(カタログ番号:M0308003、RayBiotech Inc., Norcross, GA, USA)を用いて、メーカーの取扱説明書に従って、培養培地中のサイトカインのプロファイルを決定した。簡潔に述べると、メンブレンを等量の細胞馴化培養培地、ビオチン結合一次抗体、及びセイヨウワサビペルオキシダ−ゼ結合ストレプトアビジンと順にインキュベートした。X線フィルムに曝した後、NIHイメージ1.59ソフトウェアを用いて、メンブレン上の陽性対照を基準に相対シグナル強度を決定した。
【0066】
免疫細胞化学及び細胞分画/ウエスタンブロット法
先述のように、LPS刺激の16時間後、細胞のHMGB1を抗HMGB1ポリクローナル抗体で免疫染色し、蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Microimaging, Inc., Thornwood, NY)を用いて、画像を得た(Chen et al. 2004; Rendon-Mitchell et al. 2003)。 また、先述のように、細胞分画/ウエスタンブロット法により、HMGB1の局在を検査した(Tang et al. 2006)。細胞分画は、原形質膜及び核膜の、非イオン洗剤(NP−40)による溶解の差異に基づく。簡潔に述べると、低塩濃度緩衝液(10mM HEPES、pH7.9;10mM KCI;0.1mM EDTA;0.1mM EGTA;1mM DTT;0.5mM PMSF、1%NP−40)中での原形質膜の選択的溶解後、上清中の細胞質画分を取り除く、迅速な遠心分離工程(7000g、1分間、4℃)により、無傷核を収集した。核沈殿物をNP−40高塩濃度緩衝液(20mM HEPES、pH7.9;0.4M NaCl;11mM EDTA;1mM EGTA;1mM DTT;1mM PMSF、1%NP−40)中に再懸濁し、短時間音波破砕し、核画分を生成した。分画後、種々の画分のタンパク質含有量をブラッドフォード法により定量し、また、各画分について、様々なタンパク質レベルをウエスタンブロット分析により、HMGB1に特異的な一次抗体、細胞質タンパク質(β−アクチン、Santa Cruz Biotechnology)、及び核タンパク質(PCNA、BD Biosciences)を用いて分析した。
【0067】
細胞生死判別分析
細胞の生存を、先述のように、トリパンブルー排除分析により評価した(Rendon-Mitchell et al. 2003)。簡潔に述べると、トリパンブルーを0.08%の終末濃度で細胞培地に添加した。25℃で5分間のインキュベーション後、細胞の生存を5箇所の40倍顕微鏡の視野における、色素排除細胞の割合により評価した。
【0068】
組織構造(Tissue histology)
CLPの48時間後に、CO2室でマウスを安楽死させて、直ちにリン酸緩衝生理食塩水及び4%パラホルムアルデヒドを(心臓を介して)灌流した。形態評価のために、多様な組織を摘出し、切片にし、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
【0069】
心拍出量の測定
先述のように、放射標識ミクロスフェア技法を用いて、CLP又は疑似手術の20時間後に心拍出量を測定した(Yang et al. 2002b)。簡潔に述べると、141Ce−標識ミクロスフェア(4.0μCi、DuPont NEN, Boston, MA)を左心室にボーラス注入したが、これは大動脈起始部で酸化血液と均一に混合し、続いて大動脈血流を介して各々の臓器の毛細血管床へと分散する。対照血液試料を、ポンプ(Harvard Apparatus, Holliston, MA)を用いて大腿動脈カテーテルから(0.7ml/分の速度で)回収した後、生理食塩液を手動で注入し、失血量を補った。CLPの20時間後に、様々な臓器を摘出するために動物を致死させ、自動ガンマカウンター(1470 Wizard;Wallac, Gaithersburg, MD)を用いて放射能を測定した。心拍出量及び臓器血流量は以下の式に従って算出した:心拍出量=[(RBF×CT)/Cr]×1/100、及び臓器血流量=[(RBF×Ct)/Cr]×1/100。式中、RBFは対照血液試料回収速度(0.7ml/分)であり、CTは全注入量のカウント毎分であり、Ctは組織1グラム当たりのカウント毎分であり、Crは対照血液試料におけるカウント毎分である。1回拍出量(SV)及び全末梢血管抵抗(TPR)は、先述のように算出した(Yang et al. 2002b)。
【0070】
統計分析
データは2つの独立した、三連の(in triplicates)実験の平均±SDとして表す(n=2)。全ての異なる群間の比較のために、一元分散分析(One-way ANOVA)を用いた。ANOVAが有意である場合、群間の差異のポストホック試験(post-hoc testing)を、テューキー検定を用いて実行した。カプラン・マイヤー法を用いて、群間の死亡率の差異を比較した。0.05未満のP値を統計的に有意であると見なした。
【0071】
結果
タンジン(Saliva miltiorrhizae)抽出物及び成分が、内毒素誘導性HMGB1放出を抑制する
熱及び痛みを低減する、ヤナギの樹皮の有効成分としてのサリチル酸の同定の成功は、最初の合成非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、すなわちアスピリンを生み出した。多くのNSAID(例えばアスピリン、イブプロフェン、及びインドメタシン)はシクロオキシゲナーゼを阻害することができるが、動物を致死性セプシスから防御することはできない(Hasselgren et al. 1985; Noronha-Blob et al. 1993; Villa et al. 1995)。どの試験済みのシクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、及びインドメタシン)も、薬理学的濃度を超える(1〜25μM、データは示さない)場合であっても、LPS誘導性HMGB1放出に有意に影響しなかった。25種の薬草を同様に試験した。タンジン(Saliva miltiorrhizae)抽出物は、内毒素誘導性HMGB1放出を用量依存的に抑制した(図1A)。
【0072】
タンジンの活性成分(複数可)を決定するために、その抗炎症成分をHMGB1阻害活性について検査した。抗炎症性成分の候補の1つであるフェルラ酸は、LPS誘導性酸化窒素産生を効果的に抑制したが、LPS誘導性HMGB1放出には影響しなかった(Wang et al. 2006)。タンジンは豊富な赤色色素(いわゆるタンシノンI、タンシノンIIA、及びクリプトタンシノン)も含むが(図1B)、これらは心臓血管に異常のある患者に対して薬理効果を有する物質群である(Ji et al. 2000)。3種のタンシノン(タンシノンI、タンシノンIIA、及びクリプトタンシノン)の全てが、LPS誘導性HMGB1放出を、およそIC50<25μMで、効果的に抑制した(図1C)。
【0073】
水溶性タンシノンIIAスルホン酸ナトリウム(TSNIIA−SS)は、内毒素誘導性HMGB1放出を選択的に抑制する
大抵のタンシノンは、生理的温度でほとんど水溶性でなく、この難溶性がin vivoでの生物学的利用能に悪影響を及ぼし得る。そのため、本発明者らは、水溶性タンシノンIIA誘導体である、TSNIIA−SS(図1B)のHMGB1阻害活性について検査した。TSNIIA−SSは、心臓血管疾患の患者に汎用される漢方薬であり(Ji et al. 2000)、Shanghai No. 1 Biochemical & Pharmaceutical Co., LTDから入手した。HPLC分析(図1D)は、m/z=373.07の赤色色素を含む、大きなピーク(>80%、8.3分の保持時間)を明らかにしたが、これは実験式 C19H17O6S−(タンシノンIIAスルホネート)に対応する。小さなHPLCピーク(<20%、6.8分の保持時間)は、実験式 C19H17O7S−(タンシノンIIAスルホネートの未知の類似体)に対応する、m/z=389.11の赤色色素を含んでいた。高精製TSNIIA−SS(>99.0%、HPLCによる)は、HMGB1放出を、およそIC50<5μMで、用量依存的に阻害した(図2A)。同様に、初代ヒト末梢血単核細胞(図2B)、及びマウス腹膜マクロファージ(データは示さない)の培養物において、LPS誘導性HMGB1放出を効果的に阻害した。
【0074】
この抗炎症特性をさらに評価するために、他の炎症誘発性メディエータのLPS誘導性放出について潜在的効果を決定した。LPS誘導性HMGB1放出を完全に抑止する濃度(100μM)で、TSNIIA−SSは酸化窒素(図2A、下図)又はTNF(図2B、下図)のLPS誘導性放出を完全に遮断しなかった。また、マクロファージを高濃度(>200ng/ml)のLPSで刺激した場合、TNF(HMGB1ではない)放出への阻害効果は失われることが多く、HMGB1抑制に対する選択性を示唆した。この特異性を評価するために、62種のサイトカインの放出への影響をサイトカインタンパク質アレイを用いて決定した。LPS誘導性HMGB1放出を完全に抑止する濃度(100μM、データは示さない)で、TSNIIA−SSは、RAW264.7細胞(図2C、上列)又は初代腹膜マクロファージ(図2C、下列)において、ほとんどのサイトカイン(例えば、IL−6、IL−12p40/p70、KC、MCP−1、MIP−1α、MIP−1γ、MIP−2及び、TNF)の放出を抑制しなかった。これまでの報告(Kang et al. 2000)と一致して、TSNIIA−SSは、幾つかの他のサイトカイン、例えば、IL−1α(50±7%)、血小板第4因子(PF−4、35±6%)、及びMCP−5(25±5%)だけでなく、IL−12p70のLPS誘導性放出も部分的にのみ(45±5%)抑制した。総合すると、これらのデータは、TSNIIA−SSが他の炎症誘発性サイトカインとは対照的に、HMGB1のLPS誘導性放出を選択的に抑制することを示している。
【0075】
TSNIIA−SSの遅延投与は、内毒素誘導性HMGB1放出を有意に抑制する
早期炎症誘発性サイトカイン(例えばTNF)と比較すると、HMGB1は内毒素刺激後、遅延的に放出される。TSNIIA−SSをLPS刺激後に添加した場合に、HMGB1放出が阻害されるか否かを検討するのは興味深い。TSNIIA−SSをLPSと併用投与することで、HMGB1放出の抑制に最大限に効果を与えたのに対し、LPS後2〜6時間に添加した場合に、有意な阻害が保持された(図3)。したがって、後期に作用する炎症誘発性メディエータ(例えばHMGB1)を薬理学的に抑制することは、TSNIIIA−SSを戦略的に、遅延的に投与することによって、実現可能であろう。
【0076】
TSNIIA−SSは内毒素誘導性HMGB1放出を、細胞質トランスロケーションを遮断することにより阻害する
HMGB1放出のタンシノン媒介性抑制の機構を研究するために、HMGB1放出の重要な段階である(Chen et al. 2004; Gardella et al. 2002; Rendon-Mitchell et al. 2003)、内毒素誘導性HMGB1細胞質トランスロケーションについて、その効果を決定した。これまでの報告(Chen et al. 2004)と一致して、静止マクロファージはHMGB1を構成的に発現し、主に核内において細胞内のHMGB1の「プール」を維持した(図4A、左の顕微鏡写真)。LPS刺激の16時間後、細胞質小胞においてHMGB1の有意な染色が観察され(図4A、中央の顕微鏡写真)、LPSがマクロファージを刺激し、核HMGB1を細胞外環境に放出する前に、能動的に細胞質へとトランスロケーションすることが確認された。TSNIIA−SSは、静止細胞においてHMGB1の核局在性に影響しなかったが(データは示さない)、ほとんどの内毒素刺激細胞において、LPS誘導性HMGB1細胞質トランスロケーションをほぼ完全に抑止し(図4A、右の顕微鏡写真)、TSNIIA−SSは、細胞質トランスロケーションを妨げることにより、HMGB1放出を抑制することを示した。
【0077】
上記の仮説をさらに立証するために、細胞質及び核の画分を単離し、HMGB1に特異的な抗体、PCNA(核タンパク質)、又はβ-アクチン(細胞質タンパク質)のそれぞれと免疫ブロットした。一貫して、細胞質画分におけるHMGB1レベルは、LPS刺激後劇的に上昇したが(データは示さない)、TSNIIA−SS処置により劇的に低下し(図4B)、TSNIIA−SSは、その細胞質トランスロケーションを妨げることにより、HMGB1放出を抑制することが確認された。
【0078】
TSNIIA−SSは、糖質コルチコイド受容体非依存性の機構において、内毒素誘導性HMGB1放出を阻害する
タンシノンとステロイド性抗炎症薬(図5A)との構造的類似(すなわち、4員縮環構造の存在)を踏まえて、1)コルチコステロイドも同様にLPS誘導性HMGB1放出を抑制するか否か、及び2)TSNIIA−SSは、糖質コルチコイド受容体依存性の機構においてHMGB1放出を抑止するか否か、について評価した。最大10μMの濃度でも、デキサメタゾン及びコルチゾンは、LPS媒介性TNF分泌を効果的に抑制したものの(図5C)、LPS誘導性HMGB1放出を低減しなかった(図5B)。ステロイド性抗炎症薬は、細胞内糖質コルチコイド受容体への結合を介してサイトカインを阻害するが(Waage et al. 1990)、これは特異的糖質コルチコイド受容体アンタゴニスト(例えばRU486)により無効にされ得る。実際、RU486は、TNF分泌のデキサメタゾン媒介性抑制をほぼ完全に抑止するが(図5C)、TNFのTSNIIA−SS媒介性阻害(図5C)、又はHMGB1放出(データは示さない)に影響しない。総合すると、これらのデータは、TSNIIA−SS及びデキサメタゾンが、内毒素誘導性サイトカイン放出の抑制に別個の機構を利用することを示す。
【0079】
TSNIIA−SSは致死性内毒素血症を防ぐ
TSNIIA−SSのLPS誘導性HMGB1放出を抑制する能力の観点から、致死性内毒素血症の動物モデルにおけるその有効性を評価した。L.D.75のLPS投与の30分後にTSNIIA−SSを単回投与したが、動物の生存率を有意に改善しなかった(食塩水を与えられた対照(n=20マウス/群)の25%に対して、15mg/kgのTSNIIA−SSを与えられた実験群(N=20マウス/群)は37.5%、P>0.05)。TSNIIA−SSのさらなる3回の投与(+24、+48、及び72時間)で動物を処置することにより、動物の生存率における用量依存的な改善が観察された(20%〜80%、図6A)。さらに、TSNIIA−SSの投与は、循環HMGB1レベルを用量依存的に抑制したが(LPS+媒体の140±20ng/mlに対して40±25ng/ml、n=10、p<0.01)、これはTSNIIA−SSが、全身HMGB1貯留の抑制を部分的に介して、致死性内毒素血症から動物を防御することを示唆している。
【0080】
TSNIIA−SSは致死性セプシスからマウスを救う
内毒素血症は複雑なサイトカインカスケードを研究するために有用であるが、より臨床的に適切な動物モデルが、ヒトセプシスの治療に対する治療薬の探求に必要である。十分に特性化された、標準化されたセプシスの動物モデルが、CLPによりもたらされた。実験的セプシスにおけるHMGB1蓄積の、遅発性の(late)、長期にわたる動態(Yang et al. 2004)を踏まえて、TSNIIA−SSをセプシスの発症後に投与した場合でも致死性セプシスからマウスを救うことが可能であり得ると推論された。TSNIIA−SSの初回投与を、マウスがセプシスの明らかな兆候(例えば、昏睡状態、下痢、立毛)を発現する時点である、セプシスの発症から24時間後に行った。セプシスの発症から24時間後にTSNIIA−SSを腹腔内に単回投与したが、生存率は改善しなかった(食塩水を受けた対照(n=24マウス/群)の33%に対して、15mg/kgのTSNIIA−SSを受けた実験群(n=24マウス/群)は50%、P>0.05)。しかしながら、セプシスの発症から24時間後に開始したTSNIIA−SSの連続投与(セプシスの48、72、及び96時間後に追加投与が続く)は、致死性セプシスに対する用量依存的防御(N=30マウス/群、図6B)をもたらし、動物の生存率を33%から73%に有意に上昇した(P<0.05)。
【0081】
TSNIIA−SSはセプシス誘導性全身HMGB1貯留及び肝損傷を抑制する
その防御機構の洞察を得るために、TSNIIA−SSのTNF、酸化窒素、及びHMGB1の全身貯留に対する影響を評価した。初期の報告(Villa et al. 1995)と一致して、全身のTNFはセプシスの後期においてほとんど検出できなかった。TSNIIA−SSの遅延投与は、セプシスの発症から52時間後の循環TNFレベルを抑制しなかった(賦形剤対照群(N=10マウス/群)のTNF=65+15ng/Lに対して、TSNIIA−SS群(N=10マウス/群)はTNF=85+23ng/L、P>0.05)。同様に、TSNIIA−SSの遅延投与は、セプシスの発症から52時間後の循環酸化窒素レベルを抑制しなかった(賦形剤対照群の18.0±4.5μmol/Lに対して、TSNIIA−SS群は15.5±3.3μmol/L、n=3、P>0.05)。対照的に、TNSIIA−SSの連続投与は、セプシスのマウスにおいて循環HMGB1レベルを用量依存的に、且つ有意に抑制し(図7A、P<0.05)、TSNIIA−SSは、部分的には全身HMGB1貯留を抑制することによって、致死性セプシスに対する防御をもたらすことを示した。
【0082】
全身HMGB1貯留の抑制が、セプシス誘導性組織傷害に対する防御作用を伴うかどうかを決定するために、解剖を行い、セプシスの発症から48時間後に組織学により組織を試験した。これまでの報告(Zhou et al. 1998)と一致して、心臓、腎臓、腸、及び脳における顕著な組織学的変化はなく(データは示さない)、セプシスはこれらの組織において、特徴的な病理学的変化を全く伴わないという概念(Hotchkiss and Karl 2003)を裏付けた。しかしながら、これまでの報告(Ayala et al. 2000; Qin et al. 2006)と一致して、(12例中)2例の対照(食塩水)群の生存者において、肝壊死巣が認められた(図7B)。とりわけ、肝損傷は(15例中)3例の早期(CLPの36〜48時間後)に死亡した対照群の動物において評価されず、続く臓器損傷の評価における、この3例の死亡した動物の除外は、TNSIIA−SS媒介性防御効果の過小評価をもたらし得る。対照的に、肝壊死の兆候は、15例の実験群(TSNIIA−SS、15mg/kg、図7B)の生存者のいずれにおいても観察されなかった。
【0083】
TSNIIA−SSはセプシス誘導性心機能異常を防ぐ
TSNIIA−SSは、心臓血管疾患の患者に成功裏に使用されており(Ji et al. 2000)、本発明者らはまた、セプシスの動物において心臓血管機能を改善するか否かを評価した。心筋障害がないにもかかわらず(Zhou et al. 1998)、セプシスの後期(例えば、発症から20時間後)における、心拍出量の有意な低下により、心臓血管機能における、低拍出性の(hypodynamic)変化が明らかにされた(Yang et al. 2002b)。TSNIIA−SSの投与は、平均動脈圧に有意に作用しないが(CLP群の106.1±4.7mmHgに対して96.4±8.7mmHg、n=6、p>0.05)、心拍数を若干低下させた(CLP群の378.3±25.1拍数/分に対して、CLP+TSNIIA−SS(15mg/kg)は334.1±25.8拍数/分、n=6、p<0.05)。より重要なことには、これは全末梢血管抵抗(図8A)を用量依存的に低減し、さらに心臓の1回拍出量(図8B)及び心拍出量(図8C)を有意に上昇した。総合すると、これらのデータは、中国において心臓血管疾患の患者に使用される効果的な薬剤であるTSNIIA−SSが、セプシスの動物モデルにおいて、セプシス誘導性心臓血管疾患を防ぐであろうことを示す。
【0084】
考察
致死性セプシスの病因は不明瞭であるが、異常調節された炎症反応、組織損傷、及び多臓器機能不全に関連する。炎症反応は細菌内毒素によって部分的に媒介され(Ayala et al. 2000)、マクロファージ/単球を刺激し、初期炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF及びIL−1)及び後期炎症誘発性サイトカイン(例えばHMGB1)を連続的に放出させる。初期サイトカインは感染を防ぐが(Eskandari et al. 1992)、後期に作用するメディエータ(例えばHMGB1)により異常調節された炎症反応は、致死性セプシスの後期において組織損傷及び臓器機能不全の発現をもたらし得る。そのため、全身HMGB1貯留を選択的に抑制する能力のある薬剤は、致死性セプシスの処置において可能性を有し得る。
【0085】
多くの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID、例えば、アスピリン、イブプロフェン、及びインドメタシン)は、致死性セプシスを防ぐことができず(Villa et al. 1995)、一貫してLPS誘導性HMGB1放出を有意に阻害しない(Hasselgren et al. 1985; Noronha-Blob et al. 1993)。一方、漢方薬のタンジン(Saliva miltiorrhizae)は、薬物(タンシノンI、タンシノンIIA、及びクリプトタンシノン)を含み、これらはマクロファージ/単球培養物における、内毒素誘導性HMGB1放出を効果的に抑制する。しかしながら、その低い溶解性及び生物学的利用能のために、タンシノンI及びタンシノンIIAは、セプシスの発症から24、48、72、及び96時間後に連続投与しても、マウスを致死性セプシスから救うことができず(対照の賦形剤群の生存率=50%に対して、TSNI群(12mg/kg)は生存率=57%、TSNIIA群(12mg/kg)は生存率=61%、N=14マウス/群、p>0.05)、このことから、本発明者らは治療薬の候補となる他の水溶性誘導体を探求することとなった。
【0086】
心臓血管疾患の患者に対して臨床的に承認された薬であるTSNIIA−SSは、マクロファージ/単球培養物における内毒素誘導性HMGB1放出を完全に抑止する。TSNIIA−SSが内毒素誘導性HMGB1放出を阻害する機構は依然として分かりにくいが、LPS誘導性HMGB1細胞質トランスロケーションを妨げるその能力に部分的に起因する。糖質コルチコイドと同様の骨格化学構造を含むにもかかわらず、特異的糖質コルチコイド受容体アンタゴニストのRU486は、HMGB1放出のTSNIIA−SS媒介性阻害を止めないため、TSNIIA−SSはHMGB1放出を阻害するために糖質コルチコイド受容体を利用しないように思われる。興味深いことに、タンシノンIは、リソホスファチジルコリンを発生することで内毒素誘導性HMGB1放出を促進する酵素である(Chen et al. 2005)、ホスホリパーゼA2を阻害できる(Kim et al. 2002)。同様に、クリプトタンシノンは、HMGB1阻害神経伝達物質である、アセチルコリンを除去する酵素である(Borovikova et al. 2000; Ren et al. 2004; Wang et al. 2004b)、アセチルコリンエステラーゼを阻害できる(Gardella et al.2002)。したがって、TSNIIA−SSがsPLA2又はアセチルコリンエステラーゼを阻害することで、HMGB1放出を阻害するか否かを決定することが今後の研究において重要である。
【0087】
LPS誘導性HMGB1放出を完全に抑止する濃度で、TSNIIA−SSは、他のサイトカインのほとんど(62種中58種)の放出に影響せず、HMGB1阻害に対して、他の大半のサイトカインよりも高い選択性を示す。LPS刺激の数時間後に与えられた場合でも、TSNIIA−SSは依然として、HMGB1放出の遮断に有効であり、全ての既知のHMGB1阻害剤(例えば、ピルビン酸エチル、ニコチン、及びステアロイルリソホスファチジルコリン)とはそれ自体が区別される(Chen et al. 2005; Ulloa et al. 2002; Wang et al. 2004b)。この固有の性質により、TSNIIA−SSを戦略的に、遅延的投与することで、セプシスの後期において全身HMGB1貯留の選択的な抑制が可能である。実際、全てのマウスがセプシスの明らかな徴候を発現する(一部のマウスは死に始める)時点である、CLPの24時間後に開始するTSNIIA−SSの遅延投与は、マウスを致死性セプシスから有意に救う。
【0088】
TSNIIA−SSが全身酸化窒素貯留を抑制できず、また、セプシスの後期において平均動脈圧を増進できないという観察結果は、酸化窒素依存性防御機構に相反する。TSNIIA−SSは、単球において(マクロファージではない)、LPS誘導性TNF分泌を幾らか低減することができるが、そのTNF抑制活性が致死性セプシスに対する防御効果の説明とはならないだろう。第一に、TNFは、本発明のTSNIIA−SSの戦略的な遅延投与(CLPの24時間後)よりもかなり前である、CLP後数時間以内に全身貯留する(Villa et al. 1995)。一貫して、本発明者らはTSNIIA−SSの遅延投与が、セプシスの後期にTNFの全身貯留を有意に抑制しないことを観察した。第二に、中和抗体によるTNF活性の抑制は向上せず、それどころかセプシスの動物モデルの生存を悪化させるため(Eskandari et al. 1992)、TNFはセプシスにおいて防御的な役割を果たし得る。しかしながら、TSNIIA−SSのTNF抑制活性が、致死性内毒素血症に対するその防御効果に起因するか否かは未だ決定されていない。
【0089】
際立って対照的に、TSNIIA−SSの遅延投与は、全身HMGB1貯留を有意に抑制し、部分的に後期に作用する炎症誘発性メディエータの全身貯留の抑制を介して、TSNIIA−SSがマウスを致死性セプシスから救うことを示唆する。それでもなお、現在の研究はTSNIIA−SSが、付加的な機構(例えばHMGB1媒介性炎症反応の阻害)を介した致死性内毒素血症又はセプシスに対する防御を付与する可能性を排除はしないだろう。実際、本発明者らの予備実験データは、TNSIIA−SSが、最大100μMの濃度で、マウスマクロファージ培養物においてTNF(50〜60%)及び酸化窒素(90〜95%)のHMGB1誘導性放出を効果的に抑制することを示し、TSNIIA−SSは、HMGB1放出及びサイトカイン活性を抑制することで、動物の生存を向上し得ることが示唆された。
【0090】
TSNIIA−SSの連続投与は、セプシスの後期における肝損傷の発現を抑止する。特に、セプシスの(初期よりはむしろ)後期に主に起こる、臓器障害の評価は紛れもなく困難である。例えば、早い時期(CLPの36〜48時間後)に死亡した動物の(15例中)3例において、死亡前に同様に肝損傷を患っていた可能性があるにもかかわらず、肝損傷を評価することができなかった。その結果、その後の臓器障害の評価における死亡した動物の除外は、特にHMGB1特異的モノクローナル抗体が同様に肝損傷を寛解するという観察結果(Qin et al. 2006)に照らしてみると、肝損傷に対するTNSIIA−SS媒介性防御の過小評価につながった可能性がある。
【0091】
セプシス傷害の反応において、げっ歯類は、CLPの5時間後に心拍出量の増大及び全末梢血管抵抗の低下を特徴とする、初期の、高拍出性の(hyperdynamic)心臓血管系応答を発現し、続いてCLPの20〜24時間後に、心拍出量の低下及び全末梢血管抵抗の増大が認められる、後期の、低拍出性の心臓血管系応答が起こる(Yang et al. 2002a)。中国における心臓血管疾患の患者に利用される効果的な薬剤である、TSNIIA−SSは全末梢血管抵抗を劇的に低減するが、セプシスの動物において心臓の1回拍出量及び心拍出量を有意に増大する。臨床的に、重症セプシスの一部の患者は正常な又は高い心拍出量を有するが、これは重症セプシスの患者に対する心拍出量の上昇(酸素供給の改善)及び体血管抵抗の低減(組織酸素化の改善)の必要性に関する現行の議論を激しくする(Sharma and Dellinger 2003; Vincent 2003)。
【0092】
参考文献
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【0097】
【表6】

【0098】
【表7】

【0099】
上記の点を考慮して、本発明のいくつかの利点が達成され、他の利点が獲得されることがわかるであろう。
【0100】
本発明の範囲から逸脱することなく上記の方法及び組成物には多様な変更が成され得るので、上記の記載に含まれ、添付図面に示される全ての事柄は実例として解釈され、限定的な意味ではないものであるべきと意図される。
【0101】
本明細書に引用された全ての参考文献は、参照されて本明細書中の一部とする。本明細書中での参考文献の論考は単に著者らによる主張を概説するために意図され、どの文献も先行技術を構成するという承認は成されていない。本出願者らは、引用文献が正確および適切であるかを検討する権利を留保する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1−1】ウエスタンブロットのグラフ、写真、並びに内毒素誘導性HMGB1放出を抑制する、タンジン抽出物(パネルA)及び成分(タンシノンI、タンシノンIIA、及びクリプトタンシノン、パネルB、C)を示す化学構造である。マウスマクロファージ様RAW264.7細胞を、薬草抽出物(パネルA)、タンシノンI(TSNI)、タンシノンIIA(TSNIIA)、又はクリプトタンシノン(C−TSN)(パネルB、C)の非存在下又は存在下で、LPSにより16時間刺激し、培養培地中のHMGB1レベルをウエスタンブロット分析により決定した。パネルA及びパネルCのグラフの下に、同様の結果を有する、3つの独立した実験のウエスタンブロットの写真を示す。記号*では、対照(+LPSのみ)に対してP<0.05である。
【図1−2】パネルDはTSNIIA−SS調合液のHPLCトレースである。
【図2−1】内毒素誘導性HMGB1放出を特異的に抑止するTSNIIA−SSを示す、ウエスタンブロットのグラフ及び写真である。マウスマクロファージ様RAW264.7細胞、初代マウス腹膜マクロファージ、又はヒト末梢血単核細胞を、指定の濃度のTSNlIA−SSの非存在下又は存在下で、LPSにより刺激した。LPS刺激の16時間後、培養培地中のHMGB1(パネルA、B)、酸化窒素(パネルA)、又はTNF(パネルB、C)のレベルを、ウエスタンブロット分析(パネルA、B)、グリース反応(パネルA)、ELISA(パネルB)、又はサイトカインアレイ(パネルC)の各々により決定した。LPS誘導性HMGB1放出を完全に抑止する濃度で、TSNIIA−SSは、酸化窒素(パネルA)、TNF(パネルB)、IL−1α、PF−4、IL−12(p70)及びMCP−5(パネルC)のLPS誘導性放出を完全には遮断しないことに留意されたい。
【図2−2】パネルCは、同様の結果を有する、2つの独立した実験のサイトカインアレイを示す。
【図3】内毒素誘導性HMGB1放出をさらに有意に抑制する、TSNIIA−SSの遅延投与を示すウエスタンブロットのグラフ及び写真である。マウスマクロファージ様RAW264.7細胞をLPSで刺激し、TSNIIA−SS(25μM、又は50μM)をLPS刺激の0、2、6、及び12時間後に添加した。培養培地中のHMGB1レベル(Levels of HMGB1 levels)をLPS刺激の16時間後に決定し、2つの独立した実験(N=2)の平均±S.D.として(任意単位、AUで)表した。各グラフの下にウエスタンブロットを示す。記号*では、対照(+LPSのみ)に対してP<0.05である。
【図4】TSNIIA−SSが内毒素誘導性細胞質HMGB1トランスロケーションを遮断することを示す、ウエスタンブロットの顕微鏡写真及び写真である。マクロファージ培養物をTSNIIA−SSの非存在下または存在下で、LPSで刺激し、LPS刺激の16時間後に、免疫組織化学(imunohistochemistry)(パネルA)、又は細胞分画/ウエスタンブロット(パネルB)により、HMGB1細胞質トランスロケーションについて分析した。HMGB1は、非刺激マクロファージ(「対照」、パネルA、左のパネル)の核部位に、LPS刺激マクロファージ(パネルA、中央の写真)の細胞質及び核部位の双方に、主に局在化されたことに留意されたい。TSNIIA−SS(100μM)はHMGB1を核部位(パネルA、右の写真)に維持した。LPS刺激の後に、細胞質(「C」)及び核(「N」)画分を単離し、HMGB1、核タンパク質(PCNA)、又は細胞質タンパク質(β−アクチン)のレベルについてウエスタンブロット分析により評価した。等量の試料を、細胞質タンパク質(β−アクチン)マーカー又は核タンパク質(PCNA)マーカーを用いて、画分のウエスタンブロット分析により確認した。ブロットは同様の結果を有する、2つの独立した実験の代表例である。
【図5】TSNIIA−SSが、糖質コルチコイド受容体非依存性機構を用いて、LPS誘導性HMGB1放出を抑制することを示す、化学構造、ウエスタンブロットの写真、及びグラフである。デキサメタゾン、コルチゾン、若しくはTSNIIA−SSのみ、又は糖質コルチコイド受容体アンタゴニストのRU486と併用したものの、非存在下又は存在下で、マウスマクロファージ様RAW264.7細胞をLPSで(stimulated LPS)刺激した。刺激の16時間後に、培養培地中のHMGB1(パネルB)又はTNF(パネルC)のレベルをウエスタンブロット分析及びELISAの各々により決定した。パネルBは、同様の結果を有する、2つの独立した実験のウエスタンブロットを示す。記号*では、LPSのみのものに対してP<0.05である。記号#では、「+LPS+Dex」に対してP<0.05である。
【図6】TSNIIA−SSが、致死性内毒素血症(パネルA)及び致死性セプシス(パネルB)から、マウスを用量依存的に防御することを示すグラフである。Balb/Cマウスに致死性内毒素血症(LPS、15mg/kg、腹腔内)、又はセプシス(CLPにより誘導)を施した。内毒素血症の発症から+0.5、+24、+48、及び+72時間後、又はセプシスの発症後から+24、+48、+72、+96時間後に、動物に食塩水(0.2ml/マウス)、又はTSNIIA−SS(0.2ml/マウス、指定の用量)を腹腔内投与し、最大2週間、動物の生存を観察した。カプラン・マイヤー法を用いて、群間の死亡率の差異を比較した。記号*では、食塩水に対してP<0.05である。
【図7】TSNIIA−SSがセプシス誘導性全身HMGB1貯留(パネルA)及び肝損傷(パネルB)を抑制することを示す、ウエスタンブロットのグラフ、写真及び顕微鏡写真である。Balb/CマウスにCLPにより致死性セプシスを施し、CLPの+24、+48時間後に、対照食塩水(0.2ml/マウス)又はTSNIIA−SS(指定の用量)を腹腔内投与した。セプシスの発症から52時間後に、血清HMGB1レベル(パネルA)を決定し、平均±SD(n=10)として表した。記号*では、P<0.05である(ANOVA、チューキー試験)。並行実験では、CLPの48時間後に動物を致死させ、様々な組織を切片にし、ヘマトキシリン及びエオジンで染色した(パネルB)。左の顕微鏡写真は、壊死病斑(白い矢印で指す)を有するセプシスのマウスの肝臓(「CLP」)であり、細胞の脱落及び肝細葉の構築により示される。右の顕微鏡写真は、TSNIIA−SS(15mg/kg)で処理したセプシスのマウスの肝臓であり、中心静脈(黒い矢印)及び周囲の正常な肝細胞が示される。
【図8】TSNIIA−SSがセプシス誘導性心臓血管障害を防ぐことを示すグラフである。雄のSprague−Dawleyラット(290〜310g)に、CLPにより致死性セプシスを施し、CLPの5時間後にTSNIIA−SSをHarvardポンプ(Harvard Apparatus, Holliston, MA)を用いて、大腿静脈カテーテルを介して投与した。CLP又は疑似手術の20時間後に、先述のように放射性微小球を用いて、全末梢血管抵抗(「TPR」)、1回拍出量(「SV」)、及び心拍出量(「CO」)を決定した(Yang et al. 2002b)。データは平均±S.D.(n=6/群)として表し、一元分散分析及びチューキー試験により較した。記号*では、擬似手術を受けた動物(「−」)に対してP<0.05である。記号#では、賦形剤で処理されたCLP動物(「+CLP」)に対してP<0.05である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類細胞からの炎症誘発性サイトカインの放出を抑制する方法であって、該細胞からの該炎症誘発性サイトカインの放出を抑制するために有効な量の水溶性タンシノンと、前記細胞を接触させることを含む、該方法。
【請求項2】
前記水溶性タンシノンが、天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性タンシノンが、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞がマクロファージである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記炎症誘発性サイトカインがHMGB1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炎症誘発性サイトカインがTNFである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、炎症誘発性サイトカインにより媒介される症状を有するか、又はその危険性がある哺乳類のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳類がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記症状が、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍若しくは十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性、偽膜性、急性若しくは虚血性の大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸閉塞症、腸炎、ホイップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体疾患、臓器の虚血、再灌流傷害、臓器の壊死、花粉症、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、異常高熱症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、肺炎、肺塵症、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウィルス感染、ヘルペス感染、HIV感染、B型肝炎ウィルス感染、C型肝炎ウィルス感染、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、火傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、じんま疹、いぼ、膨疹、血管炎、脈管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、血栓性静脈炎、心外膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、アルツハイマー病、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、多発性硬化症、脳梗塞、脳卒中、ギラン−バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎疹、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、リウマチ様関節炎、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種移植の拒絶反応、移植片対宿主病、I型糖尿病、強直性脊椎炎、バーガー病、ライター病、又はホジキン病である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記症状が、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍若しくは十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性、偽膜性、急性若しくは虚血性の大腸炎、リウマチ様関節炎、肝炎、クローン病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、臓器の虚血、再灌流傷害、臓器の壊死、花粉症、セプシス、敗血症、内毒素性ショック、悪液質、敗血性流産、播種性菌血症、火傷、アルツハイマー病、セリアック病、鬱血性心不全、成人呼吸窮迫症候群、脳梗塞、脳卒中、脊髄損傷、麻痺、同種移植の拒絶反応、及び移植片対宿主病である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記症状が、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
第2の抗炎症剤を前記哺乳類に投与することをさらに含む、請求項7に記載の方法。.
【請求項13】
前記第2の抗炎症剤が、NSAID、サリチル酸塩、COX阻害剤、COX−2阻害剤、又はステロイドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記症状が、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックであり、且つ前記第2の処置が、ムスカリン作動薬、アドレノメデュリン、アドレノメデュリン結合タンパク質、乳脂肪球上皮成長因子VIII、活性プロテインC、又はα2A−アドレナリン拮抗薬の投与である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
哺乳類の炎症性サイトカインカスケードを阻害する方法であって、該炎症性サイトカインカスケードを阻害するために有効な量の水溶性タンシノンで、前記哺乳類を処置することを含み、該哺乳類が、炎症性サイトカインカスケードで媒介される症状を有する、該方法。
【請求項16】
前記水溶性タンシノンが、天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水溶性タンシノンが、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳類がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記症状が、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックであり、前記哺乳類がヒトであり、且つ前記タンシノンがタンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
哺乳類の炎症性サイトカインカスケードを阻害する方法であって、該炎症性サイトカインカスケードを阻害するために有効な量のタンシノンで、前記哺乳類を処置することを含み、該哺乳類が、炎症性サイトカインカスケードにより媒介される症状を有する、該方法。
【請求項21】
前記タンシノンが水溶性タンシノンである、請求項21に記載の方法。
【請求項22】
前記水溶性タンシノンが、天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記水溶性タンシノンが、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記症状が、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックであり、前記哺乳類がヒトであり、且つ前記タンシノンがタンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックの危険性がある哺乳類を治療する方法であって、該内毒素性ショックの生理的影響を低減又は防止するために効果的な様式で、前記哺乳類をタンシノンIIAスルホン酸ナトリウムで処置することを含む、該方法。
【請求項26】
前記生理的影響がHMGB1放出である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記生理的影響がTNF放出である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記生理的影響がNO放出である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記生理的影響が致死性セプシスである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記哺乳類がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックを被る哺乳類を治療する方法であって、該セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックの生理的影響を低減又は防止するために効果的な様式で、精製タンシノンを前記哺乳類に投与することを含む、該方法。
【請求項32】
前記タンシノンが、タンシノンI、タンシノンIIA、又はクリプトタンシノンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記タンシノンが水溶性タンシノンである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記水溶性タンシノンが、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記生理的影響がHMGB1放出である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記生理的影響がTNF放出である、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記生理的影響がNO放出である、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記生理的影響が致死性セプシスである、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記哺乳類がヒトである、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックを被る哺乳類を治療する方法であって、該セプシスの生理的影響を低減又は防止するために効果的な様式で、前記哺乳類をSalvia miltiorrhiza又はその抽出物を含む組成物で処置することを含み、該組成物が、lignum dalbergiae odoriferaeを含まない、該方法。
【請求項41】
前記組成物がSalvia miltiorrhizaを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物がSalvia miltiorrhizaの抽出物を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記抽出物が有機成分を含み、該有機成分の少なくとも5重量%がタンシノンである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記有機成分の少なくとも10重量%がタンシノンである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記有機成分の少なくとも25重量%がタンシノンである、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記有機成分の少なくとも50重量%がタンシノンである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記有機成分の少なくとも80重量%がタンシノンである、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記有機成分の少なくとも95重量%がタンシノンである、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記生理的影響がHMGB1放出である、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
前記生理的影響がTNF放出である、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
前記生理的影響がNO放出である、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
前記生理的影響が致死性セプシスである、請求項40に記載の方法。
【請求項53】
前記哺乳類がヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項54】
哺乳類細胞からのNO放出を抑制する方法であって、該細胞からのNO放出を抑制するために有効な量の水溶性タンシノンと、前記細胞を接触させることを含む、該方法。
【請求項55】
前記水溶性タンシノンが、天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記水溶性タンシノンが、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記細胞が、過剰NO産生により媒介される疾患を有するか、又はその危険性のある、生きている哺乳類の一部分である、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記疾患が、ショック、回腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、喘息、気管支炎、オキシダント誘導性肺外傷、慢性閉塞性気道疾患、角膜ジストロフィー、高眼圧症、トラコーマ、オンコセルカ症、網膜炎、ブドウ膜炎、交感性眼炎、眼内炎、歯周炎、関節炎、敗血症性関節炎、変形性関節症、慢性関節リウマチ、結核、ハンセン病、糸球体腎炎サルコイド、ネフローゼ、硬化性皮膚炎、日焼け、乾癬、湿疹、筋萎縮性側索硬化症、硬化症、認知症、例えばエイズ関連神経変性、アルツハイマー病、脳脊髄炎、ウイルス性脳炎若しくは自己免疫性脳炎、免疫複合体性脈管炎、全身性エリテマトーデス、虚血性心疾患、心不全、心筋症、副腎不全、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、子癇前症、子癇、尿毒症合併症、慢性肝不全、卒中、脳虚血、嚢胞性線維症、結核、悪液質、虚血再かん流、血液透析に関連する健康状態、糸球体腎炎、再狭窄、ウイルス感染の炎症性続発症、低酸素症、高圧酸素による痙攣及び中毒、認知症、シドナム舞踏病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、癲癇、コルサコフ病、脳血管障害に関連する精神遅滞、NO媒介性脳外傷及び関連の続発症、虚血性脳浮腫(脳卒中)、疼痛、片頭痛、嘔吐、免疫複合体病、免疫抑制剤として、急性同種移植拒絶反応、又は癌である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記疾患が、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックである、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記哺乳類がヒトである、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
過剰NO産生により媒介される疾患の危険性のある哺乳類における、NO産生を抑制する方法であって、該哺乳類におけるNO産生を抑制するために有効な量の水溶性タンシノンを、前記哺乳類に投与することを含む、該方法。
【請求項62】
前記水溶性タンシノンが、天然に存在するタンシノンのスルホン酸ナトリウム誘導体である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記水溶性タンシノンが、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記疾患が、ショック、回腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、喘息、気管支炎、オキシダント誘導性肺外傷、慢性閉塞性気道疾患、角膜ジストロフィー、高眼圧症、トラコーマ、オンコセルカ症、網膜炎、ブドウ膜炎、交感性眼炎、眼内炎、歯周炎、関節炎、敗血症性関節炎、変形性関節症、慢性関節リウマチ、結核、ハンセン病、糸球体腎炎サルコイド、ネフローゼ、硬化性皮膚炎、日焼け、乾癬、湿疹、筋萎縮性側索硬化症、硬化症、認知症、例えばエイズ関連神経変性、アルツハイマー病、脳脊髄炎、ウイルス性脳炎若しくは自己免疫性脳炎、免疫複合体性脈管炎、全身性エリテマトーデス、虚血性心疾患、心不全、心筋症、副腎不全、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、子癇前症、子癇、尿毒症合併症、慢性肝不全、卒中、脳虚血、嚢胞性線維症、結核、悪液質、虚血再かん流、血液透析に関連する健康状態、糸球体腎炎、再狭窄、ウイルス感染の炎症性続発症、低酸素症、高圧酸素による痙攣及び中毒、認知症、シドナム舞踏病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、癲癇、コルサコフ病、脳血管障害に関連する精神遅滞、NO媒介性脳外傷及び関連の続発症、虚血性脳浮腫(脳卒中)、疼痛、片頭痛、嘔吐、免疫複合体病、免疫抑制剤として、急性同種移植拒絶反応、又は癌である、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記疾患が、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックである、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記哺乳類がヒトである、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
過剰NO産生により媒介される疾患を有する哺乳類における、NO産生を抑制する方法であって、該哺乳類におけるNO産生を抑制するために有効な量の精製タンシノンを、前記哺乳類に投与することを含む、該方法。
【請求項68】
前記タンシノンが、タンシノンI、タンシノンIIA、又はクリプトタンシノンである、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記タンシノンが水溶性タンシノンである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記水溶性タンシノンが、タンシノンIIAスルホン酸ナトリウムである、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記疾患が、ショック、回腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、喘息、気管支炎、オキシダント誘導性肺外傷、慢性閉塞性気道疾患、角膜ジストロフィー、高眼圧症、トラコーマ、オンコセルカ症、網膜炎、ブドウ膜炎、交感性眼炎、眼内炎、歯周炎、関節炎、敗血症性関節炎、変形性関節症、慢性関節リウマチ、結核、ハンセン病、糸球体腎炎サルコイド、ネフローゼ、硬化性皮膚炎、日焼け、乾癬、湿疹、筋萎縮性側索硬化症、硬化症、認知症、例えばエイズ関連神経変性、アルツハイマー病、脳脊髄炎、ウイルス性脳炎若しくは自己免疫性脳炎、免疫複合体性脈管炎、全身性エリテマトーデス、虚血性心疾患、心不全、心筋症、副腎不全、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、骨粗鬆症、子癇前症、子癇、尿毒症合併症、慢性肝不全、卒中、脳虚血、嚢胞性線維症、結核、悪液質、虚血再かん流、血液透析に関連する健康状態、糸球体腎炎、再狭窄、ウイルス感染の炎症性続発症、低酸素症、高圧酸素による痙攣及び中毒、認知症、シドナム舞踏病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、癲癇、コルサコフ病、脳血管障害に関連する精神遅滞、NO媒介性脳外傷及び関連の続発症、虚血性脳浮腫(脳卒中)、疼痛、片頭痛、嘔吐、免疫複合体病、免疫抑制剤として、急性同種移植拒絶反応、又は癌である、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記疾患が、セプシス、敗血症、及び/又は内毒素性ショックである、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
前記哺乳類がヒトである、請求項67に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−523730(P2009−523730A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550444(P2008−550444)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/000945
【国際公開番号】WO2007/084419
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(501324834)ザ・フェインスタイン・インスティチュート・フォー・メディカル・リサーチ (14)
【氏名又は名称原語表記】The Feinstein Institute for Medical Research
【住所又は居所原語表記】350 Community Drive, Manhasset, NY 11030, U.S.A.
【Fターム(参考)】