説明

タンニンを主成分とする高分子凝固剤組成物と使用方法

タンニンを主成分とする環境に優しい高分子凝固剤の組成物と使用方法を開示する。タンニンを主成分とする凝固剤は天然タンニンと陽イオン性モノマーの共重合体である。本発明の一実施形態は、以下のように製造するタンニンを主成分とする高分子凝固剤の組成物を提供する。t−ブチルヒドロペルオキシド及びメタ重亜硫酸ナトリウムを用いてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)を重合し、得られるポリMADAMEを塩酸塩に転化し、その後水媒体中でタンニンと混合/反応させて、均一なポリ(MADAME)−タンニン組成物を得る。本発明の使用方法では、食品飲料、鉄鋼、自動車、輸送、製油、医薬品、金属、紙パルプ、化学処理及び炭化水素処理産業からの含油廃水を浄化するために、本組成物を有効量添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水の浄化、具体的には製薬、食品飲料、鉄鋼、紙パルプ、金属、輸送、化学処理及び炭化水素処理からの含油廃水を浄化する方法に関する。特に、本発明は新規凝固剤であるタンニンを主成分とする高分子凝固剤、その製造方法、含油廃水処理への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水の浄化法は多くの産業界でよく知られている。バルク液相に分散した粒子状物質を除去するのに様々な物理的手段が使用されている。普通の粒子分離法の例としては、濾過、沈殿、脱塩、電気化学的方法、遠心分離、浮遊などがある。多くの場合、凝固剤及び凝集剤の使用により、このような分離方法の効率をさらに高めることができる。油を乳化状態で含有する廃水を物理的方法のみで処理するのは困難である。このような状況では、解乳化用の凝固剤及び凝集剤を使用して乳化を破壊し、生じた油粒子の凝集を促進することができる。解乳化に無機凝固剤を単独で又は有機高分子電解質と組合せて用いている。しかし、これらの処理は、固形分の含量を増加させ、汚泥処分の問題を引き起こすので、完全には満足いくものではない。
【0003】
タンニンは、種々の植物及び樹木の樹皮、鞘、葉及び果実からの収れん性、水溶性の抽出物である。ケブラチョの木の幹及びワトルの木の樹皮からタンニンを抽出する工業的手法は確立されており、縮合型タンニンを多量に得ることができる。縮合型タンニンは、ポリフェノール性であり、ホルムアルデヒドなどの他の化学薬品との組合せで重合する。
【0004】
米国特許第4558080号には、タンニンを、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド、及びモノエタノールアミンなどのアミノ化合物と反応混合物の粘度をモニターしながら重合することにより、タンニンを主成分とする安定な凝集剤を製造する方法が開示されている。
【0005】
米国特許第4734216号には、上記特許文献記載のタンニン重合体と硫酸アルミニウム又は塩化鉄などの無機凝集剤との組合せからなる凝集剤組成物が開示されている。
【0006】
米国特許第5643462号には、エチレン系不飽和モノマーとタンニンを重合することにより得られる水溶性/水分散性タンニン含有ポリマーからなる組成物、その製造方法及び水の浄化への使用が開示されている。
【0007】
米国特許第6478986号には、凝固/凝集剤としてのタンニン酸4級塩の製造方法及び飲料水及び工業用水の処理への使用が教示されている。凝固/凝集剤は植物性高分子電解質の陽イオンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4558080号明細書
【特許文献2】米国特許第4734216号明細書
【特許文献3】米国特許第5643462号明細書
【特許文献4】米国特許第6478986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水の浄化プロセスに使用できる、タンニンを主成分とする環境に優しい高分子凝固剤の簡単な製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
イオン性/非イオン性不飽和モノマー及び天然タンニンの高分子からなる、環境に優しいタンニンを主成分とする高分子凝固剤組成物を開示する。本発明の一実施形態では、以下のように製造するタンニンを主成分とする高分子凝固剤の水溶性組成物を提供する。まず、t−ブチルヒドロペルオキシド及びメタ重亜硫酸ナトリウムを用いてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)を重合する。得られるポリMADAMEを塩酸塩に転化させ、その後水性媒体中でタンニンと混合/反応させ均一なポリ(MADAME)−タンニン組成物を得る。
【0011】
本発明の別の実施形態では、以下のように製造するタンニンを主成分とする高分子凝固剤の組成物を提供する。N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)を塩酸と反応させ塩酸塩に転化させ、その後t−ブチルヒドロペルオキシド及びメタ重亜硫酸ナトリウムを用いて重合する。次いで、得られるポリMADAME塩酸塩を水性媒体中でタンニンと混合/反応させて均一なポリ(MADAME)−タンニン組成物を得る。
【0012】
本発明の他の実施形態では、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(METAC)モノマーをt−ブチルヒドロペルオキシド及びメタ重亜硫酸ナトリウムを用いて重合し、その後、得られるポリMETACを水性媒体中でタンニンと混合/反応させて均一なポリ(METAC)−タンニン組成物を得る。
【0013】
本発明の使用方法では、食品飲料、鉄鋼、自動車、輸送、製油、医薬品、金属、紙パルプ、化学処理及び炭化水素処理産業からの含油廃水を浄化するために、pH約2〜約10に調節し、本発明の組成物を単独または他の凝固剤/凝集剤と組合せて有効量添加する。
【発明の効果】
【0014】
上述した種々の実施形態による環境に優しいタンニンを主成分とする高分子凝固剤は、簡単に製造でき、食品飲料加工時に生じる含油廃水などの含油廃水の浄化への使用に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
単数表現は、文脈上明らかにそうでない場合以外は、複数も含む。同じ特性を示すすべての範囲の上下限の値は、独立に組合せることができ、上下限の値を含む。引用文献はすべて本発明の先行技術として援用する。
【0016】
数量にともなう修飾語「約」は、表示値を含み、文脈で示された意味を持つ(例えば特定の数量の測定にともなう誤差を含む)。
【0017】
「所望の」又は「所望に応じて」は、後述する事象や状況が起こっても起こらなくてもよく、後述する材料が存在してもしなくてもよいことを意味し、関連する説明は、事象や状況が起こったり材料が存在する場合と、事象や状況が起こらなかったり材料が存在しない場合との両方を包含する。
【0018】
本発明は、タンニンを主成分とする、さらに特定すると天然タンニンを陽イオン性高分子と反応させた環境に優しい高分子凝固剤の「ワンポット」合成及びこの高分子凝固剤の含油廃水の浄化への使用を開示する。
【0019】
タンニン成分は世界中にある様々な木材や植物材料から得ることができる。タンニンとは一群の複雑な水溶性の有機化合物である。ほとんどすべての成長する樹木又は低木は、葉、小枝、樹皮、幹又は果実にある種のタンニンを含有している。樹皮の例には、ワトル、マングローブ、オーク、ユーカリ、ヘムロック、松、カラマツ及び柳がある。幹の例には、ケブラチョ、栗、オーク及びウルンダイがある。果実の例には、ミロバラン、バロニア、ディビディビ、タラ及びアルガロビアがある。葉の例には、スマック及びガンビアがあり、根の例には、カナイグラ(canaigre)及びパルメットがある。中でもワトルが好ましい材料である。これらの天然タンニンは旧知の「加水分解型」タンニンと「縮合型」タンニンに分類できる。縮合型タンニン抽出物は、ブラックワトルの木の樹皮、ケブラチョの木の幹、ヘムロックの木の樹皮、及び一般的に用いられる数種の松科の木の樹皮から製造されたものである。ワトルとケブラチョの抽出物の製造は工業的手法として十分に確立されており、多量の抽出物がいつでも入手できる。
【0020】
縮合型タンニン抽出物、例えばワトル及びケブラチョの抽出物は、約70%のポリフェノール性タンニン、20%〜25%の主にショ糖や高分子炭水化物(親水コロイドガム)などの非タンニン、及び残部の少量の水分からなる。高分子炭水化物は抽出物の3%〜6%であるが、抽出物の粘度に大きく寄与する。本発明の好ましい実施形態では、縮合型タンニン抽出物を使用する。
【0021】
本発明の一実施形態では、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)を出発物質としてタンニンを主成分とする高分子組成物を製造する。レドックス開始剤対としてt−ブチルヒドロペルオキシド(t−BHP)及びメタ重亜硫酸ナトリウムを用いてMADAMEを重合する。t−BHPはMADAMEに対して約0.36〜約8.41モル%の量で存在し、メタ重亜硫酸ナトリウムは約0.18〜約4.4モル%の量で存在する。重合は約10℃〜約80℃、好ましくは約45℃〜約50℃の温度で起こり、所要時間は約10分間〜約60分間である。得られるポリMADAMEは中分子量〜高分子量のものであり、ポリMADAMEの分子量は開始剤濃度及び反応条件、例えば時間や温度を変えることにより制御できる。ポリMADAMEの分子量は約500〜約2000000、好ましくは約5000〜約200000の範囲にできる。
【0022】
次いで得られるポリMADAMEを、濃塩酸を添加することにより対応する塩酸塩に転化させる。その後、ポリMADAME塩酸塩をタンニンと約65℃〜約70℃の温度で約30分間〜約60分間混合/反応させる。得られる生成物は下記の均質、粘性、褐色のポリMADAME−塩酸塩−タンニン組成物溶液である。タンニン/MADAMEのモル比は、約1/0.5〜約1/5.0であり、最適な活性にはモル比1/1.5〜約1/3が好ましい。
【0023】
本発明の別の実施形態では、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(MADAME)塩酸塩を用いる別の方法でタンニンを主成分とする高分子組成物を製造する。この製造方法では、重合前に塩基性のMADAMEモノマーを塩酸溶液と反応させて低pHの陽イオン性モノマーに転化させる。次いで得られるMADAME・HCLを、酸化剤としてのt−ブチルヒドロペルオキシド(t−BHP)及び還元剤としてのメタ重亜硫酸ナトリウムからなるレドックス開始剤対の反応により重合させる。上記のように、重合は約10℃〜約80℃、好ましくは約45℃〜約50℃の温度で起こり、所要時間は約10分間〜約60分間である。得られるポリMADAMEは中分子量〜高分子量のものであり、ポリMADAMEの分子量は開始剤濃度及び反応条件、例えば時間や温度を変えることにより制御できる。ポリMADAMEの分子量は約500〜約2000000、好ましくは約5000〜約200000の範囲にできる。
【0024】
その後、得られるポリMADAMEをタンニンと約35℃〜約80℃の温度で約10分間〜約60分間混合/反応させる。得られる生成物は下記の均質、粘性、褐色のポリMADAME−塩酸塩−タンニン組成物溶液である。タンニン/MADAMEのモル比は、約1/0.5〜約1/5.0であり、最適な活性にはモル比1/1.5〜約1/3が好ましい。
【0025】
本発明の別の実施形態では、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(METAC)を出発物質としてタンニンを主成分とする高分子組成物を製造する。t−ブチルヒドロペルオキシド及びメタ重亜硫酸ナトリウムをレドックス開始剤対として用いてMETACを重合する。t−BHP及びメタ重亜硫酸ナトリウムは、METACに対して約0.18〜約8.4モル%の範囲で使用する。重合は約10℃〜約80℃、好ましくは約45℃〜約50℃の温度で起こり、所要時間は約10分間〜約60分間である。得られるポリMETACは中分子量〜高分子量のものであり、ポリMETACの分子量は開始剤濃度及び反応条件、例えば時間や温度を変えることにより制御できる。ポリMETACの分子量は約500〜約2000000、好ましくは約5000〜約200000の範囲にできる。ポリMETACの分子量を変化させることにより、凝固剤組成物の粘度を制御することができる。
【0026】
得られるポリMETACをタンニンと混合/反応させる。得られる生成物は下記の均質、粘性、褐色のポリMETAC−タンニン溶液である。タンニン/METACのモル比は、約1/0.5〜約1/5.0であり、最適な活性にはモル比1/1.5〜約1/3が好ましい。
【0027】
得られる凝固剤は、種々の廃水を浄化するのに使用でき、例えば、食品飲料産業、石油精製所、輸送、化学処理、紙パルプ、金属加工及び鉄鋼業の廃水を処理するのに使用できる。高分子凝固剤の実際の投入量範囲は処理する廃水の特性に依存する。これらの特性には、例えば廃水中の油量、油の種類、固形分の濃度、水中の他の汚染物の存在と濃度、可溶金属イオンの存在量、及び水のpHがある。廃水に対して、約1ppm〜約1000ppmの高分子凝固剤を用いることが好ましい。しかし、それより広い投入量範囲で凝固剤の活性が認められ、処理する実際の廃水の組成が最適な投入量範囲に直接影響を及ぼすことは確実である。
【実施例】
【0028】
含タンニン高分子の製造の実験手順
実施例1
ポリMADAME−タンニン凝固剤組成物の製造
縦型攪拌機、水冷冷却器、熱電対、窒素ガス導入管及びセプタムを備えた1000mlの丸底フラスコに400gの脱イオン水及び192.5gのMADAMEを窒素雰囲気下で添加した。撹拌しながら溶液を45〜50℃に加熱した。48〜50℃で、7.68gの水に溶解した2.25gのt−BHP及び8.48gの水に溶解した1.78gのメタ重亜硫酸ナトリウムをレドックス開始剤対として同時にシリンジポンプから約30〜約40分間かけて反応器に入れた。125.5gの濃度約35%のHClを滴下漏斗から約10〜約15分間かけて反応器にゆっくり入れた。この温度で約30分間反応バッチを撹拌し、透明な溶液を得た。ここで、窒素雰囲気を解除した。その後、5〜約10分間かけて174.5gの70%MEワトルタンニンを反応器に添加し、再び窒素雰囲気にした。120gの脱イオン水を入れて、反応バッチを約65℃〜約75℃にし、均一になるまで撹拌した。次いで均一な混合物を約1時間その温度に保った。保持後、サンプルを取り、固形分について評価した。必要に応じて、追加の脱イオン水を添加し、固形分濃度を約35〜約40%に調節し、その後組成物を約15分間撹拌し、再度サンプルを取り、固形分について評価する。組成物を室温まで冷却した。結果として、1026gのポリMADAME−タンニン凝固剤を37.06%の固形分レベルで得た。
【0029】
実施例2
ポリMADAME−タンニン組成物の製造
縦型攪拌機、水冷冷却器、熱電対及び窒素ガス導入管を備えた500mlの4つ口丸底フラスコに39.05gのMADAMEモノマー及び93.71gの脱イオン水を入れた。溶液を窒素雰囲気下で18〜20℃に冷却した。この溶液に27.22gの33%HClをシリンジポンプを用いて30分間かけて液面下に添加した。HClの全量を添加し終わったら、窒素雰囲気を窒素吹き込み(スパージ)に変更し、得られた低pH溶液を30分間撹拌した。2.24gの21.5%メタ重亜硫酸ナトリウム溶液及び1.80gの23.4%t−ブチルヒドロペルオキシドからなる開始剤対を30分間で添加することにより、重合を行った。その後、粘性溶液を約20〜約30分間反応させた。2.34gの12.5%t−BHPからなる追加の開始剤を一度に添加した。その後、1.32gの23.6%メタ重亜硫酸ナトリウム溶液を10分間で添加した。高分子溶液を20分間反応させた。次いで41.37gの70%MEワトルタンニンを添加して、その後76gの脱イオン水を添加した。温度を70℃に上げ、1時間反応させた。その後、反応液を室温まで冷却した。固形分を測定すると、31.8%であった。
【0030】
実施例3
ポリMETAC-タンニン凝固剤組成物の製造
ポリMETAC−タンニン凝固剤は以下のように製造した。まず、反応器を窒素でフラッシングし、最初に95gの脱イオン水を反応器に入れた。攪拌機を始動し、反応器のまわりを窒素雰囲気にした。反応器に69.25gの[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド(METAC)を入れ、内容物を50℃にした。2.12gの水に溶解した0.44gのメタ重亜硫酸ナトリウム及び1.92gの水に溶解した0.55gのt−BHPを同時に約30〜約40分間かけてシリンジポンプから反応器に入れた。反応液が均一、透明な溶液になるまで約30分間撹拌を続けた。ここで、窒素雰囲気を解除した。その後、5〜約10分間かけて、43.65gの70%MEワトルタンニンを反応器に添加し、再び窒素雰囲気にした。反応バッチを約65℃〜約75℃にし、均一になるまで撹拌した。均一な混合物を約1時間その温度に保ち、その後室温まで冷却した。冷却時に40.0gの脱イオン水を組成物に添加した。サンプルを取り、160℃で固形分の割合について評価した。必要に応じて、追加の脱イオン水を添加し、固形分濃度を調節し、その後組成物を約15分間撹拌し、再度サンプルを取り、固形分について評価する。結果として、252.89gのポリMETAC−タンニン凝固剤組成物を34.44%の固形分レベルで得た。
【0031】
効力試験
本発明の含タンニン高分子の濁度/化学的酸素要求量(COD)/生物化学的酸素要求量(BOD)の低減に対する効力を示すために、合成含油廃水及び製油、酪農及び食肉(鶏肉及び牛肉)加工工場からの廃水サンプルを用いて水の浄化試験を行った。これらは例示であって、類似の廃水への適用性を制限するものではない。
【0032】
試験方法
典型的な廃水処理浄化装置、即ち加圧浮上(DAF)装置又はエントラップト・エアー・フローテーション(EAF)装置の運転をシミュレートするように設計された標準ジャーテストを用いた。1成分処理の場合の試験方法は以下のとおりである。高分子処理剤を種々の投入量で試験基質に添加し、処理した基質を撹拌し、水中に形成した固形分を沈殿させた。生成した上澄水の残濁度/COD/BODを処理後に測定した。
【0033】
3成分処理の場合、試験方法は以下のとおりである。pH約2〜約10に調整し、含タンニン高分子を試験基質に添加し、次いで陽イオン凝集剤、その後陰イオン凝集剤を添加した。薬品添加の間、基質を撹拌し続けた。撹拌後、固形分を沈殿させ、上澄液を残濁度/COD/BODについて分析した。これは3成分処理系の例示であって、本発明はこの方法に制限されるものではない。
【0034】
鶏肉及び牛肉の廃水処理において、pH約2〜約10に調節し、陽イオン凝集剤及び陰イオン凝集剤を添加することは、廃水の濁度の低減には有効でなかった。表1に、タンニン高分子を使用しない場合の効力試験の結果のデータを示す。
【0035】
【表1】

実施例4
75%の植物性脂肪、11.98%のPOE4ラウリルアルコール及び13.2%のオレイン酸からなる合成含油水混合物を調製した。混合物をホットプレート上で15分間撹拌し、続いてブレンダー中でさらに10分間混合した。その後10gの含油混合物を別のブレンダーに取り、390gの蒸留水と7分間混合した。得られた乳濁液を水道水で1:9に希釈した。最終合成含油水は0.20%の油脂を含有した。
【0036】
表2に、合成含油廃水に対するポリMADAME−タンニン組成物の効力試験結果を示す。MADAME/タンニンのモル比が1.5/1である実施例1の試料142及びMADAM/タンニンのモル比が3/1である実施例1の試料136の結果である。
【0037】
【表2】

表3に、合成含油廃水に対するポリMETAC−タンニン組成物の効力試験結果を示す。実施例3の試料の結果である。組成物のMETAC/タンニンのモル比は2.5/1であった。
【0038】
【表3】

明らかに使用に最適な適用範囲があり、この範囲を超えると凝固剤組成物はうまく作用しない。
【0039】
実施例5
表4に、MADAME/タンニンのモル比が3/1である実施例1のポリMADAME−タンニン組成物の鶏肉廃水に対する、陽イオン及び陰イオン凝集剤の添加なしの場合の効力試験結果を示す。
【0040】
【表4】

表5に、MADAME/タンニンのモル比が3/1である実施例1のポリMADAME−タンニン組成物の鶏肉廃水に対する、陽イオン及び陰イオン凝集剤と併用した場合の効力試験結果を示す。
【0041】
【表5】

表6に、MADAME/タンニンのモル比が2.5/1の実施例2のポリMADAME−タンニン組成物の鶏肉廃水に対する、陽イオン及び陰イオン凝集剤と併用した場合の効力試験結果を示す。表はタンニン高分子の使用により濁度、COD及びBODが低減されることを示す。
【0042】
【表6】

表7に、METAC/タンニンのモル比が2.5/1の実施例3のポリMETAC−タンニン組成物の鶏肉廃水に対する効力試験結果を示す。
【0043】
【表7】

実施例6
表8に、MADAME/タンニンのモル比が3/1の実施例1のポリMADAME−タンニン組成物の牛肉廃水に対する効力試験結果を示す。
【0044】
【表8】

表9に、METAC/タンニンのモル比が2.5/1の実施例3のポリMETAC−タンニン組成物の牛肉廃水に対する効力試験結果を示す。
【0045】
【表9】

実施例7
表10に、ポリMADAME−タンニン組成物の効力試験の結果を示す。MADAME/タンニンのモル比が1.5/1である実施例1の試料142及びMADAM/タンニンのモル比が3/1である実施例1の試料136の製油廃水に対する結果である。
【0046】
【表10】

実施例8
表11に、ポリMADAME−タンニン組成物の効力試験の結果を示す。MADAME/タンニンのモル比が1.5/1である実施例1の試料142及びMADAM/タンニンのモル比が3/1である実施例1の試料136の酪農廃水に対する結果である。
【0047】
【表11】

代表的な実施例を具体的説明として記載したが、以上の説明は本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の要旨から逸脱することなく、本発明の数多くの別の形態及び変更を同業者が想起できることは明らかである。実施形態と特許請求の範囲は本発明の要旨に入るこのような明らかな形態及び変更のすべてを含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性タンニンとイオン性/非イオン性モノマーとを主成分とする高分子凝固剤を含有する含油廃水処理用組成物、及び含油廃水に前記組成物を処理に有効な量添加する工程を含む含油廃水処理方法。
【請求項2】
前記タンニンが縮合型タンニンである、請求項1記載の高分子凝固剤。
【請求項3】
タンニン及びポリ(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)を含有する、請求項1記載の高分子凝固剤。
【請求項4】
ポリ(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)の分子量が約500〜約2000000である、請求項3記載の高分子凝固剤。
【請求項5】
タンニン/ポリ(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)のモル比が約1/0.5〜約1/5である、請求項3記載の高分子凝固剤。
【請求項6】
タンニン及びポリ[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドを含有する、請求項1記載の高分子凝固剤。
【請求項7】
タンニン/ポリ[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドのモル比が約1/0.5〜約1/5である、請求項6記載の高分子凝固剤。
【請求項8】
ポリ[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドの分子量が約500〜約2000000である、請求項6記載の高分子凝固剤。
【請求項9】
a)N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを重合し、
b)工程a)のN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート重合体をタンニンと反応させて高分子凝固剤を形成する工程を含む、
タンニンを主成分とする高分子凝固剤の形成方法。
【請求項10】
重合工程で、さらにレドックス開始剤対としてt−ブチルヒドロペルオキシド及びメタ重亜硫酸ナトリウムを用いる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
重合を約10℃〜80℃の温度で行う、請求項9記載の方法。
【請求項12】
a)N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートモノマーを塩酸溶液と反応させて低pH陽イオン性モノマーに転化させ、
b)N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩を重合し、
c)工程b)のN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩重合体をタンニンと反応させて高分子凝固剤を形成する工程を含む、
タンニンを主成分とする高分子凝固剤の形成方法。
【請求項13】
重合工程で、さらにレドックス開始剤対としてt−ブチルヒドロペルオキシド及びメタ重亜硫酸ナトリウムを用いる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
重合を約10℃〜80℃の温度で行う、請求項12記載の方法。
【請求項15】
a)[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドを重合し、
b)工程a)の[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド重合体をタンニンと反応させて高分子凝固剤を形成する工程を含む、
タンニンを主成分とする高分子凝固剤の形成方法。
【請求項16】
重合を、レドックス重合、熱重合、イオン重合及び光開始重合により行うことができる、請求項9、請求項12及び請求項15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
凝固剤の添加により廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項3記載の高分子凝固剤とする、請求項1記載の方法。
【請求項18】
凝固剤の添加により含油廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項6記載の高分子凝固剤とする、請求項1記載の方法。
【請求項19】
凝固剤の添加により含油廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項3記載の高分子凝固剤とし、他の凝固剤及び凝集剤と併用する、請求項1記載の方法。陽イオン凝集剤を分子量範囲が1000000〜14000000のAETAC/アクリルアミド共重合体、METAC/アクリルアミド共重合体又はDADMAC/アクリルアミド共重合体にすることができ、陰イオン凝集剤を分子量範囲が1000000〜23000000のアクリルアミド重合体又はアクリル酸/アクリルアミド共重合体にすることができる。
【請求項20】
凝固剤の添加により含油廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項6記載の高分子凝固剤とし、他の凝固剤及び凝集剤と併用する、請求項1記載の方法。陽イオン凝集剤を分子量範囲が1000000〜14000000のAETAC/アクリルアミド共重合体、METAC/アクリルアミド共重合体又はDADMAC/アクリルアミド共重合体にすることができ、陰イオン凝集剤を分子量範囲が1000000〜23000000のアクリルアミド重合体又はアクリル酸/アクリルアミド共重合体にすることができる。
【請求項21】
凝固剤の添加により含油廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項3記載の高分子凝固剤とし、pH約2〜約10に調節して用いる、請求項1記載の方法。
【請求項22】
凝固剤の添加により含油廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項6記載の高分子凝固剤とし、pH約2〜約10に調節して用いる、請求項1記載の方法。
【請求項23】
凝固剤の添加により含油廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項3記載の高分子凝固剤とし、pH約2〜約10に調節して、他の凝固剤及び凝集剤と併用する、請求項1記載の方法。陽イオン凝集剤を分子量範囲が1000000〜14000000のAETAC/アクリルアミド共重合体、METAC/アクリルアミド共重合体又はDADMAC/アクリルアミド共重合体にすることができ、陰イオン凝集剤を分子量範囲が1000000〜23000000のアクリルアミド重合体又はアクリル酸/アクリルアミド共重合体にすることができる。
【請求項24】
凝固剤の添加により含油廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項6記載の高分子凝固剤とし、pH約2〜約10に調節して、他の凝固剤及び凝集剤と併用する、請求項1記載の方法。陽イオン凝集剤を分子量範囲が1000000〜14000000のAETAC/アクリルアミド共重合体、METAC/アクリルアミド共重合体又はDADMAC/アクリルアミド共重合体にすることができ、陰イオン凝集剤を分子量範囲が1000000〜23000000のアクリルアミド重合体又はアクリル酸/アクリルアミド共重合体にすることができる。
【請求項25】
凝固剤の添加により含油廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項3記載の高分子凝固剤とし、廃水に基づいて約1〜1000ppmの量で廃水に添加する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
凝固剤の添加により含油廃水を処理する方法であって、凝固剤を請求項6記載の高分子凝固剤とし、廃水に基づいて約1〜1000ppmの量で廃水に添加する、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2010−513024(P2010−513024A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543057(P2009−543057)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/086969
【国際公開番号】WO2008/079652
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】