説明

ターボチャージャのシールリング組付け方法及びターボチャージャ

【課題】シールリングに対する他部品からの影響を受けにくくしたターボチャージャのシールリング組付け方法及び該シールリングを備えるターボチャージャを提供することを目的とする。
【解決手段】タービンハウジング12の内周壁12bの先端部12hに、シールリング16の位置を半径方向に規制する環状凸部12jが設けられ、シールリング16の外周部が環状凸部12jで規制されるようにノズルプレート36の側面36cと内周壁12bの先端部12hの第1段部12kとの間にシールリング16が組付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンハウジングと、可変ノズル機構を構成するノズルプレートとの間をシールするためのシールリングを組付けるターボチャージャのシールリング組付け方法及び該シールリングを備えるターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エンジン等に用いられるターボチャージャでは、エンジンの排気ガスを、タービンハウジングに形成されたスクロール内に充填し、このスクロールの内周側に設けられた複数のノズルベーンを通じてこれらのノズルベーンの内周側に設けられたタービンホイールに作用させる構造が採用されている。
【0003】
複数のノズルベーンは、2枚の環状のプレート(ノズルマウント、ノズルプレート)の間に翼角が変更可能に設けられ、複数のノズルベーンと、上記の2枚のプレートと、複数のノズルベーンの翼角を変更するための翼角変更機構とで、可変ノズル機構の主要部が構成される。
【0004】
上記可変ノズル機構によって、エンジン回転数に応じて複数のノズルベーンの翼角が変更されると、2枚のプレート間に形成される排気ガス通路を流れる排気ガスの流量が変化し、タービンホイールの回転数が変化する。
【0005】
可変ノズル機構の主要部は、タービンハウジングと、タービンホイールの回転軸を支持するベアリングハウジングとの間に配置され、可変ノズル機構(詳しくは、ノズルプレート)とタービンホイールとの間には組立時の隙間が生じるため、この隙間はシールリングが組付けられることで密封される。
【0006】
このような従来のターボチャージャ用シールリング組付け方法及びシールリングを備えるターボチャージャとして、排ガスをタービンインペラに導く複数のベーンを備えるシュラウドと、このシュラウドに対向するように位置するタービンハウジング側の部位との間に、皿ばね状のシール部材を組付けるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
特許文献1の図1によれば、添付図面の図10に示すようにシュラウド010は、タービンハウジング01のスクロール通路08に導入される排ガスをタービンインペラ04に導くための複数のベーン09と、これらのベーン09を挟み込む2枚の環状のプレート09a,09bとによって構成されている。
また、タービンハウジング01は、シュラウド010に対峙するシュラウド対峙部014が形成され、このシュラウド対峙部014の端面014aの内縁部にシュラウド010側へ突出する環状突部027が形成されている。
【0008】
上記シュラウド010とシュラウド対峙部014との間には環状の間隙015が形成され、この間隙015に皿ばねシール部材024が配置されている。詳しくは、皿ばねシール部材024の内周端025がシュラウド対峙部014の環状突部027の外周面に嵌合しつつシュラウド対峙部014の端面014aに当たり、皿ばねシール部材024の外周端026がシュラウド010のプレート09aに当たっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−47027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、皿ばねシール部材024を半径方向に規制する環状突部027は、タービンハウジング01におけるシュラウド対峙部014の端面014aの内縁部に形成されているので、例えば、熱でタービンハウジング01が膨張した場合に、環状突部027の外径が大きくなり、皿ばねシール部材024の内周端025に干渉して、皿ばねシール部材024が変形するおそれがある。
【0011】
そこで、皿ばねシール部材024の内周端025の内径を大きく設定することが考えられる。この場合には、環状突部027による皿ばねシール部材024の半径方向の規制が甘くなるため、例えば、皿ばねシール部材024がシュラウド010に対して大きく偏心して組付けられ、皿ばねシール部材024の外周端026がプレート09aの外周部から外れることが予想される。
【0012】
前記問題点に鑑み本発明の目的は、シールリングに対する他部品からの影響を受けにくくしたターボチャージャのシールリング組付け方法及び該シールリングを備えるターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かかる目的を達成するため、シールリングの組付け方法にかかる発明は、排気ガスを、タービンハウジングに形成されたスクロール及びこのスクロールの内周側に設けられた複数のノズルベーンを通じて、該ノズルベーンの内周側に配置されたタービンホイールに作用させるターボチャージャであって、前記スクロールの内周側に、前記ノズルベーンを挟むように該ノズルベーンを回動自在に支持する環状のノズルマウントと該ノズルマウントに取付けられた環状のノズルプレートとを配置することで排気ガス通路を形成し、前記ノズルプレートの側面に対向して前記スクロールの内壁を形成する前記タービンハウジングの内周壁が設けられ、これらのノズルプレートの側面とタービンハウジングの内周壁との間を密封するように環状のシールリングが組付けられるターボチャージャのシールリング組付け方法において、
前記タービンハウジングの内周壁の先端部に、前記シールリングの位置を半径方向に規制する半径方向規制部が設けられ、前記シールリングの外周部が前記半径方向規制部で規制されるように前記ノズルプレートの側面と前記タービンハウジングの内周壁との間に前記シールリングが組付けられることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、前記シールリングの外周部が前記半径方向規制部で規制されるようにして前記ノズルプレートの側面と前記タービンハウジングの内周壁との間に前記シールリングが組付けられるので、すなわち、前記シールリングの外周部が前記半径方向規制部で規制されるように組み付けられるので、シールリングの位置決めが確実になされる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、前記シールリングを内周壁の先端部の前記半径方向規制部の内周側に載置し、その後、前記シールリングの上方から前記ノズルプレートを含んで構成されるノズル組立体を被せて前記タービンハウジングの上にノズル組立体を載置するようにして組付けるとよい。
【0016】
このようにシールリングを半径方向規制部の内側に載置すればよく、逆の半径方向規制部の外側に位置決めして載置する場合に比べて、偏心させずに位置決めしての組み付けが簡単であり、かつ安定して確実に行うことができる。また、載置した上からノズル組立体を載置するように組み付けるので、組み付けが簡単かつ確実に行える。
【0017】
また、ターボチャージャにかかる発明は、タービンハウジングに形成されたスクロールと、該スクロールの内周側に設けられた複数のノズルベーンと、該ノズルベーンの内周側に配置されたタービンホイールと、前記スクロールの内周側に、前記ノズルベーンを挟むように該ノズルベーンを回動自在に支持する環状のノズルマウントと該ノズルマウントに取付けられた環状のノズルプレートと、前記ノズルプレートの側面に対向して前記スクロールの内壁を形成する前記タービンハウジングの内周壁が設けられ、前記ノズルプレートの側面とタービンハウジングの前記内周壁との間を密封するように配設される環状のシールリングと、前記タービンハウジングの内周壁の先端部に設けられ、前記シールリングの外周部を半径方向に規制する半径方向規制部と、を備え、前記シールリングは、その外周部が前記半径方向規制部で規制されるように前記ノズルプレートの側面と前記タービンハウジングの内周壁との間に組付けられていることを特徴とする。
【0018】
かかる発明によれば、タービンハウジングの内周壁の先端部に設けられた半径方向規制部によってシールリングの外周部を半径方向に規制することで、タービンハウジングの半径方向規制部が半径方向外側へ熱膨張したとしても、半径方向規制部がシールリングに干渉することがなく、シールリングに対する半径方向規制の熱膨張の影響が及ぶことがない。従って、シールリングの変形を防止することができる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、前記半径方向規制部は、前記タービンハウジングの内周壁の先端部から該タービンホイールの回転軸に沿う方向に突出する環状凸部であるとよい。
このように、半径方向規制部を、前記タービンハウジングの内周壁の先端部から該タービンホイールの回転軸に沿う方向に突出する環状凸部によって形成することで、環状凸部をタービンハウジングの内周壁の先端部に容易に形成することができる。
【0020】
また、本発明において好ましくは、前記半径方向規制部は、前記タービンハウジングの内周壁の先端部に設けられた外周面であるとよい。
このように構成することによって、タービンハウジングの内周壁の先端部を単純な形状とすることができ、コストを低減することができる。
具体的には、タービンハウジングの内周壁の先端部に設けられた外周面に、シールリング本体の半径方向外側の端部に形成された円筒状の円筒部を嵌合する。
【0021】
また、本発明において好ましくは、前記シールリングは、その要部の幅の中央部が半径方向内側に窪んだ断面V字状に形成されているとよい。
このように、中央部が半径方向内側に窪んだ断面V字形状のシールリングとすることで、「V」字の開いた側をスクロール側へ向けることができ、スクロール内の圧力を利用してシールリングをノズルプレートの側面とタービンハウジングの内周壁とに密着させることができるため、シール効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上記載のごとく本発明によれば、タービンハウジングの内周壁の先端部に、シールリングの位置を半径方向に規制する半径方向規制部が設けられ、シールリングの外周部が半径方向規制部で規制されるようにノズルプレートの側面とタービンハウジングの内周壁との間にシールリングが組付けられるので、タービンハウジングが半径方向外側へ熱膨張したとしても、半径方向規制部がシールリングに干渉することがなく、シールリングに対する半径方向規制の熱膨張の影響が及ぶことがない。従って、シールリングの変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るシールリング組付け方法(第1実施形態)を適用したターボチャージャを示す断面図である。
【図2】本発明に係るシールリングを示す斜視図(第1実施形態)である。
【図3】本発明に係るターボチャージャ用シールリング組付け方法(第1実施形態)を示す説明図であり、(a)はタービンハウジングの内周壁の先端部を上に向けて設置した状態を示し、(b)はタービンハウジングの内周壁の先端部にシールリングを載置した字様態を示し、(c)はシールリング上にノズルプレートを配置した状態を示す。
【図4】本発明に係るターボチャージャの作用を示す説明図であり、(a)はシールリングに対する熱影響を説明する図であり、(b)はターボチャージャ機種違いに対するシールリング共用化を説明する図である。
【図5】本発明に係るシールリング組付け方法(第2実施形態)を適用したターボチャージャを示す断面図である。
【図6】本発明に係るシールリングを示す斜視図(第2実施形態)である。
【図7】シールリング組付け方法(比較例)を適用したターボチャージャの要部を示す断面図である。
【図8】シールリングの組付け方法を示す説明図(比較例)である。
【図9】ターボチャージャの作用を示す説明図(比較例)である。
【図10】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0025】
(第1実施形態)
図1に示すように、ターボチャージャ10は、タービンホイール11を回転自在に収容するタービンハウジング12と、タービンホイール11の回転軸(不図示。符号11aはタービンホイール11の回転軸の軸線である。)を回転自在に支持するとともにタービンハウジング12に隣接して取付けられたベアリングハウジング13と、タービンホイール11へ流れ込む排気ガスの流量を調整するためにタービンハウジング12及びベアリングハウジング13のそれぞれの間に且つそれぞれの内側に配置されたノズル組立体15と、タービンハウジング12及びノズル組立体15のそれぞれの間をシールするために組付けられたシールリング16とを備える。なお、符号21はタービンハウジング12とベアリングハウジング13との間をシールするシールリング、22はベアリングハウジング13とノズル組立体15(詳しくは、ノズルマウント31)との間をシールする皿ばね状のバックプレートである。
上記シールリング16,21の断面にはハッチングを施さず、黒塗りとしている(以下同様)。
【0026】
タービンホイール11は、回転軸の一端部に設けられたハブ11bと、このハブ11bの外周面に設けられた複数のタービン翼11cとからなる。
タービンハウジング12は、タービンホイール11の排気ガス下流側に設けられた排気ガス排出口12aを形成する筒状の内周壁12bと、この内周壁12bを囲むように内周壁12bの半径方向外側に形成された筒状の外周壁12cと、内周壁12bの中間部から半径方向外側に延びて外周壁12cの一端部に繋がる環状壁12dとからなる。
【0027】
ベアリングハウジング13は、タービンホイール11の回転軸を支持する筒状の内周壁13aと、この内周壁13aから半径方向外側に立ち上がる環状壁13bと、この環状壁13bの外周縁に繋がる筒状の外周壁13cとを備える。
【0028】
ノズル組立体15は、タービンハウジング12の外周壁12cに形成された内方突出フランジ部12f及びベアリングハウジング13の外周壁13cのそれぞれに挟まれて固定された環状のノズルマウント31と、このノズルマウント31に周方向に並ぶように且つ回動自在に取付けられた複数のノズル32と、これらのノズル32の一端部にそれぞれ一端が取付けられたレバープレート33と、これらのレバープレート33の他端にそれぞれ設けられた係合凸部33aに係合する溝部34aを外周部に複数有するとともに内周部がノズルマウント31の小径部31aに回転自在に嵌合するドライブリング34と、ノズル32を構成するノズルベーン32aをノズルマウント31とで挟み込むようにノズルマウント31に取付けられた環状のノズルプレート36とからなる。
【0029】
また、上記のノズル組立体15と、このノズル組立体15のドライブリング34を回動させるためにドライブリング34に連結されたアクチュエータ(不図示)とは、可変ノズル機構38を構成する。
即ち、アクチュエータによってドライブリング34を回動させることで、各レバープレート33がノズルマウント31に対して一定の方向に揺動し、ノズル32が回動することで、ノズルベーン32aの翼角が変化する。
【0030】
ノズル32は、上記のノズルベーン32aと、このノズルベーン32aの回動軸となるノズル軸32bと、ノズル32の軸方向位置を規制するフランジ32cとが一体成形された部品であり、ノズル軸32bは、ノズルマウント31に開けられた軸受穴部31bに回動自在に嵌合し、ノズル軸32bの端部にレバープレート33が加締め固定されている。
【0031】
ノズルプレート36は、環状のプレート部36aと、このプレート部36aの内周端からタービンホイール11のタービン翼11cの外形に沿って且つ所定の隙間を保ってタービンホイール11の軸方向に延びる筒状部36bとからなる一体成形品である。
【0032】
ノズルマウント31とノズルプレート36とは、排気ガスが流れる排気ガス通路41を形成し、この排気ガス通路41は、排気ガスがタービンハウジング12に渦巻き状に形成されたスクロール42からタービンホイール11に流れる途中の通路として形成されている。
【0033】
従って、排気ガス通路41に設けられたノズルベーン32aの翼角を可変ノズル機構38により変化させることで、タービンホイール11に作用する排気ガスの流量を変更することが可能になり、ターボチャージャ10に備えるコンプレッサの過給圧を制御することができる。
【0034】
タービンハウジング12の内周壁12bの先端部12hには、その外周縁にタービンホイール11の回転軸に沿って延びる環状凸部12j、この環状凸部12jの内周側に位置する第1段部12k、この第1段部12kの更に内周側に位置する第2段部12mが形成されている。
【0035】
シールリング16は、タービンハウジング12の内周壁12bにおける先端部12hの第1段部12kと、ノズルプレート36のプレート部36aの側面36cとの間に圧縮された状態で配置され、シールリング16の外周部は、タービンハウジング12の内周壁12bにおける先端部12hの環状凸部12jによって、シールリング16の半径方向に規制されている。
第2段部12mは、ノズルプレート36の筒状部36bとの干渉を避ける部分である。
【0036】
図2に示すシールリング16は、同形状の2つのテーパ部16a,16aを有し、これらのテーパ部16a,16aの小径縁部同士が一体に接続され、図1にも示したように、その幅の中央部が半径方向内側に窪んだ断面V字状に形成された弾性を有する環状の部品であって、耐熱、耐食性に優れた合金製からなる。例えば、ニッケル・クロム耐熱合金「インコネル」(登録商標)が用いられる。
【0037】
以上に述べたシールリング16の組付け要領を次に説明する。
図3(a)に示すように、まず、タービンハウジング12の内周壁12bの先端部12hが上を向くように配置する。
【0038】
次に、図3(b)に示すように、内周壁12bの先端部12h、詳しくは、先端部12hの第1段部12kにシールリング16を載置する。このとき、シールリング16は、その外周部が内周壁12bの先端部12hに形成された環状凸部12jによって半径方向に規制される。
【0039】
そして次に、図3(c)に示すように、シールリング16の上からノズル組立体15(ここでは、ノズルプレート36のみ図示)を被せ、ノズル組立体15をタービンハウジング12に載置する。
【0040】
このように、シールリング16は、ターボチャージャの組立工程の中で、タービンハウジング12の内周壁12bに規制されながら所定の位置に組付けられるので、ターボチャージャの組立工程を問題なくスムーズに進行させることができる。
【0041】
続いて、シールリング16に対する他部品からの影響について説明する。
図4(a)に示すように、ターボチャージャ内に流れる排気ガスによってターボチャージャ内が高温になると、ノズルプレート36は、タービンハウジング12の各部に比べて板厚が薄いために、例えば、ノズルプレート36の筒状部36bが二点鎖線で示す位置まで熱変形する。
【0042】
しかし、シールリング16は、その外周部が環状凸部12jで規制されているため、シールリング16の内周部とノズルプレート36の筒状部36bとの隙間を大きく確保することが可能であり、筒状部36bが熱変形して外径が大きくなったとしても、シールリング16はその影響を受けることはない。
【0043】
また、シールリング16の形状の効果として、シールリング16は断面V字状に形成され、且つ「V」字の開いた側がスクロール42側に向いているので、スクロール42側の圧力が排気ガス排出口12a側の圧力より高い場合、シールリング16における「V」字の開いた側へ作用する圧力で、シールリング16の両側端部が第1段部12k及びノズルプレート36の側面36cに押し付けられ、シールリング16の両側端部と第1段部12k及びノズルプレート36の側面36cとの密着性が増してシール性を向上させることができる。
【0044】
次に、シールリング16の汎用性について説明する。
図4(a)に示したタービンホイール11の外径はDT1であり、このタービンホイール11を、図4(b)に示すタービンホイール51(外径はDT2(>DT1))に変更し、これに伴って、図4(a)に示したノズルプレート36を図4(b)に示すノズルプレート52に変更する場合、ノズルプレート52の筒状部52bの外径はD2(>D1)となる。
【0045】
このように、ノズルプレート52の筒状部52bの外径D2が大きくなっても、シールリング16は、その内周部が半径方向に規制されていないので、筒状部52bの外径変化の影響を受けない。即ち、ターボチャージャの機種等が異なる場合でも、シールリング16を共用化することができる。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態に関して、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図5に示すように、ターボチャージャ10は、タービンハウジング12及びノズル組立体15のそれぞれの間をシールするために組付けられたシールリング61を備える。
タービンハウジング12は、その内周壁12bの先端部12pに、ノズルプレート36の側面36cに対向する端面12qと、外周面12rと、ノズルプレート36の筒状部36bとの干渉を避ける段部12sとを備える。
【0047】
図5及び図6において、シールリング61は、その幅の中央部が半径方向内側に窪んだ断面V字状に形成された弾性を有する環状のシール本体部61aと、このシール本体部61aの一側部から半径方向外側へ延びる環状プレート部61bと、この環状プレート部61bの外周端から環状プレート部61bに対してシール本体部61aとは反対方向(シール本体部61aの半径方向に直交する方向)に延びる円筒部61cとが一体成形されたインコネル製の部品である。
【0048】
例えば、シールリングを、シール本体部61aと円筒部61cのみから構成した場合には、シール本体部61aの一方の外縁が、タービンハウジング12の内周壁12bにおける先端部12pの端面12qと外周面12rとの角部に当たり、シール面が確保できなくなる可能性がある。そこで、シールリング61に、端面12qに沿って延びて端面12qに密着できる環状プレート部61bを加えている。
シール本体部61aは、第1実施形態(図1及び図2)に示したシールリング16と同一形状である。
【0049】
図5において、シールリング61のシール本体部61aは、タービンハウジング12の内周壁12bにおける先端部12pの端面12qと、ノズルプレート36のプレート部36aの側面36cとの間に圧縮された状態で配置され、シールリング61の環状プレート部61bは、先端部12pの端面12qに沿って延び、シールリング61の円筒部61cは、先端部12pの外周面12rに嵌合することでシールリング61の半径方向に規制されている。
【0050】
図7に示すように、比較例のターボチャージャ100では、タービンハウジング101の内周壁101aの先端部101b、詳しくは先端部101bの端面101cと、ノズル組立体102を構成するノズルプレート103のプレート部103aの側面103bとの間に、幅の中央部が半径方向内側に窪んだ断面V字状に形成された弾性を有するシールリング104が圧縮された状態で配置され、シールリング104の内周部がノズルプレート103の内周側に設けられた筒状部103cによって半径方向に規制されている。なお、符号106はタービンハウジング101に回転自在に収容されたタービンホイールである。
【0051】
以上に述べた比較例のシールリング104の組付け要領を次に説明する。
図8の白抜き矢印で示すように、タービンハウジング101の内周壁101aの先端部101bを上にして配置し、この先端部101bにシールリング104を載置し、次に、シールリング104に上から被せるようにノズル組立体102(ここでは、ノズルプレート103のみ図示)をタービンハウジング101に載置する。
【0052】
以上の工程において、内周壁101aの先端部101bにシールリング104を載置するときに、シールリング104の半径方向の規制が行われないので、シールリング104が先端部101bに対して大きく偏心したり、シールリング104が先端部101bから脱落することがあり、次工程でのノズル組立体102の組付けが出来なくなる。
【0053】
これに対して本実施形態では、図3(b)に示したように、シールリング16が、タービンハウジング12の内周壁12bに規制されながら所定の位置に組付けられるので、ターボチャージャの組立工程を問題なくスムーズに進行させることができる。
【0054】
次に、シールリング104に対する他部品の影響について説明する。
図9に示すように、ターボチャージャ内に流れる排気ガスによってターボチャージャ内が高温になると、ノズルプレート103は、例えば、筒状部103cが二点鎖線で示す位置まで熱変形する。
【0055】
シールリング104は、その内周部がノズルプレート103の筒状部103cで規制されているため、筒状部103cが熱変形して外径が大きくなると、筒状部103cがシールリング104の内周部に干渉してシールリング104を変形させることになる。
シールリング104の変形が進めば、弾性変形から塑性変形に至り、シールリング104によるシール性が損なわれることになる。
【0056】
これに対して本実施形態では、図4(a)に示したように、シールリング16は、その外周部が環状凸部12jで規制されているため、シールリング16の内周部とノズルプレート36の筒状部36bとの隙間を大きく確保することが可能であり、筒状部36bが熱変形して外径が大きくなったとしても、シールリング16はその影響を受けることはない。
従って、シールリング16の変形を防止することができ、シール性を維持することができる。
【0057】
また、図9において、タービンホイール106の外径が変更され、これに伴ってノズルプレート103の筒状部103cの外径が変更されて大きくなった場合に、シールリング104の内周部よりも筒状部103cの外径が大きくなると、シールリング104を筒状部103cに嵌合することが出来なくなる。従って、タービンホイール106の外径に応じて、内周部の内径の異なるシールリング104を準備しなければならず、コストが嵩む。
【0058】
これに対して本実施形態では、図4(a),(b)に示したように、ノズルプレート52の筒状部52bの外径D2が大きくなっても、シールリング16は、その内周部が半径方向に規制されていないので、筒状部52bの外径変化の影響を受けない。従って、ターボチャージャの機種等が異なる場合でも、シールリング16を共用化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、タービンハウジングに、シールリングの外周部を規制する内周壁が設けられたターボチャージャに好適である。
【符号の説明】
【0060】
10 ターボチャージャ
11 タービンホイール
12 タービンハウジング
12b 内周壁
12h,12p 先端部
12j,12r 半径方向規制部(環状凸部、外周面)
15 ノズル組立体
16,61 シールリング
61a シール本体部
61b 環状プレート部
61c 円筒部
31 ノズルマウント
32a ノズルベーン
36 ノズルプレート
36c ノズルプレートの側面
41 排気ガス通路
42 スクロール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを、タービンハウジングに形成されたスクロール及びこのスクロールの内周側に設けられた複数のノズルベーンを通じて、該ノズルベーンの内周側に配置されたタービンホイールに作用させるターボチャージャであって、
前記スクロールの内周側に、前記ノズルベーンを挟むように該ノズルベーンを回動自在に支持する環状のノズルマウントと該ノズルマウントに取付けられた環状のノズルプレートとを配置することで排気ガス通路を形成し、前記ノズルプレートの側面に対向して前記スクロールの内壁を形成する前記タービンハウジングの内周壁が設けられ、これらのノズルプレートの側面とタービンハウジングの内周壁との間を密封するように環状のシールリングが組付けられるターボチャージャのシールリング組付け方法において、
前記タービンハウジングの内周壁の先端部に、前記シールリングの位置を半径方向に規制する半径方向規制部が設けられ、前記シールリングの外周部が前記半径方向規制部で規制されるように前記ノズルプレートの側面と前記タービンハウジングの内周壁との間に前記シールリングが組付けられることを特徴とするターボチャージャのシールリング組付け方法。
【請求項2】
前記シールリングを内周壁の先端部の前記半径方向規制部の内周側に載置し、その後、前記シールリングの上方から前記ノズルプレートを含んで構成されるノズル組立体を被せて前記タービンハウジングの上にノズル組立体を載置するようにして組付けることを特徴とする請求項1記載のターボチャージャのシールリング組付け方法。
【請求項3】
タービンハウジングに形成されたスクロールと、該スクロールの内周側に設けられた複数のノズルベーンと、該ノズルベーンの内周側に配置されたタービンホイールと、前記スクロールの内周側に、前記ノズルベーンを挟むように該ノズルベーンを回動自在に支持する環状のノズルマウントと該ノズルマウントに取付けられた環状のノズルプレートと、前記ノズルプレートの側面に対向して前記スクロールの内壁を形成する前記タービンハウジングの内周壁が設けられ、前記ノズルプレートの側面とタービンハウジングの前記内周壁との間を密封するように配設される環状のシールリングと、
前記タービンハウジングの内周壁の先端部に設けられ、前記シールリングの外周部を半径方向に規制する半径方向規制部と、を備え、
前記シールリングは、その外周部が前記半径方向規制部で規制されるように前記ノズルプレートの側面と前記タービンハウジングの内周壁との間に組付けられていることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項4】
前記半径方向規制部は、前記タービンハウジングの内周壁の先端部から該タービンホイールの回転軸に沿う方向に突出する環状凸部であることを特徴とする請求項3記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記半径方向規制部は、前記タービンハウジングの内周壁の先端部に設けられた外周面であることを特徴とする請求項3記載のターボチャージャ。
【請求項6】
前記シールリングは、その要部の幅の中央部が半径方向内側に窪んだ断面V字状に形成されていることを特徴とする請求項4又は5記載のターボチャージャ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−68153(P2013−68153A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206987(P2011−206987)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【特許番号】特許第5118767号(P5118767)
【特許公報発行日】平成25年1月16日(2013.1.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】