説明

ターボチャージャ過熱防護装置および該ターボチャージャ過熱防護装置を製造するための方法

【課題】応答時間を短縮し、より少ない温度要求と同時により高い振動負荷に耐えられるより簡単な構成を提供する。
【解決手段】ターボチャージャ過熱防護装置1が、金属ハウジングを有しており、該金属ハウジングが、無機絶縁導体2と、容器4と、それぞれ部分的に無機絶縁導体2と容器4とに越えて突出したスリーブ3とを備えており、容器4内でセラミック封止材料13内に皮膜抵抗器5が完全に埋め込まれており、該皮膜抵抗器5が、接続線材8を備えており、該接続線材8が、無機絶縁導体2の心線11に複数のコイルばね10を介して接続されている。コイルばね10の主軸線21相互の間隔23が、最大でコイルばねの直径22に等しい大きさに寸法設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ばね弾性的に支承される測定抵抗器であって、該測定抵抗器が、スリーブの内部でセラミック封止材料内に埋め込まれている形式の測定抵抗器に関する。
【0002】
特に本発明は、ディーゼルエンジンの、−50〜+950℃の温度範囲に耐えられるターボチャージャの過熱を回避するためのターボチャージャ過熱防護装置であって、該ターボチャージャ過熱防護装置が、金属ハウジングを有しており、該金属ハウジングが、無機絶縁導体(MILとも呼ばれる)と、容器と、それぞれ部分的に無機絶縁導体と容器とに越えて突出した、つまり、被さったスリーブとを備えており、容器内でセラミック封止材料内に温度測定素子が完全に埋め込まれており、該温度測定素子が、接続線材を備えた測定抵抗器またはサーミスタであり、接続線材が、無機絶縁導体の心線に複数のコイルばねを介して接続されている形式のターボチャージャ過熱防護装置に関する。
【0003】
さらに、本発明は、測定抵抗器としての温度測定素子を容器の内部にセラミック封止材料によって完全に埋め込み、温度測定素子の接続線材を、容器と、該容器内に位置する接続線材との間の相対的な長さ変化を補償するそれぞれ1つのコイルばねに接続して、ターボチャージャ過熱防護装置を製造するための方法に関する。
【0004】
さらに、本発明は、前述した形式のターボチャージャ過熱防護装置の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
温度測定素子として、測定抵抗器、特に皮膜抵抗器またはサーミスタを使用することができる。皮膜抵抗器は、基板に設けられた薄膜導体路に対する接続線材と、この接続線材と導体路との接続範囲を覆うガラス製の張力緩和部とを備えたチップである。皮膜抵抗器は、リーフレット「HSG−W2/D」(Heraeus社)に基づき公知である。
【0006】
ドイツ民主共和国特許第72602号明細書には、熱電対線材が螺旋体として形成されることによって、熱電対線材をばね弾性的に支承することが教示されている。弾性的な螺旋体の配置によって、熱電対線材が張力緩和され、これに伴って、機械的な過負荷、特に保護管と、両側で締め込まれた熱電対線材との間の相対的な長さ変化時に生じる破折が阻止される。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006034246号明細書には、皮膜抵抗器の接続線材における補償曲げ部が開示されている。露出した接続線材は、ターボチャージャの熱的なかつ機械的な高い負荷に耐えられず、補償曲げ部の範囲で破折される。
【0008】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007010403号明細書には、ターボチャージャに適した構造が開示されている。この構造では、接続線材が、それぞれ1つのばねに接続されている。このばねは各給電線材に差し被せられている。この給電線材に差し被せられたコイルばねは、軸としての給電線路によって安定化させられ、900℃〜1200℃の範囲内で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ民主共和国特許第72602号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102006034246号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007010403号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】リーフレット「HSG−W2/D」(Heraeus社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、応答時間を短縮し、より少ない温度要求と同時により高い振動負荷に耐えられるより簡単な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために本発明に係る第1のターボチャージャ過熱防護装置によれば、コイルばねの主軸線相互の間隔が、最大でコイルばねの直径に等しい大きさに寸法設定されている。
【0013】
本発明に係るターボチャージャ過熱防護装置の有利な態様によれば、コイルばねが、その長手方向において相並んでずらされて配置されているかまたはコイルばねにおいて、巻条が、コイルばねの半分にだけ位置しており、1つのコイルばねの前記巻条が、長手方向において別のコイルばねの前記巻条に対してずらされて配置されている。
【0014】
本発明に係るターボチャージャ過熱防護装置の有利な態様によれば、コイルばねが、軸に差し被せられていない。
【0015】
本発明に係るターボチャージャ過熱防護装置の有利な態様によれば、基板を有する温度測定素子をばね弾性的に支承するためのコイルばねの螺旋状の巻成範囲が、前記基板の基板長さよりも短くかつ前記基板の基板幅よりも長く寸法設定されている。
【0016】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係る第2のターボチャージャ過熱防護装置によれば、コイルばねの主軸線を中心として螺旋状に巻成された範囲が、それぞれ対向する線の延伸された範囲に向かい合って配置されているか、または基板を有する温度測定素子の接続線材が、基板の基板長さよりも短くかつ基板の基板幅よりも長く寸法設定されているか、または温度測定素子をばね弾性的に支承するためのコイルばねが、基板の基板幅よりも短くかつ基板の基板幅よりも長く形成されている。
【0017】
本発明に係るターボチャージャ過熱防護装置の有利な態様によれば、温度測定素子が、接続線材を備えた測定抵抗器または皮膜抵抗器またはサーミスタである。
【0018】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係る方法によれば、コイルばねの巻条が、コイルばねの半分にだけ位置しており、1つのコイルばねの前記巻条を長手方向において別のコイルばねの前記巻条に対してずらして配置するようにコイルばねを組み付ける。
【0019】
本発明に係る方法の有利な態様によれば、前記測定抵抗器が、皮膜抵抗器またはサーミスタとして形成されていている。
【0020】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係る第1の使用によれば、ターボチャージャ過熱防護装置を850℃〜950℃の最大の排ガス温度を伴うエンジンに対して使用する。
【0021】
さらに、前述した課題を解決するために本発明に係る第2の使用によれば、ターボチャージャ過熱防護装置をディーゼルエンジンに対して使用する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コイルばねの螺旋体をより良好に互いに間隔を置いて配置することが望ましく、また、接続線材の破折の危険は、皮膜抵抗器の寸法の増加および皮膜抵抗器の基板の幅の増加につれて高くなり、コイルばねの長さの増加につれて低くなるということが認識された。前述した課題の解決手段では、特に皮膜抵抗器が使用される。この皮膜抵抗器の接続線材は、皮膜抵抗器の基板長さよりも短くかつ皮膜抵抗器の基板幅よりも長く寸法設定されている。特に皮膜抵抗器をばね弾性的に支承するためのコイルばねも同じく皮膜抵抗器の基板長さよりも短くかつ皮膜抵抗器の基板幅よりも長く寸法設定されている。この場合、基板長さは基板幅よりも大きく形成されている。
【0023】
前述した課題を解決するために、本発明によれば、ばねの螺旋体が接触し得ないようにばねが配置される。これによって、案内軸を中心とした螺旋体の手間のかかる配置が不要となる。特に本発明におけるばね範囲は、ばね相互の配置に関して、従来公知の鏡像対称性と異なり、螺旋状の巻成範囲の点対称性を有している。それぞれ異なる2つの螺旋体、つまり、点対称的な2つの螺旋体が使用される場合には、螺旋体が互いに点対称的に配置されてもよい。有利には、同構造のばねが使用される。この結果、螺旋体が螺旋状の巻成範囲の点対称的な配置において互いに回転対称的に配置される。ばねを取り囲んで存在して、スリーブによって仕切られた、測定先端部内の封止材料と無機絶縁導体(MIL)との間の空気室は、より高い測定精度を提供する。この測定精度は、空気室により達せされる、封止材料と無機絶縁導体との間の熱的な分離に基づいている。ばね相互の螺旋状に巻成された範囲の点対称的な配置によって、ばねの主軸線の間での螺旋状に巻成された範囲のオーバラップ(重畳)が可能となる。
【0024】
前述した課題の解決手段は独立請求項に記載してあり、本発明の有利な態様は従属請求項に記載してある。
【0025】
すなわち、本発明は、ディーゼルエンジンの、−50〜+950℃の温度範囲に耐えられるターボチャージャの過熱を回避するためのターボチャージャ過熱防護装置であって、このターボチャージャ過熱防護装置が、金属ハウジングを有しており、この金属ハウジングが、無機絶縁導体と、容器と、それぞれ部分的に無機絶縁導体と容器とに越えて突出した、つまり、被さったスリーブとを備えており、容器内でセラミック封止材料内に温度測定素子が完全に埋め込まれており、この温度測定素子が、接続線材を備えており、この接続線材が、無機絶縁導体の心線に複数のコイルばねを介して接続されている形式のターボチャージャ過熱防護装置において、コイルばねの主軸線相互の間隔が、最大でコイルばねの直径に等しい大きさに寸法設定されていることを特徴としている。有利には、ターボチャージャ過熱防護装置は、コイルばねが、その長手方向において相並んでずらされて配置されているかまたはコイルばねにおいて、巻条が、コイルばねの半分にだけ位置しており、1つのコイルばねの巻条が、長手方向において別のコイルばねの巻条に対してずらされて配置されていることを特徴としていてよい。有利には、コイルばねが、軸に差し被せられていなくてよい。別の有利な態様は、基板を有する温度測定素子をばね弾性的に支承するためのコイルばねの螺旋状の巻成範囲が、基板の基板長さよりも短くかつ基板の基板幅よりも長く寸法設定されていることにある。
【0026】
本発明に係るターボチャージャ過熱防護装置の別の態様または上述したターボチャージャ過熱防護装置に相俟った有利な態様は、ディーゼルエンジンの、−50〜+950℃の温度範囲に耐えられるターボチャージャの過熱を回避するためのターボチャージャ過熱防護装置であって、このターボチャージャ過熱防護装置が、金属ハウジングを有しており、この金属ハウジングが、無機絶縁導体と、容器と、それぞれ部分的に無機絶縁導体と容器とに越えて突出した、つまり、被さったスリーブとを備えており、容器内でセラミック封止材料内に温度測定素子が完全に埋め込まれており、この温度測定素子が、接続線材を備えており、この接続線材が、無機絶縁導体の心線に複数のコイルばねを介して接続されている形式のターボチャージャ過熱防護装置において、コイルばねの主軸線を中心として螺旋状に巻成された範囲が、それぞれ対向する線の延伸された範囲に向かい合って配置されているか、または基板を有する温度測定素子の接続線材が、基板の基板長さよりも短くかつ基板の基板幅よりも長く寸法設定されているか、または温度測定素子をばね弾性的に支承するためのコイルばねが、基板の基板幅よりも短くかつ基板の基板幅よりも長く形成されていることを特徴としている。
【0027】
有利には、温度測定素子が、接続線材を備えた測定抵抗器または特に皮膜抵抗器またはサーミスタである。
【0028】
測定抵抗器、特に皮膜抵抗器として形成されていてもよいし、サーミスタとして形成されていてもよい温度測定素子を容器の内部にセラミック封止材料によって完全に埋め込み、温度測定素子の接続線材を、容器と、この容器内に位置する接続線材との間の相対的な長さ変化を補償するそれぞれ1つのコイルばねに接続して、ターボチャージャ過熱防護装置を製造するための本発明に係る方法は、コイルばねの巻条が、コイルばねの半分にだけ位置しており、1つのコイルばねの巻条を長手方向において別のコイルばねの巻条に対してずらして配置するようにコイルばねを組み付けることを特徴としている。
【0029】
また、本発明は、上述したターボチャージャ過熱防護装置の使用において、ターボチャージャ過熱防護装置を850℃〜950℃の最大の排ガス温度を伴うエンジンに対して使用しならびにディーゼルエンジンに対して使用することを特徴としている。
【0030】
すなわち、前述した課題の解決手段として、ばね軸線相互の間隔が、最大で螺旋体の直径に等しい大きさに寸法設定されていることが重要となる。
【0031】
両コイルばねがその長手方向において相並んでずらされて配置されていると、空気室がより効率よく使用される。特にこの空気室が減少させられ、これに伴って、測定精度および応答時間が改善される。空気室の減少によって、ニッケルの節約、特により細い無機絶縁導体、たとえば直径が4.5mmから3mmに縮径された無機絶縁導体が可能となる。また、さらに、この無機絶縁導体の短縮が行われる。ばねの半分にだけ位置する巻条を備えたコイルばねでは、1つのばねの巻条が長手方向において別のばねの巻条に対してずらされて配置されている。
【0032】
ディーゼルエンジンの、−50〜+950℃の温度範囲に耐えられるターボチャージャの過熱を回避するためには、無機絶縁導体と、容器と、それぞれ部分的に無機絶縁導体と容器とに越えて突出した、つまり、被さったスリーブとから成る金属ハウジングを有するターボチャージャ過熱防護装置が提供される。容器内では、セラミック封止材料内に温度測定素子が完全に埋め込まれている。この温度測定素子は、接続線材を備えた測定抵抗器、たとえば皮膜抵抗器またはサーミスタである。両接続線材は無機絶縁導体の心線にコイルばねを介して接続されている。本発明によれば、コイルばねの主軸線を中心として螺旋状に巻成された範囲が、それぞれ対向する線の延伸された範囲に向かい合って配置されている。
【0033】
有利には、巻条がばねの半分にだけ位置している同構造の2つのコイルばねは、一方のばねの巻条が長手方向において他方のばねの巻条に対してずらされて配置されるように組み付けられる。1〜4mm、特に2〜3mmの巻条が延びる、5〜10mm、特に7〜8の間の長さを備えたばねが有利であると判った。
【0034】
有利には、温度測定素子として使用される皮膜抵抗器の基板の幅が2mm未満に寸法設定されている。2mm以降の幅では、破折の危険が高まる。現在、幅が1mmを下回ると、大量生産に対して処理に一層過度に手間がかかる。1.2〜1.8mm、特に1.4〜1.6mmの間の幅が有利であると判った。基板の長さは基板の幅の少なくとも1.5倍、特に少なくとも2倍であることが望ましい。長さと幅との比が2.5〜3であると有利であると判った。皮膜抵抗器の長さは3〜7mm、特に4〜6mmに寸法設定されており、皮膜抵抗器の接続線材の長さは1〜5mm、特に1.5mm〜3.5mmに寸法設定されている。1mm未満の長さを備えた接続線材は、大量生産に対して一層過度に手間がかかる製造ステップを意味している。本発明によって短く形成可能な3mm未満、特に2mm未満の長さを備えた接続線材は高価値の金属、特に白金を節約する。相並んで配置されたばねの短絡の危険は、短いばねによって減少させられる。この短いばねは軸に案内される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ターボチャージャ過熱防護装置の縦断面図である。
【図2】図1に示したばね範囲γの拡大図である。
【図3】ばね範囲γの横断面図である。
【図4】皮膜抵抗器の平面図である。
【図5】皮膜抵抗器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0037】
図1には、ターボチャージャ過熱防護装置としての温度センサ1が示してある。この温度センサ1の測定先端部は、エンジン構造の要求に対応して適合させられてよく、特に曲げ加工されてよい。この曲げ加工可能な測定先端部を備えたターボチャージャ過熱防護装置は、曲げ加工可能な無機絶縁導体2を有している。この無機絶縁導体2はスリーブ3を介して容器4に接続されている。この容器4内には、温度測定素子5としての皮膜抵抗器が防護されて配置されている。リーフレット「Platin Duennschichtsensoren,die ueberzeugen」(Heraeus Sensor Technology GmbH社、2006年4月)に基づく、900℃の温度に耐えられる皮膜抵抗器5によって、−40℃〜900℃の温度範囲に対する高温センサ素子が提供される。現在、ディーゼルターボチャージャに対する標準的な使用温度は850℃を上回っている。
【0038】
図4および図5に温度測定素子として示した皮膜抵抗器5は、セラミック基板6に被着されたメアンダ状の白金薄膜7を有している。セラミック基板6には、白金線材としての接続線材8が液滴状の位置固定部9によって張力緩和されて固定されている。
【0039】
図2によれば、接続線材8が、それぞれ1つのコイルばね10に接続されている。このコイルばね10の主軸線21を中心として螺旋状に巻成された範囲は、それぞれ対向する線の延伸された範囲に向かい合って配置されていて、一方の端部において、それぞれ無機絶縁導体2の心線11に接続されている。皮膜抵抗器5と給電ケーブル12とは、少なくとも部分的に皮膜抵抗器5と給電ケーブル12との間において、心線11が無機絶縁導体2の無機絶縁体から、皮膜抵抗器5に向けられた端部で進出していて、それぞれ1つのコイルばね10に電気的にかつ機械的に接続されていることによって接続される。
【0040】
皮膜抵抗器5は、たとえばニッケル−クロム鋼(1.4845)(Ni:19〜21質量%、Cr:24〜26質量%、Mn:2質量%以下、Si:1.5質量%以下、残りはFe)から成る金属製の容器4内のセラミック封止材料13内に埋め込まれ、成形されてコイルばね10にされた、たとえば80質量%のニッケルおよび20質量%のクロムを含んだニッケル−クロム鋼(2.4869)から成る0.25mmの太さの給電線材によって、無機絶縁導体2の約0.5mmの太さの心線11に電気的に接続される。たとえばニッケル−クロム鋼(1.4845)(Ni:19〜21質量%、Cr:24〜26質量%、Mn:2質量%以下、Si:1.5質量%以下、残りはFe)から形成された心線11は、高圧縮された無機質の粉末14内に埋め込まれている。この粉末14は、ニッケル−クロム鋼(1.4845)(Ni:19〜21質量%、Cr:24〜26質量%、Mn:2質量%以下、Si:1.5質量%以下、残りはFe)から成る保護用の金属シース15によって取り囲まれている。
【0041】
無機絶縁導体2の心線11は、皮膜抵抗器5と反対側の端部で接続ケーブル12の0.6mmの太さの線路に電気的に接続されていて、図1によれば、管16内で機械的に互いに接続される。この管16は接続ケーブル12を無機絶縁導体2の金属シース15に接続しており、これによって、必要となるシール性と機械的な強度とが得られる。コイルばね10に対する測定抵抗器5の接続線材8の電気的なならびに機械的な接続部は、レーザ溶接によって形成される。溶接部17はセラミック封止材料13内に完全に埋め込まれている。この封止材料13は、皮膜抵抗器5と、その接続線材8だけでなく、後続のコイルばね10に対する溶接部17をも、車両によって引き起こされる衝撃および振動に対して防護している。コイルばね10と無機絶縁導体2の心線11との間の接続部は、レーザ溶接または抵抗溶接によって形成される。
【0042】
コイルばね10の、ずらされて配置された螺旋状に巻成された範囲(巻条)は、封止材料13内に埋め込まれておらず、これによって、自由に可動であり、給電線材の破折を回避する。この破折は、センサの種々異なる材料、たとえばセラミック封止材料13、金属製の線材8または金属製の容器4のそれぞれ異なる膨張係数によって生じる恐れがあり、その結果、センサ信号の遮断ひいては最終的にセンサの故障を招く恐れがある。
【0043】
図2によれば、容器4と無機絶縁導体2との間のガス密な機械的な接続部が、金属シース15でレーザ溶接によって提供される。スリーブ3による容器4と無機絶縁導体2とのガス密な接続部は、測定素子5と、コイルばね10と、セラミック封止材料13とを備えた内部のセンサ構造体を内燃機関の排ガスの侵食性の成分に対して防護する。
【0044】
図3に示したコイルばね10の主軸線21を中心とした螺旋状に巻成された範囲(巻条)を、それぞれ対向する線の延伸された範囲に向かい合わせて隣接させて配置することによって、センサの小型化が可能となり、これに伴って、30℃〜330℃の急激な温度変化および11m/sのガス速度において約5秒の応答時間が達成される。これは、従来の閉鎖された温度センサに対して約20%の改善に相当している。また、図3には、コイルばね10の直径22ならびに主軸線21相互の間隔23が示してある。この直径22と間隔23とのサイズ比(主軸線21の間隔23はコイルばね10の直径22よりも小さく寸法設定されている)から、配置のコンパクト性が明らかである。
【0045】
スリーブ3によって規定された、無機絶縁導体2と、封止材料13で部分的に充填された容器4との間の空気室20は、応答時間を付加的に改善する。なぜならば、測定素子5を内蔵した高温の容器4から無機絶縁導体2、すなわち、たいてい温度センサのより低温の端部への熱エネルギの放出が著しく減少させられるからである。このためには、セラミック絶縁材料、たとえば酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムと比較した空気の低い熱伝導率だけでなく、少ない熱容量も重要となる。
【符号の説明】
【0046】
1 温度センサ
2 無機絶縁導体
3 スリーブ
4 容器
5 皮膜抵抗器
6 セラミック基板
7 白金薄膜
8 接続線材
9 位置固定部
10 コイルばね
11 心線
12 給電ケーブル
13 セラミック封止材料
14 粉末
15 金属シース
16 管
17 溶接部
20 空気室
21 主軸線
22 直径
23 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの、−50〜+950℃の温度範囲に耐えられるターボチャージャの過熱を回避するためのターボチャージャ過熱防護装置(1)であって、該ターボチャージャ過熱防護装置(1)が、金属ハウジングを有しており、該金属ハウジングが、無機絶縁導体(2)と、容器(4)と、それぞれ部分的に無機絶縁導体(2)と容器(4)とに越えて突出したスリーブ(3)とを備えており、容器(4)内でセラミック封止材料(13)内に温度測定素子(5)が完全に埋め込まれており、該温度測定素子(5)が、接続線材(8)を備えており、該接続線材(8)が、無機絶縁導体(2)の心線(11)に複数のコイルばね(10)を介して接続されている形式のターボチャージャ過熱防護装置において、コイルばね(10)の主軸線(21)相互の間隔(23)が、最大でコイルばね(10)の直径(22)に等しい大きさに寸法設定されていることを特徴とする、ターボチャージャ過熱防護装置。
【請求項2】
コイルばね(10)が、その長手方向において相並んでずらされて配置されているかまたはコイルばね(10)において、巻条が、コイルばね(10)の半分にだけ位置しており、1つのコイルばね(10)の前記巻条が、長手方向において別のコイルばね(10)の前記巻条に対してずらされて配置されている、請求項1記載のターボチャージャ過熱防護装置。
【請求項3】
コイルばね(10)が、軸に差し被せられていない、請求項1または2記載のターボチャージャ過熱防護装置。
【請求項4】
基板(6)を有する温度測定素子(5)をばね弾性的に支承するためのコイルばね(10)の螺旋状の巻成範囲が、前記基板の基板長さよりも短くかつ前記基板の基板幅よりも長く寸法設定されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のターボチャージャ過熱防護装置。
【請求項5】
ディーゼルエンジンの、−50〜+950℃の温度範囲に耐えられるターボチャージャの過熱を回避するためのターボチャージャ過熱防護装置(1)であって、該ターボチャージャ過熱防護装置(1)が、金属ハウジングを有しており、該金属ハウジングが、無機絶縁導体(2)と、容器(4)と、それぞれ部分的に無機絶縁導体(2)と容器(4)とに越えて突出したスリーブ(3)とを備えており、容器(4)内でセラミック封止材料(13)内に温度測定素子(5)が完全に埋め込まれており、該温度測定素子(5)が、接続線材(8)を備えており、該接続線材(8)が、無機絶縁導体(2)の心線(11)に複数のコイルばね(10)を介して接続されている形式のターボチャージャ過熱防護装置において、コイルばね(10)の主軸線(21)を中心として螺旋状に巻成された範囲が、それぞれ対向する線の延伸された範囲に向かい合って配置されているか、または基板(6)を有する温度測定素子(5)の接続線材(8)が、基板(6)の基板長さよりも短くかつ基板(6)の基板幅よりも長く寸法設定されているか、または温度測定素子(5)をばね弾性的に支承するためのコイルばね(10)が、基板(6)の基板幅よりも短くかつ基板(6)の基板幅よりも長く形成されていることを特徴とする、ターボチャージャ過熱防護装置。
【請求項6】
温度測定素子(5)が、接続線材(8)を備えた測定抵抗器または皮膜抵抗器またはサーミスタである、請求項1から5までのいずれか1項記載のターボチャージャ過熱防護装置。
【請求項7】
測定抵抗器としての温度測定素子(5)を容器(4)の内部にセラミック封止材料(13)によって完全に埋め込み、温度測定素子(5)の接続線材(8)を、容器(4)と、該容器(4)内に位置する接続線材(8)との間の相対的な長さ変化を補償するそれぞれ1つのコイルばね(10)に接続して、ターボチャージャ過熱防護装置(1)を製造するための方法において、コイルばね(10)の巻条が、コイルばね(10)の半分にだけ位置しており、1つのコイルばね(10)の前記巻条を長手方向において別のコイルばね(10)の前記巻条に対してずらして配置するようにコイルばね(10)を組み付けることを特徴とする、ターボチャージャ過熱防護装置を製造するための方法。
【請求項8】
前記測定抵抗器が、皮膜抵抗器またはサーミスタとして形成されていている、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか1項記載のターボチャージャ過熱防護装置(1)の使用において、ターボチャージャ過熱防護装置(1)を850℃〜950℃の最大の排ガス温度を伴うエンジンに対して使用することを特徴とする、ターボチャージャ過熱防護装置の使用。
【請求項10】
請求項1から6までのいずれか1項記載のターボチャージャ過熱防護装置(1)の使用において、ターボチャージャ過熱防護装置(1)をディーゼルエンジンに対して使用することを特徴とする、ターボチャージャ過熱防護装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−98291(P2012−98291A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242125(P2011−242125)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(502393969)ヘレーウス ゼンゾール テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (13)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Sensor Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Heraeusstrasse 12−14, D−63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】