説明

ターボファン及びターボシャフトエンジン用の一体型ブーストキャビティリング発電機

【課題】ガスタービンエンジンから電力を抽出する発電機を空間効率良く配置する。
【解決手段】発電機は、ガスタービンエンジンのブースタキャビティ内に配置された固定子部24と回転子部22とを含む。回転子部は固定子部の周りに回転可能に支持され、固定子部はブースタキャビティ内に堅固に支持され、回転子部は固定子部に対向して円周方向に配列された複数の極を有する。固定子部は固定子部に隣接した固定子部の外周の周りに配置された複数のコイル部28を含む。固定子部及び回転子部は、回転子部がガスタービンエンジンのシャフトによって固定子部の周りを回転してコイル部に電流を誘導する場合に電力を発生するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボファン及びターボシャフトエンジンから電力を発生するシステムに関し、より詳細には、ターボファン航空機エンジンのブーストキャビティ内に一体形成された発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは通常、一つ以上の圧縮機と、流れ方向に燃焼器と、高圧及び低圧タービンとを含む。このようなエンジン構成部材は直列に流れ連通して配列され、環状外部ケーシング内のエンジンの縦軸中心線の周りに配置される。圧縮機は駆動時、それぞれのタービンと圧縮機空気によって駆動される。圧縮機空気は燃料と混合され、高温燃焼ガスを発生する燃焼器において点火する。燃焼ガスは、圧縮機を駆動し、補助出力動力を生成する高温圧縮ガスにより発生したエネルギーを抽出する高圧及び低圧タービンを通過する。
【0003】
各種タイプのターボファンエンジンは、圧縮機の上流に配置されたブースタ部を含む。ブースタ部は通常、大きな環状キャビティを含む。エンジン動力は、飛行時に航空機に動力を供給するスラストまたはシャフト動力のいずれかとして伝達される。例えば、バイパスターボファンエンジンにおけるファン回転子、またはガスタービンプロペラエンジンにおけるプロペラのような他の回転負荷装置において、動力はそれぞれのファン回転子及びプロペラを駆動する高圧及び低圧タービンから抽出される。
【0004】
ターボファンエンジンにおける個別の構成部材には、駆動中、異なる動力パラメータが必要であることは公知である。例えば、ファン回転速度は先端速度にある程度制限され、またファン直径が非常に大きいので、回転速度は必然的に非常に遅くなる。一方、コア圧縮機は、先端直径が非常に小さく、より高速で駆動することができる。よって、航空機ガスタービンエンジンにおいて、独立的な動力伝達装置を有する別個の高圧及び低圧タービンが、ファン及びコア圧縮機には必要である。また、タービンの回転速度は速ければ速いほど効率的なので、ファンを駆動する低速タービンには必要な動力を抽出するための更なるステージが必要である。
【0005】
多くの新規な航空機システムは、現在の航空機システムよりも大きい電気負荷を許容できるよう設計されている。現在開発中の民間航空機の電気システムの仕様においては、最高で現在の民間航空機の二倍の電力が必要となり得る。このような増大する電力要求には、航空機に動力を供給するエンジンから機械力を抽出することにより対応しなければならない。相対的に小さな動力で航空機エンジンを駆動する場合に、例えば高所からのアイドリング降下の間、エンジン機械力からこのような追加電力を抽出することにより、エンジン駆動能力が低下する可能性がある。
【0006】
電力は通常、ガスタービンエンジンにおいて高圧(HP)エンジンスプールから抽出される。HPエンジンスプールを比較的高速で駆動することにより、エンジンに連結された発電機を駆動するための理想的な機械力供給源が提供される。しかし、発電機を駆動するには、HPエンジンスプールのみに依存するよりも、エンジン内の追加供給源から動力を抽出することが望ましい。低圧(LP)エンジンスプールは、動力伝達の代替供給源を提供するが、低速発電機はより高速駆動する類似定格発電機より大きいことが多く、比較的低速のLPエンジンスプールは一般的にギアボックスを必要とする。ガスタービンエンジンのブーストキャビティには、インサイドアウト発電機を収容可能な空間があるが、ブースト部は、LPエンジンスプール速度で回転する。
【0007】
また、エンジン室内部の大部分の利用可能空間は使用されるので、ガスタービンエンジン内部に発電機のような構成部材を配置するための空間を更に設けることは困難である。
【0008】
ガスタービンエンジンにおいて、シャフト動力伝達用の発電機またはモータのいずれかとして駆動可能な機器を使用することは当業者に公知である。Hieldらは1997年12月9日に公布された米国特許第5,694,765号において、相対回転エンジンスプール間において動力を伝達するために駆動される伝達システムを含む、航空機用途の多重スプールガスタービンについて記述している。多くの実施例において、各シャフトは、ポンプまたはモータとして駆動可能な流れ変位機に関連し、また他の実施例においては、モータまたは発電機として駆動可能な電磁石誘導型機または永久磁石は、補助ギアボックスを経て流れ駆動ギアボックスに駆動的に連結される。しかし、Hieldらのシャフト動力伝達システムはあくまでも、ガスタービンエンジンが二つの独立的に回転可能な(すなわち、差動的に噛み合わされない)エンジンスプール間にシャフト動力を伝達するものであり、差動的に噛み合わされたガスタービンエンジンではない。
【0009】
Ragoらは、2005年5月24日に公布された米国特許第6,895,741号において、モータ/発電機調整メカニズムを有する差動式ギアガスタービンエンジンについて記述している。回転負荷装置は、タービンに駆動可能に結合された差動ギア装置によって駆動され、回転負荷装置を駆動するために他の回転負荷装置の一つから動力を選択的に受け入れる発電機またはモータなどの駆動機器により動力伝達が制御される。差動ギア装置システムは、タービン回転シャフトの先端に接合した太陽ギアと、タービンに対して第1出力回転速度において圧縮機を駆動する圧縮機に駆動可能に連結された太陽ギアと噛合する遊星ギア装置とを含む。遊星キャリアは、遊星ギア装置を駆動可能に支持するように配置されており、遊星ギア装置とともに回転可能である。遊星キャリアは、タービンに対して第2出力回転速度で回転運動における回転負荷装置を駆動する回転負荷装置に駆動可能に連結される。第1及び第2モータ/発電機メカニズムは、好ましくは永久磁石モータ/発電機である。
【特許文献1】米国特許第6,895,741B2号公報
【特許文献2】米国特許第5,694,765号公報
【特許文献3】米国特許第6,553,764B1号公報
【特許文献4】米国特許第6,434,936B1号公報
【特許文献5】米国特許第6,145,314号公報
【特許文献6】米国特許第5,881,559号公報
【特許文献7】米国特許第5,783,894号公報
【特許文献8】米国特許第5,760,507号公報
【特許文献9】米国特許第5,341,060号公報
【特許文献10】米国特許第5,214,333号公報
【特許文献11】米国特許第4,362,020号公報
【特許文献12】米国特許第3,629,632号公報
【特許文献13】米国特許第3,471,727号公報
【特許文献14】米国特許第3,452,225号公報
【特許文献15】米国特許第6,789,000B1号公報
【特許文献16】米国特許第6,924,574B2号公報
【特許文献17】米国特許出願公開第2005/0162030A1号
【特許文献18】ロシア特許第2,142,565C1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、高速回転ガスタービンエンジンのブーストキャビティ内に一体形成され、エンジン内の空気流を妨げない発電機が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ターボファンエンジン及びターボシャフトエンジンから電力を抽出する装置を開示する。発電機、好ましくは「インサイド−アウト」電磁石発電機構造体は、ブースタキャビティ内に配置される。「インサイドアウト」発電機は電力を発生させるために内側固定子部の周りを回転する外側回転子部を含む発電機である。発電機の「インサイドアウト」配列は、回転子部が固定子部の内側で回転する従来発電機の逆の配列である。
【0012】
一形態において、本発明は、ガスタービンエンジンから電力を抽出する発電機に関する。発電機は、ガスタービンエンジンのブースタキャビティ内に配置された固定子部と回転子部とを含む。回転子部は、固定子部の周りに回転可能に支持される。固定子部は、ブースタキャビティ内に堅固に支持される。回転子部は対向して円周方向に配列された複数の極を有する。固定子部は外周の周りに配置された隣接する複数のコイル部を含む。固定子部及び回転子部は、回転子部がガスタービンエンジンのシャフトによって固定子部の周りを回転してコイル部に電流を誘導する場合、電力を発生するよう構成される。
【0013】
他の形態において、本発明は、回転子部と固定子部とを含むガスタービンエンジンから電力を抽出する発電機に関する。回転子部と固定子部は、ガスタービンエンジンのブースタキャビティ内に配置され同軸に配列される。回転子部は対向して円周方向に配列された複数の極を含む。固定子部は隣接する複数のコイル部を含む。固定子部及び回転子部は、回転子部と固定子部の一つがガスタービンエンジンシャフトによって回転して、コイル部に電流を誘導する場合、電力を発生するよう構成される。
【0014】
また他の形態において、本発明は、環状外部ケーシング内のエンジンの縦方向シャフトの周りに配置され、直列に流れ連通して配列された高圧タービン及び低圧タービン、燃焼器、及び少なくとも一つの圧縮機を含むガスタービンエンジンに関する。少なくとも一つの圧縮機は、駆動時に高圧及び低圧タービンと圧縮機空気によって駆動される。ブースタ部は、圧縮機の上流に配置され低圧タービンに連結されたシャフトによって駆動される。ブースタ部は環状キャビティをさらに含む。発電機は、環状キャビティ内に配置される。発電機は回転子部と固定子部とを含み、回転子部と固定子部は環状キャビティ内に同軸に配列される。回転子部は対向して円周方向に配列された複数の極を含む。固定子部は隣接する複数のコイル部を含む。回転子部は環状キャビティ内に支持され、固定子部に対して回転可能であり、固定子部は環状キャビティ内に堅固に支持される。固定子部及び回転子部は、回転子部と固定子部の一つが低圧タービンシャフトによって他の一つに対して回転し、コイル部に電流を誘導する場合、電力を発生するよう構成される。
【0015】
本発明は、既存のターボファンエンジンまたはターボシャフトエンジンよりも、高い動力を抽出する能力を提供する。
【0016】
本発明は、エンジン性能に対する影響を最小限に抑え、かつエンジンからの動力抽出を制御することを可能にする。
【0017】
本発明は、エンジン流路を妨げないように、駆動シャフトに対して対称的なエンジン設計において発電機を一体形成することを可能にする。
【0018】
本発明は、エンジン内における未使用空間を活用して発電機を配置することを可能にする。
【0019】
本発明の更なる特長および利点は、後述の例示を用いて本発明の原理を説明する、好ましい実施形態の更に詳細な説明を添付図面を参照しながら示すことにより、明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1及び2において、符号10はタービンエンジンを示す。ブースタ部12は、ブースタ部ブレード16とエンジン10のシャフトの間にキャビティ14を含む。発電機20は、キャビティ14内部に配置されエンジン10から電力を抽出する。本発明において、発電機20は誘導機としてスイッチドリラクタンス機(SR)が好ましいが、これに限定されず、永久磁石機だけでなくその他の形態の電磁機も用いることができる。インサイドアウトスイッチドリラクタンスは、回転子部が冷却または界磁巻線を必要としないので、本発明には好適の電磁機である。本発明は以下にSR機構成関して説明されるが、同一の目的を達成するためにSR機の代わりに各種電磁機構成が用いられ得るということは、当業者には理解できよう。
【0021】
発電機20は「インサイド−アウト」構造を採用することが好ましい。「インサイド−アウト」構造は従来の発電機構成の配置を逆にした構成のことである。「インサイドアウト」構造とは、外周面上に配置され内部固定された固定子部の周りを回転して電力を発生させる回転子部のことである。
【0022】
図2において、発電機20は、ブースタキャビティ14内に一体形成された固定子部24及び回転子部22を含む。固定子部24は複数の固定コア26と固定コイル28とを含む。各固定コイル28は固定コア26の周りを囲んでいるか、または固定コア26に付着する。固定子部24は固定または静止位置で回転子内に同軸に配列されてブラケット30によって支持される環状構造である。固定子部は冷却手段(図示せず)、例えばオイル伝達冷却手段、オイルスプレー冷却手段、またはその他の既存の手段をさらに含むことができる。
【0023】
発電機20は、タービンエンジン、すなわちHPタービンによって駆動する発電機であり、既存のものにさらなる電力供給源を提供する。発電機の回転子部22は、ブースタ部12の内径において一体形成される。本発明において、各種電磁機の使用が可能である。発電機20は、発電機20を駆動するLPスプールの回転速度が比較的低速であることにより、長さ(すなわち、鉄心、端部巻線、及び発電機フレームのようなその他の必要アイテムの軸長さを含む発電機の全体軸長さ)に対して、高いアスペクト比をとる直径を有することが好ましい。外側回転子部22よりも発電機回転子部の先端速度は高速であり、そこから得られる出力動力は、発電機の直径の2乗に比例して増大する。
【0024】
インサイドアウト発電機構成は、スイッチドリラクタンス及び同期式リラクタンスのような堅固な機器に特に好適である。インサイドアウト発電機は、永久磁石機としてさらに構成することができる。回転子部22は、ブースト部12の内径に回転可能に一体形成され、冷却、巻線、及び交換またはスリップリングの必要性を大幅に解消する。
【0025】
ブーストキャビティにおいて「インサイド−アウト」発電機を配置することにより、エンジン構造への影響と空気流路の妨害を最小限に抑えつつ、LPタービンスプールから動力を抽出することが可能となる。ブースト部における回転子部の一体形成により、回転子冷却または巻線を全く行うことなく、機器を正常に駆動することが可能となる。
【0026】
本発明を所定の実施例に関連して説明してきたが、本発明の精神を逸脱することなく各種変更が可能であり、その構成部材に相当するものを代替的に利用できるということが当業者には明らかである。また、本発明の本質的な精神を逸脱することなく、様々な修正を特定状況または材料に加えることも可能である。よって本発明は、本発明を行うに最良の形態として示された特定の実施例に限定されることなく、添付の特許請求の範囲の精神に含まれるあらゆる実施例を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ガスターボシャフトエンジンのブーストキャビティ部の部分断面図である。
【図2】リング発電機の概略図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ガスタービンエンジン
12 ブースタ部
14 キャビティ
16 ブースタ部ブレード
20 発電機
22 回転子部
24 固定子部
26 固定コア
28 コイル部
30 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンから電力を抽出する発電機であって、
前記ガスタービンエンジン(10)のブースタキャビティ(14)内に配置された回転子部(22)と固定子部(24)を含み、
前記回転子部(22)は、前記固定子部(24)の周りに回転可能に支持され、
また前記固定子部(24)は、前記ブースタキャビティ(14)内に堅固に支持され;
前記回転子部(22)は、前記固定子部(24)に対向して円周方向に配列された複数の極を有し;
前記固定子部(24)は、前記固定子部(24)に隣接して前記固定子部(24)の外周の周りに配置された複数のコイル部(28)を有し;
前記固定子部(24)及び回転子部(22)は、前記回転子部(22)が前記ガスタービンエンジン(10)のシャフトによって前記固定子部(24)の周りを回転して前記コイル部(28)に電流を誘導するとき、電力を発生させるように構成される発電機。
【請求項2】
前記固定子部(24)は、環状部をさらに含み、前記環状部内に前記ガスタービンエンジン(10)の非電気回転構成部材を収容することを特徴とする請求項1記載の発電機。
【請求項3】
前記回転子部(22)及び固定子部(24)は、スイッチドリラクタンス電磁機として構成されることを特徴とする請求項1記載の発電機。
【請求項4】
前記回転子部(22)及び固定子部(24)は、同期式リラクタンス機として構成されることを特徴とする請求項1記載の発電機。
【請求項5】
前記回転子部(22)及び固定子部(24)は、誘導機として構成されることを特徴とする請求項1記載の発電機。
【請求項6】
前記回転子部(22)及び前記固定子部(24)は、電磁機として構成されることを特徴とする請求項1記載の発電機。
【請求項7】
前記電磁機は、前記回転子部(22)を励起する複数の界磁巻線を含むことを特徴とする請求項1記載の発電機。
【請求項8】
前記電磁機は、前記固定子部(24)を冷却する冷却手段をさらに含むことを特徴とする請求項7記載の発電機。
【請求項9】
前記回転子部(22)及び固定子部(24)は、永久磁石機として構成されることを特徴とする請求項1記載の発電機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−157239(P2008−157239A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328113(P2007−328113)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】