説明

ターボ圧縮機

【課題】放風サイレンサも含めて、狭い場所にも設置することができ、また、使用されない圧縮された排気を外気に放出するときの騒音を十分に低減させることができるターボ圧縮機を提供する。
【解決手段】筐体46と、筐体46上に設置された遠心式の第1段及び第2段圧縮機5,6と、第1段及び第2段圧縮機5,6を駆動する駆動手段とを備え、筐体46内は、第1の熱交換器47を収納し第1段圧縮機5により圧縮された外気が送られる第1冷却室44と、第2の熱交換器48を収納し第1冷却室44を経た空気が第2段圧縮機6によりさらに圧縮されて送られる第2冷却室45と、駆動手段に送られる潤滑油を収納したオイルタンク8と、第2冷却室7を経て使用されない空気が送られる放風サイレンサ室60とに仕切られており、放風サイレンサ室80は、第1冷却室及び第2冷却室44,45と、オイルタンク60との間に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の動力源やプロセス用として用いられるターボ圧縮機に関し、特に、放風サイレンサ室を筐体内に内蔵してコンパクト化、静音化を図ったターボ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ターボ圧縮機として、特許文献1に記載されているように、第1段圧縮機で圧縮した流体を、さらに第2段圧縮機で圧縮して排出する2段式のターボ圧縮機が提案されている。このようなターボ圧縮機は、鋳物からなる筐体を有し、この筐体上に、第1段圧縮機と第2段圧縮機とが設置されて構成されている。第1段圧縮機のインペラと第2段圧縮機のインペラとは、回転軸で連結されている。回転軸は、駆動モータの出力軸と平行に配置されており、その中央部の歯車装置を介して駆動モータによって回転操作させる。
【0003】
このターボ圧縮機においては、吸入口から外気が吸入され、この外気が第1段圧縮機によって圧縮されて、筐体の第1冷却室に送られる。第1冷却室には、第1の熱交換器が収納されている。圧縮された空気は、第1の熱交換器によって冷却されて、第1冷却室から第2段圧縮機に送られ、さらに圧縮される。第2段圧縮機により圧縮された空気は、筐体の第2冷却室に送られる。第2冷却室には、第2の熱交換器が収納されている。圧縮された空気は、第2の熱交換器によって冷却されて、第2冷却室から排出口を経て排出される。
【0004】
特許文献1に記載されたターボ圧縮機は、小型化のために筐体内のレイアウトが工夫されており、筐体内には、第1の熱交換器を収納した第1冷却室と、第2の熱交換器を収納した第2冷却室と、潤滑油を収納したオイルタンクとが密接して配置されている。
【0005】
一般的な遠心式ターボ圧縮機は、圧縮した空気が工場等で余剰となり、外気を吸い込む量に対して圧縮した空気の消費量が少なくなった場合、圧縮機の出口圧力が上昇する。このとき、圧縮機出口部に設置されたセンサーによって検出した圧力値があらかじめ設定された値を超えたときに第2冷却室出口に設置された放風弁を開き、圧縮された空気を外気へ放出する。また、放風弁が開くことによって生じる騒音を低減するため、放風弁から大気への放風口までの間に、放風サイレンサを設置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3470410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述のような遠心式のターボ圧縮機用の放風サイレンサは、サージング現象を防止するため圧力損失の低いものを使用しなければならい。サージングとは、インペラの中で空気の逆流が生じる現象である。サージングが生ずると、激しい脈動を伴い正常な運転ができなくなる。このため、放風サイレンサには圧力損失の小さいマフラーや吸音材を貼り付けたダクト等を使用して消音、空気を減速させるのが一般的である。しかし、騒音低減効果はその放風サイレンサの大きさに見合ったものとなるため、コンパクト化を図った遠心式ターボ圧縮機では、放風音を十分に抑制できないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、放風サイレンサも含めて、狭い場所にも設置することができ、また、圧縮された空気を外気へ放出するときの騒音を十分に低減させることができるターボ圧縮機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係るターボ圧縮機は、以下の構成を有するものである。
【0010】
〔構成1〕
筐体と、筐体上に設置された遠心式の第1段圧縮機と、筐体上に設置された遠心式の第2段圧縮機と、第1段圧縮機及び第2段圧縮機を駆動する駆動手段とを備え、筐体内は、第1の熱交換器を収納し第1段圧縮機により圧縮された外気が送られる第1冷却室と、第2の熱交換器を収納し第1冷却室を経た空気が第2段圧縮機によりさらに圧縮されて送られる第2冷却室と、駆動手段に送られる潤滑油を収納したオイルタンクと、第2冷却室を経て大気へ放出される排気が送られる放風サイレンサ室とに仕切られており、放風サイレンサ室は、放風サイレンサを収納し、第1冷却室及び第2冷却室と、オイルタンクとの間に位置していることを特徴とするものである。
【0011】
〔構成2〕
構成1を有するターボ圧縮機において、筐体は、内部を、第1冷却室と、第2冷却室と、オイルタンクと、放風サイレンサ室とに仕切る仕切板とともに、鋳物によって一体的に構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るターボ圧縮機においては、構成1を有することにより、筐体内において、放風サイレンサ室は、第1冷却室及び第2冷却室と、オイルタンクとの間に位置しているので、放風サイレンサによる消音効果を増大させることができ、オイルタンクと第1及び第2冷却室との間に空気層が存在することにより、また、放風サイレンサ室を通過する排気により、オイルタンク内の潤滑油の温度上昇が抑制される。
【0013】
そして、このターボ圧縮機においては、部品点数の削減による製造コストの低廉化が図られ、また、放風サイレンサも含めて、狭い場所にも設置することができる。
【0014】
また、本発明に係るターボ圧縮機においては、構成2を有することにより、筐体は、内部を仕切る仕切板とともに、鋳物によって一体的に構成されているので、放風サイレンサによる消音効果を増大させることができる。
【0015】
すなわち、本発明は、放風サイレンサも含めて、狭い場所にも設置することができ、また、排気を外気に放出するときの騒音を十分に低減させることができるターボ圧縮機を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るターボ圧縮機の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るターボ圧縮機の側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るターボ圧縮機の正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るターボ圧縮機の筐体の構成を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るターボ圧縮機の平面図である。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係るターボ圧縮機の側面図である。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係るターボ圧縮機の正面図である。
【0021】
本発明に係るターボ圧縮機は、いわゆるギアードターボ圧縮機であり、図1乃至図3に示すように、鋳物からなる筐体46を有し、この筐体46上に、遠心式の第1段圧縮機5と、遠心式の第2段圧縮機6が設置されて構成されている。
【0022】
このターボ圧縮機は、駆動手段となる駆動モータ1の出力軸2により、歯車装置3を介して、第1段及び第2段圧縮機5,6のインペラ(羽根車)を高速回転させ、吸入した空気(ガス)に運動エネルギーを与え、これを効率よく減速して圧力へ変換することにより、空気(ガス)を圧縮するようにした2段型圧縮機である。このターボ圧縮機においては、中間冷却を行って等温圧縮に近づけ、容積効率を高めて、全体の圧縮効率を高めるようになっている。
【0023】
駆動モータ1は、いわゆるフランジモータであり、フランジ1aを介して、筐体46上に固定されている。回転軸4は、駆動モータ1の出力軸2に平行に配置され、歯車装置(増速機)3を介して出力軸2に接続されている。この回転軸4の駆動モータ1側の端部には、第1段圧縮機5が設けられている。回転軸4の反対側の端部には、第2段圧縮機6が設けられている。回転軸4は、中央部において歯車装置3を介して駆動力が伝達され、駆動モータ1側となる一端側に第1段圧縮機5のインペラが取付けられ、他端側に第2段圧縮機6のインペラが取付けられている。
【0024】
第1段及び第2段圧縮機5,6は、回転軸4に取付けられたインペラの周囲に、ディフューザ及び渦巻室を備えて構成されている。第1段及び第2段圧縮機5,6は、インペラが高速回転されることにより、インペラの中心部において吸引した空気(ガス)を径方向外方に加速する。加速された空気は、ディフューザ及び渦巻室を通って減速され、速度が圧力に変換される。
【0025】
歯車装置3においては、駆動モータ1の出力軸2に大歯車(ブルギア)が接続され、この大歯車に噛合した小歯車(ピニオンギア)が増速回転して、回転軸4に駆動力を伝達する。
【0026】
図4は、本発明の実施形態に係るターボ圧縮機の筐体の構成を示す横断面図である。
【0027】
筐体46内は、図4に示すように、空気(ガス)を導く通路となる第1及び第2冷却室44,45と、回転軸4の軸受や歯車装置3に必要な潤滑油が充填されているオイルタンク60と、放風サイレンサ室(ブロータンク)80とに仕切られている。第1冷却室44及び第2冷却室45には、空気(ガス)を冷却するための第1の熱交換器(インタークーラ)47及び第2の熱交換器(アフタークーラ)48が収納されている。筐体46は、内部を第1冷却室44と、第2冷却室45と、オイルタンク60と、放風サイレンサ室80とに仕切る仕切板とともに、鋳物によって一体的に構成されている。放風サイレンサ室80は、放風サイレンサ82を収納しており、第1冷却室44及び第2冷却室45と、オイルタンク60との間に位置している。
【0028】
そして、図1に示すように、駆動モータ1の側方には、第1段圧縮機5の吸入管7及び吸入フィルタ8が配置されている。吸入フィルタ8は、大気空気中の異物吸入を防止するためのものである。このターボ圧縮機においては、第1段圧縮機5により、吸入管7から外気が吸入され、この外気が第1段圧縮機5によって圧縮され、筐体46の空気通路部を経て、図4に示すように、第1冷却室入口44aから、筐体46の第1冷却室44に送られる。
【0029】
第1冷却室44に送られた圧縮された空気は、200°C程度になっているが、第1の熱交換器47によって冷却される。第1の熱交換器47によって冷却された空気は、第1冷却室44から、第1冷却室出口44b及び配管9を経て、第2段圧縮機6に送られる。
【0030】
第2段圧縮機6は、送られた空気をさらに圧縮して、筐体46の空気通路部10を経て、第2冷却室入口45aから、筐体46の第2冷却室45に送る。第2冷却室45に送られた空気は、第2の熱交換器48によって、40°C程度まで冷却される。第2の熱交換器48によって冷却された空気は、第2冷却室45から、第2冷却室出口45bを経て、排出される。第2冷却室出口45bから排出された空気は、工場等において使用されるために図示しない配管を経て送られる。
【0031】
このターボ圧縮機は、圧縮した空気が工場等で余剰となり、外気を吸い込む量に対して圧縮した空気の消費量が少なくなった場合、圧縮機の出口圧力が上昇する。このとき、圧縮機出口部に設置されたセンサーによって検出した圧力値があらかじめ設定された値を超えたとき、放風弁83を開く。このときには、使用されない圧縮された排気は、第2冷却室出口45bと放風サイレンサ室入口80aを繋ぐ配管81を経て、放風サイレンサ室80内に送られる。放風サイレンサ室80に送られた排気は、この放風サイレンサ室80に収納された放風サイレンサ82を経て、放風サイレンサ室出口80bから外気に放出される。放風サイレンサ82は、圧縮された排気が導入され、消音しながら放風サイレンサ室80内で放出し、排気の流速を落とすことによって、ターボ圧縮機の放風口における騒音を低減させるものである。この放風サイレンサ82は、圧力損失が小さなマフラーや、吸音材が貼られたダクトを備えた構造を有して構成され、騒音を抑制するようになっている。
【0032】
このターボ圧縮機においては、このターボ圧縮機を構成する他のユニット、すなわち、空気の流量を制御する吸入制御弁、運転及び停止や制御弁をコントロールする制御盤、軸受、歯車の潤滑のために必要な給油装置、潤滑油を筐体46の外部へ漏出させないために筐体46内を負圧に保つ排煙装置などは、全て筐体46上に設置されており、省スペース化が図られている。
【0033】
また、このターボ圧縮機においては、放風サイレンサ82が筐体46内に収納されていることにより、部品点数の削減が図られ、製造コストの低廉化が達成されるとともに、放風サイレンサも含めて、狭い場所にも設置することができる。
【0034】
また、このターボ圧縮機においては、放風サイレンサ室80が、第1冷却室及び第2冷却室44,45と、オイルタンク60との間に位置しており、また、筐体46が鋳物により一体的に構成されていることにより、放風サイレンサ82による消音効果を増大させることができる。例えば、圧縮された排気が放出するときの音圧レベルが120dBを超えるようなレベルであっても、この放風音を放風サイレンサ室80で遮音、減衰させることができ、ターボ圧縮機の外部における騒音を十分に低減させることができる。
【0035】
また、このターボ圧縮機においては、オイルタンク60と第1及び第2冷却室44,45との間に空気層が存在することにより、また、放風サイレンサ室80を通過する排気により、オイルタンク60内の潤滑油の温度上昇が抑制される。従来、オイルタンク60を筐体46内に内蔵すると、第1及び第2冷却室44,45との隔壁において熱交換が発生し、潤滑油が高温空気から熱を吸収し、冷却された空気を再び暖めてしまうという現象が生ずる恐れがある。この現象が生ずると、オイルクーラの容量を増大させる必要が生じ、また、空気温度の上昇による圧縮機効率の低下が招来される。このターボ圧縮機においては、オイルタンク60内の潤滑油の温度上昇が抑制されるので、オイルクーラの容量を増大させる必要がなく、また、空気温度の上昇による圧縮機効率の低下が生ずることもない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、工場の動力源やプロセス用として用いられるターボ圧縮機に適用され、特に、放風サイレンサ室を筐体内に内蔵してコンパクト化、静音化を図ったターボ圧縮機に適用される。
【符号の説明】
【0037】
5 第1段圧縮機
6 第2段圧縮機
44 第1冷却室
45 第2冷却室
46 筐体
47 第1の熱交換器
48 第2の熱交換器
60 オイルタンク
80 放風サイレンサ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体上に設置された遠心式の第1段圧縮機と、
前記筐体上に設置された遠心式の第2段圧縮機と、
前記第1段圧縮機及び第2段圧縮機を駆動する駆動手段と
を備え、
前記筐体内は、第1の熱交換器を収納し前記第1段圧縮機により圧縮された外気が送られる第1冷却室と、第2の熱交換器を収納し前記第1冷却室を経た空気が前記第2段圧縮機によりさらに圧縮されて送られる第2冷却室と、前記駆動手段に送られる潤滑油を収納したオイルタンクと、前記第2冷却室を経て大気へ放出される排気が送られる放風サイレンサ室とに仕切られており、
前記放風サイレンサ室は、放風サイレンサを収納し、前記第1冷却室及び前記第2冷却室と、前記オイルタンクとの間に位置している
ことを特徴とするターボ圧縮機。
【請求項2】
前記筐体は、内部を、前記第1冷却室と、前記第2冷却室と、前記オイルタンクと、前記放風サイレンサ室とに仕切る仕切板とともに、鋳物によって一体的に構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のターボ圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−11174(P2013−11174A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142600(P2011−142600)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】