説明

ターボ機械の一体型のブレード付きディスクのブレードを補修する方法、および該方法を実行するための試験片

【課題】漸進的に変動する形状および可変の厚さを有する一体型のロータのブレードを補修する方法を提案する。
【解決手段】ブレード2を補修するために、パッチが、電子ビームによって溶接される。この方法は、画定された輪郭を有する補修されるべきゾーン10を得るように、損傷を受けたゾーンを機械加工することによって始まる。すなわち、工程の初めの試験片を得るために、この画定された輪郭を有するブレード2に対応する第1の試験片要素に、パッチに対応する第2の試験片要素が溶接され、この試験片の品質が検証され、その品質が補修受け入れ基準に対応する場合、その作動パラメータを変えずに同じ電子ビーム溶接機械を使用して、補修されるべきゾーン10にパッチが溶接され、機械加工することによって補修されたゾーンが再加工される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械の一体型のロータブレードを補修する方法に関し、この方法を実行するための工程の初め(start−of−run)、工程の終わり(end−of−run)、または展開(development)試験片要素に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボジェットは、いくつかのロータを備え、それらロータは、その軸を中心として回転する。これらのロータは、ディスクを含んでもよく、ディスクに沿ったリムにブレードが嵌合される。従来、ブレードは、この目的のために設けられる根元部によってハウジングで保持される。増大したエンジンの性能要件を満たすため、現在、これらのロータが、一体型のブレード付きディスクと称される、「ブリスク」と呼ばれる一体型のロータであってもよい。ブリスクにおいて、ブレードおよびディスクは、単一部分のみを形成する。この目的のために、鍛造されたブランクが、ディスクを形成するように機械加工され、ブレードがその周縁部の周囲で径方向に延びるが、まだ一体の構成部品である。特定の部品を溶接することもまた可能であり、結果として生じるブリスクが一体型の構成部品となる。特に質量に関して、一体型のロータの多くの利点がある。
【0003】
エンジンに異物が吸い込まれるため、またはガス流の流れによって混入する煤塵または粒子によって引き起こされる腐食により、ブレードは、摩耗されたまたは裂かれた部分の形態の損傷領域を有する場合があり、損傷領域は、ターボジェットの効率を損う。関係する領域は、一般に、先端部と、前縁側または後縁側の角と、前縁または後縁とである。ブリスクのブレードを補修することが容易でないのは、補修するためにブレードを取り外すことが不可能であるためである。
【0004】
補修されることができない場合、摩耗または損傷によって、欠陥部分が交換されることとなる。ここで、ブリスクの場合には、ブレードの交換は、全ブリスクを交換することを意味する。
【0005】
米国特許第6,238,187号明細書において、ブレードを補修する方法が教示されている。この方法では、損傷領域の周囲のブレードの一部が、切断され、当該部分の範囲内にある限り、損傷領域の形状および寸法がいかなるものであっても、この方法を再現可能にするように、この部分が標準化されている。一般にパッチと呼ばれる交換部品は、次いでブレードに溶接される。このパッチは、除去されたブレードの部分の寸法よりも大きな寸法を有し、次いで、ブレードの初期形状に戻すように機械加工される。
【0006】
米国特許第6,568,077号明細書において、上述の方法でパッチを溶接するステップのために電子ビーム溶接方法の使用が教示され、電子ビーム溶接方法は、高い溶接レートの利点、および大きな厚さを溶接することが可能である能力の利点を有する。
【0007】
しかしながら、Ti17と呼ばれるチタン合金から作られるロータの場合、問題が生じる。この合金は、たとえば、ブレード等のこの材料から作られる製品に関する本出願人の特許出願である欧州特許出願公開第1340832号明細書において述べられており、この材料が溶けると、溶接する間にガスの発生を生じ、熱影響部(HAZ)にミクロ細孔またはブローホールを発生させ、結果として溶接部の機械的性質が低下するため、この材料は、溶接するのが困難である。この低下は、機械的強度の場合には最大80%である可能性がある。このような低下は、航空利用において許容されることはできず、電子ビーム溶接の場合に生ずるものである。そのうえ、Ti17のロータの場合、航空産業において従来使用されかつ一般的に実施されているTIGまたはマイクロプラズマ技術では、満足のいく結果を提供することができない。
【0008】
さらに、最近のブレードは、壁の厚さが可変である複雑な三次元形状を有し、パラメータの極めて正確な規定を必要とする電子ビーム溶接方法を使用することを困難にする。これらのパラメータは、問題の各状況に対して規定されなければならず、あらゆる標準化を達成するのは困難である。
【特許文献1】米国特許第6238187号明細書
【特許文献2】米国特許第6568077号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1340832号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、漸進的に変動する形状および可変の厚さを有する一体型のロータのブレードを補修する方法を提案することであり、この方法は、電子ビーム溶接ステップを含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電子ビーム溶接機械を使ってパッチを電子ビーム溶接することによって、少なくとも1つの損傷領域を含むターボ機械の一体型のブレード付きディスクのブレードを補修する方法に関し、損傷領域を準備するステップと、パッチを電子ビーム溶接するステップと、補修領域を機械加工によって再加工するステップとを含み、以下を特徴とする。すなわち、
・ 準備するステップが、画定された輪郭の補修されるべき領域を得るように、損傷領域を機械加工することを含み、
・ いわゆる「工程の初め」の試験片を得るために、その作動パラメータが予め設定される溶接機によって、前記画定された輪郭を有するブレードに対応する第1の試験片要素に、パッチに対応しかつパッチの特徴を有する第2の試験片要素の溶接が実行され、
・ 溶接後の工程の初めの試験片の品質が検査され、工程の初めの試験片の品質が補修受け入れ基準に対応する場合、その作動パラメータを変えずに同じ電子ビーム溶接機械によって、補修されるべき領域にパッチが溶接され、
・ 補修領域が、機械加工することによって再加工される。
【0011】
本発明は、電子ビーム溶接機械を制御する性能に基づくことによって、工業規模での一体型のブレード付きディスクを補修するという利点を有する。一旦機械が確認されパラメータが設定されると、パッチに対応する第2の試験片要素を、ブレードの輪郭を有する第1の試験片要素に先に溶接することによって、パラメータが正しくかつ変動していないことを検査することのみが必要となる。驚くべきことに、この方法によって、ブリスクと同じくらい複雑な構成部品を補修するときに、高信頼性を得ることが可能となることが判明した。同じディスクにある多くのブレードが補修されることを認めるのに、先の検査は十分である。
【0012】
別の特徴によると、補完的な方法によって操作が正しく行なわれることを保証するために、この方法は、パッチがブレードに溶接された後、またはパッチが補修されるべきブレードに連続して溶接された後で、いわゆる「工程の終わり」の試験片を得るために、その作動パラメータを変えることなく同じ電子ビーム溶接機械によって、ブレードに対応しブレードの画定された輪郭を有する第1の試験片要素に、パッチに対応しパッチの特徴を有する第2の試験片要素を溶接するステップと、工程の終わりの試験片の品質を検査するステップとを含む。
【0013】
このステップは、装置のパラメータがわずかに変動する可能性があるとき、工程終了後に溶接方法の実行状態を提供するという利点がある。工程の終わりの試験片が合格品質である場合、このことから、工程の初めの試験片の溶接と工程の終わりの試験片の溶接との間でなされた補修が、全て正しく実行されたことが結論づけられる。このことにより、補修方法を簡単にすることができるようになる一方で、ブリスクの空間制約のため、実行するのが容易でないかまたは不可能でさえある、ブリスクへの直接的な品質検査を行うことが省略可能となる。
【0014】
この方法は、ディスクの構成材料がチタン合金、特にTi17であるときに特に適しているが、本出願人は、その権利の範囲をこの利用だけに制限することを意図していない。
【0015】
この方法は、翼端、前縁または後縁の角、および前縁または後縁の中から、補修されるべき少なくとも1つの領域に適用する。
【0016】
別の特徴によると、一体型のブレード付きディスクを補修する方法は、電子ビーム溶接機械を展開するステップを含み、このステップの間に、展開試験片の非破壊および/または破壊検査が続く、いわゆる「展開試験片」を得るために、パッチの特徴を有するパッチに対応する第2の試験片要素を、ブレードの画定された輪郭を有するブレードに対応する第1の試験片要素に溶接することによって、パラメータが予め設定される。
【0017】
工程の初めの試験片と、工程の終わりの試験片と、展開試験片との、第1の要素および第2の要素が、同一であることが好ましい。
【0018】
別の特徴によると、補修方法はまた、材料/機械の対を検証するステップを含み、このステップの間に、機械的完全性を確認するための試験片を得るために、少なくともブレードの画定された輪郭の最大厚さと同じ厚さを有するブレードの材料の2つのプレートが溶接され、少なくとも周期的な疲労試験が、機械的完全性を確認するために試験片に対して実行される。
【0019】
本発明はまた、この方法を実行するための工程の初め、工程の終わり、または展開試験片に関する。
【0020】
本発明は、添付の図面を参照して、本発明の方法を実行する好ましい形態の以下の説明から、より明確に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1を参照すると、本発明の方法は、一体型のブレード付きディスク1(ブリスク1)のリム3の周縁に径方向に延び、ここではTi17チタンから作られる、ブレード2の補修に関する。衝撃または摩耗のために、このブレードは損傷領域を有する。損害を受けやすい領域とは、ブレードの前縁4、後縁5、前縁角6、後縁角7、および先端部8の線部であり、ここでは知られている方法によってシールリップを形成するより薄い部分を備える。
【0022】
補修されることのできる損傷領域が位置する標準化された部分は、ブレードにあらかじめ画定されていて、これらの部分は、交換されるために切断されるブレード部に対応している。この方法の第1のステップは、ブレードの損傷領域がこのような部分に位置するかどうか、検査することにある。図2は、ブレード2と、灰色で示されるこのような標準化された部分9を示す。図2におけるこの部分9は、ブレード2の前縁の角を含む。
【0023】
このような場合、標準化された部分が、機械によって切断される。この機械加工操作のためのパラメータが、予め設定され、任意の1つのタイプのブレードに対して同一である。標準化された部分9の切断線10は、一方では、切断および後続の溶接がより簡単になるように、極端に急激な湾曲点または角がないようできる限りゆっくりと変動するように、かつ他方では、作用応力が最小であるか、少なくとも最大でないブレードの領域に延びるように、画定されるので、溶接されるゾーンが、溶接線に沿って極端に高い応力を後で受けることはない。切断部分の最大寸法は、エンジンの使用に応じて、およびブレード2によって受けられる空力的負荷を考慮に入れて画定される。形状または性質がどうであれ、このような部分9に含まれるブレード2の欠陥は、この部分9を切断し、図3に示され後述される標準化されたパッチ11と交換することによって、補修されることができる。所望の溶接性に適合した表面処理を保証するように、切断作業もまた行われる。
【0024】
このようにブレード2に得られるのは、画定された輪郭を有する切断線である。
【0025】
一旦、この切断が、機械加工することによって行われると、ブレード2、および特に切断線10は、溶接ステップのためにそれを準備をするために洗浄される。
【0026】
切断されたブレードにパッチ11を溶接する前に、工程の初めの試験片が溶接され、その試験片の第1の要素および第2の要素は、図4および図5に示され、後で詳しく説明される。
【0027】
パッチ11は、次いで、ブレード2の切断線10と接触される。この接触操作は、ブレード2およびパッチ11を適所に保持するための装置によって行われる。本明細書で記載されないこの装置は、互いに対してこれらの要素を極めて正確な位置決めできるように構成されなければならず、各ブレード2に適合される。好ましくは、同一の装置が、その標準化された部分9が切断される間に、適所にブレード2を保持するためにされる。このことにより、同じパラメータを保ち、切断面と同一の溶接面を有すること可能となる。
【0028】
ブレードと同じ材料、ここではTi17チタンから作られるパッチ11は、切断線12に沿って、ブレード2の切断線の画定された輪郭を正確に再現する輪郭を有し、ブレードの厚さに対して過大寸法の厚み、ここでは約1mmであって、その厚さが、0.5mmから6mm、好ましくは0.7mmから3.45mmの間を変動するブレードのために、ブレードの一方の側で0.5mm、他方の側で0.5mmに分割される。パッチ11の厚さは、したがって、切断線12に沿って、さらにその全範囲にわたって輪郭の変動およびブレードの可変厚さにしたがい、切断線10に沿って、および取り除かれた部分に対応する範囲にわたり、過大寸法の厚みを有する。換言すれば、パッチ11の表面形状は、全体として切断されたブレード2の部分9の表面に対応し、その寸法はわずかに大きい。
【0029】
切断線12の各端部の延長部において、パッチ11は、ヒール13および14を有し、ヒールは、切断線12の表面から突出し、一旦パッチ11がブレードと接触されると、ブレード2を妨げることのないように延びる。より正確には、各ヒール13および14は、切断線10から延びるブレード2の縁部15および16の形状に合致し、この場合、これらの縁部は、ブレード2の前縁角を形成する先端線15および前縁16に対応する。これらのヒール13および14は、後述するように、溶接を開始および終了するため使用される。ヒール13および14は、パッチ11を有する単一部分から形成されることができ、またはパッチに取り付けられることができる。ヒールがパッチを有する1つの部分として作られる場合、ヒールによって、操作者はパッチ11をつかみ動かすこともできる。ヒールはまた、ブレード2に取り付けられることもできる。
【0030】
したがって、パッチ11の切断線12は、ブレード2の切断線10と接触することになり、この接触操作は、パッチ11の輪郭が正確にブレード2の輪郭にしたがうように、上述した保持装置によって極めて正確に実行されなければならず、パッチが、実質的にブレードの最大厚さよりも大きな一定の厚さである従来技術の場合には、しばしば、パッチ11の輪郭が正確にブレード2の輪郭にしたがわなかった。パッチ11のこの可変厚さのおかげで、ブレード2とパッチ11との間における極端に大きな差異および厚みの変動が回避され、それによって後続の電子ビーム溶接処理を簡単にし、かつそのより良好な品質を保証し、この処理は、当然ながら、極めて正確に実行されることを必要とする。このことによって、溶接の欠陥の原因を制限することが可能となる。したがって、ブレード2と、パッチ11と、場合によってはヒール13および14を適所に保持する保持装置は、これらがパッチ11と一体でない場合、3次元において位置決めされることが可能でなければならない。
【0031】
次いで、電子ビーム溶接機械によって、電子ビーム溶接が行われる。この目的のために、ブレード2およびパッチ11のアセンブリが、不活性雰囲気、通常は真空に設置され、機械の電子銃が、ブレード2およびパッチ11の切断線10および12の間の接合面に位置する溶接ビードに、電子ビームを発射し、電子の運動エネルギーが加工物を加熱し、加工物を互いに溶接することが可能である。この溶接ステップの様々なパラメータ、特にビーム出力(通常は50kWおよび200kWの間)と、加速電圧によって設定される電子速度と、電子密度と、焦点の深さを調整可能にする集束電流と、振幅と、軸まわりの電子ビームの振動の形状および周波数と、ビームの移動速度とを、後述される工程の初めの試験片に類似した展開試験片に試みることによって、あらかじめ規定される。
【0032】
電子ビーム溶接を使用する利点は、特に、溶接速度、および比較的幅が狭い溶接ビードに沿って得られる溶接の品質である。
【0033】
電子ビーム溶接において、溶接が始まると、加工物における欠陥部および孔もまた発生するため、ヒール13で溶接が始動される。これらの欠点は、ヒール13に制限される限りブレード2に影響を及ぼさない。さらに、ヒール13で溶接を始動することによって、電子ビームがブレード2とパッチ11との間の接合面に達すると、電子銃が全出力することが可能となり、その出力は、ブレード2の切断線10の端部まで保持される。したがって、ブレード2にパッチ11を溶接する全操作は、ブレード2の切断線10に関しては、電子銃の「定常状態」において実行される。問題の特定の場合において、溶接ビードは、制限のないタイプであることに留意されたい。溶接が続き、反対側のヒール14で終わるので、この段階においてもまた発生する欠陥部および孔が、このヒール14に制限される。
【0034】
溶接ビードの周囲に、「アンダーカット」、すなわち溶接ビードに向かう材料の損失のために、最初の厚さに対して厚さが減少するゾーンが発生する可能性があるため、電子ビームは、正確に接合面に向けられず、パッチ11の側にわずかにずれている。パッチ11が、ブレード2よりも大きな厚さを有するため、材料は、ブレード2の側にあるアンダーカットを充填するように、溶接ビードを越える傾向がある。パッチ11の側で形成されることがあるアンダーカットが、後続の機械加工ステップで消える可能性がある。したがって、パッチ11の側にビームをずらすことによって、補修されたブレード2においてアンダーカットが形成されるのを防ぐ。
【0035】
電子ビーム溶接機械のパラメータは、この切断線10に沿って実時間で漸進するように、これらのパラメータを溶接ビードの幾何形状、およびそれゆえにブレード2の切断線10の幾何形状に従動させるための手段によって、好ましくは改良される。したがって、得られる溶接ビードは、より良好な品質を持つ。
【0036】
ヒール13および14を使用する別の利点に留意されたい。ブレード2は、その先端線15に沿って、パッチ11上のリップ17に対応するシールリップを含む。極めて厚さが小さいために、溶接する間にこのゾーンが崩壊するため、このリップは、直接電子ビーム溶接されることができない。したがって、従来の技術において、しばしばリップを溶接せずに、たとえばレーザーを使用して後続のビルドアップ法によってリップを形成しており、このことによりかなりコストが増加する。ヒール13は、輪郭の継続部がより幅広であるブレード2の側およびパッチ11の側にあるリップ10の下に置かれ、リップで過大寸法の厚みを形成する。したがって、リップ部分がともに溶接される領域は、それほど薄くはなく、これらの部分は、一旦補修したブレード2のリップの連続性を保証するように、電子ビーム溶接によって溶接されることができる。
【0037】
一旦電子ビーム溶接操作が行われると、溶接されたパッチ11を有するブレード2は、溶接する間に発生する引張応力を減少させるように、熱処理を受ける。超音波ピーニング操作もまた、行われることができる。溶接の品質を保証するように、特定の検査が実行される。工程の初めの試験片を溶接することによってもたらされる保証のために、これらの検査は、溶接が適切に行われ、おおむね、認められるほどの不完全性を引き起こさなかったことを確かめるための目視検査になり得る。この目的のために、閉じ込めガスによる不十分な遮蔽のためであり得る酸化の痕跡、接合の欠如、き裂(双眼顕微鏡のもとで)、および溶解していない材料を、視覚的に検査することが目的であってもよい。
【0038】
この、またはこれらの概略的な検査によって、結果が満足のいくようなものである場合、パッチ11は、次いで、実際に完全なブレード2の形状に対応するほぼ最終的な形状を回復するために、余剰の材料を取り除くように機械加工される。寸法が最終的な寸法、すなわち最初のブレードに対応する寸法よりもわずかに大きいブレードが得られるまで、毎回材料はほとんど取り除かれずに、機械加工ツールがいくつか通過する。これらは、切断され、パッチ11によって交換されるのは部分9の寸法であり、最初のブレード2の残部と同一のままでなければならないため、ブレード2の残部は機械加工されない。
【0039】
最初のブレード2と同一のブレード2を得るように、ブレード2の補修は、手動研磨加工によって精錬され、完了される。
【0040】
本発明の方法は、特に、パッチがブレード2に溶接される前に、工程の初めの試験片が溶接されるという事実によって特徴づけられる。この目的のために、2つの試験片要素、すなわち、図4に示されブレード2に対応する第1の要素18、および図5に示されパッチ11に対応する第2の要素19が、互いに溶接される。ブレード2に対応する第1の試験片要素18は、用語「第1の要素18」によって示され、パッチ11に対応する第2の試験片要素19は、用語「第2の要素19」によって示される。用語「試験片」は、一旦溶接された試験片、すなわち、互いに溶接された2つの要素18および19に対応する。
【0041】
第1の要素18は、切断線20を有し、その輪郭は、ブレード2の切断線10の画定された輪郭と同一である。この要素は、同一材料、ここではTi17チタンから作られ、その溶錬から正に運転中における使用まで、ブレード2と同じ処理過程を受け、同じ表面特性および同じ金属学的性質を有し、同じ方法で機械加工されている。好ましくは、それは、鍛造されるブリスクプリフォームから生じる部分であってもよく、このことにより、確実に特徴が類似する。この要素は、たとえ示されていない場合であっても、ヒール13および14に対応する部分を含む。
【0042】
同様に、第2の要素19は、その輪郭がパッチ11の切断線12の輪郭と同一である切断線21を有し、前述と同様に類似の特徴を有する。第2の要素は、パッチ11の過大寸法の厚さと、ヒール13および14に対応する部分22および23とを含む。
【0043】
第1の要素18および第2の要素19は、この溶接のために予め設定されるパラメータを有する、ブレード2にパッチ11を溶接するため使用される機械によってともに溶接される。下記に記載する方法によって、パラメータを予め設定することができる。同じ保持装置が使用される。したがって、パッチ11がブレード2に溶接される前に、工程の初めの試験片を得るために、2つの要素18および19をともに溶接する、極めて類似した処理が行われる。
【0044】
さらにより代表的には、パッチ11の溶接部をブレード2に溶接するように、ブレード2の質量および体積の環境のシミュレートする手段を提供することが、さらに可能である。その理由は、ブレード2を取り囲む質量、特に、ブレード2の近傍にブレード2を保持するためのリム3を支持しているハブの存在によって、溶接する間に熱ポンピング効果が生じるためである。溶接ビードである局部的なスポットに噴射される溶接熱は、バルクへと拡散する傾向があり、バルクによってこの拡散は変動する。工程の初めの試験片を溶接するときに、ブレード2の環境が考慮され、たとえば、必要以上に大きな質量を有する保持装置のツールを使用して、シミュレートされることができる。
【0045】
一旦、工程の初めの試験片の2つの要素18および19が、ともに溶接されると、その結果、実際の工程の初めの試験片が得られる。次いで、工程の初めの試験片の溶接の品質が、検査される。要件に応じて、目視検査だけまたは双眼顕微鏡による検査だけを行うことが可能であり、または、金属試験を行うために、接合面に対して断面を横断方向および縦方向にすることが可能である。
【0046】
この、またはこれらの検査によって、不十分な溶接が認められると、良好であると見なされる工程の初めの試験片が得られるまで、パラメータが適応され、さらなる工程の初めの試験片が、任意に溶接される。この場合、補修受け入れ基準に対応するとみなされるように、機械のパラメータが検証される。
【0047】
一旦機械のパラメータが検証されると、同じパラメータを使用して、ブレードを補修するために、パッチ11がブレード2に溶接されることができる。工程の初めの試験片の事前検査は、同じ1つのブリスク、さらにいくつかの同一のブリスクの、複数の同一のブレード2の補修を許可するのに十分である。
【0048】
電子ビーム溶接機械のパラメータが予め設定されることに留意されたい。しかしながら、これらのパラメータが、たとえ良好に溶接できるように設定されたとしても、機械の精度に影響を及ぼす摩擦や熱等は、排除されることができないため、工程の初めの試験片によって、これらのパラメータが常に正確であることを保証することができる。
【0049】
本発明の方法の1つの特徴によると、ブリスクの1つまたは複数のブレード2が補修された後に、工程の終わりの試験片が溶接される。このような試験片は、上述の工程の初めの試験片と同一であり、同じ2つの要素18および19を有する。ブレード2を補修するために使用される工程の初めの試験片を検査することによって検証されるパラメータによって、溶接が、完全に同一の方法で行われる。同様に、1つ以上の検査が、工程の終わりの試験片になされ、このことにより、ブリスクの1つまたは複数のブレード2の補修を検証すること、またはしないことが可能となる。好ましくは、工程の終わりの試験片は、金属によって出されるガスによって形成される空洞であるブローホールを探すために、たとえば金属試験によって正確に検査される。Ti17チタンの場合、これらのブローホールは、5μmから100μmであるほど小さく、簡単なX線撮影によって検出されることができない。金属検査の間に認められるミクロ細孔の密度は、補修を認めるための主要因である。このように、工程の初めの試験片および工程の終わりの試験片を溶接することによって、およびこれらを検査することによって、全稼動期間、すなわち1つまたは複数のブリスクの補修を検証することが可能であり、その理由は、工程の始まりおよび終わりが正確である場合、全補修が、検証されると考えられるからである。
【0050】
好ましくは、ブレード2が一旦溶接されると、ブレード2に実行される作業(熱処理、超音波ピーニング等)が行われ、このことは、溶接した後、および工程の終わりの試験片が検査された後に可能である。
【0051】
本発明の方法の1つの特徴によると、機械パラメータは、工程の初めおよび工程の終わりの試験片に対して同一である、いわゆる展開試験片に予め設定される。これらの展開試験片のおかげで、溶接機のパラメータは、画定された輪郭を有する特定のタイプのブレード2を補修するために実験的に決定される。このようなパラメータの展開は、機械の受容に応じて修理者によって、あるいは、あらかじめブリスクの製造業者によって実行されることができ、ブリスク製造業者は、ブレード2に適用されるパラメータをブリスク修理者に提供する。工程の初めの試験片の利点によって、パラメータが同じ機械に実行されないので、この場合にはさらに、わずかな変動を受けることがあるパラメータを適応させることが可能となる。
【0052】
このように実行すると、本発明の方法によって、従来の技術で不可能であったTil7チタンのブリスクを補修することだけでなく、このような補修を標準化することもまた可能となる。したがって、製造業者は、ブレード2を補修するために実行されるべきパラメータを修理者に提供して、これらのパラメータを検証し、概略的な検査によって、または検査さえせずに、1つ以上のブレードを補修し、次いで工程の終わりの試験片を溶接し検査することによってこの補修を検証するために、溶接を行い1つ以上の工程の初めの試験片を検査する。
【0053】
本発明の別の特徴によると、溶接機は、図6に示される機械的完全性確認の試験片と呼ばれる試験片24によって事前検証される。この目的のために、ブレード2の少なくとも最大厚さに対応する厚さを有する2つのプレートが、事前に設定されたパラメータによって電子ビーム溶接されるのは、それが、ブレードを溶接する間に、そのブレードは、ほとんどの欠陥が、結果として生じる溶接線25を有する機械的完全性確認の試験片24を得るように発生されやすいためである。
【0054】
次いで、スライス26が、機械的完全性確認の試験片24から溶接線25を横切って切断され、バー27を横切って延びる溶接線25を含むその中央部にバー27を形成するように、機械加工される。周期的な疲労試験が行われる装置のあご部によって握持されるように、バー27の両端部でより幅の広い領域28および29を残すように機械加工される。このような試験によって、様々な温度、たとえば室温およびブレード2の運転温度での、連続した引張力および圧縮力が使用される。試験片24は、上述のような様々な検査を行うために使用されることもまた可能であり、たとえば、金属組織試験のために、横断方向および長手方向に切断されることが可能である。
【0055】
このように、機械的完全性確認の試験片24によって、機械/材料の対を検証することが可能になり、その結果、材料の典型的な補修の衝撃、およびその機械的性質の低下を規定することが可能となる。
【0056】
有利なことには、補修方法を実施する前、および工程の初めの試験片を溶接する前に、このような機械的完全性確認が、各機械に対して行われる。それゆえに、材料に関してではなく、材料と関連した各機械に対して確認が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の方法を使用して1つのブレードが補修されることができる、一体型のブレード付きディスクの部分斜視図である。
【図2】本発明の方法の準備段階の間に取り除かれるブレード部分を灰色で示す、図1のディスクの1つのブレードを示す概略斜視図である。
【図3】本発明の方法を実行するためのヒールを有する、パッチの概略斜視図である。
【図4】ブレードに対応する、本発明の方法を実行するための、工程の初め、工程の終わり、または展開試験片の、第1の試験片要素の概略斜視図である。
【図5】パッチに対応する、本発明の方法を実行するための、工程の初め、工程の終わり、または展開試験片の、第2の試験片要素の概略斜視図である。
【図6】本発明の方法を実行するための、機械/材料の対を検証するために使用される、溶接部の機械的完全性を確認するための試験片の概略斜視図である。
【図7】周期的な疲労試験のために切断された図6の試験片の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ブリスク
2 ブレード
3 リム
4、16 前縁
5 後縁
6 前縁角
7 後縁角
8 先端部
9 共通部分
10、12、20、21 切断線
11 パッチ
13、14 ヒール
15 先端線
17 シールリップ
18 第1の要素
19 第2の要素
22、23 ヒール対応部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム溶接機械を使ってパッチ(11)を電子ビーム溶接することによって、少なくとも1つの損傷領域を含むターボ機械の一体型のブレード付きディスク(1)のブレード(2)を補修する方法であり、
損傷領域を準備するステップと、
パッチ(11)を電子ビーム溶接するステップと、
補修領域を機械加工によって再加工するステップとを含む方法であって、
・ 準備するステップが、画定された輪郭の補修されるべき領域(10)を得るように、損傷領域を機械加工することを含み、
・ いわゆる「工程の初め」の試験片を得るために、作動パラメータが予め設定される溶接機によって、前記画定された輪郭(20)を有するブレード(2)に対応する第1の試験片要素(18)に、パッチ(11)に対応しかつパッチ(11)の特徴を有する第2の試験片要素(19)の溶接が実行され、
・ 溶接後の工程の初めの試験片の品質が検査され、工程の初めの試験片の品質が補修受け入れ基準に対応する場合、その作動パラメータを変えずに同じ電子ビーム溶接機械によって、補修されるべき領域(10)にパッチ(11)が溶接され、
・ 補修領域が、機械加工することによって再加工されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
損傷領域の機械加工が、切断線(10)に沿って、損傷領域を含む標準化された部分(9)を切断することによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パッチ(11)が、過大寸法の厚みを有し、ブレード(2)の切断線(10)の画定された輪郭に対応する輪郭を有する切断線(12)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
過大寸法の厚みが、0.5mmから6mmの間好ましくは0.7mmから3.45mmの間で変動する厚みのブレードのために、切断線(10)の両側で約0.5mmに分割される約1mmの厚みである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
パッチ(11)が溶接される間、電子ビームが、わずかにパッチ(11)の側にずれている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
パッチ(11)に取り付けられた少なくとも1つのヒール(13、14)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
パッチ(11)がブレード(2)に溶接された後で、いわゆる「工程の終わり」の試験片を得るために、その作動パラメータを変えることなく同じ電子ビーム溶接機械によって、ブレード(2)に対応しブレード(2)の画定された輪郭を有する第1の試験片要素(18)に、パッチ(11)に対応しパッチ(11)の特徴を有する第2の試験片要素(19)を溶接するステップと、
工程の終わりの試験片の品質を検査するステップとを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
電子ビーム溶接機械を展開するステップを含み、該ステップの間に、展開試験片の非破壊および/または破壊検査が続く、いわゆる「展開試験片」を得るために、パッチ(11)の特徴を有するパッチ(11)に対応する第2の試験片要素(19)を、ブレード(2)の画定された輪郭を有するブレード(2)に対応する第1の試験片要素(18)に溶接することによって、パラメータが予め設定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程の初めの試験片と、工程の終わりの試験片と、展開試験片との、第1の要素(18)および第2の要素(19)が同一である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
試験片の溶接が、熱ポンピングをシミュレートするために、ブレード(2)の質量環境をシミュレートするための手段を使って行われる、請求項7および8、または9に記載の方法。
【請求項11】
材料/機械の対を検証するステップをさらに含み、該ステップの間に、機械的完全性を確認するための試験片(24)を得るために、ブレードの画定された輪郭の最大厚さと少なくとも同じ厚さを有するブレード(2)の材料の2つのプレートが溶接され、少なくとも周期的な疲労試験が、機械的完全性を確認するために試験片(24)に対して実行される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ブレードの先端部(8)、前縁または後縁の角(6、7)、前縁(4)または後縁(5)の中で、補修されるべき少なくとも1つの領域の補修に適用される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ブレード(2)が、Ti17と呼ばれるチタンから作られる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ターボ機械がターボジェットである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
切断線(20)を有し、切断線(20)の輪郭が、ブレード(2)の画定された輪郭と同一であり、同じ材料から作られる、請求項9に記載の方法を実行するための、工程の初め、工程の終わり、または展開試験片要素。
【請求項16】
パッチ(11)の特徴を有する、請求項9に記載の方法を実行するための、工程の初め、工程の終わり、または展開試験片要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−71198(P2007−71198A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−197653(P2006−197653)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【出願人】(599102789)
【Fターム(参考)】