説明

ダイシング用粘着シート及びそれを用いた被加工物の加工方法

【課題】 長期の時間が経過した場合でも、良好にピックアップ性を示すダイシング用粘着シート、及びそれを用いた被加工物の加工方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るダイシング用粘着シート10は、基材フィルム11上に少なくとも粘着剤層12が設けられており、被加工物をダイシングする際に用いるダイシング用粘着シート10であって、前記粘着剤層12は、アルコキシル基を側鎖に有するモノマーを5重量%以上含み構成されるアクリルポリマーが含有されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシング用粘着シート及びそれを用いた被加工物の加工方法に関し、より詳細には、シリコンや、ガリウム−ヒ素等の化合物半導体からなる半導体ウェハ、半導体パッケージ、ガラス、又はセラミックス等のダイシングに使用されるダイシング用粘着シート及びそれを用いた被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム−砒素等を材料とする半導体ウェハは、大径の状態で製造された後、所定の厚さになる様に裏面研削(バックグラインド)され、更に必要に応じて裏面処理(エッチング、ポリッシング等)がなされる。次に、半導体ウェハの裏面にダイシング用粘着シートが貼付された後、素子小片に切断分離(ダイシング)される。続いて、洗浄工程、エキスパンド工程、ピックアップ工程、マウント工程の各工程が施される。
【0003】
前記のダイシング用粘着シートは、プラスチックフィルム等からなる基材上に、アクリル系粘着剤等を塗布・乾燥して厚み約1〜50μmの粘着剤層が形成されて構成されている。このダイシング用粘着シートについては、ダイシングの際に半導体ウェハが剥離しない程度の粘着力が必要とされている。この観点から従来のダイシング用粘着シートとしては、例えばシリコンミラーウェハに対するピックアップの際の15°引き剥がし粘着力(引張り速度150mm/分、貼り付け温度23℃、引き剥がし温度23℃)が2.5N/25mmテープ幅以上のものが一般的に用いられている。その一方、ダイシング後のピックアップの際には、容易に剥離でき、かつ、半導体ウェハを破損しない程度の低い粘着力であることも要求されている。また、ダイシング用粘着シートは、半導体チップに対し糊残りを生じない等、低汚染性を有することも重要な特性の一つとなっている。これらの特性の両立を試みたものに、下記特許文献1に記載された発明等が例示できる。
【0004】
前記のピックアップは、各半導体チップ間の間隔を広げるエキスパンド工程が行われた後に実施される。エキスパンド工程は、ダイシング用粘着シートから半導体チップを容易に剥離できる状態にする工程である。また、当該工程は、ダイシング用粘着シートをある程度張った状態にし、ピックアップする半導体チップ下部のダイシング用粘着シートを点状又は線状に持ち上げる等することにより行われる。現在では、半導体チップをその様な剥離容易な状態にした後、上部側から半導体チップを真空吸着してピックアップする方式が主流となっている。
【0005】
しかしながら、近年、タクトタイムの向上、薄型化された半導体ウェハの破損の防止を目的として、半導体ウェハの裏面研削の際、研削後、又は破砕層の除去が終了した後、数時間内にダイシング用粘着シートに貼り付けるケースが増えてきている。破砕層の除去は、機械的、化学的又はそれらの両方により処理されるものであり、より具体的には、例えば、ドライポリッシュ、CMP、ウェットエッチング又はドライエッチング処理等を言う。この様な貼り付けを行った場合、貼り付けてからの時間が経過するに従い、ピックアップの際に於ける粘着力が高くなり、ピックアップ性が低下するという問題がある。これは、半導体ウェハの研削面(処理面)に於いて自然酸化膜が成長していない状態でダイシング用粘着シートが貼り合わされ、未酸化の活性なSi原子と粘着剤の間に化学的な結合を生ずる為と推察される。尚、自然酸化膜が成長していない状態の研削面をいわゆる活性面と言う。
【特許文献1】特開2001−234136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記のような従来の問題を解決しようとするものであり、半導体ウェハの裏面研削(又は裏面処理)直後にダイシング用粘着シートを貼り合わせ、その後、長期の時間が経過した場合でも、良好にピックアップ性を示すダイシング用粘着シート、及びそれを用いた被加工物の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、ダイシング用粘着シート、及びそれを用いた被加工物の加工方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明に係るダイシング用粘着シートは、前記の課題を解決する為に、基材フィルム上に少なくとも粘着剤層が設けられており、被加工物のダイシングに用いるダイシング用粘着シートであって、前記粘着剤層には、アルコキシル基を側鎖に有するモノマーを5重量%以上含み構成されるアクリルポリマーが含有されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成に於いて、粘着剤層を構成するアクリルポリマーには側鎖にアルコキシル基を有するモノマーを5重量%以上含む。この為、例えば被加工物の貼着面に活性な原子が存在していても、該原子と粘着剤層を構成するアクリルポリマーとの間で化学的な結合が生じるのを抑制する。その結果、長期間にわたる貼り付けの後に於いても粘着剤層の粘着力が大きくなり過ぎるのを防止し、ピックアップ性を良好な状態に維持する。
【0010】
前記構成に於いては、前記被加工物の活性面に対する前記粘着剤層の粘着力であって、測定温度23±3℃、粘着剤層の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角15°、引張り速度150mm/分の条件で引き剥がしを行なったときの90度ピール粘着力が、0.05〜1N/25mmテープ幅であることが好ましい。
【0011】
前記粘着剤層は、窒素を側鎖に有するモノマーを5重量%以上含み構成されることが好ましい。
【0012】
前記粘着剤層表面の水に対する接触角は、90度以下であることが好ましい。
【0013】
水に対する接触角を前記範囲内にすることにより、ダイシングの際に被加工物が容易に剥離しない様に確実に保持できる粘着力を維持しつつ、ダイシング後の被加工物の剥離も容易にして良好なピックアップ性を維持することができる。
【0014】
前記粘着剤層の25℃に於ける損失正接tanδが0.5以下であり、かつ50℃に於ける損失正接tanδが0.15以下であることが好ましい。
【0015】
粘着剤層の25℃に於けるtanδを0.5以下にし、50℃に於けるtanδを0.15以下にすることで、ダイシング用粘着シートを長期間にわたって被加工物に貼り合わせた場合でも、良好なピックアップ性を維持することができる。
【0016】
前記アクリルポリマーは、分子内の全側鎖の内1/100以上の側鎖それぞれに炭素−炭素二重結合を1個有することが好ましい。
【0017】
粘着剤層が、全側鎖の1/100以上で炭素−炭素二重結合を1個有する放射線硬化型のアクリルポリマーを含むので、放射線照射により粘着剤層を硬化させて粘着性を低下させることができる。これにより、ダイシング用粘着シートからダイシング後の被加工物をピックアップする際には、放射線を照射することにより、ダイシング用粘着シートからダイシング後の被加工物を容易に剥離できる。
【0018】
前記粘着剤層は、炭素−炭素の二重結合を有する放射線硬化型粘着剤を含み構成され、かつ、ダイシング用粘着シートをシリコンミラーウェハに貼り付けた後、測定温度23±3℃、粘着剤層の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角15°、引張り速度150mm/分の条件で引き剥がしを行なったときの粘着力が2.3N/25mmテープ幅以下であることが好ましい。
【0019】
前記の構成の様に、ダイシング用粘着シートのシリコンミラーウェハに対する粘着力を2.3N/25mmテープ幅以下にすることで、ピックアップの際のピックアップ不良を防止することができる。
【0020】
前記アクリルポリマーの重量平均分子量が50万以上であることが好ましい。
【0021】
前記粘着剤層は、前記被加工物から剥離した後の該被加工物に於ける貼着面での表面有機物汚染増加量ΔCが5%以下となる剥離性を有することが好ましい。
【0022】
前記構成のダイシング用粘着シートであると、剥離後の被加工物に於ける貼着面での表面有機物汚染増加量ΔCを5%以下に抑制するので、いわゆる糊残りを低減し被加工物に対する加工の歩留まりを向上させることが可能になる。
【0023】
また、本発明に係る被加工物の加工方法は、前記の課題を解決する為に、前記に記載のダイシング用粘着シートを用いて被加工物の加工を行う被加工物の加工方法であって、前記被加工物に前記ダイシング用粘着シートを貼り合わせる工程と、前記被加工物をダイシングする工程と、ダイシング後の前記被加工物を該ダイシング用粘着シートからピックアップする工程とを有することを特徴とする。
【0024】
前記方法であると、ダイシング用粘着シートが長期間にわたって被加工物に貼り付けられた後であっても、容易にピックアップすることが可能である。即ち、前記方法であると、歩留まりの向上が可能な被加工物の加工方法を提供することができる。
【0025】
前記方法に於いては、更に、前記被加工物を裏面研削する工程を有し、前記ダイシング用粘着シートの被加工物への貼り合わせは、該被加工物に於ける裏面研削を施した活性面に対して行うことが好ましい。尚、活性面とは、例えば、被加工物を研削などした場合に、自然酸化膜が成長しておらず、未酸化の活性なSi原子が存在する状態の研削面を言う。
【0026】
前記の方法に於いては、前記ダイシング用粘着シートの被加工物への貼り合わせは、前記裏面研削の後、1時間以内に行うことが好ましい。
【0027】
また、前記の方法に於いては、更に、前記被加工物の裏面研削の後、該裏面研削によって該被加工物に生成した破砕層を除去する工程を有し、前記ダイシング用粘着シートの被加工物への貼り合わせは、前記破砕層の除去後、1時間以内に行うことが好ましい。
【0028】
また、前記方法に於いては、前記被加工物として、厚さ100μm未満の半導体素子を用いることができる。即ち、前記方法であると、薄く脆弱な半導体素子を用いても歩留まりの向上を図ることが可能になる。尚、半導体素子とは、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム−砒素等を材料とする半導体ウェハ等を含む。
【0029】
また、本発明に係る半導体素子は、前記の課題を解決する為に、前記に記載の被加工物の加工方法により得られたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明に於けるダイシング用粘着シートの粘着剤層は、側鎖にアルコキシル基を有するモノマーを5重量%以上含むアクリルポリマーを含み構成されるので、長期間にわたり被加工物に貼り付けられた状態であっても粘着剤層の粘着力が増大し過ぎるのを防止し、ピックアップ性を良好な状態に維持する。これにより、歩留まりの向上を図ることが可能なダイシング用粘着シート及びそれを用いた被加工物の加工方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態について、図1及び図2を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施の形態に係るダイシング用粘着シート(以下、単に「粘着シート」と言う)を概略的に示す断面模式図である。図2は、前記粘着シートをシリコンミラーウェハから剥離させる様子を示す模式図である。
【0032】
図1に示すように、粘着シート10は、基材フィルム11上に粘着剤層12及びセパレーター13が積層された構成を有する。粘着シート10は、シート状、ロール状等、用途に応じて適宜な形状をとり得る。例えばウェハダイシング用途の場合、あらかじめ所定の形状に切断加工されたものが好適に用いられる。尚、本実施の形態に於いては、基材フィルム11の片面にのみ粘着剤層12を設けた態様を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基材フィルム11の両面に粘着剤層12を設けた態様であってもよい。
【0033】
基材フィルム11は、粘着シート10の強度母体となるものである。基材フィルム11としては特に限定されないが、プラスチックフィルムが特に好適に用いられる。プラスチックフィルムの構成材料として、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂及びこれらの架橋体等のポリマーが挙げられる。尚、前記の構成材料は、必要に応じて官能基、機能性モノマーや改質性モノマーをグラフトして用いてもよい。
【0034】
基材フィルム11の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0035】
基材フィルム11は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができる。また、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることもできる。更に、基材フィルム11には、帯電防止能を付与する為、前記の基材フィルム11上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材フィルム11は単層あるいは2種以上の複層でもよい。尚、粘着剤層12が放射線硬化型の場合にはX線、紫外線、電子線等の放射線を少なくとも一部透過するものを用いる。
【0036】
基材フィルム11の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には10〜300μm、好ましくは30〜200μm程度である。
【0037】
基材フィルム11の製膜方法としては、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、カレンダー製膜、キャスティング製膜、インフレーション押出し、Tダイ押出し等を好適に用いることが出来る。
【0038】
基材フィルム11は、単層フィルム又は多層フィルムの何れであってもよい。また、前記2種以上の樹脂をドライブレンドしたブレンド基材であってもよい。多層フィルムは、前記樹脂等を用いて、共押出し法、ドライラミネート法等の慣用のフィルム積層法により製造できる。また、基材フィルム11は、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施してもよい。この様にして製造された基材フィルム11の表面には、必要に応じてマット処理、コロナ放電処理、プライマー処理、架橋処理等の慣用の物理的又は化学的処理を施すことが出来る。
【0039】
粘着剤層12は、アクリルポリマーを含み構成されている。アクリルポリマーはベースポリマーとしての役割を果たし、アルコキシル基を側鎖に有するモノマーを5重量%以上含み構成されていることが好ましく、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは25重量%以上である。アルコキシル基を側鎖に有するモノマーを含み構成されることにより、例えば被加工物の貼着面に活性な原子が存在していても、該原子と粘着剤層12を構成するアクリルポリマーとの間で化学的な結合が生じるのを抑制する。その結果、長期間にわたる貼り付けの後に於いても粘着剤層12の粘着力が増大し過ぎるのを防止し、ピックアップ性を良好な状態に維持する。
【0040】
前記被加工物の活性面に対する前記粘着剤層12の90度ピール粘着力は、0.05〜1N/25mmテープ幅であることが好ましく、0.1〜0.5N/25mmテープ幅であることがより好ましい。粘着剤層12の活性面に対する粘着力を前記数値範囲内に制御することにより、良好なピックアップ性を維持することができる。
【0041】
粘着剤層12の厚みは、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。粘着シート10に貼り付けられた被加工物は、そのダイシングの際に振動することがある。このとき、その振動幅が大きいと、被加工物の切断チップに欠け(チッピング)が発生する場合がある。しかし、本発明に於いては、粘着剤層12の厚みを50μm以下にすることにより、被加工物をダイシングする際に発生する振動の振動幅が大きくなり過ぎるのを抑制する。その結果、切断チップに欠けが発生する、いわゆるチッピングの低減が図れる。その一方、粘着剤層12の厚みを1μm以上にすることにより、ダイシングの際に被加工物が容易に剥離しない様にこれを確実に保持することができる。粘着剤層12の厚みは、更に3〜20μmの範囲内にすることが好ましい。この範囲内にすることにより、チッピングの低減が一層図れ、かつダイシングの際の被加工物の固定も一層確実にし、ダイシング不良の発生を防止することができる。
【0042】
粘着剤層12の表面は、その水に対する接触角が90度以下であることが好ましく、40度を超えて87度以下であることがより好ましい。この範囲内にすることにより、ダイシングの際に被加工物が容易に剥離しない様に確実に保持できる粘着力を維持しつつ、ダイシング後の被加工物の剥離も容易にして良好なピックアップ性を維持することができる。尚、接触角が40度以下であると、粘着剤層12を構成するポリマーの重合が不十分になる場合がある。また接触角の値は、例えば、ポリマーの構成成分であるモノマーの種類及び配合割合の変更、添加剤の種類及び配合割合の変更、更にはポリマーの分子量、その製造条件など種々の条件の変更などにより、前記範囲内で増大又は減少させることが可能である。
【0043】
粘着剤層12の25℃、周波数1Hzに於ける損失正接tanδは、0.5以下であり、かつ50℃、周波数1Hzに於ける損失正接tanδは0.15以下であることが好ましい。前記範囲内にすることにより、長期にわたる貼り付け後であっても良好なピックアップ性を維持することができる。また、前記範囲内のうち、粘着剤層12の25℃、周波数1Hzに於ける損失正接tanδを0.01以上、かつ50℃、周波数1Hzに於ける損失正接tanδを0.001以上にすることにより、被加工物に対する濡れ性を良好に維持することができ、ボイドの発生も低減できる。尚、損失正接tanδは、粘着剤層12の貯蔵弾性率をG’とし損失弾性率をG”とした場合に、tanδ=G”/G’で表される。
【0044】
粘着剤層12の粘着力は、2.3N/25mmテープ幅以下であることが好ましく、2.0N/25mmテープ幅以下であることがより好ましい。粘着力が2.3N/25mmテープ幅以下であると、ピックアップ性を良好にし、糊残りの発生を低減できる。粘着剤層12の粘着力の値は、例えば、前記の接触角の場合と同様にすることにより、前記範囲内で増大又は減少させることが可能である。粘着剤層12の粘着力は、図2に示すように、シリコンミラーウェハ14に貼り付けた後、測定温度23±3℃で、粘着剤層12の表面とシリコンミラーウェハ14の表面とのなす角θを15°とし、引張り速度150mm/分として、aで示す方向に粘着シート10を引き剥がした場合の値である。尚、粘着剤層12の粘着力をシリコンミラーウェハ14を用いて規定しているのは、シリコンミラーウェハ14表面の粗さの状態が一定程度平滑であること、ダイシング及びピックアップの対象である被加工物としての半導体ウェハ等と同質材料であることによる。また、測定温度23±3℃に於ける粘着力を基準としているのは、通常ピックアップが行われるのが室温(23℃)下であることによる。
【0045】
粘着剤層12は、シリコンからなる半導体ウェハの貼着面に於ける表面有機物汚染増加量ΔCが5%以下となる剥離性を有していることが好ましい。粘着剤層12がその様な剥離性を有することにより、ピックアップ後の半導体チップに糊残りが生じるのを低減することができる。表面有機物汚染増加量ΔC(%)の値は、例えば、前記の接触角の場合と同様にすることにより、前記範囲内で増大又は減少させることが可能である。尚、表面有機物汚染増加量ΔC(%)は、粘着シート10を半導体ウエハに23℃で貼り合わせ、半導体ウエハのダイシング後、ピックアップ直前に於いて23℃で粘着シート10を剥離したときの表面有機物汚染量の値C(%)から、半導体ウエハの表面有機物汚染量の値C(%)を差し引いた値である。また、粘着剤層12が後述の放射線硬化型粘着剤を含み構成される場合、表面有機物汚染増加量ΔCは、放射線を照射した後に剥離したときの値を示す。
【0046】
前記の側鎖にアルコキシル基を含むモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシ等が挙げられる。尚、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの双方を含む意味である。また、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0047】
前記アクリルポリマーは、側鎖に窒素を含むモノマーを5重量部以上含んでいることが好ましく、10重量%以上含んでいることがより好ましく、20重量%以上含んでいることが特に好ましい。側鎖に窒素を含むモノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸 N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、N,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0048】
アクリルポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルのアルキルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、オクチルエステル等が挙げられる。また、他のモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0049】
前記アクリルポリマーは、架橋させることを目的に、共重合用モノマー成分としての多官能性モノマー等も必要に応じて含ませることが出来る。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0050】
前記アクリルポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。粘着剤層12は半導体ウェハ等に対する汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリルポリマーの重量平均分子量は、好ましくは50万以上、より好ましくは80万〜300万程度である。
【0051】
また、ベースポリマーであるアクリルポリマー等の重量平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に用いることもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマー等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して0.01〜5重量部配合するのが好ましい。更に、必要に応じて、前記成分の他に、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、着色剤等の慣用の添加剤を含有させることが出来る。
【0052】
粘着剤層12は、ダイシングの際のチップの剥離を防止し、かつピックアップ時にチップからの剥離性を向上させる為、放射線硬化型粘着剤により形成することが好ましい。放射線硬化型粘着剤を用い、放射線を照射してその架橋度を増大させることにより、粘着剤層12の粘着力を容易に低下させることができる。放射線としては、例えば、紫外線、電子線等が例示できる。
【0053】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。特に炭素−炭素二重結合を一分子中に平均6個以上有する放射線硬化型粘着剤が好ましい。放射線硬化型粘着剤としては、前記のアクリルポリマーに、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。配合する放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;エステルアクリレートオリゴマー;2−プロペニル−3−ブテニルシアヌレート;イソシアヌレート、イソシアヌレート化合物等が挙げられる。また、炭素−炭素二重結合を一分子中に平均6個以上有する放射線硬化型粘着剤としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
前記放射線硬化性のモノマー成分又はオリゴマー成分の配合量は特に制限されるものではないが、ピックアップ時、つまり放射線照射後の被加工物に対する引き剥がし粘着力を低下させることを考慮すると、粘着剤中に40〜75重量%を配合するのが好ましく、より好ましくは50〜70重量%である。放射線硬化性のモノマー成分又はオリゴマー成分の粘度は、特に制限されるものではない。また、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分は、1種類又は2種以上を混合したものでもよい。
【0055】
また、放射線硬化型粘着剤としては、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマーの側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するポリマーを用いることも出来る。この様なベースポリマーとしては、前述のようなアクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。この場合に於いては、放射線硬化性モノマーやオリゴマー成分を特に加えなくてもよく、その使用は任意である。
【0056】
また、前記アクリルポリマーは、その分子内の全側鎖の内1/100以上の側鎖それぞれに炭素−炭素二重結合を一個有する二重結合導入型アクリルポリマーであることが好ましい。但し、アクリルポリマーの主鎖中又は主鎖末端にも炭素−炭素二重結合を有していてもよい。炭素−炭素二重結合を有するアクリルポリマーは、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない。この為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層12を形成することができる。
【0057】
前記アクリルポリマーに炭素−炭素二重結合を導入する方法としては特に制限されず、様々な方法を採用できる。炭素−炭素二重結合をアクリルポリマーの側鎖に導入することは、分子設計の点からも有利である。前記の方法としては、例えば、予めアクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応し得る官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。導入する炭素−炭素二重結合を全側鎖の1/100以上に制御する手段としては、例えば、縮合又は付加反応させる前記化合物の添加量を適宜調節することにより行う。
【0058】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0059】
放射線硬化型粘着剤に於いては、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリルポリマーを単独で使用することができる。また、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合して使用することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等の配合量は、通常アクリルポリマー100重量部に対して10〜300重量部の範囲内であり、好ましくは30〜150重量部の範囲である。
【0060】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のべンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン類の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
【0061】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリルポリマー100重量部に対して、例えば0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部程度である。
【0062】
また、粘着剤層12には、放射線硬化型粘着剤の他に熱剥離型粘着剤を使用してもよい。熱剥離型粘着剤を使用しても被加工物の剥離が容易となり、ピックアップ性を良好なものにできる。
【0063】
熱剥離型粘着剤としては、アクリルポリマー等に熱膨張性微粒子が配合された熱発泡型粘着剤が挙げられる。被加工物の接着目的を達成したのち熱膨張性微粒子を含有する粘着剤層12を加熱することで粘着剤層12が発泡もしくは膨張して粘着剤層12表面を凹凸状に変化させる。その結果、被加工物との接着面積を減少させ粘着力を低減し、剥離を容易にする。
【0064】
前記熱膨張性微粒子については特に限定はなく、種々の無機系又は有機系の熱膨張性微小球を選択使用することができる。また、熱膨張性物質をマイクロカプセル化してなる膨張性微粒子も使用可能である。
【0065】
本実施の形態に於いては、粘着剤層12が単層の場合を例にして説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、複数の層を積層したものでもよい。
【0066】
基材フィルム11上に粘着剤層12を形成する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、基材フィルム11に粘着剤層12の構成材料を直接塗布する方法や、離型剤が塗布されたシート上に前記の構成材料を塗布・乾燥して粘着剤層12を形成した後、基材フィルム11上に転写する方法等、適宜な手法が用いられる。
【0067】
セパレーター13は、粘着剤層12の保護、ラベル加工、及び粘着剤層12の表面を平滑にする機能を有し、またそれらの目的の為に、適宜必要に応じて設けられるものである。
【0068】
セパレーター13の構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等が挙げられる。セパレーター13の表面には粘着剤層12からの剥離性を高める為、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていてもよい。また、必要に応じて、粘着剤層12が環境紫外線によって反応するのを防止する為に、紫外線防止処理が施されていてもよい。セパレーター13の厚みは、通常10〜200μm、好ましくは25〜100μm程度である。
【0069】
次に、本実施の形態に係る粘着シート10を用いた被加工物の加工方法について説明する。以下の説明では、被加工物として半導体ウェハを用いた場合を例にする。
【0070】
本発明の粘着シート10は、半導体部品等の半導体ウェハに貼り合わせた後(マウント工程)、主にダイシング工程及びピックアップ工程に於いて使用される。マウント工程は、半導体ウェハの裏面側と粘着シート10とを、粘着剤層12側が貼り合わせ面となる様に重ね合わせ、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。当該工程は、半導体ウェハの裏面研削の際、研削後、又は破砕層の除去が終了した後、1時間〜数時間以内に行ってもよい。この場合、半導体ウェハ側の貼り合わせ面は、自然酸化膜が成長しておらず、未酸化の活性なSi原子が存在する、いわゆる活性面となっているが、この様な場合であっても、本発明に係る粘着シート10は良好なピックアップ性を発揮することができる。尚、破砕層の除去は、機械的、化学的又はそれらの両方により処理されるものであり、より具体的には、例えば、ドライポリッシュ、CMP、ウェットエッチング又はドライエッチング処理等を言う。また、マウント工程は、加圧可能な容器(例えばオートクレーブ等)中で、半導体ウェハと粘着シート10を前記のように重ね、容器内を加圧することによっても行うことができる。この際、押圧手段により押圧しながら貼り付けてもよい。また、真空チャンバー内で、前記と同様に貼り付けることもできる。貼り付けの際の貼り付け温度は何ら限定されないが、20〜80℃であることが好ましい。
【0071】
ダイシング工程は、半導体ウェハを個片化して半導体チップを製造する為に行う。ダイシングは、例えば半導体ウェハの回路面側から常法に従い行われる。ダイシング工程では、ブレードを高速回転させ、半導体ウェハを所定のサイズに切断して行われる。また、本工程では、例えば粘着シート10まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハは、粘着シート10により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハの破損も抑制できる。
【0072】
半導体チップのピックアップは、粘着シート10に接着固定された半導体チップを剥離する為に行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップを粘着シート10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップをピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0073】
ここで、放射線硬化型粘着剤層又は熱剥離型粘着剤層を有する粘着シート10を用いる場合には、粘着剤層12を放射線照射又は加熱処理してもよい。これにより粘着性を低下させ、ピックアップの容易化を図る。放射線硬化型の粘着剤層の場合、放射線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。また、熱剥離型の粘着剤層の場合、これを加熱すると、熱発泡性又は熱膨張性成分により粘着剤層が膨張して、半導体チップとの接着面積を著しく減少させることができる。これにより、半導体チップに対する粘着シート10の粘着力が低下し、半導体チップから粘着シート10の剥離が容易になる。その結果、半導体チップを損傷させることなくピックアップが可能となる。加熱処理を行う場合に於ける加熱温度、加熱時間等の加熱条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。
【0074】
以上の説明に於いては、被加工物として半導体ウェハを用いた場合を例にして本発明に係る粘着シートを説明した。しかし、本発明はこれに限定されず、半導体パッケージ、ガラス、セラミックス等のダイシング用としても適用可能である。
【実施例】
【0075】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0076】
(実施例1)
基材フィルムとして、厚み70μmの直鎖状低密度ポリエチレンからなるフィルムを使用した。このフィルムの片面にはコロナ処理を施した。
【0077】
アクリル酸メチル75重量部、アクリル酸メトキシエチル10重量部、N−ビニルピロリドン10重量部、及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル5重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させた。これにより、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの側鎖末端OH基の90%に2−メタクリロイルオキシエチレンイソシアネートのNCO基を付加反応させ末端に炭素−炭素二重結合を付与した重量平均分子量50万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
【0078】
次に、アクリル系共重合体を含有する溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレートとジイソシアネートを反応させて得た紫外線硬化性オリゴマー(25℃での粘度10Pa・sec)130重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)3重量部、及びポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)2重量部を加えて、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を得た。
【0079】
前記で調製したアクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を、前記フィルムのコロナ処理面に塗布し、80℃で10分間加熱架橋した。これにより、厚さ5μmの紫外線硬化型粘着剤層を形成した。次に、この放射線硬化型粘着剤層の表面にセパレーターを貼り合せて紫外線硬化型のダイシング用粘着シートを作製した。
【0080】
(実施例2)
アクリル酸メチル75重量部、アクリル酸メトキシエチル10重量部、N−ビニルピロリドン5重量部、及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル10重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させた。これにより、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの側鎖末端OH基の90%に2−メタクリロイルオキシエチレンイソシアネートのNCO基を付加反応させ末端に炭素−炭素二重結合を付与した重量平均分子量60万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
【0081】
次に、アクリル系共重合体を含有する溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレートとジイソシアネートを反応させて得た紫外線硬化性オリゴマー(25℃での粘度10Pa・sec)130重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)3重量部、及びポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)2重量部を加えて、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を得た。
【0082】
次に、前記で調製したアクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にすることにより、本実施例に係る紫外線硬化型のダイシング用粘着シートを作製した。
【0083】
(実施例3)
アクリル酸メチル40重量部、アクリル酸メトキシエチル30重量部、アクリロイルモルフォリン20重量部、及び2−ヒドロキシエチル10重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させた。これにより、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの側鎖末端OH基の90%に2−メタクリロイルオキシエチレンイソシアネートのNCO基を付加反応させ末端に炭素−炭素二重結合を付与した重量平均分子量50万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
【0084】
次に、アクリル系共重合体を含有する溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレートとジイソシアネートを反応させて得た紫外線硬化性オリゴマー(25℃での粘度10Pa・sec)130重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)3重量部、及びポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)2重量部を加えて、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を得た。
【0085】
次に、前記で調製したアクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にすることにより、本実施例に係る紫外線硬化型のダイシング用粘着シートを作製した。
【0086】
(比較例1)
アクリル酸メチル95重量部、アクリル酸5重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させた。これにより、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
【0087】
次に、アクリル系共重合体を含有する溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレートとジイソシアネートを反応させて得た紫外線硬化性オリゴマー(25℃での粘度10Pa・sec)130重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)3重量部、及びポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)2重量部を加えて、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を得た。
【0088】
次に、前記で調整したアクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にすることにより、本比較例に係る紫外線硬化型のダイシング用粘着シートを作製した。
【0089】
(比較例2)
アクリル酸メチル60重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル35重量部、アクリル酸5重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させた。これにより、重量平均分子量70万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
【0090】
次に、アクリル系共重合体を含有する溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレートとジイソシアネートを反応させて得た紫外線硬化性オリゴマー(25℃での粘度10Pa・sec)130重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)3重量部、及びポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)2重量部を加えて、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を得た。
【0091】
次に、前記で調整したアクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にすることにより、本比較例に係る紫外線硬化型のダイシング用粘着シートを作製した。
【0092】
(比較例3)
アクリル酸メチル87重量部、N−ビニルピロリドン3重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル10重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させた。これにより、アクリル酸2−ヒドロキシエチルの側鎖末端OH基の90%に2−メタクリロイルオキシエチレンイソシアネートのNCO基を付加反応させ末端に炭素−炭素二重結合を付与した重量平均分子量50万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
【0093】
次に、アクリル系共重合体を含有する溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレートとジイソシアネートを反応させて得た紫外線硬化性オリゴマー(25℃での粘度10Pa・sec)130重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)3重量部、及びポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)2重量部を加えて、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を得た。
【0094】
続いて、前記で調整したアクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にすることにより、本比較例に係る紫外線硬化型のダイシング用粘着シートを作製した。
【0095】
(比較例4)
アクリル酸メチル95重量部、アクリル酸5重量部を酢酸エチル中で常法により共重合させた。これにより、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
【0096】
次に、アクリル系共重合体を含有する溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレートとジイソシアネートを反応させて得た紫外線硬化性オリゴマー(25℃での粘度10Pa・sec)130重量部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)3重量部、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製)2重量部、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名「ノイゲンET−147」、第一工業製薬(株)製)2重量部を加えて、アクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を得た。
【0097】
次に、前記で調整したアクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にすることにより、本比較例に係る紫外線硬化型のダイシング用粘着シートを作製した。
【0098】
[活性面に対する粘着力]
実施例及び比較例で得られたダイシング用粘着シートを、25mm幅に切断し、裏面研削を施した6インチの半導体ウェハ(厚み400μm)の研削面に貼り付けた。貼り付けは、研削終了から5分以内に23±3℃の温度条件で行った。その後、室温雰囲気下で30分静置した。更に、ダイシング用粘着シートの裏面側から紫外線を照射(照射時間20秒、照射強度500mJ/cm)した。その後、粘着剤層表面と研削面とのなす角θが90度となる様にし、又このときの引張り速度を300mm/分とした。測定の結果、粘着力の値が0.05N/25mmテープ幅以上1.0N/25mmテープ幅以下のものを良とし、当該数値範囲外のものを不良とした。結果を下記表2に示す。尚、裏面研削の条件は下記の通りとした。
【0099】
<裏面研削条件>
グラインダー:DISCO社製、DFG−840
1軸:#600砥石(回転数:4800rpm、ダウンスピード:P1:3.0μm/sec、P2:2.0μm/sec、P3:1.0μm/sec)
2軸:#2000砥石(回転数:5500rpm、ダウンスピード:P1:0.8μm/sec、P2:0.6μm/sec、P3:0.5μm/sec)
裏面研削は、先ず2軸にて30μmの厚み分を研削した後、1軸にて最終厚みが400μmとなるように半導体ウェハを研削した。
【0100】
[ピックアップ評価]
実施例及び比較例で得られたダイシング用粘着シートを、研削を施した6インチの半導体ウェハ(厚み100μm)の研削面に、研削直後(研削終了から5分以内)に23℃でマウントした。次に、下記条件で半導体ウェハをダイシングし、半導体チップを形成した。
【0101】
続いて、マウントしてから6時間後、及び1週間後にそれぞれシート裏面から紫外線を照射(照射時間20秒、照射強度500mJ/cm)した。更に、任意の半導体チップ50個を下記条件でピックアップ(剥離)し、ピックアップが成功したチップ数をカウントした。全ての半導体チップのピックアップが成功した場合を良とし、それ以外は不良とした。結果を下記表1に示す。
【0102】
<ダイシング条件>
ダイサー:DISCO社製、DFD−651
ブレード:DISCO社製、27HECC
ブレード回転数:40000rpm
ダイシング速度:120mm/sec
ダイシング深さ:25μm
カットモード:ダウンカット
ダイシングサイズ:5.0×5.0mm
【0103】
<ピックアップ条件>
ダイボンダー:NEC Machinery CPS−100
ピン数:4本
ピンの間隔:3.5×3.5mm
ピン先端曲率:0.250mm
ピン突き上げ量:0.50mm
吸着保持時間:0.2秒
エキスバンド量:3mm
【0104】
[15°引き剥がし粘着力評価]
実施例及び比較例で得られたダイシング用粘着シートを、25mmテープ幅で短冊状に切断し、23℃(室温)で鏡面処理したミラーシリコンウェハ(商品名「CZN<100>2.5−3.5(4インチ)」、信越半導体(株)製)に貼り合わせた。その後、室温雰囲気下で30分静置した。更に、ダイシング用粘着シート裏面側から紫外線を照射(照射時間20秒、照射強度500mJ/cm)した。
【0105】
紫外線の照射後、23℃の恒温室で、前記図2で説明したのと同様に、粘着剤表面とミラーシリコンウェハ表面とのなす角θが15°となる様に、矢印aで示す方向にダイシング用粘着シートを引き剥がした。このときの引張り速度は150mm/分とした。測定の結果、粘着力の値が2.3N/25mmテープ幅以下のものを良とし、2.3N/25mmテープ幅より大きいものを不良とした。結果を下記表1に示す。
【0106】
[ミラーシリコンウェハへの表面有機物汚染増加量ΔC評価]
実施例及び比較例で得られたダイシング用粘着シートを、それぞれ前記のミラーシリコンウェハに貼り合わせて1時間放置した。その後、前記の接着力測定試験に準じ、剥離したシリコンウェハ面について、ESCA装置を用いて表面炭素元素比率C(%)を測定した。また、オリジナルのミラーシリコンウェハ面について、ESCA装置を用いて表面炭素元素比率C(%)を測定した。測定条件は下記の通りである。
【0107】
続いて、C(%)及びC(%)の各値に基づき、下記計算式を用いて表面有機物汚染増加量ΔCを算出した。算出の結果、ΔCが5%以下のものを良とし、5%より大きいものを不良と判定した。結果を下記表1に示す。
【0108】
【数1】

【0109】
<ESCA表面分析の測定条件>
装置:アルバック・ファイ社製 Quantum2000
X−ray Setting:200μmφ[30W(15kV)]のポイント分析
X線源:モノクロAIKα
光電子取り出し角:45°
【0110】
[粘着剤層の粘弾性測定]
測定サンプルの作成は以下の方法に従い行った。即ち、各実施例及び比較例で調製したアクリル系の紫外線硬化型粘着剤溶液をセパレーター上に塗布した後、100℃で3分間乾燥させて、乾燥後の厚みが50μmの粘着剤層を形成した。次に、2kgハンドローラーを用いて面内を均一に押圧することにより、セパレーター及び粘着剤層の総厚みが3mmとなる様にした。続いて、サンプル内の脱泡を目的として温度50℃、圧力5kg/cm2の条件でオートクレーブを実施し、各サンプルを作製した。
【0111】
粘着剤層の粘弾性測定はレオメトリック社製のARES(商品名)を用い、ω=1Hz、プレート径:7.9mmφ、歪み:1%(25℃)の測定条件にて温度範囲−5〜75℃まで測定した。測定から得られた25℃、50℃での貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”の値を用いて、tanδ=G”/G’から損失正接tanδを算出した。
【0112】
[粘着剤層表面の水に対する接触角の測定]
画像処理式接触角計(商品名;FACE、接触角計、CA−X型)を用い、実施例及び比較例で得られたダイシング用粘着シートの粘着剤層側を上にして、該粘着剤層表面にシリンジを用いて水を滴下した。滴下1分経過後の接触角を測定した。測定の結果、接触角が90°以下の場合を良とし、90°より大きい場合を不良とした。
【0113】
[総合評価]
総合評価は、ピックアップ、損失正接tanδ、水に対する接触角、粘着力、表面有機物汚染量ΔCの全ての評価項目で良である場合を良とし、何れか一つでも評価項目に不良がある場合は不良とした。下記表1から明らかな様に、実施例1〜3のダイシング用粘着シートについては、マウント後6時間及び1週間経過した場合も、全ての半導体チップを良好にピックアップすることができピックアップ性に優れていることが確認された。また、表面有機物汚染量ΔCも微量であり、糊残りの発生を低減することができ汚染性に優れていることが確認された。その一方、比較例1〜4のダイシング用粘着シートについては、ピックアップ性、及び汚染性の両方の特性を満足するものは無かった。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の一形態に係るダイシング用粘着シートを概略的に示す断面模式図である。
【図2】前記粘着シートをシリコンミラーウェハから剥離させる様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0117】
10 ダイシング用粘着シート(粘着シート)
11 基材フィルム
12 粘着剤層
13 セパレーター
14 シリコンミラーウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に少なくとも粘着剤層が設けられており、被加工物のダイシングに用いるダイシング用粘着シートであって、
前記粘着剤層には、アルコキシル基を側鎖に有するモノマーを5重量%以上含み構成されるアクリルポリマーが含有されていることを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項2】
請求項1に記載のダイシング用粘着シートであって、
前記被加工物の活性面に対する前記粘着剤層の粘着力であって、測定温度23±3℃、引張り速度150mm/分の条件で引き剥がしを行なったときの90度ピール粘着力が、0.05〜1N/25mmテープ幅であることを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイシング用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、窒素を側鎖に有するモノマーを5重量%以上含み構成されることを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のダイシング用粘着シートであって、
前記粘着剤層表面の水に対する接触角は、90度以下であることを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載のダイシング用粘着シートであって、
前記粘着剤層の25℃に於ける損失正接tanδが0.5以下であり、かつ50℃に於ける損失正接tanδが0.15以下であることを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のダイシング用粘着シートであって、
前記アクリルポリマーは、分子内の全側鎖の内1/100以上の側鎖それぞれに炭素−炭素二重結合を1個有することを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のダイシング用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、炭素−炭素の二重結合を有する放射線硬化型粘着剤を含み構成され、
かつ、ダイシング用粘着シートをシリコンミラーウェハに貼り付けた後、測定温度23±3℃、粘着剤層の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角15°、引張り速度150mm/分の条件で引き剥がしを行なったときの粘着力が2.3N/25mmテープ幅以下であることを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載のダイシング用粘着シートであって、
前記アクリルポリマーの重量平均分子量が50万以上であることを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のダイシング用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、前記被加工物から剥離した後の該被加工物に於ける貼着面での表面有機物汚染増加量ΔCが5%以下となる剥離性を有することを特徴とするダイシング用粘着シート。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載のダイシング用粘着シートを用いて被加工物の加工を行う被加工物の加工方法であって、
前記被加工物に前記ダイシング用粘着シートを貼り合わせる工程と、
前記被加工物をダイシングする工程と、
ダイシング後の前記被加工物を該ダイシング用粘着シートからピックアップする工程とを有することを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項11】
請求項10に記載の被加工物の加工方法であって、
更に、前記被加工物を裏面研削する工程を有し、
前記ダイシング用粘着シートの被加工物への貼り合わせは、該被加工物に於ける裏面研削を施した活性面に対して行うことを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項12】
請求項11に記載の被加工物の加工方法であって、
前記ダイシング用粘着シートの被加工物への貼り合わせは、前記裏面研削の後、1時間以内に行うことを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項13】
請求項11に記載の被加工物の加工方法であって、
更に、前記被加工物の裏面研削の後、該裏面研削によって該被加工物に生成した破砕層を除去する工程を有し、
前記ダイシング用粘着シートの被加工物への貼り合わせは、前記破砕層の除去後、1時間以内に行うことを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項14】
請求項10〜13の何れか1項に記載の被加工物の加工方法であって、
前記被加工物として、厚さ100μm未満の半導体素子を用いることを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項15】
請求項10〜14の何れか1項に記載の被加工物の加工方法により得られたものであることを特徴とする半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−220694(P2007−220694A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21027(P2006−21027)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】