説明

ダイボンディング装置

【課題】 ボンディング精度のさらなる向上を図ることができるダイボンディング装置を提供する。
【解決手段】 モニタ画面上の任意のチップ4を認識し(S1)、その初期位置座標(X0,Y0)を記憶する(S2)。XYテーブルでチップをX方向へ移動し、移動後座標(X1,Y1)を記憶する(S4)。初期位置座標(X0,Y0)及び移動後座標(X1,Y1)間でのX方向へのX方向移動量とY方向へのY方向移動量を求め、X方向移動量及びY方向移動量を用いた三角関数によって、XYテーブルのXYテーブル座標軸に対するモニタ画面のモニタ画面座標軸のズレ角θを演算する(S5)。このズレ角θを用いてXYテーブル上での座標を算出し、この座標に基づいてXYテーブルを駆動する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップをピックアップする際にウェーハマウントに支持されたウェーハリングをXYテーブルで駆動するダイボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、ウェーハリング701に張設されたウェーハシート702上のウェーハ703はダイシングされてチップ704が形成されており、このチップ704は、ダイボンディング装置によってリードフレームにボンディングされるように構成されている。
【0003】
このダイボンディング装置において、ウェーハマウントに取り付けられた前記ウェーハリング701よりチップ704をピックアップする際には、図6に示すように、ピックアップ対象となるチップ704をカメラで撮影し、モニタ画面711上での中心位置712から前記チップ704の中心713までの位置ズレ量714を画像認識で検出し、その位置ズレ量714分前記ウェーハマウントのXYテーブルを駆動して、前記チップ704の位置ズレを補正する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなダイボンディング装置にあっては、ウェーハマウントのXYテーブルとモニタ画面とは、どんなに調整しても完全な平行を出すことは困難であった。
【0005】
このため、図7に示すように、前記XYテーブルのXYテーブル座標軸721と、モニタのモニタ画面座標軸722との間には、角度ズレ723が発生してしまい、XYテーブルを駆動してチップの位置ズレを補正しても、僅かなズレが生じてしまう。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、ボンディング精度のさらなる向上を図ることができるダイボンディング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明のダイボンディング装置にあっては、ピックアップ対象となるチップをカメラで撮影し、そのモニタ画面上でチップの位置ズレ量を画像認識するとともに、該位置ズレ量に基づいて前記チップをXYテーブルで駆動して位置ズレを補正するダイボンディング装置において、前記モニタ画面上の任意のチップを認識し、当該チップの前記モニタ画面上の座標を初期位置座標として記憶する初期位置記憶手段と、前記チップを前記カメラの撮影範囲内にて前記XYテーブルで所定量X方向へ移動した後、当該チップの前記モニタ画面上の座標を移動後座標として記憶する移動後座標記憶手段と、前記初期位置座標及び前記移動後座標間でのX方向へのX方向移動量とY方向へのY方向移動量を求め、前記X方向移動量及び前記Y方向移動量を用いた三角関数によって前記XYテーブルのXYテーブル座標軸に対する前記モニタ画面のモニタ画面座標軸の角度ズレのズレ角を演算するズレ角演算手段と、前記位置ズレ量に基づいて前記チップを前記XYテーブルで駆動して位置ズレを補正する際に、前記ズレ角を用いて前記XYテーブル上での座標を算出する移動量算出手段と、を備えている。
【0008】
すなわち、ボンディングを行う前工程では、モニタ画面上の任意のチップを認識し、当該チップの前記モニタ画面上の座標を初期位置座標として記憶するとともに、前記チップをカメラの撮影範囲内にてXYテーブルで所定量X方向へ移動した後、当該チップの前記モニタ画面上の座標を移動後座標として記憶する。
【0009】
次に、前記初期位置座標及び前記移動後座標間でのX方向へのX方向移動量とY方向へのY方向移動量を求め、前記X方向移動量及び前記Y方向移動量を用いた三角関数によって前記XYテーブルのXYテーブル座標軸に対する前記モニタ画面のモニタ画面座標軸の角度ズレのズレ角を演算する。これにより、前記XYテーブル座標軸と前記モニタ画面座標軸とのズレ角が求められる。
【0010】
そして、ピックアップ対象となるチップの位置ズレ量に基づいて当該チップをXYテーブルで駆動して位置ズレを補正する際には、前記ズレ角を用いて前記XYテーブル上での座標を算出する。
【0011】
これにより、位置ズレの生じた前記チップは、前記XYテーブルの駆動によって正確な位置に移動される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明のダイボンディング装置にあっては、チップを駆動するXYテーブルのXYテーブル座標軸に対するモニタ画面のモニタ画面座標軸のズレ角を予め演算することができる。また、ピックアップ対象となるチップの位置ズレを補正する際には、前記ズレ角を用いて前記XYテーブル上での座標を算出するため、位置ズレの生じたチップを、前記XYテーブルの駆動によって正確な位置に移動することができる。
【0013】
したがって、前記XYテーブル座標軸に対する前記モニタ画面座標軸の角度ズレを考慮に入れない座標に基づいて前記XYテーブルを駆動する従来と比較して、位置ズレ補正後に生ずる僅かなズレの発生も防止することができる。これにより、ボンディング時には、チップの中心位置をピックアップすることができ、ボンディング精度のさらなる向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかるダイボンディング装置1を示すブロック図であり、該ダイボンディング装置1は、ウェーハリング2に張設されたウェーハシート3上のチップ4をピックアップしてリードフレーム上へ移送しボンディングする装置である。
【0015】
このダイボンディング装置1は、マイコンを備えた制御部11を中心に構成されており、該制御部11には、ウェーハマウントにセットされた前記ウェーハリング2をXYテーブルで駆動するXYテーブル駆動部12が接続されている。これにより、前記制御部11からの制御信号に従って前記ウェーハマウントにセットされた前記ウェーハリング2を駆動し、ピックアップ対象となるチップ4をピックアップ位置に配置できるように構成されている。
【0016】
前記制御部11には、ヘッド駆動部31が接続されており、該ヘッド駆動部31は、前記制御部11からの信号に従って、チップ4を吸着して移送するボンディングヘッド32を制御するように構成されている。これにより、該ボンディングヘッド32を、チップ4のピックアップ位置とボンディング位置との間で往復移動できるように構成されており、前記ボンディングヘッド32によって前記チップ4をピックアップしてリードフレーム上へ移送するとともに、該リードフレームのボンディングポイントに載置してボンディングできるように構成されている。
【0017】
また、前記制御部11には、前記ウェーハシート3の画像を取得するカメラ41と、該カメラ41で取得した画像を表示するモニタからなる表示部42と、当該制御部11に各種データを入力するためのキーボードやマウスからなる入力部43とが接続されている。
【0018】
以上の構成にかかる本実施の形態にかかるダイボンディング装置1の動作を、図2のフローチャートに従って説明する。
【0019】
すなわち、ボンディングを介しする前工程では、先ず、図3に示すように、モニタ画面51上の任意のチップ4を認識し(S1)、当該チップ4の中心52を示す初期位置53の前記モニタ画面51上の座標を初期位置座標(X0,Y0)として記憶する(S2)。このとき、前記モニタ画面51上の座標は、モニタ画面51のpixcl値で示す一方、前記XYテーブル上の座標は、当該XYテーブルを駆動するパルスモータのパルス数で示すものとする。
【0020】
そして、前記カメラ41の撮影範囲内において、前記XYテーブルをX方向である右方向へ駆動することで前記チップ4をX方向へ移動しながら、前記チップ4の前記モニタ画面51上の座標を認識する(S3)。このとき、前記チップ4が前記モニタ画面51から外れて認識できなくなるため、その認識から外れる直前のチップ4の中心52を示す移動後位置55の前記モニタ画面51上の座標を移動後座標(X1,Y1)として記憶する(S4)。
【0021】
次に、前記初期位置座標(X0,Y0)及び前記移動後座標(X1,Y1)間でのX方向へのX方向移動量とY方向へのY方向移動量を求め、前記X方向移動量及び前記Y方向移動量を用いた三角関数によって、図4にも示すように、前記XYテーブルのXYテーブル座標軸61に対する前記モニタ画面51のモニタ画面座標軸62の角度ズレ63のズレ角θを演算する(S5)。すなわち、前記移動後座標(X1,Y1)のX座標値(X1)から前記初期位置座標(X0,Y0)のX座標値(X0)を減算した減算値を、前記移動後座標(X1,Y1)のY座標値(Y1)から前記初期位置座標(X0,Y0)のY座標値(Y0)を減算した減算値で除算するとともに、この除算値のアークタンジェントを算出することによって前記角度ズレ63のズレ角θを演算する。これにより、前記XYテーブル座標軸61と前記モニタ画面座標軸62とのズレ角θが求められる。
【0022】
そして、ボンディング時において、ピックアップ対象となるチップの位置ズレ量に基づいて当該チップをXYテーブルで駆動して位置ズレを補正する際には、前記ズレ角θを用いて前記XYテーブル上での座標を算出し、この座標に基づいて当該XYテーブルを駆動する(S6)。つまり、モニタ画面51上でのチップ4の座標(Xp,Yp)からXテーブル上での座標を座標(Xt,Yt)を算出する際には、図4の式1に示したXt=Xpcosθ−Ypsinθ、及び式2に示したYt=ypcosθ+Xpsinθを用いることにより、算出することができる。これにより、位置ズレの生じた前記チップ4は、前記XYテーブルの駆動によって正確な位置に移動される。
【0023】
このとき、前記モニタ画面51での分解能と前記XYテーブルでの分解能が異なる場合、前記モニタ画面51上の座標から前記XYテーブル上での座標への変換時において、前記モニタ画面51での分解能及び前記XYテーブルでの分解能から予め算出された倍率係数を用いた演算を行うものとする。
【0024】
このように、前記チップ4を駆動するXYテーブルのXYテーブル座標軸61に対するモニタ画面51のモニタ画面座標軸62のズレ角θを予め演算し、ピックアップ対象となるチップ4の位置ズレを補正する際には、前記ズレ角θを用いて前記XYテーブル上での座標を算出するため、位置ズレの生じたチップ4を、前記XYテーブルの駆動によって正確な位置に移動することができる。
【0025】
したがって、前記XYテーブル座標軸61に対する前記モニタ画面座標軸61の角度ズレを考慮に入れない座標に基づいて前記XYテーブルを駆動する従来と比較して、位置ズレ補正後に生ずる僅かなズレの発生も防止することができる。これにより、ボンディング時には、チップ4の中心位置をピックアップすることができ、ボンディング精度のさらなる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態の示すブロック図である。
【図2】同実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】同実施の形態の動作を示す説明図である。
【図4】図3に続く動作を示す説明図である。
【図5】従来例で使用するウェーハリングを示す平面図である。
【図6】同従来例の動作を示す説明図である。
【図7】図6に続く動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ダイボンディング装置
4 チップ
11 制御部
12 XYテーブル駆動部
41 カメラ
42 表示部
51 モニタ画面
61 XYテーブル座標軸
62 モニタ画面座標軸
63 角度ズレ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピックアップ対象となるチップをカメラで撮影し、そのモニタ画面上でチップの位置ズレ量を画像認識するとともに、該位置ズレ量に基づいて前記チップをXYテーブルで駆動して位置ズレを補正するダイボンディング装置において、
前記モニタ画面上の任意のチップを認識し、当該チップの前記モニタ画面上の座標を初期位置座標として記憶する初期位置記憶手段と、
前記チップを前記カメラの撮影範囲内にて前記XYテーブルで所定量X方向へ移動した後、当該チップの前記モニタ画面上の座標を移動後座標として記憶する移動後座標記憶手段と、
前記初期位置座標及び前記移動後座標間でのX方向へのX方向移動量とY方向へのY方向移動量を求め、前記X方向移動量及び前記Y方向移動量を用いた三角関数によって前記XYテーブルのXYテーブル座標軸に対する前記モニタ画面のモニタ画面座標軸の角度ズレのズレ角を演算するズレ角演算手段と、
前記位置ズレ量に基づいて前記チップを前記XYテーブルで駆動して位置ズレを補正する際に、前記ズレ角を用いて前記XYテーブル上での座標を算出する移動量算出手段と、
を備えたことを特徴とするダイボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−49665(P2006−49665A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230177(P2004−230177)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000220505)日本電産トーソク株式会社 (189)
【Fターム(参考)】