説明

ダイヤフラムバルブ

【課題】ダイヤフラムの必要な可撓性を確保しながらも、耐圧性及び耐久性を十分に高める。
【解決手段】弁室19内に受圧面24aが臨むように設けられ貫通孔18と弁ロッド13の外周との間をシールするダイヤフラム24とを備えたダイヤフラムバルブにおいて、ダイヤフラム24の受圧面24aとは反対側の面に接触するように、弁ロッド13の外周に嵌挿状に取り付けられ、ダイヤフラム24に作用する力を弾性変形することにより吸収する軟質ゴム製の受圧変形体2を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工業用塗装に用いられるバルブに係り、特にダイヤフラムを利用したダイヤフラムバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば塗装システムにおける、塗料、溶剤、洗浄液等の流体の流路の開閉を行なうためのバルブとして、安全性の高いエア駆動式のダイヤフラムバルブが採用されている(例えば、特許文献1参照)。この種の従来のダイヤフラムバルブは、図5に示す構成を備えている。即ち、このダイヤフラムバルブの本体51は、シリンダブロック52の上部にカバー53を有すると共に、シリンダブロック52の下部にボディ54を嵌合固定して構成されている。
【0003】
シリンダブロック52内にはピストン56が図で上下方向に摺動自在に装填され、カバー53の凹部57内に装填されたスプリング58によって下方へ付勢されている。シリンダブロック52内は、このピストン56によって下部の加圧室59aと上部の呼吸室59bとに区画される。そして、シリンダブロック52には加圧室59aに連通するパイロットポート60が設けられ、カバー53には呼吸室59bに連通する呼吸孔61が設けられている。また、ピストン56は、その中心部下方に摺動軸62が突設され、その摺動軸62がシリンダブロック52内の加圧室59aに連続して形成された摺動孔63内に摺動自在に挿入されている。
【0004】
シリンダブロック52の摺動孔63は、ボディ54に形成された弁室55に連通している。摺動孔63内に挿入された摺動軸62は、ボディ54内にまで延び、その下端には、同軸上に弁ロッド64が装着されている。その弁ロッド64の下端には円錐状の弁体65が形成されている。ボディ54には、弁室55に連通する入力ポート66が横方向に延びて形成されていると共に、弁室55から下方に延びる出力ポート67が形成されている。出力ポート67の弁室55側端部には、前記弁体65が接離する弁座68が形成されている。前記入力ポート66は、配管を介して例えば塗料等の流体の供給源に接続され、弁室55の内部に所定の圧力で流体が供給される。出力ポート67は、例えば塗装装置等の、流体の供給先に接続される。これにて、通常時において、スプリング58のばね力によって、弁体65が弁座68に当接していて出力ポート67が閉じられている。そして、パイロットポート60に圧縮空気が流入されると、ピストン56がばね力に抗して上方へ移動し、弁体65が弁座68から離間し、出力ポート67から流体が流出される構成になっている。
【0005】
このとき、弁室55内の流体が、シリンダ側へ流入しないように弁室55と摺動孔63との間がダイヤフラム69によってシールされるようになっている。前記ダイヤフラム69は、例えばフッ素樹脂製のシートからなり、中心に前記弁ロッド64の外周に嵌合する円形穴を有した円板状(リング状)をなしていると共に、そのうち外周部分及び内周部分(円形穴の周囲部)のみが厚肉状に構成されている。このダイヤフラム69は、厚肉状の外周部が、シリンダブロック52とボディ54との間に挟まれて固定され、また、厚肉状の内周部が弁ロッド64の外周に密着状に固定されて設けられている。これにて、ダイヤフラム69は、弁ロッド64の上下移動に伴ってその内周側が上下に変位して繰り返し変形するようになっていると共に、内外周の中間の受圧部分(リング状の薄肉部分)によって弁室55内の圧力を受けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−22835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来構成のダイヤフラムバルブの本体51では、ダイヤフラム69は、弁ロッド64の往復動に応じて容易に変形する必要があるため、受圧部分を薄肉状として十分な可撓性を持たせるようにしている。このため、ダイヤフラム69に十分な耐圧性が得られず、過大な圧力が作用するとダイヤフラム69が破れてしまう虞があった。
【0008】
一方、耐圧性を向上させるため、ダイヤフラム69の受圧部分を肉厚にすると、ダイヤフラム69の必要な可撓性が確保できなくなるとともに耐久性も大幅に低下してしまう問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダイヤフラムによって弁室内をシールするものにおいて、ダイヤフラムの必要な可撓性を確保しながらも、耐圧性及び耐久性を十分に高めることができるダイヤフラムバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明のダイヤフラムバルブは、本体内に設けられ入力ポート及び出力ポートを有し内部に流体が出入りする弁室と、前記弁室の出力ポートに設けられた弁座に対して接離する弁体と、前記本体に形成された前記弁室と連通する貫通孔内を貫通するように設けられ、往復動により前記弁体を駆動する弁ロッドと、前記弁室内に受圧面が臨むように設けられ前記貫通孔と前記弁ロッドの外周との間をシールする弾性変形可能なダイヤフラムとを備えたダイヤフラムバルブにおいて、前記ダイヤフラムの受圧面とは反対側の面に接触するように、前記弁ロッドの外周に嵌挿状に取り付けられ、前記ダイヤフラムに作用する力を弾性変形することにより吸収する軟質ゴム製の受圧変形体を設けたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、ダイヤフラムの受圧面にかかる流体の圧力を、軟質ゴム製の受圧変形体の弾性変形により吸収することができ、前記ダイヤフラムに直接的にかかる圧力を小さくすることができる。従って、前記ダイヤフラムを薄肉にしても、十分な耐圧性を得ることができ、ひいては、前記ダイヤフラムの耐久性を十分に高めることができる。
【0012】
尚、本発明における「軟質ゴム」とは、ダイヤフラムの変形に伴って容易に変形して圧力を吸収することができる硬さのゴムであり、具体的には、ゴム硬度が、ASKER C 30以下のものをいう。このゴム硬度は、日本ゴム協会の標準規格(SRIS 0101−1968)に基づくもので、ASKER(アスカー)C型の計測器で測定した数値(0〜100の範囲で単位はない)をいう。また、軟質ゴムの材質は、特に限定されるものではなく、例えばシリコンゴムやNBR等、様々な種類のゴムを採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のダイヤフラムバルブによれば、ダイヤフラムによって弁室内をシールするものにおいて、ダイヤフラムの受圧面とは反対側の面に接触するように、弁ロッドの外周に嵌挿状に取り付けられ、該ダイヤフラムに作用する力を弾性変形により吸収する軟質ゴム製の受圧変形体を設けたので、ダイヤフラムの必要な可撓性を確保しながらも、耐圧性及び耐久性を十分に高めることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、ダイヤフラムバルブの縦断面図
【図2】受圧変形体の斜視図
【図3】ダイヤフラムの平面図
【図4】要部を拡大して示すもので、(a)はダイヤフラムバルブの弁の閉状態、(b)は同開状態を夫々示す縦断面図
【図5】従来例を示すダイヤフラムバルブの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図4を参照しながら説明する。図1は本実施例に係るダイヤフラムバルブの本体1の全体構成を示している。本体1は、図1中上から順にシリンダブロック3、ボディ4、及びシートブロック5が複数のボルト6(図1で1本の頭部のみ図示)により一体に締結固定され構成されている。また、この本体1は、マニホールド28上に取り付けられている。
【0016】
前記シリンダブロック3は、全体として矩形ブロック状をなすと共に、その上面部から上方に凸となる円筒蓋状の凸部3aが一体に設けられている。このシリンダブロック3の内部には、下面で開口する円形のシリンダ室10が設けられ、また、このシリンダ室10は、前記凸部3a内と連通している。このシリンダブロック3のシリンダ室10内には、薄型円柱状のピストン7が上下方向に摺動可能に装填され、このピストン7は前記凸部3a内に装填されたスプリング8によって下方へ付勢されている。これにて、シリンダ室10は、ピストン7によって下側の加圧室10aと、上側の呼吸室10bとに区画されている。ピストン7の外周にはOリング9が装着されており、加圧室10aと呼吸室10bとの間の気密性が保たれている。そして、シリンダブロック3の左側壁部には加圧室10aに連通するパイロットポート11が横方向に延びて設けられている。シリンダブロック3の凸部3aの上端面には呼吸室10bに連通する呼吸孔3bが設けられている。
【0017】
前記ピストン7の中心部には上下方向に貫通する貫通孔7bが形成されている。この貫通孔7bには上下方向に長い棒状の弁ロッド13の上端部が嵌挿され、弁ロッド13の上端にナット14が締結されることにより弁ロッド13がピストン7に固着されている。これにてピストン7の上下の往復動と一体に弁ロッド13が上下に往復動する。
【0018】
前記シリンダブロック3のシリンダ室10の下面開口部(加圧室10aの下部)側には、ロッド保持部材15が、該開口部を塞ぐように設けられている。このロッド保持部材15は、中心を上下方向に貫通する貫通孔18を有するほぼ円筒状をなしている。このとき、シリンダブロック3のシリンダ室10の下端部の開口縁部には径方向に拡がる段部3cが形成されている。ロッド保持部材15の上下方向の中間部外周には、前記段部3cに嵌合する径大部15aが形成されている。この径大部15aが段部3cに嵌合することにより、ロッド保持部材15は上下方向の位置決め状態でシリンダブロック3に固定される。ロッド保持部材15の外周面には、径大部15aの上側に位置してOリング16が嵌挿され、加圧室10aの気密性が保たれている。さらに、ロッド保持部材15は、外形がやや径小となって下方(ボディ4側)に凸となる突出部15bを有している。
【0019】
前記ボディ4は、全体として矩形ブロック状をなし、その上面部には前記突出部15bに対応した円形凹部17が形成されている。また、ボディ4には、前記ロッド保持部材15の貫通孔18に連なるようにして、前記円形凹部17の底部から下方に延びてボディ4の下面で開口するように、やや径小の円形穴が形成されている。この円形穴の内部が弁室19とされる。ボディ4の左側壁部には、弁室19に連なる入力ポート22が設けられている。前記弁ロッド13は、前記貫通孔18を貫通し、その下端部が弁室19内に位置している。この弁ロッド13の周辺部分の構成については後述する。
【0020】
ボディ4の下面に設けられるシートブロック5は、全体として矩形板状をなし、前記弁室19に連なる出力ポート23が上下に貫通するように設けられている。この出力ポート23部分には、円筒状の弁座(シート)26が設けられている。前記弁室19内には、前記弁座26に対して接離するボール状の弁体27が設けられている。後述するように、この弁体27は弁ロッド13に固定され一体として駆動される。ボディ4とシートブロック5との間は、Oリング33によりシールされている。
【0021】
前記マニホールド28内には、前記シートブロック5の出力ポート23に連なる連通路29がL字状に折れ曲がるように形成されており、その連通路29の他端が出力口31とされている。このマニホールド28と前記シートブロック5との間(出力ポート23の周囲部)は、Oリング32によりシールされている。
【0022】
さて、前記弁ロッド13の周辺部分の構成について、図2から図4も参照して述べる。
弁ロッド13は、図4にも示すように、その下端側部分(弁室19内に配置される部分)が径大部13bとされ、段部を介してその上部が径小部13aとされている。図1に示すように、弁ロッド13の下端面に、前記弁体27が固定されるようになっている。
【0023】
図4にも一部示すように、この弁ロッド13の径小部13aの外周には、前記径大部13bとピストン7の下面との間に位置して、円筒状のスリーブ20が嵌挿固定される。このとき、スリーブ20と、弁ロッド13の径大部13b(段部)との間には、後述するダイヤフラム24が挟まれた状態に設けられている。尚、スリーブ20の上端部(ピストン7の下面との間)には、弁ロッド13の径小部13aとの間に位置してOリング34が設けられている。前記スリーブ20は、上部の径大部20aと下部の径小部20bとを一体に有している。ここで、前記ロッド保持部材15の貫通孔18の内周面は、上部がストレート(径が一定)な円筒面とされると共に、その下部が、下方に行くに従って径大となる緩やかなテーパ面とされている。スリーブ20は、径大部20aの外周面が前記貫通孔18のストレート部分の内周面を摺動しながら弁ロッド13の上下動と一体に上下動する。ロッド保持部材15の貫通孔18の内周面には、スリーブ20の径大部20aの外周面との間をシールするためのOリング21が装着されている。
【0024】
前記ダイヤフラム24は、図3にも示すように、例えば、厚み寸法が50μmの薄肉なフッ素樹脂(PTFE)製のシートから、弾性変形可能な円板状に構成されている。より具体的には、ダイヤフラム24は、円形凹部17に対応した外形寸法(例えば17.8mmφ)を有すると共に、中心部に前記弁ロッド13の径小部13aに嵌挿される大きさ(例えば3.1mmφ)の円形孔24bを有する円板状をなしている。この場合、ダイヤフラム24は、全体の厚み寸法が均一のシート状であり、容易(コスト安)に製造することができる。
【0025】
このダイヤフラム24は、前記円形孔24bが弁ロッド13の径小部13aに嵌挿された状態で、その内周部(円形孔24bの周囲部)が、前記弁ロッド13の径大部13b(段部)とスリーブ20との間に挟まれると共に、その外周部が、前記円形凹部17の底面と、ロッド保持部材15の突出部15bの下端面との間に挟まれた状態で取り付けられる。このとき、突出部15bとダイヤフラム24の上面との間には、Oリング25が設けられている。
【0026】
これにて、ダイヤフラム24は、弁室19と貫通孔18との間を上下に区画しながら、貫通孔18と弁ロッド13の外周部との間をシールするようになっている。このとき、ダイヤフラム24の下面のうち、内外周の中間のリング状部分、つまり弁室19に臨む部分が受圧面24aとされている。図4に示すように、ダイヤフラム24は、弁ロッド13の上下動に応じてその内周側が上下に変位し、受圧面24a部分が弾性変形されるようになっている。なお、ダイヤフラム24の厚さ、材質はこれに限らず、例えば、材質はポリエチレンテレフタレート(PET)等でも良い。
【0027】
そして、前記スリーブ20の径小部20bの外周部には、該径小部20bと貫通孔18の内周面のうちテーパ状部分と、ダイヤフラム24の上面との間に形成される隙間を満たすようにして、軟質ゴム製の受圧変形体2が嵌挿される。この受圧変形体2は、図2に示すように、ほぼ円筒形状をなし、前記径小部13aに対応した内径の中空部を有し、外面が図中下方に行くにつれ徐々に径大になるテーパ面状に形成されている。より具体的には、この受圧変形体2は、耐薬品性に優れたシリコンゴムからなり、例えば、そのゴム硬度がASKER C 23とされている。なお、受圧変形体2の材質としては、シリコンゴム製に限るものではなく、軟質ゴムであり耐薬品性に優れた、例えばニトリルゴム(NBR)等の様々な種類のゴムを採用することができる。また、ゴム硬度がASKER C 30以下のものを用いることが望ましい。
【0028】
この受圧変形体2は、その下端面がダイヤフラム24の受圧面24aの反対側の面つまり上面全体に接触するようにして、弁ロッド13の径小部13aの外周に嵌挿されている。これにて、受圧変形体2は、後の作用説明でも述べるように、ダイヤフラム24に作用する力を、弾性変形することにより吸収するようになっている。
【0029】
以上の構成により、パイロットポート11に圧縮空気が入力されていない通常状態では、図1及び図4(a)に示すように、ピストン7ひいては弁ロッド13は、スプリング8の下方向の付勢力により下方向へ押圧されている。この状態では、弁ロッド13に固定された弁体27を弁座26に押し付けており、出力ポート23が閉塞している(弁の閉状態)。このときは、図4(a)に示すように、ダイヤフラム24は、受圧面24a部分が下方へ膨らむような形態となる。これに対し、パイロットポート11に圧縮空気が供給されると、ピストン7がばね力に抗して上昇し、弁ロッド13が上昇する。これにより、弁体27が弁座26から離間し、出力ポート23が開くようになる(弁の開状態)。このときは、図4(b)に示すように、ダイヤフラム24は、受圧面24aが上方に膨らむように変形する。なお、後述するように弁の閉状態と開状態との間で、受圧変形体2は全体として弾性変形をしつつもその体積を一定に保つような寸法関係になっている。
【0030】
次に、本実施形態に係るダイヤフラムバルブの本体1の動作について、主として図4を参照して述べる。
前記入力ポート22には、例えば塗料を圧送するポンプ等の流体の供給源が接続されている。前記出力ポート23(出力口31)には、例えば塗装装置(塗料ガン)等が接続される。パイロットポート11から圧縮空気が入力されていない弁の閉状態では、図4(a)に示すように、ダイヤフラム24の円形孔24bは弁ロッド13に固着されて下側に位置しているため、ダイヤフラム24は下方に凸の形状になっている。この状態では、弁室19内に流体(塗料)が所定の圧力で供給されており、ダイヤフラム24の受圧面24aは、その流体の圧力を受けることになる。ここで、ダイヤフラム24の受圧面24aの上面側には、軟質ゴム製の受圧変形体2が配置されているので、受圧面24aにかかる流体の圧力は、受圧変形体2の弾性変形により吸収されるようになる。
【0031】
これにより、ダイヤフラム24の受圧面24aに直接作用する圧力を小さくすることができる。しかも、受圧面24aの裏面側全体に受圧変形体2が面接触し、その圧力を均等に受けることができるので、ダイヤフラム24の一部に応力が集中したり、一部のみが変形したりすることを防止することができる。
【0032】
パイロットポート11から圧縮空気が入力されると、弁が開いた状態となり、出力ポート23から塗料が流出する。このときには、図4(b)に示すように、ダイヤフラム24の中心部が弁ロッド13と共に上昇し、ダイヤフラム24は上方に凸の形状になる。このように、弁ロッド13の上下の往復動に伴って、ダイヤフラム24の内周側が上下に往復動を繰り返し変形するようになっている。このとき、弁ロッド13が上下動する事情があっても、ダイヤフラム24によって弁ロッド13の外周のシールが確実になされ、弁室19内の流体が貫通孔18側に漏れることがないことは勿論である。
【0033】
また、弁が閉状態と開状態との間を遷移するとき、ダイヤフラム24は上に凸の形状と下に凸の形状との間で変形するとともに、スリーブ20は上下方向に往復動しそれに伴い受圧変形体2も変形する。このとき、本実施形態では、ダイヤフラム24の凸状部の変化に伴って変形した空間の体積が、受圧変形体2の上端部において変位した空間の体積と等しくなるように設計されている。このため、弁の閉状態と開状態との間で、受圧変形体2は全体として形状が変形しつつもその体積は一定に保たれるようになっている。これによりダイヤフラム24が受圧変形体2から受ける圧力は常に一定に保たれ、ダイヤフラム24の上下両面に作用する圧力を均等とすることができる。
【0034】
このように、本実施形態に係るダイヤフラムバルブによれば、ダイヤフラム24によって弁室19内をシールするものにおいて、ダイヤフラム24の受圧面24aの反対側の面に接触するように、軟質ゴム製の受圧変形体2を設けたので、ダイヤフラム24自体が受ける圧力を小さくすることができると共に、ダイヤフラム24の一部に応力が集中することを防止できる。しかも、ダイヤフラム24の上下両面に作用する圧力を均等とすることができる。この結果、薄膜状のダイヤフラム24の必要な可撓性を確保しながらも、ダイヤフラム24の耐久性及び耐圧性を十分に高めることができるという優れた効果を得ることができる。ちなみに、従来のフッ素樹脂製のダイヤフラムでは、耐圧が0.4MPa程度であったのに対し、本実施形態のダイヤフラム24では、5MPaの圧力に耐えることができた。また、従来のダイヤフラムでは、膜厚の精度によって耐久回数に大きなばらつきがあったが、本実施形態では、安定して高い耐久性を得ることができたのである。
【0035】
尚、本発明は上記し図面に示した一実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張、変更が可能である。即ち、上記実施形態では、ボール状の弁体27を有したものとしたが、弁ロッドに取り付けられたあるいは一体に設けられたニードル状の弁体を備えたものとしても良い等、弁機構の構造としては種々の変更が可能である。また、本発明は、塗装システムにおける塗料の流路の開閉に限らず、各種の流体に関する開閉を行うバルブ装置に適用することができる。
【0036】
さらには、受圧変形体2を外周面がテーパ面とされた円筒状に構成したが、受圧変形体の形状としては、外形が一定の円筒状など、様々な変更が可能である。その他、上述の通り、ダイヤフラムの厚み寸法や材質、受圧変形体の材質や硬さについても様々な変更が可能である等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0037】
図面中、1は本体、2は受圧変形体、13は弁ロッド、18は貫通孔、19は弁室、22は入力ポート、23は出力ポート、24はダイヤフラム、24aは受圧面、26は弁座、27は弁体を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に設けられ入力ポート及び出力ポートを有し内部に流体が出入りする弁室と、
前記弁室の出力ポートに設けられた弁座に対して接離する弁体と、
前記本体に形成された前記弁室と連通する貫通孔内を貫通するように設けられ、往復動により前記弁体を駆動する弁ロッドと、
前記弁室内に受圧面が臨むように設けられ前記貫通孔と前記弁ロッドの外周との間をシールする弾性変形可能なダイヤフラムとを備えたダイヤフラムバルブにおいて、
前記ダイヤフラムの受圧面とは反対側の面に接触するように、前記弁ロッドの外周に嵌挿状に取り付けられ、前記ダイヤフラムに作用する力を弾性変形することにより吸収する軟質ゴム製の受圧変形体を設けたことを特徴とするダイヤフラムバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33074(P2011−33074A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177679(P2009−177679)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】