説明

ダイヤフラム弁装置

【課題】原位置から作動位置へ切り換えて入力通路の流体を出力通路に流通する際に、出力通路の圧力変動を低減し得るダイヤフラム弁装置を提供する
【解決手段】流体を供給する入力通路2と流体を出力する出力通路3と低圧側に接続する低圧通路4とを形成したハウジング本体1には、入力通路2と低圧通路4との間を開閉する第1ダイヤフラム弁5と、入力通路2と出力通路3との間を開閉する第2ダイヤフラム弁24とを設け、第1ダイヤフラム弁5を開とすると共に第2ダイヤフラム弁24を閉とする原位置と、第1ダイヤフラム弁5を閉とすると共に第2ダイヤフラム弁24を開とする作動位置と、原位置から作動位置への切り換えで入力通路2と出力通路3と低圧通路4との全通路2、3、4間を連通する切換過渡位置とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる流路をダイヤフラム弁により開閉するダイヤフラム弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のダイヤフラム弁装置は、ハウジング本体の中央部にほぼ真っ直ぐに形成される流体案内通路の一端部側に負圧ダイヤフラム弁を装着すると共に、流体案内通路の他端部側に正圧ダイヤフラム弁を装着し、負圧ダイヤフラム弁と正圧ダイヤフラム弁はハウジング本体へ相互に対向して備え、1つの流体案内通路に対して正圧流体と負圧流体とを選択的に案内する場合に、1つの弁装置により開閉できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−239896号公報(段落0018−0036、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来のダイヤフラム弁装置では、負圧ダイヤフラム弁と正圧ダイヤフラム弁とは、常時はともに弁座に着座して流体案内通路を閉じており、この状態から、正圧ダイヤフラム弁を開いて流体案内通路に正圧流体を供給したり、負圧ダイヤフラムを開いて流体案内通路に負圧流体を供給したりしているため、流体案内通路を正圧流体と負圧流体とに切り換える際に、流体案内通路に大きな圧力変動を生じる問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、原位置から作動位置へ切り換えて入力通路の流体を出力通路に流通する際に、出力通路の圧力変動を低減し得るダイヤフラム弁装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
流体を供給する入力通路と流体を出力する出力通路と低圧側に接続する低圧通路とを形成したハウジング本体を備え、ハウジング本体には入力通路と低圧通路との間を開閉する第1ダイヤフラム弁と、入力通路と出力通路との間を開閉する第2ダイヤフラム弁とを設け、第1ダイヤフラム弁を開とすると共に第2ダイヤフラム弁を閉とする原位置と、第1ダイヤフラム弁を閉とすると共に第2ダイヤフラム弁を開とする作動位置と、原位置から作動位置への切り換えで入力通路と出力通路と低圧通路との全通路間を連通する切換過渡位置とを有することを特徴とするダイヤフラム弁装置がそれである。
【0007】
この場合、前記第1ダイヤフラム弁を開閉する第1駆動部と、前記第2ダイヤフラム弁を開閉する第2駆動部とを備え、第1駆動部は前記第1ダイヤフラム弁を弾性力とパイロット圧力とで開方向に付勢すると共にパイロット圧力で閉方向に付勢し、第2駆動部は前記第2ダイヤフラム弁を弾性力とパイロット圧力とで閉方向に付勢すると共にパイロット圧力で開方向に付勢しても良い。また、前記第1駆動部は前記第1ダイヤフラム弁の開閉に応じて移動して前記第1ダイヤフラム弁の開閉状態を外部から視認可能な第1視認部を有し、前記第2駆動部は前記第2ダイヤフラム弁の開閉に応じて移動して前記第2ダイヤフラム弁の開閉状態を外部から視認可能な第2視認部を有しても良い。また、前記第1駆動部に用いる第1ハウジングと前記第2駆動部に用いる第2ハウジングは共通の部材を用いても良い。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、ハウジング本体に設けた第1ダイヤフラム弁を開とすると共に第2ダイヤフラム弁は閉とする原位置と、第1ダイヤフラム弁を閉とすると共に第2ダイヤフラム弁を開とする作動位置と、原位置から作動位置への切り換えで入力通路と出力通路と低圧通路との全通路間を連通する切換過渡位置とを有している。このため、入力通路と低圧通路との間を開いて出力通路を閉じる原位置から、入力通路と出力通路と低圧通路との全通路間を連通する切換過渡位置を経て、入力通路と出力通路との間を開いて低圧通路を閉じる作動位置に切り換えるから、原位置で低圧通路に連通して低圧状態にある入力通路の流体は、切換過渡位置で圧力上昇することなくできて、作動位置で出力通路に流通でき、出力通路の圧力変動を低減することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の効果に加え、第1ダイヤフラム弁を開閉する第1駆動部は第1ダイヤフラム弁を弾性力とパイロット圧力とで開方向に付勢すると共にパイロット圧力で閉方向に付勢し、第2ダイヤフラム弁を開閉する第2駆動部は2ダイヤフラム弁を弾性力とパイロット圧力とで閉方向に付勢すると共にパイロット圧力で開方向に付勢する。このため、第1ダイヤフラム弁は弾性力とパイロット圧力とで付勢して閉から開への応答性を向上できると共に、第2ダイヤフラム弁は弾性力とパイロット圧力とで付勢して開から閉への応答性を向上できるから、弁装置の作動位置から原位置へ切り換える復帰作動の応答性を向上することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明の効果に加え、第1駆動部は第1ダイヤフラム弁の開閉に応じて移動して第1ダイヤフラム弁の開閉状態を外部から視認可能な第1視認部を有し、第2駆動部は第2ダイヤフラム弁の開閉に応じて移動して第2ダイヤフラム弁の開閉状態を外部から視認可能な第2視認部を有する。このため、各ダイヤフラム弁の開閉状態を外部から視認することで、弁装置の原位置と作動位置とを確実に判断することができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2若しくは請求項3に記載の発明の効果に加え、第1駆動部に用いる第1ハウジングと第2駆動部に用いる第2ハウジングは共通の部材を用いる。このため、両駆動部のハウジングを共通化できるから、管理する部品点数を削減できて、管理の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示した弁装置の縦断面図である。
【図2】他実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1において、1は直方体形状のハウジング本体で、流体としての高粘度液体を供給する入力通路2と図示しない負荷側に接続する出力通路3と低圧側としてのタンクに接続する低圧通路4とを穿設して形成している。入力通路2は逆T字状に形成し、一端をハウジング本体1の上方の端面1Aに開口し、他端を二股に分岐して一方側をハウジング本体1の上方の端面と直交する一側面1Bに開口すると共に、他方側をハウジング本体1の上方の端面1Aと直交して一側面1Bと対向する他側面1Cに開口している。そして、入力通路2はハウジング本体1の両側面1B、1Cへの開口側をそれぞれ拡径して拡径部2A、2Bを形成し、拡径部2A、2Bの連設段部にそれぞれ弁座2C、2Dを形成している。出力通路3は一端をハウジング本体1の下方の端面1Dに開口し、他端を入力通路2の他方側の拡径部2Bに接続している。低圧通路4は一端をハウジング本体1の下方の端面1Dに開口し、他端を入力通路2の一方側の拡径部2Aに接続している。
【0014】
5は入力通路2と低圧通路4との間を開閉する第1ダイヤフラム弁で、第1ハウジング7と第1駆動部8と第1ダイヤフラム弁体9とから構成し、ハウジング本体1の一側面1Bに第1ハウジング7を複数のボルト部材6により固定して設けている。第1ハウジング7は円筒形状で、小径部10と中径部11と大径部12とを連設した収装孔13を穿設して軸方向へ貫通形成し、収装孔13の大径部12を一側面に開口すると共に、小径部10を他側面に開口している。14は第1ハウジング7に備えた第1蓋部材で、第1ハウジング7の一側面に複数のボルト部材15により固定し、収装孔13の大径部12を閉塞している。第1駆動部8は収装孔13の大径部12へピストン16を軸方向へ摺動自在に嵌挿し、ピストン16は第1ピストンロッド17と第2ピストンロッド18とを一体形成している。第1ピストンロッド17はピストン16の一側面から軸方向へ突出して蓋部材14を液密に貫通すると共に、第2ピストンロッド18はピストン16の他側面から軸方向へ突出して収装孔13の小径部10へ液密に摺動自在に嵌挿して第1ハウジング7の他側面から突出している。
【0015】
第1駆動部8は、ピストン16の収装孔13への収装で、ピストン16の一側面側にピストン16、第1ピストンロッド17、第1ハウジング7、第1蓋部材14で第1パイロット室19を区画形成すると共に、ピストン16の他側面側にピストン16、第2ピストンロッド18、第1ハウジング7で第2パイロット室20を区画形成する。第1パイロット室19は第1ハウジング7に穿設の第1パイロット通路21に接続してパイロット流体を給排自在にする。第2パイロット室20は第1ハウジング7に穿設の第2パイロット通路22に接続してパイロット流体を給排自在にすると共に、ばね23を収装している。
【0016】
第1ダイヤフラム弁体9は樹脂材より成形し、ハウジング本体1に穿設した入力通路2の拡径部2A内に収納し、弁座2Cに着座する弁体部9Aと、弁体部9Aに連設して第2ピストンロッド18の突出端部に螺着して取付ける雄ねじ部9Bと、弁体部9Aより径方向に延びた薄膜円板状のダイヤフラム部9Cと、ダイヤフラム部9Cの外周縁に形成されてハウジング本体1と第1ハウジング7との間に挟持される外周部9Dとから構成する。第1ダイヤフラム弁体9の外周部9Dをハウジング本体1と第1ハウジング7との間に挟持することで、ダイヤフラム部9Cの背面側に空間が区画形成されるが、この空間は第1ハウジング7に穿設の通路7A、蓋部材14を第1ハウジング7に固定するボルト部材15を挿通する孔を介して大気に開放する。第1駆動部8は、ばね23の弾性力と第2パイロット室20に供給されてピストン16の他側面に作用するパイロット流体の圧力に基づく作用力で第1ダイヤフラム弁体9を弁座2Cから離座する開方向に付勢すると共に、第1パイロット室19に供給されてピストン16の一側面に作用するパイロット流体の圧力に基づく作用力で第1ダイヤフラム弁体9を弁座2Cに着座する閉方向に付勢する。
【0017】
第1駆動部8は、蓋部材14を貫通する第1ピストンロッド17の軸方向端部に第1視認部17Aを有し、第1視認部17Aは第1ダイヤフラム弁体9の開に応じて蓋部材14から軸方向へ突出移動すると共に、第1ダイヤフラム弁体9の閉に応じて蓋部材14内に退き移動して、第1ダイヤフラム弁5の開閉状態を外部から視認可能にする。
【0018】
24は入力通路2と出力通路3との間を開閉する第2ダイヤフラム弁で、第2ハウジング25と第2駆動部26と第2ダイヤフラム弁体27とから構成し、ハウジング本体1の他側面1Cに第2ハウジング25を複数のボルト部材6により固定して設けている。第2ハウジング25は円筒形状で、第1ハウジング7と同一構成で、小径部10と中径部11と大径部12とを連設した収装孔13を穿設して軸方向へ貫通形成し、収装孔13の大径部12を一側面に開口すると共に、小径部10を他側面に開口している。第2ハウジング25の一側面に複数のボルト部材15により第2蓋部材28固定し、収装孔13の大径部12を閉塞している。第2駆動部26は収装孔13の大径部12へピストン29を軸方向へ摺動自在に嵌挿し、ピストン29は第1駆動部8のピストン16と同一構成で、第1ピストンロッド30と第2ピストンロッド31とを一体形成している。第1ピストンロッド30はピストン29の一側面から軸方向へ突出して蓋部材28を液密に貫通すると共に、第2ピストンロッド31はピストン29の他側面から軸方向へ突出して収装孔13の小径部10へ液密に摺動自在に嵌挿して第2ハウジング25の他側面から突出している。
【0019】
第2駆動部26は、ピストン29の収装孔13への収装で、ピストン29の一側面側にピストン29、第1ピストンロッド30、第2ハウジング25、第2蓋部材28で第1パイロット室32を区画形成すると共に、ピストン29の他側面側にピストン29、第2ピストンロッド31、第2ハウジング25で第2パイロット室33を区画形成する。第1パイロット室32は第2ハウジング25に穿設の第1パイロット通路34に接続してパイロット流体を給排自在にすると共に、ばね35を収装している。第2パイロット室33は第2ハウジング25に穿設の第2パイロット通路36に接続してパイロット流体を給排自在にする。
【0020】
第2ダイヤフラム弁体27は樹脂材より成形し、第1ダイヤフラム弁体9と同一構成で、ハウジング本体1に穿設した入力通路2の拡径部2B内に収納し、弁座2Dに着座する弁体部27Aと、弁体部27Aに連設して第2ピストンロッド31の突出端部に螺着して取付ける雄ねじ部27Bと、弁体部27Aより径方向に延びた薄膜円板状のダイヤフラム部27Cと、ダイヤフラム部27Cの外周縁に形成されてハウジング本体1と第2ハウジング25との間に挟持される外周部27Dとから構成する。第2ダイヤフラム弁体27の外周部27Dをハウジング本体1と第2ハウジング25との間に挟持することで、ダイヤフラム部27Cの背面側に空間が区画形成されるが、この空間は第2ハウジング25に穿設の通路25A、蓋部材28を第2ハウジング25に固定するボルト部材15を挿通する孔を介して大気に開放する。第2駆動部26は、ばね35の弾性力と第1パイロット室20に供給されてピストン29の一側面に作用するパイロット流体の圧力に基づく作用力で第2ダイヤフラム弁体27を弁座2Dに着座する閉方向に付勢すると共に、第2パイロット室33に供給されてピストン34の他側面に作用するパイロット流体の圧力に基づく作用力で第1ダイヤフラム弁体27を弁座2Dから離座する開方向に付勢する。
【0021】
第2駆動部26は、蓋部材28を貫通する第1ピストンロッド30の軸方向端部に第1視認部30Aを有し、第1視認部30Aは第2ダイヤフラム弁体27の開に応じて蓋部材27から軸方向へ突出移動すると共に、第2ダイヤフラム弁体27の閉に応じて蓋部材28内に退き移動して、第2ダイヤフラム弁24の開閉状態を外部から視認可能にする。
【0022】
ダイヤフラム弁装置は、第1ダイヤフラム弁5を開とすると共に第2ダイヤフラム弁24を閉とする図1に示す原位置と、第1ダイヤフラム弁5を閉とすると共に第2ダイヤフラム弁24を開とする作動位置と、原位置から作動位置への切り換えで入力通路2と出力通路3と低圧通路4との全通路間2、3、4を連通する切換過渡位置とを有する。第1ダイヤフラム弁5は、原位置および切換過渡位置では第2パイロット室20にパイロット流体を供給して第1パイロット室19からパイロット流体を排出して第1ダイヤフラム弁体9を弁座2Cから離座して入力通路2と低圧通路4との間を開とすると共に、作動位置では第1パイロット室19にパイロット流体を供給して第2パイロット室20からパイロット流体を排出して第1ダイヤフラム弁体9を弁座2Cに着座して入力通路2と低圧通路4との間を閉とする。第2ダイヤフラム弁24は、原位置では第1パイロット室32にパイロット流体を供給して第2パイロット室33からパイロット流体を排出して第2ダイヤフラム弁体27を弁座2Dに着座して入力通路2と出力通路3との間を閉とすると共に、作動位置および切換過渡位置では第2パイロット室33にパイロット流体を供給して第1パイロット室32からパイロット流体を排出して第2ダイヤフラム弁体27を弁座2Dから離座して入力通路2と出力通路3との間を開とする。
【0023】
次に、かかる構成の作動を説明する。
図1に示す状態は、原位置で、第1ダイヤフラム弁5は開状態で、第2パイロット室20にパイロット流体を供給して第1パイロット室19からパイロット流体を排出し、第1ダイヤフラム弁体9を第2パイロット室20に供給のパイロット流体の圧力とばね23の弾性力とで開方向に付勢して弁座2Cより離座し、入力通路2と低圧通路4との間を開としている。また、第2ダイヤフラム弁24は閉状態で、第1パイロット室32にパイロット流体を供給して第2パイロット室33からパイロット流体を排出し、第2ダイヤフラム弁体27を第1パイロット室32に供給のパイロット流体の圧力とばね35の弾性力とで閉方向に付勢して弁座2Dに着座し、入力通路2と出力通路3との間を閉としている。
【0024】
この状態で、第1パイロット室19および第2パイロット室33にパイロット流体を供給して第2パイロット室20および第1パイロット室32からパイロット流体を排出すると、作動位置に切り換り、第1ダイヤフラム弁5は閉状態となり、第1ダイヤフラム弁体9を第1パイロット室19に供給のパイロット流体の圧力でばね23の弾性力に抗して閉方向に付勢して弁座2Cに着座し、入力通路2と低圧通路4との間を閉じる。また、第2ダイヤフラム弁24は開状態となり、第2ダイヤフラム弁体27を第2パイロット室33に供給のパイロット流体の圧力でばね35の弾性力に抗して開方向に付勢して弁座2Dより離座し、入力通路2と出力通路3との間を開く。
【0025】
原位置から作動位置に切り換る際には、第1ダイヤフラム弁体9が離座位置から弁座2Cへの着座位置に移動する間に、第2ダイヤフラム弁体27が弁座2Dより離座し、入力通路2と出力通路3と低圧通路4との全通路2、3、4間を連通する切換過渡位置を経て切り換る。また、第2パイロット室33にパイロット流体を供給して第1パイロット室32からパイロット流体を排出する制御を、第1パイロット室19にパイロット流体を供給して第2パイロット室20からパイロット流体を排出する制御より早くするよう時間差を設定し、第2ダイヤフラム弁体27を弁座2Dから離座した後に第1ダイヤフラム弁体9を弁座2Cに着座し、切換過渡位置で全通路2、3、4間を連通するようにしても良い。
【0026】
作動位置にある状態で、第2パイロット室20および第1パイロット室32にパイロット流体を供給して第1パイロット室19および第2パイロット室33からパイロット流体を排出すると、図1の原位置に復帰作動し、第1ダイヤフラム弁9は開状態に復帰して第1ダイヤフラム弁体9を弁座2Cから離座して入力通路2と低圧通路4との間を開く。また、第2ダイヤフラム弁24は閉状態に復帰して第2ダイヤフラム弁体27を弁座2Dに着座して入力通路2と出力通路3との間を閉じる。
【0027】
かかる作動において、ハウジング本体1に設けた第1ダイヤフラム弁5を開とすると共に第2ダイヤフラム弁24を閉とする原位置と、第1ダイヤフラム弁5を閉とすると共に第2ダイヤフラム弁24を開とする作動位置と、原位置から作動位置への切り換えで入力通路2と出力通路3と低圧通路4との全通路2、3、4間を連通する切換過渡位置とを有している。このため、入力通路2と低圧通路4との間を開いて出力通路3を閉じる原位置から、入力通路2と出力通路3と低圧通路4との全通路2、3、4間を連通する切換過渡位置を経て、入力通路2と出力通路3との間を開いて低圧通路4を閉じる作動位置に切り換えるから、原位置で低圧通路4に連通して低圧状態にある入力通路2の流体は、切換過渡位置で圧力上昇することなくできて、作動位置で出力通路3に流通でき、出力通路3の圧力変動を低減することができる。
【0028】
また、第1ダイヤフラム弁5を開閉する第1駆動部8は第1ダイヤフラム弁5の第1ダイヤフラム弁体9をばね23の弾性力と第2パイロット室20に供給するパイロット流体の圧力とで開方向に付勢すると共に第1パイロット室19に供給するパイロット流体の圧力で閉方向に付勢し、第2ダイヤフラム弁24を開閉する第2駆動部26は2ダイヤフラム弁24の第2ダイヤフラム弁体27をばね35の弾性力と第1パイロット室32に供給するパイロット流体の圧力とで閉方向に付勢すると共に第2パイロット室33に供給するパイロット流体の圧力で開方向に付勢する。このため、第1ダイヤフラム弁9は弾性力とパイロット圧力とで付勢して閉から開への応答性を向上できると共に、第2ダイヤフラム弁24は弾性力とパイロット圧力とで付勢して開から閉への応答性を向上できるから、弁装置の作動位置から原位置へ切り換える復帰作動の応答性を向上することができる。
【0029】
また、第1駆動部8は第1ダイヤフラム弁9の開閉に応じて移動して第1ダイヤフラム弁9の開閉状態を外部から視認可能な第1視認部17Aを有し、第2駆動部26は第2ダイヤフラム弁24の開閉に応じて移動して第2ダイヤフラム弁24の開閉状態を外部から視認可能な第2視認部30Aを有する。このため、各ダイヤフラム弁5、24の開閉状態を外部から視認することで、弁装置の原位置と作動位置とを確実に判断することができる。
【0030】
また、第1駆動部8に用いる第1ハウジング7と第2駆動部26に用いる第2ハウジング25は共通の部材を用いる。このため、両駆動部8、26のハウジング7、25を共通化できるから、管理する部品点数を削減できて、管理の簡素化を図ることができる。さらにまた、両ダイヤフラム弁5、24の両ダイヤフラム弁体9、27と両蓋部材14、28と両ピストン16、29は共通の部材を用いるから、管理する部品点数を一層削減できて、管理の簡素化をより一層図ることができる。
【0031】
図2は本発明の他実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
図2において、第1ダイヤフラム弁40を構成する第1ハウジング41は、小径部42と中径部43とを連設して軸方向へ貫通形成し、中径部43を一側面に開口すると共に、小径部42を他側面に開口している。第1ハウジング41の一側面に固定する第1蓋部材44は、中径部43に連設するよう大径部45を穿設し、小径部42と中径部43と大径部45とで収装孔46を構成している。第1ダイヤフラム弁40を構成する第1駆動部47は、収装孔46の大径部45へピストン48を軸方向へ摺動自在に嵌挿し、ピストン48の一側面から第1ピストンロッド49を軸方向へ突出して第1蓋部材44を液密に貫通して軸方向端部に第1視認部49Aを形成し、ピストン48の一側面側に第1パイロット室50を区画形成する。また、ピストン48の他側面から第2ピストンロッド51を軸方向へ突出して収装孔46の小径部42を液密に貫通して第1ハウジング41の他側面から突出し、突出端部に雄ねじ部51Aを形成し、ピストン48の他側面側に第2パイロット室52を区画形成する。第1パイロット室50は第1蓋部材44に穿設した第1パイロット通路44Aに接続してパイロット流体を給排自在にし、第2パイロット室52は第1ハウジング41に穿設の第2パイロット通路41Aに接続してパイロット流体を給排自在にすると共にばね23を収装している。
【0032】
第1ダイヤフラム弁40を構成する第1ダイヤフラム弁体53は、樹脂材より形成して、弁座2Cに着座する弁体部53Aと、弁体部53Aより径方向に延びた薄膜円板状のダイヤフラム部53Bと、ダイヤフラム部53Bの外周縁に形成されてハウジング本体1と第1ハウジング41との間に挟持される外周部53Cとを一体成形し、弁体部53Aに金属材より形成して外周面にロ−レットを形成すると共に内周面に雌ねじ部を形成した円筒形状のスリーブ部材54を圧入固定し、スリーブ部材54の雌ねじ部に第2ピストンロッド51の雄ねじ部51Aを螺着して取付ける。
【0033】
第2ダイヤフラム弁55を構成する第2ハウジング56は、第1ハウジング41とは異なる構成で、小径部57と大径部58とを連設して軸方向へ貫通形成し、大径部58を一側面に開口すると共に、小径部57を他側面に開口している。第2ハウジング56の一側面に固定する第2蓋部材59は、大径部58に連設するよう中径部60を穿設し、小径部57と大径部58と中径部60とで収装孔61を構成している。第2ダイヤフラム弁55を構成する第2駆動部62は、収装孔61の大径部58へピストン63を軸方向へ摺動自在に嵌挿し、ピストン63の一側面から第1ピストンロッド64を軸方向へ突出して蓋部材59を液密に貫通して軸方向端部に第1視認部64Aを形成し、ピストン63の一側面側に第1パイロット室65を区画形成する。また、ピストン63の他側面から第2ピストンロッド66を軸方向へ突出して収装孔61の小径部57を液密に貫通して第2ハウジング56の他側面から突出し、突出端部に雄ねじ部66Aを形成し、ピストン63の他側面側に第2パイロット室67を区画形成する。第1パイロット室65は第2蓋部材59に穿設した第1パイロット通路59Aに接続してパイロット流体を給排自在にすると共にばね35を収装している。第2パイロット室67は第2ハウジング56に穿設の第2パイロット通路56Aに接続してパイロット流体を給排自在にする。第1駆動機構47と第2駆動機構62とを比較すると、両ピストン48、63は略同一形状で、第1駆動機構47の第1ピストンロッド49は第2駆動機構62の第1ピストンロッド64より軸方向寸法を短く設け、第1駆動機構47の第2ピストンロッド51は第2駆動機構62の第2ピストンロッド66より軸方向寸法を長く設けている。
【0034】
第2ダイヤフラム弁40を構成する第2ダイヤフラム弁体68は、第1ダイヤフラム弁体53と略同一構成で、樹脂材より形成して、弁座2Dに着座する弁体部68Aと、薄膜円板状のダイヤフラム部68Bと、ハウジング本体1と第2ハウジング56との間に挟持される外周部68Cとを一体成形し、弁体部68Aに圧入固定したスリーブ部材69の雌ねじ部に第2ピストンロッド66の雄ねじ部66Aを螺着して取付ける。両ダイヤフラム部53B、68Bの背面側に区画形成される空間は、両ハウジング41、56にそれぞれ穿設した通路41B、56Bを介して大気に開放する。
【0035】
作動は、図2に示す状態は原位置で、第1ダイヤフラム弁40は開状態で入力通路2と低圧通路4との間を開とし、第2ダイヤフラム弁55は閉状態で入力通路2と出力通路3との間を閉としている。
【0036】
この状態で、第1パイロット室50および第2パイロット室67にパイロット流体を供給して第2パイロット室52および第1パイロット室65からパイロット流体を排出すると、全通路2、3、4間を連通する切換過渡位置を経て作動位置に切り換り、第1ダイヤフラム弁40は閉状態となって入力通路2と低圧通路4との間を閉じ、第2ダイヤフラム弁55は開状態となって入力通路2と出力通路3との間を開く。
【0037】
作動位置にある状態で、第2パイロット室52および第1パイロット室65にパイロット流体を供給して第1パイロット室50および第2パイロット室67からパイロット流体を排出すると、図2の原位置に復帰作動し、第1ダイヤフラム弁40は開状態に復帰して入力通路2と低圧通路4との間を開き、第2ダイヤフラム弁55は閉状態に復帰して入力通路2と出力通路3との間を閉じる。
【0038】
かかる作動で、一実施形態と同様に、原位置から全通路2、3、4間を連通する切換過渡位置を経て作動位置に切り換えるから、原位置で低圧通路4に連通して低圧状態にある入力通路2の流体は、切換過渡位置で圧力上昇することなくできて、作動位置で出力通路3に流通でき、出力通路3の圧力変動を低減することができる。また、一実施形態と同様に、第1ダイヤフラム弁40は弾性力とパイロット圧力とで付勢して閉から開への応答性を向上できると共に、第2ダイヤフラム弁55は弾性力とパイロット圧力とで付勢して開から閉への応答性を向上できるから、弁装置の作動位置から原位置へ切り換える復帰作動の応答性を向上することができる。また、一実施形態と同様に、第1ダイヤフラム弁40の開閉状態を外部から視認可能な第1視認部49Aと、第2ダイヤフラム弁55の開閉状態を外部から視認可能な第2視認部64Aを有するため、各ダイヤフラム弁40、55の開閉状態を外部から視認することで、弁装置の原位置と作動位置とを確実に判断することができる。
【0039】
また、各ダイヤフラム弁体53、68は内周面に雌ねじ部を形成した金属製のスリーブ部材54、69を圧入固定し、各スリーブ部材54、69の雌ねじ部に各第2ピストンロッド51、66の雄ねじ部51A、66Aを螺着して取付けるため、螺着個所を金属製として強度を向上することができ、各ダイヤフラム弁体9、27の樹脂製の雄ねじ部9B、27Bを各第2ピストンロッド18、31に螺着して取付ける一実施形態の弁装置と比し、各ダイヤフラム弁体53、68と各第2ピストンロッド51、66との取付個所の強度向上を図ることができる。また、第1ダイヤフラム弁40と第2ダイヤフラム弁55はそれぞれ格別のハウジング41、56と蓋部材44、59とピストン48、63を用いて最適寸法とすることができ、両ダイヤフラム弁5、24が共通のハウジング7、25と蓋部材14、28とピストン16、29を用いる一実施形態の弁装置に比し、両ダイヤフラム弁40、55の軸方向寸法を短くでき、弁装置全体の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1:ハウジング本体
2:入力通路
3:出力通路
4:低圧通路
5、40:第1ダイヤフラム弁
7、41:第1ハウジング
8、47:第1駆動部
17A、49A:第1視認部
24、55:第2ダイヤフラム弁
25、56:第2ハウジング
26、62:第2駆動部
30A、64A:第2視認部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を供給する入力通路と流体を出力する出力通路と低圧側に接続する低圧通路とを形成したハウジング本体を備え、ハウジング本体には入力通路と低圧通路との間を開閉する第1ダイヤフラム弁と、入力通路と出力通路との間を開閉する第2ダイヤフラム弁とを設け、第1ダイヤフラム弁を開とすると共に第2ダイヤフラム弁を閉とする原位置と、第1ダイヤフラム弁を閉とすると共に第2ダイヤフラム弁を開とする作動位置と、原位置から作動位置への切り換えで入力通路と出力通路と低圧通路との全通路間を連通する切換過渡位置とを有することを特徴とするダイヤフラム弁装置。
【請求項2】
前記第1ダイヤフラム弁を開閉する第1駆動部と、前記第2ダイヤフラム弁を開閉する第2駆動部とを備え、第1駆動部は前記第1ダイヤフラム弁を弾性力とパイロット圧力とで開方向に付勢すると共にパイロット圧力で閉方向に付勢し、第2駆動部は前記第2ダイヤフラム弁を弾性力とパイロット圧力とで閉方向に付勢すると共にパイロット圧力で開方向に付勢することを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム弁装置。
【請求項3】
前記第1駆動部は前記第1ダイヤフラム弁の開閉に応じて移動して前記第1ダイヤフラム弁の開閉状態を外部から視認可能な第1視認部を有し、前記第2駆動部は前記第2ダイヤフラム弁の開閉に応じて移動して前記第2ダイヤフラム弁の開閉状態を外部から視認可能な第2視認部を有することを特徴とする請求項2に記載のダイヤフラム弁装置。
【請求項4】
前記第1駆動部に用いる第1ハウジングと前記第2駆動部に用いる第2ハウジングは共通の部材を用いることを特徴とする請求項2若しくは請求項3のいずれかに記載のダイヤフラム弁装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−64452(P2013−64452A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203884(P2011−203884)
【出願日】平成23年9月17日(2011.9.17)
【出願人】(000241267)豊興工業株式会社 (63)
【Fターム(参考)】