説明

ダンパ付プーリ

【課題】プーリ内部への異物の侵入を確実に防止可能なダンパ付プーリを提供する。
【解決手段】ダンパユニット30、プーリユニット40、ジャーナルベアリング60及びスラストベアリング62を備え、ハブは、クランクシャフト嵌入孔32hを有するボス部32aと、ボス部に対して放射方向に延在する円盤部32bを備えたダンパ付プーリにおいて、円盤部は、ボス部の反エンジン側の端部から連続し、アイソレーションリング及びアイソレーションラバーの反エンジン側の周面域を覆うように配するとともに、取り外し用治具取付用の貫通孔38を有しており、貫通孔はダンパユニットとプーリユニットを組み付けた状態においてはアイソレーションラバー薄肉部44aにより封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランクシャフトなどの回転軸に装着され、回転軸のトルクを無端ベルトを介して各種の補機に伝達するためのダンパ付プーリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのクランクシャフトなどの回転軸の駆動力を、無端ベルトを介して発電機やコンプレッサなどの補機に伝達するために、種々のダンパ付プーリが回転軸(クランクシャフト)に取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。図5には、このようなダンパ付プーリの一構成が例示されている。かかるダンパ付プーリは、クランクシャフト(図示しない)に取り付けられるダンパユニット2と、無端ベルト(図示しない)が掛け渡されるプーリユニット4とを互いに組み付けて構成されている。
【0003】
ダンパユニット2は、クランクシャフトに取り付けられ、当該クランクシャフトとともに一体的に回転する環状のハブ2aと、回転中におけるクランクシャフトのねじり振動を低減するためのダンパ部2bとを備えており、ダンパ部2bは、ハブ2aの外周側に沿って周方向に連続して構成されている。なお、クランクシャフトの回転中において、ダンパユニット2は、中心軸C周りに同心状に回転する。以下の説明においては、中心軸Cに沿った方向(図5においては、左右方向)を軸方向という。
【0004】
ここで、ハブ2aは、クランクシャフトが嵌入される嵌入孔6hを有する環状のボス部6と、ボス部6から放射方向に延在する円盤部8と、円盤部8の外周側から中心軸Cに沿って同心状に延在して周方向に連続する外側円筒部10と、円盤部8のボス部6寄りの部位から外側円筒部10と平行に延在して周方向に連続する内側円筒部12とを備えている。この場合、ダンパ部2bは、外側円筒部10の外周側に環状をなす第1のゴム状弾性体(ダンパラバー)14を介して慣性質量体16を積層して構成されている。
【0005】
一方、プーリユニット4は、当該プーリユニット4と上記したダンパユニット2とを互いに組み付けた状態において、ダンパ部2bの外周側に沿って所定の隙間を空けて同心状に対向して配される円筒状のプーリ部4aと、プーリ部4aから径方向内側に向けて連続し、かつ、ダンパ部2bの一方側周(図5に示す構成においては、左側周)を覆うように配される円盤状のカバー部4bとを備えており、プーリ部4aには、その外周に、無端ベルト(図示しない)が掛け渡されるプーリ溝4gが複数形成されている。なお、ダンパ部2bとプーリ部4aとの隙間には、ダンパユニット2とプーリユニット4との相対変位(相対回転)を許容するジャーナルベアリング18が介在される。
【0006】
また、プーリユニット4は、カバー部4bの内方側面Sinに対して軸方向(図5においては、左右方向)に対向し、かつ、ハブ2aの円盤部8寄りに対向して配される円盤状のアイソレーションリング20と、カバー部4bとアイソレーションリング20との間に配され、かつ、これら相互に加硫接着された環状をなす第2のゴム状弾性体(以下、アイソレーションラバーという。)22とを備えており、アイソレーションリング20には、ダンパユニット2(ハブ2a)の内側円筒部12の外周側に沿って対向して同心状に配される円筒状の嵌合部20aが形成されている。
【0007】
また、上記したダンパ付プーリには、カバー部4bとアイソレーションリング20とに加硫接着されたアイソレーションラバー22に軸方向の予備圧縮を付与するために、プレッシャーリング24が設けられている。この場合、プレッシャーリング24は、ダンパユニット2(ハブ2a)の内側円筒部12の外周並びに上記したアイソレーションリング20の嵌合部20aの内周にそれぞれ嵌合可能な円筒状の嵌合部24aと、嵌合部24aの外方側から放射方向に延在し、かつ、カバー部4bの外方側面Soutに沿って周方向に対向して配される円盤状の押圧部24bとを備えている。
【0008】
ここで、ダンパユニット2とプーリユニット4との相対変位(相対回転)を許容するスラストベアリング28をカバー部4bの外方側面Soutに位置付けた後、プレッシャーリング24の嵌合部24aをアイソレーションリング20の嵌合部20aの内周に嵌合させることで、プレッシャーリング24の押圧部24bとカバー部4bの外方側面Soutとの間にスラストベアリング28を挟持させたプーリユニット4が構築される。次に、ダンパ部2bとプーリ部4aとの隙間にジャーナルベアリング18を介在させて、プーリユニット4とダンパユニット2とを互いに組み付けた状態において、プレッシャーリング24の嵌合部24aをダンパユニット2(ハブ2a)の内側円筒部12の外周に嵌合させる。
【0009】
このとき、ダンパユニット2(ハブ2a)の内側円筒部12の外周に対するプレッシャーリング24の嵌合部24aの嵌合量、すなわち、プレッシャーリング24の押し込み量を調整することで、カバー部4bとアイソレーションリング20とに加硫接着されたアイソレーションラバー22に軸方向の予備圧縮が付与されるとともに、ダンパユニット2のボス部6の端面6sに対するプーリユニット4のプーリ部4aの軸方向における組み付け位置、すなわち、ボス部6の端面6sと所定のV溝との離間距離L(以下、V溝離間距離Lという。)が調整される。この場合、V溝離間距離Lは、ダンパユニット2(ハブ2a)に備えられたボス部6の端面6sと、プーリユニット4(プーリ部4a)に形成された複数のプーリ溝4gの中の特定のものとの間の軸方向距離として規定される。なお、図5では、右から4番目のプーリ溝4gを一例として特定しているが、かかるプーリ溝4gの位置はダンパ付プーリの使用目的や使用環境などに応じて任意に特定されるため、ここでは特に限定しない。
【0010】
このようなダンパ付プーリにおいて、エンジン駆動時にクランクシャフトにねじり振動が発生した際、ダンパユニット2のダンパ部2bは、クランクシャフトのねじり振動を低減する機能(ねじり振動低減機能)を有するとともに、エンジン始動時からアイドル回転領域へ上昇する間やアイドル回転時にエンジンのトルク変動が生じた際、ダンパユニット2とプーリユニット4との間に介在されたアイソレーションラバー22は、自身がせん断方向に弾性変形することで、エンジンのトルク変動によって発生するクランクシャフトの速度変動がプーリユニット4に伝達されるのを抑制(例えば、遮断、あるいは低減)する機能(速度変動伝達抑制機能)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 2005−005865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、ダンパ付プーリは、クランクシャフトへの装着後に交換作業や点検作業を必要とする場合があり、このような交換作業や点検作業を行う際、ダンパ付プーリをクランクシャフトから取り外す必要が生じる。
【0013】
例えば、アイソレーションラバー22が破断した場合、ダンパ付プーリの交換が必要となる。ダンパ付プーリの交換作業を行う場合、交換対象のダンパ付プーリをクランクシャフトから取り外すが、その際、所定の取り外し用治具をダンパ付プーリに取り付けた上で、当該治具を用いてダンパ付プーリをクランクシャフトから取り外さなければならない場合がある。ダンパ付プーリは、ダンパユニット2(ハブ2a)がクランクシャフトに固定される(クランクシャフトと直に一体化される)ことで、当該クランクシャフトと一体となって回転可能な状態で装着されているため、ダンパ付プーリをクランクシャフトから取り外すには、ダンパユニット2(ハブ2a)を当該ダンパユニット2と組み付けられたプーリユニット4とともにクランクシャフトから引き抜かなければならない。
したがって、取り外し用治具を使用する場合には、当該治具からダンパユニット2(ハブ2a)に対し、クランクシャフトからの引き抜き方向(図5においては、左方向)へ所定の力(クランクシャフトへの押圧力に対する反力など(以下、引抜力という。))を作用させる必要があり、当該引抜力はハブ2a(具体的には、クランクシャフトへ嵌入されるボス部6から放射方向に延在する円盤部8)に作用させることが好ましい。
【0014】
しかしながら、図5に示すダンパ付プーリの構成では、ハブ2aの円盤部8は、ボス部6の上記したハブ2aの引き抜き方向とは反対側(図5においては、右側)に延在しているため、取り外し用治具からの引抜力を当該円盤部8に対して直接作用させることは非常に困難である。このため、ダンパ付プーリがクランクシャフトに装着された状態において前記ハブ2aの引き抜き方向(図5においては、左方向)に位置付けられる、プーリユニット4のカバー部4bやプレッシャーリング24に対して治具からの引抜力を作用させる必要がある。これらのカバー部4bやプレッシャーリング24は、その構造上、ハブ2aの円盤部8と比べて薄肉の部材となっており、例えば、取り外し用治具を取り付けるための貫通孔(カバー部4bやプレッシャーリング24を軸方向へ貫通するネジ孔など)を形成するような場合、当該貫通孔及びその近傍の強度を十分に確保できない虞がある。また、かかる強度を確保可能な場合であっても、取り外し用治具からの引抜力はカバー部4bやプレッシャーリング24に作用されるため、ダンパユニット2はクランクシャフトに装着されたままの状態で、プーリユニット4だけがダンパユニット2から分離して引き抜かれてしまう場合がある。
【0015】
そこで、ハブの円盤部をボス部のハブの引き抜き方向側(図5においては、左側に相当)に延在させた構成とすれば、かかる円盤部に取り外し用治具を取り付けるための貫通孔(円盤部を軸方向へ貫通するネジ孔など)を形成し、当該貫通孔に取り外し用治具を取り付けることで、当該治具からの引抜力を前記円盤部に対して直接作用させることが可能となる。これにより、ダンパユニット(ハブ)をプーリユニットとともにクランクシャフトから引き抜くことも可能となる。
【0016】
その一方で、ハブ2aの円盤部に対して取り外し用治具取付用の貫通孔(一例として、円盤部を軸方向へ貫通するネジ孔)を形成した場合、ハブ2aの円盤部の肉厚を厚くしなくてもネジ長を長く確保することができるが、当該貫通孔を通してダンパ付プーリの外部から塵埃や水などの異物が内部へ侵入してしまう虞がある。このようなダンパ付プーリ内部への異物の侵入は、例えば、ジャーナルベアリングに摩耗やダンパユニットやプーリユニットを構成する金属部品に発錆などを生じさせる要因となり、確実に防止する必要がある。
【0017】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、ダンパ付プーリをクランクシャフトから取り外すべく、ハブの円盤部に対して取り外し用治具取付用の貫通孔を形成した場合であっても、当該貫通孔を通したダンパ付プーリの外部から内部への異物(例えば、塵埃や水など)の侵入を確実に防止可能なダンパ付プーリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような目的を達成するために、本発明に係るダンパ付プーリは、エンジンのクランクシャフトに取り付け可能に構成され、前記クランクシャフトのねじり振動を低減するダンパユニットと、前記ダンパユニットと組み付け可能に構成され、前記クランクシャフトの回転トルクを伝達するための無端ベルトが掛け渡されるプーリユニットと、これらダンパユニットとプーリユニットとの相対変位を許容するためのベアリングとを備えている。かかるダンパ付プーリにおいて、前記ダンパユニットは、前記クランクシャフトに取り付けられ、当該クランクシャフトとともに一体的に回転する環状のハブを有し、前記ハブは、反エンジン側においてクランクシャフト取付部から放射方向に延在する円盤部を有し、前記円盤部は、ダンパ付プーリの取り外し作業時に取り外し用治具を取り付けるための孔を有しており、前記孔は、前記円盤部を軸方向へ貫通するとともに、前記ダンパユニットと前記プーリユニットを組み付けた状態においては封止部材により封止する。
【0019】
また、本発明に係るダンパ付プーリは、エンジンのクランクシャフトに取り付け可能に構成され、前記クランクシャフトのねじり振動を低減するダンパユニットと、前記ダンパユニットと組み付け可能に構成され、前記クランクシャフトの回転トルクを伝達するための無端ベルトが掛け渡されるプーリユニットと、これらダンパユニットとプーリユニットとの相対変位を許容するためのベアリングとを備えている。かかるダンパ付プーリにおいて、前記ダンパユニットは、前記クランクシャフトに取り付けられ、当該クランクシャフトとともに一体的に回転する環状のハブと、いずれも環状をなし、前記ハブと同心状に配される第1のゴム状弾性体及び慣性質量体からなり、回転中における前記クランクシャフトのねじり振動を低減するためのダンパ部とを有し、前記プーリユニットは、前記無端ベルトが掛け渡されるプーリ部と、前記クランクシャフトの速度変動の前記プーリユニットへの伝達を抑制するための環状の第2のゴム状弾性体と、当該第2のゴム状弾性体を固定する円盤状のアイソレーションリングを有しており、前記ハブは、前記クランクシャフトが嵌入される嵌入孔を有するクランクシャフト取付部と、当該クランクシャフト取付部に対して放射方向に延在する円盤部を備えている。そして、前記円盤部は、前記クランクシャフト取付部の反エンジン側の端部から連続し、前記プーリユニットのアイソレーションリング及び第2のゴム状弾性体の前記反エンジン側の周面域を覆うように配するとともに、ダンパ付プーリの取り外し作業時に取り外し用治具を取り付けるための孔を有しており、前記孔は、前記円盤部を軸方向へ貫通するとともに、前記ダンパユニットと前記プーリユニットを組み付けた状態においては封止部材により封止する。
【0020】
いずれの場合であっても、前記封止部材は、前記円盤部の孔の両側開口のうち、エンジン側の開口を封止すればよい。
なお、前記封止部材は、例えば、前記第2のゴム状弾性体と一体をなして構成され、前記アイソレーションリングの前記第2のゴム状弾性体とは反対側に配設されるように構成することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ダンパ付プーリをクランクシャフトから取り外すべく、ハブの円盤部に対して取り外し用治具取付用の貫通孔を形成した場合であっても、当該貫通孔を通したダンパ付プーリの外部から内部への異物(例えば、塵埃や水など)の侵入を確実に防止することができる。これにより、例えば、ジャーナルベアリングに摩耗やダンパユニットやプーリユニットを構成する金属部品に発錆などを生じさせるような事態を有効に回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るダンパ付プーリの構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るダンパ付プーリの構成の一部を断面で示す斜視図である。
【図3】アイソレーションラバー薄肉部が治具取付孔のエンジン側の開口を封止する状態を示す拡大断面図である。
【図4】図1に示す矢印1A方向からダンパ付プーリを示す平面図(反エンジン側面図)である。
【図5】従来のダンパ付プーリの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のダンパ付プーリについて、添付図面を参照して説明する。
図1から図4には、本発明の一実施形態に係るダンパ付プーリが示されている。かかるダンパ付プーリは、エンジンのクランクシャフト(図示しない)に取り付け可能に構成され、前記クランクシャフトのねじり振動を低減するダンパユニット30と、当該ダンパユニット30と組み付け可能に構成され、前記クランクシャフトの回転トルクを各種の補機(例えば、オルタネータやコンプレッサなど)へ伝達するための無端ベルト(図示しない)が掛け渡されるプーリユニット40と、これらダンパユニット30とプーリユニット40との相対変位を許容するためのベアリング(後述するジャーナルベアリング60及びスラストベアリング62)とを備えている。
【0024】
なお、ダンパとは、クランクシャフトのねじり振動を低減する機能(ねじり振動低減機能)を有するものを意味しているが、本実施形態のダンパ付プーリは、かかる機能の他に、クランクシャフトの速度変動がプーリ側に伝わるのを抑制する機能(速度変動伝達抑制機能)をも備えたものを想定している。また、以下の説明に際しては、互いに組み付けられたダンパユニット30とプーリユニット40とが相対変位(相対回転)する際に、クランクシャフトとともに一体的に回転するダンパユニット30の回転中心を中心軸Cとした場合において、その中心軸Cに沿った方向を軸方向(図1においては、左右方向)といい、当該軸方向に対し、クランクシャフトへ回転トルクを出力するエンジンが位置付けられる側(同図においては、右側)をエンジン側、その反対側(同図においては、左側)を反エンジン側という。
【0025】
ダンパユニット30は、前記クランクシャフトに取り付けられ、当該クランクシャフトとともに一体的に回転する環状のハブ32と、いずれも環状をなし、当該ハブ32と同心状に配される第1のゴム状弾性体(以下、ダンパラバーという。)34a及び慣性質量体34bからなり、回転中における前記クランクシャフトのねじり振動を低減するためのダンパ部34とを有している。
ハブ32は、反エンジン側においてクランクシャフト取付部(以下、ボス部という。)32aから放射方向に延在する円盤部(以下、ハブ円盤部という。)32bを有している。この場合、ボス部32aは、前記クランクシャフトが嵌入される嵌入孔32hを有しており、ハブ円盤部32bは、ボス部32aの反エンジン側(ハブ32のクランクシャフトへの嵌入方向手前側)の端部(図1においては、左端部)から連続し、ボス部32aに対して放射方向に延在する構成となっている。図1に示す構成においては、ハブ円盤部32bは第1の円筒部(以下、内側円筒部という。)32cを介してボス部32aから連続しており、さらに、外周縁において第2の円筒部(同、外側円筒部という。)32dへ連続している。内側円筒部32cは、ボス部32aの反エンジン側(前記嵌入方向手前側)の端部(図1においては、左端部)から径方向外側(拡径方向)へ延出した後、ハブ円盤部32bの内周縁と連続するように反エンジン側へ延在する略円筒状をなしており、外側円筒部32dは、ハブ円盤部32bの外周縁からエンジン側(図1においては、右側)へ向けて段差(拡径部位)を有して延在する略円筒状をなしている。
【0026】
このように、ハブ32は、ハブ円盤部32bがボス部32aのエンジン側ではなく、反エンジン側(換言すれば、ハブ32のクランクシャフトへの嵌入方向手前側(図1においては、左側))において径方向外側(拡径方向)へ延在する構成となっている。加えて、ハブ32は、ボス部32a、内側円筒部32c、及び外側円筒部32dがいずれも同一の中心軸Cからこの順番で径方向外側へ配された構成となっているとともに、ハブ円盤部32bと、当該ハブ円盤部32bの内周縁及び外周縁からそれぞれ軸方向の同一側(エンジン側)へ全周に亘って延在する内側円筒部32c及び外側円筒部32dによって囲まれた領域に、所定量だけ軸方向(反エンジン側)へ窪んだ凹部(円環状の空間)36を有する構成となっている。なお、凹部36の大きさは、後述する第2のゴム状弾性体(アイソレーションラバー)44を収容可能となるように、外側円筒部32dと内側円筒部32cとの径方向相互間距離(外側円筒部32dの内径寸法と内側円筒部32cの外径寸法との寸法差)や、ハブ円盤部32bからの内側円筒部32c及び外側円筒部32dの延出距離(軸方向への延出寸法)などを調整して任意に設定すればよい。また、ハブ32は、例えば、鋳造や板金等に転造加工を施すことで、ボス部32a、ハブ円盤部32b、内側円筒部32c及び外側円筒部32dを同時に一体成形すればよい。
【0027】
ダンパ部34は、ダンパラバー34aと慣性質量体34bがハブ32と同一の中心軸C周りに配され、当該ハブ32の外側円筒部32dの外周部の反エンジン側近傍(ハブ円盤部32bとの連続側近傍)にダンパラバー34aを介して慣性質量体34bを積層して構成されている。ダンパラバー34aは、例えば、ゴムなどの弾性材料で形成され、外側円筒部32dと慣性質量体34bとの間に圧入して位置決め固定されている。また、慣性質量体34bは、例えば、鋳鉄や鋳鋼などの金属材料で形成されている。
【0028】
プーリユニット40は、無端ベルト(図示しない)が掛け渡されるプーリ部42と、前記クランクシャフトの速度変動のプーリユニット40への伝達を抑制するための第2のゴム状弾性体(以下、アイソレーションラバーという。)44と、当該アイソレーションラバー44を固定する円盤状のアイソレーションリング46とを有している。
プーリ部42は、ハブ32の外側円筒部32dの外周側のエンジン側近傍に沿って、所定の隙間を空けた状態で同一の中心軸C周りに対向して配される円筒状のプーリ円筒部42aと、当該プーリ円筒部42aのエンジン側の端部(図1においては、右端部)から径方向内側(縮径方向)へ延在し、かつ、ハブ32の凹部36を覆うように配される円盤状のプーリ円盤部42bとを備えており、プーリユニット40をダンパユニット30と組み付けた状態において、ダンパ部34のエンジン側に位置付けられている。すなわち、プーリ部42のプーリ円筒部42aとダンパ部34(ダンパラバー34a及び慣性質量体34b)は、径方向へ重畳することなく、プーリ円筒部42aがエンジン側、ダンパ部34が反エンジン側となるように軸方向へ並設されている。なお、プーリ部42は、所定の金属材料によって、プーリ円筒部42a及びプーリ円盤部42bが一体成形されている。また、プーリ円筒部42aには、その外周に、無端ベルト(図示しない)が掛け渡されるプーリ溝42cが複数(数は限定しない)形成されている。
【0029】
外側円筒部32dとプーリ円筒部42aとの隙間には、ダンパユニット30とプーリユニット40とを互いに組み付けた状態において、これらダンパユニット30とプーリユニット40との相対変位(相対回転)を許容するためのジャーナルベアリング60が介在されるようになっている。プーリユニット40をダンパユニット30と組み付ける際には、ジャーナルベアリング60はダンパユニット30(具体的には、ハブ32の外側円筒部32d)の外周、もしくはプーリユニット40(具体的には、プーリ円筒部42a)の内周に予め装着させておけばよい。したがって、ジャーナルベアリング60は、ダンパユニット30(外側円筒部32d)との摺動面を有するものであってもよいし、プーリユニット40(プーリ円筒部42a)との摺動面を有するものであってもよく、また、これらダンパユニット30及びプーリユニット40の双方との摺動面を有するものであっても構わない。
【0030】
アイソレーションリング46は、ハブ32の内側円筒部32cの外周に沿って当該内側円筒部32cと同心状に延在する円筒状の嵌合部(以下、アイソレーションリング嵌合部という。)46aと、当該アイソレーションリング嵌合部46aの反エンジン側の端部(図1においては、左端部)から径方向外側(拡径方向)へ延在する円盤部(以下、アイソレーションリング円盤部という)46bを有している。この場合、アイソレーションリング円盤部46bは、アイソレーションリング嵌合部46aをハブ32の内側円筒部32cの外周へ固定(一例として、圧入による嵌合)させた状態において、ハブ円盤部32bの内方側面S1と所定の隙間(以下、薄肉隙間という。)64を空けて対向するように位置付けられている。
【0031】
アイソレーションラバー44は、例えば、ゴムなどの弾性材料を環状に成形して構成されており、その軸方向の両側(エンジン側及び反エンジン側)がプーリ部42のプーリ円盤部42b及びアイソレーションリング円盤部46aにそれぞれ加硫接着され、凹部36においてこれらプーリ円盤部42bとアイソレーションリング円盤部46aとの間に配されている。さらに、本実施形態においては、薄肉隙間(アイソレーションリング円盤部46bとハブ円盤部32bとの間の隙間)64にも、当該アイソレーションリング円盤部46bのエンジン側から外周縁(延出縁)を越えて、ゴムなどの弾性材料が全周に亘って回り込んでいる(図2及び図3参照)。
【0032】
すなわち、アイソレーションラバー44は、プーリ円盤部42bとアイソレーションリング円盤部46aとの間に介在するだけでなく、当該アイソレーションリング円盤部46aを挟んで薄肉隙間64、つまりアイソレーションリング円盤部46bとハブ円盤部32bとの間にも介在するように、これらが一体となってプーリ円盤部42b及びアイソレーションリング円盤部46aに対して加硫接着された構成となっている。かかるアイソレーションラバー44のうち、アイソレーションリング円盤部46bの外周縁(延出縁)を越えて薄肉隙間64へ回り込み、当該薄肉隙間64を埋める部分を、以下、アイソレーションラバー薄肉部44aという。これにより、プーリユニット40をダンパユニット30と組み付けた状態において、アイソレーションラバー薄肉部44aは、ハブ円盤部32bの内方側面S1と密着している(図2及び図3参照)。
【0033】
この場合、アイソレーションリング円盤部46aには、エンジン側から反エンジン側までを貫通する所定の大きさの貫通孔を周方向へ所定の間隔で複数個形成することが好ましい。このような貫通孔を形成することで、アイソレーションリング円盤部46aのエンジン側からこれらの貫通孔を通しても薄肉隙間64へ配設されるゴムなどの弾性材料を回り込ませることができるため、アイソレーションラバー薄肉部44aをより強固にアイソレーションラバー44と一体化させることができる。このような観点から、かかる貫通孔は、アイソレーションリング円盤部46aに対して複数個形成することが好ましいが、その形成個数や形成間隔、開口の大きさや形状などは、アイソレーションリング46の強度なども考慮して任意に設定すればよい。
【0034】
また、ダンパ付プーリには、アイソレーションラバー44に軸方向の予備圧縮を付与するとともに、ダンパユニット30に対するプーリユニット40の軸方向における組み付け位置を調整するためのプレッシャーリング50が設けられている。プレッシャーリング50は、ハブ32の内側円筒部32cの外周に沿って当該内側円筒部32cと同心状に延在する円筒状の嵌合部(以下、プレッシャーリング嵌合部という。)50aと、当該プレッシャーリング嵌合部50aのエンジン側の端部(図1においては、右端部)から径方向外側(拡径方向)へ延在する円盤部(以下、プレッシャーリング円盤部という。)50bを有している。この場合、プレッシャーリング円盤部50bは、プレッシャーリング嵌合部50aをハブ32の内側円筒部32cの外周へ固定(一例として、圧入による嵌合)させた状態において、プーリ円盤部42bの外方側面S2と所定の隙間を空けて対向するように、当該外方側面S2のエンジン側に位置付けられている。
なお、プレッシャーリング嵌合部50aをハブ32の内側円筒部32cへ嵌合させた状態においては、プレッシャーリング嵌合部50aとアイソレーションリング嵌合部46aは、径方向へ重畳することなく、当該プレッシャーリング嵌合部50aがエンジン側、当該アイソレーションリング嵌合部46aが反エンジン側となるように軸方向へ並んで位置付けられている。ただし、例えば、プレッシャーリング嵌合部50aをアイソレーションリング嵌合部46aの内周(もしくは外周)へ嵌合させることで、これらを径方向へ重畳(積層)させた構成とすることも想定可能である。
【0035】
また、プレッシャーリング円盤部50bとプーリ円盤部42bとの隙間には、プレッシャーリング嵌合部50aをハブ32の内側円筒部32cへ固定(一例として、圧入による嵌合)させた状態、換言すれば、プーリユニット40をダンパユニット30と組み付けた状態において、ダンパユニット30とプーリユニット40との相対変位(相対回転)を許容するスラストベアリング62が介在されるようになっている。プーリユニット40をダンパユニット30と組み付ける際には、スラストベアリング62はプーリ円盤部42bの外方側面S2、もしくは、プレッシャーリング円盤部50bの内方側面S3に予め装着させておけばよい。したがって、スラストベアリング62は、プーリ円盤部42bの外方側面S2との摺動面を有するものであってもよいし、プレッシャーリング円盤部50bの内方側面S3との摺動面を有するものであってもよく、また、これら外方側面S2及び内方側面S3の双方との摺動面を有するものであっても構わない。
【0036】
本実施形態においては、上述したように、ハブ32のハブ円盤部32bがボス部32aのエンジン側ではなく、反エンジン側において径方向外側(拡径方向)へ延在する構成となっている。これにより、ハブ円盤部32bは、プーリユニット40のアイソレーションリング46及びアイソレーションラバー44の反エンジン側(ハブ32のクランクシャフトへの嵌入方向の手前側)の周面域(図1においては、左側周面域)を覆うように配されている。そして、このようにボス部32aのエンジン側ではなく、反エンジン側に位置するハブ円盤部32bに対し、クランクシャフトからダンパ付プーリを取り外す際に取り外し用治具を取り付けるための孔(以下、治具取付孔という。)38が形成されている。
【0037】
かかる治具取付孔38は、ダンパ付プーリの交換作業や点検作業などを行う際、クランクシャフトへ装着(具体的には、嵌入)されたダンパ付プーリをクランクシャフトから取り外すための治具を取り付けるために用いられる。本実施形態においては、ダンパ付プーリの交換作業時に、交換対象のダンパ付プーリをクランクシャフトから取り外す際、ダンパユニット30を当該ダンパユニット30と組み付けられたプーリユニット40とともにクランクシャフトから引き抜くための治具を取り付けるネジ孔が治具取付孔38として形成されている場合を想定している。
【0038】
このように治具取付孔38を形成することで、取り外し用治具(図示しない)のネジ部材(ボルトなど)を治具取付孔38へ挿通して螺合させることで、当該取り外し用治具をハブ円盤部32bに対して着脱可能に取り付けることができる。したがって、ハブ円盤部32bへ取り付けた取り外し用治具からダンパユニット30(ハブ32)に対してクランクシャフトからの引き抜き方向(図1においては、左方向)へ所定の力(クランクシャフトへの押圧力に対する反力など(以下、引抜力という。))を直接作用させることが可能となり、ダンパユニット30をプーリユニット40とともにクランクシャフトから容易に引き抜くことができる。なお、ハブ32(ハブ円盤部32b)は、プーリ部42(プーリ円筒部42a及びプーリ円盤部42b)、アイソレーションリング46及びプレッシャーリング50の各部材と比べ、十分な肉厚を有する部材となっており、治具取付孔38に取り付けた取り外し用治具からハブ32(ハブ円盤部32b)に対して引抜力を直接作用させた場合であっても、治具取付孔38及びその近傍の強度を十分に確保することができ、ハブ32に変形や破損などの不具合が生じる事態も有効に回避することができる。
【0039】
治具取付孔38の大きさ(孔径)、形成個数や形成間隔などは、取り外し用治具の形態などに応じて任意に設定することが可能である。図4には、ハブ円盤部32bに対して2つの治具取付孔38を周方向に対して等間隔(180°の位相差)で形成したハブ32の構成を一例として示しているが、治具取付孔38を1つだけ形成したハブ構成や3つ以上の治具取付孔38を形成したハブ構成などとすることも想定可能である。
【0040】
また、本実施形態においては、上述したように取り外し用治具からダンパユニット30(ハブ32)対して引抜力(軸方向への力)を作用させるため、取り外し用治具をハブ円盤部32bに対して軸方向へ緊密に固定するべく、治具取付孔38をその内周に螺旋状のネジ溝を有するネジ孔(雌ネジ孔)として形成する場合を一例として想定している。
【0041】
さらに、本実施形態において、治具取付孔38は、ハブ円盤部32bを軸方向へ(つまり、エンジン側から反エンジン側まで)貫通する貫通孔として形成されている。治具取付孔38を貫通孔とすることで、当該治具取付孔38を形成する際にその深さの管理などが不要となり、穿孔作業がしやすくなる。また、治具取付孔38のネジ長をより長く確保することができるため、取り外し用治具のネジ部材(ボルトなど)との螺合距離を十分に確保することができ、当該取り外し用治具をハブ円盤部32bに対して軸方向へ緊密に固定することも可能となる。
なお、取り外し用治具を取り付けるという観点のみに着目すれば、治具取付孔38を貫通孔ではなく、底部を有する穴として形成することも想定可能ではある。しかしながら、上記したような利点を考慮し、本実施形態においては、治具取付孔38を貫通孔として形成している。
【0042】
このように、治具取付孔38は、ハブ円盤部32bをエンジン側から反エンジン側まで貫通する貫通孔となっているため、当該貫通部分を介してハブ円盤部32bのエンジン側を反エンジン側、つまり外部と連通可能な状態となっている。しかしながら、上述したように、プーリユニット40をダンパユニット30と組み付けた状態において、ハブ円盤部32bの内方側面S1は、アイソレーションラバー薄肉部44aと密着した状態となっている(図2及び図3参照)。したがって、この状態においては、アイソレーションラバー薄肉部44aが治具取付孔38の内方側面S1上の開口38aの周縁と密着し、当該開口38aを封止している。すなわち、アイソレーションラバー薄肉部44aは、治具取付孔38の封止部材として機能しており、当該治具取付孔38の軸方向両側の開口のうち、エンジン側(ハブ32のクランクシャフトへの嵌入方向奥側)の開口38aを封止している。
【0043】
このため、治具取付孔38内にダンパ付プーリの外部から塵埃や水などの異物が侵入した場合であっても、当該異物は、開口38aを封止するアイソレーションラバー薄肉部44aによって封止され(塞き止められ)、ダンパ付プーリの内部へ侵入することがない。したがって、本実施形態のように治具取付孔38を貫通孔として形成した場合であっても、当該治具取付孔38を通したダンパ付プーリの外部から内部への異物(例えば、塵埃や水など)の侵入を確実に防止することができる。これにより、例えば、ジャーナルベアリング60の摩耗や外側円筒部32dの内周面への発錆などを生じさせるような事態を有効に回避することが可能となる。また、治具取付孔38は、エンジン側の開口38aが封止されているが、反エンジン側は大気中に開放されているため、せん断変形により発熱したアイソレーションラバー44の放熱性を向上させることも可能となる。
【0044】
なお、上述した本実施形態においては、アイソレーションラバー44と一体をなすアイソレーションラバー薄肉部44aを封止部材として、治具取付孔38の開口38aを封止する構成としたが、封止部材は、治具取付孔38の開口38aを封止することが可能であれば、アイソレーションラバー薄肉部44aのようにアイソレーションラバー44と一体をなしていなくともよい。例えば、アイソレーションラバー44とは別体をなす封止部材、具体的には、治具取付孔38の開口38aの位置や大きさなどに合わせて環状、略扇形や円形などの薄肉状のゴム状弾性体をアイソレーションリング円盤部46bの外方側面S4に加硫接着させ、当該ゴム状弾性体を開口38aの周縁と密着させることで当該開口38aを封止する構成であっても構わない。また、当該ゴム状弾性体は、アイソレーションリング円盤部46bの外方側面S4に加硫接着させず、治具取付孔38の内方側面S1とアイソレーションリング円盤部46bの外方側面S4の間に介在させるものでもよい。
【0045】
また、上述した本実施形態においては、プーリユニット40をダンパユニット30と組み付けた状態において、プーリ部42のプーリ円筒部42aとダンパ部34(ダンパラバー34a及び慣性質量体34b)とを径方向へ重畳することなく、プーリ円筒部42aがエンジン側、ダンパ部34が反エンジン側となるように軸方向へ並設させたプーリ構成としているが、例えば、プーリ部のプーリ円筒部とダンパ部(ダンパラバー及び慣性質量体)とを径方向へ重畳(積層)させたプーリ構成(図5に示すような構成)とした場合であっても、ハブ円盤部をボス部の反エンジン側において径方向外側(拡径方向)へ延在させ、当該ハブ円盤部に形成した治具取付孔を所定の封止部材(アイソレーションラバー薄肉部に相当する部材)で封止することで、上述したような本実施形態と同様のプーリ外部から内部への異物侵入防止効果を奏することは可能である。
【符号の説明】
【0046】
30 ダンパユニット
32 ハブ
32a クランクシャフト取付部(ボス部)
32b 円盤部(ハブ円盤部)
32h 嵌入孔
34a 第1のゴム状弾性体(ダンパラバー)
34b 慣性質量体
40 プーリユニット
42 プーリ部
44 第2のゴム状弾性体(アイソレーションラバー)
44a アイソレーションラバー薄肉部
46 アイソレーションリング
60 ジャーナルベアリング
62 スラストベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランクシャフトに取り付け可能に構成され、前記クランクシャフトのねじり振動を低減するダンパユニットと、
前記ダンパユニットと組み付け可能に構成され、前記クランクシャフトの回転トルクを伝達するための無端ベルトが掛け渡されるプーリユニットと、
これらダンパユニットとプーリユニットとの相対変位を許容するためのベアリングとを備えたダンパ付プーリであって、
前記ダンパユニットは、前記クランクシャフトに取り付けられ、当該クランクシャフトとともに一体的に回転する環状のハブを有し、
前記ハブは、反エンジン側においてクランクシャフト取付部から放射方向に延在する円盤部を有し、
前記円盤部は、ダンパ付プーリの取り外し作業時に取り外し用治具を取り付けるための孔を有しており、前記孔は、前記円盤部を軸方向へ貫通するとともに、前記ダンパユニットと前記プーリユニットを組み付けた状態においては封止部材により封止されていることを特徴とするダンパ付プーリ。
【請求項2】
エンジンのクランクシャフトに取り付け可能に構成され、前記クランクシャフトのねじり振動を低減するダンパユニットと、
前記ダンパユニットと組み付け可能に構成され、前記クランクシャフトの回転トルクを伝達するための無端ベルトが掛け渡されるプーリユニットと、
これらダンパユニットとプーリユニットとの相対変位を許容するためのベアリングとを備え、
前記ダンパユニットは、前記クランクシャフトに取り付けられ、当該クランクシャフトとともに一体的に回転する環状のハブと、いずれも環状をなし、前記ハブと同心状に配される第1のゴム状弾性体及び慣性質量体からなり、回転中における前記クランクシャフトのねじり振動を低減するためのダンパ部とを有し、
前記プーリユニットは、前記無端ベルトが掛け渡されるプーリ部と、前記クランクシャフトの速度変動の前記プーリユニットへの伝達を抑制するための環状の第2のゴム状弾性体と、当該第2のゴム状弾性体を固定する円盤状のアイソレーションリングを有しており、
前記ハブは、前記クランクシャフトが嵌入される嵌入孔を有するクランクシャフト取付部と、当該クランクシャフト取付部に対して放射方向に延在する円盤部を備えたダンパ付プーリであって、
前記円盤部は、前記クランクシャフト取付部の反エンジン側の端部から連続し、前記プーリユニットのアイソレーションリング及び第2のゴム状弾性体の前記反エンジン側の周面域を覆うように配されるとともに、ダンパ付プーリの取り外し作業時に取り外し用治具を取り付けるための孔を有しており、
前記孔は、前記円盤部を軸方向へ貫通するとともに、前記ダンパユニットと前記プーリユニットを組み付けた状態においては封止部材により封止されていることを特徴とするダンパ付プーリ。
【請求項3】
前記封止部材は、前記円盤部の孔の両側開口のうち、エンジン側の開口を封止していることを特徴とする請求項1または2に記載のダンパ付プーリ。
【請求項4】
前記封止部材は、前記第2のゴム状弾性体と一体をなして構成され、前記アイソレーションリングの前記第2のゴム状弾性体とは反対側に配設されていることを特徴とする請求項2または3に記載のダンパ付プーリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202471(P2012−202471A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67115(P2011−67115)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000136354)株式会社フコク (97)
【Fターム(参考)】