説明

チップトレイ及びチップを移動させる方法

【課題】チップを簡易な方法により、確実にチップの側面が底面となるように移動させる方法が求められている。
【解決手段】板状のチップ3を内在させるためのポケット9を含むチップトレイ1であって、該ポケット9がチップ3の向きを鉛直方向に変えるための誘導部13を含むチップトレイ1の前記ポケット9に、前記チップ3を、前記チップ9の広い面を水平にして入れる工程と、前記ポケット9に入ったチップ3が誘導部13に沿って回転運動する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3軸電子コンパスのようにチップを直立させた状態で実装する際に用いることができるチップトレイ及びチップを移動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3軸電子コンパスは、信号処理IC、及びX,Y,Zそれぞれの方向の磁界を検知するための3つの磁性体素子から構成されている。3つの磁性体素子のうちいずれかについては立てて実装する必要がある。電子コンパスモジュールは、信号処理ICや磁性体素子をガラスやSiのウエハ上に大量に作製した後に、個片化、パッケージ基板への実装、パッケージのモールディングという順で組立が行われる。信号処理ICや1、2個の磁性体素子は寝せた状態での実装なので従来の方法で簡単にできるが、残りの磁性体素子は立てて実装する必要があり、特殊な装置が必要となる。どの磁性体素子を立てるかは、磁性体素子の感磁方向によって決まる。
例えば、磁性体素子にMI素子を用いる場合は感磁方向が磁性体素子チップに対して水平方向なので、チップと垂直方向の磁界を検知するためにZ軸用として1つの磁性体素子を立てた状態にする必要がある。
一方、磁性体素子にホール素子を用いる場合は感磁方向が磁性体素子チップに対して垂直方向なので、チップと平行方向の磁界を検知するためにX、Y軸用として2つの磁性体素子を立てた状態にする必要がある。
【0003】
磁性体素子チップを立てた状態で実装するためには、チップを立てる工程が必要である。チップを立てるタイミングは、ダイシングしたチップをダイシングテープからピックアップしてチップトレイに移載し、チップトレイからピックアップしてパッケージ基板へ実装する間のいずれかのタイミングで行っている。
特許文献1に記載されているチップピックアップ装置においては、チップをピックアップする装置が記載されている。また、特許文献2には粘着シート上に貼り付けられた状態で供給されたチップのピックアップを行うためのチップピックアップ装置が記載されている。図1は、コレット17でピックアップされたチップ3が、チップトレイ51のポケット9内に寝た状態で移動され、チップ3がコレット17から離されチップトレイ51に置かれてコレット17をチップトレイ51から退避させる動作を示している。
また、場合によっては、ダイシングテープからピック後直接実装する場合もある。さらに、特許文献3には、チップピック後にパーツフィーダを利用してチップを立てた状態で整列させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−275664号公報
【特許文献2】特開2003−092304号公報
【特許文献3】特開2001−163435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術のようにパーツフィーダを用いる場合、チップに傷がつきやすいという欠点がある。特に磁性体素子がWLP(Wafer Level Package)などのように基板がむき出しになっている場合は、欠けたり、回路面に傷がついて断線したりするなどの問題があり、使用することができない。
さらに、特許文献3に記載されているような特殊機構をつける場合、設備が高額となり、製品の製造コストを増大させる問題がある。
チップを簡易な方法により、確実にチップの側面が底面となるように移動させる方法が求められている。
本発明は、チップが傷つきにくく、製造コストが安価で、確実にチップの側面が底面となるように移動させることが可能なチップトレイ及びチップの移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るチップの移動方法は、板状のチップを内在させるためのポケットを含むチップトレイであって、該ポケットがチップの向きを鉛直方向に変えるための誘導部を含むチップトレイの前記ポケットに、前記チップを、前記チップの広い面を水平にして入れる工程と、前記ポケットに入ったチップが誘導部に沿って回転運動する工程とを含む。
本発明の請求項2に係るチップの移動方法は、請求項1において、前記チップがダイシングテープ上から前記チップトレイに直接供給される。
本発明の請求項3に係るチップトレイは、板状のチップを内在させるためのポケットを含むチップトレイであって、該ポケットが前記チップの向きを鉛直方向に変えるための誘導部を含む。
本発明の請求項4に係るチップトレイは、請求項3において、前記誘導部が凸面であり、前記誘導部の上部及び下部に鉛直平面を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るチップの移動方法によって、チップを簡単に直立させることができるという利点を有する。
本発明に係るチップの移動方法によれば、パーツフィーダを用いる場合に比べ、傷がつきにくい。特に磁性体素子がWLPなどのように基板がむき出しになっている場合であっても、良好に実施できる。
本発明は、特殊で高額な設備を使用する必要がないため、製品の製造コストの抑制をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】チップのチップトレイへの移載方法を示す断面図である。
【図2】本発明のチップトレイ及びチップの移動方法を概略的に示す工程図である。
【図3】ダイシングテープに貼り付いているチップをピックアップする工程を概略的に示す工程図である。
【図4】エンボステープからチップをピックアップする工程を概略的に示す工程図である。
【図5】通常のポケット形状のチップトレイからチップをピックアップする工程を概略的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
本発明においては「直立」とは必ずしも水平面に対して垂直でなくてもよく、水平面に対して寝た状態ではないことをいい、例えば、チップがチップトレイの側壁に倒れ掛かっていてもよい。
本発明において「板状」とは、広い主面と、主面と略直角の側面を有することをいい、また主面並びに側面が必ずしも全くの平面である必要はなく、凹凸などが形成されていても良い。
【0010】
図2は、本発明のチップを移動させる方法を概略的に示す断面工程図である。
図2(A)は、ポケット9内が特殊形状をしたチップトレイ1のポケット9に、コレット17を用いてチップを移動した図を示す。チップ3は広い主面5をチップトレイ1に対して水平にして、ポケット9の中に移動される。
ポケット9の開口部分はチップ3の広い主面5よりもやや広く設けるのが好ましい。ポケット9の形状は鉛直な矩形の一側壁23があり、それに対向する側壁ではその上部が開口に鉛直な矩形の平面である上部鉛直側壁15を有し、その下部に下方に向けて段々狭くなって傾斜する傾斜面を有し、さらにその下部に断面が鉛直な平面である下部鉛直側壁11を有する。上部鉛直側壁15の存在によりチップ3のチップトレイ1に対する位置あわせが容易になる。上部鉛直側壁15の鉛直方向の長さとしては、チップ3の厚みの1/2倍〜1倍を好ましく採用することができる。上部鉛直側壁15の下にチップの回転を誘導する誘導部13である傾斜面が設けられる。傾斜面は平面であっても、凸状の曲面であってもよい。凸状の曲面の傾斜面としては、断面が円状の円柱の1/4の形状、または、断面が楕円状の楕円柱の1/4の形状等をとることができる。曲率半径としてはチップ3の長さに応じて変えることができるが、直立した後のチップ3の鉛直長手方向の長さの1/2倍〜1倍を好ましく採用することができる。下部鉛直側壁11の鉛直方向の長さとしては、直立した後のチップ3の鉛直長手方向の長さの1/4倍〜3/4倍を好ましく採用することができる。ポケット9の深さ25としては、直立した後のチップ3の鉛直長手方向の長さの1倍〜1.5倍を好ましく採用することができる。
図2(B)は、コレット17からチップ3を離して、コレット17を退避させ、チップ3がチップトレイ1のポケット9の誘導部13により回転運動しているところを示す。誘導部13における傾斜面により摺動しつつチップ3の向きが鉛直方向に変化する。図2とは異なり、傾斜面が平面であってもチップ3の向きを鉛直方向に変化させることができる。図2で示されているように凸状の曲面であれば、摺動によるチップ3の傷つきをより少なくでき、素早く回転させることができるので好ましい。
図2(C)は、図2(B)においてチップ3が回転動作をした後、チップ3がポケット9内で直立している状態を示す図である。ポケット9の誘導部13の下が鉛直な矩形の平面であるので、安定して直立状態を保つことができ、チップ3が倒れてしまうことがない。
この状態で、実装機にかけてパッケージ基板へ実装することができる。
なお、誘導部の向きは、図と反対側であってもよい。
【0011】
チップ3が非常に小さいと、静電気でチップトレイ1に付着してチップ3の所望の回転がなされないことがあるため、チップトレイ1の材質としてはAl、Cu、真鍮などの金属及び非帯電性テフロン(登録商標)などの非帯電性樹脂などを好ましく使用できる。
【0012】
図3は、ダイシングテープ19に貼り付いているチップ3をピックアップする工程を概略的に示す工程図である。ダイシング後でダイシングテープ19に貼り付いているチップ3をコレット17で上昇させて(図3(a))、そのチップ3をチップトレイ1上に移動させ(図3(b))、そのチップをさらにチップトレイ1のポケット9に向けて移動させて(図3(c))、チップトレイ1に供給する。そして、前述したように寝た状態のチップ3をチップトレイ1のポケット9内において直立させる。チップ3がダイシング後でダイシングテープ19に貼り付いている状態から、ウエハからのチップをピックアップする工程をそのまま利用できるので、90度回転のための工程を追加する必要がなく、組立時間やコストを削減することができる。
チップ3がウエハをダイシングしたことによって得られる物でない場合は、ダイシングテープからのピックはできないので、エンボステープ21や通常のポケット形状のチップトレイ51から他のチップトレイへ移載する際に行っても良い。
図4は、エンボステープ21からチップ3をピックアップする工程を概略的に示す工程図である。エンボステープ21上のチップ3をコレット17で上昇させて(図4(a))、そのチップ3をチップトレイ1上に移動させ(図4(b))、そのチップをさらにチップトレイ1のポケット9に向けて移動させて(図4(c))、チップトレイ1に供給する。そして、前述したように寝た状態のチップ3をチップトレイ1のポケット9内において直立させる。
図5は、通常のポケット形状のチップトレイ51からチップ3をピックアップする工程を概略的に示す工程図である。チップトレイ51上のチップ3をコレット17で上昇させて(図5(a))、そのチップ3をチップトレイ1上に移動させ(図5(b))、そのチップをさらにチップトレイ1のポケット9に向けて移動させて(図5(c))、チップトレイ1に供給する。そして、前述したように寝た状態のチップ3をチップトレイ1のポケット9内において直立させる。
【0013】
ここでは、主に電子コンパス用の3軸パッケージとして説明したが、チップを立てる必要があるもの全てに利用することができる。センサであれば例えば3軸ジャイロセンサ、3軸加速度センサなどが挙げられる。
その他センサ以外の分野で、LEDやLDやレンズなどにおいても実装状態により直立させる必要がある場合には、本発明を利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 チップトレイ
3 チップ
5 主面
7 側面
9 ポケット
11 下部鉛直側壁
13 誘導部
15 上部鉛直側壁
17 コレット
19 ダイシングテープ
21 エンボステープ
23 鉛直な矩形の一側壁
25 ポケットの深さ
51 通常のポケット形状のチップトレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のチップを内在させるためのポケットを含むチップトレイであって、該ポケットがチップの向きを鉛直方向に変えるための誘導部を含むチップトレイの前記ポケットに、前記チップを、前記チップの広い面を水平にして入れる工程と、
前記ポケットに入ったチップが誘導部に沿って回転運動する工程と、
を含むことを特徴とするチップの移動方法。
【請求項2】
前記チップがダイシングテープ上から前記チップトレイに直接供給されることを特徴とする請求項1記載のチップの移動方法。
【請求項3】
板状のチップを内在させるためのポケットを含むチップトレイであって、該ポケットが前記チップの向きを鉛直方向に変えるための誘導部を含むことを特徴とするチップトレイ。
【請求項4】
前記誘導部が凸面であり、前記誘導部の上部及び下部に鉛直平面を有することを特徴とする請求項3記載のチップトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−9304(P2011−9304A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149100(P2009−149100)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】