説明

チップ型電子部品収納台紙

【課題】チップ型電子部品収納台紙からカバーテープを剥がす際の剥離強度が強く、台紙からのケバを抑制したチップ型電子部品収納台紙を提供する。
【解決手段】多層抄板紙からなるチップ型電子部品収納台紙において、表層に水溶性高分子と共に、アルケニル無水コハク酸誘導体又はアルキルケテンダイマーを含有する表面処理剤を塗布し、前記水溶性高分子がポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリルアミドから選ばれる少なくとも一種を用いたチップ型電子部品収納台紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製チップ型電子部品収納台紙に関するものであり、詳しくは、カバーテープとの接着強度に優れ、カバーテープを剥がす際に台紙から抜け出るケバを防止したチップ型電子部品収納台紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チップ型電子部品収納台紙は、通常、次のように加工処理をしてチップ型電子部品のキャリアとして使用される。
(1)所定の幅にスリットする。
(2)所定大きさの角穴と丸穴を開ける。角穴はチップ型電子部品収納用で、丸穴は充填機内送り用である。
(3)台紙の裏面(ボトム側)にカバーテープを接着する。なお、角穴を開けないで、所定の大きさの角状エンボンス加工をすることもあり、この場合、この工程は省かれる。台紙とカバーテープを接着する方法は、台紙とカバーテープを重ね、カバーテープ上から熱と圧力を加えて接着する、いわゆるヒートシール法で行われる。
(4)チップ型電子部品を充填する。
(5)台紙の表面(トップ側)にヒートシール法によってカバーテープを接着する。
(6)所定の大きさのカセットリールに巻き付け、チップ型電子部品と共に出荷する。
(7)最終ユーザーでトップ側カバーテープを剥がし、チップ型電子部品を取り出す。
【0003】
以上のように使用されることから、収納台紙に求められる品質には充填したチップ部品に悪影響を及ぼさないこと、紙に対する各種処理に耐え得る強度を有すること、更に、カバーテープが良好に接着され、かつチップ電子部品を取り出す際にトップ側カバーテープを剥がした際にケバ発生が無き事等が挙げられる。
【0004】
これまで、カバーテープを剥がした際のケバ発生防止手段として、テープの未接着部分を検出する装置の開発(特許文献1)で根本的な未接着部分を防止する手段ではなかったり、プラスチック製キャリアテープを対象としたカバーテープに破断対策(特許文献2、3、4)で紙製キャリアテープのピーリングを改善するものでなかったり、針葉樹と広葉樹の配合比の規定、またデンプンをサイズプレスにて両面に塗工することでケバ立ちを防止する方法(特許文献5)が用いられてきたが、どの方法もカバーテープとの十分な接着性を得るとともにケバを防止するために充分のものではなかった。
【特許文献1】特開平9−315486号公報
【特許文献2】特開平11−105181号公報
【特許文献3】特開平9−156684号公報
【特許文献4】特開平8−258888号公報
【特許文献5】特開2000−175966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、紙製のチップ型電子部品収納台紙において、カバーテープとの接着性に優れ、かつ剥がすときに台紙から抜け出るケバを防止したチップ型電子部品収納台紙を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、多層板紙のチップ型電子部品収納台紙において、ケバ防止のために表層に塗布する表面処理剤を紙層深くに浸透させ、さらに浸透した表面処理剤が繊維間結合を強固にすることでケバの発生が極めて防止できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)チップ型電子部品を収納する多層抄板紙からなるチップ型電子部品収納台紙において、カバーテープが接触する台紙基材の表層に水溶性高分子と、アルケニル無水コハク酸誘導体又はアルキルケテンダイマーを含有する表面処理剤を塗布されてなるチップ型電子部品収納台紙。
【0008】
(2)前記水溶性高分子がポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリルアミドから選ばれる少なくとも一種である(1)記載のチップ型電子部品収納台紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチップ型電子部品収納台紙は、カバーテープとの接着強度に優れ、カバーテープを剥がす際に台紙から抜け出るケバを防止したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では台紙表層にカバーテープとの接着性を向上させ、さらに台紙表面の強度を高めるために水溶性高分子とともにアルケニル無水コハク酸誘導体又はアルキルケテンダイマーを含有した表面処理剤を塗布する。アルケニル無水コハク酸誘導体またはアルキルケテンダイマーは疎水基と親水基を有しており、台紙表面に塗工する事により、表面のカバーリングのほか、紙層中に浸透し、親水基部分がパルプ繊維と水素結合を形成し、繊維間を架橋した状態にし、繊維間結合を大幅に向上させる。繊維間結合の向上により、カバーテープを剥がす際の抵抗力が向上し、剥離強度を強くするほかケバとなる繊維の抜けを防止出来る。
アルケニル無水コハク酸系樹脂としてはAS1532,AS1524(いずれも星光PMC社製)サイズパインSA862(荒川化学工業社製)のようなものが使用可能であり、アルキルケテンダイマーとしてはAD1602、AD1604,AD1606,AD1608,AD1640(いずれも星光PMC社製)、サイズパイン K−903、サイズパインK−910、サイズパインK−287(いずれも荒川化学工業社製)のようなものが使用可能である。これらは乾燥塗工量として0.01〜0.2g/mの範囲で使用することが好ましい。
0.01g/m未満では剥離強度向上効果が得られないため好ましくない、また0.2g/mを超えて塗布しても効果は頭打ちで経済的でないため好ましくない。
【0011】
水溶性高分子は、アルケニル無水コハク酸誘導体またはアルキルケテンダイマーとパルプ繊維の架橋状態の塊同士をさらにバインダーとして結合させ、ケバ発生を効果的に防止する。 さらに、アルケニル無水コハク酸誘導体又はアルキルケテンダイマーは水溶性高分子と共に存在する事により、水溶性高分子の表面張力を低下させ、台紙の最表面に均一、また内部へ深く浸透し、紙層内部からのケバ発生防止効果も発現する。
アルケニル無水コハク酸又はアルキルケテンダイマーと共に塗布する水溶性高分子量としては、0.01〜2.0g/m2が好ましい。0.01g/m未満ではケバ抑制効果が得られず、2.0g/m2を超えて塗布してもケバ抑制効果は頭打ちであるだけでなく、剥離強度が低下する恐れがあるため好ましくない。水溶性高分子単独では塗布量を増やすとケバの抑制が可能となるが、塗布量を増やすことにより剥離強度が低下する。剥離強度とケバの抑制を両立するためにはアルケニル無水コハク酸誘導体又はアルキルケテンダイマーと共に塗布することで塗布量を増やすことが可能となり、ケバを抑制し、剥離強度も向上することが可能となる。
【0012】
また、本発明においては、水溶性高分子がポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリルアミドから選ばれる少なくとも一種であることが表面強度を上げ、また塗工適性も良好である事から好ましい。たとえば、カチオン化デンプン、リン酸エステル化デンプン、酸化デンプン、酵素変性デンプン、酢酸エステルデンプン、ヒドロキシエチルエーテルデンプンなどのデンプン類、カゼイン、大豆蛋白、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ソーダ、ポリカルボン酸系樹脂、ポリボニルアルコール系樹脂、ポリアクリルアルコール系樹脂があげられ、中でもデンプン、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂が好ましい。これらは単独でも混合してもよい。
【0013】
本発明において、台紙表面に表面処理剤を塗布する手段としては、例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーターやサイズプレスやキャレンダーコーター等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパコーター等がある。
【0014】
本発明のチップ型電子部品収納台紙に使用する原料パルプには各種のものが使用でき、例えば、化学パルプ(広葉樹、針葉樹)、機械パルプ、古紙パルプ、非木材繊維パルプ、合成パルプ等がある。これらのパルプは単独でも、二種以上混合使用しても良い。
【0015】
本発明の紙製チップ型電子部品収納台紙を製造するための製造装置、製造条件に特に限定はなく、それぞれの製造装置に合わせた製造条件を選択し、本発明の製品を製造することができる。例えば、円網抄紙機、長網抄紙機での抄き合わせによって抄紙され、前述の内添やコーターによる外添によって薬品が添加されている表層を有する台紙が製造される。
【0016】
本発明では、必要に応じて種々の内添薬品を使用できる。例えば、ロジン系サイズ剤、スチレン・マレイン酸系樹脂、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸など、天然および合成の製紙用の内添サイズ剤、各種紙力増強剤、濾水歩留り向上剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の耐水化剤、消泡剤、タルク等の填料、染料等を使用することができる。
【0017】
また、本発明ではボトムテープとの接着性およびケバ防止効果を向上させるために収納台紙の裏面に、ポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリルアミド、アクリル系樹脂、スチレン・ブタジエン系樹脂、スチレン・イソプレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンー酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニルービニルアルコール系樹脂、ウレタン系樹脂など必要な薬品を適宜塗布させることも可能である。さらに塗布手段についても、前記表面処理剤と同様のものを使用することができる。
【0018】
本発明のチップ型電子部品収納台紙の坪量は、中に収納するチップ型電子部品の大きさにより決ってくるが、一般に200〜1000g/m程度である。このような坪量範囲であるため、抄造方法としては、地合いの取り易い多層抄きが好ましい。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、配合、濃度等を示す数値は、固型分又は有効成分の質量基準の数値である。また、全ての例について抄造した紙はJIS P8111に準じて前処理を行った後、剥離強度測定に供した。剥離強度の測定条件の詳細は下記の通りである。
【0020】
<剥離強度の測定方法>
チップ型電子部品を収納する台紙を8mm幅のテープ状にカットし、カバーテープとして日東電工(株)製の「No.318H−14A」〔ポリエチレンテレフタレート(PET)とエチレン・酢酸ビニルエステル共重合体(EVA)との共押出しラミネートフィルム:幅5.25mm、厚さ53μm、〕を使用して台紙の一側縁側を覆い、次いで、テスター産業(株)製のヒートシールテスター「TP701S」を用い、ヒートシール温度155℃、試料にかかるヒートシール圧力1.5Mpa、ヒートシール時間0.2秒間の条件で、カバーテープで覆われた側縁から内側に0.5mmの位置から、幅0.4mmで間隔3.0mmのレール状に該カバーテープを台紙面にヒートシールし、次いで、約1時間後に、剥離強度をJIS C 0806−3に準拠した方法(剥離速度300mm/min)で、測定時間12秒間で測定し、その間の平均値を求めた
【0021】
<ケバ立ち>
隔離強度の測定後のヒートシール部を目視で確認する。
◎:まったくケバ立ちがない
○:1〜3本ケバ立ちがある。
△:4〜10本ケバ立ちがある。
×:全面にケバ立ちがある。
【0022】
実施例1
表層、中層、裏層でパルプを使い分け、表層用にはNBKP30%、LBKP70%を混合叩解し、CSF(カナダスタンダードフリーネス)400mlのパルプを調製し、中層用にはNBKP20%、LBKP20%、上質古紙20%、新聞古紙40%の配合でCSF350mlのパルプを調製し、裏層用にはNBKP25%、LBKP25%、新聞古紙50%の配合でCSF400mlのパルプを調製した。それぞれのパルプスラリーに硫酸バンドを添加してpH6.0に調整し、内添紙力増強剤としてポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン1260、荒川化学工業製)を0.3%添加した。以上の条件のパルプスラリーを円網3層抄合わせ抄造機で、それぞれ表層100g/m2、中層200g/m2、裏層50g/m2で抄合わせ、抄紙機に設置された平滑化処理機(マシンカレンダー)で平滑化処理した後、表層に、表面処理剤として、ポリアクリルアミド(商品名:PS117、荒川化学工業製)100質量%、アルケニル無水コハク酸誘導体(商品名サイズパインSA−862、荒川化学工業製)2.0質量%を混合し、0.9g/m2塗工し、坪量350g/m2、厚さ0.42mmのチップ型電子部品収納台紙を製造した。
【0023】
実施例2
表面処理剤として、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ製)100質量%、アルケニル無水コハク酸誘導体(商品名サイズパインSA−862、荒川化学工業製)2.0質量%を混合し、調製した以外は実施例1と同様にして、チップ型電子部品収納台紙を製造した。
【0024】
実施例3
表面処理剤として、酸化デンプン(商品名:エースA、王子コンスターチ製)100質量%、アルケニル無水コハク酸誘導体(商品名サイズパインSA−862、荒川化学工業製)2.0質量%を混合し、調製した以外は実施例1と同様にして、チップ型電子部品収納台紙を製造した。
【0025】
実施例4
表面処理剤として、カチオン化デンプン(商品名:エースK−250、王子コンスターチ製)100質量%、アルケニル無水コハク酸誘導体(商品名サイズパインSA−862、荒川化学工業製)2.0質量%を混合し、調製した以外は実施例1と同様にして、チップ型電子部品収納台紙を製造した。
【0026】
実施例5
表面処理剤として、尿素リン酸エステル化デンプン(商品名:エースP230、王子コンスターチ製)100質量%、アルケニル無水コハク酸誘導体(商品名サイズパインSA−862、荒川化学工業製)2.0質量%を混合し、調製した以外は実施例1と同様にして、チップ型電子部品収納台紙を製造した。
【0027】
実施例6
実施例1のアルケニル無水コハク酸誘導体の変わりにアルキルケテンダイマー(商品名サイズパインK−903にした以外は実施例と同様にしてチップ方電子部品収納台紙を製造した。
【0028】
比較例1
表面処理剤として、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ製)を塗工した以外は実施例1と同様にして、チップ型電子部品収納台紙を製造した。
【0029】
比較例2
表面処理剤として、ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ製)を0.3g/m2塗工した以外は実施例1と同様にして、チップ型電子部品収納台紙を製造した。
【0030】
実施例1〜6、比較例1、2の剥離強度平均値を表1に示す。本発明のチップ型電子部品収納台紙である実施例1〜6は比較例1、2よりも剥離強度が強く、ケバ発生も少なかった。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例と比較例との対比から明らかなように、本発明の要件を満たす紙基材は、剥離強度が強く優れている上にカバーテープを剥がした際の台紙からのケバを防止したチップ型電子部品収納台紙としての適性が優れていることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ型電子部品を収納する多層抄板紙からなるチップ型電子部品収納台紙用紙基材において、カバーテープが接触する台紙基材の表層に水溶性高分子と、アルケニル無水コハク酸誘導体又はアルキルケテンダイマーを含有する表面処理剤を塗布されてなることを特徴とするチップ型電子部品収納台紙。
【請求項2】
前記水溶性高分子がポリビニルアルコール、デンプン、ポリアクリルアミドから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のチップ型電子部品収納台紙。



【公開番号】特開2007−1589(P2007−1589A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181342(P2005−181342)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】