説明

チャンネルスキャン実行方法、及び、CATVシステムの受信端末装置

【課題】配信状況が変化したときに効率よくチャンネルリストを自動更新することが可能なCATVシステムの受信端末装置等を提供する。
【解決手段】CATVシステムのヘッドエンド装置から伝送されてくるダウンロードの告知情報(SDTT)が入力され(S110;YES)、そのSDTTの中から指令識別子を検出した場合(S130;YES)、チューナを介して全ての放送チャンネルを順次選局し、各周波数帯におけるデジタル放送信号の有無をスキャンするスキャン処理を実行する(S210)。そして、スキャン処理により選局されたデジタル放送信号に基づき、その放送チャンネル(チャンネル番号)と放送局の情報とを対応付けたチャンネルリストを設定する。このため、配信状況が変化するときにヘッドエンド装置を介して指令識別子を含むSDTTを配信することにより、STBのチャンネルリストが自動更新される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CATVシステムにおいて受信端末装置にチャンネルスキャンを実行させるチャンネルスキャン指示方法、及び、CATVシステムの受信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放送局から配信されるテレビ放送信号のデジタル化に伴い、CATVシステムにおいても、放送局から配信されるデジタル放送信号(以下、TSともいう)を、事業者側が、光ケーブルや同軸ケーブル等からなる伝送路を介して、加入者側の受信端末装置に配信するサービスが行われている。
【0003】
また、CATVシステムにおけるデジタル放送信号の配信方式としては、事業者側のヘッドエンド装置にて、放送局から配信されるTSを、CATVシステム固有の変調方式で変調した後、所定の放送チャンネル(伝送周波数帯)のデジタル放送信号に変換して伝送するトランスモジュレーション方式と、変調せずに伝送するパススルー方式とが併用されている。
【0004】
そして、加入者宅に設置される受信端末装置としてのセットトップボックス(以下、STBという)は、トランスモジュレーション方式およびパススルー方式で伝送されてくるデジタル放送信号を個別に選局するための二つのチューナを備え、例えば同じテレビ放送を両方の方式で受信可能な場合に、いずれのチューナで選局されるデジタル放送信号を選択するかを示す優先度が予め設定されている。
【0005】
ところで、STBを加入者宅に設置してテレビ放送を受信する際、加入者の居住地域でどの放送局が受信できるのかがわからないため、STBは、チューナを介して全ての放送チャンネルを順次選局し、各周波数帯におけるデジタル放送信号の有無を探査するチャンネルスキャンを行うことにより、デジタル放送信号が検出された周波数や放送局の情報等をチャンネルリストに登録するように構成されている。
【0006】
また、このようなチャンネルスキャンの一例としては、STBのACコードが外部電源に接続されたことをトリガとして、周知のGPS機能を用いてSTBの位置情報を取得し、その位置情報に基づいて加入者の居住地域を特定することにより、チャンネルリストをその居住地域に合ったものに自動更新するチャンネルリスト設定方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−35160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のチャンネルリスト設定方法では、加入者が転居したときには有効であるが、例えば新たな放送局が開設されて放送チャンネルが増減する場合のように、事業者側の配信状況が変化するときに対応できないため、最終的に事業者または加入者のいずれかが手動でチャンネルスキャンを開始させる必要があった。つまり、事業者にとっては、加入者側にチャンネルスキャンを促すように周知させたり、加入者宅を訪問して自らがチャンネルスキャンの作業を行ったりする必要があるために、手間やコストがかかる可能性を有していた。
【0009】
これに対して、例えば、所定の周期毎に自動的にチャンネルスキャンを開始するようにSTBを構成することも考えられるが、この場合、更新すべき放送チャンネルが存在しないときであってもチャンネルスキャンを行うことになり、効率がよくないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するために、配信状況が変化したときに効率よくチャンネルリストを自動更新することが可能なチャンネルスキャン実行方法、及び、CATVシステムの受信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載の発明は、事業者側によって管理されるヘッドエンド装置から加入者側に設置された受信端末装置に、伝送線を介してデジタル放送信号を配信するCATVシステムにおいて、前記受信端末装置にチャンネルスキャンを実行させるチャンネルスキャン実行方法であって、前記受信端末装置の動作に必要なソフトウェアを更新するために、前記デジタル放送信号の空きスロットを利用して前記ヘッドエンド装置に送信させる告知情報に、前記チャンネルスキャンの実行を指示する指令識別子を含ませることにより、前記告知情報を配信する機能を利用して前記受信端末装置にチャンネルスキャンを実行させることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、CATVシステムの加入者側に設置され、放送局から配信されるデジタル放送信号がヘッドエンド装置にて所定の放送チャンネルに変換されたCATV用伝送信号を、該ヘッドエンド装置から伝送線を介して入力する入力手段と、前記入力手段を介して入力する複数の前記放送チャンネルのCATV用伝送信号の中から、外部操作によって指定されたチャンネル番号に対応する放送チャンネルのCATV用伝送信号を、予め設定されたチャンネルリストに基づいて選局する選局手段と、前記選局手段に受信可能なCATV用伝送信号を順次選局させるチャンネルスキャンを実行し、該チャンネルスキャンにより選局されたCATV用伝送信号に基づいて、前記放送局の情報と前記チャンネル番号とを対応付けた前記チャンネルリストを設定するチャンネルリスト設定手段と、前記入力手段を介して入力する前記CATV用伝送信号に含まれている告知情報に従って、当該CATVシステムの受信端末装置の動作に必要なソフトウェアを更新するための処理を行うソフトウェア更新手段と、を備えるCATVシステムの受信端末装置において、前記告知情報の中から予め規定された指令識別子を検出した場合、前記ソフトウェア更新手段による処理を禁止すると共に、前記チャンネルスキャンを実行するスキャン実行手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のCATVシステムの受信端末装置において、前記選局手段は、前記CATV用伝送信号のうち、トランスモジュレーション方式で伝送されてくる信号を選局する第1チューナ部と、パススルー方式で伝送されてくる信号を選局する第2チューナ部とを有し、前記チャンネルリストには、前記第1チューナ部および前記第2チューナ部により選局されたCATV用伝送信号のうち、いずれかを視聴用の信号として選択するためのチューナ設定情報が含まれ、前記スキャン実行手段が実行するチャンネルスキャンは、前記告知情報の中から、前記第1チューナ部および前記第2チューナ部の選択方法を示す切換識別子を検出した場合、該切換識別子のパラメータに従って、前記チューナ設定情報を更新することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載のCATVシステムの受信端末装置において、前記スキャン実行手段は、前記告知情報のうち予め規定された時刻IDのパラメータにより特定される日時に、前記チャンネルスキャンを開始することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のCATVシステムの受信端末装置において、前記スキャン実行手段は、前記指令識別子のパラメータに当該受信端末装置の製造者を示す製造者IDが含まれている場合に限り、前記チャンネルスキャンを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のチャンネルスキャン実行方法では、例えば新たな放送局が開設されて放送チャンネルが増減する場合のように、CATVシステムのヘッドエンド装置から受信端末装置に配信されるデジタル放送信号の配信状況が変化するときに、チャンネルスキャンの実行を指示する指令識別子を含む告知情報が受信端末装置に送信される。
【0017】
このように、本発明のチャンネルスキャン実行方法では、CATVシステムの受信端末装置が、デジタル放送信号の配信状況が変化する場合にヘッドエンド装置から送信される告知情報の中から指令識別子を検出すると、チャンネルスキャンを実行することになり、効率よくチャンネルリストを自動更新することができる。
【0018】
また、本発明のチャンネルスキャン実行方法では、デジタル放送信号の空きスロットを利用して、CATVシステムの受信端末装置の動作に必要なソフトウェアを更新するための告知情報を配信する既存の方法により、チャンネルスキャンの実行指示を受信端末装置に伝達することが可能となる。このため、既存のCATVシステムのヘッドエンド装置の構成に変更を加えることなく、受信端末装置にチャンネルスキャンを実行させることができる。
【0019】
請求項2に記載のCATVシステムの受信端末装置は、ヘッドエンド装置から伝送線を介して伝送されてくる告知情報に従って、当該CATVシステムの受信端末装置を動作させるために必要なソフトウェアを更新する(例えば、更新情報をダウンロードする)処理(以下、ソフトウェア更新処理という)を行う。その一方、告知情報の中から指令識別子を検出した場合、ソフトウェア更新処理を実行する代わりに、チャンネルスキャンを実行することによってチャンネルリストを自動更新する。
【0020】
このように、本発明のCATVシステムの受信端末装置では、ヘッドエンド装置から配信されるデジタル放送信号の配信状況が変化するときに、ヘッドエンド装置を介して送信される告知情報に含まれている指令識別子を利用して、チャンネルスキャンを実行することになり、効率よくチャンネルリストを自動更新することができる。
【0021】
つまり、本発明のCATVシステムの受信端末装置は、請求項1に記載のチャンネルスキャン実行方法を適用したものであり、従って、請求項1に記載のチャンネルスキャン実行方法による効果と同等の効果を得ることができる。
【0022】
ところで、従来のCATVシステムの受信端末装置では、CATVシステムにおいてトランスモジュレーション方式とパススルー方式とで配信される伝送信号に個別に対応する二つのチューナ部を選択的に使用する場合、例えば配信方式が変化しても選択方法を自動的に切り換えることができないため、前述と同様に手間やコストがかかる可能性を有していた。
【0023】
これに対して、請求項3に記載のCATVシステムの受信端末装置は、ヘッドエンド装置から伝送線を介して伝送されてくる告知情報の中から切換識別子を検出した場合、その切換識別子のパラメータに従って、二つのチューナ部の選択方法に関する設定(チューナ設定情報)を更新するように構成されている。
【0024】
このように、本発明のCATVシステムの受信端末装置では、例えばヘッドエンド装置から配信されるデジタル放送信号(CATV用伝送信号)の配信方式が変化するときに、二つのチューナ部の選択方法を自動的に切り換えることができ、ひいては、効率よくチューナ設定情報を自動更新することができる。
【0025】
請求項4に記載のCATVシステムの受信端末装置では、ヘッドエンド装置から伝送線を介して伝送されてくる告知情報のうち、時刻IDのパラメータにより特定される日時にチャンネルスキャンを開始することにより、実際に配信方法が変化したときに合わせてより効率的にチャンネルリストを自動更新することができる。
【0026】
請求項5に記載のCATVシステムの受信端末装置では、指令識別子のパラメータに当該受信端末装置の製造者を示す製造者IDが含まれている場合に限り、チャンネルスキャンを実行することにより、製造者毎に対応してチャンネルリストを自動更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明が適用されたCATVシステムの全体構成を示すブロック図。
【図2】ダウンロードの告知情報(SDTT)の構成を示す説明図。
【図3】本発明が適用されたCATVシステムの受信端末装置としてのセットトップボックス(STB)の構成を示すブロック図。
【図4】STBのCPUが実行するスキャン制御処理の詳細を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
図1は、本発明が適用されたCATVシステムの全体構成を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、CATVシステム1は、当該CATVシステム1の事業者側により管理されるヘッドエンド装置2と、当該CATVシステム1の各加入者宅に設置される受信端末装置としてのセットトップボックス(以下、STBという)3とからなり、これら装置2,3が光ケーブルや同軸ケーブル等の伝送線4を有する伝送路を介して接続されている。
【0030】
なお、CATVシステム1では、ヘッドエンド装置2からSTB3に伝送されるデジタル放送信号としてのCATV用伝送信号(以下、TSともいう)の空きスロットを利用して、STB3の動作に必要なソフトウェアの更新を行うエンジニアリングダウンロードサービスが行われている。
【0031】
CATVシステム1のヘッドエンド装置2は、放送局から配信される地上波デジタル放送や放送衛星(BS)若しくは通信衛星(CS)を介して配信されるデジタル衛星放送をチャンネル毎に受信して、受信した各種デジタル放送信号を所定の周波数帯の放送チャンネルに割り当てることによりCATV用伝送信号に変換するCATV変換部5を備えている。
【0032】
なお、ヘッドエンド装置2は、CATV変換部5により、放送局から受信した各種デジタル放送信号を復調し、CATVシステム1固有の変調方式(本実施形態では64QAM)で再変調して配信するトランスモジュレーション方式と、64QAMで再変調することなく受信した各種デジタル放送信号の変調方式(本実施形態ではOFDM)のまま配信するパススルー方式とを併用している。
【0033】
また、ヘッドエンド装置2は、エンジニアリングダウンロードサービスを行うためのダウンロード装置6を備え、STB3の製造者側から例えばCD−ROMを介して供給されるダウンロードデータや、そのダウンロードの告知情報(以下、SDTTという)を、ダウンロード装置6を介して配信するように構成されている。
【0034】
なお、SDTTは、後で詳述するが、STB3の動作に必要なソフトウェアを更新するために、ダウンロードデータの送信前に告知される情報であり、CATVシステム1の事業者側とSTB3の製造者側とにより決定されたダウンロード時刻を表す時刻IDや、STB3の製造者毎に割り当てられた製造者ID等が含まれている。
【0035】
そして、ヘッドエンド装置2は、伝送線4を介して伝送路に接続された送出装置7を備え、CATV変換部5にて変換されたデジタル放送信号(CATV用伝送信号)や、ダウンロード装置6から出力されるダウンロードデータ又はSDTTを、送出装置7を介して伝送線4上に送出するように構成されている。なお、送出装置7は、ダウンロードデータ又はSDTTを伝送線4上に送出する場合、TSの空きスロット(以下、エンジニアリングTSという)を用いて、CATV用伝送信号に多重化して送信するように構成されている。
【0036】
<SDTTの構成>
次に、図2(a)及び図2(b)は、ダウンロードの告知情報(SDTT)の構成を示す説明図である。
【0037】
図2(a)及び図2(b)に示すように、SDTTは、STB3の製造者側から例えばCD−ROMを介して供給されるものであり、ダウンロードのスケジュール等を告知するために予め決められた形式を有する各種のフィールドと、ダウンロードコンテンツ記述子とにより構成されている。
【0038】
このうち、フィールドには、ダウンロードの対象となるSTB3の製造者を示す製造者IDとしての上位フィールド(maker_id)を有するフィールド8(table_id_ext)や、ダウンロードの開始時刻を示す時刻IDとしての下位フィールドを有するフィールド9(start_time)が含まれ、ダウンロードコンテンツ記述子には、ダウンロードの受け付け番号を識別する目的で設定された記述子10(download_id)が含まれている。
【0039】
このうち、フィールド8(table_id_ext)は、ダウンロードの対象となるSTB3の機種を示す機種IDとしての下位フィールド(model_id)を有し、当該フィールド8(table_id_ext)のパラメータとして、製造者ID(例えば、“0x1B”)に機種ID(例えば“01”)が付加されたもの(例えば、“0x1B01”)が使用される。
【0040】
フィールド9(start_time)は、ダウンロードの開始日を示す日付IDとしての上位フィールドを有し、当該フィールド9(start_time)のパラメータとして、日付ID(例えば、“0xD615”)に時刻ID(例えば、“030330”)が付加されたもの(例えば、“0xD615030330”)が使用される。なお、“0xD615”は、12月5日をヘキサ2桁が1バイトとなる場合の2バイトで示すものであり、“030330”は、3時3分30秒を示すものである。また、日付IDは、CATVシステム1のヘッドエンド装置2によりSDTTが伝送線4に送出される日付と、ダウンロードの開始日とを同一とするように規定されている。
【0041】
記述子10(download_id)は、SDTTが伝送線4に送出される毎に他のSDTTと区別するために付されるものであり、当該記述子10(download_id)のパラメータとして、日付や通し番号などにより組み合わせたもの(例えば、“0x08120501”)が使用される。
【0042】
ここで、本実施形態のSDTTは、ダウンロードの告知情報として用いられるだけでなく、ヘッドエンド装置2によるCATV用伝送信号の配信状況が変化するときに、STB3に後述する放送チャンネルのスキャン処理(チャンネルスキャンに相当する)を実行させたり、STB3に後述するチューナ設定処理を実行させたりするためにも用いられる。
【0043】
具体的に、本実施形態のSDTTは、STB3にスキャン処理を実行させるための指令情報として用いられる場合、フィールド8(table_id_ext)の下位フィールド(model_id)のパラメータとして、機種ID(例えば“01”)の代わりに、指令識別子(例えば、“FF”)が使用される。
【0044】
そして、フィールド9(start_time)のパラメータのうちの時刻IDが、ヘッドエンド装置2によるCATV用伝送信号の配信状況が変化する時刻(換言すれば、STB3によるスキャン処理の開始可能時刻)として利用される。なお、フィールド9(start_time)のパラメータのうちの日付IDは、SDTTが伝送線4に送出される日付を表すが、実質的に利用されないことになる。
【0045】
これに対して、記述子10(download_id)のパラメータのうちの上位6桁が、ヘッドエンド装置2によるCATV用伝送信号の配信状況が変化する日付(換言すれば、STB3によるスキャン処理の開始可能日)を示す日付IDとして、例えば2008年12月5日であれば“081205”のようにして用いられる。つまり、CATVシステム1のヘッドエンド装置2によりSDTTが伝送線4に送出される毎に切り換わることのない記述子10(download_id)を利用して、スキャン処理の開始可能日をSTB3に伝達するようにしている。なお、日付IDが無効な日付で指定される場合には、STB3にスキャン処理をさせないようにしてもよい。
【0046】
一方、STB3にスキャン処理と共にチューナ設定処理を実行させるための指令情報として用いられる場合、記述子10(download_id)のパラメータのうちの下位1桁目が、QAM信号又はOFDM信号のいずれかをSTB3に選局させるための切換識別子を表すものとして使用される。
【0047】
なお、記述子10(download_id)のパラメータのうち、下位2桁目が、STB3に対するスキャン処理の指示内容を詳細に表すものとして用いられ、下位1桁目(切換識別子)が、STB3に対するチューナ設定処理の指示内容を詳細に表すものとして用いられる。
【0048】
<STBの構成>
次に、図3は、本発明が適用されたCATVシステムの受信端末装置としてのセットトップボックス(STB)の構成を示すブロック図である。
【0049】
図3に示すように、STB3は、CATVシステム1のヘッドエンド装置2から伝送線4を介して伝送されてくるCATV用伝送信号を入力するための入力端子11と、この入力端子11に入力された伝送信号を、64QAM変調されたデジタル放送信号(以下、QAM信号という)と、OFDM変調されたデジタル放送信号(以下、OFDM信号という)とに分配するスプリッタ12と、スプリッタ12で分配された伝送信号のうち、特定放送チャンネル(以下、単に選局チャンネルともいう)のQAM信号を選局して中間周波数帯に周波数変換し、その変換信号を64QAM復調するQAMチューナ13と、特定放送チャンネルのOFDM信号を選局して中間周波数帯に周波数変換するOFDMチューナ14とを備えている。
【0050】
また、STB3は、上記2つのチューナ13,14のうち、CATVシステム1のヘッドエンド装置2で変調する前のデジタル放送信号に変換できたチューナ13又は14からの出力を選択する選択部15と、選択部15にて選択されたデジタル放送信号をOFDM復調して放送データに復元し、その復元データを映像データ・音声データ・データ情報・SDTTに分離するデータ処理部16と、CPU,ROM,RAM,不揮発性メモリ等からなるマイコン17とを有する制御部18を備えている。
【0051】
なお、データ処理部16で分離された映像データ・音声データ・データ情報は、HDMI用のIC19を介して、またこのうち映像データ・音声データは、それぞれビデオドライバ20・オーディオDAC21を介して、IC19,ビデオドライバ20,オーディオDAC21の出力端子22〜24に接続された図示しないTVに出力される。一方、データ処理部16で分離されたSDTTは、マイコン17に出力される。
【0052】
さらに、STB3には、チューナ13,14における選局チャンネルを含む各種指令を手動操作によって入力するための操作部25や、遠隔操作用の図示しないリモコン装置からの送信信号を受信するリモコン受信部26が設けられている。
【0053】
そして、これら操作部25やリモコン受信部26からの入力信号は、マイコン17に入力され、マイコン17のCPUは、操作部25若しくはリモコン受信部26から、チューナ13,14による選局チャンネルを指定する信号(即ち、チャンネル番号を示す信号)が入力されると、その指令信号に基づいて、不揮発性メモリに記憶されているチャンネルリストを参照し、チューナ13,14が選局する選局チャンネルを切り換える選局処理を実行する。
【0054】
なお、チャンネルリストは、選局チャンネル(チャンネル番号)と放送局の情報とが対応付けられた情報であり、後述するスキャン処理によってチューナ13,14により選局されたデジタル放送信号(CATV用伝送信号)に基づいて更新される。また、チャンネルリストには、選局処理によりチューナ13及び14で選局されたCATV用伝送信号のうち、いずれの伝送信号を視聴用の信号として選択部15に選択させるかを示すチューナ設定情報が含まれ、マイコン17のCPUは、そのチューナ設定情報に従って選局処理を実行するように構成されている。
【0055】
<スキャン制御処理>
ここで、マイコン17のCPUが、前述の選局処理の他に、ROMに記憶されたプログラムに基づき、RAMを作業エリアとして実行するスキャン制御処理を、図4に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。なお、本処理は、STB3のACコードが外部電源に接続されている間繰り返し実行される。
【0056】
まず、本処理が開始されると、S110では、データ処理部16を介してSDTTが入力されたか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS120に進み、否定判断した場合にはS190に進む。
【0057】
S120では、S110で受信したSDTTのフィールド8(table_id_ext)のパラメータに基づいて、そのパラメータに含まれている製造者IDが、当該STB3の製造者に割り当てられたものであるか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS130に進み、否定判断した場合にはS190に進む。
【0058】
S130では、S110で受信したSDTTのフィールド8(table_id_ext)のパラメータに基づいて、そのパラメータに指令識別子が含まれているか否かを判断し、ここで肯定判断した場合には、SDTTがスキャン指示用の指令情報であるとみなしてS150に進み、否定判断した場合には、SDTTがダウンロード指示用の告知情報であるとみなしてS140に進む。
【0059】
S140では、ダウンロード指示用のSDTTに従って、当該STB3の動作に必要なソフトウェアの更新を行うためのソフトウェア更新処理を実行し、S190に進む。なお、SDTTを使用するソフトウェア更新処理については、周知のものであるため、その詳細な説明を省略する。また、このソフトウェア更新処理は、当該スキャン制御処理と独立して行うようにしてもよい。
【0060】
一方、S150では、S110で受信したSDTTの記述子10(download_id)のパラメータに基づいて、そのパラメータの下位1桁目に切換識別子が含まれているか否かを判断し、ここで肯定判断した場合には、STB3に対するチューナ設定処理の指示(チューナ設定変更指示)があるものとみなしてS160に進み、否定判断した場合(例えば、下位1桁目が“0”又は“9〜0xF”である場合)にはS170に進む。
【0061】
S160では、切換識別子のパラメータに従って、不揮発性メモリに記憶されているチューナ設定情報を更新するチューナ設定処理を実行する。例えば、切換識別子のパラメータが、“1”であればQAM信号のみを選択するように設定し、“2”であればOFDM信号のみを選択するように設定し、“3”であればQAM信号を優先的に選択するように設定し、“4”であればOFDM信号を優先的に選択するように設定する。
【0062】
S170では、記述子10(download_id)のうち下位2桁目のパラメータに基づいて、STB3に対するスキャン処理の指示(以下、スキャン指示ともいう)があるか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS180に進み、否定判断した場合にはS190に進む。例えば、記述子10(download_id)のうちの下位2桁目のパラメータは、“0”がスキャン指示を解除すること、“1”がチャンネルリストを初期設定してからスキャンすること、“2”がチャンネルリストを初期設定せずにスキャン(再スキャン)すること、“3〜0xF”がスキャンしないことを表すようにされている。
【0063】
S180では、記述子10(download_id)のうち、下位2桁目のパラメータ、上位6桁のパラメータ(日付ID)、及びフィールド9(start_time)のうちの下位6桁のパラメータ(時刻ID)に基づいて、スキャン方法、スキャン開始可能日、及びスキャン開始可能時刻を、スキャン指示として不揮発性メモリに登録する。
【0064】
なお、記述子10(download_id)のうちの下位2桁目のパラメータが“0”である場合には、既に不揮発性メモリに登録されているスキャン指示を削除する。また、例えば、切換識別子のパラメータは、“5”がQAM信号のみを選択するチューナ設定である場合にスキャンしないこと、“6”がOFDM信号のみを選択するチューナ設定である場合にスキャンしないこと、“7”がQAM信号を優先的に選択するチューナ設定である場合にスキャンしないこと、“8”がOFDM信号を優先的に選択するチューナ設定である場合にスキャンしないことを表すようにされている。この場合、この切換識別子のパラメータと、不揮発性メモリに記憶されているチューナ設定情報とに基づいて、現在のチューナ設定が切換識別子のパラメータにより示される伝送信号を選択するように設定されていればスキャン指示の取り消しを行う。
【0065】
一方、S190では、不揮発性メモリにスキャン指示が登録されているか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS200に進み、否定判断した場合にはS110に戻る。
S200では、不揮発性メモリに登録されているスキャン指示に基づいて、スキャン開始可能日、及びスキャン開始可能時刻を経過しているか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS210に進み、否定判断した場合にはS220に進む。
【0066】
S210では、不揮発性メモリに登録されているスキャン指示(スキャン方法)に従って、チューナ13,14を介して全ての放送チャンネルを順次選局し、各周波数帯におけるデジタル放送信号(CATV用伝送信号)の有無をスキャンするスキャン処理を実行する。
【0067】
なお、スキャン処理では、チューナ13,14にて選局されたCATV用伝送信号を信号レベルが、所定の閾値を上回る場合に、そのCATV用伝送信号を受信可能な放送チャンネルの伝送信号(視聴用の信号)として扱う。また、スキャン処理は、操作部25やリモコン受信部26から、当該スキャン処理を指示する信号が入力された場合にも、同様に開始される。
【0068】
続くS220では、S210のスキャン処理で受信可能な放送チャンネルの伝送信号であるとみなされたCATV用伝送信号に基づいて、その放送チャンネル(選局チャンネル)にチャンネル番号を付与し、そのチャンネル番号と放送局の情報とを対応付けたチャンネルリストを設定するチャンネルリスト設定処理を実行して、S110に戻る。
【0069】
なお、チャンネルリスト設定処理では、記述子10(download_id)のうちの下位2桁目のパラメータに基づいて、初期設定を行うか、あるいは初期設定せずに上書きするか、いずれかの設定方法が選択され、その選択された設定方法に従ってチャンネルリストを更新する。
【0070】
このように、本処理では、SDTTの中から指令識別子を検出した場合、そのSDTTがスキャン指示用の指令情報であるとみなして、ソフトウェア更新処理を実行する代わりに、そのSDTTに含まれている各種パラメータに基づいてスキャン処理を実行することにより、チャンネルリストを自動更新するように構成されている。
【0071】
なお、上記実施形態において、入力端子11が入力手段、QAMチューナ13及びOFDMチューナ14が選局手段、チャンネルリスト設定処理がチャンネルリスト設定手段、ソフトウェア更新処理がソフトウェア更新手段、スキャン制御処理がスキャン実行手段に相当する。
【0072】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のCATVシステム1では、例えば新たな放送局が開設されて放送チャンネルが増減する場合のように、ヘッドエンド装置2からSTB3に配信されるCATV用伝送信号の配信状況が変化するときに、STB3に放送チャンネルのスキャン処理を実行させるための指令識別子を含むSDTTが配信される。
【0073】
したがって、本実施形態のCATVシステム1によれば、STB3が、CATV用伝送信号の配信状況が変化する場合にヘッドエンド装置2から送信されるSDTTの中から指令識別子を検出すると、放送チャンネルのスキャン処理を実行することにより、効率よくチャンネルリストを自動更新することができる。
【0074】
また、CATVシステム1のSTB3では、SDTTに含まれている切換識別子のパラメータに従って、チューナ設定情報を、QAM信号またはOFDM信号のみを選択するように、あるいはQAM信号またはOFDM信号を優先的に選択するように自動更新することができる。
【0075】
このため、例えばヘッドエンド装置2からSTB3に配信されるCATV用伝送信号の配信方式が変化するときに、効率よくチューナ設定情報を自動更新することができる。
さらに、CATVシステム1のSTB3では、SDTTに含まれている切換識別子のパラメータと、不揮発性メモリに記憶されているチューナ設定情報とに基づいて、現在のチューナ設定が切換識別子のパラメータにより示される伝送信号を選択するように設定されている場合に、スキャン処理の実行を禁止する。
【0076】
つまり、CATVシステム1のSTB3がチューナ設定処理を行う必要がない場合に、不要なスキャン処理を省略することができるため、ひいては、CATVシステム1において、各加入者宅に設置されたSTB3毎の設定状態に応じて、余計な動作をさせずに済ますことができる。
【0077】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態のスキャン制御処理では、記述子10(download_id)のうち下位2桁目のパラメータに基づいて、スキャン指示があると判断した場合(S170;YES)に、スキャン処理を行うようにしているが、このステップは必須ではなく、少なくともSDTTの中から指令識別子を検出した場合(S130;YES)に、スキャン処理を行えばよい。
【0079】
また、上記実施形態のスキャン制御処理では、スキャン開始可能日、及びスキャン開始可能時刻を経過している場合(S200;YES)に、直ちにスキャン処理を開始するようにしているが、これに限定されるものではなく、例えばSTB3の電源がオンにされている場合であれば、次に電源がオフにされるときにスキャン処理を開始するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…CATVシステム、2…ヘッドエンド装置、3…STB5…CATV変換部、6…ダウンロード装置、7…送出装置、11…入力端子、12…スプリッタ、13…QAMチューナ、14…OFDMチューナ、15…選択部、16…データ処理部、17…マイコン、18…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事業者側によって管理されるヘッドエンド装置から加入者側に設置された受信端末装置に、伝送線を介してデジタル放送信号を配信するCATVシステムにおいて、前記受信端末装置にチャンネルスキャンを実行させるチャンネルスキャン実行方法であって、
前記受信端末装置の動作に必要なソフトウェアを更新するために、前記デジタル放送信号の空きスロットを利用して前記ヘッドエンド装置に送信させる告知情報に、前記チャンネルスキャンの実行を指示する指令識別子を含ませることにより、前記告知情報を配信する機能を利用して前記受信端末装置にチャンネルスキャンを実行させることを特徴とするチャンネルスキャン実行方法。
【請求項2】
CATVシステムの加入者側に設置され、
放送局から配信されるデジタル放送信号がヘッドエンド装置にて所定の放送チャンネルに変換されたCATV用伝送信号を、該ヘッドエンド装置から伝送線を介して入力する入力手段と、
前記入力手段を介して入力する複数の前記放送チャンネルのCATV用伝送信号の中から、外部操作によって指定されたチャンネル番号に対応する放送チャンネルのCATV用伝送信号を、予め設定されたチャンネルリストに基づいて選局する選局手段と、
前記選局手段に受信可能なCATV用伝送信号を順次選局させるチャンネルスキャンを実行し、該チャンネルスキャンにより選局されたCATV用伝送信号に基づいて、前記放送局の情報と前記チャンネル番号とを対応付けた前記チャンネルリストを設定するチャンネルリスト設定手段と、
前記入力手段を介して入力する前記CATV用伝送信号に含まれている告知情報に従って、当該CATVシステムの受信端末装置の動作に必要なソフトウェアを更新するための処理を行うソフトウェア更新手段と、
を備えるCATVシステムの受信端末装置において、
前記告知情報の中から予め規定された指令識別子を検出した場合、前記ソフトウェア更新手段による処理を禁止すると共に、前記チャンネルスキャンを実行するスキャン実行手段を備えることを特徴とするCATVシステムの受信端末装置。
【請求項3】
前記選局手段は、前記CATV用伝送信号のうち、トランスモジュレーション方式で伝送されてくる信号を選局する第1チューナ部と、パススルー方式で伝送されてくる信号を選局する第2チューナ部とを有し、
前記チャンネルリストには、前記第1チューナ部および前記第2チューナ部により選局されたCATV用伝送信号のうち、いずれかを視聴用の信号として選択するためのチューナ設定情報が含まれ、
前記スキャン実行手段が実行するチャンネルスキャンは、前記告知情報の中から、前記第1チューナ部および前記第2チューナ部の選択方法を示す切換識別子を検出した場合、該切換識別子のパラメータに従って、前記チューナ設定情報を更新することを特徴とする請求項2に記載のCATVシステムの受信端末装置。
【請求項4】
前記スキャン実行手段は、前記告知情報のうち予め規定された時刻IDのパラメータにより特定される日時に、前記チャンネルスキャンを開始することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のCATVシステムの受信端末装置。
【請求項5】
前記スキャン実行手段は、前記指令識別子のパラメータに当該受信端末装置の製造者を示す製造者IDが含まれている場合に限り、前記チャンネルスキャンを実行することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のCATVシステムの受信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−239521(P2010−239521A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86995(P2009−86995)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】