説明

チャージポンプ回路

【課題】 温度が変動しても出力電圧である昇圧電圧が変動しにくいチャージポンプ回路を提供する。
【解決手段】 補正用ダイオードD1に発生した順方向電圧Vfにより、チャージポンプ回路の出力電圧である昇圧電圧4VrefはダイオードD2〜D5に発生した順方向電圧Vfを含まなくなるので、温度が変動してダイオードD2〜D5に発生する順方向電圧Vfが変動しても、昇圧電圧4Vrefは変動しにくくなる。よって、温度が変動しても、昇圧電圧4Vrefはバラツキが抑制されるので、チャージポンプ回路による昇圧速度のバラツキも抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチャージポンプ回路について説明する。図3は、従来のチャージポンプ回路を示す図である。
【0003】
クロックパルスCLKがクロックドライバ201に入力し、クロックパルスCLK及びクロックドライバ201の電源電圧VDDに基づき、クロックドライバ201はクロックパルスCLK2を容量C01及び容量C03に供給する。また、クロックパルスCLKXがクロックドライバ201に入力し、クロックパルスCLKX及びクロックドライバ201の電源電圧VDDに基づき、クロックドライバ201はクロックパルスCLKX2を容量C02に供給する。
【0004】
容量C01に供給されるクロックパルスCLK2が波低値であって容量C01に供給される電圧がグランド電圧である時、ダイオードD01のアノードに印加された電源電圧VDDは、ダイオードD01によって電圧降下し、接続点AAで電圧(VDD−Vf)になる。よって、電圧(VDD−Vf)に基づいた電荷が容量C01に蓄積される。その後、容量C01に供給されるクロックパルスCLK2が波高値になると、容量C01に供給される電圧はグランド電圧からクロックドライバ201の電源電圧VDDに変化する。よって、接続点AAの電圧は、クロックドライバ201の電源電圧VDDと容量C01に蓄積された電荷量に基づいた電圧(VDD−Vf)とを加算した電圧になり、電圧(2VDD−Vf)に変化する。
【0005】
上記の昇圧動作と同様に、接続点BBの電圧は、電圧(3VDD−2Vf)になり、接続点CCの電圧は、電圧(4VDD−3Vf)になる。
【0006】
この接続点CCの電圧(4VDD−3Vf)は、ダイオードD04によって電圧降下し、出力端子DDで昇圧電圧(4VDD−4Vf)になる。
【0007】
上記のような一連の昇圧動作が繰り返して行われることにより、電源電圧VDDの昇圧が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−233134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、各ダイオードは温度特性を持っているので、温度が高くなると各ダイオードに発生する順方向電圧Vfが低くなり、低くなると順方向電圧Vfが高くなってしまう。よって、温度が変動すると、チャージポンプ回路の出力電圧である昇圧電圧(4VDD−4Vf)も変動してしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、温度が変動しても出力電圧である昇圧電圧が変動しにくいチャージポンプ回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、チャージポンプ回路において、定電圧を生成する定電圧回路と、電圧を発生する補正用電荷転送素子と、前記定電圧と前記補正用電荷転送素子に発生した電圧とが加算された電圧が入力電圧として入力される入力端子と、前記入力電圧が昇圧され、昇圧電圧を出力する出力端子と、前記入力端子と前記出力端子との間に直列接続された複数の電荷転送素子と、前記複数の電荷転送素子による各接続点に一つおきに設けられた複数の容量からなる第一容量群と、前記第一容量群が設けられていない前記各接続点に設けられた複数の容量からなる第二容量群と、前記入力電圧を電源電圧とし、前記電源電圧に基づき、第一クロックパルスを前記第一容量群に供給し、前記第一クロックパルスと逆相の第二クロックパルスを前記第二容量群に供給するクロックドライバと、を備えていることを特徴とするチャージポンプ回路を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、補正用電荷転送素子に発生した電圧により、チャージポンプ回路の出力電圧である昇圧電圧は複数の電荷転送素子に発生した電圧を含まなくなるので、温度が変動して複数の電荷転送素子に発生する電圧が変動しても、昇圧電圧は変動しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
まず、チャージポンプ回路の構成について説明する。図1は、チャージポンプ回路を示す図である。
【0014】
チャージポンプ回路は、入力電圧生成回路10及び昇圧回路20を備えている。入力電圧生成回路10は、ボルテージフォロア11、定電圧回路12、定電流源13、電源端子14、グランド端子15及び補正用ダイオードD1を備えている。ボルテージフォロア11は、アンプ11aを有している。昇圧回路20は、クロックドライバ21、出力負荷22、ダイオードD2〜D5、容量C1〜C3及び出力容量CLを備えている。
【0015】
入力電圧生成回路10では、電源端子14に電流源13の一端が接続され、電流源13の他端に補正用ダイオードD1のアノード(接続点E)が接続され、補正用ダイオードD1のカソードに定電圧回路12の一端が接続され、定電圧回路12の他端にグランド端子15が接続されている。接続点Eは、ボルテージフォロア11内部のアンプ11aの非反転入力端子に接続され、アンプ11aの出力端子は、アンプ11aの反転入力端子に接続されている。
【0016】
昇圧回路20では、アンプ11aの出力端子にダイオードD2のアノードが接続され、ダイオードD2のカソード(接続点A)にダイオードD3のアノードが接続され、ダイオードD3のカソード(接続点B)にダイオードD4のアノードが接続され、ダイオードD4のカソード(接続点C)にダイオードD5のアノードが接続され、ダイオードD5のカソード(出力端子D)に出力容量CL及び出力負荷22が接続されている。つまり、昇圧回路20の入力端子と出力端子との間に、ダイオードD2〜D5が直列接続されている。アンプ11aの出力端子にクロックドライバ21の電源端子が接続されている。接続点Aとクロックドライバ21の第一出力端子との間に容量C1が設けられ、接続点Cとクロックドライバ21の第一出力端子との間に容量C3が設けられ、接続点Bとクロックドライバ21の第二出力端子との間に容量C2が設けられている。つまり、容量C1及び容量C3からなる第一容量群は、ダイオードD2〜D5による各接続点に一つおきに設けられ、容量C2からなる第二容量群は、第一容量群が設けられていないダイオードD2〜D5による各接続点に設けられている。
【0017】
ここで、チャージポンプ回路は、昇圧回路20への入力電圧VIN及びクロックドライバ21からのクロックパルスの波高値に基づいた昇圧速度で昇圧動作を行う。また、チャージポンプ回路は、入力電圧VIN及びクロックドライバ21からのクロックパルスの波高値に基づいた昇圧電圧を出力電圧として出力する。ダイオードD2〜D5は、電荷転送素子及び逆流防止素子として機能する。補正用ダイオードD1及びダイオードD2〜D5は、順方向電圧Vfを発生する。補正用ダイオードD1は、ダイオードD2〜D5と、同一形状であり、マスクレイアウト上近接配置されている。よって、補正用ダイオードD1は、ダイオードD2〜D5と、特性がほぼ同一である。クロックドライバ21は、入力電圧VINを電源電圧とし、クロックパルスCLK及びクロックドライバ21の電源電圧(Vref+Vf)に基づき、クロックパルスCLK2を容量C1及び容量C3に供給し、クロックパルスCLKX及びクロックドライバ21の電源電圧(Vref+Vf)に基づき、クロックパルスCLK2と逆相のクロックパルスCLKX2を容量C2に供給する。定電圧回路12は、半導体素子のPN接合によるバンドギャップ電圧に基づいて定電圧を生成するバンドギャップリファレンス回路を用いて構成される。
【0018】
次に、チャージポンプ回路の昇圧動作について説明する。図2は、チャージポンプ回路の昇圧動作を示す図である。
【0019】
電流源13が、定電流を補正用ダイオードD1及び定電圧回路12に供給する。定電圧回路12は定電圧Vrefを生成し、補正用ダイオードD1は順方向電圧Vfを発生する。よって、接続点Eの電圧は、定電圧Vrefと補正用ダイオードD1に発生した順方向電圧Vfとが加算された電圧(Vref+Vf)になる。この電圧(Vref+Vf)は、ボルテージフォロア11内部のアンプ11aを介し、昇圧回路20への入力電圧VINとして昇圧回路20の入力端子に入力され、ダイオードD2のアノード及びクロックドライバ21の電源端子に印加される。ここで、電圧(Vref+Vf)は、ダイオードD2のアノードに印加されると共に、クロックドライバ21の電源電圧(Vref+Vf)になることになる。よって、クロックドライバ21のクロックパルスの波高値は、クロックドライバ21の電源電圧(Vref+Vf)の値になることになる。
【0020】
クロックパルスCLKがクロックドライバ21に入力し、クロックパルスCLK及びクロックドライバ21の電源電圧(Vref+Vf)に基づき、クロックドライバ21はクロックパルスCLK2を容量C1及び容量C3に供給する。また、クロックパルスCLKXがクロックドライバ21に入力し、クロックパルスCLKX及びクロックドライバ21の電源電圧(Vref+Vf)に基づき、クロックドライバ21はクロックパルスCLKX2を容量C2に供給する。
【0021】
図2に示すように、容量C1に供給されるクロックパルスCLK2が波低値であって容量C1に供給される電圧がグランド端子15の電圧である時、ダイオードD2のアノードに印加された電圧(Vref+Vf)は、ダイオードD2によって電圧降下し、接続点Aで電圧Vrefになる。よって、電圧Vrefに基づいた電荷が容量C1に蓄積される。その後、容量C1に供給されるクロックパルスCLK2が波高値になると、容量C1に供給される電圧はグランド端子15の電圧からクロックドライバ21の電源電圧(Vref+Vf)に変化する。よって、接続点Aの電圧は、クロックドライバ21の電源電圧(Vref+Vf)と容量C1に蓄積された電荷量に基づいた電圧Vrefとを加算した電圧になり、電圧(2Vref+Vf)に変化する。
【0022】
上記の昇圧動作と同様に、接続点Bの電圧は、電圧(3Vref+Vf)になり、接続点Cの電圧は、電圧(4Vref+Vf)になる。
【0023】
この接続点Cの電圧(4Vref+Vf)は、ダイオードD5によって電圧降下し、出力端子Dで昇圧電圧4Vrefになる。
【0024】
上記のような一連の昇圧動作が繰り返して行われることにより、定電圧Vrefの昇圧が行われている。
【0025】
このようにすると、補正用ダイオードD1に発生した順方向電圧Vfにより、チャージポンプ回路の出力電圧である昇圧電圧4VrefはダイオードD2〜D5に発生した順方向電圧Vfを含まなくなるので、温度が変動してダイオードD2〜D5に発生する順方向電圧Vfが変動しても、昇圧電圧4Vrefは変動しにくくなる。よって、温度が変動しても、昇圧電圧4Vrefはバラツキが抑制されるので、チャージポンプ回路による昇圧速度のバラツキも抑制される。
【0026】
また、電源端子14の電圧が昇圧されず、定電圧回路12の定電圧Vrefが昇圧され、チャージポンプ回路の出力電圧である昇圧電圧4Vrefが出力されるので、昇圧電圧4Vrefは電源端子14の電圧に依存しなくなる。
【0027】
なお、電荷転送素子としてダイオードD2〜D5が使用されているが、MOSトランジスタが使用されてもよい。この時、補正用ダイオードD1が削除され、補正用ダイオードD1の代わりに補正用MOSトランジスタが使用される。
【0028】
また、定電圧Vrefは、昇圧電圧4Vrefに昇圧されているが、電圧5Vrefに昇圧されてもよい。この時、ダイオードD5の後段に容量及びダイオードが追加される。
【0029】
また、バッファとしてボルテージフォロア11が使用されているが、ソースフォロアが使用されてもよい。
【0030】
ここで、図示しないが、上記のチャージポンプ回路がEEPROMなどの不揮発性メモリのメモリセルの周辺回路として使用される時について説明する。
【0031】
不揮発性メモリは、フローティングゲートに蓄積される電荷量を調整してメモリセルの閾値を変化させることにより、情報を記憶する。
【0032】
一般的にメモリセルの周辺にチャージポンプ回路を設けられていて、チャージポンプ回路によって約10V以上の電圧が生成される。この電圧が、メモリセルへの書き込み電圧として用いられる。書き込み電圧に基づき、フローティングゲートにおける電子の注入及び放出が、フローティングゲートの下のトンネル酸化膜を介して行われる。電子の注入量及び放出量が制御され、フローティングゲートに蓄積される電荷量が調整される。すると、調整された電荷量に基づき、メモリセルの閾値が変化する。
【0033】
ここで、チャージポンプ回路の昇圧速度が速すぎると、昇圧後の書き込み電圧が安定する時間が長くなり、書き込み電圧がメモリセルに印加される時間が長くなる。すると、メモリセルに対して過度のストレスがかかり、メモリセルが劣化してしまう。また、チャージポンプ回路の昇圧速度が遅すぎると、書き込み電圧が安定する時間が短くなり、書き込み電圧がメモリセルに印加される時間が短くなる。すると、メモリセルへの書き込みが浅くなってしまう。しかし、上記のチャージポンプ回路では、昇圧速度のバラツキが抑制されるので、書き込み電圧が安定する時間のバラツキも抑制され、書き込み電圧がメモリセルに印加される時間のバラツキも抑制される。よって、メモリセルが劣化しにくくなり、また、メモリセルへの書き込みが浅くなりにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】チャージポンプ回路を示す図である。
【図2】チャージポンプ回路の昇圧動作を示す図である。
【図3】従来のチャージポンプ回路を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 入力電圧生成回路 11 ボルテージフォロア 11a アンプ
12 定電圧回路 13 定電流源 14 電源端子
15 グランド端子 20 昇圧回路 21 クロックドライバ
22 出力負荷 D1 補正用ダイオード D2〜D5 ダイオード
C1〜C3 容量 CL 出力容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャージポンプ回路において、
定電圧を生成する定電圧回路と、
電圧を発生する補正用電荷転送素子と、
前記定電圧と前記補正用電荷転送素子に発生した電圧とが加算された電圧が入力電圧として入力される入力端子と、
前記入力電圧が昇圧され、昇圧電圧を出力する出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に直列接続された複数の電荷転送素子と、
前記複数の電荷転送素子による各接続点に一つおきに設けられた複数の容量からなる第一容量群と、
前記第一容量群が設けられていない前記各接続点に設けられた複数の容量からなる第二容量群と、
前記入力電圧を電源電圧とし、前記電源電圧に基づき、第一クロックパルスを前記第一容量群に供給し、前記第一クロックパルスと逆相の第二クロックパルスを前記第二容量群に供給するクロックドライバと、
を備えていることを特徴とするチャージポンプ回路。
【請求項2】
前記補正用電荷転送素子及び前記電荷転送素子は、ダイオードであることを特徴とする請求項1記載のチャージポンプ回路。
【請求項3】
前記補正用電荷転送素子及び前記電荷転送素子は、MOSトランジスタであることを特徴とする請求項1記載のチャージポンプ回路。
【請求項4】
前記定電圧回路は、バンドギャップリファレンス回路を用いて構成されることを特徴とする請求項1記載のチャージポンプ回路。
【請求項5】
前記補正用電荷転送素子は、前記電荷転送素子と、同一形状であり、マスクレイアウト上近接配置されていることを特徴とする請求項1記載のチャージポンプ回路。
【請求項6】
前記補正用電荷転送素子と前記入力端子との間に設けられたソースフォロア、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のチャージポンプ回路。
【請求項7】
前記補正用電荷転送素子と前記入力端子との間に設けられたボルテージフォロア、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のチャージポンプ回路。
【請求項8】
前記出力端子は、不揮発性メモリのメモリセルへの書き込み電圧として用いられる前記昇圧電圧を出力することを特徴とする請求項1記載のチャージポンプ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−306857(P2008−306857A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152328(P2007−152328)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】