説明

チューブ位置決め装置及びその配置方法

【課題】チューブ位置決め装置及び位置決め方法を提供する。
【解決手段】
気管開口チューブを挿入するために使用される気管開口器具(1)は、その長手方向に沿って彩色バンド(13)を有する針(10)を具え、その機械端にてシリンジ(14)に接続される。シリンジ(14)は、気管(3)を穿刺したことを検出し、皮膚表面(5)の彩色バンド(13)の位置を観察することにより穿刺された深さを判別することができる。気管開口チューブシャフト(20)の機械端は、針(10)上のバンド(13)に対応した同一の彩色バンド(26)を有する。フランジ(24)は、チューブの長手方向に沿って移動可能であり、皮膚表面(5)の針(10)上の彩色バンド(13)に対応する彩色バンド(26)の位置にて固定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チューブと管が配置される体腔を穿刺することができる細長穿刺器具とを具えるチューブ位置決め装置に関するものである。
【0002】
様々な外科手術時には、体腔への経路を確保して、チューブがその一端を体腔内に配置し得るようにする必要がある。例えば、いくつかの気管開口手段において、体腔への経路は、頸部組織から気管へと中空の針を使用して形成される。次いで、かかる経路は一つ以上のダイレータを用いて拡大させることで、気管開口チューブを挿入することが可能となる。しかし、患者が肥満しており、気管の上部にある組織が過剰に厚い場合には、組織の厚さを見積もることが困難であることから、固定されたフランジを有する従来技術のチューブの使用は不適切であった。そのことから、チューブシャフトの長手方向に沿って移動し得るフランジを有するチューブを使用して、患者の体型に応じた位置決めをすることが好ましい。かかるチューブでは、チューブを挿入した後にフランジを手動にて操作し、位置決めをしなければならず、そのことが患者にとってトラウマとなってしまう可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、この発明の目的は、それに替わるチューブ位置決め装置及び配置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第一発明は、上述した種類のチューブ位置決め装置であって、器具が全長にわたって可視マーキングされており、器具が挿入されている程度を即座に判別することができ、チューブ上にも器具上のマーキングに対応した同一の特徴を有する可視マーキングが施されており、かかるチューブは、マーキング上にて、チューブの長手方向に沿って移動可能かつ固定可能であるフランジを具えており、穿刺の程度を示す器具上のマーキングを観察することでフランジを正確に配置することが可能となる。
【0005】
また、器具上の可視マーキングは、器具の周囲に延びるバンドであり、チューブ上の可視マーキングは、チューブの周囲に延びるバンドであることが好ましい。更に、バンドは相互に異なる配色にて構成されることが好ましい。更にまた、器具は、切断先端を有する針を具えることが好ましい。加えて、器具は、器具の先端が体腔内に穿刺されたことを表示するシリンジなどの手段を具えることが好ましい。加えてまた、チューブは気管開口チューブであり、器具は頸部組織から気管へと穿刺されることが好ましい。
【0006】
第二発明は、この発明に従う上述の装置に使用されるチューブである。
【0007】
第三発明は、この発明に従う上述の装置に使用する器具である。
【0008】
第四発明は、チューブを体腔内にて配置する方法であり、かかる方法は、体内組織を器具により穿刺するステップと、器具が体腔内に穿刺したことを検出するステップと、器具上に沿ったマーキングを観察し、いずれのマーキングが皮膚表面と平行となっているかを判別するステップと、チューブ上に沿って、器具上のマーキングに対応した位置にあるチューブ上のマーキング位置までフランジを移動させるステップと、チューブ上の位置にてフランジを固定し、次いで、器具により形成された経路に、チューブ上のフランジが皮膚表面と接触するまでチューブを挿入するステップとを具える。
【0009】
第五発明は、第四発明に従う方法を使用する装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面を参照して、例示しつつ、気管開口チューブを位置決めする、この発明に従う装置及び配置方法を以下に説明する。
【0011】
装置は、図1及び図2に夫々示す、針器具1及び気管開口チューブ2を具える。
【0012】
かかる針器具は、はじめに気管を穿刺するために用いられ、堅く、中空のスチール製の針10を具え、かかる針10は、前方端が切断端11となっており、後方端にてハブ12を有する。針10は、その長手方向に沿って4つに分けられた可視マーキング13を有し、かかるマーキング13は針の周囲に延び、異なる色により構成されたバンドである。針は外部カニューレを具えることもでき、マーキングをカニューレ上に付することもできる。マーキングを必ずしもバンド状とする必要はなく、マーキングを文字とすることも可能であるが、針の口径が相当に小さい場合には、判別し易くするために配色されたバンドとすることが好ましい。バンド13は、一般的な頸部組織の厚さに対応する範囲内にて、針の長手方向にわたって配置している。器具1は、その先端がハブ12に接続しているシリンジ14を有する。かかるシリンジ14は、針10の先端11が気管3を穿刺することを検出するために使用される。かかる検出には、頸部組織4に針が挿入したときに、使用者が、シリングプランジャ15に軽く圧力をかける方法の抵抗消失技術を採用することができる。先端11が頸部組織4と接触することで、空気の漏れが阻止され、プランジャ15が容器16に対し相対的に移動しない。針10の先端11が頸部組織4から気管3へと到達すると、空気が漏れ出て、プランジャ15を前方に移動させることが可能となり、そのことを即座に認識することは使用者にとって容易である。かかる気管3内への挿入は、容器16からプランジャ15を引き抜いたときに、気管内から空気を吸引しているかどうかで確かめることができる。なお、同じ様に可視マーキングされたその他の形態の器具を用いて、気管を穿刺することも可能である。
【0013】
先端11が気管3内に挿入された際には、使用者は皮膚5表面に水平な位置のバンド13の色を確認する。次いで、針10をそのままの位置に残し、シリンジ14をハブ12から分離させる。ガイドワイヤ(図示せず)が針10内のボアに沿ってスライドし、その一端が気管3内に挿入される。次いで、ガイドワイヤの位置をそのままにして、針10がガイドワイヤに沿って後方へとスライドして患者から引き抜かれる。針がカニューレを具えている場合には、カニューレを所定の位置に配置するよう針を穿刺した後に、針を取り除き、次いで、ガイドワイヤがカニューレに沿って挿入される。寸法が拡張するダイレータ(図示せず)又は一連のダイレータは、ガイドワイヤに沿ってスライドし、頸部組織4を通る経路を気管開口チューブ2が充分に収容し得る寸法まで拡張させる。
【0014】
チューブ2は、前方に位置する患者端22近傍にシーリングバルーン21を有するチューブ状シャフトを具える。また、その後方に位置する機械端は、従来技術の15mmのカップリング23を有する。また、チューブ2は頸部フランジ24を具え、かかる頸部フランジ24は、シャフト20に沿ってスライド可能であり、任意の位置で固定可能である。フランジ24を固定する機構(図示しない)としては、例えば、以下に記載の特許文献1〜12に開示されているような従来技術の機構を使用することができる。チューブの後方機械端は、フランジ24が沿うように配設される直線部分25を有し、かかる部分の一部に針と同様の特徴を有する可視マーキングを有し、かかる可視マーキングは4色の相互に異なる配色のバンド26であって、かかるバンド26は針10のバンド13と同様の配色と色の順序となっている。チューブ2を挿入する前に、使用者はフランジ24を、皮膚表面5と水平となる針10上のバンド13に対応する位置にて、配色バンド26に配置する。次いで、シャフト20上のかかる位置にて、フランジ24を固定する。チューブ2は、ガイドワイヤに沿ってスライドして、イントロデューサ(図示せず)上にて、通常の方法により挿入され、次いで、取り除かれ、図3に示すように、気管3にチューブを配置したままとする。
【0015】
【特許文献1】米国特許第5026352号明細書
【特許文献2】米国特許第4249529号明細書
【特許文献3】米国特許第4449527号明細書
【特許文献4】米国特許第4498903号明細書
【特許文献5】米国特許第4530354号明細書
【特許文献6】米国特許第4649913号明細書
【特許文献7】米国特許第4683882号明細書
【特許文献8】米国特許第4774944号明細書
【特許文献9】国際公開第80/02645号パンフレット
【特許文献10】国際公開第84/03217号パンフレット
【特許文献11】米国特許第4278081号明細書
【特許文献12】英国特許第0503081.2号明細書
【0016】
生体構造上の差異に対応すべく、チューブ2を略完全に挿入する際に、フランジ24の位置を微調整する必要がある。針器具1が頸部組織4の厚さを表示していても、チューブ2が挿入可能な深さに直接影響する、気管の寸法の差異を表示するものではない。しかし、この発明に従う構成では、フランジ24を事前に相当正確に配置することが可能であり、チューブ2が患者内に配置されているときに必要な操作回数を減らすことができる。このことにより、患者のトラウマ及び不快感を減らすことができる。
【0017】
この発明は気管開口チューブへの実施に限定されるものではなく、体内に配置されるその他のチューブに実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】気管に挿入されている針装置の断面図である。
【図2】気管開口チューブの斜視図である。
【図3】気管に挿入されているチューブを示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ(2)及び該チューブが配置される体腔(3)を穿刺する細長穿刺器具(1)を具えるチューブ位置決め装置であって、
前記穿刺器具(1)は、その長手方向に沿って、該穿刺器具が挿入されている距離を即座に判別し得る可視マーキング(13)を有し、前記チューブは該穿刺器具上の該マーキングに対応した同一の可視マーキング(26)を有しており、
該チューブ(2)は、該マーキング(26)上にて、該チューブの長手方向に沿って移動可能かつ固定可能であるフランジ(24)を具えており、穿刺距離を示す該穿刺器具上の該マーキング(13)を観察することで該フランジを正確に配置可能としたことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記穿刺器具上の前記可視マーキングは、該穿刺器具の周囲に延びるバンド(13)であり、前記チューブ上の前記可視マーキングは、該チューブの周囲に延びるバンド(26)であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置であって、前記穿刺器具上の前記可視マーキング(13)及び前記チューブ上の前記可視マーキング(26)は、相互に異なる配色にて構成されることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置であって、前記穿刺器具は、切断先端(11)を有する針(10)を具えることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置であって、前記穿刺器具は、該穿刺器具の前記先端(11)にて体腔(3)を穿刺していることを表示する手段(14)を具えることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、前記穿刺を表示する手段は、シリンジ(14)を含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置であって、前記チューブは、気管開口チューブ(2)であり、前記穿刺器具(1)は、頸部組織(4)を介して気管(3)を穿刺することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置に使用されることを特徴とするチューブ(2)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置に使用されることを特徴とする穿刺器具(1)。
【請求項10】
チューブ(2)を体腔(3)に配置する方法であって、かかる方法は、
穿刺器具(1)により体内組織(4)を穿刺するステップと、
該穿刺器具(1)が体腔(3)内に穿刺したことを検出するステップと、
該穿刺器具(1)上に沿ったマーキング(13)を観察し、いずれのマーキング(13)が皮膚表面と平行になっているかを判別するステップと、
該穿刺器具上のマーキング(13)に対応した位置にある前記チューブ上のマーキング(26)位置まで、該チューブ(2)に沿ってフランジを移動させるステップと、
該チューブ(2)上の該位置にて該フランジ(24)を固定し、次いで、該穿刺器具(1)により形成された経路に、該チューブ上の該フランジ(24)が皮膚表面(5)と接触するまで該チューブを挿入するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法を使用することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−532673(P2008−532673A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501410(P2008−501410)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000956
【国際公開番号】WO2006/100442
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(501038551)スミスズ グループ ピーエルシー (26)
【氏名又は名称原語表記】SMITHS GROUP PLC
【Fターム(参考)】