説明

チューブ状ポリイミドベルトの製造法

【課題】金型からの脱型が容易であり、定着ベルト等として使用するのに適して表面抵抗率の低いチューブ状ポリイミドベルトの製造法を提供する。
【解決手段】(A)イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物、(B)3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物よりなるテトラカルボン酸二無水物と(C)6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾールまたはこれと(D)ビス(4-アミノフェニル)エーテル、(E)フェニレンジアミンの少なくとも1種よりなるジアミンとの共重合体であるポリアミック酸であって、(C)、(D)、(E)合計モル数中20〜100モル%を占める(C)成分が用いられたポリアミック酸の有機溶媒溶液中に導電性微粒子を分散させたポリアミック酸分散液を、円筒状または棒状基材外表面上に塗布して、乾燥処理を行った後ポリイミド化反応させ、チューブ状ポリイミドベルトを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ状ポリイミドベルトの製造法に関する。さらに詳しくは、中間転写体等として有効に用いられるチューブ状ポリイミドベルトの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、感光ドラム等の像担持体上に記録材で形成されたトナー像を直接または中間転写体を介して紙等の記録媒体に転写してから定着させることにより画像を得る装置である。
【0003】
ここで、像担持体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで中間転写体上のトナー像を紙等の記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトとしては、例えばポリイミド系樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させたポリイミド系樹脂成形体が提案されている。
【特許文献1】特開2001−354782号公報
【0004】
また、ポリイミド無端ベルトを画像形成装置の転写、定着ベルトとして用いることも提案されている。中間転写・定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写させた後、この中間転写体を直接的または間接的に加熱することにより、接触している記録媒体に定着させる方法であり、加熱部が瞬時に所定の温度に達し、電源の投入から定着可能温度に達するまでの待ち時間がなく、また消費電力も少ないというすぐれた特徴がみられる。
【特許文献2】特開2006−213024号公報
【特許文献3】特開2005−17586号公報
【0005】
このような中間転写および定着方式に用いられるベルト材料には、駆動時の応力に耐え得る物理的強度を有すると同時に、定着時に与えられる200℃近い熱に耐えられることが要求される。このことから、中間転写および定着ベルトに用いられる材料としては、高い物理的強度と耐熱性とを併せ持つポリイミド系樹脂が適している。
【0006】
ポリイミド系樹脂の多くは、一般には有機溶媒不溶性であるため、その前駆体であるポリアミック酸の有機溶媒溶液を塗布し、乾燥、焼成してアミック酸基の脱水イミド化反応を行って、ポリイミド樹脂として使用している。このイミド転化反応は、一般的には約300〜400℃程度の高い温度を必要とするため、エネルギー消費の点で問題がみられた。また、ポリアミック酸の脱水反応に伴う体積収縮により発生する応力により、膜厚の均一性がとれないという問題があり、金型からの脱型が難しいなどの問題もある。
【0007】
さらに、ポリイミド系樹脂製定着ベルト等として使用する際には、転写画像に白抜けが発生し難くするために、その表面抵抗値の低いものが求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、金型からの脱型が容易であり、定着ベルト等として使用するのに適して表面抵抗率の低いチューブ状ポリイミドベルトの製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる本発明の目的は、(A)イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物および(B)3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物よりなる2種類のテトラカルボン酸二無水物と(C)6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾールよりなる1種類のジアミンまたはこれと(D)ビス(4-アミノフェニル)エーテルおよび(E)フェニレンジアミンの少なくとも1種よりなる2種類または3種類のジアミンとの共重合体であるポリアミック酸であって、(C)、(D)、(E)各成分の合計モル数中20〜100モル%を占める(C)成分が用いられたポリアミック酸の有機溶媒溶液中に導電性微粒子を分散させたポリアミック酸分散液を、円筒状または棒状基材外表面上に塗布して、乾燥処理を行った後ポリイミド化反応させ、チューブ状ベルトを形成させてチューブ状ポリイミドベルトを製造する方法によって達成する。形成された金型上のチューブ状ベルトは、脱型して用いられる。
【発明の効果】
【0010】
チューブ状ポリイミドベルトは、高温で焼成した後ある程度温度を下げてから脱型させるので、金型との線膨張係数の差が金型からの抜き取り作業上問題となる。用いられる金型は、鋼材の種類に応じて特定の線膨張係数を有しているが、一般には10〜15ppm/℃程度である。そこで、ポリイミドの重合体組成をこの値に近付くように設計すれば、温度変化による収縮の影響が緩和され、脱型が容易となる。通常は、ポリイミド重合体の方が金型用鋼材よりも熱膨張係数の値が大きいので、焼成後温度が下がると、金型以上に体積収縮して金型を締め付けるようになり、金型から外れ難くなる。特に、ベルトの場合には、フィルムと比較して厚みが大きいので、この線膨張係数の制御が脱型性にとって重要なポイントとなる。
【0011】
本発明方法によって製造されるチューブ状ポリイミドベルトは導電性微粒子分散ポリアミック分散液を円筒状または棒状基材外表面状に塗布して、乾燥処理を行った後ポリイミド化反応させ、形成されたチューブ状ベルトを脱型させることにより得られるが、線膨張係数をポリイミドの重合成分で制御できるため、金型からの脱型がその長さに関係なく容易であり、またこれを定着ベルト等として使用する際に、100Vにおける表面抵抗値が108Ω/cm2以下と低いため、転写画像に白抜けが発生し難く、しかも転写、運搬等の機能が良好で、耐久性にもすぐれている半導電性ベルトを形成させることができる。
【0012】
かかる半導電性ベルトは、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリまたはこれらの複合装置といった画像形成装置の中間転写ベルト、定着ベルト等として有効に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
導電性微粒子を分散させるポリアミック酸をポリイミド化させ、ポリイミド化共重合体を形成させることは、本出願人の出願に係る特許文献4記載の方法にしたがって行われる。
【特許文献4】WO 2004/018545
【0014】
ポリイミド共重合体の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、(A)イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物

および(B)3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物

の2種類の酸二無水物が用いられる。
【0015】
(A)成分と(B)成分とは、(A)成分10〜80モル%、好ましくは20〜60モル%に対し(B)成分が90〜20モル%、好ましくは80〜40モル%の割合で用いられる。(A)成分の割合がこれよりも多く用いられると、線膨張係数や加熱収縮率も大きくなる。一方、(A)成分がこれよりも少ない割合で用いられると、形成されるベルトが脆くなる。
【0016】
なお、本発明の目的を妨げない範囲内において、他のテトラカルボン酸二無水物の併用は許容される。
【0017】
これら2種類のテトラカルボン酸二無水物と反応してポリイミド共重合体を形成するジアミンとしては、(C)6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾール

が用いられる。
【0018】
このジアミン化合物(C)は、それ単独であるいは(D)ビス(4-アミノフェニル)エーテルおよび(E)フェニレンジアミン、例えばp-フェニレンジアミンの少くとも1種


と併用することができる。
【0019】
ジアミン化合物(C)と共にビス(4-アミノフェニル)エーテル(D)が用いられる場合には、(C)成分が60モル%以上、好ましくは70〜90モル%に対し(D)成分が40モル%以下、好ましくは30〜10モル%の割合で用いられる。(C)成分に対し(D)成分をこれ以上の割合で用いると、線膨張係数も大きくなる。
【0020】
また、ジアミン化合物(C)と共にフェニレンジアミン(E)を用いた場合には、(C)成分が10モル%以上、好ましくは10〜95モル%に対し(E)成分が90モル%以下、好ましくは90〜5モル%の割合で用いられる。(C)成分に対し(E)成分をこれ以上の割合で用いると、脆くなる。
【0021】
さらに、ジアミン化合物(C)と共にビス(4-アミノフェニル)エーテル(D)とフェニレンジアミン(E)とが併用された場合には、ジアミン化合物(D)と(E)との使用割合にもよるが、一般には(C)成分25モル%以上に対し(D)成分と(E)成分との合計量が75モル%以下であって、収縮を生じさせないようなモル比で(C)成分と(D)、(E)各成分とが用いられる。
【0022】
なお、本発明の目的を妨げない範囲内において、他のジアミン化合物の併用は許容される。
【0023】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、好ましくはN-メチロ-2-ピロリドン溶媒中で行われるが、この他にはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、m-クレゾール等の極性溶媒中でも行われる。実際には、テトラカルボン酸二無水物混合物の極性溶媒溶液中に約0〜60℃でジアミン(混合物)またはその極性溶媒溶液を滴下し、その後約0〜60℃で約0.5〜5時間程度反応させ、ポリイミド前駆共重合体であるポリアミック酸を形成させる。
【0024】
ポリアミック酸は、ポリイミド結合を含む構造であってもよい。すなわち、ポリアミック酸はその一部がイミド化されて、ポリアミック酸-ポリイミド共重合体となっていてもよい。ポリアミック酸を形成させた後、加熱あるいは触媒添加などの方法により部分的にイミド化しておくことで、ポリイミド化の反応速度をより大きくし、エネルギー消費の低減を図ることができる。
【0025】
ポリアミック酸の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、成形体としての特性発現のために高分子量であり、かつ加工可能な濃度とするためには、約5〜50重量%であることが好ましく、特に約10〜30重量%が好適である。固形分濃度が約5重量%未満では重合度が低く、最終的に得られる成形体の強度が低下し易くなる。一方、固形分濃度が約50重量%を超えると、ポリアミック酸に不溶部分が生じ、ポリイミド化反応が進行し難くなる。
【0026】
このようにして得られたポリアミック酸溶液には、導電性微粒子が好ましくは分散液として添加される。導電性微粒子としては、金属微粒子、カーボンブラック、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の酸化金属系微粒子、短繊維、ガラス等の非導電性微粒子の表面を金属または酸化金属でコートしたものなどが用いられ、分散の容易性の点からは、非金属系であるカーボンブラックが好んで用いられる。
【0027】
カーボンブラックは、粒子径、DBP吸収量、揮発分、比表面積、pHなどの特性項目が種々異なった種類が存在し、それらの違いによるストラクチャーの形成状況や挙動が異なり、結果として導電性にレベル、分散性、樹脂との相溶性などが決まってくる。一般には、ファネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラックと大別されるカーボンブラックの内、ファネスブラックが好んで用いられ、その粒径は約1〜100nm程度であることが好ましい。
【0028】
実際には、市販品である東海カーボン製品#4300、#5500、三菱化学製品#3030B、#3350B、ライオン製品ケッチエンブラックECP600JD等の少なくとも一種が用いられる。これらのカーボンブラックは、好ましくはポリアミック酸溶液形成に用いられたものと同じ溶媒中に、約5〜30重量%の固形分濃度で分散させた分散液として、ポリアミック酸溶液に添加されて用いられる。また、カーボンブラックの添加量は、形成されるポリイミド樹脂100重量部に対し約1〜20重量部、好ましくは約2〜5重量部となるような割合で用いられる。
【0029】
導電性微粒子分散ポリアミック酸溶液である塗工液中には、得られるポリイミドベルトの補強材として、シリカ、マイカ、タルク、ウィスカー、硫酸バリウム等の絶縁性無機粉体を、ポリアミック酸の固形分100重量部当り約5〜60重量部を含有せしめることができる。さらに、必要に応じて、分散剤、補強剤、消泡剤、滑剤等の加工助剤を添加して用いることもできる。
【0030】
ポリイミドベルトの製造は、塗工液を円筒状または棒状基材外表面上に塗布して、乾燥処理を行った後ポリイミド化反応させ、形成されたチューブ状ポリイミドベルトを脱型することにより、チューブ状のものとして得られる。
【0031】
塗工液がその外表面側に塗布される円筒状または棒状基材としては、円筒形金型が好ましいが、金型の代りに樹脂製、ガラス製、セラミックス製等の任意の素材の円筒体または棒状体を用いることができる。これらの基材表面には、形成されたチューブ状ベルトが剥離し易いように、予め離型剤の塗布または離型層の形成をしておくことが好ましい。円筒状金型への塗工液の塗布段階で、均一な塗工液厚みの制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型等を用いなくともよい。
【0032】
次に、塗工液を塗布した円筒状金型を約50〜180℃程度の加熱状態に置き、そこに含有される溶媒を揮発させるための乾燥処理が行われる。この過程では、雰囲気の蒸気である揮発した溶媒等を効率よく循環して取り除くことが好ましいが、塗膜中に溶媒が残留しても格別問題はなく、塗膜表面が乾燥し、自己支持性のある膜が得られる状態であればよい。
【0033】
乾燥処理された後、塗膜を形成させた円筒状金型は高温処理可能な加熱炉中に移し、約180〜450℃、好ましくは約200〜400℃程度の温度で焼成し、イミド化転位反応を十分に進行させる。この焼成処理温度は、ポリイミド化反応が完結するのに十分な温度に設定されなければならない。ポリイミド化が不十分であると、物理的および機械的特性に劣るようになる。
【0034】
焼成処理後、形成されたチューブ状ベルトを脱型することにより、ポリイミドベルトが得られる。ポリイミドベルトの厚さは、厚すぎると熱伝導度や抵抗値の観点から好ましくはなく、逆に薄すぎるとその靱性が小さくなりすぎるため好ましくない。したがって、ポリイミドベルトの用途を考慮すると、形成されるベルトの厚さは約5〜1000μm、好ましくは約30〜150μmであることが望ましい。また、チューブ状ポリイミドベルトの長さは、一般には円筒状金型の長さによって左右されるが、これらの一連の操作を連続的に行うことによって、無端のチューブ状ポリイミドベルトを形成させることも可能である。
【実施例】
【0035】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0036】
参考例1
窒素置換雰囲気中の攪拌装置を備えた容量10Lの四口フラスコ中の
イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物 260.0g(0.5モル)
3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 441.0g(1.5モル)
のN-メチル-2-ピロリドン(6000ml)溶液に、
6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾール 403.2g(1.8モル)
ビス(4-アミノフェニル)エーテル 40.0g(0.2モル)
を30℃を超えないようにして仕込み、室温条件下で3時間攪拌し、ポリアミック酸溶液A 7115gを得た。
【0037】
参考例2
参考例1において、ビス(4-アミノフェニル)エーテルが用いられず、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾール量が448.0g(2.0モル)、またN-メチル-2-ピロリドン量が6035mlにそれぞれ変更され、ポリアミック酸溶液B 7131gを得た。
【0038】
参考例3
参考例1において、ビス(4-アミノフェニル)エーテルの代りにp-フェニレンジアミン108.0g(1.0モル)が用いられ、また6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾール量が224.0g(1.0モル)に、N-メチル-2-ピロリドン量が5425mlにそれぞれ変更され、ポリアミック酸溶液C 6397gを得た。
【0039】
参考例4
参考例1において、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の代りに3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物483.0g(1.5モル)が用いられ、また6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾール量が44.8g(0.2モル)に、またビス(4-アミノフェニル)エーテル量が360.0g(1.8モル)にそれぞれ変更され、ポリアミック酸溶液D 7115gを得た。
【0040】
実施例1
カーボンブラック(ライオン製品ケッチエンブラックECP600JD)3gを、ホモジナイザを用いてN-メチル-2-ピロリドン97g中に分散させたカーボンブラック分散液を調製した。このカーボンブラック分散液を、参考例1で用いられたポリアミック酸溶液A 200g中に投入し、30分間攪拌して、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液Aを得た。
【0041】
このようにして得られたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液Aを内径56mm、外径60mm、長さ300mmの円筒形金型外表面に、ディスペンサーを用いて均一に塗布した後、円筒形金型を回転させながら、温度70℃-20分間、90℃-20分間および110℃-25分間の乾燥処理を行った。その後、150℃-20分間の加熱による溶媒除去および350℃-60分間(350℃までの昇温速度2℃/分)での焼成を行ってポリイミド化反応させた後室温に戻し、円筒形金型からチューブ状ポリイミドベルトを得た。
【0042】
円筒形金型からのチューブ状ポリイミドベルトの脱型は、問題なく容易に行うことができ、このポリイミドベルトについて、セイコーインスツルメンツ社製EXSTER6000を用いて、100℃〜200℃における線熱膨張係数を測定すると、その値は23ppm/℃であった。
【0043】
また、得られたポリイミドベルトを温度23℃、湿度60%RHの環境下に4時間放置した後、この環境下でHEWLETT PACKARD社製HIGH RESISTANCE METER 4339Aを用い、100Vにおける表面抵抗値を測定すると、その値は106Ω/cm2以下であった。
【0044】
実施例2
実施例1において、参考例2で用いられたポリアミック酸溶液Bを用い、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液Bを調製し、チューブ状ポリイミドベルトを得た。円筒形金型からのチューブ状ポリイミドベルトの脱型は問題なく容易に行うことができ、それを用いて測定された100℃〜200℃における線膨張係数は17ppm/℃であった。また、得られたポリイミドベルトについて、実施例1と同様にして表面抵抗値を測定すると、その値は106Ω/cm2以下であった。
【0045】
実施例3
実施例1において、参考例3で用いられたポリアミック酸溶液Cを用い、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液Cを調製し、チューブ状ポリイミドベルトを得た。円筒形金型からのチューブ状ポリイミドベルトの脱型は問題なく容易に行うことができ、それを用いて測定された100℃〜200℃における線膨張係数は23ppm/℃であった。また、得られたポリイミドベルトについて、実施例1と同様にして表面抵抗値を測定すると、その値は106Ω/cm2以下であった。
【0046】
比較例
実施例1において、参考例4で用いられたポリアミック酸溶液Dを用い、カーボンブラック分散ポリアミック酸溶液Dを調製し、チューブ状ポリイミドベルトを得た。円筒形金型からのチューブ状ポリイミドベルトの脱型は困難であり、それを用いて測定された100℃〜200℃における線膨張係数は47ppm/℃であった。また、得られたポリイミドベルトについて、実施例1と同様にして表面抵抗値を測定すると、その値は1014Ω/cm2以上であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソプロピリデンビス(4-フェニレンオキシ-4-フタル酸)二無水物および(B)3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物よりなる2種類のテトラカルボン酸二無水物と(C)6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンズイミダゾールよりなる1種類のジアミンまたはこれと(D)ビス(4-アミノフェニル)エーテルおよび(E)フェニレンジアミンの少なくとも1種よりなる2種類または3種類のジアミンとの共重合体であるポリアミック酸であって、(C)、(D)、(E)各成分の合計モル数中20〜100モル%を占める(C)成分が用いられたポリアミック酸の有機溶媒溶液中に導電性微粒子を分散させたポリアミック酸分散液を、円筒状または棒状基材外表面上に塗布して、乾燥処理を行った後ポリイミド化反応させ、チューブ状ベルトを形成させることを特徴とするチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項2】
形成されたチューブ状ベルトを脱型する請求項1記載のチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項3】
テトラカルボン酸二無水物と反応するジアミンが(C)、(D)成分であり、(C)成分60〜100モル%に対し、(D)成分が40〜0モル%の割合で用いられる請求項1記載のチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項4】
テトラカルボン酸二無水物と反応するジアミンが(C)、(E)成分であり、(C)成分10〜100モル%に対し、(E)成分が90〜0モル%の割合で用いられる請求項1記載のチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項5】
ポリアミック酸の有機溶媒溶液の溶媒がN-メチル-2-ピロリドンである請求項1記載のチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項6】
導電性微粒子がカーボンブラックであり、ポリアミック酸の固形分100重量部に対し1〜20重量部の割合で用いられた請求項1記載のチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項7】
ポリイミド化反応が150〜450℃で行われる請求項1記載のチューブ状ポリイミドベルトの製造法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの方法により製造されたチューブ状ポリイミドベルト。
【請求項9】
100Vにおける表面抵抗値が108Ω/cm2以下である請求項8記載のチューブ状ポリイミドベルト。
【請求項10】
中間転写体として、それを加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる中間転写および定着方式に用いられる請求項8または9記載のチューブ状ポリイミドベルト。

【公開番号】特開2010−106137(P2010−106137A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279118(P2008−279118)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】