説明

ツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法およびツインドライブ装置

【課題】スライダに発生する歪み補正してスライダの一対の駆動軸に対する高精度な直角度を確保できるツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法およびツインドライブ装置を提供する。
【解決手段】装置組付け後の調整段階において、第1および第2ボールねじ軸37a,37bの間で装置稼動時の推力差を発生させ、Y軸スライダ34に歪みを発生させて該歪みの補正量を演算しておく(ステップ1〜8)。そして、装置稼動時の原点復帰動作中に上記歪みを再現させ、上記歪み補正量により位置補正する(ステップ11〜14)。これにより、第1および第2ボールねじ軸37a,37bに対するY軸スライダ34の高精度な直角度を確保できるので、部品実装装置における生産品の精度を高め、スループットを向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダを一対の駆動軸に沿って移動させるツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法およびツインドライブ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、スライダ(X軸フレーム)を一対の駆動軸(YR軸フレーム,YL軸フレーム)に沿って移動させるツインドライブ装置を備えた部品実装装置が開示されている。特許文献1に記載の部品実装装置のツインドライブ装置は、スライダ(X軸フレーム)と一対の駆動軸との直角度を規定する一対の原点センサを備え、一対の原点センサによる検出信号に基づいて、スライダを一対の駆動軸と直角度が確保された初期位置に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−313839号公報(段落0017、図1,4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のツインドライブ装置では、スライダを剛体として取り扱っているが、実際にはスライダは完全な剛体ではないためスライダの移動時にスライダに歪みが発生する。このため、原点センサにより検出した原点に上記歪みによる誤差が含まれている状態でスライダの位置決めを行った場合、一方の駆動軸に不要なトルクを加えることになる。よって、その後の部品実装における実装精度の悪化やスループットの低下を招く場合がある。
【0005】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたもので、スライダに発生する歪みを補正してスライダの一対の駆動軸に対する高精度な直角度を確保できるツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法およびツインドライブ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、平行に並列配置された一対の第1および第2駆動軸と、両端部が前記第1および第2駆動軸に沿ってそれぞれ移動可能に支持されたスライダと、前記スライダの両端部の位置をそれぞれ検出する第1および第2位置検出部と、前記第1および第2位置検出部による位置検出値に応じて、前記スライダの一端側を前記第1駆動軸に沿って駆動制御する第1駆動部と、前記スライダの他端側を前記第2駆動軸に沿って前記第1駆動軸と同期制御して移動する第2駆動部と、を備えたツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法であって、前記第1および第2駆動軸の間で装置稼動時の推力差を発生させるように前記第1および第2駆動部の少なくとも一方を駆動し、前記スライダに歪みを発生させる駆動工程と、前記スライダに歪みを発生させた後の該スライダの前記他端側の端部の前記一端側の端部に対する歪み量に基づいて、前記スライダの歪み補正量を求める補正量演算工程と、前記第1および第2駆動軸の間で前記推力差と同一の推力差を発生させるように前記第1および第2駆動部を駆動し、前記スライダの各端部をそれぞれ原点復帰させ、前記スライダの前記一端側の端部を位置決めしてから前記他端側の端部の位置を前記歪み補正量だけ補正する歪み補正工程と、を備えることである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記駆動工程は、前記第1駆動部を駆動し前記第2駆動部を駆動せずに前記スライダを前記第1および第2駆動軸に沿って移動させて前記スライダに歪みを発生させ、前記補正量演算工程は、前記スライダの前記一端側の端部の位置が任意の位置に達したときの前記スライダの前記他端側の端部の位置を取得する第1位置取得工程と、前記第1および第2駆動部を駆動し、前記スライダの前記一端側の端部を前記任意の位置に位置決め固定すると共に前記スライダの前記他端側の端部を前記取得した位置に位置決めし、前記スライダが前記第1および第2駆動軸と直角になるまで前記スライダの前記他端側の端部を移動させて該端部の位置を取得する第2位置取得工程とを備え、前記スライダの歪み補正量として前記第1位置取得工程で取得した位置と前記第2位置取得工程で取得した位置との差を求めることである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記駆動工程は、前記第1駆動部を駆動し前記スライダの前記一端側の端部を前記第1駆動軸に沿って移動させ、前記第2駆動部を駆動せずに前記スライダの前記他端側の端部を現在位置に保持させて前記スライダに歪みを発生させ、前記補正量演算工程は、前記スライダの移動が停止したときの前記スライダの前記他端側の端部の位置を取得する第1位置取得工程と、前記スライダの前記一端側の端部を固定し、前記スライダが前記第1および第2駆動軸と直角になるまで前記スライダの前記他端側の端部を移動させて該端部の位置を取得する第2位置取得工程とを備え、前記スライダの歪み補正量として前記第1位置取得工程で取得した位置と前記第2位置取得工程で取得した位置との差を求めることである。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1において、前記駆動工程は、前記第1駆動部を駆動し前記スライダの前記一端側の端部を前記第1駆動軸に沿って移動させ、前記第2駆動部を前記第1駆動部とは逆方向に駆動し前記スライダの前記他端側の端部を前記第2駆動軸の他方に沿って移動させて前記スライダに歪みを発生させ、前記補正量演算工程は、前記スライダの移動が停止したときの前記スライダの前記他端側の端部の位置を取得する第1位置取得工程と、前記スライダの前記一端側の端部を固定し、前記スライダが前記第1および第2駆動軸と直角になるまで前記スライダの前記他端側の端部を移動させて該端部の位置を取得する第2位置取得工程とを備え、前記スライダの歪み補正量として前記第1位置取得工程で取得した位置と前記第2位置取得工程で取得した位置との差を求めることである。
【0010】
請求項5に係る発明は、平行に並列配置された一対の第1および第2駆動軸と、両端部が前記第1および第2駆動軸に沿ってそれぞれ移動可能に支持されたスライダと、前記スライダの両端部の位置をそれぞれ検出する第1および第2位置検出部と、前記第1および第2位置検出部による位置検出値に応じて、前記スライダの一端側を前記第1駆動軸に沿って駆動制御する第1駆動部と、前記スライダの他端側を前記第2駆動軸に沿って前記第1駆動軸と同期制御して移動する第2駆動部と、前記スライダの歪みを補正する補正装置と、を備えたツインドライブ装置であって、前記補正装置は、前記第1および第2駆動軸の間で装置稼動時の推力差を発生させるように前記第1および第2駆動部の少なくとも一方を駆動し、前記スライダに歪みを発生させる駆動手段と、前記スライダに歪みを発生させた後の該スライダの前記他端側の端部の前記一端側の端部に対する歪み量に基づいて、前記スライダの歪み補正量を求める補正量演算手段と、前記第1および第2駆動軸の間で前記推力差と同一の推力差を発生させるように前記第1および第2駆動部を駆動し、前記スライダの各端部をそれぞれ原点復帰させ、前記スライダの前記一端側の端部を位置決めしてから前記他端側の端部の位置を前記歪み補正量だけ補正する歪み補正手段と、を備えることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、例えば装置組付け後の調整段階において、第1および第2駆動軸の間で装置稼動時の推力差を発生させ、スライダに歪みを発生させて該歪みの補正量を演算しておく。そして、装置稼動時の原点復帰動作中に上記歪みを再現させ、上記歪み補正量により位置補正する。これにより、第1および第2駆動軸に対するスライダの高精度な直角度を確保できる。よって、該ツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法が適用される生産装置における生産品の精度を高め、スループットを向上することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、第1駆動部を駆動し第2駆動部を駆動せずにスライダを第1および第2駆動軸に沿って移動させ、第1および第2駆動軸の間で装置稼動時の推力差を発生させている。これにより、スライダの一端側の端部は移動し、他端側の端部は引き摺られて移動するので、スライダに歪みを発生させることができ、スライダの歪み補正量を求めることができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、第1駆動部を駆動しスライダの一端側の端部を第1駆動軸に沿って移動させ、第2駆動部を駆動せずにスライダの他端側の端部を現在位置に保持させ、第1および第2駆動軸の間で装置稼動時の推力差を発生させている。これにより、第1駆動部には正確な駆動力を付与することができるので、スライダに装置稼動時の正確な歪みを発生させることができ、高精度なスライダの歪み補正量を求めることができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、第1駆動部を駆動しスライダの一端側の端部を第1駆動軸に沿って移動させ、第2駆動部を第1駆動部とは逆方向に駆動しスライダの他端側の端部を第2駆動軸の他方に沿って移動させ、第1および第2駆動軸の間で装置稼動時の推力差を発生させている。これにより、第1および第2駆動部には正逆方向の正確な駆動力を付与することができるので、スライダに装置稼動時のより正確な歪みを発生させることができ、さらに高精度なスライダの歪み補正量を求めることができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、補正装置は、例えば装置組付け後の調整段階において、第1および第2駆動軸の間で装置稼動時の推力差を発生させ、スライダに歪みを発生させて該歪みの補正量を演算しておく。そして、装置稼動時の原点復帰動作中に上記歪みを再現させ、上記歪み補正量により位置補正する。これにより、第1および第2駆動軸に対するスライダの高精度な直角度を確保できるツインドライブ装置を構成することができる。よって、該ツインドライブ装置が適用される生産装置における生産品の精度を高め、スループットを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態のツインドライブ装置を備えた部品実装装置を示す斜視図である。
【図2】図1の部品実装装置の制御装置を示すブロック図である。
【図3】図2の制御装置の第1の動作を説明するためのフローチャートであり、(A)は、部品実装装置の組付け完了後のツインドライブ装置の第1の調整を説明するためのフローチャート、(B)は、部品実装装置の稼動前のツインドライブ装置の調整を説明するためのフローチャートである。
【図4】ツインドライブ装置の第1の調整時におけるY軸スライダの動作を示す第1の図であり、(A)は、静止状態、(B)は、移動中の状態を示す図である。
【図5】ツインドライブ装置の第1の調整時におけるY軸スライダの動作を示す第2の図であり、(A)は、移動後の状態、(B)は、調整状態を示す図である。
【図6】部品実装装置の稼動前のツインドライブ装置の調整時におけるY軸スライダの動作を示す図であり、(A)は、移動後の状態、(B)は、調整状態を示す図である。
【図7】部品実装装置の組付け完了後のツインドライブ装置の第2の調整を説明するためのフローチャートである。
【図8】ツインドライブ装置の第2の調整時におけるY軸スライダの動作を示す図であり、(A)は、静止状態、(B)は、移動中の状態を示す図である。
【図9】部品実装装置の組付け完了後のツインドライブ装置の第3の調整を説明するためのフローチャートである。
【図10】ツインドライブ装置の第3の調整時におけるY軸スライダの動作を示す図であり、(A)は、静止状態、(B)は、移動中の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るツインドライブ装置の実施の形態を部品実装装置に適用した場合について図面に基づいて説明する。図1に示すように、この部品実装装置は、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30および制御装置50(図2参照)により概略構成されている。なお、図1において、基板の搬送方向をX軸方向、X軸方向と直交する水平方向をY軸方向、Y軸方向と直交する垂直方向をZ軸方向とする。
【0018】
基板搬送装置10は、基板をX軸方向に搬送する第1搬送装置11および第2搬送装置12を2列並設したいわゆるダブルコンベアタイプのものである。第1搬送装置11および第2搬送装置12は、基台13上にそれぞれ一対のガイドレール14a,14b,15a,15bを互いに平行に対向させてそれぞれ水平に並設し、これらガイドレール14a,14b,15a,15bによりそれぞれ案内される基板を支持して搬送する一対のコンベアベルト(図示省略)を互いに対向させて並設して構成されたものである。また、第1搬送装置11および第2搬送装置12には、所定位置まで搬送された基板を押し上げてクランプすることで、基板を部品装着位置で位置決め固定するクランプ装置(図示省略)がそれぞれ設けられている。
【0019】
部品供給装置20は、基枠1上に複数のフィーダ21を並設したカセットタイプのものである。フィーダ21は、基枠1に離脱可能に取付けた本体22と、本体22の後部に設けられ、部品が所定ピッチで封入された細長いテープ(図示省略)が巻回保持された供給リール23と、本体22の先端に設けられ、テープがスプロケット(図示省略)により所定ピッチで引き出され、部品が封入状態を解除されて順次送り込まれる部品取出部24とを備えている。また、部品供給装置20と基板搬送装置10の間には、後述する部品移載装置30の部品採取ヘッド32に保持された部品の保持位置を検出するCCD等で構成された部品認識用カメラ25が設けられている。
【0020】
部品移載装置30は、基枠1上部に装架されて基板搬送装置10および部品供給装置20の上方に配設されたツインドライブ装置を有するXYロボットタイプのものである。部品移載装置30は、ヘッド移送機構31および部品採取ヘッド32を備えている。ヘッド移送機構31は、2台の第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bによりY軸方向に移動されるY軸スライダ34と、このY軸スライダ34にX軸方向に移動可能に案内され、Y軸スライダ34に固定されたX軸サーボモータ35によりX軸方向に移動されるX軸スライダ36とを備えている。なお、第1および第2Y軸サーボモータ33a,33b等が、本発明の「第1および第2駆動部」に相当する。また、Y軸スライダ34等が、本発明の「スライダ」に相当する。
【0021】
2台の第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bの出力軸には、Y軸方向に延びる第1および第2ボールねじ軸37a,37bがそれぞれ連結されている。第1および第2ボールねじ軸37a,37bは、ボール(図示省略)を介して、Y軸スライダ34に固定された第1および第2ボールナット38a,38bに螺合されている。すなわち、Y軸スライダ34は、第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bの駆動による第1および第2ボールねじ軸37a,37bの回転により、第1および第2ボールナット38a,38bを介してガイドレール39に案内されてY軸方向に移動するように構成されている。なお、第1および第2ボールねじ軸37a,37b、第1および第2ボールナット38a,38bおよびガイドレール39等が、本発明の「第1および第2駆動軸」に相当する。
【0022】
Y軸スライダ34には、Y軸スライダ34の両端部の位置をそれぞれ検出する第1および第2リニアエンコーダの検出部48a,48bが備えられている。そして、ガイドレール39には、第1および第2リニアエンコーダのスケール(図示省略)が貼着されている。第1および第2リニアエンコーダは、相対位置を検出するインクリメンタル式のエンコーダである。なお、第1および第2リニアエンコーダの検出部48a,48bおよびスケール等が、本発明の「第1および第2位置検出部」に相当する。そして、「第1および第2駆動軸」、「スライダ」、「第1および第2位置検出部」および「第1および第2駆動部」が、本発明の「ツインドライブ装置」に相当する。
【0023】
X軸サーボモータ35の出力軸には、第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bの出力軸と同様に、X軸方向に延びるボールねじ軸(図示省略)が連結されている。ボールねじ軸は、ボール(図示省略)を介して、X軸スライダ36に固定されたボールナット(図示省略)に螺合されている。すなわち、X軸スライダ36は、X軸サーボモータ35の駆動によるボールねじ軸の回転により、ボールナットを介してガイドレールに案内されてX軸方向に移動するように構成されている。このX軸スライダ36には、部品を基板に装着する部品採取ヘッド32が交換可能に取付けられている。
【0024】
部品採取ヘッド32には、下方に突出して設けられて後述の部品吸着ノズル44が着脱されるノズルホルダー部43と、該ノズルホルダー部43の下端部に設けられて部品を吸着保持する部品吸着ノズル44と、下方に突出して設けられて基板位置を認識するため基板を撮像するCCD等で構成された基板認識用カメラ45とが取付けられている。ノズルホルダー部43は、Z軸サーボモータ46によりZ軸方向に昇降可能に且つR軸サーボモータ47によりノズル軸周りで回転可能に支承されている。
【0025】
部品吸着ノズル44は、ノズル先端で部品を吸引可能なように真空ポンプ(図示省略)に接続され、ノズルホルダー部43の下端部に取付けられている。部品採取ヘッド32には、1個の部品を吸着する部品吸着ノズル44を取付けているが、この部品吸着ノズル44に代えて既知のロータリー式部品吸着ノズル、すなわち回転可能な円筒状のノズルホルダー部に複数本の部品吸着ノズルを円周上に等角度間隔で配置し、ノズルホルダー部を回転させると共に部品吸着ノズルを順次昇降させて複数の部品を順次吸着するロータリー式部品吸着ノズルを取付けることもできる。
【0026】
図2に示すように、制御装置50は、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30の動作を制御する基板搬送制御装置51、部品供給制御装置52、部品移載制御装置53およびツインドライブ装置のY軸スライダ34の歪みを補正する補正装置54を備えて構成される。補正装置54は、駆動部55(本発明の「駆動手段」に相当する)と、補正量演算部56(本発明の「補正量演算手段」に相当する)と、歪み補正部57(本発明の「歪み補正手段」に相当する)と、記憶部58とを備えている。
【0027】
駆動部55は、第1および第2リニアエンコーダの検出部48a,48bによる位置検出値に応じて、Y軸スライダ34の一端側、本例では第1ボールナット38a側を第1ボールねじ軸37aに沿って移動するために第1Y軸サーボモータ33aを駆動し、Y軸スライダ34の他端側、本例では第2ボールナット38b側を第2ボールねじ軸37bに沿って第1ボールねじ軸37aと同期制御して移動するために第2Y軸サーボモータ33bを駆動する。また、第1および第2ボールねじ軸37a,37bの間で装置稼動時の推力差を発生させるように第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bの少なくとも一方を駆動し、Y軸スライダ34に歪みを発生させる。
【0028】
補正量演算部56は、Y軸スライダ34に歪みを発生させた後の該Y軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部の第1ボールナット38a側の端部に対する歪み量に基づいて、Y軸スライダ34の歪み補正量を求める。
【0029】
歪み補正部57は、第1および第2ボールねじ軸37a,37bの間で上記推力差と同一の推力差を発生させるように第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bを駆動し、Y軸スライダ34の各端部をそれぞれ原点復帰させ、Y軸スライダ34の第1ボールナット38a側の端部を位置決めしてから第2ボールナット38b側の端部の位置を上記歪み補正量だけ補正する。
【0030】
記憶部58には、第1および第2ボールねじ軸37a,37bの間で装置稼動時の推力差を発生させるための、第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bの少なくとも一方を駆動するときの駆動電流値が記憶されている。具体的には、後述のツインドライブ装置の第1の調整時に使用する以下の駆動電流指令値Si1が記憶されている。すなわち、第2Y軸サーボモータ33bを駆動せずに第2ボールねじ軸37bをサーボアンロック状態にし、第1Y軸サーボモータ33aを駆動してY軸スライダ34を第1および第2ボールねじ軸37a,37bに沿って移動させるときの駆動電流指令値Si1が記憶されている。
【0031】
また、後述のツインドライブ装置の第2の調整時に使用する以下の駆動電流指令値Si2が記憶されている。すなわち、第2Y軸サーボモータ33bを駆動せずにY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bを現在位置に保持させ、第1Y軸サーボモータ33aを駆動してY軸スライダ34の第1ボールナット38a側の端部34aを第1ボールねじ軸37aに沿って移動させるときの駆動電流指令値Si2が記憶されている。また、後述のツインドライブ装置の第3の調整時に使用する以下の駆動電流指令値Si3,4が記憶されている。すなわち、第1Y軸サーボモータ33aを駆動してY軸スライダ34の第1ボールナット38a側の端部34aを第1ボールねじ軸37aに沿って移動させ、第2Y軸サーボモータ33bを第1Y軸サーボモータ33aとは逆方向に駆動してY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bを移動させるときの駆動電流指令値Si3,4が記憶されている。
【0032】
次に、上述の構成の制御装置50の動作について図3のフローチャートを参照して説明する。部品実装装置の組付けが完了したら、ツインドライブ装置の第1の調整を行う(図3(A)参照)。すなわち、制御装置50は、第2Y軸サーボモータ33bを駆動せずに第2ボールねじ軸37bをサーボアンロック状態にし、記憶部58から読出した駆動電流値Si1に従って、第1Y軸サーボモータ33aを駆動してY軸スライダ34を第1および第2ボールねじ軸37a,37bに沿って移動させる。
【0033】
これにより、Y軸スライダ34は、図4(A)に示す静止状態から、図4(B)に示すように、第1ボールナット38a側の端部34aが矢印a方向に移動し、第2ボールナット38b側の端部34bが矢印a方向に引き摺られて移動するので、Y軸スライダ34に歪みが発生する(ステップ1、本発明の「駆動工程」に相当する)。
【0034】
制御装置50は、図5(A)に示すように、Y軸スライダ34の移動中に、Y軸スライダ34の第1ボールナット38a側の端部34aが、任意の位置yaaに達したときのY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bの位置yaを取得する(ステップ2、本発明の「補正量演算工程」の「第1位置取得工程」に相当する)。そして、図5(B)に示すように、第1および第2ボールねじ軸37a,37bに対し直角に配置可能な高剛性治具Jを、上述の任意位置yaaを基準にセットする。
【0035】
制御装置50は、第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bを駆動してY軸スライダ34を第1および第2ボールねじ軸37a,37bに沿って移動させる(ステップ3)。そして、Y軸スライダ34の第1ボールナット38a側の端部34aを高剛性治具Jに突き当て、Y軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bを取得した位置yaに位置決め固定する(ステップ4)。その後、第2Y軸サーボモータ33bを駆動し(ステップ5)、Y軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bを高剛性治具Jに突き当てる。すなわち、Y軸スライダ34が高剛性治具Jに密着して第1および第2ボールねじ軸37a,37bと直角になるまでY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bを移動させ(ステップ5,6)、該端部34bの位置ybを取得する(ステップ7、ステップ3〜7が本発明の「補正量演算工程」の「第2位置取得工程」に相当する)。
【0036】
制御装置50は、Y軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bの位置yaと位置ybとの差ya−ybを演算し、該差ya−ybをY軸スライダ34の歪み補正量δとして記憶部58に記憶する(ステップ8、本発明の「補正量演算工程」に相当する)。以上により、ツインドライブ装置の調整が完了する。
【0037】
部品実装装置の据付が完了したら、部品実装装置の稼動前にツインドライブ装置の調整を行う(図3(B)参照)。すなわち、制御装置50は、第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bを駆動し(ステップ11)、Y軸スライダ34を第1および第2ボールねじ軸37a,37bに沿って移動させる。この移動により、Y軸スライダ34には、歪み補正量δの歪みが発生する。この移動途中において、第1および第2リニアエンコーダの検出部48a,48bの原点復帰を行う(ステップ12)。
【0038】
制御装置50は、図6(A)に示すように、Y軸スライダ34の第1ボールナット38a側の端部34aを所定位置ycに達したら(ステップ13)、第1Y軸サーボモータ33aを駆動停止して位置決めする(ステップ14)。そして、図6(B)に示すように、第2Y軸サーボモータ33bを駆動してY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bを歪み補正量δだけ移動させる(ステップ15)。以上の処理によりY軸スライダ34の歪み補正が完了する(本発明の「歪み補正工程」に相当する)。この調整方法によれば、第1および第2ボールねじ軸37a,37bに対するY軸スライダ34の高精度な直角度を確保できるので、部品実装装置における生産品の精度を高め、スループットを向上することができる。
【0039】
次に、部品実装装置の組付け完了後のツインドライブ装置の第2の調整について図3に対応させて示す図7のフローチャートを参照して説明する。なお、図7におけるステップ21〜23が図3におけるステップ1〜4に代わったので、ステップ21〜23を説明し、ステップ6〜8の説明は省略する。制御装置50は、第2Y軸サーボモータ33bを駆動せずにY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bを現在位置に保持させ、記憶部58から読出した駆動電流指令値Si2に従って、第1Y軸サーボモータ33aを駆動してY軸スライダ34の第1ボールナット38a側の端部34aを第1ボールねじ軸37aに沿って移動させる(ステップ21)。
【0040】
これにより、Y軸スライダ34は、図8(A)に示す静止状態から、図8(B)に示すように、第1ボールナット38a側の端部34aが矢印a方向に移動し、第2ボールナット38b側の端部34bが現在位置に固定されるので、スライダ34に歪みが発生する(ステップ21、本発明の「駆動工程」に相当する)。
【0041】
制御装置50は、第1Y軸サーボモータ33aが駆動停止したら、そのときのY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bの位置yaを取得する(ステップ22、本発明の「補正量演算工程」の「第1位置取得工程」に相当する)。そして、第1および第2ボールねじ軸37a,37bに対し直角に配置可能な高剛性治具Jを、Y軸スライダ34の第1ボールナット38a側の端部34aの位置を基準にセットして該端部34aを固定し、第2Y軸サーボモータ33bを駆動してY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bを移動させる(ステップ23)。
【0042】
この第2の調整方法によれば、第1Y軸サーボモータ33aには正確な駆動力を付与することができるので、Y軸スライダ34に装置稼動時の正確な歪みを発生させることができ、高精度なY軸スライダ34の歪み補正量を求めることができる。なお、部品実装装置の据付完了後、部品実装装置の稼動前に行うツインドライブ装置の調整は、上述(図3(B)参照)と同様である。
【0043】
次に、部品実装装置の組付け完了後のツインドライブ装置の第3の調整について図3に対応させて示す図9のフローチャートを参照して説明する。なお、図9におけるステップ31,32が図7におけるステップ21,22に代わったので、ステップ31,32を説明し、ステップ23,6〜8の説明は省略する。制御装置50は、記憶部58から読出した駆動電流指令値Si3に従って、第1Y軸サーボモータ33aを駆動してY軸スライダ34の第1ボールナット38a側の端部34aを第1ボールねじ軸37aに沿って移動させ、記憶部58から読出した駆動電流指令値Si4に従って、第2Y軸サーボモータ33bを第1Y軸サーボモータ33aとは逆方向に駆動してY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bを移動させる(ステップ31)。
【0044】
これにより、Y軸スライダ34は、図10(A)に示す静止状態から、図10(B)に示すように、第1ボールナット38a側の端部34aが矢印a方向に移動し、第2ボールナット38b側の端部34bが矢印b方向に移動するので、スライダ34に歪みが発生する(ステップ31、本発明の「駆動工程」に相当する)。制御装置50は、第1Y軸サーボモータ33aおよび第2Y軸サーボモータ33bが拮抗した位置で駆動停止したら、そのときのY軸スライダ34の第2ボールナット38b側の端部34bの位置yaを取得する(ステップ32、本発明の「補正量演算工程」の「第1位置取得工程」に相当する)。
【0045】
この第3の調整方法によれば、第1および第2Y軸サーボモータ33a,33bには正逆方向の正確な駆動力を付与することができるので、Y軸スライダ34に装置稼動時のより正確な歪みを発生させることができ、さらに高精度なY軸スライダ34の歪み補正量を求めることができる。なお、部品実装装置の据付完了後、部品実装装置の稼動前に行うツインドライブ装置の調整は、上述(図3(B)参照)と同様である。
【0046】
なお、上述の実施の形態においては、ツインドライブ装置を部品実装装置に適用した場合について説明したが、基板製造装置である印刷装置や検査装置等にも適用可能である。また、工作機械においてもツインドライブ装置が適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…基板搬送装置、20…部品供給装置、30…部品移載装置、31…ヘッド移送機構、33a…第1Y軸サーボモータ、33b…第2Y軸サーボモータ、34…Y軸スライダ、37a…第1ボールねじ軸、37b…第2ボールねじ軸、38a…第1ボールナット、38b…第2ボールナット、39…ガイドレール、48a…第1リニアエンコーダの検出部、48b…第2リニアエンコーダの検出部、50…制御装置、54…補正装置、55…駆動部、56…補正量演算部、57…歪み補正部、58…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に並列配置された一対の第1および第2駆動軸と、
両端部が前記第1および第2駆動軸に沿ってそれぞれ移動可能に支持されたスライダと、
前記スライダの両端部の位置をそれぞれ検出する第1および第2位置検出部と、
前記第1および第2位置検出部による位置検出値に応じて、前記スライダの一端側を前記第1駆動軸に沿って駆動制御する第1駆動部と、前記スライダの他端側を前記第2駆動軸に沿って前記第1駆動軸と同期制御して移動する第2駆動部と、を備えたツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法であって、
前記第1および第2駆動軸の間で装置稼動時の推力差を発生させるように前記第1および第2駆動部の少なくとも一方を駆動し、前記スライダに歪みを発生させる駆動工程と、
前記スライダに歪みを発生させた後の該スライダの前記他端側の端部の前記一端側の端部に対する歪み量に基づいて、前記スライダの歪み補正量を求める補正量演算工程と、
前記第1および第2駆動軸の間で前記推力差と同一の推力差を発生させるように前記第1および第2駆動部を駆動し、前記スライダの各端部をそれぞれ原点復帰させ、前記スライダの前記一端側の端部を位置決めしてから前記他端側の端部の位置を前記歪み補正量だけ補正する歪み補正工程と、を備えたツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記駆動工程は、前記第1駆動部を駆動し前記第2駆動部を駆動せずに前記スライダを前記第1および第2駆動軸に沿って移動させて前記スライダに歪みを発生させ、
前記補正量演算工程は、前記スライダの前記一端側の端部の位置が任意の位置に達したときの前記スライダの前記他端側の端部の位置を取得する第1位置取得工程と、前記第1および第2駆動部を駆動し、前記スライダの前記一端側の端部を前記任意の位置に位置決め固定すると共に前記スライダの前記他端側の端部を前記取得した位置に位置決めし、前記スライダが前記第1および第2駆動軸と直角になるまで前記スライダの前記他端側の端部を移動させて該端部の位置を取得する第2位置取得工程とを備え、前記スライダの歪み補正量として前記第1位置取得工程で取得した位置と前記第2位置取得工程で取得した位置との差を求めるツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記駆動工程は、前記第1駆動部を駆動し前記スライダの前記一端側の端部を前記第1駆動軸に沿って移動させ、前記第2駆動部を駆動せずに前記スライダの前記他端側の端部を現在位置に保持させて前記スライダに歪みを発生させ、
前記補正量演算工程は、前記スライダの移動が停止したときの前記スライダの前記他端側の端部の位置を取得する第1位置取得工程と、前記スライダの前記一端側の端部を固定し、前記スライダが前記第1および第2駆動軸と直角になるまで前記スライダの前記他端側の端部を移動させて該端部の位置を取得する第2位置取得工程とを備え、前記スライダの歪み補正量として前記第1位置取得工程で取得した位置と前記第2位置取得工程で取得した位置との差を求めるツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記駆動工程は、前記第1駆動部を駆動し前記スライダの前記一端側の端部を前記第1駆動軸に沿って移動させ、前記第2駆動部を前記第1駆動部とは逆方向に駆動し前記スライダの前記他端側の端部を前記第2駆動軸の他方に沿って移動させて前記スライダに歪みを発生させ、
前記補正量演算工程は、前記スライダの移動が停止したときの前記スライダの前記他端側の端部の位置を取得する第1位置取得工程と、前記スライダの前記一端側の端部を固定し、前記スライダが前記第1および第2駆動軸と直角になるまで前記スライダの前記他端側の端部を移動させて該端部の位置を取得する第2位置取得工程とを備え、前記スライダの歪み補正量として前記第1位置取得工程で取得した位置と前記第2位置取得工程で取得した位置との差を求めるツインドライブ装置のスライダの歪み補正方法。
【請求項5】
平行に並列配置された一対の第1および第2駆動軸と、
両端部が前記第1および第2駆動軸に沿ってそれぞれ移動可能に支持されたスライダと、
前記スライダの両端部の位置をそれぞれ検出する第1および第2位置検出部と、
前記第1および第2位置検出部による位置検出値に応じて、前記スライダの一端側を前記第1駆動軸に沿って駆動制御する第1駆動部と、前記スライダの他端側を前記第2駆動軸に沿って前記第1駆動軸と同期制御して移動する第2駆動部と、
前記スライダの歪みを補正する補正装置と、を備えたツインドライブ装置であって、
前記補正装置は、
前記第1および第2駆動軸の間で装置稼動時の推力差を発生させるように前記第1および第2駆動部の少なくとも一方を駆動し、前記スライダに歪みを発生させる駆動手段と、
前記スライダに歪みを発生させた後の該スライダの前記他端側の端部の前記一端側の端部に対する歪み量に基づいて、前記スライダの歪み補正量を求める補正量演算手段と、
前記第1および第2駆動軸の間で前記推力差と同一の推力差を発生させるように前記第1および第2駆動部を駆動し、前記スライダの各端部をそれぞれ原点復帰させ、前記スライダの前記一端側の端部を位置決めしてから前記他端側の端部の位置を前記歪み補正量だけ補正する歪み補正手段と、を備えたツインドライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115163(P2013−115163A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258522(P2011−258522)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】