説明

テガフールの投与に起因する消化器毒性を軽減する方法

本発明は、テガフールの抗腫瘍効果を増強しかつ消化器毒性を軽減する方法を提供する。該方法は、テガフール、DPD阻害剤およびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を含有する組成物を空腹条件下で患者へ投与することを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、消化器毒性を軽減するための、テガフール[5−フルオロ−1−[(RS)−テトラヒドロフラン−2−イル]ピリミジン−2,4−(1H,3H)−ジオン]の投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
米国特許第5,155,113号は、ある種のピリジン化合物が、5−フルオロウラシルおよび5−FUの誘導体の抗腫瘍効果の増強剤として使用され得ることを教示している。該ピリジン化合物は、生体内における5−FUの濃度を維持させる。不運にも、生体内において5−FUが長時間存在することは、口腔および消化管組織において炎症を引き起こし、そして5−FU単独の持続点滴静注でしばしば経験されるような下痢を誘発する傾向がある。
【0003】
米国特許第5,116,600号は、5−FUまたは5−FU誘導体と組み合わせて使用されるオキソン酸が、5−FUまたは5−FU誘導体によって引き起こされる炎症の発生を抑制し得ることを報告している。しかし、オキソン酸は、5−FUまたは5−FU誘導体の抗腫瘍効果を減少させる。したがって、オキソン酸は、抗腫瘍効果の増強および副作用の緩和の点で満足な結果をもたらしていない。
【0004】
米国特許第5,525,603号は、これは参照により本明細書に組み込まれるが、オキソン酸またはその塩と2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジンもしくは2,4−ジヒドロキシ−5−シアノピリジン等の化合物とを使用することによって、5−フルオロウラシル(以下“5−FU”という)の抗腫瘍効果を増強するための組成物、方法およびキットを記載している。この組合せは、5−FUの投与によって引き起こされる炎症を軽減するが、重篤な下痢、嘔吐および脱水が依然として生じ得る。
【0005】
上述の特許によって示されるように、5−FUおよびその誘導体は、消化器(GI)癌、乳癌、頭頸部癌などを治療するためにしばしば使用されている。しかし、単剤として投与される場合、5−FU療法の奏効率は十分ではない。投与レジメンを変更する試験を含む多数の研究が、5−FU療法の効力および忍容性を改善するために行われてきた。Lokich et al., J. Clin. Oncl., 7, 425-432 (1989)は、5−FUの臨床効果を改善する(即ち、その副作用を軽減させつつその抗腫瘍活性を増加させる)彼らの試みを報告した。彼らは、該薬剤が持続静注(CVI)によって投与される場合、それが従来のボーラス注入によって投与される場合よりも、5−FUに対する奏効率は高く、そして骨髄抑制の発生は低いことを報告した。5−FU療法についてのCVI投与レジメンの有用性は、他の第II相臨床試験において認められた[Quebbeman, E. et al., J. Surg. Oncol., 30,60-65 (1985); Hansen, R. et al., J. Surg. Oncol., 40, 177-181 (1989); Caballero, G. A. et al., Cancer Treat. Rep., 69, 13-15 (1985); Barbounis, V. P. et al., Anticancer Res., 9, 33-39 (1989); Moynihan, T. et al., Am.J. Clin. Oncol.,11 , 461-464 (1988); Huan, S. et al., Cancer, 63, 419-422 (1989); Hansen, R. et al., Am. J. Med. Sci., 295, 91-93 (1988); Hansen, R. et al., Urology, 37, 358-361 (1991)]。日本においては、Yamaoらが、5−FU−CVI療法の有用性を報告した[Yamao, T. et al., Jpn. J. Clin. Oncol., 25, 46-50 (1995)]。
【0006】
これらの結果は、投与後長期間にわたり、高い血清5−FU濃度を維持することは、5−FU療法の臨床効果を決定する主要な因子であることを示唆している。しかし、持続した高い血中5−FU濃度を可能にする5−FUの投与レジメン(例えば、CVI)は、いくつかの問題を伴う。1つの問題は、血中5−FU濃度の日内周期変動である[Petit, E. et al., Cancer Res., 48,1676-1679 (1988); Harris, B. E. et al., Cancer Res., 50, 197-201 (1990); Metzger, G. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 56, 190-201 (1994)]。この問題はジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(以下“DPD”という)に関連し、そしてこの酵素は5−FUに対する腫瘍の感受性の重要な決定因子であると報告された[Fleming, R. A. et al..Cancer Res., 52, 2899-2902 (1992); Fleming, R. A. et al., Eur. J. Cancer, 29A, 740-744 (1993); Etienne, M. C. et al., J. Clin. Oncol., 12, 2248-2253 (1994); Beck, A. et al., Eur. J. Cancer, 30A, 1517-1522 (1994); Peters, G. J. et al., Eur. J. Cancer, 30A, 1408-1411 (1994); Lu, Z., et al., Cancer Res., 53, 5433-5438 (1993); Etienne, M. C. et al., J. Clin. Oncol., 13, 1663-1670 (1995)]。第二の問題は、持続した高い血中5−FU濃度によって誘発される消化器毒性(下痢、悪心、嘔吐、口内炎など)の発生である。
【0007】
5−FUの副作用を予防または軽減するための試みがなされてきた。1979年、Schwartz et al., Cancer Res., 39, 3095-3101 (1979)は、アロプリノール(高尿酸血症を治療するために使用される薬物)が5−FUを変化させ、そしてそうすることで、その毒性作用を抑制することを報告した。それ以来、臨床試験は、5−FUとアロプリノールのようなモジュレータとを組み合わせることによって、5−FUの抗腫瘍活性を増強しかつその毒性を軽減させる可能性を評価してきた[Fox, R. M. et al., Cancer Treat. Rev., 6, 143-147 (1979); Kroener, J. F. et al., Cancer Treat. Rep., 66, 1133-1137 (1982); Howell, S. B. et al., Cancer, 48, 1281-1289 (1981); Woolley, P. V. et al., J. Clin. Oncol., 3,103-109 (1985); Ahmann, F. R. et al., Oncology, 43, 83-85 (1986)]。しかし、これらの臨床試験において、5−FUとアロプリノールとを組み合わせることは、5−FU関連毒性の抑制または奏効率(即ち、抗腫瘍活性)の増加を生じさせなかった。5−FU誘発口内炎を予防することにおけるアロプリノールうがいの効果もまた、臨床試験されたが、このような効果の十分な証拠は得られなかった[Clark, P. I. et al., . Eur. J. Surg. Oncol., 11 , 267-268 (1985); Vliet, W. et al., Clin. Pharm., 8, 655-658 (1989); Loprinzi, C. L et al., Cancer, 65, 1879-1882 (1990)]。
【0008】
5−FUをより効果的かつ忍容可能にするという目的に取り組むことにおいて重要であると考えられる2つの重要な因子が存在する:1)DPD活性の阻害、その結果、高い生体内5−FU濃度が長期間維持され得る;および2)有害事象(adverse events)を最小限にするための、正常組織における5−FU代謝の制御。
【0009】
これらの目的を達成するために、血中で維持されるエフェクターを選択すること、および同時に少なくとも2つの効果的なモジュレータを使用することが、必須と考えられた。エフェクターおよび2つのモジュレータが別々に投与される場合、これらの目的を達成することは困難であり、そして5−FUの毒性が、軽減されるどころかむしろ増加され得る。したがって、エフェクターおよび2つのモジュレータは同時に投与されるべきであり、その結果、これら3つの薬物の組合せの安全性が保証される。テガフール(FT)、即ち、5−FUのプロドラッグは、経口投与される場合、長時間血中に維持され、そして生体内で肝臓P−450の存在下において5−FUへ徐々に変換される。これを考慮すると、CVIによって達成される濃度に近い、5−FUのより高い血中濃度が、5−FU自体の経口または静脈内投与によってよりもテガフールの経口投与によって得られると予想された。しかし、実際には、テガフールの経口投与後の血中5−FU濃度は、DPDによる生分解に起因して、予想よりも低かった。テガフールと強力なDPD阻害剤とを組み合わせることは、比較的低いテガフール用量で、長時間、高い血中5−FU濃度を達成させて、抗腫瘍活性の増強を生じさせる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の開示
本発明は、テガフールの抗腫瘍効果を増強しかつこのような治療の必要がある患者における消化器毒性を軽減する方法であって、治療的に有効な量のテガフール、該抗腫瘍効果を増強するために有効な量のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤、および消化器毒性を抑制するために有効な量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を、空腹条件下で、該患者へ同時に投与することを包含する方法に関する。好ましくは、組成物の投与は、空腹条件下で1日2回であり、そしてジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤は、2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジンである。組成物の2回の投与は、好ましくは6〜12時間隔てられ、そして空腹条件は、食事の少なくとも1時間前または1時間後で生じる。より好ましくは、空腹条件は、食事の少なくとも1時間前で生じる。2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジンおよびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩は、0.4:1のモル比で使用され得、好ましくは、テガフール、2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、およびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩は、(テガフール):(2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン):(オキソン酸またはその薬学的に許容される塩)=1:0.4:1のモル比で使用され、そして薬学的に許容される塩は、オキソン酸カリウムである。
【0011】
本発明に従う方法において、テガフールは、好ましくは、20mg/m〜45mg/mの用量で1日2回投与される。追加の化学療法剤がテガフールと共に投与され得る。このような化学療法剤としては、シスプラチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、メトトレキサート、マイトマイシン、ゲムシタビン、カルボプラチン、ゲフィチニブ、ペメトレキセド、アバスチン、セツキシマブおよびパクリタキセルが挙げられるが、これらに限定されない。このような化学療法剤は、使用される場合、癌の進行度、癌の前治療、特定の癌タイプに対する薬物の抗癌活性、患者の遺伝子発現、患者の年齢、性別、症状の重症度および副作用等に応じて投与される。例えば、化学療法剤シスプラチンは、好ましくは、1日当たり50〜80mg/mの用量で静脈内投与される。
【0012】
本発明はまた、哺乳動物における癌を治療するために使用され得、該癌は5−フルオロウラシル療法に感受性があり、該方法は、治療的に有効な量のテガフール、テガフールの抗腫瘍効果を増強するために有効な量の2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、および消化器毒性を抑制するために有効な量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を、空腹条件下で、該哺乳動物へ同時に投与することを包含する。好ましくは、組成物の投与は、空腹条件下で1日2回であり、そしてより好ましくは6〜12時間隔てられ、ここで、空腹条件は、食事の少なくとも1時間前または1時間後で生じ、最も好ましくは食事の1時間前で生じる。(テガフール):(2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン):(オキソン酸)のモル比は、好ましくは1:0.4:1であり、そしてテガフールは、好ましくは、20mg/m〜45mg/mの用量で1日2回投与される。
【0013】
本発明はまた、テガフールの投与によって引き起こされる炎症および消化器毒性を抑制する方法であって、このような治療の必要な患者へ、該テガフールと同時に、消化器毒性を抑制するために有効な量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を投与することを包含し、ここで、テガフールおよびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩が空腹条件下で投与される方法に関する。好ましくは、組成物の投与は、1日2回であり、そしてジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤が、テガフールの抗腫瘍効果を増強するために有効な量で同時に投与される。
【0014】
本発明はまた、テガフールでの治療を受ける患者の消化管におけるオキソン酸の分解を減少させる方法であって、空腹条件下で、該患者へ、該テガフールと同時にオキソン酸を投与することを包含し、好ましくは1日2回である。空腹条件は食事の少なくとも1時間前または1時間後であり得る。ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤が、テガフールの抗腫瘍効果を増強するために有効な量で同時に投与され得る。ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤は、好ましくは、2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジンである。
【0015】
本発明はまた、哺乳動物における癌を治療するためのキットであって、好ましくは1日2回の投与に好適な投与量の、テガフール、2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、オキソン酸またはその薬学的に許容される塩、ならびに追加の抗腫瘍剤を含むキットに関する。追加の抗腫瘍剤は、シスプラチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、メトトレキサート、マイトマイシン、ゲムシタビン、カルボプラチン、ゲフィチニブ、ペメトレキセド、アバスチン、セツキシマブおよびパクリタキセルからなる群から選択される。
【0016】
本発明はまた、哺乳動物における癌を治療するためのキットであって、好ましくは1日2回の投与に好適な投与量の、テガフール、2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、オキソン酸またはその薬学的に許容される塩、ならびに必要に応じて、シスプラチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、メトトレキサート、マイトマイシン、ゲムシタビン、カルボプラチン、ゲフィチニブ、ペメトレキセド、アバスチン、セツキシマブおよびパクリタキセルからなる群から選択される追加の抗腫瘍剤を含み、該キットは、さらに、該テガフール、該2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、および該オキソン酸またはその薬学的に許容される塩が空腹条件下で投与されるべきであることを該患者に注意する、その上に印刷された画像、それに貼付されたラベル、その中に封入された添付文書等の形態の表示を備えるキットに関する。
【0017】
同様に、本発明はまた、テガフールの抗腫瘍効果を増強しかつこのような治療の必要がある患者における消化器毒性を軽減するための薬学的組成物であって、(A)治療的に有効な量のテガフール、(B)該抗腫瘍効果を増強するために有効な量のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤、および(C)消化器毒性を抑制するために有効な量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩、ならびに必要に応じて、シスプラチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、メトトレキサート、マイトマイシン、ゲムシタビン、カルボプラチン、ゲフィチニブ、ペメトレキセド、アバスチン、セツキシマブおよびパクリタキセルからなる群から選択される追加の抗腫瘍剤を含み、該薬学的組成物が、パッケージに収容されており、該パッケージが、該薬学的組成物は空腹条件下で投与されるべきであることを該患者に注意する、その上に印刷された画像、それに貼付されたラベル、その中に封入された添付文書等の形態の表示を備える、薬学的組成物に関する。投与のタイミングおよび他の詳細は、上記に記載したもの、および下記に説明されるものである。
【0018】
発明の説明
本発明は、前記活性成分のバイオアベイラビリティーに対して食物のいかなる望まれない効果をも回避するために、空腹条件下で前記抗腫瘍組成物を投与することによって、治療的に有効な量のテガフールを含有する抗腫瘍組成物の抗腫瘍効果を増強させかつ前記抗腫瘍組成物の消化器系副作用を抑制する方法を提供する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態においては、S−1、即ち、2種類のモジュレータ:5−クロロ−2,4−ジヒドロキシピリジン(CDHP)およびオキソン酸カリウム(Oxo)と組み合わせて、テガフール[5−フルオロ−1−[(RS)−テトラヒドロフラン−2−イル]ピリミジン−2,4−(1H,3H)−ジオン](FT)を含有する、経口フッ化ピリミジン系抗癌剤が、抗腫瘍効果を維持しつつ消化器毒性を軽減させるために、主として1日2回、空腹条件下で投与される。S−1(米国特許第5,525,603号に記載されている)は、5−FUの臨床的利点を強化しそしてその欠点(即ち、消化器毒性)を改善するために開発され、そしてS−1が既に承認された日本におけるのと同一の方法で米国および欧州において食後に投与することによって試験されたが、不運なことに、非空腹条件下で1日2回投与した場合、脱水を生じさせ得る重篤な下痢を依然として引き起こした。
【0020】
S−1の製剤において3つの薬物(FT、CDHP、およびOxo)を組み合わせる目的は、消化器毒性を軽減しそして忍容性を改善することによって、高い臨床効果を達成することであった。S−1の3成分の各々の寄与を、下記に概説する:
−FTは、優れた経口バイオアベイラビリティーを有する5−FUのプロドラッグである。それは、生体内で5−FUへ徐々に変換される。
【0021】
−CDHPは、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)という酵素を可逆的に阻害することによって、5−FUの異化代謝を阻害する。CDHPは、ウラシルより180倍強力である。CDHPは、長時間5−FUの有効な血中および腫瘍中濃度を維持することを助け、このようにして5−FUの持続静注と類似の治療効果を潜在的に達成する。
【0022】
−Oxoは、消化管におけるオロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)による5−FUのリン酸化を阻害する。Oxoは、経口投与後、消化管組織に高濃度での分布により、5−FUが誘発する消化管障害に対して毒性軽減作用を示す。Oxoは酸不安定性であり、したがってそのバイオアベイラビリティーは食物摂取によって影響される。
【0023】
テガフール(FT)は、それ自体細胞毒性でない5−FUへ変換される。5−FUは、細胞内で代謝されなければならず、FdUMP(2’−デオキシ−5−フルオロウリジン−5’−モノホスフェート)を介してTS(チミレートシンターゼ)を阻害することで、その抗腫瘍効果を発揮する。投与された5−FUの90%は、酵素DPDによって主に肝臓において不活性代謝物へと迅速に異化代謝される。前臨床データは、5−FU細胞毒性は、CDHPを使用してDPDを阻害することによって顕著に増加され得ることを示している。臨床データもまた、S−1の血漿5−FU濃度は、CDHPの活性に起因して、5−FUの持続静注によって得られる血漿5−FU濃度に匹敵することを示している[Yamada Y. et al., Br. J. Cancer, 2003 Sep 1 ;89(5):816-20]。DPD活性は、癌治療における化学療法の適切な適用における鍵である。2,592の臨床的に除去した腫瘍(1112:結腸癌、724:胃癌、520:乳癌および236:非小細胞肺癌)からのデータを検討するポピュレーション研究[Fukushima M, et al., Int. J. MoI. Med, 2003; 12:839-844]に基づいて、胃癌を有する患者の61%、および結腸・直腸癌を有する患者の40%は、比較的高いDPD活性を示す腫瘍を有すると分類された。5−FUは高DPD活性によって迅速に代謝されるので、従来の5−FUまたはその誘導体は、低DPD活性を有する患者においてよりも高DPD活性を有する患者においてより有効でないと仮説が立てられる。S−1は、CDHP(S−1の1成分)がDPD阻害剤であるという特性に起因して、低DPD活性を有する患者においてだけでなく、高DPD活性を有する患者においても同様に、胃癌患者の治療に有効であると期待される。
【0024】
DPD阻害剤無しでは、投与された5−FUの90%が、主に肝臓においてDPDによって迅速に異化代謝され、そしてF−β−アラニン(FBAL)として尿中に排泄される。FBALは、5−FU投与と関連する神経毒性および心臓毒性の原因と指摘されてきた。DPD阻害剤研究の重要な知見は、手足症候群(HFS)の低い発生率である[Milano, et al., Eur. J. Cancer., 36, 37-42 (2000)]。
【0025】
したがって、本発明は、哺乳動物における5−フルオロウラシル治療に感受性がある癌を治療する方法であって、治療的に有効な量のテガフール、抗腫瘍効果増強有効量のDPD阻害剤、および副作用抑制有効量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を含有する組成物を哺乳動物へ同時に投与することを包含し、ここで該組成物が空腹条件下で主として1日2回投与される方法を提供する。本願明細書において使用される用語“空腹条件”は、食事の少なくとも1時間前および1時間後を意味することを意図する。
【0026】
換言すると、本発明は、特に、治療が必要である患者におけるテガフール治療に感受性がある癌を治療する方法において、治療的に有効な量のテガフール、DPD阻害剤、およびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を該患者に投与することを包含する方法を提供し、改善点は、主として1日2回、空腹条件下で該組成物を投与することを包含することである。
【0027】
本発明で使用に適したテガフールは、公知の化合物であり、そして例えば米国特許第5,525,603号および日本国特許公報第10510/1974号において開示されるような従来の方法によって製造され得る。
【0028】
DPD阻害剤は、公知であり、そして従来の方法によって容易に製造され得る。好ましいDPD阻害剤としては、2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、および2,4−ジヒドロキシ−5−シアノピリジンが挙げられる。
【0029】
オキソン酸自体は公知の化合物である。その有用な薬学的に許容される塩としては、酸付加塩および塩基性化合物塩が挙げられる。酸付加塩を形成し得る有用な酸は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸などの無機酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、安息香酸などの有機酸である。薬学的に許容される塩基性化合物塩を形成し得る有用な塩基性化合物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムなどである。オキソン酸のエステル誘導体のような、生体内でオキソン酸を生成し得る物質は、オキソン酸として有用である。
【0030】
S−1と食物との同時投与は、S−1成分のいくつかの薬物動態に影響を与えることが判った(例えば、テガフールおよびCDHPの吸収量ではなく、吸収速度が影響を受けた)。S−1の毒性は、5−FUの曲線下面積(AUC、血液循環の状態である薬物総量の指標)に関連し[Van Groeningen C.J., Peters G.J., Schornagel J.H., Gall H., Noordhuis P., De Vries M., Turner S.L, Swart M.S., Pinedo H. M., Hanauske A.R. and Giaccone G. Phase I clinical and pharmacokinetic study of oral S-1 in patients with advanced solid tumors. J. Clin. Oncol., 18: 2772-2779, 2000]、そして5−FUのバイオアベイラビリティーは、FDA信頼区間内であるので、S−1の安全性は食物によって影響を受けそうにない。食物はCDHPのAUCに影響を与えなかった。同様に、ウラシルの蓄積、DPD阻害の間接的結果が、僅かにだけ影響を受けた。しかし、特に消化管粘膜における5−FUのその活性代謝産物FUMP(5−フルオロウリジン−5’−モノホスフェート)へのホスホリボシル化を阻害するために添加されるオキソン酸は、食物とS−1との同時投与においてより大きな分解を示した。これは、それが消化管粘膜においてより低い程度の蓄積で、その保護効果を減少させることを示している。
【0031】
経口フルオロピリミジン製剤での以前の研究は、食物が与えられた場合の吸収時間帯での増加を報告した。Cmax、TmaxおよびAUC−INFに焦点を合わせる非コンパートメント法が、これら[Shepard D. R., Mani S., Kastrissios H., Learned-Coughlin S., Smith D., Magnum P.E.S.M., Janisch L, Fleming G. F., Schilsky R.L and Ratain MJ. Estimation of the effect of food on the disposition of oral 5-fluorouracil in combination with eniluracil. Cancer Chemother. Pharmacol., 49: 398-402, 2002; Reigner B., Verweij J., Dirix L, Cassidy J., Twelves C, Allman D., Weidekamm E., Roos B., Banken L., Utoh M. and Osterwalder B. Effect of food on the pharmacokinetics of capecitabine and its metabolites following oral administration in cancer patients. Clin. Cancer Res., 4: 941-948, 1998]および研究[Godefridus J. Peters, Paul Noordhuis, Cornells J. van Groeningen, Giuseppe Giaccone, Ulbe Holwerda, Daphne Voom, Ad Schrijvers, Jan H. Schomagel, Jos H. Beijnen, Pierre Fumoleau, and Jan H. M. Schellens The Effect of food on the pharmacokinetics of S-1 after single oral administration on patients with solid tumors. Clinical Cancer Research 10: 4072-4076, 2004, published on June 15, 2004]において使用された。カペシタビン[Reigner B., Verweij J., Dirix L, Cassidy J., Twelves C, Allman D., Weidekamm E., Roos B., Banken L, Utoh M. and Osterwalder B. Effect of food on the pharmacokinetics of capecitabine and its metabolites following oral administration in cancer patients. Clin. Cancer Res., 4: 941-948, 1998]について、そのプロドラッグ自体およびその第一代謝産物は、摂食患者と空腹患者との間で明確な差異を示したが、しかし5−FUは僅かに影響を受けただけであった。エニルウラシル(EU)−5−FU製剤においては、恐らく5−FU自体が投与されたために、食物は5−FU吸収を減少させた[Shepard D. R., Mani S., Kastrissios H., Learned-Coughlin S., Smith D., Magnum P.E.S.M., Janisch L, Fleming G. F., Schilsky R.L and Ratain M.J. Estimation of the effect of food on the disposition of oral 5-fluorouracil in combination with eniluracil. Cancer Chemother. Pharmacol., 49: 398-402, 2002]。DPDの不可逆的自殺不活性化は、5−FUのいかなる分解をも阻害する;5−FUの主要な排出経路。EU無しで、5−FUの排出Kmは、DPDについての5−FUのKmに等しく[Collins J.M., Dedrick R.L, King F.G., Speyer J.L and Myers CE. Non-linear pharmacokinetic models for 5-fluorouracil in man. Clin. Pharmacol. Therap., 28: 235-246, 1980]、しかしEU有りでは、このKmは算出されず、そして排出はもはやMichaelis−Mentenキネティクスに従わず、リニアコンポーネントを残す。可逆的DPD阻害剤を含有するS−1を用いる場合、5−FUの排出は依然として二相性であり、分解は、食物状態とは無関係に、依然として5−FUの排出に寄与することを意味している。
【0032】
他のS−1成分のバイオアベイラビリティーは、以前には記載されていない。CDHPは代謝されないので、その排出は尿中排泄による[Peters G.J., Noordhuis P., Van Kuilenburg A.B.P., Schornagel J. H., Gall H., Turner S.L, Swart M.S., Voorn D., Van Gennip A.H., Wanders J., Holwerda U., Smid K., Giaccone G., Fumoleau P. and Van Groeningen C.J. Pharmacokinetics of S-1, an oral formulation of tegafur, oxonic acid and 5- chloro-2,4-dihydroxypyridine (molar ratio 1 :0.4:1) in patients with solid tumors. Cancer Chemother. Pharmacol., 38: 1-12, 2003; Hirata K., Horikoshi N., Okazaki M., Denno R., Sasaki K., Nakano Y., Ishizuka H., Yamada Y., Uno S., Taguchi T., and Shirasaka T. Pharmacokinetic study of S-1 , a novel oral fluorouracil anti- tumor drug. Clin. Cancer Res. 5: 2000-2005, 1999]。実験的腎不全モデルにおいて、腎障害の程度と一致して、CDHPの血漿クリアランスが遅延した[Ikeda M., Furukawa H., lmamura H., Shimizu J., lshida H., Masutani S., Tatsuta M., Kawasaki T. and Satomi T. Pharmacokinetic study of S-1 , a novel oral fluorouracil antitumor agent in animal model and in patients with impaired renal function. Cancer Chemother. Pharmacol. 50: 25-32, 2002]。また、腎機能不全を有する患者において、CDHPクリアランスは延長され、5−FUのt 1/2の遅延とより高いAUCを導く[Ikeda M., Furukawa H., lmamura H., Shimizu J., lshida H., Masutani S., Tatsuta M., Kawasaki T. and Satomi T. Pharmacokinetic study of S-1 , a novel oral fluorouracil antitumor agent in animal model and in patients with impaired renal function. Cancer Chemother. Pharmacol. 50: 25-32, 2002]、これは、恐らく、長期の暴露を受けて持続されたDPD阻害に起因する。
【0033】
該製剤が登録されておりそして他の経口製剤と類似の効果で臨床使用されている日本とは対照的に、欧州および米国の試験においては、下痢が、用量制限毒性である。下痢は投与の最終期間において通常発現しているため、米国および欧州における現行の臨床試験は、2週間スケジュールのような別のスケジュールを使用することによって下痢を減少させることに焦点を合わせている。S−1の消化器系副作用は、欧州人と比較して[Van den Brande J., Schoffski P., Schellens J.H., Roth AD, Duffaud F., Weigang-Kohler K., Reinke F., Wanders J., De Boer R.F., Vermorken J.B. and Fumoleau P. EORTC Early Clinical Studies Group early phase Il trial of S-1 in patients with advanced or metastatic colorectal cancer. Br. J. Cancer, 88: 648-53, 2003; Van Groeningen C.J., Peters G.J., Schornagel J.H., Gall H., Noordhuis P., De Vries M., Turner S.L, Swart M.S., Pinedo H. M., Hanauske A.R. and Giaccone G. Phase I clinical and pharmacokinetic study of oral S-1 in patients with advanced solid tumors. J. Clin. Oncol., 18: 2772-2779, 2000]、日本人患者ではあまりない[Hirata K., Horikoshi N., Okazaki M., Denno R., Sasaki K., Nakano Y., Ishizuka H., Yamada Y., Uno S., Taguchi T., and Shirasaka T. Pharmacokinetic study of S-1 , a novel oral fluorouracil anti-tumor drug. Clin. Cancer Res. 5: 2000-2005, 1999; Ohtsu A., Baba H. and Sakata Y. Phase Il study of S-1 , a novel oral fluoropyrimidine derivative, in patients with metastatic colorectal carcinoma. S-1 cooperative Colorectal Carcinoma Study Group. Br. J. Cancer, 83: 141-145, 2000]。これは、潜在的な人種的および文化的差異(例えば、消費する食物の種類、分解酵素の異なる発現、異なるGI吸収等)に起因するかもしれない。したがって、本発明は、S−1の消化器系副作用を軽減させることを意図し、そして、下痢のようなS−1の消化器系副作用に苦しむ患者に特に有用であり、そして主として白人人種の患者に有益である。
【0034】
食物は、オキソン酸のバイオアベイラビリティーに著しい影響を与え、シアヌル酸の濃度の迅速な増加へ導く。このことは、5−FUの消化器系副作用に対するその予期される保護を減少させるかもしれない。何故ならば、オキソン酸は毒性代謝物への5−FU代謝を妨げるために、特異的に正常消化管細胞に蓄積するからである[Shirasaka T., Shimamoto Y. and Fukushima M. Inhibition by oxonic acid of gastrointestinal toxicity of 5-fluorouracil without loss of its antitumor activity in rats. Cancer Res., 53: 4004-4009, 1993]。比較的大量の食事と共に投与される場合、保護は制限されるかもしれない。
【0035】
本発明の抗腫瘍効果増強方法は、テガフール、DPD阻害剤、およびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を単一製剤(即ち、抗腫瘍組成物)へ製剤化しそして該組成物を投与することによって、あるいは個々の前記化合物を同時に投与することによって、行われ得る。組み合わされた製剤または個々の化合物は、食事の少なくとも1時間そして好ましくは1〜2時間前または後に、空腹条件下で、主として1日2回、投与される。
【0036】
薬学的組成物は、パッケージ中に収容されていてもよく、該パッケージは、投与のタイミング(即ち、薬学的組成物は、空腹条件下で投与されるべきである)および必要に応じて上述のレジメンに関連する他の情報を示す、その上に印刷された画像、それに貼付されたラベル、その中に封入された添付文書等の形態の表示を含む。
【0037】
シスプラチン、ドセタキセル、パクリタキセル、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、メトトレキサート、マイトマイシン、ゲムシタビン、カルボプラチン、ゲフィチニブ、ペメトレキセド、アバスチン、およびセツキシマブからなる群から選択される追加の抗腫瘍剤を、本発明において、テガフールと共に投与することができる。S−1は、日本において、進行胃癌について、シスプラチンとの組合せで試験された。試験の目的は、固定用量のS−1と組み合わせて投与される場合のシスプラチンのMTD(最大耐量)を明らかにするためであった。実際に採用されたS−1用量は、後期第II相試験と同様であり(平均36.0mg/m、範囲31.8〜39.6mg/m)、そして1日2回、21日間投薬、14日間休薬で投与された。シスプラチンを、60mg/m、または70mg/mの用量で、サイクルの第8日目に注射した。そのサイクルは35日毎で繰り返した。70mg/m用量で、1人の患者はグレード4の好中球減少症を発症し、そして別の患者はグレード4の食欲不振を発症した(6患者中で)。第II相部分のための推奨用量は、第一用量の60mg/mであると決定された。目的のレスポンスは、25患者のうち19患者において見られ、76%の奏効率をもたらすと評価された。該試験のPK(薬物動態)部分は、シスプラチンとS−1との相互作用は存在しないことを示している。
【0038】
このような抗腫瘍剤は、テガフール、DPD阻害剤、およびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を受ける患者へ投与されるが、これらの薬剤は、テガフールと異なる時期に投与されてもよい(即ち、常には同時でない)。
【0039】
テガフールの抗腫瘍効果を増強しそして消化器毒性を軽減するために、DPD阻害剤1モル当たり、約0.1〜約10モル、好ましくは約0.5〜約5モルのオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を使用することが好ましい。特に良好な結果は、テガフール1モル当たり、約0.1〜約5モル、好ましくは約0.1〜約1.5モルのDPD阻害剤、および約0.1〜約5モル、好ましくは約0.2〜約2モルのオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を投与することによって得られ得る。3つの活性成分は、投与される任意の単位投薬形態の製剤を提供するために、薬学的に許容される担体と混合され得る。
【0040】
前述の薬学的組成物は、適当な薬学的に許容される担体を使用して、通常の方法により、非注射剤形態に調製される。有用な担体としては、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等の希釈剤および賦形剤等の、通常の薬学的組成物の製造において広く使用されるものである。好ましい投与経路は、経口である。
【0041】
それが非注射剤形態である限り、人間を含む哺乳動物の悪性腫瘍の治療における、抗腫瘍効果増強組成物(即ち、テガフールの抗癌組成物を増強するための組成物であって、CDHPのようなDPD阻害剤を含む組成物)または本発明の抗腫瘍組成物について採用され得る単位投薬形態に対して特別な制限はない。したがって、任意の所望の投薬形態が、治療目的にしたがって選択され得る。その例は、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口投薬形態、および坐剤、軟膏剤、硬膏剤等の非経口投薬形態である。これらの投薬形態は、当該分野において知られた慣用的な製剤方法によって製造され得る。
【0042】
錠剤の形態に成形するための担体としては、乳糖、ショ糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤;単シロップ、プドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、トラガカントゴム末等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤;ショ糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;および精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等の種々のものが使用される。さらに錠剤は、必要に応じて、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フイルムコーティング錠、または二重錠もしくは多層錠等の、剤皮を施した錠剤の形態であり得る。
【0043】
坐剤の形態に成形するための担体としては、ポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
カプセル剤は、前記抗腫瘍組成物を上述の各種担体と混合し、そして該混合物を硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等のカプセルに封入することによって製造される。
【0045】
ペースト、クリームおよびゲルの形態に調製する際には、例えば白色ワセリン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト等の希釈剤が使用される。
【0046】
必要に応じて、上記製剤は、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤や他の薬剤等を含有してもよい。
【0047】
本発明で使用される有効成分である、テガフール、DPD阻害剤、およびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩の量は、剤型、投与経路、投与スケジュール等に依存し、そして特に限定されず適宜選択され得る。しかし、通常剤型中の有効成分の総量は、約1〜約70重量%の範囲であり得る。
【0048】
本発明において、各有効成分の投与量は、投与方法、患者の年齢、性別およびその他の条件、疾患の程度等に従って選択され得る。経口投与の場合、成人に対する標準的な投与量は、通常、テガフールについて、約0.1〜約100mg/kg/日、好ましくは約1〜約30mg/kg/日、DPD阻害剤について、約0.1〜約100mg/kg/日、好ましくは約1〜約50mg/kg/日、そしてオキソン酸またはその薬学的に許容される塩について、約0.1〜約100mg/kg/日、好ましくは約1〜約40mg/kg/日である。本発明の組成物は、空腹条件下で、6〜12時間の間隔をあけて、主として1日2回投与される。坐剤の場合、成人に対して、約1〜100mg/kg/日の量のテガフールが、6〜12時間の間隔をあけて、1日2回、直腸に投与される。
【0049】
S−1(即ち、テガフール、CDHPおよびOxoを含む組成物で、テガフール:CDHP:Oxoのモル比が1:0.4:1)の経口投与の場合、テガフールは、好ましくは、20mg/m〜45mg/mの用量で1日2回投与される。
【0050】
患者に対する用量は、通常、患者の身長および体重から算出される体表面積(BSA)に基づいて決定される。体表面積の計算は、患者の人種、性別、健康状態、症状等に応じて通常の適切な方法を使用して、例えば下記の項(1)〜(6)の以下の計算式を使用して、好ましくは項(2)(b)または項(6)の計算式を使用して行われる。例えば、下記項(6)の計算式は、アジア人患者、特に日本人患者のBSAを算出するために使用され得、そして下記項(2)(b)の計算式は、白人人種の患者のBSAを算出するために使用され得る。
(1)Mosteller式(N. Engl. J. Med. 1987 Oct 22; 317 (17): 1098 (letter) を参照のこと)
BSA(m)=([身長(cm)×体重(kg)]/3600)1/2
(2)DuBoisおよびDuBois式(Arch. Int. Med. 1916 17: 863-71; J. Clin. Anesth. 1992; 4 (1): 4-10 を参照のこと)
(a)BSA(m)=0.20247×身長(m)0.725×体重(kg)0.425
(b)BSA(m)=0.007184×身長(cm)0.725×体重(kg)0.425
(3)Haycock式(The Journal of Pediatrics 1978 93: 1 : 62-66を参照のこと)
BSA(m)=0.024265×身長(cm)0.3964×体重(kg)0.5378
(4)GehanおよびGeorge式(Cancer Chemother. Rep. 1970 54: 225-35を参照のこと)
BSA(m)=0.0235×身長(cm)0.42246×体重(kg)0.51456
(5)Boyd式(Minneapolis: University of Minnesota Press, 1935を参照のこと)
BSA(m)=0.0003207×身長(cm)0.3×体重(g)(0.7285−(0.0188×LOG(g))
(6)藤本式(Nippon Eiseigaku Zasshi 1968;5:443-50を参照のこと)
BSA(m)=88.83×身長(cm)0.663×体重(kg)0.444
【0051】
例えば、身長175cmおよび体重70kgの癌患者の体表面積を上記項(2)(b)の式によって算出する場合、該面積は、[0.007184×175(cm)0.725×70(kg)0.425=1.85(m)]と決定される。
【0052】
S−1の経口投与の場合、成人に対する標準的な投与量は、通常、テガフールについて、約40〜約300mg/日、好ましくは約50〜約200mg/日、CDHPについて、約10〜約90mg/日、好ましくは約14〜約60mg/日、そしてOxoについて、約38〜約293mg/日、好ましくは約48〜約195mg/日である。
【0053】
本発明の抗腫瘍組成物の投与経路は、それが非注射経路である限り、特に限定されず、例えば、経腸投与、経口投与、直腸投与、口腔内投与、経皮投与等であり得、そして製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、患者の症状の重症度等に従って選択され得る。しかし、経口投与が好ましい。
【0054】
テガフール、DPD阻害剤、およびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩は、キットの形態で提供され得る。前記成分は別個の容器に含まれ得、あるいは、前記成分の全てまたは一部は適切な製剤で組合され得る。別個の成分としてあるいは製剤として提供されるかどうかに関わらず、前記成分は、主として1日2回の投与に適切な投薬単位である。キットは、さらに、投与のタイミング(即ち、薬学的組成物は、空腹条件下で投与されるべきである)および必要に応じて上述のレジメンに関連する他の情報を示す、その上に印刷された画像、それに貼付されたラベル、その中に封入された添付文書等の形態の表示を含み得る。
【0055】
上記の追加の抗腫瘍剤もまた、前記キットに含めることができる。このような抗腫瘍剤は、テガフール、DPD阻害剤、およびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を投与されている患者へ投与されるが、これらの薬剤は、テガフールと異なる時期に投与されてもよい(即ち、常には同時でない)。
【0056】
前臨床試験において、S−1は、5−FU等の他の従来のフッ化ピリミジン系抗癌剤よりも低用量で、腫瘍増殖抑制活性を示した。カニクイザルおよびビーグル犬における5−FU誘発下痢モデルにおいて、S−1は、特定の時点で投与した場合、下痢の発生に対する顕著な抑制作用を示した。前臨床試験の結果に基づいて、S−1は、数種の悪性固形腫瘍の治療に有用であると予想される。S−1は、現在、日本において、胃癌、食道癌、結腸・直腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、頭頸部癌、膵癌、胆道癌、腎細胞癌および前立腺癌の治療について試験されている。S−1はまた、肝癌、胆嚢−胆管癌、膀胱癌、子宮頸癌(uterine, cervix)等の治療に有効であると予想される。
【0057】
S−1は、1999年1月、日本において、胃癌の治療のための使用について承認され、頭頸部癌については2001年4月、結腸・直腸癌については2003年12月、そして非小細胞肺癌については2004年12月に承認された。S−1は、日本のデータに基づいて、胃癌および頭頸部癌の治療について2003年7月に、そして結腸・直腸癌について2004年9月に、韓国で承認された。
【0058】
本発明を例えば以下の実施例でより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を例示するが本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0059】
実施例
(1)S−1の食後、1日2回、経口投与
第I相試験を、IND #53,765下で米国で行った。これは35日試験であった(28日治療期間、7日休薬期間)。S−1を、総計16患者に、連続28日間、食後、1日2回、経口投与した。用量は、30mg/m、35mg/m、および40mg/mであった。3患者を、用量を増加する前に各用量で試験するものとし、そして追加の10患者を、S−1の効果を完全に規定するために最大用量で治療するものとした。
【0060】
S−1の抗腫瘍効果を、腫瘍サイズの縮小を測定することによって決定した。部分寛解(有効)が、結腸・直腸癌1患者においてみられた。14患者(87.5%)は試験を中止し、多数(11患者;68.8%)は疾患進行に起因した。1患者(6.3%)は、有害事象(AE)に起因して中止し、そして2患者(12.5%)は、容認できない毒性に起因して中止した。2患者(12.5%)は、S−1の最終投与の30日以内に死亡し、そしてS−1療法と関連している可能性は低いと考えられた。試験の間、8患者(50%)は、重篤な有害事象(SAE)を経験した。S−1に関連すると考えられた重篤な有害事象は、下痢、脱水、および嘔吐を含んでいた。S−1のMTDは、30mg/mであると決定された。1コース目の用量制限毒性(DLT)は以下を含んでいた:下痢、脱水、腹痛、ビリルビン血症、および予定された化学療法の75%を患者が受け入れることができないこと。毒性は、ほとんど全ての場合において、S−1療法を中断または中止することによって可逆性であった。MTDで、多数の患者(7/9;77.8%)は、1コース目に、最大毒性グレード2以下のAEを経験し、S−1は30mg/mのMTDで十分に忍容されることを示していた。
【0061】
(2)用量制限毒性の決定
S−1の日本での試験結果に基づいて、試験した第一用量は、欧州での、第I相試験において、食事後、1日2回、25mg/mであった。この用量で治療した6患者において、用量制限毒性は発生しなかった。次いで、5患者を45mg/mで治療した。主要な用量制限毒性として重篤な下痢を伴って、この用量が、MTDであると決定された。別の6患者を35mg/mの用量で治療し、重篤な毒性は観察されなかった。40mg/m、試験した最終用量での6患者において、重篤な下痢が再度観察された(主に、広範な前化学療法を受けた患者において)。広範な前化学療法を受けていない患者においてこの用量の安全性を評価するために、広範な前治療されていない別の5患者を含めた。
【0062】
<結果>
1日2回、25mg/mのS−1での治療は、軽度の毒性を示した。1日2回、45mg/mで、下痢(1患者においてグレード3、2患者においてグレード4)がDLTであった。他の重篤な毒性は、グレード4の嘔吐(1患者)、グレード3の食欲不振(2患者)、グレード3の疲労/倦怠感(2患者)およびグレード3の白血球減少症/好中球減少症(1患者)であった。1日2回、35mg/mでは、重篤な毒性は観察されなかった。40mg/mで、下痢が、広範な前化学療法を受けた患者についてDLTであった:化学療法で重い前処置した3患者のうち、1患者はグレード3の、そして1患者はグレード4の下痢を有した。広範な前化学療法を受けなかった8患者においては、グレード4の下痢の1症例およびグレード3の倦怠感の1症例が報告された。したがって、1日2回45mg/mが、広範な前化学療法処置無しの患者についてのMTD(DLTとして下痢)であった。前化学療法がない、または5−FUアジュバント化学療法のみを受けた、結腸・直腸癌および胃癌患者における今後のECSG/NDDO第II相試験のための推奨用量は、S−1の1日2回40mg/mである。化学療法でより重い前処置を受けた患者に対するMTDは、1日2回の40mg/mであり(DLTとして下痢)、このカテゴリーの患者の治療に対して、推奨用量は、S−1の1日2回の35mg/mである。
【0063】
(3)食物効果PK試験
PKパラメータに対する食物の影響を、S−1の35mg/mの用量で試験した。17患者を登録させ、そしてクロスオーバー法で朝食後および朝食前の両方にS−1を投与した。患者の診断は、結腸・直腸癌(7例)、乳癌(3例)、胃癌(3例)およびその他(4例)であった。結果は、Oxoは、空腹条件においてより安定であることを示唆した(CA、即ち、シアヌル酸は、Oxoの不活性代謝物である)。このデータに基づいて、進行中の米国試験において、S−1を食事の少なくとも1時間前に投与する。
【0064】
<患者および方法>
総計17患者が、インフォームドコンセント後、この薬物動態試験に参加した。全ての患者は、試験の2集団に対し無作為化され、そして35mg/mでS−1を摂取した。系列Aでは、患者は、第0日目に朝食後に、第7日目に朝食無しで、S−1を摂取した。系列Bでは、患者は、第0日目に朝食無しで、第7日目に朝食後に、S−1を摂取した。血液を24時間サンプリングした。サンプルを、S−1摂取の前ならびに30分後、1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、10時間後および24時間後に採取した。血液サンプルを、9mlのヘパリン化チューブに静脈穿刺により採取し、そして即座の処置のために氷上に移した。
【0065】
血液サンプルを、4℃で5分間、4000rpmで遠心分離した。血漿を、2mlの2つのエッペンドルフバイアルに移し、そして−20℃で保存した。
【0066】
テガフールおよびシアヌル酸に対する分析を、検証済みHPLCアッセイにより行い、一方、他の化合物の分析を、以前に記載されたような検証済みガスクロマトグラフィー質量分析法により誘導化後に行った[Peters G.J., Noordhuis P., Van Kuilenburg A.B.P., Schornagel J.H., Gall H., Turner S.L, Swart M.S., Voorn D., Van Gennip A.H., Wanders J., Holwerda U., Smid K., Giaccone G., Fumoleau P. and Van Groeningen C.J. Pharmacokinetics of S-1, an oral formulation of tegafur, oxonic acid and 5-chloro-2,4-dihydroxypyridine (molar ratio 1 :0.4:1) in patients with solid tumors. Cancer Chemother. Pharmacol., 38: 1-12, 2003.]。
【0067】
<薬物動態学的評価>
テガフール、5FU、オキソン酸、シアヌル酸、およびCDHPについての薬物動態パラメータを、コンピュータプログラムWinNonLin(ver.1.5)で計算した。データを、非コンパートメントモデリング(non-compartment modeling)を使用して分析した。確立され得るパラメータは、次の通りであった:血漿中の最大観察濃度の時点(Tmax)、Tmaxに対応する血漿中の濃度(Cmax)、最終半減期(t1/2)、血漿中濃度時間(C−t)曲線下面積(AUCall)。
【0068】
(4)結果
<テガフールの薬物動態>
母化合物、テガフールは、朝食無しで、より早くそのTmaxに到達した(表1)。Cmaxは、摂食群よりも空腹群においてより高かった。いずれの群においても、t1/2およびAUCallについて有意な差異は無かった。
【0069】
<5−FUの薬物動態>
5−FUのTmaxは、朝食無しで、より早く到達した。いずれの群においても、t1/2、CmaxおよびAUCallについて有意な差異は無かった。
【0070】
<CDHPの薬物動態>
CDHPのTmaxもまた、朝食無しで、より早く到達した。いずれの群においても、t1/2、CmaxおよびAUCallについて有意な差異は無かった。
【0071】
<オキソン酸(Oxo)の薬物動態>
オキソン酸のTmaxは、朝食無しで有意により早く到達した。対応するCmaxは、朝食無しで有意により高かった。t1/2は、各群において有意な差異はなかった。OxoのAUCallは、摂食群よりも空腹群において高かった。
【0072】
<シアヌル酸(CA)の薬物動態>
シアヌル酸は、朝食無しで、より早いTmaxを示した。対応するCmaxは、いずれの群においても有意な差異はなかった。また、t 1/2は、いずれの群においても有意な差異はなかった。シアヌル酸のAUCallは、空腹群と比較して摂食群においてより高い値を示した。
【0073】
【表1】

【0074】
患者を、空腹または摂食条件において、35mg/mで治療した。表1に要約する結果は、食事前に投与した場合、CDHP(DPD阻害剤)のより高い吸収に起因して、各S−1成分のより良好な吸収および増加した5−FU濃度を示す。
【0075】
結果はまた、Oxoは空腹条件下でより安定であることを示唆している(CAは、Oxoの不活性代謝物である)。したがって、空腹条件下で、Oxoは、5−FU誘発消化管障害に対して、毒性軽減作用を満足に示すと予想される。
【0076】
このデータに基づいて、S−1は、空腹条件下で投与される場合、優れた好結果をもたらす。
【0077】
産業上の利用可能性
本発明によれば、食後投与の治療スケジュールと比較して、軽減された消化器毒性および下痢、より低い下痢の発生率に起因するより長期間の治療等の優れた利点が、(A)治療的に有効な量のテガフール、(B)該抗腫瘍効果を増強するために有効な量のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤、および(C)消化器毒性を抑制するために有効な量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を、空腹条件下で、患者へ同時に投与することによって達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テガフールの抗腫瘍効果を増強しかつこのような治療を必要とする患者における消化器毒性を軽減する方法であって、(A)治療的に有効な量のテガフール、(B)該抗腫瘍効果を増強するために有効な量のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤、および(C)消化器毒性を抑制するために有効な量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を、空腹条件下で、該患者へ同時に投与することを包含する、方法。
【請求項2】
前記組成物の投与が空腹条件下で1日2回である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤が、2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物の2回の投与が6〜12時間隔てられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記空腹条件が食事の少なくとも1時間前または1時間後で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記空腹条件が食事の少なくとも1時間前で生じる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン(B)および前記オキソン酸またはその薬学的に許容される塩(C)が、(B):(C)=0.4:1のモル比で使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記薬学的に許容される塩がオキソン酸カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記テガフール、前記2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、および前記オキソン酸またはその薬学的に許容される塩が、(テガフール):(2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン):(オキソン酸またはその薬学的に許容される塩)=1:0.4:1のモル比で使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記テガフールが、20mg/m〜45mg/mの用量で1日2回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
シスプラチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、メトトレキサート、マイトマイシン、ゲムシタビン、カルボプラチン、ゲフィチニブ、ペメトレキセド、アバスチン、セツキシマブおよびパクリタキセルからなる群から選択される化学療法剤をさらに投与することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化学療法剤が、静脈内投与されるシスプラチンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シスプラチンが、1日当たり50〜80mg/mの用量で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、該癌が5−フルオロウラシル療法に感受性があり、該方法が、治療的に有効な量のテガフール、テガフールの抗腫瘍効果を増強するために有効な量の2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、および消化器毒性を抑制するために有効な量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を、空腹条件下で、該哺乳動物へ同時に投与することを包含する、方法。
【請求項15】
前記投与が空腹条件下で1日2回である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記2回の投与が6〜12時間隔てられる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
(テガフール):(2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン):(オキソン酸またはその薬学的に許容される塩)のモル比が、好ましくは1:0.4:1である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記テガフールが、20mg/m〜45mg/mの用量で1日2回投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記空腹条件が食事の少なくとも1時間前または1時間後で生じる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記空腹条件が食事の1時間前で生じる、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
テガフールの投与によって引き起こされる炎症および消化器毒性を抑制する方法であって、このような治療を必要とする患者へ、該テガフールと同時に、消化器毒性を抑制するために有効な量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩を投与することを包含し、ここで、該テガフールおよびオキソン酸またはその薬学的に許容される塩が空腹条件下で投与される、方法。
【請求項22】
前記組成物の投与が空腹条件下で1日2回である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらにテガフールの抗腫瘍効果を増強するために有効な量のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤を同時に投与することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
テガフールでの治療を受ける患者の消化管におけるオキソン酸の分解を減少させる方法であって、空腹条件下で、該患者へ、該テガフールと同時にオキソン酸を投与することを包含する、方法。
【請求項25】
オキソン酸と同時のテガフールの前記投与が、空腹条件下で1日2回である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらにテガフールの抗腫瘍効果を増強するために有効な量のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤を同時に投与することを包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤が、2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジンである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記空腹条件が食事の少なくとも1時間前または1時間後で生じる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物における癌を治療するためのキットであって、1日2回の投与に好適な投与量の、テガフール、2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、オキソン酸またはその薬学的に許容される塩を含み、そして必要に応じて、シスプラチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、メトトレキサート、マイトマイシン、ゲムシタビン、カルボプラチン、ゲフィチニブ、ペメトレキセド、アバスチン、セツキシマブおよびパクリタキセルからなる群から選択される抗腫瘍剤を含み、該キットは、さらに、該テガフール、該2,4−ジヒドロキシ−5−クロロピリジン、および該オキソン酸またはその薬学的に許容される塩が空腹条件下で投与されるべきであることを注意する表示を備える、キット。
【請求項30】
テガフールの抗腫瘍効果を増強しかつこのような治療を必要とする患者における消化器毒性を軽減するための薬学的組成物であって、(A)治療的に有効な量のテガフール、(B)該抗腫瘍効果を増強するために有効な量のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ阻害剤、および(C)消化器毒性を抑制するために有効な量のオキソン酸またはその薬学的に許容される塩、ならびに必要に応じて、シスプラチン、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、メトトレキサート、マイトマイシン、ゲムシタビン、カルボプラチン、ゲフィチニブ、ペメトレキセド、アバスチン、セツキシマブおよびパクリタキセルからなる群から選択される追加の抗腫瘍剤を含み、該薬学的組成物は空腹条件下で投与されるべきであることを該患者に注意する表示を備えるパッケージに収容されている、薬学的組成物。

【公表番号】特表2007−534634(P2007−534634A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539166(P2006−539166)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【国際出願番号】PCT/JP2005/008450
【国際公開番号】WO2005/105086
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000207827)大鵬薬品工業株式会社 (52)
【Fターム(参考)】