説明

ディジタル・アナログ変換回路

【課題】設計変更やユーザの好みに応じて液晶の光学的特性を適切に補正し、かつ小型化、低コスト化、広いデザインポータビリティを達成することのできるディジタル・アナログ変換回路を提供する。
【解決手段】ディジタル・アナログ変換回路は、所望の電圧特性カーブデータを記憶する記憶手段(120)と、選択データに応じて前記記憶手段に記憶された電圧特性カーブデータに応じた周波数信号を発生させる変調手段(110)と、第1の電源と第2の電源間に接続された可変抵抗手段であって、前記変調手段からの周波数信号により抵抗値が変化する可変抵抗手段(131,132)と、前記可変抵抗手段に発生する電圧を保持する保持手段(151−153,161−163)と、前記選択データに応じて前記電圧出力(150)を所望の出力先に出力する出力手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディジタル・アナログ変換回路に関するもので、特に液晶の光学的特性を補正するガンマカーブに応じた駆動電圧を発生させることのできる、ディジタル・アナログ変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は電圧を変化させることにより駆動されるが、駆動電圧と光学特性の関係は一般に非線形であり、この非線形の関係を補正するためにガンマ電圧として液晶に供給される。
【0003】
このようなガンマ電圧は、低温ポリシリコン(LTPS)液晶ディスプレイにおいては、特許文献1に示されるように、従来はガラスに作り込まれた複数の直列抵抗とここに接続された複数の中間タップから構成される。
【0004】
このようにして形成された構成から入力データに対応するガンマ電圧を取り出すことができ、このガンマ電圧は液晶の特性によって決定された電圧カーブをなす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電圧カーブは、露光マスクを用いて作り込まれた固定の直列抵抗の値で決定され、後に変更することはできない。
【0006】
したがって、液晶の材質を変えたときには特性は変化するが、このような場合には直列抵抗の値を変えるように露光マスクを作り直さなければならない。
【0007】
さらに、液晶の光学特性自体についても、ユーザの好みによって要求する画質特性も変化するが、従来はそのような要求に応えることができない。また応えるためには異なる特性ごとにガンマ電圧発生器が必要となり、小型化や低コスト化の障害となる。また、一つの設計で種々の製品に対応できるデザインポータビリティが悪く、複数の製品についての共通デザイン化が困難で、結局コスト増につながることになる。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、設計変更やユーザの好みに応じて液晶の光学的特性を適切に補正し、かつ小型化、低コスト化、広いデザインポータビリティを達成することのできるディジタル・アナログ変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
所望の電圧特性カーブデータを記憶する記憶手段と、
選択データに応じて前記記憶手段に記憶された電圧特性カーブデータに応じた周波数信号を発生させる変調手段と、
第1の電源と第2の電源間に接続された可変抵抗手段であって、前記変調手段からの周波数信号により抵抗値が変化する可変抵抗手段と、
前記可変抵抗手段に発生する電圧を保持する保持手段と、
前記選択データに応じて前記電圧出力を所望の出力先に出力する出力手段とを備えたディジタル・アナログ変換回路が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、あらかじめ記憶された特性に応じたガンマ電圧値を変調周波数によって任意に決定することができるため、設計変更やユーザの好みに応じて液晶の光学的特性を適切に補正することができる。
【0011】
また、様々なガンマ電圧要求に対してガラス板上の回路の変更の必要がないため、小型化、低コスト化、広いデザインポータビリティを達成することのできる
さらに、単一のガンマ電圧発生回路で、RGB独立駆動やACコモン駆動なども実現でき、高い汎用性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明にかかるその実施例のいくつかを説明する。
【0013】
本発明を詳細に説明する前に、従来の構成について説明する。
【0014】
図1は典型的な液晶表示装置1の構成を示すもので、画素に対応する液晶セル3がマトリクス状に配設されて表示部をなす液晶セルアレイ2を構成しており、この液晶セルアレイを駆動するためのゲート線駆動回路7、ソース線駆動回路8を有している。
【0015】
液晶セル3はゲートがゲート線GLに接続され、ソースがソース線SLに接続された薄膜トランジスタ4のトレインと接地間にキャパシタとして表される液晶表示素子5およびこれに並列に接続された蓄積容量6が接続された構成となっている。
【0016】
また、ゲート線駆動回路は各行の液晶セルの各薄膜トランジスタに共通接続されたゲート線GLを行ごとに順次活性化する。さらにソース線駆動回路は各列の液晶セルの各薄膜トランジスタのソースに共通接続されたソース線SLに電圧信号を供給するものである。
【0017】
図2は、本発明の適用が予定される従来の液晶表示装置の主要部をなすLCDモジュール10を示しており、このLCDモジュール10は液晶セルがマトリクス状に配設されたセルアレイ20(図1の参照番号2で示されるものに対応)を有し、このセルアレイ20と複数のゲート線GL、および複数のソース線SL、これらの交差部に設けられた薄膜トランジスタ、液晶素子の関係は図1に示した通りである。
【0018】
ゲート線GLにはゲート線駆動回路(図示せず)よりアナログのゲート電圧が順次ゲート線に供給され、各ソース線SLの一端側(図2では上側)にディジタル・アナログ変換器DACが設けられ、このディジタル・アナログ変換器DACには、後述するガンマ電圧発生器50からの電圧信号と外部からのデジタルデータをラッチするデータラッチ40からの信号がそれぞれ入力されるようになっている。
【0019】
ガンマ電圧発生器50は電源電圧Vddと接地電圧Vssをいずれか一方を相補的に接続する切換回路51および52の間に(n+1)個の抵抗R0〜RNが直列接続され、中間タップである各抵抗の接続点から、抵抗分割されたn個のガンマ電圧値が取り出されるようになっている。このガンマ電圧値はバスの形で前述したDACに供給され、データラッチからの選択データに応じてDACでディジタル・アナログ変換され、ソース線に供給される。2つの切換回路51および52を反対側に切り換えることにより、抵抗列に印加される電圧は極性が反転し、液晶の駆動極性を反転させることができる。
【0020】
ここで、従来のガンマ電圧発生器50は複数の直列抵抗とここに接続された複数の中間タップから構成されるために、前述したように、得られるガンマ電圧は固定的なものであった。
【実施例1】
【0021】
図3は本発明にかかるディジタル・アナログ変換回路の基本的な構成を示すブロック図であり、図2における液晶素子に印加される電圧を供給する構成の大部分を置き換えるものである。
【0022】
制御部100で発生された制御信号CTRLが供給されるモジュレータ110は、その制御信号CTRLの値に応じて所望のガンマ曲線のガンマ値を記憶したガンマルックアップテーブル(LUT)120を参照し、2つの周波数信号faとfbを出力する。これらの周波数信号faとfbは、電源Vccと接地間に直列に接続されたそれぞれ容量CpaとCpbを有する2つのスイッチトキャパシタ131および132に与えられてこれらを制御する。
【0023】
ここで、スイッチトキャパシタの動作について説明する。図4はスイッチトキャパシタ130の基本動作を説明するブロック図であって、図3に示した構成の一部を取り出したものである。一端が接地されたキャパシタCpaの他端を電源電圧Vccおよび定電流Icを発生する電流源に置き換え、周波数faでスイッチング接続するスイッチを設けたものであり、この周波数faは制御信号CTRLにより変調を行うモジュレータにより与えられる。
【0024】
そして電流源と、電流源側のスイッチの接続点から出力電圧Voutが取り出されるが、その値は、
Vout = Vcc − Ic/(fa*Cpa)
で表され、モジュレータから出力される周波数faを変えることにより、出力電圧を変化させることができる。
【0025】
なお、低電流源の代わりに固定抵抗でも同じ動作を得ることができる。
図3の構成ではそれぞれ異なる周波数で駆動される2つのスイッチトキャパシタを直列接続したものであり、その接続中点に出力電圧Vsが現れ、次のような値となる。
Vs = Vcc・Cpa・fa/ (Cpa・fa+Cpb・fb)
【0026】
この電圧はモジュレータから出力される周波数比fa/fbが変化する周期と同じタイミングにより順次1つずつ閉じるスイッチSW1〜SWnを経てそれぞれスイッチの出力側と接地間に設けられたキャパシタおよびバッファよりなるサンプルホールド回路を介してソース電圧Vo0〜Vo(n−1)としてディジタル・アナログ変換器に与えられる。なお、スイッチとサンプルホールド回路はソース線に対応して設けられており、ディジタル・アナログ変換器DACではどのガンマ値を選択するかを示すデジタルデータDataにより所望のガンマ値に応じたソース電圧が選択され、このソース電圧がソース線に与えられる。
【0027】
図5は変調周波数の変化とそれにより得られるガンマ重み付け出力電圧の関係を示すグラフであり、ガンマルックアップテーブルを参照してモジュレータにより変調された周波数出力faは実線で、周波数出力fbは波線で示されている。ここで、ガンマ曲線を64の値で表すものとすると、nの値を0から63まで変化させると、ルックアップテーブルを参照してガンマ曲線に応じて変調周波数faおよびfbの組み合わせが得られ、前述したVsの式によりガンマ重み付けられた出力電圧Vo0〜Vo(n−1)が得られることを示している。
【0028】
図6はデータの値と、これにより参照されるルックアップテーブル120の値に応じてモジュレータから出力される2つの周波数の比fa/fbとの関係をガンマ値=1.8の場合を例にとって説明するグラフである。図5に示されるように、nの数が増加するにしたがって、faは減少、fbは増加するため、周波数比fa/fbはn=0のときの値9が当初は急激に減少し、その後減少の程度が緩慢となって0の値に漸近するような曲線となる。
【0029】
図7は、データが変化したときの図3における出力電圧Vsの変化を示すグラフである。この出力電圧のうちソース線ごとに指定されたデータnに対応したものが各ソース線に供給されることになる。
【実施例2】
【0030】
図8は、3つの色についてそれぞれガンマ重み付け出力電圧を得る、本発明の第2の実施例の構成を示すブロック図であり、図9はその動作を示すグラフである。
【0031】
この実施例では図3に示した構成を3つ設け、これらを選択するためのスイッチSWR、SWG、SWBを設けて、図9に示すように時分割で順次選択するようにしたものである。
【0032】
図3におけるSW1ないしSWnとキャパシタは、サンプルホールド回路151〜153として表してあり、データに対応して色ごとに求められた電圧出力はそれぞれバッファ161〜163を経てDAC140に供給される。
【0033】
1つの色についての動作は図3の場合と全く同じであり、1つの画素についてみれば、3色のそれぞれについて適切なガンマ重み付け出力電圧がソース線に供給されることになる。
【実施例3】
【0034】
図10は、本発明の第3の実施例の構成を示すブロック図であり、残像現象をなくすためにフレーム毎に極性を反転させるような表示方法に好適なものである。
【0035】
この構成では図3に示した構成と比較して2つのスイッチトキャパシタの代わりに2つのチャージポンプ171,172、これらのチャージポンプ171,172に与えられる電源電圧をVssとVcc間で切り換える切換器200を有し、極性が切り換えられたときに得られるチャージポンプからの出力をそれぞれ選択して出力するためのスイッチSWpおよびSWn、サンプルホールド回路181、182、バッファ191、192を有している。
【0036】
図11は図10に示した第3の実施例における動作を示すグラフである。最初の期間では切換器4でVccが選択されており、図5に示したのと全く同じ減少動作が行われ、ガンマ重み付け出力電圧が得られ、スイッチSWpが閉じられてサンプルホールド回路181およびバッファ191を経て出力される。
【0037】
次の期間では、切換器4でVssが選択されるため、極性が反転し、モジュレータ110から出力されるガンマ重み付け出力電圧は負側電圧からnの値が変化するに伴って上昇するものとなる。
【0038】
この出力電圧は、スイッチSWn、サンプルホールド回路181およびバッファ191を経て出力される。
【0039】
以上説明した実施例は例示したものにすぎず、種々の変形が可能である。
【0040】
たとえば、透過モードと反射モードについての最適なガンマ電圧を取り出すことが可能である。
【0041】
以上、液晶表示装置に用いることを前提としたディジタル・アナログ変換回路について説明したが、本発明はこのようなディジタル・アナログ変換回路をソース線駆動回路の一部として含む液晶表示装置にも適用されるものである。
【0042】
また、このような液晶表示装置は図12に示すような携帯型電話装置50のディスプレイ装置1として好適であるが、携帯型電話装置に限られることなく、ディジタルカメラ、個人用情報端末装置(PDA)、ノート型コンピュータ、デスクトップコンビュータ、テレビ受像器、車載ディスプレイ、ポータブルDVDプレーヤのいずかのような電子装置に適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】一般的な液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の適用が予定される従来の液晶表示装置の主要部をなすLCDモジュールを示すブロック図である。
【図3】本発明にかかるディジタル・アナログ変換回路の基本的な構成を示すブロック図である。
【図4】スイッチトキャパシタの基本動作を説明するブロック図である。
【図5】変調周波数の変化とそれにより得られるガンマ重み付け出力電圧の関係を示すグラフ
【図6】データの値と、これにより参照されるルックアップテーブルの値に応じてモジュレータから出力される2つの周波数の比fa/fbとの関係を示すグラフである。
【図7】データが変化したときの図3における出力電圧Vsの変化を示すグラフである。
【図8】3つの色についてそれぞれガンマ重み付け出力電圧を得る、本発明の第2の実施例の構成を示すブロック図である。
【図9】第の実施例の動作を示すグラフである。
【図10】本発明の第3の実施例の構成を示すブロック図である。
【図11】第3の実施例における動作を示すグラフである。
【図12】本発明にかかるディジタル・アナログ変換回路を含む液晶表示装置を適用した携帯型電話装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
10 LCDモジュール
20 セルアレイ
100 制御部
110 モジュレータ
120 ルックアップテーブル
130,131,132 スイッチトキャパシタ
140 ディジタル・アナログ変換器
151,152,153 サンプル・ホールド回路
161,162,163 バッファ
171、172 チャージ・ポンプ
181,182 サンプル・ホールド回路
191,192 バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の電圧特性カーブデータを記憶する記憶手段と、
選択データに応じて前記記憶手段に記憶された電圧特性カーブデータに応じた周波数信号を発生させる変調手段と、
第1の電源と第2の電源間に接続された可変抵抗手段であって、前記変調手段からの周波数信号により抵抗値が変化する可変抵抗手段と、
前記可変抵抗手段に発生する電圧を保持する保持手段と、
前記選択データに応じて前記電圧出力を所望の出力先に出力する出力手段とを備えたディジタル・アナログ変換回路。
【請求項2】
前記可変抵抗手段は、2つのスイッチトキャパシタであり、これらの2つのスイッチトキャパシタの接続中点から電圧が取り出されることを特徴とする請求項1に記載のディジタル・アナログ変換回路。
【請求項3】
前記スイッチトキャパシタの一つが電流源に置き換えられたものである、請求項2に記載のディジタル・アナログ変換回路。
【請求項4】
前記変調手段は、前記2つのスイッチトキャパシタに対して、選択データに応じて周波数比が変化する2つの周波数信号を与えるものである、請求項2に記載のディジタル・アナログ変換回路。
【請求項5】
前記可変抵抗手段は、1つのスイッチトキャパシタと1つの固定抵抗が直列接続されたものであり、これらの接続点から電圧が取り出されることを特徴とする請求項1に記載のディジタル・アナログ変換回路。
【請求項6】
前記保持手段はサンプル・ホールド回路である、請求項1に記載のディジタル・アナログ変換回路。
【請求項7】
前記サンプル・ホールド回路はバッファを伴うものである、請求項6に記載のディジタル・アナログ変換回路。
【請求項8】
前記保持手段は取り出される出力電圧の数だけ設けられ、同数設けられたスイッチを時分割でオンすることにより前記可変抵抗手段に接続されるものである、請求項1に記載のディジタル・アナログ変換回路。
【請求項9】
前記可変抵抗手段に対して前記第1および第2の電源を逆に接続する切り換え手段をさらに備え、前記切り換え手段の切り換え信号により一方が選択される2つのスイッチにより2系統の保持手段を切り換えるように構成された、請求項1に記載のディジタル・アナログ変換回路。
【請求項10】
前記可変抵抗手段から取り出される電圧は、3つの色について設けられた3系統の保持手段に時分割で選択される3つのスイッチを介して供給されるように構成された、請求項1に記載のディジタル・アナログ変換回路。
【請求項11】
複数のゲート線と、複数のソース線と、これらの各交点において前記ゲート線にゲートが、前記ソース線にソースが接続された薄膜トランジスタのドレインに前記液晶素子が接続された液晶表示素子アレイと、
前記ゲート線を駆動するゲート線駆動装置と、
前記ソース線を駆動するソース線駆動装置を備え、前記ソース線駆動装置は請求項1ないし10のいずれかに記載のディジタル・アナログ変換回路を含むことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶表示装置を備え、携帯型電話装置、ディジタルカメラ、個人用情報端末装置(PDA)、ノート型コンピュータ、デスクトップコンビュータ、テレビ受像器、車載ディスプレイ、ポータブルDVDプレーヤのいずかである電子装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−44675(P2009−44675A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210168(P2007−210168)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(507100557)統▲宝▼光電股▲分▼有限公司 (23)
【氏名又は名称原語表記】TPO DISPLAYS CORPORATION
【Fターム(参考)】