説明

ディジタル放送受信装置および番組の切り替え方法

【課題】 番組の切替えの際に音飛びまたは音切れを防止する「ディジタル放送受信装置および番組の切替え方法」を提供する。
【解決手段】 ディジタル放送受信装置100は、ワンセグメント放送とフルセグメント放送を受信可能であり、ディジタル放送を受信する第1および第2のチューナ104、105、受信したトランスポートデータの誤り率を検出する誤り訂正部109、音声信号と映像信号を再生するデコーダ111〜114、受信感度が悪化していると判定したときワンセグメント放送を選択し、受信感度が良好であると判定したときフルセグメント放送を選択するように番組の切替えを行う制御部122、音声切替処理部116、映像切替処理部117等を含んで構成される。音声切替処理部116は、ワンセグメント放送からフルセグメント放送への切替えの際にフルセグメント放送の音声信号を一定時間通常よりも高速で出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルテレビ放送を受信する機能を備えたディジタル放送受信装置に関し、特に、主階層放送番組(例えば、フルセグメントを利用した固定受信向けサービスの番組)と副階層放送番組(例えば、ワンセグメントを利用した移動体/携帯向けサービスの番組)との切り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上ディジタル放送は、1チャンネルの伝送帯域を13のセグメントに分割し、セグメント単位で異なる変調方式を採用することで、固定受信機向けの放送サービス(いわゆるフルセグメント放送)と、移動体/携帯端末向けの放送サービス(いわゆるワンセグメント)放送とを同時に送信することを可能にしている。
【0003】
図1は、地上ディジタル放送のセグメント構造を示す図である。直交周波数分割多重方式(以下、OFDMと称す)は、周波数軸上に狭帯域の搬送波を複数並べ、各搬送波にデータを振り分けて伝送するものであり、移動受信時に一部の搬送波の波形が乱れても、その周波数を使用して伝送するデータに誤りが発生するだけで、他の搬送波からのデータにより補正が可能であり、マルチパス干渉に強い。日本の地上ディジタル放送では、OFDMのスペクトルラムを周波数毎に13のセグメントに分割し、例えば第1から第6セグメントおよび第8から第13のセグメントがフルセグメント放送に割り当てられ、これらのセグメントは、64直交振幅変調(64QAM)により変調され、第7セグメントがワンセグメント放送に割り当てられ、QPSK等により変調される。
【0004】
QAMとは、多数の振幅偏移変調を直交位相変調することで、位相変化と振幅変化を組み合わせた変調方式であり、1シンボル当たりの情報量を多くすることができるため、伝送効率が良いという利点があるが、高いCN比(Carrier to Noise ratio)が必要となる。したがって、QAM変調を用いたフルセグメント放送は、良好な電波状態でなければ、その番組を視聴することができない。
【0005】
他方、位相偏移変調(PSK)は、一定周波数の搬送波の位相を変化させることで変調するものであり、位相の種類を増やすことにより、変調1回当たりの送信するビットを増やすことができる。特に、QPSKとは、1回の変調で2ビットを伝送するものである。QPKSは、QAMと比較して伝送できる情報量は少ないが、電波状態が悪くCN比が低い場合でも、情報を伝達でき、ノイズ耐性が高いという利点がある。
【0006】
車載用の地上ディジタル受信装置では、受信エリアを広げるため、フルセグメント放送とワンセグメント放送の双方を自動的に切り替える階層間受信を行っている。つまり、自車の走行位置や受信環境によって電波状態が異なるため、受信状態が比較的良好な地域では、ノイズ耐性の低いフルセグメント放送を受信しこれを高品位にて出力し、受信状態が悪い地域では、ノイズ耐性の高いワンセグメント放送を受信しこれを出力している。
【0007】
特許文献1は、ディジタル放送受信機に関し、ワンセグメント放送とフルセグメント放送それぞれの放送時間のずれ量を検出し、そのずれ量に相当する期間だけ繰り返す部分の音声を消去する技術に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−5255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図2は、従来の地上ディジタル放送受信装置におけるワンセグメント放送とフルセグメント放送の番組の切替え動作を説明する図である。時間期間T1、T2、T3は、ディジタル放送の受信感度が悪化している状態「×」を示し、時間期間T4、T5、T6は、受信感度が良好である状態「○」を示している。地上ディジタル放送受信装置は、受信感度が良好のときフルセグメント放送を出力し、受信感度が悪化すると、ワンセグメント放送を出力するような切替え制御を行っている。従って、時間期間T1、T2、T3では、ワンセグメント放送が選択され、時間期間T4以降にフルセグメント放送に切替えられる。
【0010】
ディジタル放送受信装置の設計上、受信したディジタル放送のトランスポート(TS)データをデコードして再生を始めるまでの時間は、データ処理の関係上、フルセグメント放送の方がワンセグメント放送よりも早くなる。すなわち、図2に示すように、フルセグメント放送のTSデータ「1」は期間T1で再生されるが、ワンセグメント放送のTSデータ「1」は、期間T2で再生される。以後、フルセグメント放送とワンセグメント放送の再生時間の差を再生時間差Dという。従って、受信感度が悪化している時間期間T1、T2、T3で再生されたワンセグメント放送の音声信号は、再生時間差Dのために時間期間T2、T3、T4でそれぞれ音声出力される。時間期間T4において受信感度が良好に遷移すると、フルセグメント放送に切替えられるが、時間期間T4では、再生時間差Dのためにワンセグメント放送のTSデータ3が音声出力される。そして、時間期間T5において、フルセグメント放送のTSデータ「5」が再生され、これが音声出力されるため、TSデータ「4」の音飛びが発生してしまう。フルセグメント放送とワンセグメント放送の番組が同一であるとき、視聴者にとって、映像データのコマが飛ぶことは動画であるが故に気にならないが、音飛びまたは音切れは気がつきやすく違和感を与えやすい。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決し、番組の切替えにおいて音飛びまたは音切れを防止することができるディジタル放送受信装置および番組の切替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るディジタル放送受信装置は、1つの伝送帯域を複数のセグメントに分割し、少なくとも1つのセグメントを利用した第1の変調方式による第1の番組と、前記少なくとも1つのセグメントと異なるセグメントを利用した第2の変調方式による第2の番組を1つのチャンネルに含むディジタル放送を受信可能であって、ディジタル放送を受信する受信手段と、受信したディジタル放送の受信感度を検出する感度検出手段と、受信したディジタル放送から音声信号と映像信号を再生する再生手段と、前記感度検出手段により検出された受信感度が悪化していると判定したとき第1の番組を選択し、受信感度が良好であると判定したとき第2の番組を選択するように番組の切替えを行う切替え手段と、前記再生手段により再生された音声信号を出力する音声出力手段と、前記再生手段により再生された映像信号を出力する映像出力手段とを有し、前記音声出力手段は、前記切替え手段により第1の番組から第2の番組への切替えが行われるとき、第2の番組の音声信号を一定時間通常よりも高速で出力する。
【0013】
好ましくは前記音声出力手段は、少なくとも第2の番組の音声信号を記憶するメモリを含み、第1の番組の音声信号が出力された後、前記メモリに記憶された第2の番組の音声信号を一定時間高速で読出して音声出力する。好ましくは前記音声出力手段は、前記再生手段による第1の番組の音声信号の再生時間と第2の番組の音声信号の再生時間差に基づき前記一定時間を決定する。第1の番組は、ワンセグメント放送による番組であり、第2の番組はフルセグメント放送による番組である。前記メモリは、クロック信号に同期してデータの読み書きが可能であり、前記音声出力手段は、前記一定時間、前記クロック信号の周波数を可変することにより第2の番組の音声信号を通常よりも高速で読み出すようにしてもよい。
【0014】
本発明に係るディジタル放送受信装置の番組の切替え方法は、1つの伝送帯域を複数のセグメントに分割し、少なくとも1つのセグメントを利用した第1の変調方式による第1の番組と、前記少なくとも1つのセグメントと異なるセグメントを利用した第2の変調方式による第2の番組を1つのチャンネルに含むディジタル放送を受信可能であり、ディジタル放送の受信感度が悪化していると判定したとき第1の番組を選択し、受信感度が良好であると判定したとき第2の番組を選択するように番組を切替えるステップと、第1の番組から第2の番組に切替えられるとき、第2の番組の音声信号をメモリに蓄積するステップと、第1の番組の音声信号を出力した後に、前記メモリから読み出された音声信号を通常よりも高速で一定時間読み出して音声出力するステップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第2の番組から第1の番組の切替えを行う際に、第1の番組と第2の番組の音声信号の再生時間差による音飛びまたは音切れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】地上ディジタル放送のセグメント構造を説明する図である。
【図2】従来のフルセグメント放送とワンセグメント放送との番組切替えを説明する図である。
【図3】本発明の実施例に係る車載用地上ディジタルテレビ放送受信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す音声切替処理部の内部構成を示すブロック図である。
【図5】本実施例におけるワンセグメント放送からフルセグメント放送への切替え動作を示すタイミングチャートである。
【図6】本実施例の受信装置における番組の切替え動作を示すフローチャートである。
【図7】車載用地上ディジタル放送受信装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図3は、本発明の実施例に係る車載用ディジタルテレビ放送受信装置の構成を示すブロック図である。以後の説明において、「第1」は、ワンセグメント放送を示し、「第2」は、フルセグメント放送を示すものとする。図3に示すように車載用受信装置100は、第1のアンテナ102と、第2のアンテナ103と、第1のアンテナ102に接続された第1のチューナ104と、第2のアンテナ3に接続された第2のチューナ105と、第1のチューナ104で受信された信号を復調する第1のOFDM復調部106と、第2のチューナ5で受信された信号を復調する第2のOFDM復調部107と、第1および第2のOFDM復調部106、107からの信号を合成するダイバーシティ合成部108と、受信したディジタル放送の伝送中に生じる誤りを検出しそれを訂正する誤り訂正部109と、多重化されているストリームデータを分離し、音声ストリーム、映像ストリームおよびデータストリームを得るデマルチプレクサ110と、第1の番組の音声ストリームをデコードしディジタル音声信号を再生する第1の音声デコーダ111と、第2の番組の音声ストリームをデコードしディジタル音声信号を再生する第2の音声デコーダ112と、第1の番組の映像ストリームをデコードし映像信号を再生する第1の映像デコーダ113と、第2の番組の映像ストリームをデコードし映像信号を再生する第2の映像デコーダ114と、データストリームをデコードするデータデコーダ115と、第1の番組または第2の番組の音声信号を切替える音声切替処理部116と、第1の番組または第2の番組の映像信号を切替える映像切替処理部117と、音声切替処理部116から出力されたディジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するD/Aコンバータ118と、アナログ音声信号を出力するスピーカ119と、映像切替処理部117から出力された映像信号をディスプレイに描画するための描画処理部120と、ディスプレイ121と、制御部122と、ユーザからの入力を受け取る入力部123とを有する。
【0019】
第1および第2のチューナ104、105は、入力部123からのユーザの入力に応じて、選択されたチャンネルの周波数の放送信号を受信し、これを第1および第2のOFDM復調部106、107へ出力する。第1および第2のOFDM復調部106、107は、受信した信号を復調してトランスポートストリームを生成する。ダイバーシティ合成部108は、第1のOFDM復調部106からのトランスポートストリームの位相を制御する位相器108aおよび位相制御されたトランスポートストリームと第2のOFDM復調部107からのトランスポートストリームを合成する合成器108bを含み、ダイバーシティ合成されたトランスポートストリームを誤り訂正部109へ出力する。ダイバーシティ合成を用いることで受信性能は向上するが、必ずしも必須ではない。
【0020】
誤り訂正部109は、トランスポートストリームから受信したディジタル放送の伝送中の誤り率を算出し、誤り率を示す信号BERを制御部122へ出力する。制御部122は、誤り率と閾値とを比較し、誤り率が閾値を超えるとき、受信感度が悪化していると判定し、閾値以下のとき受信感度が良好であると判定する。閾値は、例えば制御部122の不揮発性の書き換え可能なメモリに格納されている。なお、本実施例では、受信感度の判定に誤り率を用いるが、これ以外にも、第1および第2のチューナ104、105の受信強度が監視することで受信感度を判定することも可能である。
【0021】
デマルチプレクサ110は、入力したトランスポートストリームに多重化されている音声ストリーム、映像ストリームおよびデータストリームを分離し、それぞれのデコーダ111、112、113、114、115へ出力する。ここで、データストリームには、データ放送用の情報ストリームが含まれ、さらにそこには、EIT(Event Information Table)が含まれている。EITには、番組の名称、放送日時、番組内容、番組を識別するためのイベントID等が含まれている。このイベントIDをチェックすることで、フルセグメントの番組とワンセグメントの番組が同一か否かを判定することができる。
【0022】
第1の音声デコーダ111は、ワンセグメント放送の番組、すなわち第1の番組の音声ストリームをデコードし、再生されたディジタル音声信号を出力する。第2の音声デコーダ112は、フルセグメント放送の番組、すなわち第2の番組の音声ストリームをデコードし、再生されたディジタル音声信号を出力する。第1の映像デコーダ113は、ワンセグメント放送の番組の映像ストリームをデコードし、第2の映像デコーダ114は、フルセグメント放送の番組の映像ストリームをデコードし、それぞれ映像信号を出力する。データデコーダ115は、データストリームをデコードし、その結果を制御部122へ出力する。
【0023】
音声切替処理部116は、制御部122からの制御信号Sに応じて第1の番組または第2の番組の音声信号を選択し、映像切替処理部117は、第1の番組または第2の番組の映像信号を選択する。
【0024】
D/Aコンバータ118は、音声切替処理部116から出力された音声信号をアナログ音声信号に変換し、スピーカ119がこれを出力する。描画処理部120は、映像切替処理部117から出力された映像信号をディスプレイ121の表示サイズに適合するようにスケーリング処理等を行い、ディスプレイがこれを出力する。入力部123は、マウス、キーボード、タッチパネル等のユーザ入力インターフェースを提供し、入力された情報が制御部122へ出力される。
【0025】
図4は、音声切替処理部116の内部構成を示すブロック図である。音声切替処理部116は、第1および第2の音声デコーダ111、112からの音声信号L1、L2を蓄積可能なワンセグメント用音声出力バッファ200およびフルセグメント用音声出力バッファ210と、音声出力バッファ200、210から出力される音声信号L1、L2のいずれかを出力する音声選択部220と、制御信号Sに基づき音声出力バッファ200、210を制御するバッファ制御部230とを有している。
【0026】
音声出力バッファ200、210は、好ましくはクロック信号に同期してデータの読み書きが可能なDRAMまたはSRAMを用いることができる。バッファ制御部230は、制御部122からの制御信号Sに基づき、音声出力バッファ200、210に対し、信号バスS2を介してリード/ライト信号、クロック信号、アドレス信号、イネーブル信号等を供給する。イネーブル信号は、音声出力バッファ200、210の動作を許可し、イネーブル期間中のみ音声信号を蓄積させるようにすることが可能である。さらに本実施例のバッファ制御部230は、ワンセグメント放送からフルセグメント放送への番組の切替えを行う際に、再生時間差Dに応じて、フルセグメント放送の音声信号を音声出力バッファに記憶させ、ワンセグメント放送の音声信号が出力された後、フルセグメント放送の音声信号が倍速で音声出力されるように音声出力バッファ210を制御する。
【0027】
図5は、音声切替処理部の動作を示すタイミングチャートである。時間期間T1ないしT3では、受信感度が悪く、時間期間T4ないしT6で受信感度は良好であるとする。時間期間T1において、ワンセグメント放送の番組に切替えられると、再生時間差Dのために時間期間T2でワンセグメント放送のTSデータ1が音声出力バッファ200から読み出され、音声出力される。引き続き、ワンセグメント放送のTSデータ2、3が時間期間T3、T4で出力される。
【0028】
時間期間T4において受信感度が良好と判定されると、再生時間差Dを考慮して時間期間T5においてフルセグメント放送への切替えを指示する制御信号Sが音声選択部220に供給される。音声選択部220は、制御信号Sに応答して音声出力バッファ210からの音声信号が出力されるように入力を切替える。これと同期して、バッファ制御部230は、TSデータ4、5を読み出すアドレス信号を音声出力バッファ210に供給し、かつTSデータ4、5を読み出すときのクロック信号の周波数を例えば1.2倍に変更する。このクロック信号の周波数を可変する期間は、再生時間差Dにほぼ等しくすることが望ましく、これにより、時間期間T5において、フルセグメント放送のTSデータ4、5の音声が倍速で出力され、再生時間差DによりTSデータ4の音飛びまたは音切れが防止される。そして、時間期間T6において、TSデータ6の音声信号が出力され、再生時間差Dが解消される
【0029】
次に、本実施例における番組の切替え動作について図6のフローチャートを参照して説明する。始めに、ユーザによって所望のチャンネルが選択され、チャンネルの第2の番組、すなわちフルセグメントの番組の音声信号および映像信号がスピーカ119およびディスプレイ121から出力されているものとする(ステップS101)。
【0030】
誤り訂正部109は、選択されたチャンネルのTSデータの誤り率を算出し、誤り率を示す信号BERを制御部122へ出力する。制御部122は、誤り率と閾値とを比較し、誤り率が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS102)。誤り率が閾値以下であれば、受信感度は良好であり、フルセグメント放送の番組が出力され続ける。他方、誤り率が閾値を越えると、制御部122は、受信感度が悪化したと判定し、ワンセグメント放送の番組への切替えを指示する制御信号Sを音声切替処理部116および映像切替処理部117に出力する(ステップS103)。
【0031】
制御信号Sに応答して、音声切替処理部116の音声選択部220は、音声信号の入力を切替え、第2の音声デコーダ112からの音声信号L2の出力を停止し、第1の音声デコーダ111からの音声信号L1を出力する。音声選択部220から出力された音声信号L1は、D/Aコンバータ118によりアナログ音声信号に変換され、スピーカ119からワンセグメント放送の音声が出力される。同様に、映像切替処理部117は、ワンセグメント放送の映像信号を選択し、ディスプレイ121には、ワンセグメント放送の映像が表示される(ステップS104)。
【0032】
制御部122は、選択されたチャンネルのTSデータの誤り率を監視し(ステップS105)、誤り率が閾値を超えていればワンセグメント放送の番組が出力され続ける。他方、誤り率が閾値以下になれば、制御部122は、受信感度が良好に遷移したと判定し、フルセグメント放送の番組への切替えを指示する制御信号Sを音声切替処理部116および映像切替処理部117に出力する(ステップS106)。音声選択部220は、制御信号Sに応答して出力する音声信号の入力を切替える。また、バッファ制御部230は、一定時間の間、好ましくは再生時間差Dの間、受信感度が良好と判定されたときのフルセグメント放送の音声信号を通常よりも高速のクロック信号で音声出力バッファ210から読出させ、音声が倍速(例えば、1.2倍)で出力される(ステップS107)。これにより、ワンセグメント放送からフルセグメント放送への番組の切替えを行ったときに、再生時間差Dによる音飛びまたは音切れを防止することができる。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0034】
例えば、上記実施例では、バッファ制御部230が音声信号を倍速で読み出すためのクロック信号を音声出力バッファに供給するようにしたが、図4(b)に示すように、PLLまたはDLLを用いたクロック発生部240から音声出力バッファ200、210に所望の周波数のクロック信号CLKOUT1,CLKOUT2を供給するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施例では、第1および第2の音声デコーダ111、112からの音声信号L1、L2を音声切替処理部116に供給し、そこで音声信号L1、L2を選択するようにしたが、これ以外にも、図7に示すように、第1および第2の音声デコーダ111、112は、制御信号Sに応じて動作または非動作となるように構成されてもよい。例えば、ワンセグメント放送に切替える場合には、第1の音声デコーダ111を動作させ、第2の音声デコーダ112の動作を停止させ、フルセグメント放送に切替える場合には、その反対の動作を行わせる。この場合、音声切替処理部116は、図4に示すような音声選択部220を必ずしも要さない。
【符号の説明】
【0036】
100:地上ディジタルテレビ受信装置 109:誤り訂正部
110:デマルチプレクサ 111:第1の音声デコーダ
112:第2の音声デコーダ 113:第1の映像デコーダ
114:第2の映像デコーダ 116:音声切替処理部
117:映像切替処理部 122:制御部
200、210:音声出力バッファ 220:音声選択部
230:バッファ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの伝送帯域を複数のセグメントに分割し、少なくとも1つのセグメントを利用した第1の変調方式による第1の番組と、前記少なくとも1つのセグメントと異なるセグメントを利用した第2の変調方式による第2の番組を1つのチャンネルに含むディジタル放送を受信可能なディジタル放送受信装置であって、
ディジタル放送を受信する受信手段と、
受信したディジタル放送の受信感度を検出する感度検出手段と、
受信したディジタル放送から音声信号と映像信号を再生する再生手段と、
前記感度検出手段により検出された受信感度が悪化していると判定したとき第1の番組を選択し、受信感度が良好であると判定したとき第2の番組を選択するように番組の切替えを行う切替え手段と、
前記再生手段により再生された音声信号を出力する音声出力手段と、
前記再生手段により再生された映像信号を出力する映像出力手段とを有し、
前記音声出力手段は、前記切替え手段により第1の番組から第2の番組への切替えが行われるとき、第2の番組の音声信号を一定時間通常よりも高速で出力する、
ディジタル放送受信装置。
【請求項2】
前記音声出力手段は、少なくとも第2の番組の音声信号を記憶するメモリを含み、第1の番組の音声信号が出力された後、前記メモリに記憶された第2の番組の音声信号を一定時間高速で読出して音声出力する、請求項1に記載のディジタル放送受信装置。
【請求項3】
前記音声出力手段は、前記再生手段による第1の番組の音声信号の再生時間と第2の番組の音声信号の再生時間差に基づき前記一定時間を決定する、請求項1に記載のディジタル放送受信装置。
【請求項4】
第1の番組は、ワンセグメント放送による番組であり、第2の番組はフルセグメント放送による番組である、請求項1または2に記載のディジタル放送受信装置。
【請求項5】
前記メモリは、クロック信号に同期してデータの読み書きが可能であり、前記音声出力手段は、前記一定時間、前記クロック信号の周波数を可変することにより第2の番組の音声信号を通常よりも高速で読み出す、請求項2に記載のディジタル放送受信装置。
【請求項6】
1つの伝送帯域を複数のセグメントに分割し、少なくとも1つのセグメントを利用した第1の変調方式による第1の番組と、前記少なくとも1つのセグメントと異なるセグメントを利用した第2の変調方式による第2の番組を1つのチャンネルに含むディジタル放送を受信可能なディジタル放送受信装置の番組の切替え方法であって、
ディジタル放送の受信感度が悪化していると判定したとき第1の番組を選択し、受信感度が良好であると判定したとき第2の番組を選択するように番組を切替えるステップと、
第1の番組から第2の番組に切替えられるとき、第2の番組の音声信号をメモリに蓄積するステップと、
第1の番組の音声信号を出力した後に、前記メモリから読み出された音声信号を通常よりも高速で一定時間読み出して音声出力するステップと、
を有する番組の切替え方法。
【請求項7】
第1の番組は、ワンセグメント放送による番組であり、第2の番組はフルセグメント放送による番組である、請求項6に記載の番組の切替え方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−219586(P2010−219586A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60466(P2009−60466)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】